(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039337
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】棒状化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/02 20060101AFI20240314BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20240314BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20240314BHJP
A61Q 1/10 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/31
A61K8/36
A61Q1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143813
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】591147339
【氏名又は名称】株式会社トキワ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】赤松 芳昇
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AC012
4C083AC242
4C083AC372
4C083AC392
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC912
4C083AD022
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD222
4C083BB14
4C083CC14
4C083DD11
4C083DD21
4C083DD30
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】 使用性及び描きやすさと、濃淡の調整しやすさ、耐衝撃性及び強度との両立を可能とする棒状化粧料を提供すること。
【解決手段】 棒状化粧料は、化粧料組成物から構成される棒状本体部を備え、棒状本体部の内部に、棒状本体部の長手方向に延在し、棒状本体部の一端又は両端で開口する空洞部が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料組成物から構成される棒状本体部を備え、
前記棒状本体部の内部に、前記棒状本体部の長手方向に延在し、前記棒状本体部の一端又は両端で開口する空洞部が設けられている、棒状化粧料。
【請求項2】
化粧料組成物が揮発性成分を含む、請求項1に記載の棒状化粧料。
【請求項3】
前記空洞部が円柱状である、請求項1又は2に記載の棒状化粧料。
【請求項4】
化粧料組成物から構成される棒状本体部を備え、
前記棒状本体部の側面には、前記棒状本体部の長手方向に延在し、前記長手方向と直交する一方向に開口する凹部が、前記棒状本体部の一端又は両端に至るまで設けられている、棒状化粧料。
【請求項5】
化粧料組成物が揮発性成分を含む、請求項4に記載の棒状化粧料。
【請求項6】
前記棒状本体部が、半円柱状の棒状物の側平面に前記凹部が設けられている形状を有し、前記棒状物の長手方向と直交する断面における前記凹部の内面の形状が半円状である、請求項4又は5に記載の棒状化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
アイブロウペンシル等の芯材として棒状化粧料が用いられている(例えば、下記特許文献1及び2を参照)。最近では、芯材の直径が1mm以下のアイブロウペンシルも利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-235885号公報
【特許文献2】特開2022-119019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
棒状化粧料は、細くすると、眉毛が寝にくくなるなどの使用性の向上や、滑らかに塗布できるという描きやすさの向上によって、眉毛1本1本を足すように描くことがしやすくなる一方で、濃淡の調整がしにくく、衝撃等を受けたときに折れや曲がりが生じやすくなる傾向にある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、使用性及び描きやすさと、濃淡の調整しやすさ、耐衝撃性及び強度との両立を可能とする棒状化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る棒状化粧料は、化粧料組成物から構成される棒状本体部を備え、棒状本体部の内部に、棒状本体部の長手方向に延在し、棒状本体部の一端又は両端で開口する空洞部が設けられている。
【0007】
上記の棒状化粧料によれば、使用性及び描きやすさと、濃淡の調整しやすさ、耐衝撃性及び強度とを両立することができる。このような効果が得られる理由として、上記の空洞部を有する棒状本体部は、空洞部が設けられていない場合と比較して、棒状本体部の外径(例えば、最大径)に対する棒状本体部の横断面積(塗布面になる面積)の割合が小さくなることで、機械的強度を確保しつつ、狭い塗布面によって眉毛を梳きながら滑らかに塗布することができ、しかも、適度な外径を確保できることで適度なぼかし感の演出が可能になることが考えられる。
【0008】
また、上記の棒状化粧料は、棒状本体部の横断面積に対する外周の長さ(すなわち、角になる長さ)の割合を大きくすることができることから、角描きのしやすさの点でも優れている。更に、上記の棒状化粧料は、アイブロウペンシルとして用いられる場合、空洞部によって眉毛を梳きながら塗布することができ、眉毛が寝ずに(つぶれずに)メイクアップが可能となる。
【0009】
上記の一態様に係る棒状化粧料は、滑らかな塗布性を得る観点から、化粧料組成物が揮発性成分を含んでもよい。揮発性成分を含む化粧料組成物を眉毛に塗布すると、眉毛が寝やすくなる傾向にあるが、上記の一態様に係る棒状化粧料によれば、眉毛を梳きながら塗布することができることから、眉毛が寝ずに(つぶれずに)メイクアップできるという優れた使用性と、滑らかな塗布性とを両立することができる。
【0010】
上記の一態様に係る棒状化粧料は、製造のしやすさの観点から、上記空洞部が円柱状であってもよい。
【0011】
本発明の別の態様に係る棒状化粧料は、化粧料組成物から構成される棒状本体部を備え、棒状本体部の側面には、棒状本体部の長手方向に延在し、長手方向と直交する一方向に開口する凹部が、棒状本体部の一端又は両端に至るまで設けられている。
【0012】
上記の棒状化粧料によれば、使用性及び描きやすさと、濃淡の調整しやすさ、耐衝撃性及び強度とを両立することができる。このような効果が得られる理由として、上記の凹部を有する棒状本体部は、凹部を有していない場合と比較して、棒状本体部の外径(例えば、最大径)に対する棒状本体部の横断面積(塗布面になる面積)の割合が小さくなること、及び、凹部の側壁によって機械的強度が向上することで、機械的強度を確保しつつ、狭い塗布面によって眉毛を梳きながら滑らかに塗布することができ、しかも、適度な外径を確保できることで適度なぼかし感の演出が可能になることが考えられる。
【0013】
上記の別の態様に係る棒状化粧料は、滑らかな塗布性を得る観点から、化粧料組成物が揮発性成分を含んでもよい。この場合、眉毛が寝ずに(つぶれずに)メイクアップできるという優れた使用性と、滑らかな塗布性とを両立することができる。
【0014】
上記の別の態様に係る棒状化粧料は、棒状本体部が、半円柱状の棒状物の側平面に凹部が設けられている形状を有し、棒状物の長手方向と直交する断面における凹部の内面の形状が半円状であってもよい。この場合、棒状本体部の外面及び凹部の内面の形状が半円柱状となることで、眉毛が寝ずに(つぶれずに)メイクアップできるという使用性が得られやすくなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、使用性及び描きやすさと、濃淡の調整しやすさ、耐衝撃性及び強度との両立を可能とする棒状化粧料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係る棒状化粧料の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示される棒状化粧料の横断面を示す図である。
【
図4】第1実施形態に係る棒状化粧料の別の例の横断面を示す図である。
【
図5】第2実施形態に係る棒状化粧料の一例を示す斜視図である。
【
図7】
図5に示される棒状化粧料の横断面を示す図である。
【
図8】第2実施形態に係る棒状化粧料の別の例の横断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図面を参照しながら本発明に係る棒状化粧料の実施形態について説明する。
【0018】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る棒状化粧料は、化粧料組成物から構成される棒状本体部を備え、棒状本体部の内部に、棒状本体部の長手方向に延在し、棒状本体部の一端又は両端で開口する空洞部が設けられている。
【0019】
図1は、第1実施形態に係る棒状化粧料の一例を示す斜視図である。
図1に示される棒状化粧料10は、化粧料組成物から構成される棒状本体部1を備え、棒状本体部1の内部に、棒状本体部の長手方向(長軸方向)に延在し、棒状本体部の一端で開口する空洞部2が設けられている。また、棒状化粧料10は、棒状本体部1の外形及び空洞部2が円柱状であり、それぞれの円柱の中心軸線が重なっている。
【0020】
図2は、
図1のII-II線に沿った断面図である。
図2に示されるように、棒状化粧料10は、棒状本体部が空洞部のない領域3を有している。この領域3は、例えば、棒状化粧料を軸線方向に繰り出す繰り出し機構を有する容器に収容するときに、棒状化粧料が保持される保持部とすることができる。領域3の長さは、棒状化粧料を収容する容器に応じて適宜設定することができるが、耐衝撃性の観点から、棒状本体部の全長に対して5~40%であってもよく、10~30%であってもよい。棒状化粧料10において、棒状本体部1の長さは、携帯性及び使用回数の観点から、15~100mm、20~50mm、又は25~40mmであってもよい。
【0021】
図3は、棒状化粧料10における空洞部2が設けられている棒状本体部1の横断面を示す図である。棒状化粧料10においては、円柱状の棒状本体部1にそれぞれの中心軸が重なるように円柱状の空洞部2が設けられていることによって、棒状本体部1の厚みを薄く一定にすることができる。
【0022】
棒状本体部1の外形の直径D1は、耐衝撃性及び強度と、製造のしやすさとの両立の観点から、1~10mm、1.5~4.0mm、又は2.0~3.0mmであってもよい。
【0023】
棒状本体部1の内形の直径でもある空洞部2の直径D2は、滑らかさ、濃淡の調整しやすさ、眉毛の梳きやすさの観点から、0.1~4.0mm、0.5~3.0mm、又は1.0~2.0mmであってもよい。
【0024】
棒状本体部1の厚みは、濃淡の付けやすさ、製造のしやすさ、折れ強度の観点から、0.2~5mm、0.25~2.0mm、又は0.3~1.5mmに設定することができる。なお、第1実施形態に係る棒状化粧料において、棒状本体部の厚みとは、外側の側面と内側の側面とを最短で結ぶ距離を意味する。棒状本体部1の場合は、一定の厚みを有している。D1及びD2は、棒状本体部1の厚みが上記範囲となるように設定することができ、(D1-D2)/2が上記範囲を満たしていてもよい。
【0025】
棒状化粧料10は、濃淡の付けやすさの観点から、棒状本体部1の横断面積S1と空洞部2の横断面積S2との比S1/S2が、0.5~3.5、1.0~3.0、又は1.5~2.5であってもよい。
【0026】
第1実施形態に係る棒状化粧料においては、棒状本体部の外形が、横断面の形状で、円、楕円、星形、扇形状、三角形、正方形、矩形、又は、六角形等の多角形(角の数5以上)若しくはその扁平形であってもよく、空洞部の形状が、横断面の形状で、円、楕円、星形、扇形状、三角形、正方形、矩形、又は多角形(角の数5以上)若しくはその扁平形であってもよく、これらを適宜組み合わせることができる。
【0027】
第1実施形態に係る棒状化粧料においては、空洞部が棒状本体部の外形の中心(中央部)に配置されていてもよく、中心(中央部)から外れて配置されていてもよい。
【0028】
濃淡の付けやすさの観点から、棒状本体部の外形及び内形(空洞部の形状)は、それぞれ中心軸線に対して点対称であってもよく、それぞれの中心軸線が重なっていてもよい。
【0029】
棒状本体部の外形及び内形は、濃淡の付けやすさの観点から、それぞれ円柱状、四角形、五角形、又は六角形であってもよく、描きやすさの観点から、両方が同じ形状(特には、円柱状又は多角形)であってもよい。
【0030】
図4は、第1実施形態に係る棒状化粧料の別の例の横断面を示す図である。
図4の(a)は、五角柱状の外形を有する棒状本体部1aと、円柱状の空洞部2aとを備える棒状化粧料の横断面を示し、(b)は、六角柱状の外形を有する棒状本体部1bと、円柱状の空洞部2bとを備える棒状化粧料の横断面を示し、(c)は、五角柱状の外形を有する棒状本体部1cと、五角柱状の空洞部2cとを備える棒状化粧料の横断面を示し、(d)は、六角柱状の外形を有する棒状本体部1dと、六角柱状の空洞部2dとを備える棒状化粧料の横断面を示す。
【0031】
第1実施形態に係る棒状化粧料において、棒状本体部の横断面における外形が円である場合、その直径は、上述したD1と同様の観点から同様の範囲であってもよい。棒状本体部の横断面における外形が円以外である場合、その最大径が、上述したD1と同様の観点から同様の範囲であってもよい。
【0032】
第1実施形態に係る棒状化粧料において、空洞部の横断面における形状が円である場合、その直径は、上述したD2と同様の観点から同様の範囲であってもよい。空洞部の横断面における形状が円以外である場合、その最大径が、上述したD2と同様の観点から同様の範囲であってもよい。
【0033】
第1実施形態に係る棒状化粧料において、棒状本体部の厚みは、上述した棒状本体部1における厚みと同様の観点から同様の範囲であってもよい。
【0034】
第1実施形態に係る棒状化粧料は、棒状本体部の横断面積S1と空洞部の横断面積S2との比S1/S2が、上述した棒状本体部1における比S1/S2と同様の観点から同様の範囲であってもよい。
【0035】
第1実施形態に係る棒状化粧料において、棒状本体部の長さは、上述した棒状本体部1の長さと同様の観点から同様の範囲であってもよい。
【0036】
棒状本体部を構成する化粧料組成物としては、(A)油性成分(以下、(A)成分という場合もある。)及び(B)粉体成分(以下、(B)成分という場合もある。)を含むものが挙げられる。
【0037】
(A)成分としては、ワックス類、その他の油分が挙げられる。ワックス類として、硬化ヒマシ油及び水添ダイズ油等の硬化油、固形パラフィン、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、モクロウ、セレシン、コメヌカロウ、合成炭化水素ワックス(合成ワックス)、ワセリン、ラノリン及びラノリン誘導体、並びに、(アクリレーツ/アクリル酸ステアリル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマー等のポリマー、などを使用することが可能である。また、その他の油分として、ステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソステアリン酸、ベヘン酸、リノール酸、リノレイン酸等の高級脂肪酸(炭化水素基の炭素数は16~22であってもよい)、水添ポリイソブテン(流動イソパラフィン)、流動パラフィン、スクワラン、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイルアルコール、オクチルドデカノール、2-エチルヘキサン酸セチル、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリル(トリエチルヘキサノイン)、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリオクタン酸トリメチロールプロパン、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、ステアリン酸イソセチル、リンゴ酸ジイソステアリル、脂肪酸(C18-36)グリコール、トリ酢酸テトラステアリン酸スクロース、セスキイソステアリン酸ソルビタン、オリーブ油、メチルポリシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、メチルトリメチコン、メチルフェニルポリシロキサン(ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン)及びデカメチルシロクロペンタシロキサン等を使用することができる。
【0038】
(A)成分は、一種を単独で又は二種以上組み合わせて用いることができる。
【0039】
化粧料組成物は、(A)成分として、モクロウ、高級脂肪酸及び硬化油のうちの一種以上を含んでいてもよく、この場合、押出成型にも適する。
【0040】
化粧料組成物における(A)成分の含有量は、組成物全量を基準として、10~90質量%であってもよく、20~80質量%であってもよく、30~70質量%であってもよい。
【0041】
化粧料組成物は、滑らかな塗布性を得る観点から、(A)成分として、揮発性成分を含んでもよい。この場合、眉毛が寝ずに(つぶれずに)メイクアップできるという優れた使用性と、滑らかな塗布性とを両立することができる。なお、本明細書において揮発性成分とは、1気圧(101.325kPa)における沸点が250℃以下の成分を意味する。
【0042】
揮発性成分としては、ジメチコン、メチルトリメチコン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン類、イソドデカン、ドデカン、(C9-12)アルカン、軽質イソパラフィン、ジシロキサン、トリシロキサン等の炭化水素類の油性成分が挙げられる。
【0043】
化粧料組成物における揮発性成分(揮発性の油性成分)の含有量は、組成物全量を基準として、0.5~40質量%であってもよく、5~25質量%であってもよく、10~20質量%であってもよい。
【0044】
(B)成分としては、着色顔料等の色材、体質顔料などが挙げられる。これらの顔料としては、マイカ、タルク、セリサイト、無水ケイ酸、硫酸バリウム、合成樹脂系パウダー、有機顔料、無機顔料、パール顔料、カルミン等の天然色素等を使用することが可能である。
【0045】
(B)成分は、一種を単独で又は二種以上組み合わせて用いることができる。
【0046】
化粧料組成物における(B)成分の含有量は、組成物全量を基準として、10~90質量%であってもよく、20~80質量%であってもよく、30~70質量%であってもよい。
【0047】
化粧料組成物には、上述した成分の他にも、防腐剤、界面活性剤、酸化防止剤、増粘剤、美白剤、皮膚保護剤、皮膚軟化剤、皮膚緩和剤、抗炎症剤、角質保護剤などを使用目的に関わる適宜添加することが可能である。
【0048】
第1実施形態に係る棒状化粧料は、例えば、以下の手順で製造することができる。先ず、上述した油性成分、粉体成分及び必要に応じてその他の成分を混合することにより化粧料組成物を調製する。調製方法としては、例えば、油性成分及び必要に応じてその他の成分を混合し、加熱溶解した後、粉体成分を混合し、得られた混合物を3本ロール機又は攪拌機で均一分散させてもよい。次に、化粧料組成物を、金型に溶融充填し、固化することにより棒状化粧料を得ることができる。なお、化粧料組成物の固化は、放冷又は冷却によって行うことができる。また、成型後の棒状化粧料を熱処理してもよい。空洞部が棒状本体部の両端に至るまで設けられている場合、中空ダイス等を用いて化粧料組成物を押出成型することにより、棒状化粧料を得てもよい。更に、別の方法として、目的とする棒状化粧料を分割した形状を有する棒状化粧料(例えば、後述する第3実施形態に係る棒状化粧料)を2つ作成し、これらを接着することにより、棒状化粧料を作製してもよい。分割した形状を有する棒状化粧料は、金型充填又は押出成型などの方法により作製することができる。分割した形状を有する棒状化粧料を接着する方法としては、例えば、圧着、糊剤の使用等が挙げられる。
【0049】
金型を用いる場合は、例えば、空洞部に対応するコアピンがセットされた金型を用いることができる。このような金型によれば、化粧料組成物を圧入し、固化した後、コアピンを抜き取ることで、空洞部が設けられた棒状化粧料を成型することができる。コアピンを抜き取るときの金型温度は、25℃以下であってもよい。
【0050】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る棒状化粧料は、化粧料組成物から構成される棒状本体部を備え、棒状本体部の側面には、棒状本体部の長手方向に延在し、長手方向と直交する一方向に開口する(或いは、棒状本体部の内側に凹んでいる)凹部が、棒状本体部の一端又は両端に至るまで設けられている。
【0051】
図5は、第2実施形態に係る棒状化粧料の一例を示す斜視図である。
図5に示される棒状化粧料20は、化粧料組成物から構成される棒状本体部21を備え、棒状本体部21の側面には、棒状本体部21の長手方向に延在し、長手方向と直交する一方向に開口する凹部22が、棒状本体部の一端に至るまで設けられている。
【0052】
図6は、
図5のVI-VI線に沿った断面図である。
図6に示されるように、棒状化粧料20は、棒状本体部が凹部のない領域23を有している。この領域23は、例えば、棒状化粧料を軸線方向に繰り出す繰り出し機構を有する容器に収容するときに、棒状化粧料が保持される保持部とすることができる。領域23の長さは、棒状化粧料を収容する容器に応じて適宜設定することができるが、耐衝撃性の観点から、棒状本体部の全長に対して5~40%であってもよく、10~30%であってもよい。棒状化粧料20において、棒状本体部21の長さは、携帯性及び使用回数の観点から、15~100mm、20~50mm、又は25~40mmであってもよい。
【0053】
図7は、棒状化粧料20における凹部22が設けられている棒状本体部21の横断面を示す図である。棒状化粧料20においては、棒状本体部21が、半円柱状の棒状物の側平面に凹部22が設けられている形状を有し、棒状物の長手方向と直交する断面における凹部22の内面の形状が半円状であり、それぞれの半円の中心が重なっていることで、棒状本体部21の厚みを薄く一定にすることができる。なお、第2実施形態及び後述する第3実施形態に係る棒状化粧料において、棒状本体部の厚みとは、凹部の内面と、この内面と対向する棒状本体部の側面とを最短で結ぶ距離を意味する。
【0054】
棒状化粧料20は、上述した棒状化粧料10を、空洞部2の開口面積を2等分にする長手方向に平行な平面によって2分割したときの一方の形状を有するものでもある。第2実施形態に係る棒状化粧料は、上記の平面が空洞部の中心を通っていてもよいが、空洞部の中心を通らなくてもよい。また、第2実施形態に係る棒状化粧料は、棒状本体部の厚みが一定でなくてもよい。
【0055】
棒状本体部21及び凹部22のサイズについては、半円柱状である棒状物における半円の直径を上述したD1と同じ範囲に設定することができ、内面が半円柱状である凹部における半円の直径を上述したD2と同じ範囲に設定することができる。
【0056】
棒状本体部21の厚みは、上述した棒状本体部1の厚みと同じ範囲に設定することができる。
【0057】
棒状化粧料20は、濃淡の付けやすさの観点から、棒状本体部21の横断面積S21と、凹部22における内面の両端部を結んだ平面と内面とで囲まれた部分の横断面積S22との比S21/S22が、0.5~3.5、1.5~3.0、又は2.0~2.5であってもよい。
【0058】
第2実施形態及び後述する第3実施形態に係る棒状化粧料においては、棒状本体部の外形が、横断面の形状で、半円、半楕円、半星形、半扇形状、矩形、又は多角形(角の数5以上)であってもよく、凹部の内面の形状が、横断面の形状で、半円、半楕円、半星形、半扇形状、矩形、又は多角形(角の数5以上)であってもよく、これらを適宜組み合わせることができる。なお、棒状本体部の外形とは、凹部における内面の両端部を結んだ平面と、棒状本体部の側面における凹部の内面以外の面とを結んだ形状を指し、凹部の内面の形状とは、凹部における内面と、内面の両端部を結んだ平面とを結んだ形状を指す。
【0059】
棒状本体部の外形及び凹部の内面の形状は、濃淡の付けやすさ、耐衝撃性の観点から、それぞれ横断面の形状で、半円、又は多角形であってもよく、濃淡の付けやすさ、使用性の観点から、両方が同じ形状(特には、半円又は多角形)であってもよい。
【0060】
図8は、第2実施形態に係る棒状化粧料の別の例の横断面を示す図である。
図8の(a)は、横断面が矩形の外形を有する棒状本体部21aと、横断面が矩形の内面形状を有する凹部22aとを備える棒状化粧料の横断面を示し、(b)は、横断面が半六角形の外形を有する棒状本体部21bと、横断面が半円の内面形状を有する凹部22bとを備える棒状化粧料の横断面を示す。
【0061】
第2実施形態に係る棒状化粧料において、棒状本体部の横断面における外形が半円である場合、その直径は、上述したD1と同様の観点から同様の範囲であってもよい。棒状本体部の横断面における外形が半円以外である場合、その最大径が、上述したD1と同様の観点から同様の範囲であってもよい。
【0062】
第2実施形態に係る棒状化粧料において、凹部の横断面における内面形状が半円である場合、その直径は、上述したD2と同様の観点から同様の範囲であってもよい。凹部の横断面における内面形状が半円以外である場合、その最大径が、上述したD2と同様の観点から同様の範囲であってもよい。
【0063】
第2実施形態に係る棒状化粧料において、棒状本体部の厚みは、製造のしやすさ、折れ強度の観点から、最大の厚みが、0.5~6.0mm、1.0~4.0mm、又は1.5~3.0mmであってもよく、機械的強度、製造のしやすさの観点から、最小の厚みが、0.5~6.0mm、1.0~4.0mm、又は1.5~3.0mmであってもよい。
【0064】
第2実施形態に係る棒状化粧料は、使用性、製造のしやすさの観点から、棒状本体部の横断面積S21と、凹部における内面の両端部を結んだ平面と内面とで囲まれた部分の横断面積S22との比S21/S22が、0.5~3.5、1.5~3.0、又は2.0~2.5であってもよい。
【0065】
第2実施形態に係る棒状化粧料は、耐衝撃性の観点から、凹部が設けられている棒状本体部の横断面における棒状本体部の外周の全長T(凹部の内面も含む)に対する凹部の内面の長さIの比T/Iが、1.5~5.0、2.0~4.5、又は2.5~4.0であってもよい。
【0066】
第2実施形態に係る棒状化粧料において、棒状本体部の長さは、耐衝撃性の観点から、15~100mm、20~50mm、又は25~40mmであってもよい。
【0067】
第2実施形態に係る棒状化粧料において、棒状本体部は、上述した化粧料組成物から構成することができる。
【0068】
第2実施形態に係る棒状化粧料は、例えば、以下の手順で製造することができる。先ず、上述した油性成分、粉体成分及び必要に応じてその他の成分を混合することにより化粧料組成物を調製する。調製方法としては、例えば、油性成分及び必要に応じてその他の成分を混合し、加熱溶解した後、粉体成分を混合し、得られた混合物を3本ロール機又は攪拌機で均一分散させてもよい。次に、化粧料組成物を、金型に溶融充填し、固化することにより、棒状化粧料を得ることができる。凹部が棒状本体部の両端に至るまで設けられている場合、化粧料組成物を押出成型することにより、棒状化粧料を得てもよい。
【0069】
化粧料組成物の固化は、放冷又は冷却によって行うことができる。また、成型後の棒状化粧料を熱処理してもよい。
【0070】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る棒状化粧料は、化粧料組成物から構成される棒状本体部を備え、棒状本体部が、一端又は両端で開口する空洞部が長手方向に延在して設けられている棒状物を、開口面積を2等分にする長手方向に平行な平面によって2分割したときの一方の形状を有する。
【0071】
上記の棒状化粧料によれば、使用性及び描きやすさと、濃淡の調整しやすさ、耐衝撃性及び強度とを両立することができる。すなわち、上記の棒状本体部は、その長手方向に延在する凹部を有することができ、そのような凹部を有していない場合と比較して、棒状本体部の外径(例えば、最大径)に対する棒状本体部の横断面積(塗布面になる面積)の割合が小さくなること、及び、凹部の側壁によって機械的強度が向上することで、機械的強度を確保しつつ、狭い塗布面によって眉毛を梳きながら滑らかに塗布することができ、しかも、適度な外径を確保できることで適度なぼかし感の演出が可能になる。
【0072】
上記棒状物は、上述した第1実施形態に係る棒状化粧料における棒状本体部と同様の形状を有することができる。棒状本体部は、上述した化粧料組成物から構成することができる。
【0073】
図5に示される棒状化粧料20は、第3実施形態に係る棒状化粧料の一例でもある。すなわち、棒状化粧料20は、上述した棒状化粧料10を、空洞部2の開口面積を2等分にする長手方向に平行な平面によって2分割したときの一方の形状を有する。
【0074】
第3実施形態に係る棒状化粧料においては、上記空洞部が円柱状であってもよい。この場合、凹部の内面の形状が半円柱状となることで、眉毛が寝ずに(つぶれずに)メイクアップできるという使用性が得られやすくなる。
【0075】
第3実施形態に係る棒状化粧料は、上述した第2実施形態に係る棒状化粧料の一態様でもあり、第2実施形態に係る棒状化粧料の製造方法と同様にして作製することができる。
【0076】
上述した第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態に係る棒状化粧料は、アイブロウペンシル、ペンシルアイライナー、アイシャドウスティック、スティックコンシーラーとして好適に用いられる。また、本実施形態の棒状化粧料は、棒状の化粧料を繰り出して使用するペンシル型化粧製品に用いることができる。
【実施例0077】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施例により本発明の技術範囲が限定されるものではない。なお、表中の数値は、化粧料基材全量を基準とする含有量(質量%)を示す。
【0078】
実施例に先立ち、各実施例で採用した評価方法を説明する。
【0079】
<描きやすさの評価>
化粧品評価専門パネル5名に、繰り出し式ペンシル容器に芯材として装填した棒状化粧料について、芯の天面又は側面を眉毛部分の皮膚に当てながら塗布したときに、滑らかに塗布できるかを評価してもらった。なお、描きやすさの評価は、下記の評価基準に従って5段階評価を行いサンプル毎に評点を付し、更に全パネルの評点の合計点を下記の判定基準に従って判定した。
[評点:評価基準]
5点:非常に良好
4点:良好
3点:普通
2点:やや不良
1点:不良
[判定基準(評点の合計点)]
◎:20以上
○:15以上20未満
×:15未満
【0080】
<使用性の評価>
化粧品評価専門パネル5名に、繰り出し式ペンシル容器に芯材として装填した棒状化粧料について、芯の天面又は側面を眉毛部分の皮膚に当てながら塗布したときに、眉毛が寝ずに塗布できるかを評価してもらった。なお、使用性の評価は、下記の評価基準に従って5段階評価を行いサンプル毎に評点を付し、更に全パネルの評点の合計点を下記の判定基準に従って判定した。
[評点:評価基準]
5点:非常に良好
4点:良好
3点:普通
2点:やや不良
1点:不良
[判定基準(評点の合計点)]
◎:20以上
○:15以上20未満
×:15未満
【0081】
<濃淡の調整しやすさの評価>
化粧品評価専門パネル5名に、繰り出し式ペンシル容器に芯材として装填した棒状化粧料について、芯の天面又は側面を眉毛部分の皮膚に当てながら塗布したときに、濃淡の調整しやすさを評価してもらった。なお、濃淡の調整しやすさの評価は、下記の評価基準に従って5段階評価を行いサンプル毎に評点を付し、更に全パネルの評点の合計点を下記の判定基準に従って判定した。
[評点:評価基準]
5点:非常に良好
4点:良好
3点:普通
2点:やや不良
1点:不良
[判定基準(評点の合計点)]
◎:20以上
○:15以上20未満
×:15未満
【0082】
<耐衝撃性の評価>
成型した棒状化粧料を繰り出し式ペンシル容器に装着し、25℃にて24時間静置後、70cmの高さからの水平落下を繰り返した。落下毎に、落下後の棒状化粧料の外観を目視にて確認し、下記の評価基準で耐衝撃性を評価した。
[評価基準]
〇:水平落下を5回行った後でも、折れ、又は、容器から繰り出し不能な曲がりが見られない
×:水平落下を1~4回行った後に、折れ、又は、容器から繰り出し不能な曲がりが見られた
【0083】
<折れ強度の測定>
成型した棒状化粧料について、レオメーター(不動工業株式会社製)を用いて、25℃で、支点間距離20mmにて支持された棒状化粧料の中心に2mm/minの速度で荷重を加えたときの折損荷重を測定した。N=5で測定し、その平均値を求めた。
【0084】
<棒状化粧料の作製>
(実施例1~2及び比較例1~3)
下記に示す成分1~成分8を95~105℃で加熱溶解した混合物に、成分9~成分10を混合し、3本ロールを用いて均一に分散させた。この分散物に、成分11~12を更に混合し、分散することにより、下記の組成(質量%)を有する化粧料組成物を調製した。
【0085】
(成分) (配合割合(質量%))
1. 合成ワックス 8
2. カルナウバロウ 3
3. 脂肪酸(C18-36)グリコール 3
4. (アクリレーツ/アクリル酸ステアリル/
メタクリル酸ジメチコン)コポリマー 1
5. 水添ポリイソブテン 1
6. リンゴ酸ジイソステアリル 2
7. ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 3
8. 酸化防止剤 0.04
9. 色材 12.9
10.体質顔料 25
11.トリメチルシロキシケイ酸 21
12.メチルトリメチコン 20.06
【0086】
次に、化粧料組成物を、コアピンがセットされた所定の金型に充填し、固化した後、コアピンを抜き取ることにより、表1に示される外形を有する本体部と内面形状を有する空洞部とを備える棒状化粧料を成型した。なお、空洞部は、本体部の全長(34.5mm)にわたって延在するように(本体部の両端が開口するように)設けた。
【0087】
【0088】
(実施例3)
下記に示す成分1~成分8を95~105℃で加熱溶解した混合物に、成分10~成分11を混合し、3本ロールを用いて均一に分散することにより、下記の組成(質量%)を有する化粧料組成物を調製した。
【0089】
(成分) (配合割合(質量%))
1. ベヘン酸 15
2. モクロウ 8
3. 水添ヒマシ油 4
4. トリ酢酸テトラステアリン酸スクロース 5
5. ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/
ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル 5
6. トリエチルヘキサノイン 5
7. トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル 2
8. セスキイソステアリン酸ソルビタン 1
9. 酸化防止剤 0.04
10.色材 24.96
11.体質顔料 30
【0090】
次に、化粧料組成物を、中空ダイスを用いて押出成型することにより、円柱状の外形(直径:3mm)を有する本体部と円柱状の内面形状(直径:2.0mm)を有する空洞部とを備える棒状化粧料を成型した。なお、空洞部は、本体部の全長(34.5mm)にわたって延在するように(本体部の両端が開口するように)設けた。
【0091】
<評価>
得られた棒状化粧料について、上記と同様の評価を行ったところ、描きやすさは「〇」、使用性は「◎」、濃淡の調整しやすさは「◎」、耐衝撃性は「〇」、折れ強度は2.00Nであった。