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  • 特開-ころ軸受及び複列ころ軸受 図1
  • 特開-ころ軸受及び複列ころ軸受 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039336
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】ころ軸受及び複列ころ軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/60 20060101AFI20240314BHJP
   F16C 19/36 20060101ALI20240314BHJP
   F16C 19/54 20060101ALI20240314BHJP
   F16C 35/12 20060101ALI20240314BHJP
   F16C 35/06 20060101ALI20240314BHJP
   F16C 43/04 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
F16C33/60
F16C19/36
F16C19/54
F16C35/12
F16C35/06 Z
F16C43/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143811
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】植松 俊一
【テーマコード(参考)】
3J117
3J701
【Fターム(参考)】
3J117AA02
3J117DA01
3J117DB01
3J117HA02
3J701AA16
3J701AA25
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA03
3J701BA38
3J701BA53
3J701BA57
3J701BA64
3J701FA04
3J701GA31
3J701GA34
3J701GA41
3J701GA51
3J701XB03
3J701XB12
3J701XB13
(57)【要約】
【課題】鍔部材を内輪ボス部に締結する締結部材の脱落を防止できるころ軸受及び複列ころ軸受を提供する。
【解決手段】複列ころ軸受は、一対のころ軸受を含む。それぞれのころ軸受は、外周面に内輪軌道面を有する内輪と、内周面に外輪軌道面を有する外輪と、内輪軌道面と外輪軌道面との間に転動自在に配置された複数のころと、をそれぞれ備える。内輪の軸方向一端部には、内輪と一体である鍔部が形成され、内輪の軸方向他端部には、内輪と別体である鍔部材が、軸方向に延びる締結部材により締結され、締結部材は、頭部と、頭部から軸方向一端側に延びる軸部と、を有し、締結部材の脱落を防止するスペーサが、一対のころ軸受の間に位置し、且つ、締結部材の頭部と軸方向に対向するように設けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に内輪軌道面を有する内輪と、
内周面に外輪軌道面を有する外輪と、
前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に転動自在に配置された複数のころと、
をそれぞれ備える一対のころ軸受を含む複列ころ軸受であって、
前記内輪の軸方向一端部には、前記内輪と一体である鍔部が形成され、
前記内輪の軸方向他端部には、前記内輪と別体である鍔部材が、軸方向に延びる締結部材により締結され、
前記締結部材は、頭部と、前記頭部から軸方向一端側に延びる軸部と、を有し、
前記締結部材の脱落を防止するスペーサが、前記一対のころ軸受の間に位置し、且つ、前記締結部材の前記頭部と軸方向に対向するように設けられる、
ことを特徴とする複列ころ軸受。
【請求項2】
前記内輪の前記軸方向他端部には、雌ねじ部を有し、軸方向に向かうねじ穴が形成され、
前記締結部材の前記軸部の外周面には、前記ねじ穴の前記雌ねじ部と螺合する雄ねじ部が形成され、
前記スペーサと前記締結部材の前記頭部との隙間の軸方向長さは、前記ねじ穴の前記雌ねじ部と前記軸部の前記雄ねじ部との軸方向における螺合長さよりも、短い
請求項1に記載の複列ころ軸受。
【請求項3】
前記スペーサの外径は、前記締結部材のピッチ円直径よりも大きい、
請求項1又は2に記載の複列ころ軸受。
【請求項4】
外周面に内輪軌道面を有する内輪と、
内周面に外輪軌道面を有する外輪と、
前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に転動自在に配置された複数のころと、
を備えるころ軸受であって、
前記内輪の軸方向一端部には、前記内輪と一体である鍔部が形成され、
前記内輪の軸方向他端部には、前記内輪と別体である鍔部材が、軸方向に延びる締結部材により締結され、
前記締結部材は、頭部と、前記頭部から軸方向一端側に延びる軸部と、を有し、
前記締結部材の脱落を防止するスペーサが、前記締結部材の前記頭部と軸方向に対向するように設けられる、
ことを特徴とするころ軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ころ軸受及び複列ころ軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業機械においては、機能や価格だけでなくライフサイクルコストが重要視されている。このため産業機械に組み付けるころ軸受に対しても、補修や再利用の要求が増えており、点検するために分解可能な軸受構造が求められている。
【0003】
特許文献1に記載の円すいころ軸受は、内輪軌道面を有する内輪と、外輪軌道面を有する外輪と、内輪軌道面及び外輪軌道面間を転動する転動体である複数の円すいころと、円すいころを周方向等間隔に保持するための保持器と、を備える。内輪の大径側端部に大鍔が一体に形成されるとともに、内輪の小径側端部に、円すいころの脱落を防止する、別体の小鍔部材が設けられる。小鍔部材は、ボルトによって内輪に係止される。したがって、円すいころ軸受の内部の点検や保持器の交換の際には、小鍔部材を取り外すことによって、分解することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-190352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の円すいころ軸受では、ボルトが適正な締付力で締結されない場合などにボルト緩みが生じ、ボルトが軸受から脱落するおそれがある。ボルトが脱落した場合、周辺の駆動部品(例えば減速機)へボルトが流れ込み、部品の損傷を引き起こす可能性がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、鍔部材を内輪に締結する締結部材の脱落を防止できるころ軸受及び複列ころ軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
[1] 外周面に内輪軌道面を有する内輪と、
内周面に外輪軌道面を有する外輪と、
前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に転動自在に配置された複数のころと、
をそれぞれ備える一対のころ軸受を含む複列ころ軸受であって、
前記内輪の軸方向一端部には、前記内輪と一体である鍔部が形成され、
前記内輪の軸方向他端部には、前記内輪と別体である鍔部材が、軸方向に延びる締結部材により締結され、
前記締結部材は、頭部と、前記頭部から軸方向一端側に延びる軸部と、を有し、
前記締結部材の脱落を防止するスペーサが、前記一対のころ軸受の間に位置し、且つ、前記締結部材の前記頭部と軸方向に対向するように設けられる、
ことを特徴とする複列ころ軸受。
[2] 外周面に内輪軌道面を有する内輪と、
内周面に外輪軌道面を有する外輪と、
前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に転動自在に配置された複数のころと、
を備えるころ軸受であって、
前記内輪の軸方向一端部には、前記内輪と一体である鍔部が形成され、
前記内輪の軸方向他端部には、前記内輪と別体である鍔部材が、軸方向に延びる締結部材により締結され、
前記締結部材は、頭部と、前記頭部から軸方向一端側に延びる軸部と、を有し、
前記締結部材の脱落を防止するスペーサが、前記締結部材の前記頭部と軸方向に対向するように設けられる、
ことを特徴とするころ軸受。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、鍔部材を内輪に締結する締結部材の脱落を防止できるころ軸受及び複列ころ軸受を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る複列円すいころ軸受の断面図である。
図2図2は、図1の複列円すいころ軸受1の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る複列円すいころ軸受の断面図である。図2は、図1の複列円すいころ軸受1の要部拡大図である。
【0011】
図1に示すように、複列円すいころ軸受1は、軸方向(図1および図2の左右方向)に隙間を介して対向配置された一対の円すいころ軸受1A,1Bを含む。以後、図1の左側の円すいころ軸受1Aを第1円すいころ軸受と呼び、図1の右側の円すいころ軸受1Bを第2円すいころ軸受と呼ぶことがある。第1及び第2円すいころ軸受1A,1Bは、軸方向に対称的な構造を有している。
【0012】
第1及び第2円すいころ軸受1A,1Bは、軸方向に延びる軸部材3を、当該軸部材3の径方向外側に隙間を介して配置されたハウジング5に対して回転可能に支持する。第1及び第2円すいころ軸受1A,1Bの間の軸方向隙間には、軸部材3に外嵌された円筒状のスペーサ7が配置される。
【0013】
第1及び第2円すいころ軸受1A、1Bは、軸方向に延びる軸部材3に外嵌する内輪10と、軸部材3の径方向外側に隙間を介して配置されたハウジング5に内嵌する外輪20と、内輪10及び外輪20との間に配置された複数の円すいころ30と、を備える。
【0014】
内輪10は、外周面に円すい状の内輪軌道面11を有する。軸部材3は、第1円すいころ軸受1Aの内輪10の軸方向外側(図1のスペーサ7から離れる側。左側)に径方向外側に向かって突出する凸部3aを有している。第1円すいころ軸受1Aの内輪10は、軸部材3の外周面に嵌合するとともに、上記軸部材3の凸部3aに軸方向に当接して位置決めされる。第2円すいころ軸受1Bの内輪10は、軸部材3の外周面に嵌合するとともに、軸部材3の先端部(図1の右側端部)に固定された別体のフランジ部材4と軸方向に当接して位置決めされる。
【0015】
外輪20は、内周面に円すい状の外輪軌道面21を有する。ハウジング5は、第1及び第2円すいころ軸受1A,1Bの外輪20,20の間において、径方向内側に向かって突出する凸部5aを有している。第1及び第2円すいころ軸受1A,1Bの外輪20,20は、ハウジング5の内周面に嵌合するとともに、上記ハウジング5の凸部5aに軸方向に当接して位置決めされる。
【0016】
複数の円すいころ30は、内輪軌道面11と外輪軌道面21との間に転動自在に配置される。円すいころ30は、内輪軌道面11と外輪軌道面21の間に組み込まれた環状の保持器40によって、周方向に一定の間隔を隔てて保持されている。保持器40は、ピンタイプ保持器であり、一対の円環部41,42と、一対の円環部41,42を締結するピン43と、を有している。
【0017】
なお、保持器40の種類は限定されず、例えば、鋼板製のプレス保持器(かご型保持器)であって、大径リング部と、小径リング部と、大径リング部及び小径リング部を軸方向に連結する複数の柱部と、これら大径リング部と小径リング部と隣り合う柱部との間に画成されたポケット部と、を有するものを適用してもよい。
【0018】
内輪10の軸方向外側端部(スペーサ7に対して遠位側の端部。軸方向一端部。大径側端部。)には、内輪10と一体である鍔部13が形成される。鍔部13は、内輪軌道面11よりも径方向外側に突出し、円すいころ30の軸方向外側への脱落を防止する。鍔部13は内輪10の大鍔を構成する。
【0019】
内輪10の軸方向内側端部(スペーサ7に対して近位側の端部。軸方向他端部。小径側端部。)には、内輪軌道面11よりも軸方向内端側(スペーサ7側)に突出する内輪ボス部15が形成される。
【0020】
図1に示した複列円すいころ軸受1は、以下のように組み立てられる。先ず、左側の第1円すいころ軸受1Aを、軸部材3に対して右側から、凸部3aに突き当たるまで挿入する。次に、軸部材3をハウジング5内に左側から挿入し、軸部材3に外嵌された第1円すいころ1Aをハウジング5の凸部5aに当接させる。続いて、スペーサ7を、軸部材3に対して右側から挿入する。なお、第1円すいころ軸受1Aをハウジング5の凸部に当接させる工程と、スペーサ7を軸部材3に挿入する工程と、の順序は特に限定されない。次に、右側の第2円すいころ軸受1Bを、軸部材3に対して右側から、ハウジング5の凸部5aに突き当たるまで挿入する。そして、軸部材3の先端部(図1の右側端部)に別体のフランジ部材4を固定する。
【0021】
図2には、図1のうち第1円すいころ軸受1Aの内輪10の内輪ボス部15周辺が拡大されて示されている。なお、第1円すいころ軸受1Aの内輪10の内輪ボス部15周辺の構造と、第2円すいころ軸受1Bの内輪10の内輪ボス部15周辺の構造とは、対称的であり同様であるので、後者の構造についての説明は省略する。
【0022】
なお、図2には、内輪軌道面11の軸方向内側端部11aから内輪軌道面11に垂直に延びる仮想平面Aと、軸方向内側端部11aから径方向に延びる仮想平面Bと、が示されている。内輪ボス部15は、これら仮想平面A及びBよりも軸方向内側に突出する。内輪ボス部15は、内輪軌道面11の軸方向内側端部11aから径方向内側に離間した位置から軸方向他端側に向かう凸部であり、したがって、内輪ボス部15と内輪軌道面11の軸方向内側端部11aとの間には段部17が形成される。
【0023】
内輪ボス部15には、内輪10と別体である鋼材或いは樹脂材料からなる鍔部材50が、複数のボルト60により締結される。複数のボルト60は、互いに周方向に所定間隔を介して配置される。なお、本例のボルト60は、六角穴付ボルトであるが、ボルトの種類は特に限定されず、ねじ等の他の種類の締結部材を用いてもよいことは言うまでもない。ボルト60は、頭部61と、頭部61から軸方向一端側に延び、外周面に雄ねじ部が形成された軸部63と、を有する。
【0024】
ボルト60等の締結部材は、軸方向に延び、内輪ボス部15と鍔部材50とを軸方向に締結するので、保持器形態に関わらず、ボルトを締結し易い。また、鍔部材50の着脱を容易に行うことができるので、円すいころ軸受1の組立作業が容易になるとともに、円すいころ軸受1の内部の点検や円すいころ30又は保持器40の交換が容易となる。
【0025】
内輪ボス部15には、内周面に雌ねじ部を有し、軸方向に向かうねじ穴15aが形成されている。ねじ穴15aの雌ねじ部は、軸方向において仮想平面Aと重ならないように形成されることが好ましく、より具体的には、ねじ穴15aの雌ねじ部は、仮想平面Aよりも軸方向内側に配置されることが好ましい。この場合、ねじ穴15aの雌ねじ部に螺合するボルト60の軸部63の雄ねじ部も、軸方向において仮想平面Aと重ならないように配置され、より具体的には、仮想平面Aよりも軸方向内側に配置される。
【0026】
また、より好ましくは、内輪ボス部15のねじ穴15aの雌ねじ部は、軸方向において内輪軌道面11の軸方向内側端部11a(仮想平面B)と重ならないように形成され、より具体的には、内輪軌道面11の軸方向内側端部11a(仮想平面B)よりも軸方向内側に配置される。この場合、ねじ穴15aの雌ねじ部に螺合するボルト60の軸部63の雄ねじ部も、軸方向において内輪軌道面11の軸方向内側端部11a(仮想平面B)と重ならないように配置され、より具体的には、内輪軌道面11の軸方向内側端部11a(仮想平面B)よりも軸方向内側に配置される。
【0027】
このように、ボルト60の軸部63の雄ねじ部が軸方向において内輪軌道面11を重ならないように配置すれば、ボルト締結部が内輪軌道面11の径方向直下に配置されることが回避される。なお、ボルト締結部とは、ねじ穴15aの雌ねじ部と軸部63の雄ねじ部との軸方向における螺合部分を意味し、図2には当該螺合部分の軸方向における長さである螺合長さHが図示されている。このように、ボルト締結部(螺合長さHで示された部分)を仮想平面A及びBと交わらないように配置することで、軸受使用時に軌道面に大荷重が発生した場合であっても、ボルト締結部に高応力が生じることを抑制することができる。
【0028】
ただし、上記記載は、ボルト締結部が軸方向において仮想平面A,Bと重なるような態様を排除するものではない。
【0029】
鍔部材50は、円環部材から構成されてもよく、円環の一部を形成する複数の円環片が周方向に間隔を空けて配置されることにより構成されてもよい。鍔部材50は、内輪ボス部15よりも径方向外側まで延びる円環状の基部51と、基部51の径方向外側端部から軸方向外側に向かって突出する凸部53と、を有する。基部51は、内輪ボス部15と軸方向において当接する。凸部53は、内輪10の段部17に入り込む。
【0030】
図2に示すように、基部51は、軸方向内側面51aから軸方向外側に向かって凹設された凹部51bを有する。凹部51bは、ボルト60の頭部61が着座する着座部として機能する。本例の凹部51bは、基部51の全周に亘って形成され、径方向内側に開口しているが、当該凹部51bの形状は特に限定されない。
【0031】
また、基部51には、当該基部51を軸方向の貫く貫通孔51eが形成される。貫通孔51eは、凹部51bの底面51cから、基部51の軸方向外側面51dまで貫く。貫通孔51eは、内輪ボス部15のねじ穴15aと軸方向に対向する位置に設けられる。したがって、貫通孔51eは、ねじ穴15aと同数設けられる。
【0032】
そして、ボルト60は、基部51の貫通孔51eを通り内輪ボス部15のねじ穴15aに螺合して、軸方向に延び、内輪ボス部15と鍔部材50とを軸方向に締結する。このとき、ボルト60の頭部61は、基部51の凹部51b内に位置し、当該凹部51bの底面51cに着座する。
【0033】
内輪ボス部15に締結された鍔部材50の凸部53は、内輪軌道面11の軸方向内側端部11aよりも径方向外側に位置して円すいころ30と軸方向に対向し、円すいころ30の軸方向内側への脱落を防止する。このように、鍔部材50は、内輪10の小鍔を構成する。
【0034】
第1及び第2円すいころ軸受1A,1Bの間に配置されたスペーサ7は、第1及び第2円すいころ軸受1A,1Bのボルト60,60の脱落を防止するように、ボルト60,60の頭部61,61と軸方向に対向するように設けられる。また、スペーサ7の材料は特に限定されず、例えば鉄系材料や、高力黄銅や樹脂が例示される。
【0035】
スペーサ7によるボルト60の脱落防止効果を高めるために、スペーサ7とボルト60の頭部61との隙間の軸方向長さSは短いことが好ましい。より具体的には、上記隙間の軸方向長さSは、ねじ穴15aの雌ねじ部と軸部63の雄ねじ部との軸方向における螺合長さHよりも、短く設定される(S<H)。図示の例の場合、隙間の軸方向長さSは、第1及び第2円すいころ軸受1A,1Bのボルト60,60の頭部61,61間の軸方向距離Lbと、スペーサ7の軸方向寸法Lsと、の差の二分の一である{S=(Lb-Ls)/2}。
【0036】
このようにS<Hを満たすように設定することにより、万が一ボルト60に緩みが発生し、ボルト60が軸方向内側(スペーサ7側)に移動した場合であっても、ねじ穴15aの雌ねじ部と軸部63の雄ねじ部との螺合が解消する前にボルト60の頭部61がスペーサ7に当接するため、ボルト60が軸方向に脱落することが防止される。
【0037】
さらに、スペーサ7の外径Dkoは、ボルト60のピッチ円直径Dbpよりも大きい(Dko>Dbp)。これにより、万が一ボルト60に緩みが発生し、ボルト60が軸方向内側(スペーサ7側)に移動した場合であっても、ボルト60の頭部61がスペーサ7に確実に当接するため、ボルト60が軸方向に脱落することが防止される。また、スペーサ端面とボルト頭部間の接触による摩耗を抑制することが可能となる。仮にスペーサ7の外径Dkoが、ボルト60のピッチ円直径Dbp以下(Dko≦Dbp)である場合、ボルト60がスペーサ7を径方向外側に乗り越えて脱落してしまう可能性があるので、好ましくない。
【0038】
また、スペーサ7は軸部材3の外周面に嵌合するのであるが、その嵌め合いの関係は限定されず、隙間嵌めであっても、締まり嵌めであっても、中間嵌めであってもよい。例えば、スペーサ7の内径Dkiを軸部材3の外径Dsoよりも小さく設定すれば(Dki<Dso)、外部振動に伴うはめ合い面の摩耗やスペーサ端面とボルト頭部間接触による摩耗を抑制する効果がある。また、スペーサ7の内径Dkiを軸部材3の外径Dsoよりも大きく設定すれば(Dki>Dso)、スペーサの軸からの抜取りを容易にする効果がある。
【0039】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されず、種々変形可能である。例えば、本発明は、円すいころ軸受以外にも円筒ころ軸受等、ころ軸受であれば適用可能である。
【0040】
例えば、上述した例では、内輪10の軸方向他端部には、内輪軌道面11よりも軸方向他端側に突出する内輪ボス部15が形成されていたが、当該内輪ボス部15は必ずしも設けなくても構わない。内輪ボス部15が形成されない場合、上記特許文献1(特開2014-190352号公報)と同様に、内輪10の軸方向他端部(内輪軌道面11の軸方向内側端部11aに隣接する位置)に鍔部材50が配置される。この場合、内輪ボス部15が形成されないので、内輪10は段部17を有さず、鍔部材50は凸部53を有さない。また、ねじ穴15aは、鍔部材50の貫通孔51eと対向する位置において、内輪10の軸方向内側面から、軸方向外側に向かうように形成される。
【0041】
また、上述した例では、鍔部材50は、基部51の軸方向内側面51aから軸方向一方側に向かって凹設され、ボルト60の頭部61が着座する凹部51bを有していたが、鍔部材50には凹部51bが形成されなくても構わない。この場合、貫通孔51eは、基部51の軸方向内側面51aから軸方向外側面51dを貫通するように形成され、ボルト60の頭部61は、基部51の軸方向内側面51aに着座する。この場合も、スペーサ7は、ボルト60の頭部61と軸方向に対向するように設けられる。これにより、万が一ボルト60に緩みが発生し、ボルト60が軸方向に移動した場合であっても、ボルト60の頭部61がスペーサ7に引っかかるため、ボルト60が軸方向に脱落することが防止される。
【0042】
また、上述した例では第1及び第2円すいころ軸受1A,1Bは、軸方向に対称的な構造を有していたが、これら第1及び第2円すいころ軸受1A,1Bのサイズは互いに異なっていても構わない。その場合、スペーサ7は、第1及び第2円すいころ軸受1A,1Bのサイズに合わせて、例えばテーパ形状や段付き形状としてもよい。
【0043】
また、上述した例では、一対の円すいころ軸受1A,1Bとこれらの間に配置されたスペーサ7とを含む複列円すいころ軸受1について説明したが、本願発明の内容は複列ころ軸受に限定されず、通常のころ軸受にも適用可能である。すなわち、スペーサ7は、一対のころ軸受の間に配置される必要はなく、少なくとも一つのころ軸受のボルト(締結部材)の頭部と軸方向に対向するように設けられればよい。このようにスペーサ7が設けられることで、ボルトの脱落を防止することができる。また、この場合も、上述したような各種寸法関係(S<H、Dko>Dbp等)を満たすように設定すれば、より確実にボルトの脱落を防止することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 複列円すいころ軸受(複列ころ軸受)
1A,1B 円すいころ軸受(ころ軸受)
3 軸部材
3a 凸部
5 ハウジング
5a 凸部
7 スペーサ
10 内輪
11 内輪軌道面
11a 軸方向内側端部
13 鍔部
15 内輪ボス部
15a ねじ穴
17 段部
20 外輪
21 外輪軌道面
30 円すいころ(ころ)
40 保持器
41,42 円環部
43 ピン
50 鍔部材
51 基部
51a 軸方向内側面
51b 凹部(着座部)
51c 底面
51d 軸方向外側面
51e 貫通孔
53 凸部
60 ボルト(締結部材)
61 頭部
63 軸部
図1
図2