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特開2024-39383基地局装置、制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039383
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】基地局装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 24/10 20090101AFI20240314BHJP
   H04W 48/16 20090101ALI20240314BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20240314BHJP
   H04W 88/08 20090101ALI20240314BHJP
【FI】
H04W24/10
H04W48/16 132
H04W16/28 130
H04W88/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143898
(22)【出願日】2022-09-09
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「革新的情報通信技術研究開発委託研究/Beyond 5Gに向けたテラヘルツ帯を活用した端末拡張型無線通信システム実現のための研究開発 研究開発項目 3 端末拡張型無線通信システム構築・制御技術 副題:Beyond 5Gに向けたテラヘルツ帯を活用するユーザセントリックアーキテクチャ実現に関する研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 優
(72)【発明者】
【氏名】新保 宏之
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA21
5K067DD11
5K067DD25
5K067DD44
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
(57)【要約】
【課題】複数の無線APを用いる基地局装置において、同期信号を用いずに、UEごとの参照信号受信電力(RSRP)を取得することを可能にする。
【解決手段】基地局装置10は、接続された複数の無線APを用いて1つ以上のUEと通信する通信部を備え、当該通信部は、無線端末ごとに、複数の無線APのうちで制御装置20(外部ノード)によって当該UEに対して選択された無線AP群(APクラスタ)を用いて、当該UEと通信する。基地局装置10は、UEごとに、当該UEから送信されて複数の無線APによって受信されたSRS信号に基づいて、当該UEと複数の無線APのそれぞれとの間の無線チャネルに対応するRSRPに関する情報を取得する。基地局装置10は、取得したUEごとのRSRPに関する情報を、制御装置20(外部ノード)へ通知する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線アクセスポイント(AP)と接続された基地局装置であって、
前記複数の無線APを用いて1つ以上の無線端末と通信する通信手段であって、無線端末ごとに、前記複数の無線APのうちで外部ノードによって前記無線端末に対して選択された無線AP群を用いて、前記無線端末と通信する、前記通信手段と、
無線端末ごとに、当該無線端末から送信されて前記複数の無線APによって受信されたサウンディングリファレンス(SRS)信号に基づいて、前記無線端末と前記複数の無線APのそれぞれとの間の無線チャネルに対応する参照信号受信電力(RSRP)に関する情報を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された無線端末ごとの前記参照信号受信電力に関する情報を、前記外部ノードへ通知する通知手段と、
を備えることを特徴とする基地局装置。
【請求項2】
前記取得手段は、無線端末ごとに、前記SRS信号に基づいて、前記無線端末と前記複数の無線APとの間のチャネル行列を推定し、得られた推定チャネル行列に基づいて前記参照信号受信電力に関する情報を取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項3】
前記取得手段は、前記推定チャネル行列に含まれる、対応する無線端末と前記複数の無線APのそれぞれとの間の無線チャネルの推定値に基づいて、各無線チャネルに対応する参照信号受信電力を計算する
ことを特徴とする請求項2に記載の基地局装置。
【請求項4】
前記推定チャネル行列は、前記参照信号受信電力に関する情報の取得に使用されるとともに、前記無線AP群を用いたMIMO送信のためのプリコーディングウェイトの生成に使用される
ことを特徴とする請求項2に記載の基地局装置。
【請求項5】
前記通信手段は、前記複数の無線AP間で同期信号が共有されるように、前記複数の無線APのうちのいずれかから同期信号を送信させ、当該同期信号は無線端末においてRSRPの測定に使用されない
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基地局装置。
【請求項6】
前記通知手段によって前記外部ノードへ通知される前記参照信号受信電力に関する情報は、前記外部ノードによる無線APの選択のために用いられる
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基地局装置。
【請求項7】
前記通信手段は、前記参照信号受信電力に関する情報に基づいて選択された無線AP群を示すAP群情報を前記外部ノードから受信し、前記AP群情報が示す前記無線AP群を用いて、対応する無線端末と通信する
ことを特徴とする請求項6に記載の基地局装置。
【請求項8】
前記外部ノードには、O-RAN(Open RAN)におけるNear-RT RIC(Near-Real Time RAN Intelligent Controller)が実装されており、
前記基地局装置には、O-RANにおけるO-DU(O-RAN Distributed Unit)又はO-CU(O-RAN Central Unit)が実装されており、
前記通知手段は、O-RANのE2インタフェースを介して前記参照信号受信電力に関する情報を前記外部ノードへ通知する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基地局装置。
【請求項9】
複数の無線アクセスポイント(AP)と接続された基地局装置の制御方法であって、
前記複数の無線APを用いて1つ以上の無線端末と通信する通信工程であって、無線端末ごとに、前記複数の無線APのうちで外部ノードによって前記無線端末に対して選択された無線AP群を用いて、前記無線端末と通信する、前記通信工程と、
無線端末ごとに、当該無線端末から送信されて前記複数の無線APによって受信されたサウンディングリファレンス(SRS)信号に基づいて、前記無線端末と前記複数の無線APのそれぞれとの間の無線チャネルに対応する参照信号受信電力(RSRP)に関する情報を取得する取得工程と、
前記取得工程において取得された無線端末ごとの前記参照信号受信電力に関する情報を、前記外部ノードへ通知する通知工程と、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項10】
基地局装置が備えるコンピュータに、請求項9に記載の制御方法の各工程を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の無線アクセスポイントと接続された基地局装置、制御方法、及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
第5世代移動通信システム(5G)の次世代のシステム(Beyond 5G)において、セル間の干渉を低減し、ユーザスループットの均一化を可能にするための通信方式として、Cell-free massive MIMO(CF-mMIMO)が検討されている(例えば、非特許文献1)。CF-mMIMOでは、分散配置された複数の無線アクセスポイント(AP:Access point)とユーザ端末(UE:User Equipment)との間で無線信号を送受信し、Central processing unit(CPU)が、複数の無線APが送受信する信号の一括処理を行う。これにより、無線AP間で連携して各UEに対して空間多重する無線信号の最適化を可能にする。
【0003】
非特許文献1では、CF-mMIMOにおいて、CPUにおける信号処理量を削減するため、データの送受信に使用する無線AP群をUEごとに選択するAPクラスタ化技術が提案されている。このAPクラスタ化技術では、各UEに対して、無線通信品質を維持するために必要となる最低限の無線APの組み合わせを選択し、選択された無線AP群をAPクラスタとして定義する。UEごとにAPクラスタについて信号処理を行うことで、CPUにおける信号処理量を削減しつつ、UEに対する無線通信品質を維持することが可能になる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】"Scalable Cell-Free Massive MIMO Systems", IEEE Transactions on Communications, vol. 68, no. 7, pp. 4247-4261, July 2020.
【非特許文献2】O-RAN.WG3.E2SM-KPM-v02.02
【非特許文献3】3GPP TS28.552, V17.7.1 (2022-06)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の技術において、UEごとのAPクラスタの制御は、複数の無線APのそれぞれから各UEが受信した参照信号の受信電力(参照信号受信電力(RSRP))に基づいて実行されうる。例えば、複数の無線APが参照信号として同期信号(SS)を送信する場合、各無線APに対応するRSRPをUEが取得できるように、各無線APがそれぞれ異なる同期信号を送信する必要がある。しかし、複数の無線APが密に配置された場合、同期信号間の干渉が大きくなり、RSRPの取得精度が低下する可能性がある。また、同期信号間の干渉を避けるために、直交する無線リソースを同期信号に割り当てる場合、多くの無線リソースの消費につながる。
【0006】
そこで、本発明は、複数の無線APを用いる基地局装置において、同期信号を用いずに、UEごとの参照信号受信電力(RSRP)を取得することを可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る基地局装置は、複数の無線アクセスポイント(AP)と接続された基地局装置であって、前記複数の無線APを用いて1つ以上の無線端末と通信する通信手段であって、無線端末ごとに、前記複数の無線APのうちで外部ノードによって前記無線端末に対して選択された無線AP群を用いて、前記無線端末と通信する、前記通信手段と、無線端末ごとに、当該無線端末から送信されて前記複数の無線APによって受信されたサウンディングリファレンス(SRS)信号に基づいて、前記無線端末と前記複数の無線APのそれぞれとの間の無線チャネルに対応する参照信号受信電力(RSRP)に関する情報を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された無線端末ごとの前記参照信号受信電力に関する情報を、前記外部ノードへ通知する通知手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の無線APを用いる基地局装置において、同期信号を用いずに、UEごとの参照信号受信電力(RSRP)を取得することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】無線アクセスネットワークの構成例を示すブロック図
図2】各UE用のAPクラスタの設定例を示す図
図3】基地局装置のハードウェア構成例を示すブロック図
図4】基地局装置の機能構成例を示すブロック図
図5】各UEのRSRP情報を取得する処理の手順を示すシーケンス図(比較例)
図6】各UEのRSRP情報を取得する処理の手順を示すシーケンス図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
<無線アクセスネットワークの構成>
図1は、本開示の一実施形態に係る無線アクセスネットワーク(RAN)の構成例を示す。図1に示すRANは、複数の無線アクセスポイント(AP)と接続された基地局装置10と、制御装置20とを含む。本実施形態のRANは、一例として、O-RAN(Open RAN)仕様が適用されたRANであり、制御装置20には、O-RANにおけるNear-RT RIC(Near-Real Time RAN Intelligent Controller)が実装されうる。また、基地局装置10には、O-RANにおけるO-DU(O-RAN Distributed Unit)又はO-CU(O-RAN Central Unit)が実装されうる。基地局装置10と制御装置20とは、O-RANにおけるE2インタフェースを介して通信を行いうる(非特許文献2)。基地局装置10は、基地局装置10は、コアネットワーク(CN)にも接続されている。なお、各無線APは、1つ以上のアンテナを備える。
【0012】
基地局装置10は、分散配置された複数の無線AP(本例では、6個のAP#1~#6)と接続されており、当該複数の無線APを用いて、Cell-free massive MIMO(CF-mMIMO)によるMIMO通信を実行可能である。基地局装置10は、当該複数の無線APを用いて、無線端末であるユーザ端末(UE)(本例では、UE#1,#2)との通信を行う。具体的には、基地局装置10は、ユーザ端末(UE)ごとに、当該UEに対して設定されたAPクラスタを構成する無線AP群を用いて当該UEとの通信を行う。基地局装置10は、UEとの通信においてAPクラスタを構成する無線AP群が送受信する無線信号に関する信号処理を一括して行う。基地局装置10は、APクラスタに関する信号処理として、SU-MIMO(Single User MIMO)又はMU-MIMO(Multi-User MIMO)等の信号処理を行いうる。
【0013】
本実施形態において、各UE用のAPクラスタの設定(選択)は、制御装置20によって行われる。図2に示すように、基地局装置10は、UEごとに、複数の無線APに対応するRSRPに関する情報(RSRP情報)を収集(取得)し、収集したRSRP情報を制御装置20へ通知する。RSRP情報の通知は、E2インタフェースを介して行われる。
【0014】
制御装置20は、通知されたRSRP情報に基づいて、複数の無線AP(AP#1~#6)のうち、当該RSRP情報に対応するUEに対して無線AP群を選択し、選択した無線AP群を、当該UE用のAPクラスタとして設定する。制御装置20は、例えば、複数の無線AP(AP#1~#6)のうち、最大RSRPに対応する無線APと、当該最大RSRPからの差が所定の閾値以下のRSRPに対応する1つ以上の無線APとを、APクラスタとして選択してもよい。制御装置20は、設定したAPクラスタを示すAPクラスタ情報(AP群情報)を基地局装置10へ通知する。基地局装置10は、制御装置20から通知されたAPクラスタ情報が示す無線AP群を用いて、当該APクラスタ情報に対応するUEと通信する。
【0015】
図2の例では、UE#1用のAPクラスタ及びUE#2用のAPクラスタが、制御装置20によって設定されている。本例では、UE#1用のAPクラスタとして、4つの無線AP#1~#4から成るAPクラスタが設定されている。また、UE#2用のAPクラスタとして、3つの無線AP#3~#5から成るAPクラスタが設定されている。この場合、基地局装置10は、AP#1~#4を用いてUE#1との通信を行い、AP#3~#5を用いてUE#2との通信を行う。
【0016】
基地局装置10から制御装置20(Near-RT RIC)へのRSRP情報の通知は、E2インタフェースを介して行われる。O-RANのE2インタフェースは、3GPP TS28.552(非特許文献3)で規定されているPerformance Measurements情報の通知に使用される。3GPP TS28.552には、RSRP情報として、同期信号(SS)の受信強度(RSRP)の測定値SS-RSRPが規定されている。このため、(後述する図5に示す比較例のように)E2インタフェースを介して、SS-RSRPに関するRSRP情報を基地局装置10から制御装置20へ通知することが想定されうる。この場合、複数の無線APが参照信号として同期信号(SS)を送信し、各UEにおいて各無線APに対応するRSRP(SS-RSRP)を取得する。
【0017】
上記のように、UEにおいて各無線APに対応するRSRPを取得できるようにするためには、各無線APがそれぞれ異なる同期信号を送信する必要がある。しかし、複数の無線APが密に配置された場合、同期信号間の干渉が大きくなり、RSRPの取得精度が低下する可能性がある。また、同期信号間の干渉を避けるために、直交する無線リソースを同期信号に割り当てる場合、多くの無線リソースの消費につながる。
【0018】
そこで、以下で詳述するように、本実施形態の基地局装置10において、各UEから送信されるサウンディングリファレンス(SRS)信号に基づいてRSRPを取得することで、同期信号を用いずにUEごとのRSRPを取得することを可能にする。
【0019】
<基地局装置の構成>
図3は、本実施形態に係る基地局装置10のハードウェア構成例を示す。基地局装置10は、1つ以上のプロセッサ11、ROM12、RAM13、HDD等の記憶装置(ストレージ)14、及び通信デバイス15を備える。
【0020】
基地局装置10では、例えばROM12、RAM13及びストレージ14のいずれかに格納された、後述する基地局装置10の各機能を実現するプログラムが、CPU等のプロセッサ11によって実行される。なお、プロセッサ11は、ASIC(特定用途向け集積回路)、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)等の1つ以上のプロセッサによって置き換えられてもよい。通信デバイス15は、プロセッサ11による制御下で、外部装置(無線AP、及び制御装置20及びコアネットワーク上のネットワークノード等の外部ノード)との通信を行うための通信インタフェースである。基地局装置10は、それぞれ接続先が異なる複数の通信デバイス15を有していてもよい。
【0021】
図4は、本実施形態に係る基地局装置10の機能構成(ソフトウェア構成)例を示す。基地局装置10は、第1通信部401、第2通信部402、SRS取得部403、チャネル推定部404、RSRP計算部405、及びウェイト生成部406を有する。SRS取得部403、チャネル推定部404、及びRSRP計算部405は、RSRP取得部410を構成する。基地局装置10のこれらの機能ユニットは、例えばROM12、RAM13及びストレージ14のいずれかに格納されたプログラムをプロセッサ11が実行することによって、基地局装置10において実現される。
【0022】
第1通信部401は、通信デバイス15を制御して、分散配置された複数の無線AP(以下ではN個の無線AP#1~#Nとする。)を用いて1つ以上のUE(無線端末)との通信を行う。本実施形態では、第1通信部401は、UEごとに無線AP#1~#Nのうちで制御装置20(外部ノード)によって当該UEに対して選択された無線AP群(APクラスタ)を用いて、当該UEと通信する。第2通信部402は、通信デバイス15を制御して、制御装置20、及びコアネットワーク上のネットワークノード等の外部ノードとの通信を行う。
【0023】
SRS取得部403は、各UEから送信され、無線AP#1~#Nによって受信されたSRS信号を取得する。例えば、SRS取得部403は、無線AP#1~#Nによって受信された受信SRS信号をベースバンド信号に変換して得られた信号の、同相成分を示すI信号及び直交成分を示すQ信号を、各無線APから受信(取得)する。
【0024】
チャネル推定部404は、SRS取得部403によって取得された受信SRS信号に基づいて、チャネル推定を行う。チャネル推定部404は、受信SRS信号に基づいて、当該信号の送信元のUE(対象UE#k)と無線AP#1~#Nのそれぞれとの間の無線チャネルの推定を行うことで、各無線チャネルの推定値を要素に含む推定チャネル行列を生成する。
【0025】
RSRP計算部405は、チャネル推定部404によって生成された推定チャネル行列に基づいて、RSRP情報を取得する。具体的には、RSRP計算部405は、推定チャネル行列に含まれる、対象UE#kと無線AP#1~#Nのそれぞれ(無線AP#m)との間の無線チャネルの推定値に基づいて、各無線チャネルに対応するRSRPを計算することで、RSRPに関する情報(RSRP情報)を取得する。推定チャネル行列に含まれる、UE#kとAP#mとの間の無線チャネルの推定値(チャネル係数)をhk,mとした場合、UE#kに対する無線AP#mのRSRPは、例えば、RSRPk,m[dB]=20log|hk,m| と求められる。また、RSRPの統計情報として、以下のような値が用いられてもよい。
‐指定された時間窓におけるRSRPの平均値
‐指定された時間窓におけるRSRPの中央値
‐指定された時間窓と区分けにおける分布
【0026】
上述のRSRP情報の取得処理では、無線AP#1~#Nのそれぞれ(無線AP#m)におけるRSRP(即ち、アップリンクのRSRP)が求められる。本実施形態では、時分割複信(TDD)が適用された場合を想定している。この場合、アップリンクの無線チャネルとダウンリンクの無線チャネルとの間の相反性を利用して、アップリンクにおけるチャネル推定値を、ダウンリンクのチャネル推定値として使用し、各UE#kにおけるRSRPk,m(m=1,2,...,N)を取得している。なお、RSRP計算部405は、SRS取得部403によって取得された、各無線AP#mによる受信SRS信号に基づいて受信電力を計算することで、RSRPk,mを計算してもよい。
【0027】
ウェイト生成部406は、チャネル推定部404によって生成された推定チャネル行列に基づいて、対象UE#k用のAPクラスタを用いたMIMO送信のためのプリコーディングウェイトを生成する。第1通信部401は、ウェイト生成部406によって生成されたプリコーディングウェイトを示すウェイト情報を無線AP#1~#Nに提供することで、APクラスタを用いて、対応するUE#kに対するダウンリンクデータ送信(MIMO送信)を実行する。
【0028】
<比較例>
図5は、基地局装置10と接続されたN個の無線AP#1~#Nから送信される同期信号(SS)に基づいて、各UEのRSRP情報を取得する処理の例を示すシーケンス図であり、本実施形態に対する比較例を示している。
【0029】
本比較例において、基地局装置10は、接続されたN個の無線AP#1~#Nのカバレッジエリア内の1つ以上のUEとの通信において、無線AP#1~#Nのうち、制御装置20によってUEごとに選択された無線AP群(APクラスタ)を用いる。制御装置20は、基地局装置10から提供される、UEごとのRSRP情報に基づいて、当該UEに対して使用する無線AP群を選択し、当該無線AP群から成るAPクラスタを示すAPクラスタ情報を基地局装置10に送信する。基地局装置10は、制御装置20から受信したAPクラスタ情報が示すAPクラスタを用いて各UEとの通信を行う。
【0030】
例えば、基地局装置10は、UEとのダウンリンク通信を以下のように実行する。まず、無線AP#1~#Nは、S501で、UEから送信されるSRS信号を受信し、S502で、受信SRS信号を基地局装置10へ送信する。
【0031】
基地局装置10は、受信SRS信号を無線AP#1~#Nから受信すると、S503で、受信SRS信号に基づいてチャネル推定を行う。具体的には、基地局装置10は、受信SRS信号に基づいて、対応するUEと無線AP#1~#Nのそれぞれとの間の無線チャネルの推定を行うことで、各無線チャネルの推定値を要素に含む推定チャネル行列を生成する。更にS504で、基地局装置10は、推定チャネル行列に基づいて、対応するUEに対して選択された無線AP群から成るAPクラスタを用いたMIMO送信のためのプリコーディングウェイトを生成する。基地局装置10は、S505で、生成したプリコーディングウェイトを示すウェイト情報を無線AP#1~#Nに提供することで、APクラスタを用いて、対応するUEに対するダウンリンクデータ送信(MIMO送信)を実行する(S506)。
【0032】
本比較例では、UEごとのRSRP情報の取得は、無線AP#1~#Nから送信される同期信号(SS)に基づいて実行される。具体的には、S511で、無線AP#1~#Nは、それぞれSSを送信する。このSSは、UEにおいて同期処理に加えてRSRPの取得にも用いられる。UEによる、無線AP#1~#Nのそれぞれとの間のRSRPの取得を行うことを可能にするために、無線AP#1~#Nからそれぞれ送信されるSSは直交している必要がある。
【0033】
UEは、無線AP#1~#Nのそれぞれから送信されたSSを受信すると(S511)、受信したSSからRSRPを取得する。本比較例では、UEは、SSに基づくチャネル推定として、無線AP#1~#NのそれぞれからのSSの受信電力であるRSRPを測定(計算)する。即ち、UEは、UEと無線AP#1~#Nのそれぞれとの間の無線チャネルに対応するRSRPを取得する。
【0034】
S512及びS513で、UEは、SSに基づいて取得したRSRP(SS-RSRP)を示すチャネル状態情報(CSI)報告を、例えば無線AP#1を介して基地局装置10へ送信する。基地局装置10は、UEからCSI報告(SS-RSRP)を受信すると、S514で、当該CSI報告(SS-RSRP)を制御装置20へ送信する。
【0035】
制御装置20は、基地局装置10から受信したCSI報告が示すRSRPに基づいて、S515で、対応するUEに対して無線AP群を選択することで、当該無線AP群から成るAPクラスタを設定する。その後S516で、制御装置20は、設定したAPクラスタを示すAPクラスタ情報を基地局装置10へ送信する。
【0036】
基地局装置10は、制御装置20からAPクラスタ情報を受信すると、S517で、対応するUEに対して設定されたAPクラスタを更新する。基地局装置10は、その後、更新済みのAPクラスタを用いて、対応するUEとの通信(ダウンリンクのデータ送信及びアップリンクのデータ受信)を行う。
【0037】
<処理シーケンスの例>
図6は、本実施形態に係る、各UEのRSRP情報を取得する処理の例を示すシーケンス図である。上述の比較例(図5)と異なる点は、同期信号(SS)を用いずに、各UEから送信されるSRS信号に基づいて、UEごとのRSRPを取得している点である。
【0038】
無線AP#1~#Nは、S601で、UEから送信されるSRS信号を受信し、S602で、受信SRS信号を基地局装置10へ送信する。無線AP#1~#Nは、例えば、受信SRS信号をベースバンド信号に変換し、当該ベースバンド信号の、同相成分を示すI信号及び直交成分を示すQ信号を、基地局装置10へ送信してもよい。
【0039】
基地局装置10は、受信SRS信号を無線AP#1~#Nから受信すると、S603で、受信SRS信号に基づいてチャネル推定を行う。具体的には、基地局装置10は、受信SRS信号に基づいて、SRS信号の送信元のUE(対象UE)と無線AP#1~#Nのそれぞれとの間の無線チャネルの推定を行うことで、各無線チャネルの推定値を要素に含む推定チャネル行列を生成する。更にS604で、基地局装置10は、推定チャネル行列に基づいて、対象UEに対して選択された無線AP群から成るAPクラスタを用いたMIMO送信のためのプリコーディングウェイトを生成する。基地局装置10は、S605で、生成したプリコーディングウェイトを示すウェイト情報を無線AP#1~#Nに提供することで、APクラスタを用いて、対象UEに対するダウンリンクデータ送信(MIMO送信)を実行する(S606)。
【0040】
その後S607で、基地局装置10は、S603におけるチャネル推定によって得られた推定チャネル行列に基づいて、SRS信号の送信元のUE(対象UE)のRSRP情報を、図4を用いて上述した処理により取得する。基地局装置10は、S608で、SRS信号に基づいて取得したRSRP情報(SRS-RSRP)を、E2インタフェースを介して制御装置20へ送信する。
【0041】
制御装置20は、基地局装置10から受信したRSRP情報が示すRSRPに基づいて、S609で、対象UEに対して無線AP群を選択することで、当該無線AP群から成るAPクラスタを設定する。その後S610で、制御装置20は、設定したAPクラスタを示すAPクラスタ情報を基地局装置10へ送信する。
【0042】
基地局装置10は、制御装置20からAPクラスタ情報を受信すると、S611で、対応するUEに対して設定されたAPクラスタを更新する。基地局装置10は、その後、更新済みのAPクラスタを用いて、対応するUEとの通信(ダウンリンクのデータ送信及びアップリンクのデータ受信)を行う。
【0043】
なお、基地局装置10は、例えば所定の時間間隔で、無線AP#1~#Nのうちのいずれかから同期信号(SS)を送信させる(S621)。このように、無線AP#1~#NのうちのいずれかからSSを送信させることで、無線AP#1~#N間で同期信号が共有されるようにする。本実施形態では、このSSを、UEにおいてRSRPの測定に使用せずに、同期処理に用いる。
【0044】
本実施形態によれば、RSRP情報(SRS-RSRP)を、基地局装置10から制御装置20(Near-RT RIC)へE2インタフェースを介して通知できる。このようなSRS-RSRPの通知に関して、5G Performance Measurements情報による通知として、例えば、3GPP TS28.552の第5.1.22節に以下のような記述(第5.1.22.4)を追加可能である。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の基地局装置10は、接続された複数の無線APを用いて1つ以上のUEと通信する通信部を備え、当該通信部は、無線端末ごとに、複数の無線APのうちで制御装置20(外部ノード)によって当該UEに対して選択された無線AP群(APクラスタ)を用いて、当該UEと通信する。基地局装置10は、UEごとに、当該UEから送信されて複数の無線APによって受信されたSRS信号に基づいて、当該UEと複数の無線APのそれぞれとの間の無線チャネルに対応するRSRPに関する情報(RSRP情報)を取得する。基地局装置10は、取得したUEごとのRSRP情報を、制御装置20(外部ノード)へ通知する。このように、本実施形態によれば、複数の無線APを用いる基地局装置10において、同期信号(SS)を用いずに、UEごとのRSRPを取得することが可能にあり、当該RSRPに関するRSRP情報を制御装置20(外部ノード)へ通知することが可能になる。
【0046】
[その他の実施形態]
上述の実施形態に係る遠隔操作装置は、コンピュータを遠隔操作装置として機能させるためのコンピュータプログラムにより実現することができる。当該コンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されて配布が可能なもの、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。
【0047】
本明細書の開示は、以下の基地局装置、制御方法及びプログラムを含む。
(項目1)
複数の無線アクセスポイント(AP)と接続された基地局装置であって、
前記複数の無線APを用いて1つ以上の無線端末と通信する通信手段であって、無線端末ごとに、前記複数の無線APのうちで外部ノードによって前記無線端末に対して選択された無線AP群を用いて、前記無線端末と通信する、前記通信手段と、
無線端末ごとに、当該無線端末から送信されて前記複数の無線APによって受信されたサウンディングリファレンス(SRS)信号に基づいて、前記無線端末と前記複数の無線APのそれぞれとの間の無線チャネルに対応する参照信号受信電力(RSRP)に関する情報を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された無線端末ごとの前記参照信号受信電力に関する情報を、前記外部ノードへ通知する通知手段と、
を備えることを特徴とする基地局装置。
(項目2)
前記取得手段は、無線端末ごとに、前記SRS信号に基づいて、前記無線端末と前記複数の無線APとの間のチャネル行列を推定し、得られた推定チャネル行列に基づいて前記参照信号受信電力に関する情報を取得する
ことを特徴とする項目1に記載の基地局装置。
(項目3)
前記取得手段は、前記推定チャネル行列に含まれる、対応する無線端末と前記複数の無線APのそれぞれとの間の無線チャネルの推定値に基づいて、各無線チャネルに対応する参照信号受信電力を計算する
ことを特徴とする項目2に記載の基地局装置。
(項目4)
前記推定チャネル行列は、前記参照信号受信電力に関する情報の取得に使用されるとともに、前記無線AP群を用いたMIMO送信のためのプリコーディングウェイトの生成に使用される
ことを特徴とする項目2又は3に記載の基地局装置。
(項目5)
前記通信手段は、前記複数の無線AP間で同期信号が共有されるように、前記複数の無線APのうちのいずれかから同期信号を送信させ、当該同期信号は無線端末においてRSRPの測定に使用されない
ことを特徴とする項目1乃至4のいずれか1項目に記載の基地局装置。
(項目6)
前記通知手段によって前記外部ノードへ通知される前記参照信号受信電力に関する情報は、前記外部ノードによる無線APの選択のために用いられる
ことを特徴とする項目1乃至5のいずれか1項目に記載の基地局装置。
(項目7)
前記通信手段は、前記参照信号受信電力に関する情報に基づいて選択された無線AP群を示すAP群情報を前記外部ノードから受信し、前記AP群情報が示す前記無線AP群を用いて、対応する無線端末と通信する
ことを特徴とする項目6に記載の基地局装置。
(項目8)
前記外部ノードには、O-RAN(Open RAN)におけるNear-RT RIC(Near-Real Time RAN Intelligent Controller)が実装されており、
前記基地局装置には、O-RANにおけるO-DU(O-RAN Distributed Unit)又はO-CU(O-RAN Central Unit)が実装されており、
前記通知手段は、O-RANのE2インタフェースを介して前記参照信号受信電力に関する情報を前記外部ノードへ通知する
ことを特徴とする項目1乃至7のいずれか1項目に記載の基地局装置。
(項目9)
複数の無線アクセスポイント(AP)と接続された基地局装置の制御方法であって、
前記複数の無線APを用いて1つ以上の無線端末と通信する通信工程であって、無線端末ごとに、前記複数の無線APのうちで外部ノードによって前記無線端末に対して選択された無線AP群を用いて、前記無線端末と通信する、前記通信工程と、
無線端末ごとに、当該無線端末から送信されて前記複数の無線APによって受信されたサウンディングリファレンス(SRS)信号に基づいて、前記無線端末と前記複数の無線APのそれぞれとの間の無線チャネルに対応する参照信号受信電力(RSRP)に関する情報を取得する取得工程と、
前記取得工程において取得された無線端末ごとの前記参照信号受信電力に関する情報を、前記外部ノードへ通知する通知工程と、
を含むことを特徴とする制御方法。
(項目10)
基地局装置が備えるコンピュータに、項目9に記載の制御方法の各工程を実行させるためのプログラム。
【0048】
なお、本発明により、例えば、複数の無線APを用いる基地局装置におけるCF-mMIMO通信を制御する外部ノードへのRSRP情報の通知が可能になることから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献することが可能となる。
【0049】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
10:基地局装置(O-CU/DU)、20:制御装置(Near-RT RIC)、11:プロセッサ、401:第1通信部、402:第2通信部、410:RSRP取得部
図1
図2
図3
図4
図5
図6