(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039353
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20240314BHJP
H01L 29/80 20060101ALI20240314BHJP
H01L 21/3205 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
H01L29/80 U
H01L29/80 E
H01L29/80 H
H01L29/80 Z
H01L21/88 J
H01L21/88 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143844
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】中野 拓真
【テーマコード(参考)】
5F033
5F102
【Fターム(参考)】
5F033GG00
5F033GG02
5F033MM30
5F033PP27
5F033PP28
5F033QQ13
5F033QQ23
5F033QQ27
5F033QQ35
5F033QQ38
5F033RR21
5F033VV05
5F033XX22
5F033XX27
5F102FA08
5F102GA01
5F102GA16
5F102GB01
5F102GB02
5F102GC01
5F102GD01
5F102GJ02
5F102GL04
5F102GM04
5F102GQ01
5F102GS09
5F102GT01
5F102GV03
5F102HC10
5F102HC16
5F102HC30
(57)【要約】
【課題】トランジスタにおいて発生した熱が素子に伝導することを抑制することが可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、炭化シリコン基板10aと、前記炭化シリコン基板の上面に設けられた窒化物半導体層10bと、前記窒化物半導体層上に設けられたトランジスタ20と、前記炭化シリコン基板上に設けられた素子と、を備え、前記炭化シリコン基板は、前記トランジスタと前記素子の間に設けられ、前記炭化シリコン基板の下面から前記炭化シリコン基板の少なくとも一部が除去され内部の熱伝導率は前記炭化シリコン基板の熱伝導率より小さい穴42を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化シリコン基板と、
前記炭化シリコン基板の上面に設けられた窒化物半導体層と、
前記窒化物半導体層上に設けられたトランジスタと、
前記炭化シリコン基板上に設けられた素子と、
を備え、
前記炭化シリコン基板は、前記トランジスタと前記素子の間に設けられ、前記炭化シリコン基板の下面から前記炭化シリコン基板の少なくとも一部が除去され内部の熱伝導率は前記炭化シリコン基板の熱伝導率より小さい穴を有する半導体装置。
【請求項2】
前記炭化シリコン基板および前記窒化物半導体層を貫通するバイアホールを介し前記トランジスタに電気的に接続される金属層を備える請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記穴は、前記炭化シリコン基板の下面から前記炭化シリコン基板の途中まで設けられ、前記炭化シリコン基板および前記窒化物半導体層を貫通しない請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記炭化シリコン基板および前記窒化物半導体層を貫通するバイアホールを介し前記トランジスタに電気的に接続される金属層を備え、
前記炭化シリコン基板の前記下面における前記穴の平面面積は、前記炭化シリコン基板の前記下面における前記バイアホールの平面面積より小さい請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記穴は、前記炭化シリコン基板および前記窒化物半導体層を貫通し、
前記半導体装置は、
前記炭化シリコン基板上に設けられ、前記炭化シリコン基板の厚さ方向から見て前記穴と重なり、前記穴と接触するパッドを備える請求項2に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記パッドは、前記金属層と電気的に分離されている請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記穴の内部の少なくとも一部は空洞である請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記窒化物半導体層の表面において、前記トランジスタの各点から前記素子に至る最短距離の直線は、全て前記穴を前記表面に投影した範囲を通過する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記素子は、受動素子である請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記素子は、能動素子である請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
炭化シリコン基板の上面に設けられた窒化物半導体層上にトランジスタを形成し、前記炭化シリコン基板上に素子を形成する工程と、
前記炭化シリコン基板の下面に、第1開口と前記第1開口の面積より小さい面積を有する第2開口とを有するマスク層を形成する工程と、
前記マスク層をマスクに前記炭化シリコン基板をエッチングすることで、前記第1開口により画定され前記炭化シリコン基板および前記窒化物半導体層を貫通するバイアホールの形成と、前記第2開口により画定され前記炭化シリコン基板の一部が除去され前記炭化シリコン基板および前記窒化物半導体層を貫通せず、内部の熱伝導率は前記炭化シリコン基板の熱伝導率より小さい穴の形成と、を同時に行う工程と、
前記炭化シリコン基板の前記下面に、前記バイアホールを介し前記トランジスタに電気的に接続される金属層を形成する工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物半導体層を有するHEMT(High Electron Mobility Transistor)では、熱伝導性のよい炭化シリコン(SiC)基板が用いられている。MMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)では、基板上にトランジスタとキャパシタ等の受動素子とが設けられている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
炭化シリコン基板を用いることで、窒化物半導体層上に設けられたトランジスタにおいて発生する熱を炭化シリコン基板の裏面に効率よく放出することができる。しかし、MMIC等の集積回路では、トランジスタに隣接する領域に受動素子または能動素子が設けられている。このため、トランジスタにおいて発生した熱は、炭化シリコン基板を介し受動素子または能動素子に伝導してしまう。これにより、受動素子または能動素子の温度が上昇し、所望の特性が得られなくなることがありうる。
【0005】
本開示は、上記課題に鑑みなされたものであり、トランジスタにおいて発生した熱が素子に伝導することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態は、炭化シリコン基板と、前記炭化シリコン基板の上面に設けられた窒化物半導体層と、前記窒化物半導体層上に設けられたトランジスタと、前記炭化シリコン基板上に設けられた素子と、を備え、前記炭化シリコン基板は、前記トランジスタと前記素子の間に設けられ、前記炭化シリコン基板の下面から前記炭化シリコン基板の少なくとも一部が除去され内部の熱伝導率は前記炭化シリコン基板の熱伝導率より小さい穴を有する半導体装置である。
【0007】
本開示の一実施形態は、炭化シリコン基板の上面に設けられた窒化物半導体層上にトランジスタを形成し、前記炭化シリコン基板上に素子を形成する工程と、前記炭化シリコン基板の下面に、第1開口と前記第1開口の面積より小さい面積を有する第2開口とを有するマスク層を形成する工程と、前記マスク層をマスクに前記炭化シリコン基板をエッチングすることで、前記第1開口により画定され前記炭化シリコン基板および前記窒化物半導体層を貫通するバイアホールの形成と、前記第2開口により画定され前記炭化シリコン基板の一部が除去され前記炭化シリコン基板および前記窒化物半導体層を貫通せず、内部の熱伝導率は前記炭化シリコン基板の熱伝導率より小さい穴の形成と、を同時に行う工程と、前記炭化シリコン基板の前記下面に、前記バイアホールを介し前記トランジスタに電気的に接続される金属層を形成する工程と、を含む半導体装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、トランジスタにおいて発生した熱が素子に伝導することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例1に係る半導体装置の平面図である。
【
図3A】
図3Aは、実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図3B】
図3Bは、実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図3C】
図3Cは、実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図4A】
図4Aは、実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図4B】
図4Bは、実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図4C】
図4Cは、実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図5】
図5は、比較例1に係る半導体装置の断面図である。
【
図6】
図6は、実施例1に係る半導体装置の断面図である。
【
図7】
図7は、実施例1において、実装基板上に半導体チップが実装された例を示す断面図である。
【
図8】
図8は、実施例1において、実装基板上に半導体チップが実装された別の例を示す断面図である。
【
図9】
図9は、実施例1における穴の内部の別の例を示す断面図である。
【
図10】
図10は、実施例1における熱伝導抑制領域付近の拡大平面図である。
【
図11】
図11は、実施例2に係る半導体装置の平面図である。
【
図13】
図13は、実施例2の変形例1に係る半導体装置の平面図である。
【
図14】
図14は、実施例3に係る半導体装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の詳細]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本開示の一実施形態は、炭化シリコン基板と、前記炭化シリコン基板の上面に設けられた窒化物半導体層と、前記窒化物半導体層上に設けられたトランジスタと、前記炭化シリコン基板上に設けられた素子と、を備え、前記炭化シリコン基板は、前記トランジスタと前記素子の間に設けられ、前記炭化シリコン基板の下面から前記炭化シリコン基板の少なくとも一部が除去され内部の熱伝導率は前記炭化シリコン基板の熱伝導率より小さい穴を有する半導体装置である。これにより、トランジスタにおいて発生した熱が素子に伝導することを抑制することができる。
(2)上記(1)において、前記炭化シリコン基板の裏面に設けられ、前記炭化シリコン基板および前記窒化物半導体層を貫通するバイアホールを介し前記トランジスタに電気的に接続される金属層を備える。
(3)上記(1)において、前記穴は、前記炭化シリコン基板の下面から前記炭化シリコン基板の途中まで設けられ、前記炭化シリコン基板および前記窒化物半導体層を貫通しない。
(4)上記(3)において、前記炭化シリコン基板および前記窒化物半導体層を貫通するバイアホールを介し前記トランジスタに電気的に接続される金属層を備え、前記炭化シリコン基板の裏面における前記穴の平面面積は、前記炭化シリコン基板の裏面における前記バイアホールの平面面積より小さい。
(5)上記(2)において、前記穴は、前記炭化シリコン基板および前記窒化物半導体層を貫通し、前記半導体装置は、前記炭化シリコン基板上に設けられ、前記炭化シリコン基板の厚さ方向から見て前記穴と重なり、前記穴と接触するパッドを備える。
(6)上記(5)において、前記パッドは、前記金属層と電気的に分離されている。
(7)上記(1)から(6)のいずれかにおいて、前記穴の内部の少なくとも一部は空洞である。
(8)上記(1)から(7)のいずれかにおいて、前記窒化物半導体層の表面において、前記トランジスタの各点から前記素子に至る最短距離の直線は、全て前記穴を前記表面に投影した範囲を通過する。
(9)上記(1)から(8)のいずれかにおいて、前記素子は、受動素子である。
(10)上記(1)から(8)のいずれかにおいて、前記素子は、能動素子である。
(11)本開示の一実施形態は、炭化シリコン基板の上面に設けられた窒化物半導体層上にトランジスタを形成し、前記炭化シリコン基板上に素子を形成する工程と、前記炭化シリコン基板の下面に、第1開口と前記第1開口の面積より小さい面積を有する第2開口とを有するマスク層を形成する工程と、前記マスク層をマスクに前記炭化シリコン基板をエッチングすることで、前記第1開口により画定され前記炭化シリコン基板および前記窒化物半導体層を貫通するバイアホールの形成と、前記第2開口により画定され前記炭化シリコン基板の一部が除去され前記炭化シリコン基板および前記窒化物半導体層を貫通せず、内部の熱伝導率は前記炭化シリコン基板の熱伝導率より小さい穴の形成と、を同時に行う工程と、前記炭化シリコン基板の前記下面に、前記バイアホールを介し前記トランジスタに電気的に接続される金属層を形成する工程と、を含む半導体装置の製造方法である。
【0011】
本開示の実施形態にかかる半導体装置及びその製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0012】
[実施例1]
図1は、実施例1に係る半導体装置の平面図である。
図2は、
図1のA-A断面図である。基板10の表面の法線方向をZ方向、ソース電極12、ゲート電極14およびドレイン電極の配列方向をX方向、ソース電極、ゲート電極およびドレイン電極の延伸方向をY方向とする。
図1等の平面図では、ソース電極12、ドレイン電極16、ソースパッド22、ドレインバスバー26およびドレイン配線27をクロスハッチングで示している。
【0013】
図1および
図2に示すように、実施例1の半導体装置100では、基板10上にFET(Field Effect Transistor)20およびキャパシタ30が設けられている。
【0014】
基板10は、基板10aと基板10a上に設けられた半導体層10bを備えている。基板10は単結晶炭化シリコン基板であり、半導体層は単結晶窒化物半導体層である。基板10には活性領域11が設けられている。活性領域11以外の領域はイオン注入等により半導体層10bが不活性化された非活性領域13である。すなわち、活性領域11は基板10内の半導体層10bが活性化された領域であり、非活性領域は半導体層10bが不活性化された領域である。FET20は活性領域11に設けられている。キャパシタ30は非活性領域13に設けられている。
【0015】
FET20では、基板10の表面60における活性領域11上にソース電極12(ソースフィンガ)、ゲート電極14(ゲートフィンガ)およびドレイン電極16(ドレインフィンガ)がY方向に延伸し設けられている。ソース電極12、ゲート電極14およびドレイン電極16の平面形状は略矩形であり、矩形の長辺はY方向に延伸する。ソース電極12、ゲート電極14およびドレイン電極16はX方向に配列する。
【0016】
X方向にソース電極12とドレイン電極16とが交互に設けられている。ゲート電極14は1つのソース電極12と1つのドレイン電極16とに挟まれている。ゲート電極14を挟むソース電極12とドレイン電極16とは1つの単位FETを形成する。隣接する単位FETはソース電極12またはドレイン電極16を共有する。複数の単位FETはX方向に配列されている。
図1では、単位FETは3個であるが、単位FETの個数は適宜設定できる。
【0017】
基板10の非活性領域13上にソースパッド22、ゲートバスバー24およびドレインバスバー26が設けられている。ゲートバスバー24およびドレインバスバー26はX方向に延伸している。複数のゲート電極14のY方向における+Y端はゲートバスバー24に接続されている。ゲートバスバー24とソース電極12とは、互いに離れて交差しており、電気的に分離されている。複数のドレイン電極16のY方向における-Y端はドレインバスバー26に接続されている。ゲートバスバー24には、ゲート配線25が接続されている。ドレインバスバー26にはドレイン配線27が接続されている。
【0018】
ソース電極12、ドレイン電極16、ソースパッド22およびドレインバスバー26は、半導体層10b上に設けられたオーミック金属層18aと低抵抗層18bとを備える。オーミック金属層18aは半導体層10bにオーミックコンタクトする。低抵抗層18bの材料はオーミック金属層18aの材料より抵抗率が低い。低抵抗層18bはオーミック金属層18aより厚い。これにより、低抵抗層18bのシート抵抗はオーミック金属層18aのシート抵抗より低い。
【0019】
基板10の非活性領域13上に絶縁層38が設けられ、絶縁層38上にキャパシタ30が設けられている。キャパシタ30は、MIM(Metal Insulator Metal)キャパシタであり、絶縁層38上に設けられた下部電極32と、下部電極32上に設けられた誘電体層34と、誘電体層34上に設けられた上部電極36と、を備えている。
【0020】
ソース電極12の下に基板10を裏面62から表面60に貫通するバイアホール23が設けられている。トランジスタ20とキャパシタ30との間における非活性領域13には熱伝導抑制領域40が設けられている。熱伝導抑制領域40には、基板10の裏面62から基板10の少なくとも一部まで達する穴42が設けられている。穴42は基板10を貫通していない。基板10の裏面62に金属層28が設けられている。金属層28には、例えばグランド電位等の基準電位が供給される。バイアホール23および穴42の側面および上面(すなわち底面)に金属層28aが設けられている。金属層28aは、金属層28と同じ金属層であり、同時に形成されている。バイアホール23および穴42内の金属層28a内に空洞43が設けられている。空洞43内は、空気等の気体が充満している。穴42を基板10の表面60に投影した領域の面積は、バイアホール23を基板10の表面60に投影した面積より小さい。バイアホール23および穴42の平面形状は、例えば円形状、楕円形状、長円形状、角丸長方形状、トラック形状または多形状である。
【0021】
基板10aは単結晶炭化シリコン基板であり例えば4Hまたは6H等の六方晶の結晶構造を有する。半導体層10bは、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)または窒化インジウムガリウム(InGaN)等の窒化物半導体層を1または複数層含む。トランジスタ20がGaN HEMTの場合、半導体層10bは、GaN電子走行層と、GaN電子走行層上に設けられたAlGaNバリア層と、を含む。オーミック金属層18aは、例えば基板10上に設けられた密着膜(例えばチタン膜)および密着膜上に設けられたアルミニウム膜である。低抵抗層18bは例えば金層である。ゲート電極14は、例えば基板10上に設けられた密着膜(例えばニッケル膜)および密着膜上に設けられた金膜である。下部電極32および上部電極36は例えば金膜等の金属膜であり、誘電体層34および絶縁層38は例えば窒化シリコン膜または酸化シリコン膜である。金属層28および28aは例えば金層である。
【0022】
ゲート電極14のX方向の長さはゲート長であり、例えば0.05μmから5μmである。活性領域11のY方向の幅は単位FETのゲート幅であり、例えば50μmから1000μmである。バイアホール23の幅は、例えば50μmであり、穴42の幅は例えば25μmである。トランジスタ20とキャパシタ30とのX方向の幅は例えば100μmである。基板10aの厚さT1は、例えば10μmから200μmであり、一例として50μmである。半導体層10bの厚さT2は、基板10aの厚さT1より小さく、例えば1μmから10μmである。半導体層10bの厚さT2は、基板10aの厚さT1の例えば1/5倍以下である。
【0023】
[実施例1の製造方法]
図3Aから
図4Cは、実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図3Bから
図4Cは上下を反転して図示している。基板10上にトランジスタ20およびキャパシタ30を形成する。
図3Bに示すように、基板10aの下面(
図3Bから
図4Cでは上面)を研削または研磨することで、基板10aを薄膜化する。
図3Cに示すように、基板10a上に開口45aおよび45bを有するマスク層44を形成する。マスク層44は、例えばニッケル層またはニッケルクロム合金層等の金属層である。開口45bの開口面積は開口45aの開口面積より小さい。
【0024】
図4Aに示すように、マスク層44をマスクに基板10をエッチングする。基板10のエッチング条件を適宜選択することで、開口面積の小さい開口45bにおける基板10のエッチングレートを、開口45aにおける基板10のエッチングレートより小さくできる。これにより、矢印50aのように開口45aにおいては基板10を貫通するバイアホール23を形成でき、矢印50bのように開口45bにおいては基板10を貫通しない穴42を形成できる。
【0025】
基板10のエッチングには、例えば反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)法、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)型エッチング法または、電子サイクロトロン共鳴(ECR:Electron Cyclotron Resonance)型エッチング法を用いることができる。エッチングガスとしては、SF6またはCF4などのフッ素系ガスを用いることができる。ICP型エッチング法を用いる場合、真空度は例え0.1Paから10Paである。プラズマ形成の電力は例えば100Wから3000Wであり、バイアス電力は例えば10Wから1000Wである。一例として、開口45aおよび45bの直径がそれぞれ50μmおよび25μmのとき、開口45bにおける炭化シリコン基板10aのエッチングレートを開口45aにおける炭化シリコン基板のエッチングレートの約80%とすることができる。
【0026】
図4Bに示すように、マスク層44を除去する。マスク層44が例えばニッケル層またはニッケルクロム層の場合、塩酸溶液を用いることでマスク層44を除去する。
図4Cに示すように、基板10の裏面62に金属層28を、バイアホール23の側面および底面、穴42の側面および底面に金属層28aを形成する。金属層28および28aの形成には、例えばメッキ法を用いる。以上により、実施例1に係る半導体装置を製造する。
【0027】
[比較例1]
図5は、比較例1に係る半導体装置の断面図である。
図5に示すように、比較例1では、トランジスタ20とキャパシタ30との間に熱伝導抑制領域40が設けられていない。基板10aである4Hおよび6H等の六方晶構造の単結晶炭化シリコンの熱伝導率は490W/(m・K)である。半導体層10bである単結晶GaNの熱伝導率は130W/(m・K)である。このように、基板10aを熱伝導率の高い炭化シリコンとした場合、トランジスタ20において発生した熱は、効率よく基板10の裏面62に伝導し、金属層28から放熱される。例えば、基板10aをシリコン基板とした場合、シリコンの熱伝導率が150W/(m・K)である。基板10aを炭化シリコン基板とすることで、基板10aをシリコン基板とした場合に比べ、放熱性を向上できる。
【0028】
基板10aを炭化シリコン基板とし、半導体層10bを窒化物半導体とした場合、基板10aの熱伝導率は半導体層10bの熱伝導率の約3倍である。この場合、矢印52のように、トランジスタ20において発生した熱のうち半導体層10bを介してキャパシタ30に至る熱は少ない。しかし、矢印53のように、基板10aを介しトランジスタ20からキャパシタ30に熱が至る。これにより、キャパシタ30の温度が上昇する。キャパシタ30は、所望の温度において、所望の性能および寿命が得られるように設計されている。キャパシタ30がトランジスタ20において発生した熱の影響を受けると、キャパシタ30の特性が設計した特性から外れてしまう。
【0029】
[実施例1]
図6は、実施例1に係る半導体装置の断面図である。
図6に示すように、実施例1では、基板10a(炭化シリコン基板)上に半導体層10b(窒化物半導体層)が設けられている。半導体層10bが活性化された活性領域11上にトランジスタ20が設けられている。基板10上にキャパシタ30(素子)が設けられている。基板10aは、トランジスタ20とキャパシタ30との間における非活性領域13に穴42を有する。穴42では、基板10aの裏面62から基板10aの少なくとも一部が除去されている。穴42の内部(例えば、空洞43)の熱伝導率は基板10aの熱伝導率より小さい。内部の熱伝導率が基板10aの熱伝導率より小さい穴42を設けることで、点線矢印53aのような基板10aを介したトランジスタ20からキャパシタ30への熱伝導を抑制できる。よって、キャパシタ30がトランジスタ20において発生した熱の影響を受けることが抑制され、キャパシタ30の特性が設計した特性から外れてしまうことを抑制できる。
【0030】
図7は、実施例1において、実装基板上に半導体チップが実装された例を示す断面図である。
図7に示すように、実装基板37a上に半田37を用い実施例1の半導体装置100が実装されている。バイアホール23および穴42内は空洞43である。空気の熱伝導率は0.026W/(m・K)であり、炭化シリコンの熱伝導率の1/1000以下である。このように、穴42の内部の少なくとも一部を空洞43とすることで、トランジスタ20からキャパシタ30への熱伝導を抑制できる。
【0031】
図8は、実施例1において、実装基板上に半導体チップが実装された別の例を示す断面図である。
図8に示すように、バイアホール23および穴42は、半田37により埋め込まれている。半田37の熱伝導率は炭化シリコンより低い。例えば錫銀銅半田の熱伝導率は55W/(m・K)である。よって、穴42内の空洞43が半田37により埋め込まれている場合においても、穴42により、トランジスタ20からキャパシタ30への熱伝導を抑制できる。
【0032】
図9は、実施例1における穴の内部の別の例を示す断面図である。
図9に示すように、充填材39は穴42内に、空隙が形成されないように充填されている。このような穴42の構造においても、充填材39の熱伝導率が基板10aの熱伝導率より低ければ、穴42により、トランジスタ20からキャパシタ30への熱伝導を抑制できる。充填材39は例えば樹脂である。樹脂の熱伝導率は一般的に低い、例えばエポキシ樹脂の熱伝導率は0.3W/(m・K)である。充填材39の熱伝導率を
図7の半田37の熱伝導率より低くする。これにより、半導体装置100を実装基板37a上に実装したときに、半田37が穴42内に入り込むことを抑制でき、トランジスタ20からキャパシタ30への熱伝導を抑制できる。充填材39の熱伝導率は、基板の熱伝導率の例えば1/100以下であり、1/1000以下である。
【0033】
図10は、実施例1における熱伝導抑制領域付近の拡大平面図である。
図10に示すように、トランジスタ20において発熱する領域は活性領域11であり、活性領域11はトランジスタ20の設けられた領域に相当する。表面60において、トランジスタ20からキャパシタ30を見た範囲は範囲54である。矢印56のように、表面60において、トランジスタ20の各点からキャパシタ30に至る最短距離の直線(矢印56)は、全て穴42を表面60に投影した範囲を通過する。これにより、例えば矢印56aのように、活性領域11からキャパシタ30に熱が伝導しようとすると、矢印57のように、穴42を迂回することになる。よって、トランジスタ20からキャパシタ30への熱の伝導する距離が実質的に長くなる。よって、トランジスタ20からキャパシタ30への熱伝導を抑制できる。
【0034】
穴42が基板10を貫通する場合、金属層28aが半導体層10bの表面60に露出してしまう。金属層28aの電位がトランジスタ20またはキャパシタ30に影響する(例えば電磁界結合する)ことがありうる。実施例1では、穴42は、基板10aの裏面62から基板10aの途中まで設けられ、基板10aおよび半導体層10bを貫通しない。これにより、金属層28a等の電位の影響が半導体層10bの表面60に及ぶことを抑制できる。
【0035】
基板10aを通過する熱伝導を抑制する観点から、穴42の深さD1は、基板10aの厚さT1の0.5倍以上であり、0.8倍以上である。トランジスタ20とキャパシタ30との距離L1が長い場合、トランジスタ20からキャパシタ30への熱伝導は小さい。距離L1が短くなると、トランジスタ20からキャパシタ30への熱伝導が問題となりやすい。この観点から、距離L1は、例えば基板10aの厚さT1の5倍以下である。
【0036】
金属層28は、基板10aの裏面62に設けられ、基板10aおよび半導体層10bを貫通するバイアホール23を介しトランジスタ20のソース電極12(電極)に電気的に接続される。これにより、金属層28にグランド電位等の基準電位を供給することで、ソース電極12に基準電位を供給でき、かつソースインダクタンスを抑制できる。
【0037】
バイアホール23と穴42とを別の工程を用い形成する場合、製造工程が増加してしまう。そこで、
図3Cのように、基板10上に、第1開口45aと第1開口45aの面積より小さい面積を有する第2開口45bとを有するマスク層44を形成する。
図4Aのように、マスク層44をマスクに基板10aをエッチングする。これにより、第1開口45aにより画定され基板10aおよび半導体層10bを貫通するバイアホール23の形成と、第2開口45bにより画定され基板10aの一部が除去され基板10aおよび半導体層10bを貫通しない穴42の形成と、を同時に行う。これにより、バイアホール23と、基板10を貫通しない穴42とを同時に形成することができる。
【0038】
実施例1のように、バイアホール23と穴42を形成した場合、基板10aの裏面62における穴42の平面面積は、裏面62におけるバイアホール23の平面面積より小さくなる。裏面62における穴42の平面面積は、裏面62におけるバイアホール23の平面面積の1/2倍以下であり、1/4倍以下である。穴42の平面面積が小さすぎると穴42の深さD1が小さくなってしまう。そこで、裏面62における穴42の平面面積は、裏面62におけるバイアホール23の平面面積の1/50倍以上である。
【0039】
[実施例2]
図11は、実施例2に係る半導体装置の平面図である。
図12は、
図11のA-A断面図である。
図11および
図12に示すように、実施例2の半導体装置102では、穴42は基板10aおよび半導体層10bを貫通している。半導体層10bの表面60に穴42に接触するパッド41が設けられている。パッド41は、例えばオーミック金属層18a、低抵抗層18bまたはオーミック金属層18aと低抵抗層18bとの積層膜である。穴42の側面および上面に金属層28bが設けられている。基板10aの裏面62に設けられた金属層28と金属層28bとは、離間部47により電気的に分離されている。
【0040】
炭化シリコンと窒化物半導体とのエッチング選択比は小さい。このため、
図4Aにおいて、穴42を形成するときに、窒化物半導体層である半導体層10bを基板10aのエッチングストッパ層として機能させることは難しい。そこで、Z方向(基板10aの厚さ方向)から見て、穴42と重なるパッド41を設ける。パッド41の材料は、炭化シリコンおよび窒化物半導体層に対しエッチング選択比の大きい材料(例えば、金等の金属)とする。これにより、穴42を形成するときに、オーバーエッチングし、穴42を、基板10を貫通させることができる。穴42はパッド41に接触する。その他の構成は、実施例1と同じであり説明を省略する。
【0041】
パッド41が金属層28と電気的に接続されていると、パッド41は例えば基準電位となり、トランジスタ20およびキャパシタ30と電磁界結合する。これにより、パッド41がトランジスタ20およびキャパシタ30に影響してしまう。例えばトランジスタ20およびキャパシタの寄生容量が増加してしまう。そこで、パッド41を金属層28と電気的に分離させる。パッド41の電位はフローティングであり、トランジスタ20およびキャパシタ30のいずれの電極とも電気的に接続されていない。これにより、パッド41とトランジスタ20およびキャパシタ30との干渉を抑制できる。
【0042】
[実施例2の変形例1]
図13は、実施例2の変形例1に係る半導体装置の平面図である。
図13に示すように、実施例2の変形例1の半導体装置104では、穴42の平面面積はバイアホール23の平面面積より大きい。穴42の平面面積がバイアホール23の平面面積より大きい場合、
図4Aにおいて、穴42は基板10aおよび半導体層10bを貫通する。パッド41を設けることで、パッド41によりエッチングが停止する。また、離間部47(
図12参照)を設けることで、パッド41のトランジスタ20およびキャパシタ30への干渉を抑制できる。穴42は、表面60において、活性領域11からキャパシタ30を見た範囲を横切る。これにより、トランジスタ20からキャパシタ30への熱伝導をより抑制できる。その他の構成は、実施例2と同じであり説明を省略する。
【0043】
[実施例3]
図14は、実施例3に係る半導体装置の平面図である。
図14に示すように、実施例3の半導体装置106では、キャパシタ30の代わりにトランジスタ20aが設けられている。トランジスタ20と20aとの間に熱伝導抑制領域40が設けられている。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0044】
実施例1、2およびその変形例のように、トランジスタ20とで熱伝導抑制領域40を挟む素子は、キャパシタ30、抵抗またはインダクタ等の受動素子でもよい。実施例3のように、トランジスタ20とで熱伝導抑制領域40を挟む素子は、トランジスタ20aまたはダイオード等の能動素子でもよい。
【0045】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0046】
10、10a 基板
10b 半導体層
11 活性領域
12 ソース電極
13 非活性領域
14 ゲート電極
16 ドレイン電極
18a オーミック金属層
18b 低抵抗層
20、20a トランジスタ
22 ソースパッド
23 バイアホール
24 ゲートバスバー
25 ゲート配線
26 ドレインバスバー
27 ドレイン配線
28、28a、28b 金属層
30 キャパシタ
32 下部電極
34 誘電体層
36 上部電極
37 半田
37a 実装基板
38 絶縁層
39 充填材
40 熱伝導抑制領域
41 パッド
42 穴
43 空洞
44 マスク層
45a、45b 開口
47 離間部
52、53、53a、56、56a、57 矢印
54 範囲
60 表面
62 裏面
100、102、104、106 半導体装置