(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039377
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】核酸吸着材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 20/26 20060101AFI20240314BHJP
B01J 20/24 20060101ALI20240314BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20240314BHJP
C08F 251/00 20060101ALI20240314BHJP
C08B 11/145 20060101ALI20240314BHJP
C08B 11/10 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
B01J20/26 H
B01J20/24 C
B01J20/30
C08F251/00
C08B11/145
C08B11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143886
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301032942
【氏名又は名称】国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】加地 恵
(72)【発明者】
【氏名】本田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】植木 悠二
(72)【発明者】
【氏名】瀬古 典明
【テーマコード(参考)】
4C090
4G066
4J026
【Fターム(参考)】
4C090AA08
4C090BA34
4C090BB53
4C090BB62
4C090BB64
4C090BB65
4C090BB92
4C090BB94
4C090BD36
4C090CA36
4C090CA38
4C090DA05
4G066AB05B
4G066AB09B
4G066AB13B
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4G066AC02B
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4G066BA03
4G066BA20
4G066BA36
4G066CA56
4G066DA07
4G066FA03
4G066FA07
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4J026AA02
4J026BA24
4J026BB01
4J026DB02
4J026DB36
4J026GA01
4J026GA08
(57)【要約】
【課題】液中の核酸を吸着する核酸吸着性能が高い核酸吸着材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、基材と、基材に化学結合されているイオン性基を含み、イオン性基は、アミノポリオール基、リン酸基、及びピラゾール基からなる群から選ばれる一つ以上である核酸吸着材に関する。前記核酸吸着材は基材を放射線照射の前後にモノマーと接触させ、基材にモノマーをグラフト重合させてグラフト鎖を形成し、得られた基材及びグラフト鎖からなるグラフト重合体とイオン性基を有する化合物を反応させ、グラフト重合体のグラフト鎖にイオン性基を化学結合させることで作製してもよい。或いは、前記核酸吸着材は、基材を放射線照射の前後にイオン性基を有するモノマーと接触させることで、イオン性基が化学結合されたグラフト鎖を含むグラフト重合体を形成することで作製してもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材に化学結合されているイオン性基を含み、
前記イオン性基は、アミノポリオール基、リン酸基、及びピラゾール基からなる群から選ばれる一つ以上である、核酸吸着材。
【請求項2】
前記アミノポリオール基は、N-メチル-D-グルカミン基である、請求項1に記載の核酸吸着材。
【請求項3】
前記基材は、セルロースを主成分とする、請求項に1又は2に記載の核酸吸着材。
【請求項4】
前記基材は、ポリオレフィンを主成分とする、請求項1又は2に記載の核酸吸着材。
【請求項5】
前記核酸吸着材は、さらに前記基材にグラフト重合したグラフト鎖を含み、前記イオン性基が前記グラフト鎖を介して前記基材に化学結合されている、請求項1~4のいずれかに記載の核酸吸着材。
【請求項6】
前記グラフト鎖は、グリシジルメタクリレートで構成されている、請求項5に記載の核酸吸着材。
【請求項7】
前記グラフト重合体のグラフト率が10~100質量%である、請求項5又は6に記載の核酸吸着材。
【請求項8】
前記基材は、多孔質膜の形態を有する、請求項1~7のいずれかに記載の核酸吸着材。
【請求項9】
基材を放射線照射した後にモノマーと接触させる、或いは、基材をモノマーと接触させた後に放射線照射することで、基材にモノマーをグラフト重合させてグラフト鎖を形成する工程、及び
得られた基材及びグラフト鎖からなるグラフト重合体とイオン性基を有する化合物を反応させて、前記グラフト重合体のグラフト鎖にイオン性基を化学結合させる工程を含み、
前記イオン性基は、アミノポリオール基、リン酸基、及びピラゾール基からなる群から選ばれる一つ以上である、核酸吸着材の製造方法。
【請求項10】
基材を放射線照射した後にイオン性基を有するモノマーと接触させる、或いは基材をイオン性基を有するモノマーと接触させた後に放射線照射することで、基材にイオン性基を有するモノマーをグラフト重合させて、イオン性基がグラフト鎖を介して基材に化学結合しているグラフト重合体を形成する工程を含み、
前記イオン性基は、アミノポリオール基、リン酸基、及びピラゾール基からなる群から選ばれる一つ以上である、核酸吸着材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液中の核酸を吸着することができる核酸吸着材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試料溶液や細胞培養液等から核酸を除去する技術として、従来核酸を分解することが行われていた。近年、イオン性基を備えた基材にて核酸を吸着することが行われている。例えば、特許文献1には、窒素原子を含むカチオン性基を有するセルロースファイバーを核酸吸着材として用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の核酸吸着材は、核酸吸着性能が十分ではない場合があった。
【0005】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、液中の核酸を吸着する核酸吸着性能が高い核酸吸着材及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基材と、前記基材に化学結合されているイオン性基を含み、前記イオン性基は、アミノポリオール基、リン酸基、及びピラゾール基からなる群から選ばれる一つ以上である、核酸吸着材に関する。
【0007】
本発明は、核酸吸着材の製造方法であって、基材を放射線照射した後にモノマーと接触させる、或いは、基材をモノマーと接触させた後に放射線照射することで、基材にモノマーをグラフト重合させてグラフト鎖を形成する工程、及び得られたグラフト重合体とイオン性基を有する化合物を反応させて、前記グラフト重合体のグラフト鎖にイオン性基を化学結合させる工程を含み、前記イオン性基は、アミノポリオール基、リン酸基、及びピラゾール基からなる群から選ばれる一つ以上である核酸吸着材の製造方法に関する。
【0008】
本発明は、また、核酸吸着材の製造方法であって、基材を放射線照射した後にイオン性基を有するモノマーと接触させる、或いは基材をイオン性基を有するモノマーと接触させた後に放射線照射することで、基材にイオン性基を有するモノマーをグラフト重合させて、イオン性基が化学結合されているグラフト重合体を形成する工程を含み、前記イオン性基は、アミノポリオール基、リン酸基、及びピラゾール基からなる群から選ばれる一つ以上である核酸吸着材の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の核酸吸着材によれば、液中の核酸を効果的に吸着することができる。また、本発明の製造方法によれば、液中の核酸を吸着する核酸吸着性能が高い核酸吸着材を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の発明者らは、上述した従来の問題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、基材にアミノポリオール基、リン酸基、及びピラゾール基からなる群から選ばれる一つ以上のイオン性基を化学結合させることで、液中のDNA及びRNA等の核酸を吸着する性能が格段に高まることを見出した。核酸はDNAとRNAを含む。
【0011】
核酸吸着材は、基材と、基材に化学結合されているイオン性基を含む。
【0012】
前記基材は、イオン性基が化学結合しやすい観点から、有機高分子を含む基材であることが好ましい。。前記有機高分子としては、特に限定されないが、例えば、石油系高分子、天然高分子などの種々の高分子化合物を採用し得る。石油系高分子化合物として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等の(メタ)アクリル酸系樹脂、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスリフィド、ポリアミド、ポリイミド、環状オレフィン系樹脂等が挙げられる。天然高分子としては、例えば、キチン、キトサン、セルロース、デンプン等が挙げられる。
【0013】
前記有機高分子としては、特に限定されないが、酸やアルカリ等に対する耐薬品性の観点から、セルロース、及びポリオレフィン系樹脂等が好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等を好適に用いることができる。ポリプロピレンは、プロピレンの単独重合体でもよく、プロピレンと他のα-オレフィン、例えばエチレン等との共重合体でもよい。ポリプロピレンが共重合体の場合、他のα-オレフィンの含有量は5重量%以下であってもよい。ポリエチレンは、エチレンの単独重合体でもよく、エチレンと他のα-オレフィン、例えばプロピレン、ブテンー1等との共重合体でもよい。ポリエチレンが共重合体の場合、他のα-オレフィンの含有量は5モル%以下であってもよい。
【0014】
前記基材は、特に限定されないが、例えば、タンパク質を吸着せず、核酸を選択的に吸着しやすい観点から、セルロースを主成分とすることが好ましい。本明細書において、「主成分」とは、基材におけるセルロースの含有量が50質量%以上であり、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、さらにより好ましくは90質量%以上であり、100質量%からなるものでもよい。
【0015】
前記基材は、特に限定されないが、例えば、タンパク質を吸着せず、核酸を選択的に吸着しやすい観点から、ポリオレフィン系樹脂を主成分とすることが好ましく、ポリエチレンを主成分とすることがより好ましい。本明細書において、「主成分」とは、基材におけるポリオレフィン又はポリエチレンの含有量が50質量%以上であり、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、さらにより好ましくは90質量%以上であり、100質量%からなるものでもよい。
【0016】
前記核酸吸着材は、さらに前記基材にグラフト重合されたグラフト鎖を含み、前記イオン性基がグラフト鎖を介して前記基材に化学結合していることが好ましい。この場合、イオン性基がグラフト鎖を介して基材に結合するため、イオン性基が基材に直接結合した場合に比べて、基材とイオン性基の結合部位が増え、単位面積あたりのイオン性基密度を高めることができる。
【0017】
前記基材とグラフト鎖からなるグラフト重合体において、グラフト鎖を構成するモノマーは、グラフト重合可能な基(以下、グラフト重合性反応基という。)を有し、かつ、アミノポリオール基、リン酸基、及びピラゾール基からなる群から選ばれる一つ以上のイオン性基を含む化合物と反応することが可能な基(以下、導入化合物反応基という。)を有するモノマーであることが好ましい。
【0018】
前記グラフト重合性反応基は、特に限定されず、好ましくは不飽和基であり、より好ましくはアリル基、ビニル基、(メタ)アクリル基等が挙げられる。
【0019】
前記導入化合物反応基としては、特に限定されないが、好ましくはエポキシ基、オキセタニル基等の環状エーテル含有基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素というハロゲン基、水酸基、アルコキシ基等が挙げられ、より好ましくはエポキシ基である。
【0020】
前記グラフト重合性反応基及び導入化合物反応基を有するモノマーとしては、特に限定されず、例えば、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルソルベート、グリシジルイタコレート、グリシジルマエレート、グリシジルリノレート、グリシジルオレエート、メタクリル酸(3-エチルオキセタン-3-イル)、及びクロロメチルスチレン等が挙げられ、立体障害が少ない観点から、グリシジルメタクリレート(GMA)が好ましい。
【0021】
グラフト重合体がグラフト重合性反応基及び導入化合物反応基を有するモノマーで構成されたグラフト鎖を有する場合、基材にイオン性基を簡単かつ効率的に化学結合(導入)することができる。
【0022】
グラフト重合体において、グラフト鎖を構成するモノマーとして、アミノポリオール基、リン酸基、及びピラゾール基からなる群から選ばれる一つ以上のイオン性基を有するビニルモノマー類を用いることで、イオン性基を有するグラフト重合体で形成された核酸吸着材を得ることができる。このようなモノマーとしては、例えば、N-アクリロイルトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、モノ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)ホスフェート等を挙げることができる。このようなモノマーを使用すると、核酸吸着材の製造時に、グラフト鎖へのイオン性基導入工程を省略することができる。
【0023】
グラフト重合体のグラフト率(グラフト鎖の結合率)は特に限定されないが、核酸吸着性を高める観点から、好ましくは1~100質量%である、より好ましくは10~100重量%である。グラフト率を上記範囲内とすることで、基材の形態及び形状を保持しつつ、イオン性基の固定化率を大きくすることができる。よって、核酸吸着材の核酸吸着性を向上させることができる。本明細書において、グラフト率は実施例に記載のとおりに測定することができる。
【0024】
前記イオン性基は、アミノポリオール基、リン酸基、及びピラゾール基からなる群から選ばれる一つ以上である。吸着率の観点から、前記イオン性基は、アミノポリオール基、及びリン酸基からなる群から選ばれる一つ以上であることが好ましく、アミノポリオール基であることがより好ましい。
【0025】
アミノポリオール基は、アミノ基及び多価アルコール基を含む基であればよく、特に限定されないが、例えば、N-メチル-D-グルカミン基、D-グルカミン基、D-ガラクタミン基、D-マンノサミン基、D-アラビチルアミン基等のアミノ糖類基が挙げられる。核酸吸着性がより高いという観点から、N-メチル-D-グルカミン基及びD-グルカミン基からなる群から選ばれる一つ以上が好ましく、N-メチル-D-グルカミン基が特に好ましい。
【0026】
リン酸基としては、例えば、オルトリン酸基、亜リン酸基、次亜リン酸基、ポリリン酸基(二リン酸基(ピロリン酸基とも称される)、三リン酸基等)、及びメタリン酸基等が挙げられ、これらのうち、オルトリン酸基が特に好ましい。
【0027】
ピラゾール基としては、例えば、1-メチルピラゾール基、3-メチルピラゾール基、4-メチルピラゾール基、4-クロロピラゾール基、3,5-ジメチルピラゾール基等の誘導体を用いてもよい。
【0028】
前記核酸吸着材において、特に限定されないが、例えば、核酸吸着性を高める観点から、イオン性基の導入率は、10~100%であることが好ましく、より好ましくは50~100%であり、さらに好ましくは80~100%である。本明細書において、イオン性基の導入率は実施例に記載のとおりに測定することができる。
【0029】
前記核酸吸着材が、セルロース基材、セルロース基材にグラフト重合されたグラフト鎖、及びイオン性基を含み、グラフト鎖がGMAで構成され、イオン性基がN-メチル-D-グルカミン基又はリン酸基である場合、イオン性基は、下記化学式1~3に示すようにGMAで構成されたグラフト鎖を介してセルロース基材に化学結合することができる。なお、グラフト鎖は、GMA以外のモノマーで構成されてもよい。
【0030】
【化1】
但し、化学式1において、R
1は、化学式3に表すとおりである。
【0031】
【化2】
但し、化学式2において、R
1は、化学式3に表すとおりである。
【0032】
【化3】
但し、化学式3において、n及びlは、それぞれ、1以上の整数を表し、vvvvは、イオン性基との連結部を表し、セルロース分子は反応性に富む水酸基をグルコース残基のC-2、C-3、C-6の位置に持ち、C-2、C-3、及びC-6の一つ以上にGMAがグラフト重合してグラフト鎖を形成する。なお、グラフト鎖がGMA以外のモノマーで構成されている場合、セルロースのC-2、C-3、及びC-6の一つ以上に該モノマーがグラフト重合する。
【0033】
前記核酸吸着材が、ポリエチレン基材、ポリエチレン基材にグラフト重合されたグラフト鎖、及びイオン性基を含み、グラフト鎖がGMAで構成され、イオン性基がN-メチル-D-グルカミン基又はリン酸基である場合、イオン性基は、下記化学式4~6に示すようにグラフト鎖を介してポリエチレン基材に化学結合することができる。なお、グラフト鎖は、GMA以外のモノマーで構成されてもよい。
【0034】
【化4】
但し、化学式4において、R
2は、化学式6に表すとおりである。
【0035】
【化5】
但し、化学式5において、R
2は、化学式6に表すとおりである。
【0036】
【化6】
但し、化学式6において、s、t及びlは、それぞれ、1以上の整数を表し、vvvvは、イオン性基との連結部を表す。なお、グラフト鎖がGMA以外のモノマーで構成されている場合、ポリエチレン基材に該モノマーがグラフト重合する。
【0037】
前記基材の形態は特に限定されず、繊維や多孔質膜のいずれでもよいが、核酸を効果的に吸着しつつ、液を通過しやすい観点から、多孔質膜であることが好ましい。前記多孔質膜としては、例えば、平膜、中空糸膜、モノリス、キャピラリー、円板又は円筒状等が挙げられる
【0038】
前記多孔質膜の厚さは、特に限定されないが、例えば、1~1000μmであることが好ましく、より好ましくは1~500μmであり、さらに好ましくは1~100μmである。多孔質膜の厚さが上述した範囲内であると、洗浄しやすい上、耐久性も良好である。
【0039】
前記多孔質膜の平均孔径は、特に限定されないが、例えば、1~100μmであることが好ましく、より好ましくは1~50μmであり、さらに好ましくは1~30μmである。多孔質膜の平均孔径が上述した範囲内であると、核酸を吸着するのに十分な表面積が得られる上、目つまりも抑制することができる。本明細書において、多孔質膜の平均孔径は、バブルポイントにて測定することができる。
【0040】
(核酸吸着材の製造方法)
前記核酸吸着材は、特に限定されないが、例えば、下記製造方法1~4のいずれかの方法を用いて製造することができる。中でも、高いグラフト率、かつ、高いイオン性基の導入率を実現可能な製造方法1は、より高い核酸吸着性を有する核酸吸着材を製造可能であるといった観点からより好ましいが、製造方法2~4であっても良い。
【0041】
(製造方法1)
製造方法1は、下記の工程を含むことが好ましい。
(i)基材を放射線で照射する工程
(ii-a)活性化された基材にモノマーを接触させてグラフト重合させる工程
(iii)基材及びグラフト鎖からなるグラフト重合体にイオン性基を導入する工程
【0042】
(製造方法2)
製造方法2は、下記の工程を含むことが好ましい。
(i)基材を放射線で照射する工程
(ii-b)活性化された基材に対して、イオン性基を有するモノマーを接触させてグラフト重合させる工程
【0043】
(製造方法3)
製造方法3は、下記の工程を含むことが好ましい。
(iv-a)基材にモノマーを塗布する工程
(v)前記モノマーを塗布した基材に放射線を照射してグラフト重合させる工程
(iii)基材及びグラフト鎖からなるグラフト重合体にイオン性基を導入する工程
【0044】
(製造方法4)
製造方法4は、下記の工程を含むことが好ましい。
(iv-b)基材にイオン性基を有するモノマーを塗布する工程
(v)前記モノマーを塗布した基材に放射線を照射してグラフト重合させる工程
【0045】
工程(i)において、基材を放射線で照射することで、基材が活性化され、グラフト重合が可能なラジカル等の活性化点が生成される。
【0046】
放射線としてはα線、β線、γ線、X線、電子線、可視光線、紫外線、及び赤外線等が挙げらる。これらの放射線のうち、γ線、X線、電子線、可視光線、又は紫外線であることが好ましく、照射線量をコントロールしやすく、生産性が良いことから、γ線又は電子線がより好ましく、電子線がさらに好ましい。
【0047】
照射線量としては、活性化点を生成させるのに十分な線量であればよく、特に限定されるものではない。例えば、γ線、X線及び電子線等を照射させる場合には、照射線量は、通常1~200kGyであってもよく、好ましくは5~100kGy、より好ましくは10~50kGyである。照射線量を大きくすることで、グラフト率を向上させることができる。電子線の加速電圧は、特に限定されないが、例えば、100~1000kVの範囲のものとすればよい。雰囲気条件は、窒素雰囲気下や不活性ガス雰囲気下で照射を行うことが好ましく、また透過力があるため、基材の片面に照射するだけでよい。
【0048】
また、照射の条件としては、例えば、予め窒素置換した空間で照射することが好ましく、室温又は冷却下で照射を行うことが好ましい。
【0049】
工程(ii-a)において、前記活性化された基材に対して、モノマーをグラフト重合させる方法は、特に限定されず、公知の方法を適宜用いることができる。ここで、モノマーとしては、上記で説明したグラフト重合性反応基及び導入化合物反応基を有するモノマーを適宜用いることができる。モノマーは、直接又は溶媒に溶解させて接触させてもよく、またモノマー溶液のエマルションを形成させて接触させることでもよい。モノマー溶液のエマルションを形成させることで、基材の活性点付近のモノマー濃度が高まり、グラフト重合体のグラフト率を向上させることができる。界面活性剤が核酸分離に悪影響を及ぼす恐れがあることから、モノマーは界面活性剤を用いたエマルション系ではなく、直接又は溶媒に溶解させて用いることが望ましい。
【0050】
溶液中のモノマー濃度は特に限定されないが、好ましくは0.1~30質量%であり、より好ましくは1~10質量%である。溶液中のモノマー濃度を高くすることで、グラフト率を向上させることができる。
【0051】
前記溶媒としては、特に限定されず、上記モノマーを溶解することができるものを適宜用いることができる。具体的には、水、メタノール、及びエタノール等のアルコール溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエタン、及びヘキサクロロエタン等のハロゲン系溶媒、メチルエチルケトン、及びフェニルメチルケトン等のケトン系溶媒等が挙げられる。水は、蒸留水、イオン交換水、純水、及び超純水のいずれでもよい。
【0052】
さらに、エマルションを形成させる場合は、界面活性剤を用いることが好ましい。界面活性剤としては、特に限定されないが、好ましくは陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤が挙げられる。陰イオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、好ましくはアルキルベンゼン系、アルコール系、オレフィン系、リン酸系、アミド系の界面活性剤等が挙げられ、より好ましくはドデシル硫酸ナトリウム等が挙げられる。陽イオン系界面活性剤は、特に限定はされないが、好ましくはオクタデシルアミン酢酸塩、トリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。非イオン系界面活性剤は、特に限定されないが、好ましくはエトキシル化脂肪アルコール、脂肪酸エステル等が挙げられ、より好ましくはポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウリレート(Tween20、登録商標)等が挙げられる。両性イオン系界面活性剤は、特に限定されないが、好ましくはベタイン系両性界面活性剤を主成分とするアンヒトール(登録商標)等が挙げられる。上記界面活性剤の中でも、より好ましくはポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウリレートである。
【0053】
界面活性剤の濃度は、特に限定されないが、上記モノマーの種類、濃度に依存して適宜決定することができる。界面活性剤の濃度は、溶媒の全質量を基準として、好ましくは通常0.01~10質量%であり、より好ましくは0.1~2質量%である。
【0054】
グラフト重合反応温度は、上記モノマーの反応性によって設定すればよく、好ましくは10~60℃であり、より好ましくは30~45℃である。また、グラフト重合反応時間は好ましくは5分~6時間であり、より好ましくは30分~2時間である。目的のグラフト率に応じて、グラフト重合反応温度や反応時間等を適宜設定することができる。また、グラフト重合反応において、系中の酸素は少ない方がよく、脱気、窒素置換してから反応させることが好ましい。
【0055】
気相グラフト重合法の場合、基材を放射線照射によって活性化した後、モノマーの蒸気に直接接触させる。グラフト重合反応温度(接触温度)は、上記モノマーの反応性によって設定すればよく、好ましくは10~100℃であり、より好ましくは30~60℃である。また、グラフト重合反応時間は好ましくは5分~6時間であり、より好ましくは30分~2時間である。目的のグラフト率に応じて、グラフト重合反応温度や反応時間等を適宜設定することができる。また、グラフト重合反応において、系中の酸素は少ない方がよく、脱気してから反応させることが好ましい。
【0056】
工程(iii)において、グラフト重合体にイオン性基を導入するために用いる化合物は、上記で説明したイオン性基を有する化合物であれば、特に限定されるものではない。具体的には、N-メチル-D-グルカミン、D-グルカミン、D-ガラクタミン、D-マンノサミン、D-アラビチルアミン等のアミノ糖類、リン酸、ポリリン酸及びメタリン酸から選択される1種以上の化合物が好ましく、より好ましくはN-メチル-D-グルカミンである。
【0057】
反応方法としては特に限定されないが、例えばグラフト重合体を、イオン性基を有する化合物と接触させることにより反応させることができる。接触の方法は無溶媒もしくは溶媒に溶解させて接触させることもできる。
【0058】
溶媒としては前記イオン性基を有する化合物が溶解する溶媒であれば、特に限定されず、好ましくは、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、1-ブタノール、オクタノール、及び2-エチルヘキサノール等のアルコール溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエタン、及びヘキサクロロエタン等のハロゲン系溶媒、メチルエチルケトン、及びフェニルメチルケトン等のケトン系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられ、より好ましくは水、もしくは、メタノール、エタノール、1-プロパノール、及び1-ブタノール等のアルコール溶媒である。
【0059】
前記イオン性基を有する化合物を反応させる温度としては、特に限定されないが、好ましくは10~100℃である。温度の下限値としては、より好ましくは20℃以上であり、さらに好ましくは40℃以上である。温度の上限値としては、より好ましくは90℃以下であり、さらに好ましくは80℃以下である。
【0060】
反応時間としては、特に限定されないが、好ましくは1~48時間である。反応時間の下限値としては、より好ましくは1時間以上であり、さらに好ましくは4時間以上である。反応時間の上限値としては、より好ましくは36時間以下であり、さらに好ましくは24時間以下である。
【0061】
目的とするイオン性基の導入率に応じて、反応温度や反応時間を適宜設定することができる。
【0062】
工程(ii-b)において、イオン性基を有するモノマーとしては、特に限定されないが、好ましくはグラフト重合性反応基を有し、前記アミノポリオール基及びリン酸基が結合した構造のモノマーである。具体的には、N-アクリロイルトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、モノ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)ホスフェート等が挙げられる。また、グラフト重合の反応方法としては、上記工程(ii-a)と同様の条件で反応させることができる。
【0063】
工程(iv-a)において、モノマーを基材に塗布する方法としては、特に限定されないが、例えば前記モノマー溶液に基材を浸漬する方法、前記モノマー溶液のミストを基材に噴霧する方法、前記モノマー溶液を気体状態として基材に供給する方法等が挙げられる。また、モノマー溶液の組成等は、工程(ii-a)と同様の条件で調製することができる。目的のグラフト率に応じて、モノマーの塗布量等を適宜設定することができる。
【0064】
工程(v)における、放射線照射方法としては、工程(i)等と同様の条件で放射線照射させることができる。
【0065】
工程(iv-b)において、イオン性基を有するモノマーを基材に塗布する方法としては、特に限定されないが、工程(iv-a)と同様の方法で塗布することができる。
【0066】
前記核酸吸着材は、基材が多孔質膜の形態を有する場合、ろ過膜として使用し、ろ液中の核酸を吸着することができる。例えば、カラム内に多孔質膜をろ過膜として設置し、核酸(DNAやRNA)を含む液をカラムに投入し、多孔質膜を通過させることで、多孔質膜にて核酸を吸着することができる。核酸を含む液は、特に限定されず、細胞粉砕液でもよい。また、核酸を吸着した核酸吸着材から、核酸を回収してもよい。
【実施例0067】
以下実施例を用いて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定さ
れるものではない。
【0068】
実施例及び比較例で用いた測定・評価方法は、下記のとおりである。
【0069】
(グラフト率)
グラフト率は、グラフト重合前後の基材質量より、下記数式1により算出した。
[数式1]
グラフト率(%)=100×(B-A)/A
但し、数式1中、Aはグラフト重合前の基材の質量、Bはグラフト重合後のグラフト重合体の質量を表す。
例えば、グラフト率200%はグラフト重合に供した基材の質量の2倍量のグラフト鎖が導入されていることを示す。
【0070】
(イオン性基の導入率)
イオン性基の導入率とは、グラフト重合体に導入されたモノマーのモル数に対する、イオン性基含有化合物の反応モル数の割合によって、算出される値であり、下記数式2より算出した。
[数式2]
イオン性基の導入率(%)={D×[(C-A)/(B-A)]-D}/E×100
但し、数式2中、Aはグラフト重合前の基材の質量、Bはグラフト重合後のグラフト重合体の質量、Cはイオン性基導入後のグラフト重合体の質量(核酸吸着材の質量)、Dはグラフト重合に用いるモノマーの分子量(例えば、GMAを用いた場合の分子量は142.15g/molである。)、Eはイオン性基含有化合物の分子量(例えば、N-メチル-D-グルカミンを用いた場合の分子量は195.21g/molである。)を表す。
【0071】
(核酸吸着率)
(1)DNAの前処理
0.05μg/μLのDNA水溶液2000μL、300μLのタンパク質分解酵素、及び溶解試薬2500μLを、56℃で5分間以上撹拌した後、エタノール2500μLを加え、さらに15秒以上撹拌し、DNAの前処理液を得た。DNAとしてはナカライテスク社製のデオキシリボ核酸を用い、タンパク質分解酵素としては倉敷紡績株式会社製のEDBを用い、溶解試薬としては倉敷紡績株式会社製のLDBを用いた。
(2)DNAの前処理液をカラム内に投入し、QuickGeneにて圧力をかけ、多孔質膜を通過させることで、多孔質膜でDNAを捕捉した。次に、カラム内に膜洗浄液(倉敷紡績株式会社製「WDB」)を7500μL投入し、QuickGeneにて圧力をかけ、多孔質膜を通過させることで、多孔質膜内の不純物を除去した。該段階でカラムを通過した液は廃液容器に廃液として収集した。
(3)DNAの前処理液、及び廃液におけるDNA量をQubit(登録商標)アッセイキット(サーモフィッシャーサイエンティフィック ライフテクノロジーズジャパン製)を用いた蛍光分析で測定し、下記数式3にてDNAの吸着率を算出した。
[数式3]
DNA吸着率(%)=(T0-T1)/T0×100
但し、数式3中、T0はDNAの前処理液のDNA量を表し、T1は廃液のDNA量を表す。
【0072】
(実施例1)
(グラフト鎖導入工程)
セルロース多孔質膜(平均孔径5μm、厚さ100μm、平膜)を窒素雰囲気下で電子線照射(加速電圧250kV、照射線量10kGy)を行った。次に、電子線照射後のセルロース多孔質膜を、予め調液し窒素置換(窒素バブリング)したモノマー溶液に浸漬し、35℃に保持しながら、グラフト重合を1時間行った。使用したモノマー溶液は、溶液全体重量基準で、グリシジルメタクリレート(GMA)2質量%を含む純水溶液である。グラフト重合反応終了後には、水、メタノールの順で十分に洗浄した。
グラフト率を上述したとおりに測定したところ、GMAグラフト率は約100%であった。
(N-メチル-D-グルカミン基導入工程)
N-メチル-D-グルカミンを1,4-ジオキサン及び純水の混合溶媒(1,4-ジオキサン:純水の質量比8:1)に溶解し作製した濃度10質量%のN-メチル-D-グルカミン溶液中に上記で得られたGMAグラフト重合セルロース多孔質膜を浸漬し、80℃で4時間加熱してN-メチル-D-グルカミン基の導入を行った。基材を取り出し純水で洗浄、乾燥することにより、N-メチル-D-グルカミン型基材を得た。
イオン性基の導入率を上述したとおりに測定したところ、N-メチル-D-グルカミン基の導入率は約100%であった。
【0073】
(実施例2)
(グラフト鎖導入工程)
電子線照射の照射線量3kGyとした以外は、実施例1と同様にしてセルロース多孔質膜にグラフト鎖を導入した。GMAグラフト重合セルロース多孔質膜のグラフト率を上述したとおりに測定したところ、GMAグラフト率は約25%であった。
(N-メチル-D-グルカミン基導入工程)
実施例1と同様にして、N-メチル-D-グルカミン型基材を得た。イオン性基の導入率を上述したとおりに測定したところ、N-メチル-D-グルカミン基の導入率は約100%であった。
【0074】
(実施例3)
(グラフト鎖導入工程)
電子線照射の照射線量1.5kGyとした以外は、実施例1と同様にしてセルロース多孔質膜にグラフト鎖を導入した。GMAグラフト重合セルロース多孔質膜のグラフト率を上述したとおりに測定したところ、GMAグラフト率は約10%であった。
(N-メチル-D-グルカミン基導入工程)
実施例1と同様にして、N-メチル-D-グルカミン型基材を得た。イオン性基の導入率を上述したとおりに測定したところ、N-メチル-D-グルカミン基の導入率は約100%であった。
【0075】
(実施例4)
N-メチル-D-グルカミン基導入工程において、1,4-ジオキサン及び純水の混合溶媒の1,4-ジオキサンと純水の質量比を1対8に変更したこと、及び浸漬時間を45分とした以外は、実施例1と同様にして、N-メチル-D-グルカミン型基材を得た。イオン性基の導入率を上述したとおりに測定したところ、N-メチル-D-グルカミン基の導入率は約50%であった。
【0076】
(実施例5)
(グラフト鎖導入工程)
実施例2と同様にしてセルロース多孔質膜にグラフト鎖を導入し、GMAグラフト率が約25%のGMAグラフト重合セルロース多孔質膜を得た。
(ピラゾール基導入工程)
ピラゾールを純水に溶解し作製した濃度1mol/Lのピラゾール水溶液中に上記で得られたGMAグラフト重合セルロース多孔質膜を浸漬し、80℃で24時間加熱してピラゾール基の導入を行った。基材を取り出し純水で洗浄、乾燥することにより、ピラゾール型基材を得た。
イオン性基の導入率を上述したとおりに測定したところ、ピラゾール基の導入率は約100%であった。
【0077】
(実施例6)
(グラフト鎖導入工程)
ポリエチレン多孔質膜(平均孔径が5μm、厚さ1000μm、平膜)の片面に対して、電子線を窒素雰囲気下、加速電圧2MV、照射線量100kGyで照射した。次に、電子線照射後のポリエチレン多孔質膜を、予め調液し窒素置換(窒素バブリング)したモノマー溶液に浸漬し、40℃に保持しながら、グラフト重合を3時間行った。使用したモノマー溶液は、溶液全体重量基準で、グリシジルメタクリレート(GMA)5質量%、メタノール47.5質量%、及び純水47.5%を含む溶液である。GMAグラフト重合ポリエチレン多孔質膜のグラフト率を上述したとおりに測定したところ、GMAグラフト率は約60%であった。
(リン酸基導入工程)
濃度85質量%のリン酸溶液中に上記で得られたGMAグラフト重合ポリエチレン多孔質膜を浸漬し、80℃で24時間加熱してリン酸基の導入を行った。基材を取り出し純水で洗浄、乾燥することにより、リン酸型膜を得た。イオン性基の導入率を上述したとおりに測定したところ、リン酸基の導入率は40%であった。
【0078】
(比較例1)
セルロース多孔質膜(平均孔径5μm、厚さ100μm、平膜)を比較例1とした。
【0079】
(比較例2)
(グラフト鎖導入工程)
実施例2と同様にしてセルロース多孔質膜にグラフト鎖を導入し、GMAグラフト率が約25%のGMAグラフト重合基材を得た。
(エチレンジアミン基導入工程)
エチレンジアミンを2-プロパノールに溶解し作製した濃度70体積%のエチレンジアミン溶液中に上記で得られたGMAグラフト重合セルロース多孔質膜を浸漬し、60℃で24時間加熱してエチレンジアミン基の導入を行った。基材を取り出し純水で洗浄、乾燥することにより、エチレンジアミン基型基材を得た。イオン性基の導入率を上述したとおりに測定したところ、エチレンジアミン基の導入率は約100%であった。
【0080】
(比較例3)
(グラフト鎖導入工程)
実施例1と同様にしてセルロース多孔質膜にグラフト鎖を導入し、GMAグラフト率が約100%のGMAグラフト重合セルロース多孔質膜を得た。
(エチレンジアミン基導入工程)
比較例2と同様にして、エチレンジアミン基型基材を得た。イオン性基の導入率を上述したとおりに測定したところ、エチレンジアミン基の導入率は約85%であった。
【0081】
(比較例4)
ポリエチレン多孔質膜(平均孔径が5μm、厚さ1000μm、平膜)を比較例4とした。
【0082】
実施例及び比較例で得られたイオン基が化学結合している基材の核酸吸着率を上述したとおりに測定し、その結果を下記表1に示した。
【0083】
【0084】
上記表1の結果から分かるように、基材及びグラフト鎖からなるグラフト重合体のグラフト鎖にアミノポリオール基、リン酸基、及びピラゾール基からなる群から選ばれる一つ以上のイオン性基が化学結合している実施例の核酸吸着材は、核酸吸着率が50%を超えており、核酸吸着性能が高かった。
【0085】
一方、イオン性基を有しない比較例1、4、及びイオン性基としてエチレンジアミン基を有する比較例2~3の基材の場合、核酸吸着率が40%未満しかなく、核酸吸着性能が低かった。