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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039363
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】自動分注装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
G01N35/10 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143866
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 弘貴
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CB16
2G058CD23
2G058EA04
2G058ED36
2G058ED38
(57)【要約】
【課題】接触分注の際に、常に一定量の分注を行うことのできる自動分注装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る自動分注装置は、吐出ノズル166を有する分注器161を、該吐出ノズル166を下に向けて把持する把持部121と、前記吐出ノズル166に装着されるピペットチップ171が収容されたチップラック172が配置されるチップラック配置部500と、前記チップラック配置部500を下方から付勢する付勢部材540と、前記チップラック配置部500に対して前記把持部121を相対的に移動させる移動部120と、を備えるものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出ノズルを有する分注器を、該吐出ノズルを下に向けて把持する把持部と、
前記吐出ノズルに装着されるピペットチップが収容されたチップラックが配置されるチップラック配置部と、
前記チップラック配置部を下方から付勢する付勢部材と、
前記チップラック配置部に対して前記把持部を相対的に移動させる移動部と、
を備える、自動分注装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動分注装置において、
前記チップラック配置部を、該チップラック配置部の上面に対して垂直方向に上下動可能に支持する支持部を備える、自動分注装置。
【請求項3】
前記移動部が、前記付勢部材の付勢力に抗して、前記チップラック配置部に配置されたチップラックに収容されたピペットチップに対して前記移動部の把持部が把持している分注器の吐出ノズルを、30.0 N~42.0 Nの力で押し込むように構成されている、請求項1に記載の自動分注装置。
【請求項4】
前記チップラック配置部が所定量以上、下降したことを検知するための下降検知部を備える、請求項1に記載の自動分注装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分注装置に関し、特に分注ピペットを把持して操作するロボットアームを備えた自動分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフ、ガスクロマトグラフ、又は質量分析装置等の分析機器を用いた試料の分析では、分析に先立って、試料に含まれる検出対象物の抽出、精製、濃縮、希釈、標識化、又は染色等の前処理が必要な場合がある。従来、こうした試料の前処理を効率的に行うため、複数の試料容器に試料液、試薬等の液体を自動的に分注する自動分注装置が用いられている。このような自動分注装置では、例えば、分注ピペットと、該分注ピペットを把持可能なロボットアームを備えており、該ロボットアームが分注ピペットを把持してチップラックの上に移動させ、該チップラックに収容されているピペットチップを分注ピペットの先端のノズルに装着する。そして、ピペットチップが装着された分注ピペットを所定の採取容器の位置まで移動させ、液体を所定量採取する。さらに分注ピペットを所定の試料容器の位置まで移動させ、そこで該液体を該試料容器内に吐出する(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-173469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような自動分注装置においては、微量の液体を正確に採取し吐出することができるよう、分注ピペットの先端のノズルに対してピペットチップが一定の差し込み(嵌合)深さで装着されるようにロボットアームを制御する。具体的には、ロボットアームは、チップラックの上の所定の位置に分注ピペットを移動させた後、予め定められた距離だけ下降させてノズルの先端をピペットチップに差し込む。ところが、分注ピペットの下降開始時におけるノズルの下端位置や該下端位置からピペットチップまでの距離は、ロボットアームの位置再現性の限界、ピペットチップやチップラックの寸法誤差等の要因によって変動する。そのため、分注ピペットのノズルにピペットチップを一定の嵌合深さで装着させるために必要な距離として予め定められた距離だけ該分注ピペットを下降させるようロボットアームを制御しても、ノズルに対するピペットチップの嵌合深さが不十分であったりノズルがピペットチップに過剰に差し込まれて機械的破損が生じたりする場合があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、分注ピペットのノズルに対するピペットチップの装着不良を防止することのできる自動分注装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために成された本発明に係る自動分注装置は、
吐出ノズルを有する分注器を、該吐出ノズルを下に向けて把持する把持部と、
前記吐出ノズルに装着されるピペットチップが収容されたチップラックが配置されるチップラック配置部と、
前記チップラック配置部を下方から付勢する付勢部材と、
前記チップラック配置部に対して前記把持部を相対的に移動させる移動部と、
を備えるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、移動部が、分注器を把持した把持部を移動させて、前記分注器の吐出ノズルを、上方から、チップラック配置部に配置されたチップラック内のピペットチップ内に押し込む。これにより、吐出ノズル及びピペットチップは付勢部材の付勢力に抗してチップラック配置部と共に下降するが、その際に、吐出ノズルは付勢部材の該付勢力に応じた一定の力によりピペットチップに押し込まれるため、吐出ノズルに対するピペットチップの嵌合深さのばらつきを抑えて常に一定の嵌合深さでピペットチップを吐出ノズルに装着することができ、微量な液体を正確に採取したり、吐出したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る試料前処理装置の概略構成を示す平面図。
図2】前記試料前処理装置が備えるロボットアームが把持する分注器の一例である電動式のマイクロピペットを示す図。
図3】前記試料前処理装置が備えるチップラック配置部にチップラックが配置された状態で示す斜視図。
図4】前記試料前処理装置が備えるチップラック配置部にチップラックが配置された状態で示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る自動分注装置の一実施形態である試料前処理装置について、図面を参照しつつ説明する。図1は本実施形態に係る試料前処理装置の概略構成を示す上面図である。図1において、左右方向をX方向、上下方向をY方向、X方向及びY方向に垂直な方向をZ方向とする。
【0010】
この試料前処理装置は、筐体100と、筐体100内に配置された温調機200(本発明における試料容器保持部に相当)、遠心機110、分注器161、及びロボットアーム120(本発明における駆動部に相当)と、制御部130と、を備えている。筐体100内には、更に、ロボットアーム120を囲むように、複数のスピンカラム300を収容したカラムラック141が配置されるカラムラック配置部140と、複数のコレクションチューブ400を収容したチューブラック151が配置されるチューブラック配置部150と、1つ又は複数の分注器161が収容される分注器収容部160と、複数のピペットチップ171を収容したチップラック172が配置されるチップラック配置部500と、1つ以上の試薬容器181を収容した試薬ラック182が配置される試薬ラック配置部180と、使用済みのスピンカラム300及びピペットチップ171が廃棄される消耗品廃棄部191と、前処理後の試料が収容されたコレクションチューブ400が収容される前処理済試料収容部192と、が設けられている。
【0011】
スピンカラム300は、円形の上部開口及び該上部開口よりも径の小さい下部開口を備えた筒状の本体と、その内部に保持されたフィルタとを有しており、コレクションチューブ400の上部に挿入可能となっている。
【0012】
コレクションチューブ400としては、底部が閉鎖され上部が開口された、円筒状又は下方に向けて径が小さくなる略円錐状の本体と、ヒンジを介して該本体の上端部の周縁に連結され、前記本体の上部開口を閉塞可能な蓋とを備えた、いわゆるマイクロチューブを用いることができる。ただし、本実施形態に係るコレクションチューブ400は、このようなマイクロチューブに限定されるものではなく、液体を収容可能で且つスピンカラム300を装着可能なものであれば、いかなるものであってもよい。
【0013】
本実施形態における分注器161としては、例えば図2に示すような電動式のマイクロピペットが用いられる。以下、分注器161をマイクロピペット161として説明する。マイクロピペット161は、グリップ部162と、該グリップ部162の内部に設けられたシリンダー、プランジャ、該プランジャを駆動するモータ(いずれも図示せず)と、グリップ部162に設けられた操作ボタン163、プッシュボタン164、及び表示パネル165と、シリンダーの下端に接続され、前記グリップ部162の下部より外部に突出する管状の吐出ノズル166と、を備えている。前記吐出ノズル166の下端に使い捨てのピペットチップ171が装着される。吐出ノズル166の下端にピペットチップ171が装着された状態で操作ボタン163やプッシュボタン164を操作してプランジャをシリンダー内で上下動させることにより、前記ピペットチップ171内に液体を吸引したり該ピペットチップ171から液体を吐出したりすることができる。
【0014】
なお、分注器としては、上述した電動式のマイクロピペットに代えて、例えば、前記プランジャの上端に連結されたプッシュロッドと該プッシュロッドを上方に付勢するばねを有し、該プッシュロッドの上端に設けられたプッシュボタンを押し下げたり、該ボタンの押し下げを解除したりすることによって、前記プランジャの上下動を行う、いわゆる手動式のマイクロピペットを使用してもよい。
【0015】
ロボットアーム120は、スピンカラム300、コレクションチューブ400、及びマイクロピペット161のグリップ部162を把持可能で、且つマイクロピペット161に設けられた操作ボタン163及びプッシュボタン164を操作可能なハンド部121を備えている。ロボットアーム120、ハンド部121は、それぞれ本発明の移動部、把持部に相当する。
【0016】
図3及び図4に示すように、チップラック配置部500は、ベース部530に立設された支持部510及び支持脚部520によって支持されている。チップラック配置部500及びベース部530は、いずれも長方形状の板状部材から成り、長辺がY方向、短辺がX方向と平行になるように配置されている。
【0017】
チップラック配置部500の上面には、矩形状の領域を取り囲むように複数の板バネ部材501が固定されており、これらの板バネ部材501で囲まれた領域に1個又は複数個(図3では2個)のチップラック172が配置されるようになっている。以下、前記領域をラック配置領域と呼ぶ。ラック配置領域に配置されたチップラック172は、板バネ部材501の弾性力によってX、Y、Zのいずれの方向にも不動に保持される。
【0018】
支持部510は、ベース部530の一方の長辺に沿って、該ベース部530に垂直に立設された支持壁部511と、該支持壁部511にリニアガイド512を介して取り付けられた、Z方向(上下方向)に移動可能なリニア板513とを備えている。リニアガイド512は支持壁部511のY方向両端にそれぞれ1個ずつ取り付けられており、各リニアガイド512は、支持壁部511に固定されたガイドレール514と、該ガイドレール514上をZ方向に摺動するキャリッジ515と、キャリッジ515内の摺動部に配置されたボールリテーナ(図示せず)から成る。該キャリッジ515にリニア板513が固定されている。チップラック配置部500は、その上面がXY平面と略平行になるようにリニア板513の上端に固定されている。上記構成により、チップラック配置部500はその上面がXY平面と平行な状態を維持しつつ上下動するようになっている。
【0019】
チップラック配置部500は、そのラック配置領域よりも外側の下面においてリニア板513の上端に固定されており、このとき、チップラック配置部500の一方の長辺側の端部が支持壁部511の上方に位置している。また、支持壁部511のガイドレール514の両側には、一対の上部規制凸部516と一対の下部規制凸部517が固定されており、キャリッジ515はガイドレール514に沿って上部規制凸部516と下部規制凸部517の間を上下動するようになっている。つまり、チップラック配置部500の上方向及び下方向の移動は、キャリッジ515の上端部が上部規制凸部516に当接するまで及び下端部が下部規制凸部517に当接するまでの範囲にそれぞれ規制される。
【0020】
なお、リニアガイド512には、上述したボール式の他、キャリッジ内の摺動部に潤滑剤が配置されたすべり式リニアガイドがあり、ボール式リニアガイドに代えてすべり式リニアガイドを用いてもよい。
【0021】
支持脚部520は、ベース部530の上面のうちX方向のほぼ中央付近にY方向に沿って立設されており、XY平面と略平行な細長い上面板521と、該上面板521のX方向両端部から下方に延びる一対の脚部522とを備えている。上面板521は、支持壁部511よりも低い位置にあり、その上面とチップラック配置部500の間には4個の圧縮コイルばね540が介装されている。具体的には、チップラック配置部500のうち前記ラック配置領域のX方向中央付近の下面には4個の凸部503が、上面板521の上面には、前記凸部503に対応する4個の凸部523がそれぞれ設けられており、対となる凸部503と凸部523に圧縮コイルばね540の両端部が嵌挿されている。前記圧縮コイルばね540が本発明の付勢部材に相当する。
【0022】
チップラック配置部500に、ピペットチップ171が収容されたチップラック172が配置された状態(初期状態)において、圧縮コイルばね540は自由長さから圧縮された状態にあり、且つ、チップラック配置部500が支持壁部511の上端に当接しない状態となるように、チップラック配置部500及び板バネ部材501の重量、支持壁部511及び支持脚部520の高さ位置が設定され、所定の自由長さ、ばね定数の圧縮コイルばね540が採用されている。これにより、初期状態において、チップラック配置部500は圧縮コイルばね540によって上方に付勢され、且つ下方向に移動可能な状態となる。
【0023】
なお、本実施形態では、チップラック配置部500が初期状態から所定の長さ以上、下降したことを検知するための下降検知部が設けられている。この下降検知部は、例えば支持脚部520の一対の脚部522(この実施形態では、リニア板513側の脚部522)に取り付けられた、受光部と発光部を備えたフォトセンサ600と、チップラック配置部500の下面に取り付けられた遮光板610とから構成することができる。遮光板610は、チップラック配置部500が、初期状態から前記所定の長さ以上、下降すると、該遮光板610の下端部が前記フォトセンサ600の受光部と発光部の間に進入して発光部から受光部に向けて射出される光を遮るように構成されている。
【0024】
上述の温調機200、遠心機110、及びロボットアーム120、フォトセンサ600は制御部130によって制御される。またフォトセンサ600の受光信号は制御部130に入力される。制御部130の実態は、専用のコンピュータ又はパーソナルコンピュータ等の汎用のコンピュータであって、該コンピュータにインストールされた所定のプログラムを実行することによって本実施形態における制御部130の機能が実現される。図1では、制御部130を筐体100外に配置しているが、制御部130を筐体内に配置してもよい。なお、簡略化のため図示を省略しているが、制御部130には、キーボード又は操作ボタン等から成る入力部と液晶ディスプレイ等から成る表示部が接続されている。制御部130は、マイクロピペット161の吐出ノズル166にピペットチップ171を装着する工程において該マイクロピペット161を下降させても前記フォトセンサ600の受光部からの受光信号が入力されているときは、何らかの不具合が発生していると判定し、その旨を表示部に表示する。何らかの不具合とは、ピペットチップ171が収容されていないチップラック172を誤ってチップラック配置部500に配置してしまったり、マイクロピペット161の吐出ノズル166が破損していたりする等、である。
【0025】
次に、本実施形態に係る前処理装置による前処理の流れについて説明する。前処理の開始時点において、カラムラック141及びチューブラック151には、それぞれ複数のスピンカラム300及び複数のコレクションチューブ400が保持されている。このとき、各スピンカラム300には、予め所定量の液体試料が添加され、該試料中の目的成分がフィルタに吸着された状態となっている。
【0026】
まず、制御部130の制御の下に、ロボットアーム120が、チューブラック151に保持されたコレクションチューブ400をハンド部121で把持して温調機200のチューブ収容部204に収容し、続いて、カラムラック141に保持されたスピンカラム300をハンド部121で把持して温調機200上のコレクションチューブ400に装着する。
【0027】
次に、ロボットアーム120が、分注器収容部160に収容されたマイクロピペット161をその吐出ノズル166が下にくるようにハンド部121で把持するとともに、マイクロピペット161をチップラック配置部500直上の所定位置に移動させる。そして、チップラック172に収容されたピペットチップ171のいずれかに向けてマイクロピペット161を下降させ、マイクロピペット161の吐出ノズル166の先端を、ピペットチップ171の上部開口からピペットチップ171内に押し込み、該ピペットチップ171を吐出ノズル166に装着する。このとき、制御部130は、圧縮コイルばね540の付勢力に応じた一定の力により吐出ノズル166がピペットチップ171に押し込まれるように、ロボットアーム120を駆動する。
【0028】
例えば、圧縮コイルばね540として、ばね定数が0.30 N/mm~1.50 N/mm、自由長さが100.0 mm~20.0 mmのものを採用し、チップラック配置部500が初期位置にあるときの圧縮コイルばね540の長さが78.0 mm~16.0 mmとなるように、チップラック配置部500及び板バネ部材501の重量、支持壁部511及び支持脚部520の高さ位置が設定されている場合においては、吐出ノズル166がピペットチップ171に対して30.0 N~42.0 Nの力で押し込まれるように、ロボットアーム120を駆動することが好ましい。このようにすることで、吐出ノズル166及びピペットチップ171が圧縮コイルばね540の付勢力に抗して約3.0 mm下降する(つまり、圧縮コイルばね540が約3.0 mm圧縮されてチップラック配置部500が初期状態から約3.0 mm下降する)。
【0029】
これにより、チップラック配置部500に対するチップラック172の装着状態のばらつき、ピペットチップ171やチップラック172の寸法誤差、ロボットアーム120の位置再現性の限界等の要因による、チップラック配置部500直上の所定位置からピペットチップ171までの下降距離の変動が吸収される。このため、マイクロピペット161の、吐出ノズル166に対してピペットチップ171を一定の嵌合深さで装着することができる。また、ピペットチップ171に対する吐出ノズル166の過剰な押し込みによる機械的な破損も抑制することができる。
【0030】
上述のようにして、ロボットアーム120のハンド部121に把持されたマイクロピペット161にピペットチップ171が装着されると、次に、ロボットアーム120がマイクロピペット161を移動させて試薬ラック182上のいずれかの試薬容器181にピペットチップ171の先端を挿入すると共にマイクロピペット161に設けられた操作ボタン等を操作することによって、所定量の試薬を採取する。
【0031】
その後、ロボットアーム120が、温調機200上のいずれかのチューブ収容部204に収容されたコレクションチューブ400及びスピンカラム300の上方にマイクロピペット161を移動させると共に、前記チューブ収容部204直上の所定の高さ位置から、予め定められた距離だけマイクロピペット161を下降させてピペットチップ171の先端をスピンカラム300内の例えばフィルタの上面中央付近に当接させる。そして、その状態でロボットアーム120がマイクロピペット161に設けられた操作ボタン等を操作することによってピペットチップ171から前記試薬を吐出させる。
【0032】
前記マイクロピペット161を下降させる距離は、マイクロピペット161の吐出ノズル166に対して所定の嵌合深さでピペットチップ171が装着されていることを前提に設定される。したがって、吐出ノズル166に対するピペットチップ171の嵌合深さがばらつくと、前記マイクロピペット161を前記距離だけ下降させたときのピペットチップ171の先端の位置が変動し、ピペットチップ171の先端がスピンカラム300のフィルタ上面に過剰に接触したり、接触しなかったりする。これに対して、本実施形態では、上述したように吐出ノズル166に対して所定の嵌合深さでピペットチップ171を装着することができるため、ピペットチップ171の先端をフィルタ上面に当接させた状態で試薬の吐出を行うことができ、常に一定量の分注を行うことが可能となる。
【0033】
以上、本発明を実施するための形態について具体例を挙げて説明を行ったが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、適宜変更が許容される。
【0034】
例えば、本発明における付勢部材は、圧縮コイルばねに限らず、その他の弾性体、例えば、板ばね若しくはエラストマーから成るブロック等のラック配置部を上方に付勢するものとしてもよく、或いは、磁石の反発力によってラック配置部を上方に付勢するものとしてもよい。また、圧縮コイルばねの数は、4個に限らず1個ないし3個でもよく、5個以上でもよい。圧縮コイルばねの数が1個の場合は、該圧縮コイルばねはラック配置部の重心付近に配置することが好ましく、圧縮コイルばねの数が複数の場合は、該圧縮コイルばねはラック配置部の重心に対して点対称に配置することが好ましい。このような配置にすることにより、ラック配置部全体を均一にバランスよく付勢することができる。
【0035】
また、本発明に係る自動分注装置は、上記実施形態のような前処理装置とするほか、前処理を伴わない分注のみを行う装置としてもよい。
【0036】
また、分注器161としては、シングルチャンネルのマイクロピペットに限らず、多チャンネルのマイクロピペットを用いてもよい。また、上記実施形態では、ロボットアーム120によって分注器161を移動及び操作することによって試薬の分注を行うものとしたが、これに限らず、一端が試薬容器に挿入され、他端に液体を吐出するノズル(本発明における吐出部に相当)が装着された配管と、該配管の前記一端から試薬を吸引させると共に、該試薬を該配管の前記他端から吐出させるポンプと、前記ノズルを上下、前後、及び左右に移動させる移動機構(本発明における駆動部に相当)とを設け、該ノズルの先端を試料容器内の吐出対象位置に接触させた状態で試薬の吐出を行う構成としてもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、ロボットアーム120によりマイクロピペット161を把持するハンド部121を移動させるようにしたが、ハンド部121は移動させず、チップラック配置部500を移動させることにより、前記ハンド部121が把持するマイクロピペット161の吐出ノズル166にピペットチップ171を装着するようにしてもよい。
【0038】
[態様]
上述した例示的な実施形態が以下の態様の具体例であることは、当業者には明らかである。
【0039】
(第1項)第1項に係る自動分注装置は、
吐出ノズルを有する分注器を、該吐出ノズルを下に向けて把持する把持部と、
前記吐出ノズルに装着されるピペットチップが収容されたチップラックが配置されるチップラック配置部と、
前記チップラック配置部を下方から付勢する付勢部材と、
前記チップラック配置部に対して前記把持部を相対的に移動させる移動部と、
を備えるものである。
【0040】
第1項に係る自動分注装置においては、移動部が、分注器を把持した把持部を移動させることにより、該分注器の吐出ノズルを、上方から、チップラック配置部に配置されたチップラック内のピペットチップ内に押し込み、該ピペットチップを吐出ノズルに装着する。このとき、吐出ノズル及びピペットチップは付勢部材の付勢力に抗してチップラック配置部と共に下降するが、その際に、吐出ノズルは付勢部材の該付勢力に応じた一定の力によりピペットチップに押し込まれるため、吐出ノズルに対するピペットチップの嵌合深さのばらつきを抑えて常に一定の嵌合深さでピペットチップを吐出ノズルに装着することができる。また、吐出ノズルに対するピペットチップの嵌合深さが一定であるため、ロボットアームによって分注ピペットを試料容器直上の所定の位置に移動させ、そこを基準位置として所定の距離だけ下降させ、ピペットチップの先端を試料容器内の所定の部位に接触させて前記液体の吐出を行う、いわゆる接触分注が行われる場合において、常に一定量の分注を行うことができる。
【0041】
(第2項)第2項に係る自動分注装置は、第1項に係る自動分注装置において、
前記チップラック配置部を、該チップラック配置部の上面に対して垂直方向に上下動可能に支持する支持部を備えるものである。
【0042】
一般的に自動分注装置は、チップラック配置部の上面が水平面となるように設置される。したがって、第2項に係る自動分注装置によれば、吐出ノズルがチップラック配置部に配置されたチップラック内のピペットチップ内に押し込まれて該チップラック配置部が下降しても、チップラックが傾かないようにすることができる。
【0043】
(第3項)第3項に係る自動分注装置は、第1項又は第2項に係る自動分注装置において、
前記移動部が、前記付勢部材の付勢力に抗して、前記チップラック配置部に配置されたチップラックに収容されたピペットチップに対して前記移動部の把持部が把持している分注器の吐出ノズルを、30.0 N~42.0 Nの力で押し込むように構成されているものである。
【0044】
第3項に係る自動分注装置によれば、前記分注器の吐出ノズルに対して、一定の嵌合深さでピペットチップを装着することができる。
【0045】
(第4項)第4項に係る自動分注装置は、第1項~第3項のいずれかに係る自動分注装置において、
前記チップラック配置部が所定量以上、下降したことを検知するための下降検知部を備えるものである。
【0046】
第4項に係る自動分注装置によれば、ピペットチップ171が収容されていないチップラック172を誤ってチップラック配置部500に載置してしまったり、マイクロピペット161の吐出ノズル166が破損していたりする等の不具合によって、分注器の吐出ノズルに対してピペットチップを装着することができなかったことを認識することができる。
【符号の説明】
【0047】
100…筐体
110…遠心機
120…ロボットアーム
121…ハンド部
130…制御部
161…分注器(マイクロピペット)
166…吐出ノズル
171…ピペットチップ
172…チップラック
181…試薬容器
500…チップラック配置部
510…支持部
512…リニアガイド
520…支持脚部
540…圧縮コイルばね
600…フォトセンサ
610…遮光板
図1
図2
図3
図4