(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039374
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】通過帯域可変装置、導波管、及び通過帯域可変方法
(51)【国際特許分類】
H01P 1/208 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
H01P1/208 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143883
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】圓山 快応
(72)【発明者】
【氏名】城山 典久
(72)【発明者】
【氏名】吉田 学
(72)【発明者】
【氏名】宮本 貴裕
【テーマコード(参考)】
5J006
【Fターム(参考)】
5J006LA11
5J006MA00
5J006NA08
5J006NE01
(57)【要約】
【課題】 Q値の高い通過帯域可変フィルタを実現することにある。
【解決手段】 通過帯域可変装置10は、共振器として用いる複数の共振部材14と、共振部材14の間に配置され、共振器を結合させるために用いる結合部材15と、によって構成される帯域通過フィルタ部材13と、導波管11の外部から印加される磁界によって、帯域通過フィルタ部材13の通過帯域を可変させる、一つ以上の磁性体素子から構成される通過帯域可変部材16と、を有する導波管11と、帯域通過フィルタ部材13の通過帯域を可変するために、共振部材14の実効透磁率を制御するための磁界を印加する磁界印加部12と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共振器として用いる複数の共振部材と、前記共振部材の間に配置され、前記共振器を結合させるために用いる結合部材と、によって構成される帯域通過フィルタ部材と、導波管の外部から印加される磁界によって、前記帯域通過フィルタ部材の通過帯域を可変させる、一つ以上の磁性体素子から構成される通過帯域可変部材と、を有する導波管と、
前記帯域通過フィルタ部材の通過帯域を可変するために、前記共振部材の実効透磁率を制御するための前記磁界を印加する磁界印加手段と、
を有する通過帯域可変装置。
【請求項2】
前記磁界印加手段は一つ以上の磁石を有する、
請求項1に記載の通過帯域可変装置。
【請求項3】
前記磁界印加手段は一つ以上の電磁石を有する、
請求項1に記載の通過帯域可変装置。
【請求項4】
第一の電波を導波管内に導入する入力端子と、
共振器として用いる複数の共振部材と、前記共振部材の間に配置され、前記共振器を結合させるために用いる結合部材と、によって構成される帯域通過フィルタ部材と、
前記導波管の外部から印加される磁界によって、前記帯域通過フィルタ部材の通過帯域を可変させる、一つ以上の磁性体素子から構成される通過帯域可変部材と、
前記帯域通過フィルタ部材に前記第一の電波が入力された後に、前記帯域通過フィルタ部材から出力される第二の電波を前記導波管外に導出する出力端子と、
を有する導波管。
【請求項5】
あらかじめ設定された強さの磁界が印加された場合に、前記帯域通過フィルタ部材の第一の通過帯域を、あらかじめ設定された第二の通過帯域に可変可能な、前記導波管内の位置に、前記通過帯域可変部材を配置する、
請求項4に記載の導波管。
【請求項6】
複数の前記共振部材に対して一つの前記通過帯域可変部材を配置する、
請求項5に記載の導波管。
【請求項7】
前記通過帯域可変部材は長方形の平板で、前記通過帯域可変部材の長手方向の長さは前記入力端子から前記出力端子までの長さ以上で、前記通過帯域可変部材の短手方向の長さは前記導波管の内側の短手方向の長さより短い、
請求項6に記載の導波管。
【請求項8】
複数の前記共振部材それぞれに対して一つずつ前記通過帯域可変部材を配置する、
請求項5に記載の導波管。
【請求項9】
前記通過帯域可変部材が円形の平板である、
請求項8に記載の導波管。
【請求項10】
共振器として用いる複数の共振部材と、前記共振部材の間に配置され、前記共振器を結合させるために用いる結合部材とによって構成される帯域通過フィルタ部材と、導波管の外部から印加される磁界に応じて、前記帯域通過フィルタ部材の通過帯域を可変する、一つ以上の磁性体素子から構成される通過帯域可変部材と、を有する導波管に、前記帯域通過フィルタ部材の通過帯域を可変するために、前記共振部材の実効透磁率を制御するための前記磁界を印加する、
通過帯域制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通過帯域可変装置、導波管、及び通過帯域可変方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波通信システムなどを構築する際、帯域通過フィルタ(BPF:Band-pass filter)を有する導波管の通過帯域を外部から可変したい。
【0003】
関連する技術として特許文献1にはアジル型マイクロ波フィルタが開示されている。特許文献1のアジル型マイクロ波フィルタは、導波管内に配置されたフェライト共振器を一つ以上含んでいる。また、特許文献1のアジル型マイクロ波フィルタのフェライト共振器の共振周波数を変化させることで、アジル型マイクロ波フィルタの中心周波数をシフトさせる。
【0004】
また、関連する技術として特許文献2には磁性体共振器が開示されている。特許文献2の磁性体共振器によれば、テンソル透磁率を有する磁性体膜を被膜した基板に対し表裏面に電極を形成して磁性体共振器を構成し、その磁性体膜に対して、永久磁石によって外部磁界を印加し、その外部磁界の大きさを変えることによって共振周波数を調整する。
【0005】
また、関連する技術として特許文献3には、平板状のフィルタ部材とチューニング部材とを所定間隔を隔て対向配置させたプレーナ形フィルタが開示されている。フィルタ部材は、超電導体からなる入出力部と複数の共振素子とを基板上に形成した構造である。チューニング部材は、印加磁界により透磁率が変化する磁性体板の表面に、複数の誘電体薄膜と、これら誘電体薄膜に電界を印加するための複数の電極とを配置した構造である。
【0006】
また、誘電体薄膜のそれぞれは、フィルタ部材の共振素子間のギャップ、又はフィルタ部材と入出力部との間のギャップに対向する位置に配置されている。そして、電極間に電圧を印加することにより、共振素子間のギャップ、又は共振素子と入出力部間のギャップとの実効誘電率εを可変制御して、スカート特性とリップルを調整する。
【0007】
さらに、関連する技術として特許文献4には可変インダクタが開示されている。特許文献4の可変インダクタによれば、可変インダクタのコイルが巻回された磁気コアに対して外部から磁力を印加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平05-037202号公報
【特許文献2】特開平08-293704号公報
【特許文献3】特開2001-102808号公報
【特許文献4】特開平01-169012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1、2、4では、フェライト(磁性体)を共振器として通過帯域の周波数を調整しているので、フェライト内でのロスを抑え込み、Q値を高めること(ロスを小さくすること)が困難である。
【0010】
また、特許文献3のプレーナ形フィルタを導波管に適用することが困難である。また、特許文献3のプレーナ形フィルタは、フィルタ部材に電圧印加用電極が取り付けられているとともに、超電導体を使用しているため冷凍機が必要になるので構造が複雑である。
【0011】
本開示の目的の一例は、Q値の高い通過帯域可変フィルタを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本開示の一つの側面における通過帯域可変装置は、
共振器として用いる複数の共振部材と、前記共振部材の間に配置され、前記共振器を結合させるために用いる結合部材と、によって構成される帯域通過フィルタ部材と、導波管の外部から印加される磁界によって、前記帯域通過フィルタ部材の通過帯域を可変させる、一つ以上の磁性体素子から構成される通過帯域可変部材と、を有する導波管と、
前記帯域通過フィルタ部材の通過帯域を可変するために、前記共振部材の実効透磁率を制御するための前記磁界を印加する磁界印加手段と、
を有することを特徴とする。
【0013】
また、上記目的を達成するため、本発明の一側面における導波管は、
第一の電波を導波管内に導入する入力端子と、
共振器として用いる複数の共振部材と、前記共振部材の間に配置され、前記共振器を結合させるために用いる結合部材と、によって構成される帯域通過フィルタ部材と、
前記導波管の外部から印加される磁界によって、前記帯域通過フィルタ部材の通過帯域を可変させる、一つ以上の磁性体素子から構成される通過帯域可変部材と、
前記帯域通過フィルタ部材に前記第一の電波が入力された後に、前記帯域通過フィルタ部材から出力される第二の電波を前記導波管外に導出する出力端子と、
を有することを特徴とする。
【0014】
さらに、上記目的を達成するため、本発明の一側面における通過帯域制御方法は、
共振器として用いる複数の共振部材と、前記共振部材の間に配置され、前記共振器を結合させるために用いる結合部材とによって構成される帯域通過フィルタ部材と、導波管の外部から印加される磁界に応じて、前記帯域通過フィルタ部材の通過帯域を可変する、一つ以上の磁性体素子から構成される通過帯域可変部材と、を有する導波管に、前記帯域通過フィルタ部材の通過帯域を可変するために、前記共振部材の実効透磁率を制御するための前記磁界を印加する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
一つの側面として、Q値の高い通過帯域可変フィルタを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、通過帯域可変装置の一例を説明するための図である。
【
図2】
図2は、実施例1における導波管の一例を説明するための分解斜視図である。
【
図3】
図3は、実施例1における導波管の一例を説明するための上面図、側面図である。
【
図4】
図4は、実施例1における導波管の通過特性の一例を説明するための図である。
【
図5】
図5は、実施例2における導波管の一例を説明するための分解斜視図である。
【
図6】
図6は、実施例2における導波管の一例を説明するための上面図、側面図である。
【
図7】
図7は、実施例2における導波管の通過特性の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。なお、以下で説明する図面において、同一の機能又は対応する機能を有する要素には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略することもある。
【0018】
(実施形態)
図1を用いて、実施形態における通過帯域可変装置10の構成について説明する。
図1は、通過帯域可変装置の一例を説明するための図である。
【0019】
[装置構成]
図1に示す通過帯域可変装置10は、Q値の高い通過帯域可変フィルタを実現する装置である。また、
図1に示すように、通過帯域可変装置10は、導波管11と、磁界印加部12(12a、12b)とを有する。
【0020】
図1の例では、導波管11は、帯域通過フィルタ部材13と、通過帯域可変部材16と、入力端子17と、出力端子18とを有する。帯域通過フィルタ部材13は、二つ以上の共振部材14と、一つ以上の結合部材15とから構成される。
【0021】
具体的には、導波管11は、共振器として用いる複数の共振部材14と、共振部材14の間に配置され、共振器を結合させるために用いる結合部材15とによって構成される帯域通過フィルタ部材13と、導波管11の外部から印加される磁界によって、帯域通過フィルタ部材13の通過帯域を可変させる、一つ以上の磁性体素子から構成される通過帯域可変部材16と、を有する。
【0022】
帯域通過フィルタ部材13は、二つ以上の共振部材14と、一つ以上の結合部材15とを有する。帯域通過フィルタとはバンドパスフィルタである。
【0023】
共振部材14は、共振器として用いる金属製の部材である。結合部材15は、共振部材14の間に配置される、共振器を結合させるために用いる金属製の部材である。結合の強さは、結合部材15の形状により決定する。
【0024】
帯域通過フィルタの通過帯域(第一の通過帯域)は、共振部材14の形状、結合部材15の形状、共振部材14と結合部材15の距離などにより決定する。第一の通過帯域は、磁界を印加しない場合における通過帯域である。
【0025】
通過帯域可変部材16は、導波管11の内部の、帯域通過フィルタ部材13の近傍に配置される。通過帯域可変部材16は、あらかじめ設定された強さの磁界が、通過帯域可変部材16に印加された場合に、帯域通過フィルタ部材の第一の通過帯域を、あらかじめ設定された第二の通過帯域に可変可能な位置に配置する。第二の通過帯域は、磁界を印加した場合に、第一の通過帯域から可変される通過帯域である。
【0026】
通過帯域可変部材16は共振器として使用していない。したがって、通過帯域可変部材16(フェライト)の有無によって共振器を中心とする電界の向き、強さは変化するが、半同軸共振モード自体は変わらない。
【0027】
通過帯域可変部材16は、一つ以上の磁性体素子(フェライト)を有する。フェライトは、複数の共振部材14に対して一つ設けてもよいし、又は、複数の共振部材14それぞれに対して一つずつ設けてもよい。
【0028】
磁界印加部12(12a、12b)は、帯域通過フィルタ部材13の通過帯域を可変するために、共振部材14の実効透磁率を制御するための磁界を印加する。
【0029】
磁界印加部12は、例えば、磁石、電磁石などを用いて磁界を印加し、通過周波数、又は通過帯域幅、又は両方を変化させる。
【0030】
磁界印加部12として磁石を用いる場合、磁石の個数を変えることにより磁界の強さを変更する。また、磁石と導波管11との距離を変更することにより磁界の強さを変更する。なお、磁石は、導波管11の外側で、通過帯域可変部材16付近に配置する。
【0031】
磁界印加部12として電磁石を用いる場合、電磁石に流す電流値を変えることにより磁界の強さを変更する。また、電磁石と導波管11との距離を変更することにより磁界の強さを変更する。なお、電磁石は、導波管11の外側で、通過帯域可変部材16の付近に配置する。
【0032】
[実施形態の効果]
上述したように、実施形態では、共振部材14と結合部材15とを用いて帯域通過フィルタを構成し、共振器でない通過帯域可変部材16を用いて共振部材14の実効透磁率を可変するので、Q値の高い通過帯域可変フィルタを実現できる。
【0033】
すなわち、フェライトを共振器として使用しないので、磁界制御方式の通過帯域可変フィルタを有する導波管の中でも、Q値の高い通過帯域可変フィルタを実現できる。
【0034】
また、フェライトは誘電正接(tanδ)が大きいので、共振器に用いるとロスが大きくなるが、フェライトを共振器として使用しないので、誘電正接によるロスを小さくすることができる。
【実施例0035】
実施例1における導波管20について、
図2、3、4を用いて説明する。実施例1の導波管20は、
図1の導波管11に相当する。
図2は、実施例1における導波管の一例を説明するための分解斜視図である。
図3は、実施例1における導波管の一例を説明するための上面図、側面図である。
図4は、実施例1における導波管の通過特性の一例を説明するための図である。
【0036】
図2、3に示すように、導波管20は、筐体21(第一の筐体21a、第二の筐体21b)と、帯域通過フィルタ部材13(複数の共振部材14、複数の結合部材15)と、通過帯域可変部材16、入力端子17と、出力端子18とを有する。実施例1では、複数の共振部材14に対して一つの通過帯域可変部材16を配置する。
【0037】
導波管20は、例えば、方形導波管、円形導波管、リッジ形導波管などが考えられる。なお、実施例1では方形導波管を用いて説明する。ただし、導波管20の形状は方形導波管に限定されるものではない。
【0038】
筐体21は、
図2、3の例では、Z軸方向に二分割された第一の筐体21aと、第二の筐体21bとにより構成される。また、第一の筐体21aと第二の筐体21bは接合される。
【0039】
第一の筐体21aは、通過帯域可変部材16と、支柱22(22a、22b)とを有する。
【0040】
通過帯域可変部材16は、
図2、3の例では、長方形の平板で、当該平板の長手方向の長さは入力端子17から出力端子18までの長さ以上とし、当該平板の短手方向の長さは導波管20の内壁の短手方向の長さより短くする。ただし、平板の形状は、長方形に限定されるものではなく、全ての共振部材14を覆うような形状であればよい。
【0041】
通過帯域可変部材16は、共振部材14の実効透磁率を制御するための磁界が、あらかじめ設定された強さで印加された場合に、帯域通過フィルタ部材13の第一の通過帯域が、あらかじめ設定された第二の通過帯域に可変可能な位置に配置する。
【0042】
支柱22a、22bは、
図2、3の例では、通過帯域可変部材16を所定位置に固定する。支柱22aの一方端は、第一の筐体21aの上部面の入力端子17側の端部(端の近傍の部位)に固定され、支柱22bの一方端は、第一の筐体21aの上部面の出力端子18側の端部(端の近傍の部位)に固定されている。また、支柱22aの他方端は、通過帯域可変部材16の入力端子17側の端部(端の近傍の部位)に固定され、支柱22bの他方端は、通過帯域可変部材16の出力端子18の端部(端の近傍の部位)に固定されている。
【0043】
なお、
図3の例では、支柱22の数は二個としたが、二個に限定されるものではない。また、支柱22の固定は、螺子を用いて固定してもよいし、溶接により固定してもよい。
【0044】
図3に示した支柱22a、22bの長さL1は、通過帯域可変部材16が共振部材14に接触する長さでもよいし、通過帯域可変部材16が共振部材14に接触しない長さでもよい。
【0045】
第二の筐体21bは、複数の共振部材14と、複数の結合部材15と、入力端子17と、出力端子18とを有する。共振部材14、結合部材15、入力端子17、出力端子18は、第二の筐体21bの側面内壁に設けられる。
【0046】
共振部材14は、
図2、3の例では、長方形状の金属製の平板である。なお、共振部材14の形状は、長方形状に限定されるものではない。また、結合部材15は、
図2、3の例では、長方形状の金属製の平板である。なお、結合部材15の形状は、長方形状に限定されるものではない。入力端子17と出力端子18は金属製の平板である。なお、入力端子17と出力端子18の形状は、
図2、3に示した形状に限定されるものではない。
【0047】
実施例1の導波管20は、
図4の例では、共振部材14と結合部材15の板厚が0.3[mm](ミリメートル)で、第一の通過帯域が7.5[GHz](ギガヘルツ)である。
【0048】
図4の例では、磁界印加部12が実施例1の導波管20に、磁界の強さ、5[kA/m](キロアンペア毎メートル)、50[kA/m]、100[kA/m]、200[kA/m]、300[kA/m]を印加した場合の通過特性を表すグラフである。
図4のグラフは、縦軸が、伝送信号の減衰量(Sパラメータ:S12)を[dB](デシベル)を表し、横軸が、信号の周波数[GHz]を表している。
【0049】
図4の例では、磁界の強さにより、第一の通過帯域が第二の通過帯域に変化したことが示されている。すなわち、
図4の例では、磁界の強さを変化させることにより、磁界の強さに応じた、通過帯域の中心周波数と通過帯域幅とが変化していることが分かる。
【0050】
[実施例1の効果]
上述したように、実施例1では、共振部材14と結合部材15とを用いて帯域通過フィルタを構成し、共振器でない通過帯域可変部材16を用いて共振部材14の実効透磁率を可変するので、Q値の高い通過帯域可変フィルタを実現できる。
【0051】
すなわち、フェライトを共振器として使用しないので、磁界制御方式の通過帯域可変フィルタを有する導波管の中でも、Q値の高い通過帯域可変フィルタを実現できる。
【0052】
また、フェライトは誘電正接(tanδ)が大きいので、共振器に用いるとロスが大きくなるが、フェライトを共振器として使用しないので、誘電正接によるロスを小さくすることができる。
導波管30は、例えば、方形導波管、円形導波管、リッジ形導波管などが考えられる。なお、実施例2では方形導波管を用いて説明する。ただし、導波管30の形状は方形導波管に限定されるものではない。
第四の筐体31bは、複数の共振部材14と、複数の結合部材15と、入力端子17と、出力端子18とを有する。共振部材14、結合部材15、入力端子17、出力端子18は、第二の筐体21bの側面内壁に設けられる。
通過帯域可変部材16は、共振部材14の実効透磁率を制御するための磁界が、あらかじめ設定された強さで印加された場合に、帯域通過フィルタ部材13の第一の通過帯域が、あらかじめ設定された第二の通過帯域に可変可能な位置に配置する。
また、フェライトは誘電正接(tanδ)が大きいので、共振器に用いるとロスが大きくなるが、フェライトを共振器として使用しないので、誘電正接によるロスを小さくすることができる。
さらに、共振部材14用の通過帯域可変部材16と別に、結合部材15それぞれに対して、結合部材15の近傍に、結合部材15用の通過帯域可変部材を一つずつ配置する。そして、通過帯域可変部材16に印加する磁界(第一の磁界)と別に、結合部材15用の通過帯域可変部材に印加する磁界(第二の磁界)を印加することで、通過帯域幅を変更してもよい。
[付記]
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。上述した実施形態の一部又は全部は、以下に記載する(付記1)から(付記15)により表現することができるが、以下の記載に限定されるものではない。
以上、実施形態を参照して発明を説明したが、発明は上述した実施形態に限定されるものではない。発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。