(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039364
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】建築用構造物及び居住用建築物
(51)【国際特許分類】
E04B 1/348 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
E04B1/348 H
E04B1/348 D
E04B1/348 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143869
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】508033753
【氏名又は名称】株式会社ナイスカンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(74)【代理人】
【識別番号】100198661
【弁理士】
【氏名又は名称】久保寺 利光
(72)【発明者】
【氏名】佐山 元章
(72)【発明者】
【氏名】西村 森衛
(72)【発明者】
【氏名】王 富強
(57)【要約】
【課題】短期間で簡易に居住スペースを構築でき、屋根を有する建築物にした場合でも、製造コストを増加させることなく積層して居住スペースにすることができるとともに、積層の選択肢を広げた建築用構造物を提供することを目的とする。
【解決手段】6本の柱骨部材15と、前記柱骨部材に接続し、屋根板が取り付けられることで屋根を形成する屋根骨部材と、を有する建築用構造物1である。前記屋根は1つ又は2つの斜面である。前記屋根骨部材は、複数の骨部材11a、11bからなり、前記1つ又は2つの斜面を形成可能なように水平面に対して傾斜した骨部材11aを複数有する。柱骨部材は、6本のうち3本又は4本が屋根骨部材と接続する箇所よりも上方向に延伸した延伸部16を有する。一の当該構造物上に他の当該構造物を積層させて、それぞれの構造物を居住スペースにすることが可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
6本の柱骨部材と、
前記柱骨部材に接続し、屋根板が取り付けられることで屋根を形成する屋根骨部材と、
を有する建築用構造物であって、
前記屋根は、1つ又は2つの斜面であり、
前記屋根骨部材は、複数の骨部材からなり、前記1つ又は2つの斜面を形成可能なように水平面に対して傾斜した骨部材を複数有し、
前記柱骨部材は、6本のうち3本又は4本が前記屋根骨部材と接続する箇所よりも上方向に延伸した延伸部を有し、
一の当該構造物上に他の当該構造物を積層させて、それぞれの構造物を居住スペースにすることが可能である
ことを特徴とする建築用構造物。
【請求項2】
前記屋根は、2つの斜面であり、
上面視において、当該構造物は、短手と長手を有し、
前記延伸部は、4本の前記柱骨部材に設けられ、
前記柱骨部材は、上面視において、4隅と2つの長手の辺上とに配置され、4隅の当該柱骨部材が前記延伸部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の建築用構造物。
【請求項3】
前記屋根は、1つの斜面であり、
上面視において、当該構造物は、短手と長手を有し、
前記延伸部は、3本の前記柱骨部材に設けられ、
前記柱骨部材は、上面視、4隅と2つの長手の辺上とに配置され、長手の辺上に配置された3本の当該柱骨部材が前記延伸部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の建築用構造物。
【請求項4】
前記屋根は、1つの斜面であり、
上面視において、当該構造物は、短手と長手を有し、
前記延伸部は、4本の前記柱骨部材に設けられ、
前記柱骨部材は、上面視において、4隅と2つの長手の辺上とに配置され、4隅のうちの2本であり同一の短手の辺上の当該柱骨部材と、2つの長手の辺上の当該柱骨部材とが前記延伸部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の建築用構造物。
【請求項5】
上面視における4隅に設けられた前記柱骨部材は、上部分の領域と下部分の領域に当該構造物を運搬するためのキャスティング穴を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の建築用構造物。
ただし、4隅に設けられた前記柱骨部材が前記延伸部を有する場合、前記上部分の領域に設けられる前記キャスティング穴は、前記延伸部に設けられる。
【請求項6】
前記延伸部は、着脱可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の建築用構造物。
【請求項7】
上面視において、当該構造物は長手と短手を有し、
前記屋根の稜線は、当該構造物の短手方向に沿った方向である
ことを特徴とする請求項2に記載の建築用構造物。
【請求項8】
上面視において、前記屋根の稜線は、一の短手からの距離と他の短手からの距離とが異なる位置に存在する
ことを特徴とする請求項7に記載の建築用構造物。
【請求項9】
前記柱骨部材に接続する筋交いを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の建築用構造物。
【請求項10】
一の当該構造物上に他の当該構造物を積層させたとき、一の当該構造物が有する4本又は6本の前記柱骨部材が、他の当該構造物に接触して下から支持する
ことを特徴とする請求項1に記載の建築用構造物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の構造物に屋根板、壁板及び床板を取り付けた
ことを特徴とする居住用建築物。
【請求項12】
請求項1~10のいずれかに記載の構造物を複数積層させた
ことを特徴とする居住用建築物。
【請求項13】
請求項12に記載の建築物に屋根板、壁板及び床板を取り付けた
ことを特徴とする居住用建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用構造物及び居住用建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、短時間で、簡易に、またコストを抑えて居住スペースを構築する試みがなされている。これらの目的を達成するため、従来技術では例えば、コンテナを居住スペースに利用する試みがなされている。コンテナを利用することで、短期間で簡易に居住スペースを構築することができるという利点がある。
【0003】
特許文献1では、建築構造として使用するための拡張可能な搬送用コンテナを製造する方法が開示されている。特許文献1によれば、公共に対して有用な選択肢を提供する、高さ調節可能な搬送用コンテナを提供することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、日本では、良好な景観の形成を促進するという目的から景観法が施行されている。景観法において、地方公共団体は、良好な景観の形成の促進に関し、その区域の自然的社会的諸条件に応じた施策を策定することが求められている。そしてこのような観点から、自然との調和等を考慮し、建築物に対して屋根を形成することを求める地域がある。
【0006】
このような地域にコンテナを用いて建築物を作製する場合、屋根を形成する必要がある。しかし、特許文献1では搬送用のコンテナを用いており、搬送用のコンテナには屋根が形成されていないため、搬送用のコンテナを別途加工する必要が生じてしまう。このため、特許文献1では、コンテナを用いた場合の利点、例えば短期間で簡易に居住スペースを構築できるという利点を活かせていなかった。
【0007】
また、土地を有効利用するため、コンテナを積層して居住スペースにしたいという要望が増えている。屋根を有するコンテナを使用する場合、屋根を有するコンテナと、その下側に配置されるコンテナとで、それぞれ設計、製造する必要があり、製造コストが増加してしまうという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、短期間で簡易に居住スペースを構築でき、屋根を有する建築物にした場合でも、製造コストを増加させることなく積層して居住スペースにすることができるとともに、積層の選択肢を広げた建築用構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の建築用構造物は、
6本の柱骨部材と、
前記柱骨部材に接続し、屋根板が取り付けられることで屋根を形成する屋根骨部材と、
を有する建築用構造物であって、
前記屋根は、1つ又は2つの斜面であり、
前記屋根骨部材は、複数の骨部材からなり、前記1つ又は2つの斜面を形成可能なように水平面に対して傾斜した骨部材を複数有し、
前記柱骨部材は、6本のうち3本又は4本が前記屋根骨部材と接続する箇所よりも上方向に延伸した延伸部を有し、
一の当該構造物上に他の当該構造物を積層させて、それぞれの構造物を居住スペースにすることが可能である
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、短期間で簡易に居住スペースを構築でき、屋根を有する建築物にした場合でも、製造コストを増加させることなく積層して居住スペースにすることができるとともに、積層の選択肢を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】建築用構造物の一例を示す斜視図(A)及び平面概略図(B)である。延伸部を有する柱骨部材が4本の例である。
【
図3】建築用構造物の一例における上面図(A)及び他の例における上面図(B)である。
【
図8】居住用建築物の一例を示す側面図(A)及び(B)である。
【
図9】建築用構造物の積層方法の一例を示す平面模式図(A)及び(B)である。
【
図10】居住用建築物の側面図(A)及び(B)である。
【
図11】キャスティング穴の一例を説明するための側面図(A)及び(B)である。
【
図12】居住用建築物の一例を示す斜視図(A)及び(B)である。
【
図14】居住用建築物の一例を示す斜視図(A)及び側面図(B)である。
【
図16】建築用構造物の一例を示す斜視図である。足部材を備えた例である。
【
図17】居住用建築物の一例を示す斜視図である。足部材を備えた例である。
【
図18】居住用建築物の一例を示す斜視図である。足部材を備えた例である。
【
図19】建築用構造物の一例を示す斜視図(A)及び平面概略図(B)である。延伸部を有する柱骨部材が3本の例である。
【
図22】キャスティング穴の一例を説明するための側面図(A)及び(B)である。
【
図23】建築用構造物の一例を示す斜視図(A)及び平面概略図(B)である。延伸部を有する柱骨部材が4本の例である。
【
図26】キャスティング穴の一例を説明するための側面図(A)及び(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る建築用構造物及び居住用建築物について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0013】
本発明の建築用構造物は、
6本の柱骨部材と、
前記柱骨部材に接続し、屋根板が取り付けられることで屋根を形成する屋根骨部材と、
を有する建築用構造物であって、
前記屋根は、1つ又は2つの斜面であり、
前記屋根骨部材は、複数の骨部材からなり、前記1つ又は2つの斜面を形成可能なように水平面に対して傾斜した骨部材を複数有し、
前記柱骨部材は、6本のうち3本又は4本が前記屋根骨部材と接続する箇所よりも上方向に延伸した延伸部を有し、
一の当該構造物上に他の当該構造物を積層させて、それぞれの構造物を居住スペースにすることが可能である
ことを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、短期間で簡易に居住スペースを構築でき、屋根を有する建築物にした場合でも、製造コストを増加させることなく積層して居住スペースにすることができるとともに、積層の選択肢を広げることができる。
【0015】
本発明の居住用建築物は、本発明の建築用構造物に屋根板、壁板及び床板を取り付けたことを特徴とする。
本発明の居住用建築物は、本発明の建築用構造物を複数積層させたことを特徴とする。
【0016】
なお、建築用構造物を単に構造物とも称する。また、居住用建築物を単に建築物とも称する。建築用構造物は、他の名称であってもよく、例えば、建築用フレーム、建築用骨組み、建築用骨組み部材、建築用骨格、居住スペース用フレーム、居住スペース用骨組み、居住スペース用骨組み部材、居住スペース用骨格などと称されてもよい。上記の居住スペースとあるのは、居住空間などと称されてもよい。
【0017】
(第1の実施形態)
本実施形態のコンテナは、
前記屋根は、2つの斜面であり、
上面視において、当該構造物は、短手と長手を有し、
前記延伸部は、4本の前記柱骨部材に設けられ、
前記柱骨部材は、上面視において、4隅と2つの長手の辺上とに配置され、4隅の当該柱骨部材が前記延伸部を有する。
【0018】
図1(A)は、本実施形態の構造物1の外観斜視図である。図中、骨部材11a、11b、床骨部材12、柱骨部材15、延伸部16、板部材17、筋交い18が図示されている。
【0019】
図1(B)は、本実施形態の構造物1の要部平面概略図である。本実施形態の構造物1は、上面視において、短手と長手を有している。換言すると、本実施形態の構造物1は、上面視において、長方形になっている。
【0020】
本発明において、屋根骨部材は、複数の骨部材からなる。本実施形態において、屋根骨部材は、骨部材11a、11bからなる。骨部材11cは、屋根板が備え付けられた場合に屋根の稜線を形成する。骨部材11cを屋根骨部材に含めてもよいし、含めなくてもよい。骨部材11cは、棟木と称されてもよい。
【0021】
屋根骨部材は、屋根板が取り付けられることで屋根を形成する。屋根板が取り付けられた場合の例は、例えば後述の
図5等で示している。本発明において、構造物や建築物における屋根は、1つ又は2つの斜面であり、本実施形態において、屋根は2つの斜面である。
【0022】
本実施形態において、屋根骨部材は、屋根を構成する2つの斜面を形成可能なように水平面に対して傾斜した骨部材を複数有している。本実施形態において、水平面に対して傾斜した骨部材は、骨部材11aが該当し、本実施形態における骨部材11aは4本である。図示するように、骨部材11aは水平面に対して傾斜しており、骨部材11bは水平面に沿っている。
【0023】
骨部材11a、11bは、柱骨部材15に接続している。すなわち、屋根骨部材を構成する骨部材は、柱骨部材15に接続している。骨部材11a、11bと柱骨部材15を接続する方法としては、特に制限されるものではなく、公知の方法を用いることができる。また、他の部材を介して接続していてもよいし、屋根骨部材と柱骨部材を一体としてもよい。なお、骨部材11cは、柱骨部材15bに接続しているともいえる。
【0024】
図示するように、本実施形態の構造物1は、6本の柱骨部材15を有している。上面視において、柱骨部材15は、4隅と2つの長手の辺上とに配置されている。
図1(B)中、4隅の柱骨部材15を符号15aで示しており、2つの長手の辺上の柱骨部材15を符号15bで示している。なお、柱骨部材を区別なく説明する場合、柱骨部材15と表記する。
【0025】
長手の辺は、例えば3本の柱骨部材15(15a、15b、15a)を結ぶ線であるともいえる。
【0026】
本実施形態において、柱骨部材15は、6本のうち4本が屋根骨部材と接続する箇所よりも上方向に延伸した延伸部16を有している。図示するように、柱骨部材15aは延伸部16を有しており、柱骨部材15bは延伸部16を有していない。すなわち、本実施形態では、4隅の柱骨部材15aが延伸部16を有している。
【0027】
延伸部16を設けることにより、また延伸部16を有する柱骨部材15aを所定の位置に配置することにより、屋根形状を有したまま、本実施形態の構造物1を積層させることができる。本実施形態では、一の当該構造物上に他の当該構造物を積層させて、それぞれの構造物を居住スペースにすることが可能である。積層して居住スペースにすることで、土地を有効活用することができる。
【0028】
柱骨部材15を6本とすることで、積層させることが可能な強度やバランスを確保することができ、また、4隅をそろえて積層する場合に限られず、積層の選択肢が広がる。下側の構造物と上側の構造物とをずらして積層させる等、適宜選択することが可能になる。また、柱骨部材15が6本の場合、筋交い18を設けやすくなるとともに、筋交い18を設けない箇所を確保しやすくなり、居住スペースにする際に、扉や窓を設置しやすくなる。6本よりも多くなると、製造コストの増加の他、荷重のバランス等を考慮する必要があり、設計の手間が増える場合がある。6本よりも少ないと積層させるための強度が確保されず、積層の選択肢が狭まる。
【0029】
図2は、本実施形態の構造物1を積層させた場合の外観斜視図である。下側の構造物を構造物1aとし、上側のコンテナを構造物1bとして図示している。下側の構造物1aと上側の構造物1bは、同じ構造であるため、それぞれ別々に設計して製造する必要がなく、製造コストを抑えることができる。
【0030】
図3(A)は、
図1の構造物1を上から見た場合の平面図である。上から見た場合のことを、上面視とも称する。要部平面概略図も上面視における図に含まれる。図中、符号11b1、11b2は、他の図における骨部材11bに相当するものであり、説明のために、骨部材11bを区別して図示している。
【0031】
屋根骨部材は、屋根板が取り付けられることで構造物1の屋根を形成する。
屋根板としては、特に制限されるものではなく、公知のものを用いることができ、例えば、合板であってもよいし、コルゲートであってもよい。また、屋根板の材質としては、特に制限されるものではなく、例えば金属材料を用いる。また、屋根板の取付方法としては、特に制限されるものではなく、公知の方法を用いることができる。
【0032】
壁板、床板についても、特に制限されるものではなく、公知のものを用いることができ、例えば、合板であってもよいし、コルゲートであってもよいし、任意の材質であってもよい。
屋根板、壁板、床板に、断熱材、防音材などを用いてもよい。屋根板、壁板、床板は、一重であってもよいし、二重であってもよいし、複数層であってもよい。また、屋根板と屋根骨部材が一体になっていてもよく、柱骨部材と壁板とが一体になっていてもよい。また、屋根板、壁板は、使用の目的に応じて、設けていなくてもよい。
【0033】
延伸部16は、柱骨部材15の一部としているが、着脱可能としてもよい。延伸部16が着脱可能であることにより、例えば、最上層の構造物1における延伸部16を取り外して見た目を向上させることができる。
【0034】
図4は、延伸部16の取り付け方法の一例を説明するための側面図である。本例では、柱骨部材15と延伸部16とが、固定部材22により接合されている。また、柱骨部材15と延伸部16との間に接合用メタルプレート23を設け、柱骨部材15と延伸部16とが接合用メタルプレート23を介して接合されている。
【0035】
固定部材22としては、適宜選択することができ、例えば、ねじ、ボルト等を用いることができる。固定部材22の数は、適宜変更することができる。
【0036】
図5は、構造物に屋根板32a、32b、壁板33、34を備え付けた場合の斜視図である。また、図には示されていないが、床板が備え付けられている。本実施形態における屋根31は、2つの斜面からなり、2つの斜面は屋根板32aと屋根板32bによって形成されている。
【0037】
本発明では、本発明の構造物に屋根板、壁板及び床板を取り付けた状態を建築物と称する。また、本発明の建築物は、居住スペースにすることができるため、居住用建築物と称してもよい。ただし、本発明の建築物は、居住用に限られず、倉庫など、物を置くために使用してもよい。このような用途で使用される場合も、本発明の居住用建築物に含まれるものとする。
【0038】
図1及び
図2に示すように、本実施形態の構造物は、柱骨部材15に接続する筋交い18を有していることが好ましい。筋交い18を有することにより、構造物1の強度を向上させることができ、例えば耐震強度を向上させることができる。筋交い18の個数、設置する箇所等は、適宜変更することができる。
【0039】
また、例えば
図5に示すように、建築物10には扉36を設けてもよい。扉36は、筋交い18が設けられていない箇所に設置することが好ましい。これにより、人が出入りする際に、筋交い18が邪魔にならない。また、建築物10には窓を設けてもよく、窓は筋交い18が設けられていない箇所に設置することが好ましい。
【0040】
図6は、本実施形態の建築物10の一例を示す側面概略図である。図示する例では、屋根板32a、32b、壁板34、床板を備え付けており、扉36、窓37を備え付けている。また、建築物10(又は構造物1)が有する柱骨部材15の下部に、足部材40を設けてもよい。このように、本実施形態の構造物1及び建築物10は、積層せずに単体で居住スペースとして用いてもよい。
【0041】
図7は、本実施形態の建築物10の一例を示す斜視概略図である。図示するように、本実施形態の建築物10(又は構造物1)は、床板35を備えていてもよい。また、本実施形態における屋根31は、開口部32dを有していてもよい。開口部32dは、天窓として使用してもよいし、構造物1を積層させたときに、上の階と下の階をつなぐ経路としてもよい。
【0042】
本実施形態では、例えば
図1、
図2に示すように、柱骨部材15は、その上部に板部材17を有していることが好ましい。この場合、構造物1a上に構造物1bを積層させた際に、構造物1aと構造物1bとが板部材17を介して積層される。このようにすることで、上側の構造物1bの接地面が安定する。
【0043】
なお、柱骨部材15が延伸部16を有する場合は、延伸部16の上部に板部材17が設けられる。
【0044】
また、柱骨部材15は、その下部に板部材17を有していてもよい。特に、柱骨部材15の上部と下部の両方に板部材17を有していることがより好ましい。この場合、構造物を積層させたときに、両者を固定しやすくなる。
【0045】
図8は、下側の構造物1aと上側の構造物1bとの接続部を説明するための要部概略図である。図示する例は、下側の構造物1aの延伸部16の上部に設けられた板部材17と、上側の構造物1bの柱骨部材15の下部に設けられた板部材17とが固定部材25で固定された場合の例である。このように構造物同士を固定することで、下側の構造物1aと上側の構造物1bとを強固に設置でき、上側の構造物1bが落下することを防止できる。
【0046】
なお、
図8に示す例では、延伸部16が板部材17を有する箇所を図示しているが、延伸部16を有していない柱骨部材15(すなわち柱骨部材15b)も板部材17を有している。6本の柱骨部材15がその上部に板部材17を有していることが好ましい。
【0047】
本実施形態において、一の当該構造物上に他の当該構造物を積層させたとき、一の当該構造物が有する4本又は6本の柱骨部材15が、他の当該構造物に接触して下から支持することが好ましい。このように、構造物1aが有する4本又は6本の柱骨部材15が、構造物1bに接触して下から支持する構成にすることで、構造物を積層させたときの安定感が増し、積層の選択肢がより広がる。
【0048】
なお、柱骨部材15が接触して下から支持するとあるのは、板部材17を介して支持す場合を含むものとする。
【0049】
図9は、構造物1aに構造物1bを積層させたときにおいて、上から見た場合の平面図を模式的に説明する図である。図中、構造物1bは破線で示している。本実施形態では、構造物1aと構造物1bが互いに6本の柱骨部材15が同じ位置になるように積層させてもよいし、図示するように、構造物1aと構造物1bをずらして積層させてもよい。
【0050】
図9(A)は、6本の柱骨部材15が同じ位置になる配置から、上の構造物1bを90°回転させて配置した場合の例である。本実施形態では、構造物1aにおける6本のうちの4本の柱骨部材15が構造物1bに接触して下から支持することで積層させることができるため、図示するような積層が可能になる。
【0051】
図9(B)は、6本の柱骨部材15が同じ位置になる配置から、上の構造物1bを180°回転させて更に平行移動させて配置した場合の例である。本実施形態では、このような積層も可能になる。
【0052】
本実施形態の構造物や建築物を図示するような積層にすることで、本実施形態の構造物や建築物の利用方法の選択肢が広がり、利便性が向上する。例えば、使用地における日照方向、風向きなどを考慮して積層態様を変更できるなど、利用方法の選択肢が広がるという利点がある。
【0053】
本実施形態において、構造物1の底面から柱骨部材15の頂部までの高さは、構造物1の底面から屋根31の頂部までの高さと同じであることが好ましい。この場合、延伸部16を有する柱骨部材15だけでなく、延伸部16を有していない柱骨部材15も上側の構造物と接触して支持することができるため、積層した場合に安定しやすくなる。
【0054】
図10は、構造物1の底面から柱骨部材15の頂部までの高さと、構造物1の底面から屋根31の頂部までの高さとの関係の一例を説明するための図である。
図10(A)は一の側面図(壁板33側から見た場合の側面図)であり、
図10(B)は他の側面図(壁板34側から見た場合の側面図)である。図示するように、構造物1の底面から柱骨部材15の頂部までの高さL1は、構造物1の底面から屋根31の頂部までの高さL2と同じになっている。
【0055】
なお、板部材17を有する場合には、板部材17を含めた高さで比較する。また、構造物1の底面とあるのは、構造物1の床板部分であってもよいし、土台の部分であってもよい。L1とL2の起点を同じにすればよい。
【0056】
本実施形態において、上面視で構造物1は長手と短手を有し、屋根の稜線32cは、構造物1の短手方向に沿った方向であることが好ましい。例えば、
図1~
図3、
図5等に示す例では、そのようになっており、屋根の稜線は、構造物1の短手方向に沿った方向になっている。このようにすることで、デザイン性が向上する。
【0057】
図5に示すように、構造物1に屋根板(例えば屋根板32a、32b)が備え付けられて屋根31を形成している場合には、屋根の稜線は符号32cの箇所となる。これに対して屋根板が備え付けられていない場合には、例えば
図1や
図3のように、骨部材11c(棟木)により、屋根の稜線を判定できる。例えば
図3に示すように、本実施形態では、屋根の稜線を形成する骨部材11cが、構造物1の短手方向に沿った方向になっている。
【0058】
また、
図1、
図3(A)等に示すように、上面視において、屋根の稜線は、一の短手からの距離と他の短手からの距離とが異なる位置に存在することが好ましい。
図3(A)では、一の短手を符号11b1で示しており、他の短手を符号11b2で示している。図示するように、屋根の稜線を形成する骨部材11cは、一の短手である骨部材11b1との距離が、他の短手である骨部材11b2との距離よりも小さくなっている。
【0059】
このようにすることで、構造物1に方向性が生まれるという利点がある。例えば、構造物1を降雪地域で使用する場合、屋根に雪が積もることが想定されるが、
図3(A)における符号11a、11c、11b2で囲まれた屋根(紙面右側)により多くの雪が積もり、積もった雪は符号11b2側に落ちることになる。このため、符号11b2側に降雪対策を行うといった対応をとることができる。この他にも例えば、符号11b1側に出入口や階段を設けるなど、構造を決める際の材料になる。
【0060】
ただし、本実施形態は
図3(A)の構成に限られず、
図3(B)の構成であってもよい。すなわち、上面視において、屋根の稜線は、一の短手からの距離と他の短手からの距離とが同じ位置に存在していてもよい。この場合、屋根の形状が左右対称になり、見た目が良いという観点から好まれる場合もある。
【0061】
また、
図3に示すように、上面視において、4つの柱骨部材15に囲まれる領域13aと、領域13aとは別の領域であって、他の4つの柱骨部材15に囲まれる領域13bとが存在する。この2つの領域13aと領域13bのうち、一方は正方形であり、他方は長方形であることが好ましい。この場合、構造物の積層の選択肢が広がる。例えば、
図9(A)に示すように、正方形である領域13aが上の構造物1bと下の構造物1aとで重なるように積層させることで、構造物同士を任意に回転させて積層させることができる。
【0062】
上面視における4隅に設けられた柱骨部材15は、上部分の領域と下部分の領域に本実施形態の構造物又は建築物を運搬するためのキャスティング穴を有することが好ましい。このようなキャスティング穴を設けることにより、本実施形態の構造物又は建築物を移動させることができ、使用地の変更、設置、積層等が行いやすくなるという非常に優れた利点が得られる。キャスティング穴としては、一般的なコンテナに設けられるものと同じ構成にすることができる。ただし、4隅に設けられた柱骨部材15が延伸部16を有する場合、前記上部分の領域に設けられる前記キャスティング穴は、延伸部16に設けられる。
【0063】
図11は、キャスティング穴19a、19bを説明するための図である。柱骨部材15の上部分の領域に設けられたキャスティング穴をキャスティング穴19aとし、柱骨部材15の下部分の領域に設けられたキャスティング穴をキャスティング穴19bとしている。図示するように、4隅の柱骨部材15は、上部分の領域にキャスティング穴19aを有し、下部分の領域にキャスティング穴19bを有している。
【0064】
キャスティング穴に、例えばクレーン車のフックを通すことにより、構造物1や建築物10を移動させたり、積層させたりしやすくなる。キャスティング穴を利用することで、より安全に作業することができる。また、船積みして運搬する際に、キャスティング穴を利用し、積層させる際の固定に用いることもできる。
【0065】
キャスティング穴の個数は、適宜変更することができる。例えば柱骨部材15における上部分の領域に、例えば2つ乃至5つのキャスティング穴を設けてもよい。同様に、例えば柱骨部材15における下部分の領域に、例えば2つ乃至5つのキャスティング穴を設けてもよい。なお、上部分の領域、下部分領域とあるのは、構造物1や建築物10の移動を行うことができる範囲で適宜変更してもよい。
【0066】
本実施形態の構造物の大きさとしては、特に制限されるものではなく、適宜選択することができる。例えば、輸送用コンテナの大きさにすることが好ましい。この場合、製造、移動、使用の観点から利点が得られる。
【0067】
本実施形態によれば、本実施形態の構造物又は建築物を複数積層させた居住用建築物が提供される。
図12は、本実施形態の建築物10の一例を示す図である。
図12に示す例は、
図2において屋根板、壁板、床板を備え付けた場合の例である。ただし、
図12に示す例では、屋根の稜線を
図3(B)の位置になるように図示しているが、上述したように、屋根の稜線は
図3(A)の位置になることが好ましい。
【0068】
図12(A)は、構造物1aと構造物1bを積層した状態の一例を示している。ここでは、扉や窓などの図示を省略している。これらは、適宜設けることができる。
図12(B)は、扉36を設けてから構造物1aと構造物1bを積層した状態の一例を示している。また、図示するコンテナハウスでは、上側の構造物1bに入るための階段44が設けられている。これにより、上側の構造物1bに入りやすくなる。この他にも。
図7に示す開口部32dを設けて、上側の構造物1bに入るための経路にしてもよい。
【0069】
上記の例では、2つの構造物を積層しているが、本実施形態はこれに限られず、3つ以上の構造物を積層してそれぞれを居住スペースにしてもよい。なお、
図12等では、構造物1を積層すると説明しているが、建築物10を積層すると称してもよい。屋根板、壁板、床板を備え付けるタイミングは、特に制限されるものではなく、適宜選択することができる。構造物に屋根板、壁板、床板を備え付けて建築物にした後に、使用地に運搬して積層してもよい。構造物を使用地に運搬した後に、屋根板、壁板、床板を備え付けてもよい。
【0070】
本実施形態の構造物又は建築物は、2つの斜面からなる屋根31を有しているため、積層させた場合に、図示するように上側と下側との間にスペース42(隙間)が存在する。このようなスペース42が存在することにより、上側と下側の間の音や振動が伝わることを抑制することができる。そのため、例えば上側の構造物1bの内部で生じた音が、下側の構造物1aに伝わりにくくなる。また、スペース42が存在することで、風通しを調整することができ、建築物10全体に吹き付ける風の逃げ道を確保することができる。
【0071】
上述したように、本実施形態の構造物1や建築物10をどのような配置で積層するかについては、特に制限されるものではなく、適宜変更することができる。上記の
図2では、下側の構造物1aの四隅と、上側の構造物1bの四隅とが一致するように積層させている。例えば
図9で説明したように、本発明はこれに限られず、下側の構造物1aの四隅と、上側の構造物1bの四隅とをずらして積層させてもよい。
【0072】
図13に更に他の例を示す。
図13は、
図2と同様の図であるが、下側の構造物1aの四隅と、上側の構造物1bの四隅とをずらして積層させている。このように積層させることで、得られる建築物の選択性が増える。そのため、使用の用途、使用者の希望に応じて、建築物の形状を適宜変更することができ、使用者の利便性が飛躍的に向上する。
【0073】
図14に更に他の例を示す。
図14は、
図13に示す例に対して、更に水平方向に構造物を併設している。例えば、図示するように、下側の構造物1aに構造物1cを併設し、上側の構造物1bに構造物1dを併設している。構造物1aと構造物1cは、接していてもよいし、接していなくてもよい。また、構造物1aと構造物1cは、互いに出入り可能としてもよいし、独立していてもよい。水平方向に構造物を併設した場合、互いに対向する壁を取り外し、居住スペースの面積を広げてもよい。このようにすることで、利便性が向上する。
【0074】
図15に更に他の例を示す。
図15は、
図13に示す例に対して、更に水平方向にコンテナを併設している。この場合、
図13や
図14に示す例と同様の利点が得られる。このように本実施形態では、構造物をどのような配置で積層するかについては、特に制限されるものではなく、適宜変更することができる。
【0075】
図16~
図18は、足部材40を用いた場合の例について説明する図である。本実施形態の構造物を積層させた場合、最下層の構造物の下部には、足部材40を設けることが好ましい。具体的には、最下層の構造物における6本の柱骨部材15の下部に足部材40を設けることが好ましい。このようにすることで、最下層の構造物における温度、湿度等の環境を良好にすることができる。
【0076】
図16は、
図1(A)に示す例に対して足部材40を用いた場合の例であり、
図17は、
図2に示す例に対して足部材40を用いた場合の例であり、
図18は、
図13に示す例に対して足部材40を用いた場合の例である。足部材40を構造物に取り付けた後に、使用地に運搬してもよいし、構造物を使用地に運搬した後に、足部材40を構造物に取り付けてもよい。また、足部材40の取付方法は、適宜選択することができる。
【0077】
上記説明したように、本実施形態の建築用の構造物は、本実施形態の構造物を積層させて居住スペースとして使用でき、下側の構造物と上側の構造物を同じものを用いることができる。すなわち、本実施形態の構造物は、屋根の形状を有したまま積層させることができる。そのため、下側の構造物と上側の構造物とを別々に設計や製造する必要がなく、構造物の製造コストを抑えることができる。下側の構造物と上側の構造物とを別々に設計や製造する場合、例えば、それぞれで異なる構造計算が必要になり、手間や労力が増え、構造物の製造コストが増える。
【0078】
本実施形態の構造物は、屋根の形状を有したまま積層させることができるので、例えば最上層の構造物又は建築物が屋根の形状を有することにより、見た目を向上させることができることに加え、降雪地域での使用もしやすくなる。また、屋根の形状にすることで、雨水がたまりにくくなる等の利点も得られる。また、2つの斜面からなる屋根を形成することができるため、建築物に対して屋根を形成することを求める地域においても、そのまま使用できるという利点がある。
【0079】
本実施形態の構造物は、屋根の形状を有したまま積層させることができるので、使用場所に運搬してから屋根を形成するという製造方法を選択する必要がなくなる。そのため、構造物を製造した後、使用場所に運搬して積層させることでよく、作製の時間や手間を低減することができ、建築物の製造コストを抑えることができる。
【0080】
なお、本実施形態の構造物を積層させて運搬することもできるが、この場合、積層時の高さに留意する。車両で運搬する際には経路に問題がないか留意する。船で運搬する際には、搬送用コンテナのように積層させて運搬することができるため、運搬上の利点がある。
【0081】
また、本実施形態の構造物は、使用する場所での建築基準を満たしていることが好ましい。建築基準を満たすためには、例えば、規定の鋼材を用いて構造物を作製する。使用する場所での建築基準を満たすことにより、使用場所において、建築基準をクリアするための更なる加工等が不要であり、手間やコストが更に発生することを防止できる。
【0082】
本実施形態の構造物及び建築物の用途は、特に制限されるものではなく、適宜選択することができる。本実施形態の構造物及び建築物は、居住スペースとして好適に利用される。居住スペースとあるのは、人間が内部で過ごすことを想定しているが、本実施形態の用途はこれに限られない。例えば、物置きとして使用してもよい。
【0083】
(第2の実施形態)
次に、本発明の他の実施形態について説明する。上記実施形態と同様の事項については説明を省略する。
【0084】
上記実施形態では、屋根を2つの斜面とし、4隅の柱骨部材15が延伸部16を有するとしたが、本発明はこれに限られず、適宜変更してもよい。
本実施形態の構造物は、
前記屋根は、1つの斜面であり、
上面視において、当該構造物は、短手と長手を有し、
前記延伸部は、3本の前記柱骨部材に設けられ、
前記柱骨部材は、上面視において、4隅と2つの長手の辺上とに配置され、長手の辺上に配置された3本の当該柱骨部材が前記延伸部を有する
ことを特徴とする。
【0085】
図19は、本実施形態の構造物1の一例を説明するための図である。
図19(A)は、本実施形態の構造物1の一例を説明するための斜視概略図であり、
図19(B)は、その要部平面概略図である。
【0086】
図示するように、本実施形態において、延伸部16は、3本の柱骨部材15aに設けられている。また、柱骨部材15は、上面視において、4隅と2つの長手の辺上とに配置されており、計6本配置されている。柱骨部材15は、上面視において、長手の辺上に配置された3本の柱骨部材15aが延伸部16を有している。なお、
図19(B)に示す図において、3本の柱骨部材15aで結ばれる線が長手の辺とし、3本の柱骨部材15bで結ばれる線が長手の辺とする。
【0087】
本実施形態では、このような構成により、屋根は1つの斜面からなる。3本の柱骨部材15bによって形成される辺が、屋根の斜面における高さの高い辺になり、3本の柱骨部材15aによって形成される辺が、屋根の斜面における高さの低い辺になる。
【0088】
また本実施形態において、屋根骨部材は複数の骨部材11a、11bからなり、屋根の1つの斜面を形成可能なように水平面に対して傾斜した骨部材11aを複数有している。図中、骨部材11cとしているが、骨部材11aと表記してもよい。この場合、3本の骨部材11aを有しているといえる。
【0089】
図20及び
図21は、本実施形態の構造物1を積層させた場合の一例を示す図であり、本実施形態の建築物10の一例を示す図である。本実施形態においても、一の構造物1a上に他の構造物1bを積層させて、それぞれの構造物を居住スペースにすることが可能である。このように、屋根の形状を有した状態で構造物を積層させることができるため、上記実施形態と同様に、製造コストの低減、音や振動が伝わることの抑制等の利点が得られる。
【0090】
図22は、本実施形態において、キャスティング穴19a、19bを設けた場合の例を説明する図である。上面視における4隅に設けられた柱骨部材15は、上部分の領域と下部分の領域に構造物1を運搬するためのキャスティング穴を有する。上記実施形態と異なる点としては、以下である。上記実施形態では4隅の柱骨部材15は、すべて延伸部16を有していたため、上部分の領域は、延伸部16に該当していた。一方、本実施形態では、4隅の柱骨部材15のうち、2本の柱骨部材15bは延伸部16を有していないため、柱骨部材15bの上部分の領域にキャスティング穴19aが設けられる。
【0091】
ただし、得られる利点は上記実施形態と同様である。キャスティング穴が設けられることにより、構造物1を移動させることができ、使用地の変更、積層などがしやすくなる。
【0092】
なお、上記実施形態に適用可能な構成は、本実施形態でも適用可能である。例えば、本実施形態においても延伸部16は着脱可能としてもよい。また、筋交い18、板部材17、足部材40等は、本実施形態においても適用可能である。
【0093】
また、本実施形態においても、一の当該構造物上に他の当該構造物を積層させたとき、一の当該構造物が有する4本又は6本の前記柱骨部材が、他の当該構造物に接触して下から支持することが好ましい。これにより、積層の態様の選択肢が広がる。
【0094】
(第3の実施形態)
次に、本発明の他の実施形態について説明する。上記実施形態と同様の事項については説明を省略する。
【0095】
上記第1の実施形態では、屋根を2つの斜面とし、4隅の柱骨部材15が延伸部16を有するとしたが、本発明はこれに限られず、適宜変更してもよい。
本実施形態の構造物は、
前記屋根は、1つの斜面であり、
上面視において、当該構造物は、短手と長手を有し、
前記延伸部は、4本の前記柱骨部材に設けられ、
前記柱骨部材は、上面視において、4隅と2つの長手の辺上とに配置され、4隅のうちの2本であり同一の短手の辺上の当該柱骨部材と、2つの長手の辺上の当該柱骨部材とが前記延伸部を有する
ことを特徴とする。
【0096】
図23は、本実施形態の構造物1の一例を説明するための図である。
図23(A)は、本実施形態の構造物1の一例を説明するための斜視概略図であり、
図23(B)は、その要部平面概略図である。
【0097】
図示するように、本実施形態において、延伸部16は、4本の柱骨部材15aに設けられている。また、柱骨部材15は、上面視において、4隅と2つの長手の辺上とに配置されており、計6本配置されている。柱骨部材15は、上面視において、4隅のうちの2本であり同一の短手の辺上の柱骨部材15aと、2つの長手の辺上の柱骨部材15aとが延伸部16を有している。上記の記載において、「4隅のうちの2本であり同一の短手の辺上の柱骨部材15a」との記載は、4隅のうちの2本において、対角線上の柱骨部材は除くという意味である。なお、
図23(B)に示す図において、3本の柱骨部材15で結ばれる線が長手の辺ととする。
【0098】
本実施形態では、このような構成により、屋根は1つの斜面からなる。2本の柱骨部材15bによって形成される辺が、屋根の斜面における高さの高い辺になる。表現を変えると、上面視において、一の短手の辺が屋根の斜面における高さの高い辺になり、他の短手の辺が屋根の斜面における高さの低い辺になる。
【0099】
また本実施形態において、屋根骨部材は複数の骨部材11a、11bからなり、屋根の1つの斜面を形成可能なように水平面に対して傾斜した骨部材11aを複数有している。本実施形態では、2本の骨部材11aを有しているともいえる。
【0100】
図24及び
図25は、本実施形態の構造物1を積層させた場合の一例を示す図であり、本実施形態の建築物10の一例を示す図である。本実施形態においても、一の構造物1a上に他の構造物1bを積層させて、それぞれの構造物を居住スペースにすることが可能である。このように、屋根の形状を有した状態で構造物を積層させることができるため、上記実施形態と同様に、製造コストの低減、音や振動が伝わることの抑制等の利点が得られる。
【0101】
図26は、本実施形態において、キャスティング穴19a、19bを設けた場合の例を説明する図である。上面視における4隅に設けられた柱骨部材15は、上部分の領域と下部分の領域に構造物1を運搬するためのキャスティング穴を有する。本実施形態は、上記第2の実施形態と同様に、4隅の柱骨部材15のうち、2本の柱骨部材15bは延伸部16を有していないため、柱骨部材15bの上部分の領域にキャスティング穴19aが設けられる。得られる利点は上記実施形態と同様である。キャスティング穴が設けられることにより、構造物1を移動させることができ、使用地の変更、積層などがしやすくなる。
【0102】
なお、上記実施形態に適用可能な構成は、本実施形態でも適用可能である。例えば、本実施形態においても延伸部16は着脱可能としてもよい。また、筋交い18、板部材17、足部材40等は、本実施形態においても適用可能である。
【0103】
また、本実施形態においても、一の当該構造物上に他の当該構造物を積層させたとき、一の当該構造物が有する4本又は6本の前記柱骨部材が、他の当該構造物に接触して下から支持することが好ましい。これにより、積層の態様の選択肢が広がる。
【0104】
(その他の実施形態)
本発明では、上記の第1の実施形態~第3の実施形態を適宜組み合わせることができる。例えば、上記の第1の実施形態~第3の実施形態で説明した構造物1を適宜組み合わせて建築物10にしてもよい。例えば、第1の実施形態の構造物1に、第2、第3の実施形態の構造物1を組み合わせることで、より大きな屋根にすることができる。
【符号の説明】
【0105】
1、1a~1d 構造物
10 建築物
11a~11c 骨部材
11 稜線
12 床骨部材
15 柱骨部材
16 延伸部
17 板部材
18 筋交い
19a、19b キャスティング穴
22 固定部材
23 接合用メタルプレート
31 屋根
32a、32b 屋根板
32d 天窓
33、34 壁板
35 床板
36 扉
37 窓
40 足部材
42 スペース
44 階段