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  • 特開-動特性測定装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039334
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】動特性測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/00 20060101AFI20240314BHJP
   G01N 3/32 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
G01N3/00 K
G01N3/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143808
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000201869
【氏名又は名称】倉敷化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桑原 博幸
(72)【発明者】
【氏名】笹田 伸行
(72)【発明者】
【氏名】片山 稔
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA02
2G061AA17
2G061AB05
2G061BA19
2G061CB02
2G061DA01
(57)【要約】
【課題】ワークに上下荷重が与えられたときのワークの水平動特性を精度よく測定する。
【解決手段】動特性測定装置1は、ワークWを上下方向Vに挟んで保持する上側保持部8及び下側保持部7と、上側保持部を通じてワークに対して上下方向のプリロードPを与えるプリロード生成機構9と、ワークに対して水平方向Hの振動Uを与える加振装置3と、加振装置によりワークに対して与えられる荷重Fを検出するロードセル10と、ロードセルにより検出された荷重に基づいてワークの水平方向の動特性Kを測定するコントローラ12と、を備える。上側保持部は、エアベアリング20を介して、ワークを非接触で保持する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを上下方向に挟んで保持する上側保持部及び下側保持部と、
前記上側保持部又は前記下側保持部を通じて前記ワークに対して上下方向のプリロードを与えるプリロード生成部と、
前記ワークに対して水平方向の振動を与える加振部と、
前記加振部により前記ワークに対して与えられる荷重を検出する荷重センサと、
少なくとも前記荷重センサにより検出された前記荷重に基づいて前記ワークの水平方向の動特性を測定する制御部と、を備え、
前記上側保持部及び前記下側保持部のうちの少なくとも一方は、前記ワークを非接触で保持する、動特性測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の動特性測定装置において、
前記上側保持部及び前記下側保持部のうちの前記少なくとも一方には、前記ワークを非接触で支持するエアベアリングが設けられている、動特性測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の動特性測定装置において、
前記エアベアリングは、ジョイントによって揺動可能である、動特性測定装置。
【請求項4】
請求項1に記載の動特性測定装置において、
前記下側保持部には、前記ワークが載せられており、
前記上側保持部は、前記ワークを上側から非接触で押さえる、動特性測定装置。
【請求項5】
請求項1に記載の動特性測定装置において、
前記加振部による前記ワークの変位を検出する変位センサを備え、
前記制御部は、前記荷重センサにより検出された前記荷重及び前記変位センサにより検出された前記変位に基づいて前記ワークの水平方向の前記動特性としての動バネ定数を測定する、動特性測定装置。
【請求項6】
請求項1に記載の動特性測定装置において、
前記上側保持部を保持する上側質量部と、
前記下側保持部を保持する下側質量部と、
基礎に載置されるフレームと、を備え、
前記上側質量部及び前記下側質量部はそれぞれ、前記フレームに弾性体を介して支持されている、動特性測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、動特性測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークの動特性を測定するための動特性測定装置が知られている。特許文献1に係る動特性測定装置は、基部と、基部の上部に空気バネを介してフローティング状態とすることを可能に載置された支持部と、基部と支持部との間に取付けられたワークの基部側に設けられ且つワークに上下方向の振動を与える動電加振機と、ワークの支持部側に設けられ且つワークに与えられた動荷重を計測するロードワッシャと、を備える。また、動電加振機は、ワークに対して上下方向のプリロードを与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-085528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に係る動特性測定装置では、ワークに上下方向のプリロードを与えながらワークに上下方向の振動を与えることによって、ワークに上下方向の静荷重が与えられた状態におけるワークの上下方向の動特性を測定することができる。
【0005】
ところで、ワークに上下方向の静荷重が与えられた状態におけるワークの水平方向の動特性を測定したい場合がある。この場合、ワークを一対の保持部により上下方向に挟んで保持しながらワークに対して上下方向のプリロードを与えるとともに、ワークに対して加振機により水平方向の振動を与える。
【0006】
しかしながら、上記構成では、ワークに対して上下方向のプリロードを与えながらワークに対して水平方向の振動を与えたときに、ワークは、上下の保持部に拘束されて、水平方向へ自由に変位できない。ワークが水平方向へ自由に変位できなければ、ワークの水平方向の動特性を測定するに際して、誤差の要因となる。
【0007】
このため、ワークに上下方向の静荷重が与えられた状態におけるワークの水平方向の動特性を精度よく測定できないという問題があった。
【0008】
本開示は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ワークに上下方向の静荷重が与えられた状態におけるワークの水平方向の動特性を精度よく測定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る動特性測定装置は、ワークを上下方向に挟んで保持する上側保持部及び下側保持部と、前記上側保持部又は前記下側保持部を通じて前記ワークに対して上下方向のプリロードを与えるプリロード生成部と、前記ワークに対して水平方向の振動を与える加振部と、前記加振部により前記ワークに対して与えられる荷重を検出する荷重センサと、少なくとも前記荷重センサにより検出された前記荷重に基づいて前記ワークの水平方向の動特性を測定する制御部と、を備え、前記上側保持部及び前記下側保持部のうちの少なくとも一方は、前記ワークを非接触で保持する。
【0010】
かかる構成によれば、動特性測定装置は、ワークを上側保持部及び下側保持部によって上下方向に挟んで保持した状態で、ワークに対してプリロード生成部によって上下方向のプリロードを与えながら、ワークに対して加振部によって水平方向の振動を与える。そして、加振部によるワークに対する荷重を荷重センサによって検出するとともに、ワークの水平方向の動特性を当該荷重に基づいて制御部によって測定する。
【0011】
ここで、上側保持部及び下側保持部のうちの少なくとも一方がワークに接触しないので、ワークに対して上下方向のプリロードを与えながらワークに対して水平方向の振動を与えたとしても、ワークは、上側保持部と下側保持部との間で水平方向へ自由に変位することができる。ワークが水平方向へ自由に変位できるので、ワークの水平方向の動特性を測定するに際して、誤差が生じにくい。
【0012】
これにより、ワークに上下方向の静荷重が与えられた状態におけるワークの水平方向の動特性を精度よく測定することができる。
【0013】
一実施形態では、前記上側保持部及び前記下側保持部のうちの前記少なくとも一方には、前記ワークを非接触で支持するエアベアリングが設けられている。
【0014】
かかる構成によれば、エアベアリングの表面とワークとの間に空気層が形成されることによって、ワークがエアベアリングの表面上を水平方向へ自由に変位することを許容しつつ、当該空気層によりワークを上下方向に保持することができる。
【0015】
一実施形態では、前記エアベアリングは、ジョイントによって揺動可能である。
【0016】
かかる構成によれば、ワークの変位に対するエアベアリングの追従性が良くなる。
【0017】
一実施形態では、前記下側保持部には、前記ワークが載せられており、前記上側保持部は、前記ワークを上側から非接触で押さえる。
【0018】
かかる構成によれば、上側保持部及び下側保持部によるワークの保持が容易になる。
【0019】
一実施形態では、前記加振部による前記ワークの変位を検出する変位センサを備え、前記制御部は、前記荷重センサにより検出された前記荷重及び前記変位センサにより検出された前記変位に基づいて前記ワークの水平方向の前記動特性としての動バネ定数を測定する。
【0020】
かかる構成によれば、ワークの水平方向の動特性を表す代表的な指標である、ワークの水平方向の動バネ定数を、精度よく測定することができる。
【0021】
一実施形態では、前記上側保持部を保持する上側質量部と、前記下側保持部を保持する下側質量部と、基礎に載置されるフレームと、を備え、前記上側質量部及び前記下側質量部はそれぞれ、前記フレームに弾性体を介して支持されている。
【0022】
かかる構成によれば、上側質量部及び下側質量部(上側保持部及び下側保持部)に対してフレームの共振が伝達されるのを抑制することができるので、ワークの水平方向の動特性を、より精度よく測定することができる。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、ワークに上下方向の静荷重が与えられた状態におけるワークの水平方向の動特性を精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、動特性測定装置を正面図で示す。
図2図2は、図1におけるワーク近傍を拡大正面図で示す。
図3図3は、エアベアリングを正面断面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0026】
図1は、動特性測定装置1を正面図で示す。動特性測定装置1は、ワークWの上下方向(Vで示す)及び水平方向(Hで示す)の動特性としての動バネ定数Kを測定する。上下方向は、鉛直方向である。水平方向は、上下方向に直交する方向であって、左右方向及び/又は前後方向である。
【0027】
図1に示すように、動特性測定装置1は、基底部2と、加振部としての加振装置3と、水平測定用フレーム4と、水平測定用下側質量部5と、水平測定用上側質量部6と、水平測定用下側保持部7と、水平測定用上側保持部8と、プリロード生成部としてのプリロード生成機構9と、荷重センサとしてのロードセル10と、変位センサ11と、制御部としてのコントローラ12と、上下測定用フレーム13と、上下測定用質量部14と、上下測定用下側保持部15と、上下測定用上側保持部16と、を備える。
【0028】
以下、簡単のため、水平測定用フレーム4、水平測定用下側質量部5、水平測定用上側質量部6、水平測定用下側保持部7及び水平測定用上側保持部8を、単に、フレーム4、下側質量部5、上側質量部6、下側保持部7及び上側保持部8という。
【0029】
基底部2は、基礎B上に載置されている。基礎Bは、例えば、フロアの床面である。基底部2は、例えば金属で形成されている。基底部2は、水平方向に延びている。
【0030】
加振装置3は、上下測定用フレーム13の載置板13b(後述)上に、空気バネ(図示せず)を介して載置されている。加振装置3は、加振対象に当接するアタッチメント3aを、含む。加振装置3は、アタッチメント3aを、上下方向に臨む姿勢(図示せず)と水平方向に臨む姿勢(図1参照)との間で、姿勢変換させ得る。これにより、加振装置3は、加振対象を、上下方向及び水平方向へ加振し得る。
【0031】
フレーム4は、スライドレール17を介して、基底部2上に載置されている。すなわち、フレーム4は、スライドレール17及び基底部2を介して、基礎B上に載置されている。フレーム4は、例えば金属で形成されている。
【0032】
フレーム4は、底板4aと、中板4bと、天板4cと、支柱4dと、を含む。底板4aは、スライドレール17を介して、基底部2上に載置されている。中板4bは、底板4aよりも上側に配置されている。天板4cは、中板4bよりも上側に配置されている。底板4a、中板4b及び天板4cは、例えば四角形状であって、水平方向に延びている。支柱4dは、上下方向に延びており、底板4a、中板4b及び天板4cの外周部において、これらを互いに連結している。
【0033】
下側質量部5は、フレーム4の底板4a上に、弾性体としての第1空気バネ18を介して、支持されている。上側質量部6は、フレーム4の中板4b上に、弾性体としての第2空気バネ19を介して、支持されている。下側質量部5及び上側質量部6はそれぞれ、例えば金属製でブロック状の錘である。下側質量部5及び上側質量部6各々の重量、サイズ及び形状等は、共振を回避するために適宜設定される。下側質量部5及び上側質量部6は、フローティングマスとも呼ばれる。
【0034】
下側保持部7は、下側質量部5の上側にある。下側質量部5は、下側保持部7を保持する。具体的には、下側保持部7は、下側質量部5の上部に固定されている。下側保持部7は、例えば金属製のブロック状であり、上下方向に延びている。下側保持部7は、下側質量部5と一体形成されてもよいし別部材で構成されてもよい。下側保持部7の上部には、水平方向に延びる板状の載置台23が固定されている(図2参照)。なお、詳細は後述するが、下側保持部7と載置台23との間には、ロードセル10が配置されている。
【0035】
上側保持部8は、上側質量部6の下側にある。上側質量部6は、上側保持部8を保持する。具体的には、上側保持部8は、上側質量部6の下部に固定されている。上側保持部8は、例えば金属製のブロック状であり、上下方向に延びている。上側保持部8は、フレーム4の中板4bを貫通して、中板4bよりも下側まで延びている。上側保持部8は、上側質量部6と一体形成されてもよいし別部材で構成されてもよい。
【0036】
図2は、図1におけるワークW近傍を拡大正面図で示す。図2に示すように、ワークWは、下側保持部7と上側保持部8との間に配置されている。下側保持部7の上側に固定さされた載置台23の上面には、ワークWが載せられている。ワークWは、弾性体であって、例えば防振ゴムである。ワークWの上面には、水平方向に延びる金属製の支持板24が固定されている。
【0037】
ここで、上側保持部8には、エアベアリング20が設けられている。エアベアリング20は、上側保持部8の下側且つワークWの上側にある。エアベアリング20は、水平方向に延びている。エアベアリング20の下面(表面)は、支持板24を介して、ワークWの上面に臨んでいる。エアベアリング20の下面と支持板24の上面との間には、僅かに隙間A(例えば数μm程度)がある。エアベアリング20は、例えば金属で形成されている。
【0038】
図3は、エアベアリング20を正面断面図で示す。図3に示すように、エアベアリング20は、ボールジョイント21を介して、上側保持部8に連結されている。ボールジョイント21は、上下方向に延びる棒状体である。ボールジョイント21の上端部は、上側保持部8の下面に固定されている。ボールジョイント21の下端部には、球状部21aが形成されている。エアベアリング20は、ボールジョイント21の球状部21aに連結されており、ボールジョイント21の球状部21aを起点に上下方向及び水平方向(前後方向及び左右方向)に揺動可能になっている。エアベアリング20は、ボールジョイント21の球状部21aによって、上側保持部8に対して、上下方向及び水平方向に揺動可能である。
【0039】
エアベアリング20の下面には、ノズル20aが形成されている。ノズル20aは、エアベアリング20の内部を延びる連通路20bを介して、外部のコンプレッサ(図示せず)に連通している。ノズル20aから下方に向けて、空気が噴出される。これにより、エアベアリング20の下面と、(ワークWの上側に固定された)支持板24の上面との隙間Aに、空気層が形成される(以下「空気層A」という場合がある)。エアベアリング20は、空気層Aを介して、ワークWを上側から非接触で支持する。上側保持部8は、エアベアリング20(空気層A)を介して、ワークWを上側から非接触で押さえる。
【0040】
図2に戻って、上側保持部8及び下側保持部7は、ワークWを上下方向に挟んで保持する。そして、上側保持部8は、エアベアリング20(空気層A)を介して、ワークWを非接触で保持する。
【0041】
図1に戻って、プリロード生成機構9は、公知の電動スクリュージャッキ機構で構成されている。プリロード生成機構9は、ねじ棒9aと、受け台9bと、モータ9cと、を含む。ねじ棒9aは、基底部2からフレーム4の中板4bに亘って、上下方向に延びている。受け台9bは、ねじ棒9aに係合されており、フレーム4の中板4bを下側から受けている。モータ9cは、ねじ棒9aを回転させることによって、受け台9bを上下方向に移動させる。
【0042】
受け台9bが上下方向に移動すると、フレーム4の中板4b、上側質量部6及び上側保持部8も、連動して上下方向に移動する。プリロード生成機構9の受け台9bを下方に移動させることによって、上側保持部8は、エアベアリング20(空気層A)を介して、ワークWを上側から下方へ押圧する。プリロード生成機構9は、上側保持部8(エアベアリング20)を通じて、ワークWに対して上下方向のプリロードPを与える。ワークWに対する上下方向のプリロードPは、ワークWに対する上下方向の静荷重に相当しており、例えば車両におけるエンジンの重量に対応する。プリロードPは、例えば、数百[N]~数千[N]程度である。
【0043】
図2に示すように、加振装置3のアタッチメント3aは、ワークWの上側に配置された支持板24の側面に臨んでおり、支持板24に当接する。加振装置3は、アタッチメント3aを水平方向に振動させることによって、支持板24を介して、ワークWに対して水平方向の振動Uを与える。
【0044】
ロードセル10は、ワークWの下側に配置された載置台23と、下側保持部7との間に、配置されている。ロードセル10として、公知の種々の方式が適用可能である。
【0045】
ロードセル10は、加振装置3によりワークWに対して与えられる水平方向の荷重Fを検出する。ロードセル10は、前後方向及び左右方向に対応するように、複数用意されてもよい。また、図示しないが、ワークWに対する上下方向のプリロードPを検出するための荷重センサを、別途設けてもよい。ロードセル10の配置箇所は、その方式により様々である。例えば、ロードセル10は、載置台23における加振装置3とは反対側の側面に取り付けられてもよい。
【0046】
変位センサ11は、加振装置3によるワークWの水平方向の変位δを検出する。ワークWの変位δは、主にワークWの弾性変形によって起こる。変位センサ11として、公知の種々の方式が適用可能である。また、変位センサ11の代わりに加速度センサを採用して、得られた加速度を後述するコントローラ12で積分することによって、変位δを算出してもよい。この場合の加速度センサは、変位センサ11として機能する。加速度センサとして、公知の種々の方式が適用可能である。
【0047】
変位センサ11は、前後方向及び左右方向に対応するように、複数用意されてもよい。変位センサ11は、ワークWの上側に配置された支持板24における加振装置3とは反対側の側面に、配置されている。なお、変位センサ11の配置箇所は、その方式により様々である。
【0048】
コントローラ12は、マイコン及びプログラムで構成されている。コントローラ12は、加振装置3、プリロード生成機構9、ロードセル10及び変位センサ11に、接続されている。コントローラ12は、ロードセル10により検出された水平方向の荷重F及び変位センサ11により検出された水平方向の変位δに基づいて、ワークWの水平方向の動バネ定数(動特性)Kを測定(算出)する。動バネ定数K[N/mm]は、荷重F[N]/変位δ[mm]で得られる。荷重F及び変位δの検出値に上下方向成分を含む場合、コントローラ12によって水平方向に変換してもよい。
【0049】
上述したように、加振装置3は、アタッチメント3aを上下方向に臨む姿勢(図示せず)に位置付けることによって、加振対象を上下方向へ加振し得る。そこで、動特性測定装置1は、ワークWの上下方向の動バネ定数(動特性)Kを測定するために、以下の構成をなす。
【0050】
上下測定用フレーム13は、基底部2上に載置されている。上下測定用フレーム13は、天板13aと、上下方向に延び且つ天板13aを支持する支柱13bと、天板13aの下側に配置され且つ支柱13bに支持された載置板13cと、を含む。上下測定用質量部14は、上下測定用フレーム13の天板13a上に、第3空気バネ22を介して支持されている。加振装置3は、載置板13c上に、空気バネ(図示せず)を介して、支持されている。上下測定用下側保持部15は、加振装置3のアタッチメント3aが上下方向に臨む姿勢のときに、アタッチメント3aに連結される(図示せず)。上下測定用上側保持部16は、上下測定用質量部14の下部に保持されている。
【0051】
上下測定用下側保持部15及び上下測定用上側保持部16は、ワークWを上下方向に挟んで保持する。上下測定用下側保持部15及び上下測定用上側保持部16は、電動スクリュージャッキ機構(図示せず)によって、上下測定用上側保持部16を通じて、ワークWに対して上下方向のプリロードを与える。加振装置3は、アタッチメント3aを上下方向に振動させることによって、上下測定用下側保持部15を介して、ワークWに対して上下方向の振動を与える。図示しないが、加振装置3によりワークWに対して与えられる上下方向の荷重を検出するための上下用ロードセルがある。また、加振装置3によるワークWの上下方向の変位を検出するための上下用変位センサがある。上下用ロードセル及び上下用変位センサは、コントローラ12に接続されている。
【0052】
(作用効果)
本実施形態によれば、動特性測定装置1は、ワークWを上側保持部8及び下側保持部7によって上下方向に挟んで保持した状態で、ワークWに対してプリロード生成機構9によって上下方向のプリロードPを与えながら、ワークWに対して加振装置3によって水平方向の振動Uを与える。そして、加振装置3によるワークWに対する水平方向の荷重F及び加振装置3によるワークWの水平方向の変位δを、ロードセル10及び変位センサ11によって検出するとともに、ワークWの水平方向の動バネ定数(動特性)Kを、荷重F及び変位δに基づいてコントローラ12によって測定する。
【0053】
ここで、上側保持部8(エアベアリング20)がワークWに接触しないので、ワークWに対して上下方向のプリロードPを与えながらワークWに対して水平方向の振動Uを与えたとしても、ワークWは、上側保持部8(エアベアリング20)と下側保持部7との間で水平方向へ自由に変位することができる。ワークWが水平方向へ自由に変位できるので、ワークWの水平方向の動バネ定数(動特性)Kを測定するに際して、誤差が生じにくい。
【0054】
これにより、ワークWに上下方向の静荷重が与えられた状態におけるワークWの水平方向の動バネ定数(動特性)Kを、精度よく測定することができる。
【0055】
本実施形態に係る動特性測定装置1は、例えば、車体に対してエンジンを支持するエンジンマウントに適用される防振ゴムの動バネ定数(動特性)Kを精度よく測定する上で、特に有利である。また、動特性測定装置1は、ワークWに対して高周波(例えば、3kHz以上)の振動Uを与えた場合に、ワークWの水平方向の動バネ定数(動特性)Kを精度よく測定する上で、特に有利である。
【0056】
エアベアリング20の表面(下面)と、(ワークWの上側に配置された)支持板24の上面との隙間Aに、空気層Aが形成されることによって、ワークWがエアベアリング20の表面(下面)上を水平方向へ自由に変位することを許容しつつ、空気層AによりワークWを上下方向に保持することができる。
【0057】
エアベアリング20がボールジョイント21により揺動可能であるので、ワークWの変位に対するエアベアリング20の追従性が良くなる。
【0058】
下側保持部7にワークWが載せられ且つ上側保持部8(エアベアリング20)がワークWを上側から非接触で押さえることによって、上側保持部8(エアベアリング20)及び下側保持部7によるワークWの保持が容易になる。
【0059】
動特性測定装置1がロードセル10のみならず変位センサ11を備えるので、ワークWの水平方向の動特性を表す代表的な指標である、ワークWの水平方向の動バネ定数Kを、精度よく測定することができる。
【0060】
上側質量部6及び下側質量部5は、第2空気バネ19及び第1空気バネ18を介して、フレーム4に支持されている。このため、上側質量部6及び下側質量部5(上側保持部8及び下側保持部7)に対してフレーム4の共振が伝達されるのを抑制することができる。また、ロードセル10及び変位センサ11に対してフレーム4の共振が伝達されるのを、抑制することができる。これにより、ワークWの水平方向の動バネ定数(動特性)Kを、より精度よく測定することができる。
【0061】
本実施形態に係る動特性測定装置1は、SDGsの目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」を達成する上で、有効である。
【0062】
(その他の実施形態)
以上、本開示を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
【0063】
エアベアリング20は、上側保持部8と別体で構成され且つボールジョイント21により上側保持部8に連結されていたが、これに限定されない。ジョイントの種類は、ボールジョイント21に限定されない。ジョイントは、(高周波特性に影響を及ぼさない)高剛性のユニバーサルジョイント(自在継手)や、球面以外の曲面を有するジョイント、等であってもよい。ジョイントは、水平方向の加振時に上下方向の加振ブレを吸収する。ジョイントは、剛性を有することが好ましい。ジョイントは、無くてもよい。エアベアリング20は、上側保持部8と一体形成されてもよい。
【0064】
エアベアリング20は、上側保持部8ではなく、下側保持部7に設けられてもよい。また、エアベアリング20は、上側保持部8及び下側保持部7の両方に、設けられてもよい。すなわち、エアベアリング20は、上側保持部8及び下側保持部7のうちの少なくとも一方に、設けられればよい。上側保持部8及び下側保持部7のうちの少なくとも一方が、エアベアリング20を介して、ワークWを非接触で保持すればよい。
【0065】
エアベアリング20の代わりに、磁気軸受を用いてもよい。また、上側保持部8及び下側保持部7のうちの少なくとも一方がワークWを非接触で保持するのであれば、その他の保持方式を採用してもよい。
【0066】
載置台23及び支持板24は、無くてもよい。
【0067】
プリロード生成機構9は、上側保持部8ではなく下側保持部7を通じて、ワークWに対して上下方向のプリロードPを与えてもよい。この場合、プリロード生成機構9は、フレーム4の底板4a、下側質量部5及び下側保持部7を、上方に移動させるとよい。プリロード生成機構9は、電動式ではなく油圧式でもよい。プリロード生成機構9は、上側保持部8及び下側保持部7の両方を通じて、ワークWに対して上下方向のプリロードPを与えてもよい。
【0068】
動特性Kは、動バネ定数に限らず、ワークWの動的性質を表すその他の種々の指標を、含み得る。ワークWは、防振ゴムに限定されず、例えば、コイルバネ等でもよい。上下方向は、鉛直方向に対して多少の水平方向成分を含んでもよい。水平方向は、上下方向に完全に直交するのではなく、斜めに交差してもよい。
【0069】
変位センサ11は、無くてもよい。コントローラ12は、少なくともロードセル10により検出された荷重Fに基づいて、ワークWの水平方向の動特性Kを測定すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本開示は、動特性測定装置に適用できるので、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0071】
W ワーク
V 上下方向
H 水平方向
K 動バネ定数(動特性)
B 基礎
A 空気層(隙間)
P プリロード
U 振動
F 荷重
δ 変位
1 動特性測定装置
3 加振装置(加振部)
4 水平測定用フレーム
5 水平測定用下側質量部
6 水平測定用上側質量部
7 水平測定用下側保持部
8 水平測定用上側保持部
9 プリロード生成機構(プリロード生成部)
10 ロードセル(荷重センサ)
11 変位センサ
12 コントローラ(制御部)
18 第1空気バネ(弾性体)
19 第2空気バネ(弾性体)
20 エアベアリング
21 ボールジョイント(ジョイント)
図1
図2
図3