(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039389
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】コイル部品及びコイル部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20240314BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20240314BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20240314BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
H01F27/29 H
H01F27/29 Q
H01F17/04 N
H01F27/28 128
H01F41/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143908
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】占部 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】松浦 利典
(72)【発明者】
【氏名】加藤 一
(72)【発明者】
【氏名】小池 信太朗
(72)【発明者】
【氏名】遠田 一重
(72)【発明者】
【氏名】風間 拓人
(72)【発明者】
【氏名】後藤 真史
【テーマコード(参考)】
5E043
5E062
5E070
【Fターム(参考)】
5E043AB01
5E062FF02
5E062FG11
5E070AA01
5E070AB01
5E070DA11
5E070DB02
(57)【要約】
【課題】端子部自体の強度及び端子部と基板との接合強度の双方を十分に確保できるコイル部品及びコイル部品の製造方法を提供する。
【解決手段】コイル部品1は、巻線2によって構成されたコイルCと、コイルCを覆うように設けられた外装体4と、巻線2に連続する端子部5と、を含んで構成されている。端子部5の基端部分11は、外装体4内に埋没している。基端部分11より先の先端部分12は、基端部分11から屈曲し、外装体4の実装面Mに沿って当該実装面Mよりも外側に位置している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線によって構成されたコイルと、
前記コイルを覆うように設けられた外装体と、
前記巻線に連続する端子部と、を含み、
前記端子部の基端部分は、前記外装体内に埋没し、
前記基端部分より先の先端部分は、前記基端部分から屈曲し、前記外装体の表面に沿って当該表面よりも外側に位置しているコイル部品。
【請求項2】
前記端子部は、前記巻線の直径よりも小さい厚さで扁平な形状をなし、
前記基端部分は、前記先端部分に向かって徐々に幅広となる裾広がり形状をなしている請求項1記載のコイル部品。
【請求項3】
前記先端部分は、前記コイルの中心軸の延在方向に前記コイルよりも突出している請求項1又は2記載のコイル部品。
【請求項4】
前記巻線は、前記端子部との接続部分を有し、
前記接続部分は、前記コイルの中心軸に向かって内向きに屈曲している請求項1又は2記載のコイル部品。
【請求項5】
巻線によってコイル及び前記巻線に連続する端子部を形成する巻線加工工程と、
前記コイルを覆い且つ前記端子部の基端部分が埋没するように外装体を形成する外装体形成工程と、
前記基端部分より先の先端部分が前記外装体の表面に沿って当該表面よりも外側に位置するように、前記先端部分を前記基端部分から屈曲させる屈曲工程と、を備えるコイル部品の製造方法。
【請求項6】
前記巻線加工工程と前記外装体形成工程との間に、前記巻線の直径よりも小さい厚さで扁平な形状となり、且つ前記基端部分が前記先端部分に向かって徐々に幅広となる裾広がり形状をなすように前記端子部を形成する端子部形成工程を備える請求項5記載のコイル部品の製造方法。
【請求項7】
前記屈曲工程において、前記コイルの中心軸の延在方向に前記先端部分を前記コイルよりも突出させる請求項5又は6記載のコイル部品の製造方法。
【請求項8】
前記巻線加工工程において、前記巻線における前記端子部との接続部分を前記コイルの中心軸に向かって内向きに屈曲させる請求項5又は6記載のコイル部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コイル部品及びコイル部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコイル部品として、例えば特許文献1に記載のものがある。巻き線により構成されたコイルと、巻線が巻回されたコアと、コイル及びコアの略全体を覆う外装体と、巻線に接続された端子部とを備えている。巻線は、外装体の表面のうち、コイルの中心軸と交差しない面に引き出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなコイル部品では、基板への実装にあたって、巻線に接続された端子部がハンダ等で基板の電極パッドなどに接合される。しかしながら、外装体でコイルを封止する際、外装体を構成する部材(例えば樹脂)が端子部の実装面に回り込むと、端子部の実装面積が減少し、端子部と基板との接合強度が不足してしまうおそれがある。また、端子部の剥がれや破損の抑制の観点から、端子部自体の強度の十分な確保も要求されている。
【0005】
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、端子部自体の強度及び端子部と基板との接合強度の双方を十分に確保できるコイル部品及びコイル部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係るコイル部品は、巻線によって構成されたコイルと、コイルを覆うように設けられた外装体と、巻線に連続する端子部と、を含み、端子部の基端部分は、外装体内に埋没し、基端部分より先の先端部分は、基端部分から屈曲し、外装体の表面に沿って当該表面よりも外側に位置している。
【0007】
このコイル部品では、端子部において、基端部分よりも先の先端部分が基端部分から屈曲し、外装体の表面に沿って当該表面よりも外側に位置している。端子部は、コイルを覆う外装体を形成した後に、端子部の先端部分を基端部分から屈曲させることによって形成できる。したがって、外装体でコイルを封止する際、外装体を構成する部材(例えば樹脂)が端子部の実装面に回り込むことを回避できる。当該部材の実装面への回り込みを回避することで、端子部の実装面積が十分なものとなり、端子部と基板との接合強度を十分に確保できる。また、このコイル部品では、端子部の基端部分が外装体内に埋没している。したがって、端子部自体の強度も十分に確保でき、端子部の剥がれや破損を抑制できる。
【0008】
端子部は、巻線の直径よりも小さい厚さで扁平な形状をなし、基端部分は、先端部分に向かって徐々に幅広となる裾広がり形状をなしていてもよい。このような端子部によれば、外装体の表面より外側に位置する先端部分において、端子部の実装面積を一層十分に確保できる。また、裾広がり形状に幅が変化する基端部分が外装体内に埋没することで、端子部自体の強度も一層十分に確保できる。
【0009】
先端部分は、コイルの中心軸の延在方向にコイルよりも突出していてもよい。これにより、端子部の実装面積が一層十分なものとなり、端子部と基板との接合強度の更なる向上が図られる。
【0010】
巻線は、端子部との接続部分を有し、接続部分は、コイルの中心軸に向かって内向きに屈曲していてもよい。この場合、外装体からの端子部のはみ出しを抑制でき、コイル部品の小型化が可能となる。また、コイル部品の実装の際に端子部に付加される押圧力を軽減できる。このことは、実装後のコイル部品の信頼性の向上に資する。
【0011】
本開示の一側面に係るコイル部品の製造方法は、巻線によってコイル及び巻線に連続する端子部を形成する巻線加工工程と、コイルを覆い且つ端子部の基端部分が埋没するように外装体を形成する外装体形成工程と、基端部分より先の先端部分が外装体の表面に沿って当該表面よりも外側に位置するように、先端部分を基端部分から屈曲させる屈曲工程と、を備える。
【0012】
このコイル部品の製造方法では、コイルを覆う外装体を形成した後に、端子部の先端部分を基端部分から屈曲させることによって、外装体の表面に沿って先端部分を当該表面よりも外側に位置させる。したがって、外装体でコイルを封止する際、外装体を構成する部材(例えば樹脂)が端子部の実装面に回り込むことを回避できる。当該部材の実装面への回り込みを回避することで、端子部の実装面積が十分なものとなり、端子部と基板との接合強度を十分に確保できる。また、このコイル部品の製造方法では、端子部の基端部分を外装体内に埋没させる。したがって、端子部自体の強度も十分に確保でき、端子部の剥がれや破損を抑制できる。
【0013】
巻線加工工程と外装体形成工程との間に、巻線の直径よりも小さい厚さで扁平な形状となり、且つ基端部分が先端部分に向かって徐々に幅広となる裾広がり形状をなすように端子部を形成する端子部形成工程を備えていてもよい。このような端子部によれば、外装体の表面より外側に位置する先端部分において、端子部の実装面積を一層十分に確保できる。また、裾広がり形状に幅が変化する基端部分が外装体内に埋没することで、端子部自体の強度も一層十分に確保できる。
【0014】
屈曲工程において、コイルの中心軸の延在方向に先端部分をコイルよりも突出させてもよい。これにより、端子部の実装面積が一層十分なものとなり、端子部と基板との接合強度の更なる向上が図られる。
【0015】
巻線加工工程において、巻線における端子部との接続部分をコイルの中心軸に向かって内向きに屈曲させてもよい。この場合、外装体からの端子部のはみ出しを抑制でき、コイル部品の小型化が可能となる。また、コイル部品の実装の際に端子部に付加される押圧力を軽減できる。このことは、実装後のコイル部品の信頼性の向上に資する。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、端子部自体の強度及び端子部と基板との接合強度の双方を十分に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本開示の一実施形態に係るコイル部品の概略的な斜視図である。
【
図2】
図1に示すコイル部品を端子部側から見た概略的な斜視図である。
【
図3】
図1に示すコイル部品をコイルの中心軸方向から見た概略的な正面図である。
【
図7】
図1に示したコイル部品の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図8の後続の工程を示す概略的な斜視図である。
【
図10】端子部形成工程を示す概略的な斜視図である。
【
図11】外装体形成工程を示す概略的な斜視図である。
【
図13】端子部の変形例を示す概略的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係るコイル部品及びコイル部品の製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本開示の一実施形態に係るコイル部品の概略的な斜視図である。
図2は、
図1に示すコイル部品を端子部側から見た概略的な斜視図である。
図3は、
図1に示すコイル部品をコイルの中心軸方向から見た概略的な正面図である。
図1~
図3に示すように、コイル部品1は、巻線2によって構成されたコイルCと、コイルCの内側領域S(
図3参照)に挿通されたコア3と、コア3及びコイルCを覆うように設けられた外装体4と、巻線2に連続する一対の端子部5,5とを含んで構成されている。
【0020】
コイルCは、巻線2を螺旋状に巻き回すことによって構成されている。コイルCは、コア3の外側に巻き回されている。以下の説明では、コイルCの中心軸Aに沿う方向をX軸方向、X軸に直交する一の方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向に直交する方向をZ軸方向とする。巻線2は、導電性を有する材料によって構成された導線部分を有している。導線部分の構成材料としては、例えば銅、銀、ニッケル、クロムなどの金属材料が挙げられる。導線部分は、電気絶縁性を有する材料によって構成された被覆部分によって覆われていてもよい。被覆部分の構成材料としては、例えばポリウレタンが挙げられる。
【0021】
コイルCは、複数のターンを有している。複数のターンは、X軸方向に並んでいる。コイルCの内側領域Sは、これらの複数のターンによって画成されている。内側領域Sの形状は、
図3に示すように、X軸方向から見た場合に、例えば角部が丸みを帯びた略長方形状をなしている。内側領域Sの形状は、円形状、楕円形状、長円形状などの他の形状であってもよい。
【0022】
コア3は、例えば略直方体形状をなしている。コア3は、コイルCのターン数に応じてX軸方向に沿って延びている。コア3は、角部及び稜線部が面取りされた形状、或いは角部及び稜線部が丸みを帯びた形状であってもよい。コア3におけるX軸方向の端部には、コイルCにおけるX軸方向の移動を規制する鍔部が設けられていてもよい。コア3は、例えば樹脂、フェライト、アルミナなどの材料によって構成されている。コア3の形状は、円柱形状などの他の形状であってもよい。
【0023】
外装体4は、略直方体形状をなしている。コア3は、角部及び稜線部が面取りされた形状、或いは角部及び稜線部が丸みを帯びた形状であってもよい。外装体4は、6つの面を有している。ここでは、X軸方向の一対の面を端面4A,4Aと称し、Y軸方向の一対の面を側面4B,4Bと称する。また、Z軸方向の一対の面を主面4C,4Cと称する。主面4C,4Cのうちの一方は、コイル部品1を不図示の基板に実装する際の実装面Mとなっている。実装面Mには、巻線2に連続する一対の端子部5,5が引き出されている。端子部5,5をハンダ等によって基板の電極パッドに接合することにより、コイル部品1が基板に対して実装される。
【0024】
外装体4は、例えば樹脂によって構成されている。外装体4を構成する樹脂材料としては、例えば液晶ポリマー、ポリイミド樹脂、結晶性ポリスチレン、エポキシ樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。ポリイミド樹脂は、ビスマレイミド樹脂であってもよい。フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂であってもよい。樹脂材料には、コイル部品1の特性を高めるためのフィラー、不純物などが含まれていてもよい。
【0025】
続いて、端子部5の構成について説明する。
【0026】
図4は、端子部の構成を示す斜視図である。
図5は、端子部近傍の要部拡大斜視図であり、
図6は、端子部近傍の要部拡大断面図である。
図4~
図6では、一方の端子部5及びその近傍を図示しているが、他方の端子部5及びその近傍も同様の構造を有している。
図4に示すように、端子部5は、例えば巻線2の端部をプレス加工等によって成形することにより、巻線2の直径Rよりも小さい厚さTで扁平な形状(板状)をなしている。
【0027】
本実施形態では、端子部5は、
図4に示すように、基端部分11と、基端部分11よりも先の先端部分12とを有している。基端部分11は、先端部分12に向かって徐々に幅広となる裾広がり形状をなしている。先端部分12は、基端部分11に連続し、ほぼ一定の幅Wで基端部分11よりも長く伸びている。本実施形態では、先端部分12の幅Wは、裾広がり形状である基端部分11の最大幅と等しくなっている。
【0028】
本実施形態では、後述のように、基端部分11と先端部分12との境界部分Fにおいて端子部5が屈曲しており、基端部分11及び先端部分12は、屈曲部分を基準に便宜的に定められている。実際の端子部5では、先端部分12の幅Wが必ずしも一定でない場合もある。この場合、例えば端子部5の全体の長さに対する長さの比に基づいて基端部分11と先端部分12の境界部分Fを定めてもよく、裾広がり形状をなす部分の幅の拡がり度合い(端子部5の幅方向の中心軸に対する縁部の傾き)に基づいて基端部分11と先端部分12の境界部分Fを定めてもよい。
【0029】
基端部分11は、
図5及び
図6に示すように、外装体4内に埋没している。本実施形態では、基端部分11は、巻線2から連続し、実装面Mに向かってZ軸方向に延びている。基端部分11と先端部分12との境界部分Fは、実装面Mに露出している。先端部分12は、境界部分Fにおいて基端部分11からX軸方向に屈曲し、外装体4の表面(ここでは実装面M)に沿って実装面Mよりも外側に位置している。先端部分12は、コイル部品1をZ軸方向から見た場合に、コイルCと重なる領域に位置し、X軸方向に延在している(
図2及び
図6参照)。先端部分12は、例えば
図6に示すように、接着剤層13によって実装面Mに接合されていてもよい。
【0030】
先端部分12は、コイルCの中心軸Aの延在方向(X軸方向)にコイルCよりも突出している。ここでは、先端部分12は、実装面MにおけるX軸方向の縁まで延び、先端部分12におけるX軸方向の縁が実装面MにおけるX軸方向の縁と一致している。先端部分12は、実装面MにおけるX軸方向の縁を超えて突出していてもよい。先端部分12は、必ずしも実装面におけるX軸方向の縁まで延びていなくてもよく、先端部分12におけるX軸方向の縁が実装面MにおけるX軸方向の縁よりも内側に位置していてもよい。
【0031】
巻線2は、端子部5との接続部分21を有している。本実施形態では、接続部分21は、巻線2自体によって端子部5と一体に構成されている。接続部分21は、コイルCの中心軸Aに向かって内向きに屈曲している。具体的には、本実施形態では、接続部分21は、
図3及び
図5に示すように、コイルCに連続し、コア3に向かってY軸方向に延びる第1の部分21Aと、第1の部分21Aの先端からZ軸方向に屈曲する第2の部分21Bと、第2の部分21Bの先端から端子部5の基端部分11に向かってZ軸方向に延び、基端部分11に連続する第3の部分21Cとを有している。
【0032】
第1の部分21A、第2の部分21B、及び第3の部分21Cは、いずれも外装体4内に位置している。本実施形態では、
図3に示すように、コイルCの中心軸の延在方向(X軸方向)から見た場合に、第1の部分21Aは、コア3の配置を阻害しない程度に、コイルCの内側領域Sに僅かに張り出している。同様に、コイルCの中心軸の延在方向(X軸方向)から見た場合に、第2の部分21Bは、コア3の配置を阻害しない程度に、コイルCの内側領域Sに僅かに張り出ししている。
【0033】
第1の部分21A及び第2の部分21BがコイルCの内側領域Sに張り出すことにより、第3の部分21Cは、コイルCの中心軸の延在方向(X軸方向)から見た場合に、コイルCよりもY軸方向に内側に位置している。これにより、接続部分21に連続する基端部分11は、コイルCよりもY軸方向に内側に位置し、基端部分11より先の先端部分12は、Z軸方向から見た場合に、外装体4と重なる領域に位置した状態となっている。
【0034】
続いて、上述したコイル部品1の製造方法について説明する。
【0035】
図7は、
図1に示したコイル部品の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図7に示すように、コイル部品1の製造方法は、巻線加工工程(ステップS01)と、端子部形成工程(ステップS02)と、外装体形成工程(ステップS03)と、屈曲工程(ステップS04)とを備えている。
【0036】
巻線加工工程では、
図8に示すように、まず、巻線2を用意し、コア3の外側に巻線2を螺旋状に巻き回すことによってコイルCを形成する。コイルCの両端には、後に接続部分21及び端子部5となる余剰部分31を設けておく。なお、予めコイルC及び余剰部分31を形成し、コイルCの内側領域Sにコア3を挿通させてもよい。
【0037】
次に、
図9に示すように、余剰部分31,31の基端側、すなわち、コイルCと端子部5との接続部分21となる部分をコイルCの中心軸Aに向かって内向きに屈曲させる。ここでは、第1の部分21A、第2の部分21B、及び第3の部分21Cを形成し、コイルCの内側領域Sに僅かに張り出すように接続部分21を形成する。接続部分21よりも先の余剰部分31については、Z軸方向に延在させ、後に端子部5となる部分を残して先端側を切断する。
【0038】
端子部形成工程では、
図10に示すように、余剰部分31を用いて端子部5を形成する。端子部5の形成にあたっては、余剰部分31をプレス加工等によって成形する。これにより、端子部5において、巻線2の直径Rよりも小さい厚さTで扁平な形状をなす先端部分12と、先端部分12に向かって徐々に幅広となる裾広がり形状をなす基端部分11とが同時に形成される。
【0039】
外装体形成工程では、
図11に示すように、コア3及びコイルCを覆うように外装体4を形成する。外装体4の形成にあたっては、例えばコア3及びコイルCを金型内に配置し、外装体4を構成する樹脂材料を金型内に流し込む。ここでは、コイルCを覆い且つ端子部5の基端部分11が埋没するように外装体4を形成する。端子部5の先端部分12は、外装体4には埋没させず、実装面Mの外側に突出させておく。樹脂材料の冷却後、外装体4で覆われたコア3及びコイルCを金型から取り出す。
【0040】
屈曲工程では、
図12に示すように、端子部5の先端部分12を基端部分11から屈曲させる。ここでは、実装面Mの外側に突出する先端部分12を外装体4の実装面Mに向かって屈曲させ、外装体4の実装面Mに沿って実装面よりも外側に位置させる。屈曲工程の実施は、外装体形成工程の実施の後であるため、先端部分12の一部が外装体4に埋没することはなく、先端部分12の全体が実装面Mよりも外側に露出した状態となる。
【0041】
屈曲工程では、コイルCの中心軸Aの延在方向に先端部分12をコイルCよりも突出させる。コイルCに対する先端部分12の突出量は、例えば巻線加工工程における余剰部分31の切断位置の調整、或いは端子部形成工程における余剰部分のプレス条件によって調整することができる。屈曲工程の後、必要に応じて先端部分12と実装面Mとを接着剤層13によって接合し、上述したコイル部品1が完成する。
【0042】
以上説明したように、コイル部品1では、端子部5において、基端部分11よりも先の先端部分12が基端部分11から屈曲し、外装体4の実装面Mに沿って当該実装面Mよりも外側に位置している。端子部5は、コイルCを覆う外装体4を形成した後に、端子部5の先端部分12を基端部分11から屈曲させることによって形成できる。したがって、外装体4でコイルCを封止する際、外装体4を構成する部材(例えば樹脂)が端子部5の実装面Mに回り込むことを回避できる。当該部材の実装面Mへの回り込みを回避することで、端子部5の実装面積が十分なものとなり、端子部5と基板との接合強度を十分に確保できる。また、コイル部品1では、端子部5の基端部分11が外装体4内に埋没している。したがって、端子部5自体の強度も十分に確保でき、端子部5の剥がれや破損を抑制できる。
【0043】
本実施形態では、端子部5は、巻線2の直径Rよりも小さい厚さTで扁平な形状をなし、基端部分11は、先端部分12に向かって徐々に幅広となる裾広がり形状をなしている。このような端子部5によれば、外装体4の実装面Mより外側に位置する先端部分12において、端子部5の実装面積を一層十分に確保できる。また、裾広がり形状に幅が変化する基端部分11が外装体4内に埋没することで、端子部5自体の強度も一層十分に確保できる。
【0044】
本実施形態では、先端部分12は、コイルCの中心軸Aの延在方向にコイルCよりも突出している。これにより、端子部5の実装面積が一層十分なものとなり、端子部5と基板との接合強度の更なる向上が図られる。
【0045】
本実施形態では、巻線2は、端子部5との接続部分21を有している。接続部分21は、コイルCの中心軸Aに向かって内向きに屈曲している。このような接続部分21の形成により、外装体4からの端子部5のはみ出しを抑制でき、コイル部品1の小型化が可能となる。また、コイル部品1の実装の際に端子部5に付加される押圧力を軽減できる。このことは、実装後のコイル部品1の信頼性の向上に資する。
【0046】
本開示は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上記実施形態では、基端部分11がZ軸方向に延びている(Z軸方向に位置している)が、基端部分11がZ軸方向に対して傾斜していてもよい。また、上記実施形態では、端子部5において、裾広がり形状をなす部分を基端部分11とすると共に、一定の幅をなす部分を先端部分12とし、基端部分11と先端部分12との境界部分Fで端子部5を屈曲させているが、端子部5の屈曲位置はこれに限られない。例えば裾広がり形状をなす部分を屈曲させてもよく、一定の幅をなす部分を屈曲させてもよい。
【0047】
先端部分12は、必ずしも接着剤層13によって実装面Mに接合されていなくてもよい。この場合、先端部分12は、接着剤層13を介在させずに実装面Mに接していてもよく、実装面Mから僅かに離間した状態となっていてもよい。
図13に示すように、先端部分12は、実装面MにおけるY軸方向の縁まで延びていてもよい。先端部分12は、実装面MにおけるY軸方向の縁を超えて突出していてもよい。
【0048】
上記実施形態では、実装面Mの外側において先端部分12がX軸方向に延在しているが、先端部分12の延在方向は、Y軸方向であってもよい。この場合、先端部分12は、実装面MにおけるY軸方向の縁まで延びていてもよく、実装面MにおけるY軸方向の縁を超えて突出していてもよい。先端部分12は、必ずしも実装面MにおけるY軸方向の縁まで延びていなくてもよく、先端部分12におけるY軸方向の縁が実装面MにおけるY軸方向の縁よりも内側に位置していてもよい。
【0049】
上記実施形態では、コイルCの内側領域Sにコア3が挿通されているが、コア3は必ずしも配置されていなくてもよい。また、上記実施形態では、第1の部分21A、第2の部分21B、及び第3の部分21Cによって接続部分21がコイルCの中心軸Aに向かって内向きに屈曲しているが、接続部分21は、必ずしもこのような内向きの屈曲を有していなくてもよい。すなわち、接続部分21は、コイルCにおいてZ軸方向に延在する部分から連続してZ軸方向に直線状に延びていてもよい。
【0050】
本開示の要旨は、以下の[1]~[8]のとおりである。
[1]巻線によって構成されたコイルと、前記コイルを覆うように設けられた外装体と、前記巻線に連続する端子部と、を含み、前記端子部の基端部分は、前記外装体内に埋没し、前記基端部分より先の先端部分は、前記基端部分から屈曲し、前記外装体の表面に沿って当該表面よりも外側に位置しているコイル部品。
[2]前記端子部は、前記巻線の直径よりも小さい厚さで扁平な形状をなし、前記基端部分は、前記先端部分に向かって徐々に幅広となる裾広がり形状をなしている[1]記載のコイル部品。
[3]前記先端部分は、前記コイルの中心軸の延在方向に前記コイルよりも突出している[1]又は[2]記載のコイル部品。
[4]前記巻線は、前記端子部との接続部分を有し、前記接続部分は、前記コイルの中心軸に向かって内向きに屈曲している[1]~[3]のいずれか記載のコイル部品。
[5]巻線によってコイル及び前記巻線に連続する端子部を形成する巻線加工工程と、前記コイルを覆い且つ前記端子部の基端部分が埋没するように外装体を形成する外装体形成工程と、前記基端部分より先の先端部分が前記外装体の表面に沿って当該表面よりも外側に位置するように、前記先端部分を前記基端部分から屈曲させる屈曲工程と、を備えるコイル部品の製造方法。
[6]前記巻線加工工程と前記外装体形成工程との間に、前記巻線の直径よりも小さい厚さで扁平な形状となり、且つ前記基端部分が前記先端部分に向かって徐々に幅広となる裾広がり形状をなすように前記端子部を形成する端子部形成工程を備える[5]記載のコイル部品の製造方法。
[7]前記屈曲工程において、前記コイルの中心軸の延在方向に前記先端部分を前記コイルよりも突出させる[5]又は[6]記載のコイル部品の製造方法。
[8]前記巻線加工工程において、前記巻線における前記端子部との接続部分を前記コイルの中心軸に向かって内向きに屈曲させる[5]~[7]のいずれか記載のコイル部品の製造方法。
【符号の説明】
【0051】
1…コイル部品、2…巻線、4…外装体、4C…主面(表面)、5…端子部、11…基端部分、12…先端部分、21…接続部分、A…中心軸、C…コイル、M…実装面(表面)。