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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039372
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】自律分散システムおよび情報交換方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 67/10 20220101AFI20240314BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20240314BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
H04L67/10
H02J3/00 170
H02J13/00 301A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143881
(22)【出願日】2022-09-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 喜義
(72)【発明者】
【氏名】平戸 康太
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 晋
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AC09
5G064CB08
5G064DA03
5G066AA03
5G066AE04
5G066AE09
(57)【要約】
【課題】異システム間で連携しながら動作させることができる自律分散システムおよび情報交換方法を提供すること。
【解決手段】実施形態の自律分散システムは、複数のシステムを含む自律分散システムであって、複数のシステムの各々は独立して自律的に動作し、複数のシステムの各々は、情報交換部を持つ。情報交換部は、他のシステムとの間で情報を交換する。情報は、第1情報識別子と第1属性値との組によって表現され、第1情報識別子は、「モノ」の位置の3次元座標である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシステムを含む自律分散システムであって、
複数の前記システムの各々は独立して自律的に動作し、
複数の前記システムの各々は、
他の前記システムとの間で情報を交換する情報交換部
を備え、
前記情報は、第1情報識別子と第1属性値との組によって表現され、
前記第1情報識別子は、「モノ」の位置の3次元座標である、自律分散システム。
【請求項2】
複数の前記システムの各々は、
交換する前記情報の表現形式としてパブリック形式とローカル形式とを有し、
前記パブリック形式では、前記情報が、前記第1情報識別子と前記第1属性値との組によって表現され、
前記ローカル形式では、前記情報が、各システムで独自に定義されている第2情報識別子と第2属性値との組によって表現され、
前記情報交換部は、外部からの要求に応じてパブリック形式とローカル形式との対応関係を交換する、請求項1に記載の自律分散システム。
【請求項3】
複数の前記システムから情報を取得して動作する情報共有システム
をさらに備え、
前記情報共有システムは、地図情報データベースである、請求項1または請求項2に記載の自律分散システム。
【請求項4】
複数の前記システムの各々は、
電力系統の系統計算を実施する算出部
をさらに備え、
前記情報交換部は、各システムが個々に作成するノード・ブランチの情報を交換する、請求項1または請求項2に記載の自律分散システム。
【請求項5】
複数のシステムを含む自律分散システムで実行される情報交換方法あって、
複数の前記システムの各々は独立して自律的に動作し、
複数の前記システムの各々は、
他の前記システムとの間で情報を交換、
前記情報は、第1情報識別子と第1属性値との組によって表現され、
前記第1情報識別子は、「モノ」の位置の3次元座標である、情報交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、自律分散システムおよび情報交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DX(Digital transformation: DX)が進展し、社会には多種多様な情報システム(以下、単にシステム)が構築されている。従来、個々のシステムは独自に構築され、一部を除き互いに連携を取りながら動作する形態は少なかった。それらの多種多様のシステムは俯瞰的にみると、互いに意味的な関係性持つものが多くあり、相互に連携しながら動作させることにより新たな価値を生み出すことや、重複した機能の整理統合等によって、社会全体としての効率化を進められる可能性がある。ところが現状は、各システム間の連携は大きくは進んでいない。
【0003】
各システム間で連携する技術に関して、柔軟性が高く、拡張容易な業務システムが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-201771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、異システム間で連携しながら動作させることができる自律分散システムおよび情報交換方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の自律分散システムは、複数のシステムを含む自律分散システムであって、複数の前記システムの各々は独立して自律的に動作し、複数の前記システムの各々は、情報交換部を持つ。情報交換部は、他の前記システムとの間で情報を交換する。前記情報は、第1情報識別子と第1属性値との組によって表現され、前記第1情報識別子は、「モノ」の位置の3次元座標である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態の自律分散システム1の一例を示す図。
図2】本実施形態のシステム100の一例を示す図。
図3】本実施形態のシステム100の動作の一例を示す図。
図4】本実施形態のシステム100の動作の一例を示すフロー図。
図5】公開用データ110aの一例を示す図。
図6】本実施形態のシステム100の動作の一例を示すフロー図。
図7】本実施形態のシステム100の動作の一例を示すフロー図。
図8】実施形態の変形例1の自律分散システム1aを示す構成図。
図9】実施形態の変形例1の情報共有システム200の動作の一例を示すフロー図。
図10】公開用データ210aの一例を示す図。
図11】実施形態の変形例1の情報共有システム200の動作の一例を示すフロー図。
図12】実施形態の変形例1の情報共有システム200の動作の一例を示すフロー図。
図13】実施形態の変形例1の情報共有システム200の動作の一例を示すフロー図。
図14】実施形態の変形例1の情報共有システム200の動作の一例を示す図。
図15】実施形態の変形例2の自律分散システム1bを示す構成図。
図16】実施形態の変形例2のシステム100bを示す図。
図17】実施形態の変形例2のシステム100bの動作の一例を示す図。
図18】実施形態の変形例2の自律分散システム1bでの設備の情報の一例を示す図。
図19】実施形態の変形例2の母線の表現例を示す図。
図20】実施形態の変形例2の送電線の一例を示す図。
図21】実施形態の変形例2の母線と送電線の一例を示す図。
図22】実施形態の変形例2の変圧器の一例を示す図。
図23】実施形態の変形例2のスイッチの一例を示す図。
図24】実施形態の変形例2の電力系統設備の一例を示す図。
図25】実施形態の変形例2の自律分散システム1bの動作の一例を示すフロー図。
図26】実施形態の変形例2の自律分散システム1bの動作の一例を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の自律分散システムおよび情報交換方法を、図面を参照して説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
【0009】
本実施形態の自律分散システム1は、複数のシステムを含む。複数のシステムの各々は独立して自律的に動作する。自律分散システム1において、複数のシステムの各々には、他のシステムと連携しながら動作させるために必要な機能を持った「共通の言語」が確立されている。「共通の言語」に必要な機能は以下のa)からc)のとおりである。
a)共通の文法(データ交換のインタフェースとプロトコル)
b)共通のデータ表現形式(データ交換のフォーマット)
c)共通の意味を共有できる識別子(特に現実の世界の個々の「モノ」に対して、意味を伴いつつ、ひとつひとつを識別する手段)
【0010】
従来、a)、b)については多くの体系が存在している「モノ」の、c)の範囲が限定的な場合が多く、将来を通じて広く普遍的に使えそうなc)の定義は、未だ見当たらない。
【0011】
例えば、多種多様な「モノ」の情報を異システム間で交換するケースにおいては、a)、b)の方法は存在しても、異システム間で個々の「モノ」を同じ認識で識別する方法は限定的であった。c)の例としてIEC 61360などがあるが、標準化されている範囲が限定的であり、広く普遍的に普及しているとは言えないなど、c)としての機能は満たせていなかった。
【0012】
c)の有力な候補として、緯度・経度・標高等の「モノ」の位置の座標データを挙げることができる。なぜならば、現実の世界の「モノ」は必ず3次元的な座標(1点で表現できない場合は座標の集合)を持っており、且つ、まったく同一の座標上に2つ以上の「モノ」は存在できないという物理的な排他原理が成り立つからである。つまり、3次元的な座標(1点で表現できない場合は座標の集合)は「モノ」の位置を表現すると共に、特に位置が変化しない静的な「モノ」をユニークに識別する識別子としての側面を持つと言える。
【0013】
従来、上記のc)の手段として3次元的な座標が使用されてこなかった理由は、以下のA)からE)の理由によるものと考えられる。
A)この目的に合致する様な正確な精度の座標データを作成するためには、高いコストが必要だった。
B)3次元データを活用する動機が乏しかった。
C)「モノ」の位置が変化する場合には使えない。
D)「モノ」へのユニークな3次元座標の与え方が整備されていなかった。
E)魅力的な活用例の認知されていなかった。
【0014】
日本国内においては、「みちびき」などの高精度なGPS(Global Positioning System)や電子基準点の整備により、GNSS(Global Navigation Satellite System)測量機を用いたcm単位での高精度測定が可能になってきている。また、3次元レーザースキャナ(LiDAR(Light Detection and Ranging))技術の進展もあいまって、高精度な3次元データ作成コストが急速に低下しつつある。
【0015】
また、政府はOpenDataの施策や、3次元空間情報基盤整備を進めようとしており、特に政府主導の入札工事物件では、工事データの3Dデータ化が必須化される予定であるなど、将来的には多くのデータが3次元座標に紐づいてデータ化されていく可能性が高くなっている。
【0016】
フォログラム等を用いた3D表示技術やVR(Virtual Reality)技術など、実際に3次元データを活用するための基盤も急速に整ってきており、3次元データを活用する動機も高まりを見せている。
【0017】
以上の様な背景から、A)、B)の懸念は払拭されつつあり、C)については、対象を位置の変化しない「モノ」に対象を限定するならば、D)、E)を解決すれば、前記のc)の手段として3次元的な座標データを用いることが有望な手段となり得る。
【0018】
本実施形態では、位置の変化しない「モノ」を扱うシステム間の情報連携の方法として、a)、b)の具体例および、D)の解決手段を示すことにより、c)の手段として3次元的な座標を用いることが可能であることを示す。
【0019】
図1は、本実施形態の自律分散システム1の一例を示す図である。本実施形態の自律分散システム1は、システム100-1、システム100-2、・・・、システム100-nを備える。システム100-1、システム100-2、・・・、システム100-nの各々は、ネットワークNWを介して接続される。ネットワークNWは、例えば、インターネット、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、プロバイダ装置、無線基地局などを含む。
【0020】
システム100-1、システム100-2、・・・、システム100-nの各々は、互いに相互に連携し合う。システム100-1、システム100-2、・・・、システム100-nは、それぞれGeo-API101-1、Geo-API101-2、・・・、Geo-API101-nを追加搭載している(アドオンしている)。Geo-API101-1、Geo-API101-2、・・・、Geo-API101-nの各々は、共通の文法(データ交換のインタフェースとプロトコル)と、共通のデータ表現形式(データ交換のフォーマット)を実装するためのインタフェースである。
【0021】
また、システム100-1、システム100-2、・・・、システム100-nは、ネットワークNWを介して地図情報300、バーチャル地球儀システム400、交通情報500、オープンデータを利用する。オープンデータは、政府の推進するOpenData施策に伴って広く公開される公共のデータであって、例えば、国土地理院が公開する地形情報(例えば、標高)や土地利用情報(例えば、土地利用区分)や、気象庁が公開する各種の気象情報(気温・風速の分布、日照分布、降雨・降雪・雷分布、地震・台風情報のリアルタイム値および/または予測値)などがある。今後、このオープンデータは増加の一途を辿ると予想される。その情報は、システム間の連携を高め新たな付加価値を生むために資するものである。
【0022】
本実施形態においては、共通の文法や共通のデータ表現形式の大枠は、既に存在する各種の定義をそのまま適用することができる。例えば、SOAP(Simple Object Access Protocol)、REST(Representational State Transfer)、Open API(application programming interface) 3.0(https://swagger.io/solutions/getting-started-with-oas/)などを挙げることができる。
【0023】
これらは何れも、データ交換の基本フォーマットやデータ交換の基本手順(枠組み)を定めるものであり、c)に相当する定義は利用者マターとなっている。本実施形態では、一例として、a)b)に関して新たに枠組みを新たに定義する必要はなく、既に確立しているこうした枠組みをそのまま活用する場合について説明を続ける。
【0024】
以下、システム100-1、システム100-2、・・・、システム100-nのうち、任意のシステムを、システム100と記載する。
【0025】
<a)、b)、c)の具体化>以下、前述した様なa)b)の既存の枠組みの中で、定義すべき具体的な「前提条件」、「機能定義」、「動作」を説明する。
【0026】
<前提条件>
1)全ての情報は、「3D座標識別子」を持った「モノ」として定義し、各「モノ」には様々な「属性値」を自由に持たせることができるものとする。
2)「3D座標識別子」には、代表的なものとして、以下の種類を設ける。
・POINT(ポイント)(「モノ」の中心の3D座標)
・LINE(ライン)(ライン形状の「モノ」の両端の3D座標)
・BOX(ボックス)(矩形平面形状の「モノ」の矩形底面の左上座標と右下座標)
・3D-BOX(直方体形状の「モノ」の底面の左上座標と右下座標と高さ)
【0027】
実際の「モノ」の形状は上記の様に単純なものとは限らないが、目的は「モノ」の形状を正確に3次元でデータ化することではなく、「モノ」をユニークに識別することである。このため、異なる「モノ」同士が互いに同一の識別子表現とならない範囲で形状の表現を単純化して扱うことができる。
【0028】
例えば、複雑な形状を持った変圧器があったとき、その変圧器をすっぽりと囲む直方体(3D-BOXを用いた3D座標識別子)で表現したとしても、その直方体と全く同一の3D座標識別子を有する他の「モノ」が存在しないならば、全く問題がない。勿論、実際の「モノ」の形状を詳細に3次元データでデータ化するようにしてもよい。
【0029】
なお、以上は使用頻度が多くなる代表的なものを記載したが、実際には、3次元データを取り扱う代表的なGIS(Geographic Information System)が使用している形式に習って様々なものを定義することが可能である。例えば、PostGIS(https://postgis.net/docs/manual-3.0/using_postgis_dbmanagement.html#RefObject)が定義するポリゴンやLINESTRING等を挙げることができる。ゆくゆくは、政府が推進している「3次元空間ID」を利用する方法も考えられる。
【0030】
3)各システム100は配下の「モノ」を「3D座標識別子」で一意に管理するが、「3D座標識別子」とは別にそれぞれのシステム100で固有に付与した「モノ」の識別子(以下、「ローカル識別子」と称する)を持っても良いものとする。以下、ローカル識別子と対となる表現として、「3D座標識別子」を「パブリック識別子」と称する。
【0031】
4)「モノ」を指定する際には、以下の方法を用いる。
・3D座標識別子(パブリック識別子)またはローカル識別子を直接指定する(個別指定)。
・3次元的な空間範囲を指定し、その範囲に含まれる「モノ」(Contains)
・3次元的な空間範囲を指定し、その範囲と交差する「モノ」(Intersects)
・ある3次元POINTに最も近い「モノ」(最近傍検索)
【0032】
本実施形態のシステム100について説明する。図2は、本実施形態のシステム100の一例を示す図である。システム100は、パーソナルコンピュータ、サーバ、スマートフォン、タブレットコンピュータ又は産業用コンピュータ等の装置によって実現される。システム100は、他のシステムとの間で情報を交換する。システム100は、Geo-API101および記憶部110を備える。
【0033】
Geo-API101は、前述したように共通の文法(データ交換のインタフェースとプロトコル)と、共通のデータ表現形式(データ交換のフォーマット)を実装するためのインタフェースである。Geo-API101は、他のシステムとの間で情報を交換する。
【0034】
Geo-API101の詳細について説明する。図3は、本実施形態のシステム100の動作の一例を示す図である。Geo-API101は、機能確認、例えば、システム配下にどういう「モノ」があるかを返す。具体的には、Geo-API101は、システム配下の「モノ」の一覧(3D座標識別子とローカル識別子とのペアの一覧)、および、各「モノ」の持つ属性値の識別子一覧、当該システムのカバーする3Dエリア範囲を示す3D-BOXを他のシステムへ返す。
【0035】
Geo-API101は、特定範囲の概要確認、例えばそのシステム指定の3D空間範囲にどういう「モノ」があるかを返す。具体的には、Geo-API101は、3D空間範囲を示す座標識別子、および、「モノ」の指定方法(個別/Contains/Intersects/最近傍)が入力された場合、当該システム配下の指定範囲の「モノ」の一覧(3D座標識別子とローカル識別子とのペアの一覧)、および、各「モノ」の持つ属性値の識別子一覧を他のシステムへ返す。
【0036】
Geo-API101は、属性値読み出し、例えば指定する「モノ」の属性値を読み出す。具体的には、Geo-API101は、3D空間範囲を示す座標識別子またはローカル識別子、および、「モノ」の指定方法(個別/Contains/Intersects/最近傍)、読み出す属性の識別子が入力された場合、指定の「モノ」の指定された属性値の一覧を他のシステムへ返す。
【0037】
Geo-API101は、更新通知依頼、例えば指定範囲の「モノ」の属性値が変化したときに通知してもらう。具体的には、Geo-API101は、3D空間範囲を示す座標識別子またはローカル識別子、および、「モノ」の指定方法(個別/Contains/Intersects/最近傍)、読み出す属性の識別子と、通知先とが入力された場合、指定の「モノ」の指定された属性値の一覧と変化時刻とを他のシステムへ返す。図2に戻り説明を続ける。
【0038】
記憶部110は、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などにより実現される。
【0039】
Geo-API101の全部または一部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサが記憶部110に格納されたプログラムを実行することにより実現される機能部(以下、ソフトウェア機能部と称する)である。なお、これらの全部または一部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアにより実現されてもよく、ソフトウェア機能部とハードウェアとの組み合わせによって実現されてもよい。
【0040】
システム100の動作について説明する。図4は、本実施形態のシステム100の動作の一例を示すフロー図である。図4を参照して、主にシステム100のGeo-API101の動作について説明する。Geo-API101は、利用者と公開用データ110aとの間でフロント処理を行う(ステップS1-1)。フロント処理の詳細については後述する。
【0041】
公開用データ110aについて説明する。図5は、公開用データ110aの一例を示す図である。公開用データ110aは、(1)ローカルKey、(2)パブリックKey、(3)パブリックKeyの種類、(4)属性識別子、(5)属性の値および(6)通知先を関連付けたテーブル形式の情報である。ここで、ローカルKeyとは、「ローカル識別子」のことである。ローカルKeyの一例は、1、2、3、4、5、6、7、8、・・・である。パブリックKeyとは「パブリック識別子」のことである。パブリックKeyの一例は、(X1、Y1、Z1)、(X2、Y2、Z2)、(X3、Y3、Z3)、(X4、Y4、Z4)、H5、(X6、Y6、Z6)、(X7、Y7、Z7)、(X8、Y8、Z8)、(X9、Y9、Z9)、・・・である。パブリックKeyの種類とは、「パブリック識別子」の種類のことである。パブリックKeyの種類の一例は、3D-POINT、3D-BOX、3D-LINEなどである。属性識別子とは、属性を識別するための情報である。属性識別子の一例は、遮断器状態、開閉器状態、変圧器、母線、送電線、電圧有無、有効電力値などである。属性の値は、属性識別子で識別される属性に指定されている値である。属性の値の一例は、ON/OFF、設備諸元、有/無、有効電力値である。通知先は、更新した内容を通知する先を特定する情報である。
【0042】
ローカルKeyおよび通知先の少なくとも一方を含めないで公開用データ110aを構成してもよい。利用者などの外部から見るとローカルKeyの値自体は意味を持たない。内部(Geo-API101のバックエンド処理)から見ると、ローカルKeyの情報をKeyとして内部の任意データにアクセスする。例えば、TABLEの名称+TABLEの行を指定するKeyからなる情報などをKeyとして内部の任意データにアクセスする。図4に戻り、説明を続ける。
【0043】
Geo-API101は、公開用データ110aと内部データ110bとの間でバックエンド処理を行う(ステップS2-1)。バックエンド処理の詳細については後述する。例えば、Geo-API101では、内部データ110bが更新されるとバックエンド処理が起動される。Geo-API101は、内部データ110bの更新を、公開用データ110aに反映する。Geo-API101は、内部データ110bとの間で内部処理を行う(ステップS3-1)。
【0044】
フロント処理について説明する。図6は、本実施形態のシステム100の動作の一例を示すフロー図である。
Geo-API101は、API要求を受け付ける(ステップS1-2)。例えば、Geo-API101は、他のシステムからのAPI要求を受け付ける。Geo-API101は、受け付けたAPI要求に含まれる要求種別が、概要確認、特定範囲の概要確認、属性値読み出しおよび更新通知依頼のいずれかであるかを判定する(ステップS2-2)。
【0045】
Geo-API101は、要求種別が概要確認である場合に、配下のシステムの(1)ローカルKey、(2)パブリックKey、(3)パブリックKeyの種類、(4)属性識別子を他のシステムへ返す(ステップS3-2)。Geo-API101は、要求種別が特定範囲の概要確認である場合に、配下のシステムの指定座標範囲の(1)ローカルKey、(2)パブリックKey、(3)パブリックKeyの種類、(4)属性識別子を他のシステムへ返す(ステップS4-2)。
【0046】
Geo-API101は、要求種別が属性値読み出しである場合に、指定の識別子の(5)属性の値を他のシステムへ返す(ステップS5-2)。Geo-API101は、要求種別が更新通知依頼である場合に、依頼内容を(6)通知先に書き込む(ステップS6-2)。ステップS3-2からS6-2のいずれかの終了後に、ステップS1-2へ戻る(ステップS7-2)。
【0047】
バックエンド処理について説明する。図7は、本実施形態のシステム100の動作の一例を示すフロー図である。
【0048】
Geo-API101は、更新された内部データ110bを確認する(ステップS1-3)。Geo-API101は、更新されたデータのKeyは、(1)ローカルKeyにあるか否かを判定する。
【0049】
Geo-API101は、更新されたデータのKeyが(1)ローカルKeyにあると判定した場合に(ステップS2-3:YES)、更新された内部データで、(5)属性の値を更新する(ステップS3-3)。Geo-API101は、更新されたデータのKeyが(1)ローカルKeyにないと判定した場合に(ステップS2-3:NO)、終了する。
【0050】
Geo-API101は、更新した(5)属性の値に対応した(6)通知先に通知先が登録されているか否かを判定する(ステップS4-3)。
【0051】
Geo-API101は、更新した(5)属性の値に対応した(6)通知先に通知先が登録されている場合に(ステップS4-3:YES)、更新された内部データ110bの(5)属性の値と(1)ローカルKeyとを、(6)通知先の宛先に通知する(ステップS5-3)。Geo-API101は、更新した(5)属性の値に対応した(6)通知先に通知先が登録されていない場合に(ステップS4-3:NO)、終了する。
【0052】
本実施形態の自律分散システム1によれば、自律分散システム1は、複数のシステム100を含む。複数のシステム100の各々は独立して自律的に動作し、他のシステムとの間で情報を交換する情報交換部(実施形態では、Geo-API101)を備える。情報は、第1情報識別子(実施形態では、パブリックkey)と第1属性値との組によって表現され、第1情報識別子は、「モノ」の位置の3次元座標である。
【0053】
また、複数のシステム100の各々は、交換する情報の表現形式としてパブリック形式とローカル形式とを有し、パブリック形式では、情報が、第1情報識別子と第1属性値との組によって表現され、ローカル形式では、情報が、各システムで独自に定義されている第2情報識別子(実施形態では、ローカルkey)と第2属性値との組によって表現され、情報交換部は、外部からの要求に応じてパブリック形式とローカル形式との対応関係を交換する。
【0054】
本実施形態の自律分散システム1によれば、以下の効果を奏する。
【0055】
「モノ」を3次元でデータ化する際に必ずしも「モノ」の形状を正確にデータ化する必要はなく、異なる「モノ」同士が互いに同一の「3D座標識別子」とならない(重複しない)範囲で形状を単純化して扱うことができる。つまり、3Dデータを作成するコストを最小限に抑えることができる。
【0056】
「モノ」を3次元データでデータ化した場合、「3D座標識別子(パブリック識別子)」のサイズが大きいものとなり得るが、「3D座標識別子」と「ローカル識別子」の対応表を予め交換しておき、平常時においては、サイズの小さい「ロアウトプットーカル識別子」を用いることによって「3D座標識別子」を用いる場合と同じアウトプットを得ることができる。つまり、ネットワーク上に流れる情報量の増加を最小限に抑えることができる。
【0057】
「3D座標識別子(パブリック識別子)」と「ローカル識別子」とを併用できるため、既存システムに対しては、Geo-APIをアドオンすることによって、自律分散システム1に参画することが可能であり、最初からシステムを再設計し直す必要性が無い。
【0058】
以下、本実施形態の方法によりシステム間で3D座標ベースでの情報交換が可能となった場合に、新たな付加価値を生じ得ることを2つの適用例を用いて示す。
【0059】
(実施形態の変形例1)実施形態の自律分散システム1の適用例について説明する。図8は、実施形態の変形例1の自律分散システム1aを示す構成図である。
【0060】
自律分散システム1aは、自律分散システム1に、情報共有システム200を備えたものである。情報共有システム200は、ネットワークNW2を介して端末装置700と接続される。ネットワークNW2は、例えば、インターネット、WAN、LAN、プロバイダ装置、無線基地局などを含む。
【0061】
情報共有システム200は、パーソナルコンピュータ、サーバ、スマートフォン、タブレットコンピュータ又は産業用コンピュータ等の装置によって実現される。情報共有システム200は、互いに横連携が進んだシステム100-1、システム100-2、・・・、システム100-nから情報を集めて、新たな付加価値を付与する。情報共有システム200は、クラウドサーバであってもよい。
【0062】
情報共有システム200は、Geo-API201、データ仮想化部202および記憶部210を備える。
【0063】
Geo-API201は、前述したように共通の文法(データ交換のインタフェースとプロトコル)と、共通のデータ表現形式(データ交換のフォーマット)を実装するためのインタフェースである。
【0064】
データ仮想化部202は、データ仮想化処理を行う。データ仮想化処理については後述する。
記憶部110は、HDDやフラッシュメモリ、RAM、ROMなどにより実現される。
【0065】
Geo-API201、データ仮想化部202およびデータ仮想化部202の全部または一部は、例えば、CPUなどのプロセッサが記憶部210に格納されたプログラムを実行することにより実現される機能部(以下、ソフトウェア機能部と称する)である。なお、これらの全部または一部は、LSI、ASIC、またはFPGAなどのハードウェアにより実現されてもよく、ソフトウェア機能部とハードウェアとの組み合わせによって実現されてもよい。
【0066】
端末装置700は、パーソナルコンピュータ、サーバ、スマートフォン、タブレットコンピュータ又は産業用コンピュータ等の装置によって実現される。端末装置700は、ネットワークNW2を介して、情報共有システム200と接続し、情報を取得する。ネットワークNWとネットワークNW2とが同じであってもよい。
【0067】
情報共有システム200の動作について説明する。図9は、実施形態の変形例1の情報共有システムの動作の一例を示す図である。
【0068】
データ仮想化部202は、公開用データ210aの初期化処理を行う(ステップS1-4)。初期化処理の詳細については後述する。ここで、公開用データ210aについて説明する。図10は、公開用データ210aの一例を示す図である。公開用データ210aは、(1)ローカルKey、(2)パブリックKey、(3)パブリックKeyの種類、(4)属性識別子、(5)属性の値、(6)通知先、(7)参照先URL(Uniform Resource Locator)および(8)グローバルKeyを関連付けたテーブル形式の情報である。参照先URLは、当該行のデータを取得する為の参照先サーバのURLである。参照先URLの一例は、URL-1、URL-2、・・・、URL-n(nは、n>0の整数である)である。グローバルKeyは、当該行のデータを取得する際、参照先サーバから情報を取り出すときのグローバル識別子のことである。ローカルKeyおよび通知先の少なくとも一方を含めないで公開用データ210aを構成してもよい。図9に戻り説明を続ける。
【0069】
Geo-API201は、公開用データ210aとの間でフロント処理を行う(ステップS2-4)。フロント処理の詳細については後述する。
【0070】
Geo-API201は、公開用データ210aとの間でバックエンド処理を行う(ステップS3-4)。バックエンド処理の詳細については後述する。
【0071】
初期化処理について説明する。図11は、実施形態の変形例1の情報共有システム200の動作の一例を示すフロー図である。
【0072】
データ仮想化部202は、公開用データ210aから仮想化対象のURL一覧を取り出す(ステップS1-5)。具体的には、データ仮想化部202は、公開用データ210aの参照先URLから仮想化対象のURL一覧を取り出す。
【0073】
データ仮想化部202は、取り出したURL一覧に含まれるURLに対して概要確認を要求する(ステップS2-5)。データ仮想化部202は、概要確認を要求によって得られた情報で公開用データ210aを更新する(ステップS3-5)。
【0074】
データ仮想化部202は、個々の(1)ローカルKeyに関する属性値の読み出しを要求する(ステップS4-5)。データ仮想化部202は、属性値の読み出しの要求によって得られた情報で公開用データ210aを更新する(ステップS5-5)。データ仮想化部202は、個々の(1)ローカルKeyに関して、更新通知依頼を要求する(ステップS6-5)。ステップS4-5からS6-5が繰り返され、その後ステップS2-5からS2-6が繰り返される。
【0075】
フロント処理について説明する。図12は、実施形態の変形例1の情報共有システム200の動作の一例を示すフロー図である。
【0076】
Geo-API201は、API要求を受け付ける(ステップS1-6)。例えば、Geo-API201は、端末装置700からのAPI要求を受け付ける。Geo-API201は、受け付けたAPI要求に含まれる要求種別が、概要確認、特定範囲の概要確認、属性値読み出しおよび更新通知依頼のいずれかであるかを判定する(ステップS2-6)。
【0077】
Geo-API201は、要求種別が概要確認である場合に、配下のシステムの(8)グローバルKey、(2)パブリックKey、(3)パブリックKeyの種類、(4)属性識別子を端末装置700へ返す(ステップS3-6)。Geo-API201は、要求種別が特定範囲の概要確認である場合に、配下のシステムの指定座標範囲の(8)グローバルKey、(2)パブリックKey、(3)パブリックKeyの種類、(4)属性識別子を端末装置700へ返す(ステップS4-6)。
【0078】
Geo-API201は、要求種別が属性値読み出しである場合に、指定の識別子の(5)属性の値を端末装置700へ返す(ステップS5-6)。Geo-API201は、要求種別が更新通知依頼である場合に、依頼内容を(6)通知先に書き込む(ステップS6-6)。ステップS3-6からS6-6のいずれかの終了後に、ステップS1-6へ戻る(ステップS7-6)。
【0079】
バックエンド処理について説明する。図13は、実施形態の変形例1の情報共有システムの動作の一例を示すフロー図である。
【0080】
Geo-API201は、更新された内部データ210bを確認する(ステップS1-7)。Geo-API201は、更新されたデータのKeyは、(1)ローカルKeyにあるか否かを判定する。
【0081】
Geo-API201は、更新されたデータのKeyが(1)ローカルKeyにあると判定した場合に(ステップS2-7:YES)、更新された内部データで、(5)属性の値を更新する(ステップS3-7)。Geo-API201は、更新されたデータのKeyが(1)ローカルKeyにないと判定した場合に(ステップS2-7:NO)、終了する。
【0082】
Geo-API201は、更新した(5)属性の値に対応した(6)通知先に通知先が登録されているか否かを判定する(ステップS4-7)。Geo-API201は、更新した(5)属性の値に対応した(6)通知先に通知先が登録されている場合に(ステップS4-7:YES)、更新された内部データ210bの(5)属性の値と(8)グローバルKeyとを、(6)通知先の宛先に通知する(ステップS5-7)。Geo-API201は、更新した(5)属性の値に対応した(6)通知先に通知先が登録されていない場合に(ステップS4-7:NO)、終了する。
【0083】
自律分散システム1aの情報共有システム200が、互いに横連携が進んだシステム100-1、システム100-2、・・・、システム100-nから情報を集めて作成する画面イメージについて説明する。図14は、実施形態の変形例1の情報共有システム200の動作の一例を示す図である。図14は、例えばバーチャル地球儀システムの様な3次元データを扱える汎用ビューワー上に全てのシステムの情報を統一的な手段で地図情報を表示したものである。このように構成することによって、情報共有システム200を、地図情報データベースとして機能させることができる。
【0084】
実施形態の変形例1によれば、自律分散システム1aは、自律分散システム1に複数のシステムから情報を取得して動作する情報共有システム200をさらに備える。情報共有システム200は、地図情報データベースである。
【0085】
実施形態の変形例1は、以下の効果(付加価値)を得ることができる。
【0086】
自律分散システムに参画したシステムの全ての情報をあたかも単一のGIS上の情報の様に見せかけることができる。
【0087】
全ての情報を同じビューワー(例えば、バーチャル地球儀システム)の上で統一的に取り扱うことができる。
【0088】
地理的、座標的に近い情報をまとめて表示することができるため、情報間の相関をユーザに「気づき」として提供できる。ユーザにこうした「気づき」を元に情報活用を深耕させることができる。
【0089】
更には、より積極的に情報間の相関をシステム的に算出し、相関情報を付加価値として提供することもできる。例えば、相関分析等の統計手法を用いることで、情報間の相関をシステム的に算出できる。
【0090】
座標的に近い「モノ」が結びつくことによって、システム相互の連携が進むと、様々な相互関係が生まれ、ひいては、風が吹けば桶屋が儲かる的な思わぬ関係性(セレンティビティ)を見いだせる可能性がある。
【0091】
(実施形態の変形例2)実施形態の自律分散システム1の適用例について説明する。図15は、実施形態の変形例2の自律分散システム1bを示す構成図である。
【0092】
実施形態の変形例2の自律分散システム1bは、自律分散システム1と、システム100-1、システム100-2、・・・、システム100-nの代わりに、システム100b-1、システム100b-2、・・・、システム100b-nを備える点で異なる。システム100b-1、システム100b-2、・・・、システム100b-nは、互いに横連携することで情報を集めて、新たな付加価値を生成する。
【0093】
システム100b-1、システム100b-2、・・・、システム100b-nのうち任意のシステムをシステム100bと記載する。
【0094】
システム100bについて説明する。図16は、実施形態の変形例2のシステム100bを示す図である。システム100bは、パーソナルコンピュータ、サーバ、スマートフォン、タブレットコンピュータ又は産業用コンピュータ等の装置によって実現される。システム100bは、他のシステムとの間で情報を交換する。システム100bは、Geo-API101、処理部104、算出部106および記憶部110を備える。
【0095】
処理部104は、ノードとブランチに3次元座標情報を付与する処理などを行う。処理部104の処理の詳細については後述する。
【0096】
算出部106は、潮流計算、状態推定、OPF(Optimal Power Flow)(最適潮流計算)、経済負荷配分計算、安定度計算などの系統計算を行う。算出部106の処理の詳細については後述する。
記憶部110は、HDDやフラッシュメモリ、RAM、ROMなどにより実現される。
【0097】
Geo-API101、処理部104および算出部106の全部または一部は、例えば、CPUなどのプロセッサが記憶部110に格納されたプログラムを実行することにより実現される機能部(以下、ソフトウェア機能部と称する)である。なお、これらの全部または一部は、LSI、ASIC、またはFPGAなどのハードウェアにより実現されてもよく、ソフトウェア機能部とハードウェアとの組み合わせによって実現されてもよい。
【0098】
システム100bの動作について説明する。図17は、実施形態の変形例2のシステム100bの動作の一例を示す図である。システム100bの一例は、電力会社が系統運用上必要となる潮流計算や状態推定、OPFなどの系統計算を行う。具体的には、システム100bは、システムAの提供するノード・ブランチ、システムBの提供するノード・ブランチおよびシステムCの提供するノード・ブランチを取得し、取得したノード・ブランチに基づいて超並列で高速処理を行うことによって、潮流計算、状態推定、OPF、経済負荷配分計算、安定度計算などを行う。
【0099】
系統計算では、設備の情報は「ノード・ブランチ」と呼ばれる抽象化されたトポロジーの形態で扱われる。系統計算のトポロジーは、ノードとノードが、“あるインピーダンス”を持ったブランチで繋がっている、という情報の集合体である。図18は、実施形態の変形例2の自律分散システム1bでの設備の情報の一例を示す図である。図18に示される例では、ノードNO01とノードNO02とノードNO03とが示される。さらに、ノードNO01とノードNO02がインピーダンスを持ったブランチBR12で繋がり、ノードNO02とノードNO03がインピーダンスを持ったブランチBR23で繋がっていることが示される。
【0100】
<ノード・ブランチの表現方法>図19から図24を参照して、ノード・ブランチの表現例について説明する。
<ノード:母線>図19は、実施形態の変形例2の母線の表現例を示す図である。系統計算におけるノードとは、具体的には電力会社の変電所の「母線」と呼ばれる一定の直径を持った棒状の伝導体設備(巨大な鉄パイプの様なもの)である。左側はリアルワールドの3Dモデルの母線BBであり、2か所の端点EPを有する。右側は母線BBを太線化したもの(太線化した母線BBR)であり、2か所の端点EPはリアルワールドの3Dモデルの2か所の端点EPと同じである。ここでは棒状の母線BBを一定の太さを持ったライン(3D太LINE)として定義する。尤度を持たせるために敢えて少し太めのLINEで定義する。太線化することによって端点の座標精度に尤度を持たせることができる。
【0101】
<ブランチ:送電線>図20は、実施形態の変形例2の送電線の一例を示す図である。ブランチは、電力会社の変電所の「変圧器」または変電所間を繋ぐ「送電線」に対応する。一般的には開閉器や断路器等のスイッチを介して母線(ノード)に繋がっている。ここではブランチの端点EPを3次元のポイント座標(3D-POINT)で定義する。点ではなく、一定の半径を持った球体で定義しても良い。このとき半径が接続の尤度を意味するようにしてもよい。
【0102】
図20は、リアルワールドの3Dモデルの送電線PLを示す。この場合、リアルワールドの3Dモデルの送電線PLをそのまま適用する。2か所の端点EPはリアルワールドの3Dモデルの2か所の端点EPと同じである。送電線PLのインピーダンスはLINESTRINGの属性値で表現される。LINESTRINGは荒くてもよく、端点EPが重要である。
【0103】
図21は、実施形態の変形例2の母線と送電線の一例を示す図である。図21は、太線化した母線BBRに送電線PLを接続したものである。送電線PLの端点EPが太線化した母線BBRで表される鉄パイプにめり込んでいる。つまり、太線化した母線BBRと送電線PLとが電気的につながっていることを意味している。各ブランチとノードとの繋がり(トポロジー)は、各ブランチ端点EPの3D-POINTがどのノード(3D太LINE)と空間的につながっているかによって表現可能である。図21では、簡単化の為にスイッチの存在は省略されている。
【0104】
実際の変電所でも母線と送電線は立体的に交差しながら繋がっており、この目的には3次元での表現が必要であり、これは、2次元のデータ表現では実現し得ない特徴となる。
【0105】
<ブランチ:変圧器>図22は、本実施形態の変形例2の変圧器の一例を示す図である。左側はリアルワールドの3Dモデルの変圧器TRであり、2か所の端点EPを有する。右側は左側の変圧器TRを抽象化したものであり、リアルワールドの3Dモデルの2か所の端点EPをラインで繋いだものである。
【0106】
ブランチとしてのもうひとつの代表例である変圧器TRについて説明する。系統計算を実施する上では、変圧器TRの形状は意味を持たない。そのため、シンプルに単純なラインとして変圧器TRを表現し、その両端の端点は、(3D-PINT)座標で表現し、実際の変圧器TRの端点(隣接設備との接続点)の座標と一致する様に定義する。3D-PINTは尤度を作る為に一定の半径を持った球体としても良い。
【0107】
変圧器TRのインピーダンスやタップの情報は、当該ラインの属性値として表現する。変圧器TRも送電線PLと同様に、遮断器や断路器等のスイッチを介して母線BBに接続する。よって、「隣接設備」とは、通常は遮断器や断路器等のスイッチとなる。
【0108】
<ブランチ:スイッチ>縮約する前のノード・ブランチの扱い。図23は、本実施形態の変形例のスイッチの一例を示す図である。左側はリアルワールドの3Dモデルの遮断器CBと開閉器LSとが直列に接続されたものであり、2か所の端点EPを有する。右側は左側の遮断器CBと開閉器LSとが直列に接続されたものを抽象化したものであり、リアルワールドの3Dモデルの2か所の端点EPをラインで繋いだものである。
【0109】
スイッチは、系統計算上、その形状には意味を持たない。よって、端点EPと端点EPとをつなぐシンプルなラインとして定義する。その両端の端点は、(3D-PINT)座標で表現し、隣接設備の端点EPの座標と一致する様に定義する。スイッチの入り/切り状態は、そのラインの属性値として表現する。
【0110】
ここまではトポロジーを表す際、簡単化のためにスイッチの存在は無視して記載したが、以上の様にスイッチの存在は、変圧器TRと同様の扱いとなるため、同様の考え方でトポロジーを表現することが可能である。
【0111】
<3相設備の単相化方法>図24は、実施形態の変形例の電力系統設備の一例を示す図である。実際の電力系統設備は、全て3相交流を扱うための設備である為、3つの設備が常にセットで管理される。系統計算においては、この3つのセット(R相RP、S相SP、T相TP)をそれぞれ詳細に模擬して取り扱う場合(故障計算)と、3セットが全て同一の特性を持った設備との仮定の元、単相に変換して扱う場合がある(一般的な潮流計算)。後者の場合は、図24に示すように、3つのセット(R相RP、S相SP、T相TP)として存在する設備の座標的に中心に存在する設備だけを残すことによって、単相MPのトポロジーを表現できる。
【0112】
図25は、実施形態の変形例2の自律分散システム1bの動作の一例を示すフロー図である。図25を参照して、システム100bが実行する初期の処理フローの一例について説明する。
【0113】
処理部104は、系統計算に必要な電力系統設備の設備データをデータ化する(ステップS1-8)。処理部104は、設備データ間の電気的な接続関係をデータ化する(ステップS2-8)。
【0114】
処理部104は、スイッチの状態を加味して、系統計算に必要なノード・ブランチを作成する(ステップS3-8)。処理部104は、ノード・ブランチに3D座標識別子を付与する(ステップS4-8)。Geo-API102は、システム間でノード・ブランチに付与された3D座標識別子を交換する(ステップS5-8)。
【0115】
処理部104は、システム全体のノード・ブランチを作成する(ステップS6-8)。算出部106は、系統計算を実施する(ステップS7-8)。図25によれば、既存システムに対してGeo-APIをアドオンすることができる。
【0116】
図26は、実施形態の変形例2の自律分散システム1bの動作の一例を示すフロー図である。図26を参照して、「3D座標識別子」による効果が広く認知された後にシステム100bが実行する処理フローの一例について説明する。
【0117】
処理部104は、系統計算に必要な電力系統設備の設備データをデータ化する(ステップS1-9)。処理部104は、3Dデータから設備データ間の電気的な接続関係を自動算出する(ステップS2-9)。
【0118】
処理部104は、スイッチの状態を加味して、系統計算に必要なノード・ブランチを作成する(ステップS3-9)。Geo-API101は、システム間でノード・ブランチに付与された3D座標識別子を交換する(ステップS4-9)。
【0119】
処理部104は、システム全体のノード・ブランチを作成する(ステップS5-9)。算出部106は、系統計算を実施する(ステップS6-9)。図26によれば、「3D座標識別子」によるメリットを積極的に活用できる。
【0120】
実施形態の変形例2では、自律分散システム1bに参画する各システム100bが電力系統の系統計算を実施する場合について説明したが、この例に限られない。例えば、実施形態の変形例1と同様に、ネットワークNWを介して接続される情報共有システム備えるように構成してもよい。情報共有システムは、各システム100bから「3次元座標識別子」で表現されたノード・ブランチの情報を取得し、取得したノード・ブランチの情報に基づいて、電力系統の系統計算を行うようにしてもよい。このように構成することによって、各システム100bの処理負荷を低減できる。
【0121】
実施形態の変形例2の自律分散システム1bによれば、複数のシステム100bの各々は、電力系統の系統計算を実施する算出部106をさらに備える。情報交換部は、各システムが個々に作成するノード・ブランチの情報を交換する。
【0122】
このように構成することによって、複数のシステム100bの各々は、ノード・ブランチを「3次元座標識別子」で表現し、それを互いにGeo-APIで交換できるため、自律分散システム1bに参画する各システム100bは、自律分散システム1bに参画するシステム全体のノードブランチ(トポロジー)を容易に構成することが可能となる。つまり自律分散システムに参画するシステム全体の系統計算の実行が可能となる。自律分散システム1bに参画するシステム全体の系統計算が可能であるため、全体としてより最適な運転状態の解を求めること、例えば、運転コストの最小化ができる。
【0123】
運転コストを最小化することによって自律分散システム1bに参画するシステム全体として得られた運転コスト削減益を参画するシステム100bにインセンティブとして分配することにより、Give&Takeの関係を成立させることができる。
【0124】
なお、同一の電力会社内であってもシステムが異なると異なる設備コード体系となっているケースも多いため、この考え方は異なる電力会社間で適用できるのみならず、同一の電力会社内の複数システム間において適用することも可能である。
【0125】
また、上述した様に、従来は系統計算の世界においても、3次元データを活用する動機が乏しかったが、系統計算の世界に3次元データを用い、さらに自律分散システム1bに参画するシステム100bを増加させることによって、以下の効果を得ることができる。このため、3次元データ作成コスト低減に伴って、系統計算への3次元データ導入の動機は拡大しつつある。
【0126】
DLR(ダイナミックラインレーティング)への適用メリットについて説明する。送電線容量は風況や気温等で変化する(風況が支配的)。送電線路の設置方向や3次元的な地形情報に加えて、風況や気温等のリアルタイムな分布状況を元に送電容量を動的に計算することにより、従来よりも、より正しい送電容量を計算することができる。
【0127】
FL(フォールトロケータ)の故障点算出への適用メリットについて説明する。FL装置から求まる故障点までの距離情報は、具体的な送電線の3次元的な設置情報を元に計算することができるため、より正確な位置情報として算出できる。
【0128】
系統計算を行う各種システムでは、システムの更新や統廃合の際に、設備データの移行や統合などを行うことが多い。この際、同一の実設備に対して複数の設備コードが存在する場合がある。そうしたケースでは、それが同一の設備なのか異なる設備なのかを見分けるのは容易ではないが、3次元座標識別子により、設備が同一であるか否かを明確に識別できる。
【0129】
系統計算の際、送電線のインピーダンスの情報を正確に与えることは非常に重要である。送電線設備を3次元座標識別子で定義することによって、その長さデータとインピーダンスの整合性をチェクすることができ、誤りデータを除外することができる。あるいは、長さデータから適切なインピーダンスを算出することもできる。
【0130】
系統計算を行う各種システムでは、変電所の設備や送電線設備を「単線結線図」や「系統図」という形の画面を通して抽象化して扱っている。そのため以下の手順を踏んでいる。
(1)実設備を画面上に抽象化してレイアウト表現する(画面上で2D座標を付与する)。
(2)画面上にレイアウトされた設備と実設備との対応を取る(一般的には1点1点、現地との対向試験を実施して対応を担保する)。
上記(1)(2)の作業はノードとブランチに3次元座標情報を付与することにより自動的に生成することが可能であり、結果として、(1)(2)の作業工数を減らせると共に、(2)の作業の誤りを減らすことができる。
【0131】
更には、「単線結線図」や「系統図」を画面上でも実設備の3Dデータをそのまま3D表示することによって、(1)の作業自体を省略することも可能である。
【0132】
系統計算を行う各種システムでは、地下変電所、地中線等、地下で立体的に構築された設備も扱う。地下設備においては、設備管理、設備計画を行う上で、データの3次元化の価値が非常に高い。
【0133】
また、実施形態の変形例2では、系統計算に必要となる設備に対して付与する3D座標を必要最低限に絞り込めると共に、3D座標の定義に多少に尤度を設けることが可能であるため、導入しやすい。
【0134】
また、系統計算におけるノードとブランチは、従来、各ベンダが各ノードやブランチにベンダ独自のコードを割り振りって扱ってきた。異なるシステム間で系統計算に必要な情報を持ち寄って、より大規模な系統計算を実施したい場合には、設備データや電気的な接続を表現するデータ形式に「統一形式」を定義し、各システムはローカルな形式から統一形式への変換を行うことから始める必要があった。この統一は容易でなく、従来、異なるシステム間での連携を阻害する大きな要因となっていた。
【0135】
実施形態の変形例2では、ノード・ブランチに「3D座標識別子」を付与するというシンプルな方法によってこれを実現する。Geo-APIで交換する「3D座標識別子」は、自律分散システムに参画する各システムにとって同じ意味を共有できるものであり、隣接するシステム間で互いのノード・ブランチをマージして広域の系統計算を行うことや、より多数のシステムでノード・ブランチを交換して複数システム全体としての系統計算を行うことができる。
【0136】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、複数のシステムの各々は、他のシステムとの間で第1情報識別子と第1属性値との組によって表現された情報を交換する場合に、第1情報識別子を「モノ」の位置の3次元座標とすることができるため、「モノ」を3次元でデータ化する際に必ずしも「モノ」の形状を正確にデータ化する必要はなく、異なる「モノ」同士が互いに同一の「3D座標識別子」とならない(重複しない)範囲で形状を単純化して扱うことができる。つまり、3Dデータを作成するコストを最小限に抑えることができる。
【0137】
以上、本発明の実施形態およびその変形例を説明したが、これらの実施形態およびその変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態およびその変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組合せを行うことができる。これら実施形態およびその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0138】
1、1a、1b…自律分散システム、100-1、100-2、・・・、100-n、100、100b-1、100b-2、・・・、100b-n、100b…システム、101-1、101-2、・・・、101-n、101…Geo-API、104…処理部、106…算出部、110…記憶部、110a…公開用データ、110b…内部データ、200…情報共有システム、201…Geo-API、202…データ仮想化部、210…記憶部、210a…公開用データ、210b…内部データ、300…地図情報、400…バーチャル地球儀システム、500…交通情報、600…オープンデータ、700…端末装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図19
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図21
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図26