(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039362
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】自動分注装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
G01N35/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143865
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 弘貴
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058BB02
2G058BB09
2G058BB19
2G058CB16
2G058CC02
2G058CD23
2G058EA04
2G058ED35
(57)【要約】
【課題】自動分注装置において、適切な接触分注を安定的に行えるようにする。
【解決手段】試料容器300、400が収容される複数の凹部204を有する試料容器保持部200と、前記複数の凹部の各々に収容された前記試料容器に下方から当接して該試料容器を上方に付勢する付勢部材205と、先端から液体を吐出する吐出管171を有し、吐出管の先端を試料容器内の所定の分注対象位置に上方から押し付けた状態で液体を吐出する液体分注機構と、を有する自動分注装置。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料容器が収容される複数の凹部を有する試料容器保持部と、
前記複数の凹部の各々に設けられ、該凹部に収容された前記試料容器を上方に付勢する付勢部材と、
先端から液体を吐出する吐出管を有し、該吐出管の先端を前記試料容器内の所定の分注対象位置に上方から押し付けた状態で前記液体を吐出する液体分注機構と、
を有する自動分注装置。
【請求項2】
前記液体分注機構が、前記吐出管の先端を前記試料容器の上方の所定の初期位置から予め定められた距離だけ下降させた上で、前記液体の吐出を行うものである、請求項1に記載の自動分注装置。
【請求項3】
前記付勢部材が、前記試料容器に下方から当接するものである請求項1に記載の自動分注装置。
【請求項4】
前記試料容器保持部が、前記試料容器として、フィルタと、該フィルタによって仕切られた上部空間及び下部空間とを有する容器を保持するものであって、
前記分注対象位置が、前記複数の凹部の各々に収容された前記試料容器が備える前記フィルタの上面の位置である、
請求項1に記載の自動分注装置。
【請求項5】
前記試料容器保持部が、伝熱ブロックと、該伝熱ブロックを加熱するヒータと、を備えた温調機であって、前記複数の凹部が、前記伝熱ブロックの上面に設けられている請求項1に記載の自動分注装置。
【請求項6】
複数の試料保持領域が形成された試料プレートを保持する試料プレート保持部と、
前記試料プレートの下面の、前記複数の試料保持領域の各々に対応する位置に設けられ、該試料プレートを上方に付勢する付勢部材と、
先端から液体を吐出する吐出管を有し、前記複数の試料保持領域の各々に対し、該吐出管の先端を上方から押し付けた状態で前記液体を吐出する液体分注機構と、
を有する自動分注装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフ、ガスクロマトグラフ、又は質量分析装置等の分析機器を用いた試料の分析では、分析に先立って、試料に含まれる検出対象物の抽出、精製、濃縮、希釈、標識化、又は染色等の前処理が必要な場合がある。従来、こうした試料の前処理を効率的に行うため、複数の試料容器に液体試料又は試薬等の液体を自動的に分注する自動分注装置が用いられている。このような自動分注装置は、例えば、分注ピペットと、該分注ピペットを把持可能なロボットアームを備えており、該ロボットアームが分注ピペットを把持して移動させると共に該分注ピペットを操作することによって、試薬等の液体を所定量採取し、その後、該液体を所定の試料容器内に吐出する(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような自動分注装置では、微量の液体を安定的に分注するために、前記分注ピペットに取り付けられたピペットチップの先端を試料容器の内底面などの吐出対象位置に接触させた状態で液体を吐出する、いわゆる接触分注が行われる場合がある。このような接触分注を適切に行うためには、前記ロボットアームによって分注ピペットを試料容器直上に移動させた上で、ピペットチップの先端が前記吐出対象位置に接触するまで分注ピペットを下降させてから前記液体の吐出を行う必要がある。しかしながら、分注ピペットの下降開始時におけるピペットチップの先端位置から前記吐出対象位置までの距離は、分注ピペットに対するピペットチップの嵌合深さのばらつき、ロボットアームの位置再現性の限界、試料容器又は該試料容器を保持する容器ラックの寸法のばらつき等の要因によって変動する。そのため、ピペットチップの先端を前記吐出対象位置に接触させるために必要な距離として予め定められた距離だけ分注ピペットを下降させるようロボットアームを制御しても、ピペットチップが吐出対象位置に接触しない状態又は過剰に接触した状態となって、適切な接触分注が行われない場合があった。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、自動分注装置において、適切な接触分注を安定的に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために成された本発明に係る自動分注装置は、
試料容器が収容される複数の凹部を有する試料容器保持部と、
前記複数の凹部の各々に設けられ、該凹部に収容された前記試料容器を上方に付勢する付勢部材と、
先端から液体を吐出する吐出管を有し、該吐出管の先端を前記試料容器内の所定の分注対象位置に上方から押し付けた状態で前記液体を吐出する液体分注機構と、
を有するものである。
【0007】
また、上記課題を解決するために成された本発明に係る自動分注装置は、
複数の試料保持領域が形成された試料プレートを保持する試料プレート保持部と、
前記試料プレートの下面の、前記複数の試料保持領域の各々に対応する位置に設けられ、該試料プレートを上方に付勢する付勢部材と、
先端から液体を吐出する吐出管を有し、前記複数の試料保持領域の各々に対し、該吐出管の先端を上方から押し付けた状態で前記液体を吐出する液体分注機構と、
を有するものであってもよい。
【発明の効果】
【0008】
上記構成を有する本発明に係る自動分注装置によれば、適切な接触分注を安定的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る試料前処理装置の概略構成を示す平面図。
【
図2】前記試料前処理装置で用いられるスピンカラム及びコレクションチューブの縦断面図。
【
図3】前記試料前処理装置に設けられた温調機に前記スピンカラム及びコレクションチューブを保持させた状態を示す縦断面図。
【
図4】本発明の別の実施形態に係る試料前処理装置において、プレートホルダ上の平板状プレートに接触分注を行う様子を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る自動分注装置の一実施形態である試料前処理装置について、図面を参照しつつ説明する。
図1は本実施形態に係る試料前処理装置の概略構成を示す上面図である。この試料前処理装置は、筐体100と、筐体100内に配置された温調機200(本発明における試料容器保持部に相当)、遠心機110、分注器161、及びロボットアーム120と、制御部130と、を備えている。なお、本実施形態においては、分注器161、ロボットアーム120、及び制御部130が共同して本発明における液体分注機構として機能する。筐体100内には、更に、ロボットアーム120を囲むように、複数のスピンカラム300を収容したカラムラック141が配置されるカラムラック配置部140と、複数のコレクションチューブ400を収容したチューブラック151が配置されるチューブラック配置部150と、1つ又は複数の分注器161が収容される分注器収容部160と、複数のピペットチップ171を収容したチップラック172が配置されるチップラック配置部170と、1つ以上の試薬容器181を収容した試薬ラック182が配置される試薬ラック配置部180と、使用済みのスピンカラム300及びピペットチップ171が廃棄される消耗品廃棄部191と、前処理後の試料が収容されたコレクションチューブ400が収容される前処理済試料収容部192と、が設けられている。
【0011】
本実施形態における分注器161としては、例えば、マイクロピペットが用いられる。マイクロピペットは、一般に、シリンダーと、プランジャ(又はピストン)と、シリンダーの下端に接続された管状のノズルと、を備えており、前記ノズルの下端に使い捨てのピペットチップ(本発明における吐出管に相当)を装着した状態で前記プランジャを前記シリンダー内で上下動させることにより、前記ピペットチップ内に液体を吸引したり該ピペットチップから液体を吐出したりできるようになっている。なお、前記マイクロピペットとしては、例えば、前記プランジャを駆動するためのモータが内蔵されると共に、該モータの駆動による吸引動作及び吐出動作の実行を指示するための操作ボタンを備えた、電動式のマイクロピペットを用いることができる。ただし、これに限定されるものではなく、前記プランジャの上端に連結されたプッシュロッドと該プッシュロッドを上方に付勢するばねを有し、該プッシュロッドの上端に設けられたプッシュボタンを押し下げたり、該ボタンの押し下げを解除したりすることによって、前記プランジャの上下動を行う、いわゆる手動式のマイクロピペットを使用してもよい。
【0012】
ロボットアーム120は、スピンカラム300、コレクションチューブ400、及び分注器161を把持可能且つ分注器161に設けられた前記操作ボタン又は前記プッシュボタンを操作可能なハンド部121を備えている。
【0013】
上述の温調機200、遠心機110、及びロボットアーム120は制御部130によって制御される。制御部130の実体は、専用のコンピュータ又はパーソナルコンピュータ等の汎用のコンピュータであって、該コンピュータにインストールされた所定のプログラムを実行することによって本実施形態における制御部130の機能が実現される。
図1では、制御部130を筐体100外に配置しているが、制御部130を筐体内に配置してもよい。なお、制御部130には、キーボード又は操作ボタン等から成る入力部と液晶ディスプレイ等から成る表示部が接続されているが、簡略化のため図示を省略している。
【0014】
カラムラック141には
図2に示すようなスピンカラム300が多数保持され、チューブラック151には同図に示すようなコレクションチューブ400が多数保持される。
【0015】
コレクションチューブ400としては、底部が閉鎖され上部が開口された、円筒状又は下方に向けて径が小さくなる略円錐状の本体と、ヒンジを介して該本体の上端部の周縁に連結され、前記本体の上部開口を閉塞可能な蓋とを備えた、いわゆるマイクロチューブを用いることができる(
図2~
図3では簡略化のため、蓋の図示を省略している)。ただし、本実施形態におけるコレクションチューブ400は、このようなマイクロチューブに限定されるものではなく、液体を収容可能且つ後述のスピンカラム300を装着可能なものであれば、いかなるものであってもよい。
【0016】
一方、スピンカラム300は、円形の上部開口及び該上部開口よりも径の小さい下部開口を備えた筒部301と、筒部301の内部に保持されたフィルタ302とを有しており、
図2の右側に示すように、コレクションチューブ400の上部に挿入可能となっている。なお、フィルタ302は、固相抽出に用いられるものであればいかなるものであってもよく、例えば、シリカモノリス、シリカメンブレン、セルロースメンブレン、又はイオン交換樹脂などの樹脂性の担体から成るものなどを用いることができる。
【0017】
上述のようにスピンカラム300をコレクションチューブ400に装着した状態におけるスピンカラム300及びコレクションチューブ400が、本発明に係る試料容器に相当する。また、前記状態において、スピンカラム300の筒部301の内部空間のうちフィルタ302よりも上の領域が本発明における上部空間に相当し、同状態において、コレクションチューブ400の内部空間のうち、スピンカラム300が装着されている領域よりも下側の領域が本発明における下部空間に相当する。
【0018】
温調機200は、ベース部201と、ベース部201上に載置された伝熱ブロック203とを備えている。ベース部201は、その上部に伝熱ブロック203を収容するための凹部を有しており、該凹部の内底面の下方には伝熱ブロック203を加熱するためのヒータ202と、伝熱ブロック203の温度を測定するための温度センサ(図示略)が設けられている。なお、温調機200は、上記のようなヒータ202による加熱機能に加えて、例えば、ファン又はペルチェ素子等による冷却機能を備えたものとしてもよい。伝熱ブロック203は、例えばアルミ等の熱伝導性の高い素材で構成されており、その上面には、コレクションチューブ400を収容するための凹部であるチューブ収容部204(本発明における凹部に相当)が設けられている。各チューブ収容部204の下方には、円筒形の空洞が設けられており、該空洞にはスプリングプランジャ205(本発明における付勢部材に相当)が嵌め込まれている。なお、前記空洞は、上端がチューブ収容部204の内底面に開口し下端が伝熱ブロック203の下面に開口した貫通孔とするほか、上端のみが開口した凹状の形状としてもよい。
【0019】
スプリングプランジャ205は、中空円柱状のホルダ206と、ホルダ206に収容された圧縮コイルばね210と、その一部がホルダ206から出没自在なピン部材207とを備えている。ピン部材207は、ホルダ206の上面に設けられた貫通孔(図示略)からホルダ206外に突出する突出部208と、突出部208の基端に設けられ、ホルダ206内を上下に摺動可能なフランジ状の抜け止め部209とを備えている。抜け止め部209の下面は圧縮コイルばね210の上端と当接しており、この圧縮コイルばね210の付勢力によってピン部材207は常に上方へと付勢されている。なお、上記のようなピン部材207を備えたスプリングプランジャ205に代えて、その一部がホルダ206から出没自在なボールと、該ボールを付勢するばねとを備えた所謂ボールプランジャを用いるようにしてもよい。
【0020】
以下、本実施形態に係る前処理装置による前処理の流れについて説明する。前処理の開始時点において、カラムラック141及びチューブラック151には、それぞれ複数のスピンカラム300及び複数のコレクションチューブ400が保持されている。このとき、各スピンカラム300には、予め所定量の液体試料が添加され、該試料中の目的成分がフィルタ302に吸着された状態となっている。
【0021】
まず、制御部130の制御の下に、ロボットアーム120が、チューブラック151に保持されたコレクションチューブ400を把持して温調機200のチューブ収容部204に収容し、続いて、カラムラック141に保持されたスピンカラム300を把持して温調機200上のコレクションチューブ400に装着する。このとき、各チューブ収容部204の内部では、コレクションチューブ400の底部が、スプリングプランジャ205のピン部材207の先端に接触した状態となる。ただし、スピンカラム300及びコレクションチューブ400は比較的軽量であるため、コレクションチューブ400との接触によるピン部材207の押し下げは殆ど発生しない。
【0022】
次に、ロボットアーム120が、分注器収容部160に収容された分注器161を把持すると共に、分注器161をチップラック配置部170の上方に移動させ、チップラック172に収容されたピペットチップ171のいずれかに向けて分注器161を下降させることによって、分注器161のノズルの先端にピペットチップ171を装着する。
【0023】
次に、ロボットアーム120が分注器161を移動させて試薬ラック182上のいずれかの試薬容器181にピペットチップ171の先端を挿入すると共に分注器161に設けられた操作ボタン等を操作することによって、所定量の試薬を採取する。
【0024】
その後、ロボットアーム120が、温調機200上のいずれかのチューブ収容部204に収容されたコレクションチューブ400及びスピンカラム300の直上に分注器161を移動させる。そして、その位置(以下、初期位置とよぶ)から予め定められた距離だけ分注器161を下降させて、ピペットチップ171の先端をスピンカラム300内のフィルタ302の上面中央(本発明における分注対象位置に相当)に当接させる(
図3を参照)。そして、その状態でロボットアーム120が分注器161に設けられた操作ボタン等を操作することによってピペットチップ171から前記試薬を吐出させる。
【0025】
ただし、前記初期位置の高さからフィルタ302の上面までの距離(以下、初期位置-フィルタ間距離とよぶ)は、例えば、分注器161のノズルに対するピペットチップ171の嵌合深さのばらつき、ロボットアーム120の位置再現性の限界、コレクションチューブ400、スピンカラム300、及びチューブ収容部204の寸法のばらつき等の要因によって変動する。そこで、このような初期位置-フィルタ間距離の変動を吸収するため、スプリングプランジャ205におけるピン部材207のストロークは、上記要因による変動を考慮した場合の初期位置-フィルタ間距離の最大値と最小値の差以上の大きさとし、前記初期位置からの下降距離は、上記のような距離変動がないと仮定した場合における初期位置-フィルタ間距離よりも、所定の距離だけ大きい値とする(前記所定の距離が本発明における変位量に相当する)。これにより、上記のような初期位置-フィルタ間距離の変動に拘わらず、常にピペットチップ171の先端をフィルタ302上部に当接させた状態で試薬の吐出を行うことができ、試薬の分注量が微量な場合でも安定した分注を行うことが可能となる。また、分注器161の降下によってピペットチップ171の先端がフィルタ302の上面に押し付けられた際に、その押し付け力によってスプリングプランジャ205の圧縮コイルばね210が圧縮されて、コレクションチューブ400とスピンカラム300が僅かに下降する。そのため、ピペットチップ171がフィルタ302の上面に強く押し付けられるのを防いでフィルタ302の損傷を防止することができる。
【0026】
なお、圧縮コイルばね210としては、例えば、ばね定数が0.10 N/mm~1.02 N/mm(望ましくは0.2 N/mm~0.5 N/mm)のものを使用することができる。また、制御部130は、例えば、ピペットチップ171の押し付けによるコレクションチューブ400及びスピンカラム300の変位量が、0.5 mm~5.0 mm(望ましくは0.25mm~1mm)となるようにロボットアーム120を制御するものとする。但し、本実施形態における前記ばね定数及び前記変位量の適切な値は、フィルタ302の種類(硬度、材質、又は乾燥状態)及びピペットチップ171の種類(硬度、材質、又は先端形状)等によって異なってくる。そのため、実際に使用する種類のフィルタ302及びピペットチップ171を用いた試行によって、ピペットチップ171の先端が確実にフィルタ302に当接し、なお且つフィルタ302を損傷させることのない適切なばね定数及び変位量を特定し、該適切なばね定数の圧縮コイルばね210を用いると共に、前記変位量が適切な値となるように制御部130によるロボットアーム120の制御量を調整することが望ましい。
【0027】
温調機200上の全てのコレクションチューブ400に収容されたスピンカラム300の各々に対して上記手順による試薬の分注を行った後は、温調機200上でコレクションチューブ400及びスピンカラム300を所定時間インキュベートする。その後、各コレクションチューブ400及び該コレクションチューブ400に装着された各スピンカラム300をロボットアーム120によって遠心機110に移送して遠心分離を行うことにより、試料中の目的成分を各コレクションチューブ400内に回収する。その後は、ロボットアーム120によって各スピンカラム300を各コレクションチューブ400から取り外して消耗品廃棄部191に廃棄すると共に、コレクションチューブ400の蓋を閉じて前処理済試料収容部192へと移送する。なお、ここでは、説明を簡略化するため、各スピンカラム300に対して一種類の試薬のみを分注するものとしたが、各スピンカラム300に対して複数種類の試薬の分注を行うものとしてもよい。
【0028】
以上、本発明を実施するための形態について具体例を挙げて説明を行ったが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、適宜変更が許容される。
【0029】
例えば、本発明における付勢部材は、上記のスプリングプランジャのような圧縮コイルばねを用いたものに限らず、その他の弾性体、例えば、板ばね若しくはエラストマーから成るブロック等によって試料容器を上方に付勢するもの、又は磁石の反発力によって試料容器を上方に付勢するものとしてもよい。
【0030】
また、本発明に係る試料分注装置は、上記実施形態のような前処理装置とするほか、前処理を伴わない分注のみを行う装置としてもよい。
【0031】
また、上記実施形態では温調機200に本発明における付勢部材を設ける構成としたが、これに限らず、温調機能を有しないチューブラックに、本発明における付勢部材を設け、該チューブラックに、試料容器を保持した状態で上記のような接触分注を行う構成としてもよい。この場合、該チューブラックが本発明における試料容器保持部に相当する。
【0032】
また、上記実施形態においては、スピンカラム300に設けられたフィルタ302にピペットチップ171の先端を接触させて試薬の分注を行うものとしたが、これに限らず、例えば、スピンカラム300を装着していないマイクロチューブの内底面に、ピペットチップの先端を接触させて試薬の分注を行うものとしてもよい。あるいは、マイクロタイタープレートに設けられた複数のウェルの各々の底面、又は平板状のプレートに形成された複数の試料保持領域の各々に、ピペットチップ171の先端を接触させて試薬の分注を行うものとしてもよい。その場合、マイクロタイタープレート又は平板状のプレートが載置される温調機又は温調機能を有しないホルダ(プレートホルダ)において、前記複数のウェルの下面、又は前記位置の下面が当接する位置の各々に上記のようなスプリングプランジャ等から成る付勢部材を設けるものとする。このような場合の構成例を
図4に示す。同図は、平板状プレート600の上面に形成された複数の試料保持領域602の各々にピペットチップ171の先端を押し付けて接触分注する構成の自動分注装置を示している。ここで、平板状プレート600はプレートホルダ500上に載置されており、該プレートホルダ500には、各試料保持領域602の直下に相当する位置にスプリングプランジャ505が配置されている。
【0033】
また、分注器161としては、シングルチャンネルのマイクロピペットに限らず、多チャンネルのマイクロピペットを用いてもよい。また、上記実施形態では、ロボットアーム120によって分注器161を移動及び操作することによって試薬の分注を行うものとしたが、これに限らず、一端が試薬容器に挿入され、他端に液体を吐出するノズル(本発明における吐出管に相当)が装着された配管と、該配管の前記一端から試薬を吸引させると共に、該試薬を該配管の前記他端から吐出させるポンプと、前記ノズルを上下、前後、及び左右に移動させる移動機構とを設け、該ノズルの先端を試料容器内の吐出対象位置に接触させた状態で試薬の吐出を行う構成としてもよい。
【0034】
[態様]
上述した例示的な実施形態が以下の態様の具体例であることは、当業者には明らかである。
【0035】
(第1項)本発明の一態様に係る自動分注装置は、
試料容器が収容される複数の凹部を有する試料容器保持部と、
前記複数の凹部の各々に設けられ、該凹部に収容された前記試料容器を上方に付勢する付勢部材と、
先端から液体を吐出する吐出管を有し、該吐出管の先端を前記試料容器内の所定の分注対象位置に上方から押し付けた状態で前記液体を吐出する液体分注機構と、
を有するものである。
【0036】
第1項に係る自動分注装置によれば、基準位置における吐出管の先端から、分注対象位置までの高さ方向の距離の変動を前記付勢部材によって吸収することができるため、常に安定した接触分注を行うことが可能となる。
【0037】
(第2項)第2項に係る自動分注装置は、第1項に係る自動分注装置において、
前記液体分注機構を、前記吐出管の先端を前記試料容器の上方の所定の初期位置から予め定められた距離だけ下降させた上で前記液体の吐出を行うものとしたものである。
【0038】
(第3項)第3項に係る自動分注装置は、第1項又は第2項に係る自動分注装置において、
前記付勢部材を、前記試料容器に下方から当接するものとしたものである。
【0039】
(第4項)第4項に係る自動分注装置は、第1項~第3項のいずれかに係る自動分注装置において、
前記試料容器保持部が、前記試料容器として、フィルタと、該フィルタによって仕切られた上部空間及び下部空間とを有する容器を保持するものであって、
前記分注対象位置が、前記複数の凹部の各々に収容された前記試料容器が備える前記フィルタの上面の位置である。
【0040】
第4項に係る自動分注装置によれば、吐出管の先端がフィルタの上面に強く押し付けられるのを防ぐことができ、吐出管の押し付けによるフィルタの損傷を抑制することができる。
【0041】
(第5項)第5項に係る自動分注装置は、第1項~第4項のいずれかに係る自動分注装置において、
前記試料容器保持部が、伝熱ブロックと、該伝熱ブロックを加熱するヒータと、を備えた温調機であって、前記複数の凹部が、前記伝熱ブロックの上面に設けられているものである。
【0042】
第5項に係る自動分注装置によれば、温調機上に保持された試料容器に対して安定した接触分注を行うことが可能となる。
【0043】
(第6項)第6項に係る自動分注装置は、
複数の試料保持領域が形成された試料プレートを保持する試料プレート保持部と、
前記試料プレートの下面の、前記複数の試料保持領域の各々に対応する位置に設けられ、該試料プレートを上方に付勢する付勢部材と、
先端から液体を吐出する吐出管を有し、前記複数の試料保持領域の各々に対し、該吐出管の先端を上方から押し付けた状態で前記液体を吐出する液体分注機構と、
を有するものである。
【0044】
第6項に係る自動分注装置によれば、基準位置における吐出管の先端から、試料保持領域までの高さ方向の距離の変動を前記付勢部材によって吸収することができるため、常に安定した接触分注を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0045】
100…筐体
110…遠心機
120…ロボットアーム
130…制御部
161…分注器
171…ピペットチップ
181…試薬容器
200…温調機
201…ベース部
202…ヒータ
203…伝熱ブロック
204…チューブ収容部
205…スプリングプランジャ
206…ホルダ
207…ピン部材
300…スピンカラム
302…フィルタ
400…コレクションチューブ