(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039358
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】異常解析方法、異常解析装置、及び異常解析プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20240314BHJP
B64D 45/00 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
G06Q50/10
B64D45/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143857
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】町田 卓謙
(72)【発明者】
【氏名】藤嶌 由紀
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 悟
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC20
(57)【要約】
【課題】飛行している航空機の異常の原因を特定する。
【解決手段】コンピュータは、異常が発生した第1航空機を含む所定範囲の空間を飛行している第2航空機を特定する。コンピュータは、異常が発生した時刻を含む第1期間において第1航空機により測定された第1測定データと、第1期間において第2航空機により測定された第2測定データとを比較した結果に基づいて、異常の原因を特定する。コンピュータは、異常の原因を示す情報を出力する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常が発生した第1航空機を含む所定範囲の空間を飛行している第2航空機を特定し、
前記異常が発生した時刻を含む第1期間において前記第1航空機により測定された第1測定データと、前記第1期間において前記第2航空機により測定された第2測定データとを比較した結果に基づいて、前記異常の原因を特定し、
前記異常の原因を示す情報を出力する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする異常解析方法。
【請求項2】
前記第2測定データは、前記第1期間の中に含まれる第2期間において前記第2航空機により測定されることを特徴とする請求項1記載の異常解析方法。
【請求項3】
前記第2航空機を特定する処理は、
前記所定範囲の空間を飛行している1台又は複数台の航空機を特定する処理と、
前記第1航空機の位置と、前記1台又は複数台の航空機各々の位置と、前記第1航空機が受けた風の風速とに基づいて、前記1台又は複数台の航空機の中から前記第2航空機を特定する処理と、
を含むことを特徴とする請求項1記載の異常解析方法。
【請求項4】
前記異常の原因を特定する処理は、
前記第1測定データと前記第2測定データとが類似している場合、前記風が前記異常の原因であると判定する処理と、
前記第1測定データと前記第2測定データとが類似していない場合、前記風以外の事象が前記異常の原因であると判定する処理と、
を含むことを特徴とする請求項3記載の異常解析方法。
【請求項5】
前記第2航空機を特定する処理は、1台又は複数台の前記第2航空機を特定する処理を含み、
前記異常の原因を特定する処理は、
前記第1測定データと、前記1台又は複数台の前記第2航空機各々により測定された前記第2測定データとの間の類似度を計算する処理と、
前記類似度を閾値と比較した結果に基づいて、前記異常の原因を特定する処理と、
を含むことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の異常解析方法。
【請求項6】
前記所定範囲の空間において前記第2航空機が特定されない場合、前記異常が発生した時刻以降の第3期間において前記第1航空機により測定された第3測定データの時間変化に基づいて、前記異常の原因を特定する処理を、前記コンピュータがさらに実行することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の異常解析方法。
【請求項7】
異常が発生した第1航空機を含む所定範囲の空間を飛行している第2航空機を特定する航空機特定部と、
前記異常が発生した時刻を含む第1期間において前記第1航空機により測定された第1測定データと、前記第1期間において前記第2航空機により測定された第2測定データとを比較した結果に基づいて、前記異常の原因を特定する原因特定部と、
前記異常の原因を示す情報を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする異常解析装置。
【請求項8】
異常が発生した第1航空機を含む所定範囲の空間を飛行している第2航空機を特定し、
前記異常が発生した時刻を含む第1期間において前記第1航空機により測定された第1測定データと、前記第1期間において前記第2航空機により測定された第2測定データとを比較した結果に基づいて、前記異常の原因を特定し、
前記異常の原因を示す情報を出力する、
処理をコンピュータに実行させるための異常解析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常解析技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野でドローンの活用が試行されている。ドローンは、無人航空機(Unmanned Aerial Vehicle,UAV)の一種である。ドローンの活用方法の1つとして、ドローンによる配送が挙げられる。
【0003】
外界を飛行するドローンは様々な事象に遭遇する可能性があり、異常として検知される事象もある。例えば、気象環境によって運航の安全性が大きく左右されることがある。特に、ゲリラ豪雨、ビル風、竜巻等が発生した場合、ドローンは、強風の影響を受けやすくなる。
【0004】
ドローンの異常を監視する技術に関連して、異常発生状態を素早く正確に検知又は予測する自律移動装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。航空機の飛行計画において微細風況を考慮した航空機の運航を提供するシステムも知られている(例えば、特許文献2及び特許文献4を参照)。
【0005】
飛行中のUAVのモデル化された加速度と飛行中のUAVの実加速度とに基づいて、UAVの運転中の風速を推定するデバイスも知られている(例えば、特許文献3及び特許文献5を参照)。局地風を推定する推定器も知られている(例えば、特許文献6を参照)。ジャイロセンサに意図的な音響ノイズを与えることでドローンを揺り動かす方法も知られている(例えば、非特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-110979号公報
【特許文献2】特開2019-89538号公報
【特許文献3】特開2011-246105号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2019/0147753号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2011/0295569号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2014/0129057号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Y. Son et al., “Rocking Drones with Intentional Sound Noise on Gyroscopic Sensors”, Proceedings of the 24th USENIX Security Symposium, pages 881-896, August 2015.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ドローンが飛行中に遭遇する事象として、気象環境による影響の他に、ドローンを墜落させること等を目的とする人為的な電波攻撃が挙げられる。電波攻撃は、GPS(Global Positioning System)スプーフィング、GPSジャミング、慣性計測装置(Inertial Measurement Unit,IMU)ジャミング等を含む。
【0009】
ドローンに搭載されるIMUには、加速度計とMEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)式ジャイロセンサが含まれていることがある。IMUジャミングは、MEMS式ジャイロセンサに音響ノイズを照射することで、予期しない共振を発生させる電波攻撃である。予期しない共振によって、ジャイロセンサが測定する角速度の測定データが変動するため、ドローンの誤動作が引き起こされる。
【0010】
ドローンが飛行中に遭遇する事象に応じて、事象に対する対応及び対策が異なってくるため、遭遇した事象を特定して適切に対処することが望ましい。例えば、ドローンによる配送では、強風が配送トラブルを引き起こし得るため、ドローンが強風を受けていることを特定し、その情報を他のドローンと共有することで、強風域を迂回する等の対策を立てることが有効である。ドローンが電波攻撃を受けた場合は、電波攻撃の証拠として測定データを保存し、攻撃手口を調査することが有効である。
【0011】
しかしながら、IMUによって測定された加速度、角速度等の測定データが異常値を示す場合、測定データから強風と電波攻撃を識別することは難しい。
【0012】
なお、かかる問題は、強風又は電波攻撃に限らず、様々な種類の事象が異常の原因である場合において生ずるものである。また、かかる問題は、ドローン等のUAVに限らず、様々な種類の航空機において生ずるものである。
【0013】
1つの側面において、本発明は、飛行している航空機の異常の原因を特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
1つの案では、コンピュータは、以下の処理を実行する。
【0015】
コンピュータは、異常が発生した第1航空機を含む所定範囲の空間を飛行している第2航空機を特定する。コンピュータは、異常が発生した時刻を含む第1期間において第1航空機により測定された第1測定データと、第1期間において第2航空機により測定された第2測定データとを比較した結果に基づいて、異常の原因を特定する。コンピュータは、異常の原因を示す情報を出力する。
【発明の効果】
【0016】
1つの側面によれば、飛行している航空機の異常の原因を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態の異常解析装置の機能的構成図である。
【
図2】第1の異常解析処理のフローチャートである。
【
図3】異常解析装置の具体例を示す機能的構成図である。
【
図5A】第2の異常解析処理のフローチャート(その1)である。
【
図5B】第2の異常解析処理のフローチャート(その2)である。
【
図5C】第2の異常解析処理のフローチャート(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、実施形態を詳細に説明する。
【0019】
例えば、特許文献1の自律移動装置では、機械学習により構築された学習済みモデルに、センサ群によって検知されたセンサデータを入力することで、異常発生状態が検知又は予測される。例えば、強風を受けていない正常な状態でIMUにより測定された測定データを用いて機械学習を行うことで、強風時の異常を検知する学習済みモデルを構築することができる。
【0020】
一方、IMUジャミングが行われた場合も、IMUの測定データに異常値又は急峻な変化が発生し、測定データが機械学習で用いられた正常値から外れるため、異常が検知される。
【0021】
しかしながら、強風とIMUジャミングを識別することは難しく、攻撃者は、測定データの時間変化のパターンを、強風時におけるパターンに近似させることも可能である。このため、単に強風を示す検知結果が出力され、IMUジャミングによる電波攻撃が見逃されてしまう可能性が高い。このような誤検知が発生した場合、電波攻撃に対する適切な対応は行われない。
【0022】
図1は、実施形態の異常解析装置の機能的構成例を示している。
図1の異常解析装置101は、航空機特定部111、原因特定部112、及び出力部113を含む。
【0023】
図2は、
図1の異常解析装置101が行う第1の異常解析処理の例を示すフローチャートである。まず、航空機特定部111は、異常が発生した第1航空機を含む所定範囲の空間を飛行している第2航空機を特定する(ステップ201)。
【0024】
次に、原因特定部112は、異常が発生した時刻を含む第1期間において第1航空機により測定された第1測定データと、第1期間において第2航空機により測定された第2測定データとを比較した結果に基づいて、異常の原因を特定する(ステップ202)。そして、出力部113は、異常の原因を示す情報を出力する(ステップ203)。
【0025】
図1の異常解析装置101によれば、飛行している航空機の異常の原因を特定することができる。
【0026】
図3は、
図1の異常解析装置101の具体例を示している。
図3の異常解析装置301は、取得部311、検知部312、風推定部313、ドローン特定部314、期間特定部315、原因特定部316、出力部317、及び記憶部318を含む。ドローン特定部314、原因特定部316、及び出力部317は、
図1の航空機特定部111、原因特定部112、及び出力部113にそれぞれ対応する。
【0027】
図3の異常解析装置301は、例えば、ドローンの運航を管理する航行管理センターに設置された情報処理装置(コンピュータ)である。異常解析装置301は、複数のドローンのフライトデータを収集して異常解析処理を行うことで、異常の原因を特定する。航行管理センターの管理者は、特定された原因に応じて適切な対応を行うことで、ドローンの安全な運航を実現することができる。航行管理センターは、人口集中地域においてドローンによる配送サービスを提供するための施設であってもよい。
【0028】
取得部311は、各ドローンのフライトデータを取得し、取得されたフライトデータに含まれるIMUデータ321、GPSデータ322、及び消費電力データ323を、記憶部318に格納する。これらのデータは、時系列データである。
【0029】
地上局には通信装置が設置されており、通信装置と各ドローンとの間で無線通信が行われる。例えば、異常解析装置301と地上局の通信装置が通信ネットワークを介して通信することができる場合、取得部311は、通信装置から異常解析装置301へ転送される各ドローンのフライトデータを取得する。
【0030】
IMUデータ321は、ドローンに搭載されたIMUによって測定される測定データであり、各時刻におけるx軸、y軸、及びz軸方向の加速度と、各時刻におけるx軸、y軸、及びz軸周りの角速度とを含む。IMUデータ321は、加速度又は角速度の一方のみを含んでいてもよい。
【0031】
GPSデータ322は、ドローンに搭載されたGPS受信機によって取得されるデータであり、各時刻におけるドローンの位置情報を含む。位置情報は、緯度、経度、及び高度を含んでいてもよい。
【0032】
消費電力データ323は、ドローンに搭載された電力計によって測定される測定データであり、各時刻におけるドローンの消費電力を含む。IMUデータ321及び消費電力データ323に含まれる値は、センサ値と呼ばれることもある。
【0033】
解析対象のドローンが強風を受けている場合、そのドローンの位置を含む所定範囲の空間を飛行している周囲のドローンも同じ強風の影響を受けることが多い。ドローンのプロペラに強風が直接当たると、プロペラが上下振動を起こしてプロペラの回転数が上昇し、ドローンの加速度、角速度、及び消費電力が大きく増加する。
【0034】
これに対して、電波攻撃を受けたドローンは、機体の姿勢を元に戻そうとするため、加速度、角速度、及び消費電力が多少は増加するが、プロペラに強風が直接当たった場合よりも増加量は小さい。したがって、解析対象のドローンのIMUデータ321及び消費電力データ323の時間変化を解析することで、強風と電波攻撃を識別することができる。
【0035】
風は1/fでゆらぐため、強風によって発生するIMUデータ321及び消費電力データ323のピークも、風に合わせて1/fでゆらぐ。fは、ゆらぎの周波数である。
【0036】
これに対して、単純な電波攻撃が行われた場合、IMUデータ321及び消費電力データ323のピークにゆらぎは発生しない。したがって、解析対象のドローンのIMUデータ321及び消費電力データ323のゆらぎを解析することで、強風と電波攻撃を識別することができる。
【0037】
解析対象のドローンが受けた強風が離れた場所を飛行している周囲のドローンに到達するまでには、ある程度の時間がかかる。このため、強風によって発生するIMUデータ321及び消費電力データ323のピークとそのゆらぎも、強風の移動時間に合わせて遅延する。
【0038】
これに対して、攻撃者がIMUジャミングを行うために用いるスピーカは基本的に指向性を有するため、解析対象のドローンと周囲のドローンのすべてに対して同時に音響ノイズを照射することは難しい。アンテナを用いたGPSスプーフィングのような電波攻撃の場合であっても、アンテナは基本的に指向性を有する。無指向性アンテナであっても、垂直方向の指向性を有する。このため、すべてのドローンに対して同時に電波を照射することは難しい。
【0039】
攻撃者が何らかの方法ですべてのドローンに対して同時に電波攻撃を行うことができたと仮定しても、強風の遅延まで再現することは困難である。したがって、解析対象のドローンのIMUデータ321又は消費電力データ323の特徴と、周囲のドローンのIMUデータ321又は消費電力データ323の特徴とを比較することで、強風と電波攻撃を識別することができる。
【0040】
検知部312は、解析対象のドローンのIMUデータ321を用いて、そのドローンの異常を検知し、異常発生を風推定部313及びドローン特定部314へ通知する。検知部312は、例えば、異常検知モデル、変化点検知モデル、又はルールベースを用いて、ドローンの異常を検知することができる。解析対象のドローンは、第1航空機に対応する。
【0041】
異常検知モデルは、IMUデータ321が正常又は異常の何れであるかを推定する学習済みモデルである。異常検知モデルは、例えば、正常値のIMUデータと異常値のIMUデータとを訓練データとして用いた機械学習によって生成される。正常値のIMUデータには、正常を示すラベルが付加され、異常値のIMUデータには、異常を示すラベルが付加される。
【0042】
変化点検知モデルは、IMUデータ321に急峻な時間変化が含まれるか否かを推定する学習済みモデルである。変化点検知モデルは、例えば、急峻な時間変化を含まないIMUデータと、急峻な時間変化を含むIMUデータとを、訓練データとして用いた、機械学習によって生成される。急峻な時間変化を含まないIMUデータには、正常を示すラベルが付加され、急峻な時間変化を含むIMUデータには、異常を示すラベルが付加される。
【0043】
ルールベースには、IMUデータ321に含まれるセンサ値が閾値を超えた場合に、そのセンサ値を異常値と判定する、ルールが設定される。
【0044】
風推定部313は、検知部312から異常発生が通知された場合、解析対象のドローンのIMUデータ321を用いて、そのドローンが受けている風の風向及び風速を推定し、推定結果をドローン特定部314及び期間特定部315へ出力する。風推定部313は、例えば、風推定テーブル又は風推定モデルを用いて、風向及び風速を推定することができる。
【0045】
風推定テーブルには、加速度及び角速度の組み合わせに対応する風向及び風速の組み合わせが登録されている。風推定部313は、IMUデータ321に含まれる加速度及び角速度に対応する風向及び風速を風推定テーブルから取得し、推定結果として出力する。
【0046】
風推定モデルは、IMUデータ321から風向及び風速を推定する学習済みモデルである。風推定モデルは、例えば、ドローンの加速度及び角速度を訓練データとして用いた機械学習によって生成される。訓練データに含まれる加速度及び角速度の組み合わせには、風向及び風速を示すラベルが付加される。
【0047】
風推定部313は、異常発生時の加速度及び角速度とともに、異常発生直前の加速度及び角速度を用いて、風向及び風速を推定してもよい。
【0048】
ドローン特定部314は、検知部312から異常の発生が通知された場合、解析対象のドローンの位置を含む所定範囲の空間を飛行している1台又は複数台の周囲のドローンを、近傍ドローンとして特定する。近傍ドローンは、例えば、解析対象のドローンの位置から所定距離の範囲内を飛行しているドローンである。
【0049】
ドローン特定部314は、例えば、異常発生直前における各ドローンのGPSデータ322、又は各ドローンの飛行経路を示す経路計画情報を用いて、近傍ドローンを特定することができる。
【0050】
次に、ドローン特定部314は、近傍ドローンのうち、解析対象のドローンと同じ風の影響を受けたと推定される1台又は複数台のドローンを、参照ドローンとして特定し、参照ドローンを示すドローン情報324を記憶部318に格納する。参照ドローンは、第2航空機に対応する。
【0051】
ドローン特定部314は、例えば、解析対象のドローンの位置と、各近傍ドローンの位置と、風推定部313によって推定された風向及び風速とを用いて、参照ドローンを特定する。各ドローンの位置は、GPSデータ322又は経路計画情報を用いて求められる。
【0052】
まず、ドローン特定部314は、異常が発生した時刻tにおける解析対象のドローンの位置を通り、かつ、推定された風向が示す方向に延びる直線Lを決定する。次に、ドローン特定部314は、時刻tの前後の各時刻における各近傍ドローンの位置を調べ、何れかの時刻において直線L上に存在する近傍ドローンを特定する。
【0053】
次に、ドローン特定部314は、推定された風速を用いて、直線L上に存在する近傍ドローンが、その位置において解析対象のドローンと同じ風の影響を受けるか否かをチェックする。直線L上に存在する近傍ドローンが同じ風の影響を受ける場合、ドローン特定部314は、その近傍ドローンを参照ドローンとして特定する。
【0054】
解析対象のドローンの周囲を飛行している近傍ドローンの中から、風向及び風速に基づいて参照ドローンを特定することで、解析対象のドローンと同じ風の影響を受けたと推定されるドローンを精度良く特定することができる。
【0055】
図4は、参照ドローンの例を示している。ドローン401-1は、解析対象のドローンであり、強風402の中を飛行している。IMUデータ411-1は、ドローン401-1のIMUデータ321である。IMUデータ411-1に含まれる3つのピークの間隔は、強風402によって発生するゆらぎを表している。
【0056】
IMUデータ411-1に含まれる時刻tのセンサ値が異常値として検知された場合、ドローン401-1から所定距離の範囲内を飛行しているドローン401-2~ドローン401-6が、近傍ドローンとして特定される。そして、ドローン401-2~ドローン401-6のうち、強風402が通過する領域403内のドローン401-2及びドローン401-3が、参照ドローンとして特定される。
【0057】
このとき、風推定部313は、強風402の風向及び風速を推定する。ドローン特定部314は、時刻tにおけるドローン401-1の位置を通り、かつ、強風402の風向が示す方向に延びる直線Lを決定する。
【0058】
次に、ドローン特定部314は、時刻tの前後の各時刻におけるドローン401-2~ドローン401-6の位置を調べる。そして、ドローン特定部314は、時刻tよりも前の時刻t1において直線L上に存在するドローン401-2と、時刻tよりも後の時刻t2において直線L上に存在するドローン401-3とを特定する。
【0059】
次に、ドローン特定部314は、強風402の風速を用いて、時刻t1において風上に存在するドローン401-2が、その位置において強風402の影響を受けるか否かをチェックする。この例では、ドローン401-2が強風402の影響を受けると判定され、ドローン401-2が参照ドローンとして特定される。
【0060】
同様にして、ドローン特定部314は、強風402の風速を用いて、時刻t2において風下に存在するドローン401-3が、その位置において強風402の影響を受けるか否かをチェックする。この例では、ドローン401-3が強風402の影響を受けると判定され、ドローン401-3が参照ドローンとして特定される。
【0061】
IMUデータ411-2は、ドローン401-2のIMUデータ321であり、IMUデータ411-3は、ドローン401-3のIMUデータ321である。IMUデータ411-2及びIMUデータ411-3に含まれる3つのピークの間隔も、IMUデータ411-1と同様に、強風402によって発生するゆらぎを表している。
【0062】
次に、期間特定部315は、解析対象のドローンが風の影響を受けている期間T1をシフトさせることで、参照ドローンが同じ風の影響を受けている期間T2を特定し、期間T1及び期間T2を示す期間情報325を、記憶部318に格納する。期間T1としては、例えば、異常が発生した時刻t以降の一定時間の期間が用いられる。期間T1及び期間T2を含む期間は、第1期間の一例であり、期間T2は、第2期間の一例である。
【0063】
期間特定部315は、例えば、解析対象のドローンの位置と、ドローン情報324が示す参照ドローンの位置と、風推定部313によって推定された風向及び風速とを用いて、期間T1をシフトさせる。
【0064】
まず、期間特定部315は、ドローン特定部314と同様にして、推定された風向が示す方向に延びる直線Lを決定する。次に、期間特定部315は、時刻tの前後の各時刻における各参照ドローンの位置を調べ、直線L上における参照ドローンの位置を特定する。
【0065】
次に、期間特定部315は、時刻tにおける解析対象のドローンの位置と、直線L上における参照ドローンの位置との間の距離を計算し、計算された距離を推定された風速で除算することで、その距離を風が移動するのにかかる移動時間ΔTを求める。
【0066】
参照ドローンが風上に存在する場合、期間特定部315は、期間T1をΔTだけ過去にシフトさせることで、期間T2を求める。参照ドローンが風下に存在する場合、期間特定部315は、期間T1をΔTだけ未来にシフトさせることで、期間T2を求める。
【0067】
風向及び風速に基づいて風の移動時間ΔTを求め、期間T1をΔTだけシフトさせることで、解析対象のドローンと同じ風の影響を参照ドローンが受けている期間T2を精度良く特定することができる。
【0068】
図4のIMUデータ411-1に含まれる期間412-1は、期間T1に対応する。IMUデータ411-2に含まれる期間412-2と、IMUデータ411-3に含まれる期間412-3は、期間T2に対応する。
【0069】
期間特定部315は、時刻tにおけるドローン401-1の位置を通り、かつ、強風402の風向が示す方向に延びる直線Lを決定する。次に、期間特定部315は、時刻tの前後の各時刻におけるドローン401-2及びドローン401-3の位置を調べ、直線L上におけるドローン401-2及びドローン401-3の位置を特定する。
【0070】
次に、期間特定部315は、時刻tにおけるドローン401-1の位置と、直線L上におけるドローン401-2の位置との間の距離を計算し、計算された距離を推定された風速で除算することで、風の移動時間ΔTを求める。ドローン401-2はドローン401-1の風上に存在するため、期間特定部315は、期間412-1をΔTだけ過去にシフトさせることで、期間412-2を求める。
【0071】
同様にして、期間特定部315は、時刻tにおけるドローン401-1の位置と、直線L上におけるドローン401-3の位置との間の距離を計算し、計算された距離を推定された風速で除算することで、風の移動時間ΔTを求める。ドローン401-3はドローン401-1の風下に存在するため、期間特定部315は、期間412-1をΔTだけ未来にシフトさせることで、期間412-3を求める。
【0072】
原因特定部316は、参照ドローン毎に、測定データD1の特徴と測定データD2の特徴とを比較する。測定データD1は、期間T1における解析対象のドローンのIMUデータ321及び消費電力データ323を表す。測定データD2は、期間T2における参照ドローンのIMUデータ321及び消費電力データ323を表す。測定データD1及び測定データD2として、IMUデータ321又は消費電力データ323の一方を用いてもよい。
【0073】
測定データD1及び測定データD2の特徴としては、センサ値の変化量、センサ値の変化の傾き、センサ値のピーク、センサ値のスパイク、センサ値のスペクトル等が用いられる。これらの特徴を用いることで、測定データD1及び測定データD2に共通のゆらぎが含まれている否かを判定することができる。
【0074】
原因特定部316は、測定データD1の特徴と測定データD2の特徴とを比較した結果に基づいて、異常の原因となる事象を特定し、その事象を示す原因事象情報326を、記憶部318に格納する。出力部317は、原因事象情報326を出力する。
【0075】
測定データD1は、第1測定データに対応し、測定データD2は、第2測定データに対応する。原因事象情報326は、異常の原因を示す情報に対応する。
【0076】
一例として、原因特定部316は、測定データD1の特徴と測定データD2の特徴とが類似している場合、解析対象のドローンが受けている風が異常の原因であると判定する。原因特定部316は、測定データD1の特徴と測定データD2の特徴とが類似していない場合、風以外の事象が異常の原因であると判定する。
【0077】
風以外の事象としては、電波攻撃、障害物接触、落雷、物理攻撃、障害物接近、あおり運転、機体不備、故障等が挙げられる。
【0078】
電波攻撃は、GPSスプーフィング、GPSジャミング、又はIMUジャミングを含む。障害物接触は、鳥又は他のドローンとの接触を含む。物理攻撃は、捕獲ネット又はモデルガンによる攻撃を含む。障害物接近は、鳥又は他のドローンの接近を含む。あおり運転は、他のドローンによる接近の繰り返しを含む。機体不備は、プロペラの取り付け不備を含む。故障は、各部品の経年劣化、砂埃又は雨による故障を含む。
【0079】
測定データD1及び測定データD2に共通のゆらぎが含まれている場合、測定データD1の特徴と測定データD2の特徴とが類似するため、風が異常の原因であると判定することができる。一方、測定データD1及び測定データD2に共通のゆらぎが含まれていない場合、測定データD1の特徴と測定データD2の特徴とが類似しないため、電波攻撃等が異常の原因であると判定することができる。
【0080】
原因特定部316は、参照ドローン毎に、測定データD1と測定データD2との間の類似度を計算し、類似度を閾値と比較した結果に基づいて、異常の原因となる事象を特定してもよい。
【0081】
所定範囲の空間において参照ドローンが特定されなかった場合、原因特定部316は、解析対象のドローンの測定データD3の時間変化に基づいて、異常の原因を特定する。測定データD3は、期間T3における解析対象のドローンのIMUデータ321又は消費電力データ323を表す。期間T3としては、例えば、異常が発生した時刻t以降の一定時間の期間が用いられる。期間T3は、第3期間の一例であり、測定データD3は、第3測定データの一例である。
【0082】
一例として、原因特定部316は、測定データD3の変化量が閾値よりも大きい場合、解析対象のドローンが受けている風が異常の原因であると判定する。原因特定部316は、測定データD3の変化量が閾値以下である場合、風以外の事象が異常の原因であると判定する。
【0083】
原因特定部316は、測定データD3に含まれるピークの周期性に基づいて、異常の原因を特定してもよい。例えば、原因特定部316は、測定データD3のピークが周期的に発生している場合、解析対象のドローンが受けている風が異常の原因であると判定する。原因特定部316は、測定データD3のピークが周期的に発生していない場合、風以外の事象が異常の原因であると判定する。
【0084】
原因特定部316は、測定データD3の変化量が閾値よりも大きく、かつ、測定データD3のピークが周期的に発生している場合に、解析対象のドローンが受けている風が異常の原因であると判定してもよい。
【0085】
異常解析装置301は、異常の原因が風であると判定された場合、その情報を他のドローンに通知して、強風域を迂回させる処理を行ってもよい。また、異常解析装置301は、異常の原因が風以外の事象であると判定された場合、電波攻撃の可能性があるため、解析対象のドローンのIMUデータ321及び消費電力データ323を証拠として保存する処理を行ってもよい。
【0086】
図3の異常解析装置301によれば、飛行しているドローンに発生した異常の原因が、ドローンが受けている風であるか、又は風以外の事象であるかを精度良く特定することができる。これにより、強風と電波攻撃を識別することができるため、電波攻撃が強風と判定されて見逃されてしまう可能性が減少する。今後、様々な分野で多くのドローンが利用されるようになっても、電波攻撃を的確に検知することで、適切な対応を行うことが可能になる。
【0087】
ドローンによる配送サービスの場合、異常の原因を精度良く特定することで、原因に応じた適切な対応を行うことができる。これにより、配送トラブルが防止され、安全な配送が実現される。
【0088】
消費電力と同様に、ドローンのプロペラに強風が直接当たると、プロペラの駆動電圧も大きく増加し、駆動電圧のピークも風に合わせて1/fでゆらぐ。そこで、異常解析装置301は、消費電力データ323の代わりに、各時刻における駆動電圧を含む電圧データを用いてもよい。駆動電圧は、ドローンに搭載された電圧計によって測定される。
【0089】
図5A~
図5Cは、
図3の異常解析装置301が行う第2の異常解析処理の例を示すフローチャートである。異常解析装置301は、航行管理センターが管理する各ドローンを解析対象として、ドローン毎に異常解析処理を行う。
【0090】
検知部312は、定期的に解析対象のドローンのIMUデータ321を用いて、そのドローンに異常が発生したか否かをチェックする(ステップ501)。異常が発生していない場合(ステップ501,NO)、検知部312は、ステップ501の処理を繰り返す。
【0091】
異常が発生した場合(ステップ501,YES)、ドローン特定部314は、異常が発生した時刻tを記録し、解析対象のドローンの位置を含む所定範囲の空間を飛行している近傍ドローンを特定する(ステップ502)。そして、風推定部313は、解析対象のドローンのIMUデータ321を用いて、そのドローンが受けている風の風向及び風速を推定する(ステップ503)。
【0092】
次に、ドローン特定部314は、近傍ドローンのうち、解析対象のドローンと同じ風の影響を受けたと推定される参照ドローンを特定し、特定された参照ドローンを示すドローン情報324を生成する(ステップ504)。参照ドローンが特定されない場合、ドローン特定部314は、参照ドローンが存在しないことを示すドローン情報324を生成する。
【0093】
次に、原因特定部316は、ドローン情報324に基づいて、参照ドローンが存在するか否かをチェックする(ステップ505)。参照ドローンが存在する場合(ステップ505,YES)、原因特定部316は、制御変数iに1を設定し、制御変数mに0を設定する(ステップ506)。制御変数iは、i番目の参照ドローンを示し、制御変数mは、解析対象のドローンと類似する測定データを有する参照ドローンの個数を示す。
【0094】
次に、期間特定部315は、時刻tにおける解析対象のドローンの位置と、風向が示す直線L上におけるi番目の参照ドローンの位置との間の距離を計算し、計算された距離を風速で除算することで、風の移動時間ΔTを計算する(ステップ507)。
【0095】
次に、期間特定部315は、時刻tを含む期間T1とΔTを用いて、i番目の参照ドローンが同じ風の影響を受けている期間T2を特定し、期間T1及び期間T2を示す期間情報325を生成する(ステップ508)。
【0096】
i番目の参照ドローンが解析対象のドローンの風上に存在する場合、期間特定部315は、期間T1をΔTだけ過去にシフトさせることで、期間T2を求める。i番目の参照ドローンが解析対象のドローンの風下に存在する場合、期間特定部315は、期間T1をΔTだけ未来にシフトさせることで、期間T2を求める。
【0097】
次に、原因特定部316は、解析対象のドローンの測定データD1と、i番目の参照ドローンの測定データD2との間の類似度を計算する(ステップ509)。原因特定部316は、例えば、センサ値の変化量、センサ値の変化の傾き、センサ値のピーク、センサ値のスパイク、センサ値のスペクトル等を用いて、測定データD1と測定データD2との間の類似度を計算する。
【0098】
次に、原因特定部316は、計算された類似度を閾値TH1と比較する(ステップ510)。類似度がTH1よりも大きい場合(ステップ510,YES)、原因特定部316は、mを1だけインクリメントし(ステップ511)、iをドローン情報324が示す参照ドローンの個数Nと比較する(ステップ512)。
【0099】
iがNよりも小さい場合(ステップ512,YES)、原因特定部316は、iを1だけインクリメントし(ステップ515)、異常解析装置301は、ステップ507以降の処理を繰り返す。類似度がTH1以下である場合(ステップ510,NO)、異常解析装置301は、ステップ512以降の処理を行う。
【0100】
iがNに達した場合(ステップ512,NO)、原因特定部316は、mを閾値TH2と比較する(ステップ513)。TH2としては、0以上N未満の実数が用いられる。
【0101】
mがTH2よりも大きい場合(ステップ513,YES)、原因特定部316は、異常の原因が風であると判定する(ステップ514)。mがTH2以下である場合(ステップ513,NO)、原因特定部316は、異常の原因が風以外の事象であると判定する(ステップ516)。
【0102】
解析対象のドローンと類似する測定データを有する参照ドローンの個数mを用いて異常の原因を特定することで、特定された原因の確からしさが向上する。
【0103】
一例として、N=6、TH1=0.90、TH2=4であり、i番目の参照ドローンの類似度S(i)として、次のような値が得られた場合を想定する。
【0104】
S(1)=0.82
S(2)=0.96
S(3)=0.91
S(4)=0.92
S(5)=0.94
S(6)=0.96
【0105】
この場合、S(2)~S(6)がTH1よりも大きいため、m=5となり、mがTH2よりも大きいため、異常の原因が風であると判定される。
【0106】
別の例として、N=6、TH1=0.90、TH2=4であり、次のようなS(i)が得られた場合を想定する。
【0107】
S(1)=0.56
S(2)=0.91
S(3)=0.12
S(4)=0.17
S(5)=0.29
S(6)=0.81
【0108】
この場合、S(2)のみがTH1よりも大きいため、m=1となり、mがTH2よりも小さいため、異常の原因が風以外の事象であると判定される。
【0109】
参照ドローンが存在しない場合(ステップ505,NO)、原因特定部316は、解析対象のドローンのIMUデータ321に含まれるセンサ値の期間T3における変化量を求め、その変化量を閾値TH3と比較する(ステップ517)。
【0110】
変化量がTH3よりも大きい場合(ステップ517,YES)、原因特定部316は、解析対象のドローンの消費電力データ323に含まれるセンサ値の期間T3における変化量を求め、その変化量を閾値TH4と比較する(ステップ518)。
【0111】
変化量がTH4よりも大きい場合(ステップ518,YES)、原因特定部316は、解析対象のドローンのIMUデータ321に含まれるセンサ値の期間T3におけるピークを求め、それらのピークが周期的であるか否かをチェックする(ステップ519)。
【0112】
ピークが周期的である場合(ステップ519,YES)、原因特定部316は、解析対象のドローンの消費電力データ323に含まれるセンサ値の期間T3におけるピークを求め、それらのピークが周期的であるか否かをチェックする(ステップ520)。
【0113】
ピークが周期的である場合(ステップ520,YES)、原因特定部316は、異常の原因が風であると判定する(ステップ521)。
【0114】
IMUデータ321の変化量がTH3以下である場合(ステップ517,NO)、又は消費電力データ323の変化量がTH4以下である場合(ステップ518,NO)、原因特定部316は、異常の原因が風以外の事象であると判定する(ステップ522)。IMUデータ321のピークが周期的ではない場合(ステップ519,NO)、又は消費電力データ323のピークが周期的ではない場合(ステップ520,NO)、原因特定部316は、異常の原因が風以外の事象であると判定する(ステップ522)。
【0115】
IMUデータ321の変化量及び周期性と、消費電力データ323の変化量及び周期性とを用いて、異常の原因を特定することで、参照ドローンが存在しない場合であっても、風と風以外の事象とを識別することができる。
【0116】
一例として、TH3=0.6、TH4=0.6であり、IMUデータ321の変化量ΔE及び消費電力データ323の変化量ΔPとして、次のような値が得られた場合を想定する。
【0117】
ΔE=0.72
ΔP=0.61
【0118】
この場合、ΔEはTH3よりも大きく、ΔPはTH4よりも大きい。したがって、IMUデータ321のピーク及び消費電力データ323のピークがともに周期的である場合、異常の原因が風であると判定される。
【0119】
別の例として、TH3=0.6、TH4=0.6であり、次のようなΔE及びΔPが得られた場合を想定する。
【0120】
ΔE=0.61
ΔP=0.49
【0121】
この場合、ΔEはTH3よりも大きく、ΔPはTH4よりも小さい。したがって、異常の原因が風以外の事象であると判定される。
【0122】
図6は、
図1の異常解析装置101及び
図3の異常解析装置301として用いられる情報処理装置のハードウェア構成例を示している。
図6の情報処理装置は、CPU(Central Processing Unit)601、メモリ602、入力装置603、出力装置604、補助記憶装置605、媒体駆動装置606、及びネットワーク接続装置607を含む。これらの構成要素はハードウェアであり、バス608により互いに接続されている。
【0123】
メモリ602は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリであり、処理に用いられるプログラム及びデータを記憶する。メモリ602は、
図3の記憶部318として動作してもよい。
【0124】
CPU601(プロセッサ)は、例えば、メモリ602を利用してプログラムを実行することにより、
図1の航空機特定部111及び原因特定部112として動作する。CPU601は、メモリ602を利用してプログラムを実行することにより、
図3の取得部311、検知部312、風推定部313、ドローン特定部314、期間特定部315、及び原因特定部316としても動作する。
【0125】
入力装置603は、例えば、キーボード、ポインティングデバイス等であり、管理者からの指示又は情報の入力に用いられる。出力装置604は、例えば、表示装置、プリンタ等であり、管理者への問い合わせ又は指示、及び処理結果の出力に用いられる。処理結果は、原因事象情報326であってもよい。出力装置604は、
図1の出力部113又は
図3の出力部317として動作してもよい。
【0126】
補助記憶装置605は、例えば、磁気ディスク装置、光ディスク装置、光磁気ディスク装置、テープ装置等である。補助記憶装置605は、ハードディスクドライブであってもよい。情報処理装置は、補助記憶装置605にプログラム及びデータを格納しておき、それらをメモリ602にロードして使用することができる。補助記憶装置605は、
図3の記憶部318として動作してもよい。
【0127】
媒体駆動装置606は、可搬型記録媒体609を駆動し、その記録内容にアクセスする。可搬型記録媒体609は、メモリデバイス、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク等である。可搬型記録媒体609は、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、USB(Universal Serial Bus)メモリ等であってもよい。管理者は、可搬型記録媒体609にプログラム及びデータを格納しておき、それらをメモリ602にロードして使用することができる。
【0128】
このように、処理に用いられるプログラム及びデータを格納するコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、メモリ602、補助記憶装置605、又は可搬型記録媒体609のような、物理的な(非一時的な)記録媒体である。
【0129】
ネットワーク接続装置607は、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)等の通信ネットワークに接続され、通信に伴うデータ変換を行う通信インタフェース回路である。情報処理装置は、プログラム及びデータを外部の装置からネットワーク接続装置607を介して受信し、それらをメモリ602にロードして使用することができる。
【0130】
ネットワーク接続装置607は、通信ネットワークを介して地上局の通信装置と通信することができる。ネットワーク接続装置607は、
図1の出力部113又は
図3の出力部317として動作してもよい。
【0131】
異常解析装置101及び異常解析装置301は、ドローンに搭載することも可能である。この場合、各ドローンは、地上局又は航行管理センターを介して、他のドローンのフライトデータを取得することができる。各ドローンは、他のドローンと直接通信することで、そのドローンのフライトデータを取得してもよい。
【0132】
図7は、このようなドローンのハードウェア構成例を示している。
図7のドローンは、IMU711、電力計712、情報処理装置713、及びGPS受信機714を含む。これらの構成要素はハードウェアである。
【0133】
IMU711は、各時刻におけるドローンの加速度及び角速度を測定して、情報処理装置713へ出力する。電力計712は、各時刻におけるドローンの消費電力を測定して、情報処理装置713へ出力する。GPS受信機714は、各時刻におけるドローンの位置情報を取得して、情報処理装置713へ出力する。
【0134】
情報処理装置713は、
図6の情報処理装置に対応する。この場合、ネットワーク接続装置607は、無線通信を行う通信インタフェース回路であり、地上局、航行管理センター、又は他のドローンから、他のドローンのフライトデータを受信する。入力装置603及び出力装置604は、省略してもよい。
【0135】
図1の異常解析装置101及び
図3の異常解析装置301の構成は一例に過ぎず、異常解析装置の用途又は条件に応じて一部の構成要素を省略又は変更してもよい。
【0136】
図6の情報処理装置及び
図7のドローンの構成は一例に過ぎず、異常解析装置の用途又は条件に応じて一部の構成要素を省略又は変更してもよい。例えば、可搬型記録媒体609又は通信ネットワークを使用しない場合は、媒体駆動装置606又はネットワーク接続装置607を省略することができる。
【0137】
図2及び
図5A~
図5Cのフローチャートは一例に過ぎず、異常解析装置101又は異常解析装置301の構成又は条件に応じて、一部の処理を省略又は変更してもよい。異常解析装置101及び異常解析装置301は、ドローン以外のUAV、又はUAV以外の航空機を解析対象として、異常解析処理を行ってもよい。
【0138】
図4に示した近傍ドローン及び参照ドローンは一例に過ぎず、近傍ドローン及び参照ドローンは、解析対象のドローンが飛行している場所、風向、及び風速に応じて変化する。
【0139】
開示の実施形態とその利点について詳しく説明したが、当業者は、特許請求の範囲に明確に記載した本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更、追加、省略をすることができるであろう。
【0140】
図1乃至
図7を参照しながら説明した実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
異常が発生した第1航空機を含む所定範囲の空間を飛行している第2航空機を特定し、
前記異常が発生した時刻を含む第1期間において前記第1航空機により測定された第1測定データと、前記第1期間において前記第2航空機により測定された第2測定データとを比較した結果に基づいて、前記異常の原因を特定し、
前記異常の原因を示す情報を出力する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする異常解析方法。
(付記2)
前記第2測定データは、前記第1期間の中に含まれる第2期間において前記第2航空機により測定されることを特徴とする付記1記載の異常解析方法。
(付記3)
前記第2航空機を特定する処理は、
前記所定範囲の空間を飛行している1台又は複数台の航空機を特定する処理と、
前記第1航空機の位置と、前記1台又は複数台の航空機各々の位置と、前記第1航空機が受けた風の風速とに基づいて、前記1台又は複数台の航空機の中から前記第2航空機を特定する処理と、
を含むことを特徴とする付記1記載の異常解析方法。
(付記4)
前記異常の原因を特定する処理は、
前記第1測定データと前記第2測定データとが類似している場合、前記風が前記異常の原因であると判定する処理と、
前記第1測定データと前記第2測定データとが類似していない場合、前記風以外の事象が前記異常の原因であると判定する処理と、
を含むことを特徴とする付記3記載の異常解析方法。
(付記5)
前記第2航空機を特定する処理は、1台又は複数台の前記第2航空機を特定する処理を含み、
前記異常の原因を特定する処理は、
前記第1測定データと、前記1台又は複数台の前記第2航空機各々により測定された前記第2測定データとの間の類似度を計算する処理と、
前記類似度を閾値と比較した結果に基づいて、前記異常の原因を特定する処理と、
を含むことを特徴とする付記1乃至3の何れか1項に記載の異常解析方法。
(付記6)
前記所定範囲の空間において前記第2航空機が特定されない場合、前記異常が発生した時刻以降の第3期間において前記第1航空機により測定された第3測定データの時間変化に基づいて、前記異常の原因を特定する処理を、前記コンピュータがさらに実行することを特徴とする付記1乃至3の何れか1項に記載の異常解析方法。
(付記7)
前記第1測定データは、前記第1航空機の加速度、角速度、消費電力、又は駆動電圧の測定データであり、前記第2測定データは、前記第2航空機の加速度、角速度、消費電力、又は駆動電圧の測定データであることを特徴とする付記1乃至3の何れか1項に記載の異常解析方法。
(付記8)
異常が発生した第1航空機を含む所定範囲の空間を飛行している第2航空機を特定する航空機特定部と、
前記異常が発生した時刻を含む第1期間において前記第1航空機により測定された第1測定データと、前記第1期間において前記第2航空機により測定された第2測定データとを比較した結果に基づいて、前記異常の原因を特定する原因特定部と、
前記異常の原因を示す情報を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする異常解析装置。
(付記9)
前記第2測定データは、前記第1期間の中に含まれる第2期間において前記第2航空機により測定されることを特徴とする付記8記載の異常解析装置。
(付記10)
前記航空機特定部は、前記所定範囲の空間を飛行している1台又は複数台の航空機を特定し、前記第1航空機の位置と、前記1台又は複数台の航空機各々の位置と、前記第1航空機が受けた風の風速とに基づいて、前記1台又は複数台の航空機の中から前記第2航空機を特定することを特徴とする付記8記載の異常解析装置。
(付記11)
前記原因特定部は、前記第1測定データと前記第2測定データとが類似している場合、前記風が前記異常の原因であると判定し、前記第1測定データと前記第2測定データとが類似していない場合、前記風以外の事象が前記異常の原因であると判定することを特徴とする付記10記載の異常解析装置。
(付記12)
前記航空機特定部は、1台又は複数台の前記第2航空機を特定し、
前記原因特定部は、前記第1測定データと、前記1台又は複数台の前記第2航空機各々により測定された前記第2測定データとの間の類似度を計算し、前記類似度を閾値と比較した結果に基づいて、前記異常の原因を特定することを特徴とする付記8乃至10の何れか1項に記載の異常解析装置。
(付記13)
前記原因特定部は、前記所定範囲の空間において前記第2航空機が特定されない場合、前記異常が発生した時刻以降の第3期間において前記第1航空機により測定された第3測定データの時間変化に基づいて、前記異常の原因を特定することを特徴とする付記8乃至10の何れか1項に記載の異常解析装置。
(付記14)
異常が発生した第1航空機を含む所定範囲の空間を飛行している第2航空機を特定し、
前記異常が発生した時刻を含む第1期間において前記第1航空機により測定された第1測定データと、前記第1期間において前記第2航空機により測定された第2測定データとを比較した結果に基づいて、前記異常の原因を特定し、
前記異常の原因を示す情報を出力する、
処理をコンピュータに実行させるための異常解析プログラム。
(付記15)
前記第2測定データは、前記第1期間の中に含まれる第2期間において前記第2航空機により測定されることを特徴とする付記14記載の異常解析プログラム。
(付記16)
前記第2航空機を特定する処理は、
前記所定範囲の空間を飛行している1台又は複数台の航空機を特定する処理と、
前記第1航空機の位置と、前記1台又は複数台の航空機各々の位置と、前記第1航空機が受けた風の風速とに基づいて、前記1台又は複数台の航空機の中から前記第2航空機を特定する処理と、
を含むことを特徴とする付記14記載の異常解析プログラム。
(付記17)
前記異常の原因を特定する処理は、
前記第1測定データと前記第2測定データとが類似している場合、前記風が前記異常の原因であると判定する処理と、
前記第1測定データと前記第2測定データとが類似していない場合、前記風以外の事象が前記異常の原因であると判定する処理と、
を含むことを特徴とする付記16記載の異常解析プログラム。
(付記18)
前記第2航空機を特定する処理は、1台又は複数台の前記第2航空機を特定する処理を含み、
前記異常の原因を特定する処理は、
前記第1測定データと、前記1台又は複数台の前記第2航空機各々により測定された前記第2測定データとの間の類似度を計算する処理と、
前記類似度を閾値と比較した結果に基づいて、前記異常の原因を特定する処理と、
を含むことを特徴とする付記14乃至16の何れか1項に記載の異常解析プログラム。
(付記19)
前記所定範囲の空間において前記第2航空機が特定されない場合、前記異常が発生した時刻以降の第3期間において前記第1航空機により測定された第3測定データの時間変化に基づいて、前記異常の原因を特定する処理を、前記コンピュータにさらに実行させることを特徴とする付記14乃至16の何れか1項に記載の異常解析プログラム。
【符号の説明】
【0141】
101、301 異常解析装置
111 航空機特定部
112、316 原因特定部
113、317 出力部
311 取得部
312 検知部
313 風推定部
314 ドローン特定部
315 期間特定部
318 記憶部
321、411-1~411-3 IMUデータ
322 GPSデータ
323 消費電力データ
324 ドローン情報
325 期間情報
326 原因事象情報
401-1~401-6 ドローン
402 強風
403 領域
412-1~412-3 期間
601 CPU
602 メモリ
603 入力装置
604 出力装置
605 補助記憶装置
606 媒体駆動装置
607 ネットワーク接続装置
608 バス
609 可搬型記録媒体
711 IMU
712 電力計
713 情報処理装置
714 GPS受信機