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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039351
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】仕切り部材取付け構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 7/08 20060101AFI20240314BHJP
   B60R 5/04 20060101ALN20240314BHJP
【FI】
B60R7/08 Z
B60R5/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143842
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】野村 秀政
【テーマコード(参考)】
3D022
【Fターム(参考)】
3D022BA07
3D022BA17
3D022BB04
3D022BC06
3D022BC15
3D022CB03
3D022CB05
3D022CC13
3D022CC26
3D022CD09
(57)【要約】
【課題】仕切り部材の取付け、取り外し、取り外し後の保管や構成部品の分解作業などの容易・迅速化、ならびに仕切り部材の取付け姿勢の安定化などを適切に図ることが可能な仕切り部材取付け構造を提供する。
【解決手段】仕切り部材取付け構造Aは、仕切り部材1の両端寄り領域のそれぞれに第1の孔部11およびこの第1の孔部11よりも仕切り部材1の横幅方向外方側に位置する第2の孔部12が設けられた構成であり、また仕切り部材1を取付けるための少なくとも左右一対のバンド3の一端部側は、第1および第2の孔部11,12に一連に通され、各バンド3のうち、第1および第2の孔部11,12の相互間に位置する内寄り領域Sa、および第2の孔部12よりも仕切り部材1の横幅方向外方側に位置する外寄り領域Sbは、仕切り部材1の表面1c側と裏面1d側とに分かれた互い違いの配置とされ、仕切り部材1をその表裏両側から挟むように設定可能である。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレート状またはシート状の仕切り部材と、
この仕切り部材の左右横幅方向の両端寄り領域に、一端部側が取付けられる少なくとも左右一対のバンドと、
を備えており、
前記一対のバンドの他端部側が、前記仕切り部材の左右両側方に位置するバンド用取付け対象に取付けられることにより、前記仕切り部材を車室内において上下高さ方向に起立した姿勢に支持可能とされている、仕切り部材取付け構造であって、
前記仕切り部材の前記両端寄り領域のそれぞれには、前記各バンドの一端部側が一連に通される孔部として、第1の孔部およびこの第1の孔部よりも前記仕切り部材の横幅方向外方側に位置する第2の孔部が設けられており、
前記各バンドのうち、前記第1および第2の孔部の相互間に位置する内寄り領域、および前記第2の孔部よりも前記仕切り部材の横幅方向外方側に位置する外寄り領域は、前記仕切り部材の表面側と裏面側とに分かれた互い違いの配置とされ、前記仕切り部材をその表裏両側から挟むように設定可能な構成とされていることを特徴とする、仕切り部材取付け構造。
【請求項2】
請求項1に記載の仕切り部材取付け構造であって、
前記第1および第2の孔部として、
前記仕切り部材の左右横幅方向の両端寄り領域の上側部分およびその下方に位置する下側部分にそれぞれ設けられた左右一対の上側の第1および第2の孔部と、左右一対の下側の第1および第2の孔部と、を備えており、
前記バンドとして、
前記一対の上側の第1および第2の孔部に通される左右一対の上側のバンドと、
前記一対の下側の第1および第2の孔部に通される左右一対の下側のバンドと、を備えており、
前記一対の上側のバンドおよび前記一対の下側のバンドのそれぞれの中心延長線は、前記仕切り部材の前記横幅方向の中央部で交差するように設定可能な構成とされている、仕切り部材取付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両に適用される仕切り部材取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
仕切り部材取付け構造の具体例として、特許文献1~3に記載された構造がある。
この構造においては、たとえば略矩形のプレート状の仕切り部材と、この仕切り部材を支持する複数のバンドと、が具備されている。複数のバンドのそれぞれの一端部は、仕切り部材の四隅部分のそれぞれに取付けられ、かつ他端部は、車室の適当な箇所にフック部材などを用いて取付けられている。このことにより、仕切り部材は、複数のバンドにより支持され、車室の所定箇所に上下高さ方向に起立した姿勢に設定されている。仕切り部材は、たとえば車室の後部領域の荷室に載せられた荷物の移動を抑制し、荷物がリヤシートに衝突すること、あるいはバックドアを開けた際に荷物が車外に落ちることを阻止するラゲージフェンスとして役立つ。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき余地があった。
【0004】
すなわち、仕切り部材に対する各バンドの取付けは、たとえば仕切り部材に設けられた1つの孔部に各バンドの一端部を通すだけ、またはこれに近い手段により行なわれているに過ぎない。このため、バンドと仕切り部材との相対的な位置ずれは生じ易く、バンドによって仕切り部材の揺れを抑える効果などは乏しいものとなっている。その結果、仕切り部材を上下高さ方向に起立した姿勢で所望の位置に安定させて取付ける作業は、さほど容易ではなく、この点において改善すべき余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-108790号公報
【特許文献2】特開2009-280197号公報
【特許文献3】実開昭63-144330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、仕切り部材の取付け、取り外し、取り外し後の保管や構成部品の分解作業などの容易・迅速化、ならびに仕切り部材の取付け姿勢の安定化などを適切に図ることが可能な仕切り部材取付け構造を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明により提供される仕切り部材取付け構造は、プレート状またはシート状の仕切り部材と、この仕切り部材の左右横幅方向の両端寄り領域に、一端部側が取付けられる少なくとも左右一対のバンドと、を備えており、前記一対のバンドの他端部側が、前記仕切り部材の左右両側方に位置するバンド用取付け対象に取付けられることにより、前記仕切り部材を車室内において上下高さ方向に起立した姿勢に支持可能とされている、仕切り部材取付け構造であって、前記仕切り部材の前記両端寄り領域のそれぞれには、前記各バンドの一端部側が一連に通される孔部として、第1の孔部およびこの第1の孔部よりも前記仕
切り部材の横幅方向外方側に位置する第2の孔部が設けられており、前記各バンドのうち、前記第1および第2の孔部の相互間に位置する内寄り領域、および前記第2の孔部よりも前記仕切り部材の横幅方向外方側に位置する外寄り領域は、前記仕切り部材の表面側と裏面側とに分かれた互い違いの配置とされ、前記仕切り部材をその表裏両側から挟むように設定可能な構成とされていることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、仕切り部材を支持する各バンドは、仕切り部材の第1および第2の孔部に一連に通され、各バンドの所定の内寄り領域および外寄り領域は、仕切り部材の表面側と裏面側とに分かれた互い違いの配置とされて、仕切り部材をその表裏両側から挟むように設定可能である。このため、仕切り部材に設けられた1つの孔部に各バンドの一端部を通すだけであった従来技術と比較すると、バンドと仕切り部材との密接関連性を強めて、これらの相対的な位置ずれを生じ難くし、バンドによって仕切り部材の揺れなどを適切に抑える作用を生じさせることが可能となる。その結果、仕切り部材を上下高さ方向に起立した姿勢で所望の位置に安定させて取付ける作業の容易化、迅速化を図ることが可能となる。また、仕切り部材の取付け状態の安定化も図られる。
バンドの一部によって仕切り部材をその表裏両側から挟むように設定するための手段として、第1および第2の孔部に、バンドを一連に通すだけでよいため、その作業は容易である。また、ユーザがバンドを第1および第2の孔部に一旦通した後に、このバンドからユーザが手を離したとしても、バンドが仕切り部材から容易に脱落しないようにできるなどの利点も得られる。
さらに、全体の構成は簡易であり、従来技術と比較として、重量や製造コストの増加を生じない、または殆ど生じないものとすることが可能である。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記第1および第2の孔部として、前記仕切り部材の左右横幅方向の両端寄り領域の上側部分およびその下方に位置する下側部分にそれぞれ設けられた左右一対の上側の第1および第2の孔部と、左右一対の下側の第1および第2の孔部と、を備えており、前記バンドとして、前記一対の上側の第1および第2の孔部に通される左右一対の上側のバンドと、前記一対の下側の第1および第2の孔部に通される左右一対の下側のバンドと、を備えており、前記一対の上側のバンドおよび前記一対の下側のバンドのそれぞれの中心延長線は、前記仕切り部材の前記横幅方向の中央部で交差するように設定可能な構成とされている。
【0011】
このような構成によれば、一対ずつの上側のバンドおよび下側のバンドを利用し、仕切り部材を適切に支持することが可能である。ここで、上側のバンドおよび下側のバンドのそれぞれの中心延長線は、仕切り部材の横幅方向の中央部で交差しているため、仕切り部材が前側または後側に倒れるように回転する現象を生じ難くすることが可能である。したがって、仕切り部材の取付け状態をより安定させることができる。
【0012】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る仕切り部材取付け構造の一例を示す要部概略斜視図(車両の斜め上後方から視た図)である。
図2図1の概略正面図(車両後方側から視た図)である。
図3】(a)は、図2の要部拡大正面図であり、(b)は、(a)の平面断面図である。
図4図2の分解概略正面図である。
図5】(a)は、図1図4に示された連結支持部材の正面図であり、(b)は、その平面断面図である。
図6】(a)は、図1図4に示されたバンドの正面図であり、(b)は、その平面断面図である。
図7】(a),(b)は、図1図4に示した本発明の実施形態との対比例を模式的に示す説明図である。
図8】本発明の他の例を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の仕切り部材取付け構造Aは、自動車などの車両の車室に搭載されたリヤシート9の後側に、仕切り部材1を上下高さ方向に起立した姿勢で取付けるための構造である。リヤシート9の後方には、バックドア開口部20から荷物の積み降ろしが可能な荷室21が設けられており、仕切り部材1は、荷室21に載せられた荷物の移動を規制するのに利用される。
【0016】
仕切り部材取付け構造Aは、図1図4に示すように、仕切り部材1に加え、複数(計4つ)のバンド3、およびこれら複数のバンド3の連結対象である連結支持部材4を備えている。
【0017】
仕切り部材1は、たとえば樹脂製プレートであり、正面視の基本形状は、略矩形状である。この仕切り部材1の上側隅部、つまり左右横幅方向の両端寄り領域の上側部分1a、およびその下方に位置する所定の下側部分1bのそれぞれには、第1および第2の孔部11,12が対をなして設けられている。このため、第1および第2の孔部11,12としては、計4対がある。より具体的には、上側部分1aに位置する左右一対の上側の第1および第2の孔部11,12と、下側部分1bに位置する左右一対の下側の第1および第2の孔部11,12とがある。
【0018】
各対の第1および第2の孔部11,12は、たとえば長孔状であり、かつ第2の孔部12は、第1の孔部11よりも仕切り部材1の横幅方向外方側に位置している。ただし、第2の孔部12は、第1の孔部11よりも高い配置とされ、図4に示すように、複数対の第1および第2の孔部11,12の中心延長線ELは、仕切り部材1の横幅方向の中央部(中心線CLの位置)で交差する構成とされている。
中心延長線ELが、仕切り部材1の中心辺りで交差することに基づき、仕切り部材1の所定箇所への取付け作業時の位置決めが容易となる。計4つのバンド3を1つずつ順番に車両の所定箇所に取付ける場合に、対角の取付け位置にテンションをかけることで、仕切り部材1をほぼ狙った場所に配置することが可能である。その後、残りの対角にあるバンド3を取付け、テンションをかけることで、仕切り部材1を所望の取付け目標の位置に正確に取付けることが可能である。
【0019】
図3および図6によく表われているように、バンド3は、たとえば可撓性を有する帯状のバンド本体30、このバンド本体30の一端部に取付けられたストッパ部材31、バンド本体30の他端部に取付けられたプラグ型のバックル32を備えている。バックル32は、後述するソケット型のバックル41と対をなす従来既知のサイドリリースタイプのバックルである。このバックル32は、バンド本体30の一部を挟み込んでバンド本体30に取付けられる方式であり、その挟み込み位置を変更することにより、バンド3のストッパ部材31からバックル32までの長さ調節が可能である。
【0020】
バンド3は、図3によく表われているように、第1および第2の孔部11,12に一連に通されている。ストッパ部材31は、第1の孔部11よりも縦横の幅が大きく、第1の
孔部11を通過することなく、第1の孔部11の周縁部に係止している。
バンド本体30には、第1および第2の孔部11,12の相互間に位置する内寄り領域Saと、第2の孔部12よりも仕切り部材1の横幅方向外方側に位置する外寄り領域Sbとがあり、これらの領域Sa,Sbは、仕切り部材1の表面1c側と裏面1d側とに分かれた互い違いの配置とされている。この配置により、バンド本体30の内寄り領域Saおよび外寄り領域Sbは、仕切り部材1をその表裏両側から挟んだ恰好となっている。
【0021】
バンド3のバックル32が設けられた他端部側は、仕切り部材1の外側方にはみ出すように延び、かつ連結支持部材4に連結されている。連結支持部材4は、図2図4によく表われているように、仕切り部材1の外側方に位置するサイドパネルなどのパネル部材5に、ビスなどの締結部材50を用いて固定された部材である。より具体的には、この連結支持部材4は、帯状部材40の先端部に、既述したプラグ型のバックル32との着脱が可能なソケット型のバックル41が止着された構成である(図5も参照)。帯状部材40は、たとえばバンド本体30と同材質である。
【0022】
連結支持部材4およびパネル部材5は、本発明でいうバンド用取付け対象の具体例に相当し、バックル32,41が互いに係合されることにより、バンド3の他端部は、連結支持部材4およびパネル部材5に取付けられる。連結支持部材4は、仕切り部材1の計4対の第1および第2の孔部11,12、ならびに計4つのバンド3に対応するように計4箇所設けられている。図2に示すように、4つのバンド3を用いて仕切り部材1を起立姿勢に設定した場合、これら4つのバンド3の中心延長線ELは、先に述べた第1および第2の孔部11,12の延長線ELと共通しており、仕切り部材の前記横幅方向の中央部(中心線CLの位置)で交差する。
【0023】
次に、前記した仕切り部材取付け構造Aの作用について説明する。
【0024】
図1図3に示したように、仕切り部材1を上下高さ方向に起立した姿勢に設定した状態においては、各バンド3は、既述したように、仕切り部材1の第1および第2の孔部11,12に一連に通され、各バンド3の内寄り領域Saおよび外寄り領域Sbは、仕切り部材1をその表裏両側から挟む互い違いの配置とされている。このため、たとえば仕切り部材に設けられた1つの孔部にバンドの一端を通してこれらを連結するだけの構成とは異なり、バンド3と仕切り部材1との密接関連性を強め、これらの相対的な位置ずれを生じ難くすることが可能である。その結果、バンド3によって仕切り部材1の揺れなどを適切に抑える作用を生じさせることが可能となり、仕切り部材1の取付け作業の容易化、迅速化、および仕切り部材1の取付け状態の安定化が図られる。
【0025】
バンド3の一端部側を仕切り部材1に取付けるための作業は、第1および第2の孔部11,12に、バンド3を一連に通すだけでよい。また、1つのバンド3を仕切り部材1に取付けた後に、他のバンド3を取付けようとして、先の1つのバンド3からユーザが手を離したとしても、このバンド3が仕切り部材1から容易に脱落することもない。このようなことから、仕切り部材1の取付け作業は、一層容易化される。
【0026】
さらに、本実施形態においては、図2に示したように、4つのバンド3の中心延長線ELは、仕切り部材1の横幅方向の中央部で交差するため、仕切り部材1が車両前方側または車両後方側に倒れるように回転する現象が生じ難くなる。その結果、仕切り部材1の取付け状態がより安定する。
【0027】
図7(a),(b)は、本実施形態との対比例1,2を示している。これらにおいて、符号Pa,Pbは、各バンド3の一端部と仕切り部材1との連結点、および各バンド3の他端部とパネル部材5との連結点を示している。
対比例1,2のいずれにおいても、各バンド3の一端部と仕切り部材1との連結点Paは、1つの孔部にバンド3の一端部を通した構成に過ぎず、本実施形態について先に述べたのと同様な作用は得られない。
【0028】
また、対比例1においては、各バンド3が水平である。したがって、仕切り部材1は自重により大きく下降し易く、またこれに伴って各バンド3の一端部は下方に大きく垂れ下がる。したがって、仕切り部材1のぐらつきが大きくなる。また、4つのバンド3の中心延長線ELは、交差しないため、仕切り部材1は回転し易く、その姿勢は安定しない。
対比例2においては、各バンド3が斜めに設定されているため、対比例1と比較すると、仕切り部材1を安定させ得るものの、4つのバンド3の中心延長線ELは、交差していない。したがって、仕切り部材1は、やはり回転し易い。
これに対し、本実施形態の仕切り部材取付け構造Aにおいては、前記した不具合を適切に解消することが可能である。
【0029】
図3(a)においては、第2の孔部12の内周縁上部と、バンド3との間に幅Laの隙間80が存在する構成とされている。ただし、本実施形態では、このような構成に代えて、たとえば第2の孔部12を、同図仮想線に示すように、バンド3の本来の位置よりも適当な幅Lbだけ下方に位置ずれした配置として、前記した隙間80を無くし、第2の孔部12の内周縁上部がバンド3の上縁部に干渉接触した構成とすることもできる。この接触部分においては、仕切り部材1の重量の一部がバンド3に作用する。
このような構成によれば、バンド3と仕切り部材1との間に生じる摩擦力が高められるため、バンド3による仕切り部材1の制約を強め、揺れなどを防止する効果を一層高めることが可能である。
なお、第2の孔部12を図3(a)の仮想線で示した配置にした場合には、図2に示したバンド3の中心延長線ELは、第2の孔部12の位置で曲がることとなるが、バンド3にテンションをかけ、仕切り部材1を狙いの高さに引っ張り上げる効果が発生する。そもそも、計4つのバンド3にテンションをかけても、仕切り部材1の撓みに起因して、仕切り部材1は僅かにではあるが下方に下がる。これに対し、上記したように、第2の孔部12をバンド3に干渉させることで、4つのバンド3に相当に高いテンションをかけなくても、仕切り部材1を狙いの高さに容易に設定することが可能となる。この効果は、仕切り部材1をたとえば車室の床面上にできる限り低い高さに設定し、仕切り部材1の下方の隙間を小さくしたい場合に、この隙間を適切に確保し、車両走行時に、仕切り部材1が車室の床面に干渉することを防止する上で好ましい。
【0030】
前記した仕切り部材取付け構造Aにおいては、仕切り部材1を利用する必要がない場合には分解可能である。具体的には、連結支持部材4からバンド3を外し、バンド3および仕切り部材1を、たとえば荷室21の適当な場所に保管できるようにされる。この場合、仕切り部材1からバンド3を取り外す作業も容易に行なうことが可能であり、便利である。
【0031】
図8は、本発明の他の実施形態を示している。同図において、前記実施形態と同一または類似の要素には同一の符号を付すこととし、重複説明は省略する。また、同図においては、各構成を簡略化して示している。
【0032】
図8に示す仕切り部材取付け構造Aaにおいては、同図の上側領域AR1の構成は、前記した仕切り部材取付け構造Aと同様であり、一対の第1および第2の孔部11,12、ならびにこれらに通された一対のバンド3が具備されている。一方、図8の下側領域AR2の構成は、たとえば図7(a)の対比例1と同様な構成であり、仕切り部材1の下部の隅部には、1つの孔部19が設けられ、かつこの孔部19に、バンド3の一端部が通されているに過ぎない。
【0033】
図8に示す実施形態においては、図1図6に示した実施形態と比較すると、仕切り部材1の安定性などは低くなるものの、図7(a),(b)の対比例1,2、および特許文献1~3などの従来技術と比較すると、仕切り部材1の安定性をよくするなど、本発明が意図する効果が得られる。
本発明においては、複数のバンドを用いて仕切り部材を取付ける場合、必ずしもそれら複数のバンドの全ての取付け構造が、本発明の意図する構成とされていなくてもよい。少なくとも左右一対のバンドの取付け構造が、本発明の意図する構成であれば、本発明の技術的範囲に包摂される。
【0034】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る仕切り部材取付け構造の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0035】
仕切り部材は、プレート状に限らず、たとえば比較的薄手のシート状であってもよく、また略矩形状以外の形状とすることもできる。また、プレート状、シート状のいずれの場合においても、適当な形状・サイズの孔部が1または複数設けられた構成、あるいは一部または全体が網状(多孔状)の構成とされていてもよい。
【0036】
第1および第2の孔部の具体的な形状、サイズ、相対配置なども種々に設計変更可能であり、これらを長孔以外の形状とすることもできる。
第1および第2の孔部に加えて、第3の孔部、さらにはそれ以上の数の追加の孔部を設け、かつこれらの孔部の全てにバンドを一連に通すようにしてもよい。バンドが通される孔部が3つ以上あれば、たとえば上述の実施形態のバックル32,41が連結固定される前に、バンドが仕切り部材の孔部から抜け外れることがより確実に防止される効果が得られる。
バンドの具体的な形状、サイズ、材質なども限定されない。また、バンドの他端部側をバンド用取付け対象(たとえば、連結支持部材4およびパネル部材5)に取付けるための手段は、上述したバックルに限定されず、これとは異なる係止部材、あるいは他の部材を用いることも可能である。
【0037】
本発明に係る仕切り部材取付け構造は、車両後部の荷室に設けられるだけではなく、たとえば車両用シートの相互間の仕切りなどにも用いることが可能であり、その具体的な用途は限定されない。したがって、本発明でいうバンド用取付け対象も車両のサイドパネルなどのパネル部材に限定されない。
【符号の説明】
【0038】
A,Aa 仕切り部材取付け構造
Sa 内寄り領域
Sb 外寄り領域
1 仕切り部材
11,12 第1および第2の孔部
3 バンド
4 連結支持部材(バンド用取付け対象)
5 パネル部材(バンド用取付け対象)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8