(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039391
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】浮き上がり検出装置、乗客コンベアシステム、および浮き上がり検出方法
(51)【国際特許分類】
B66B 29/02 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
B66B29/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143911
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 隆行
(72)【発明者】
【氏名】森下 真年
【テーマコード(参考)】
3F321
【Fターム(参考)】
3F321EA15
3F321EB07
3F321EC09
3F321HA04
(57)【要約】
【課題】現場環境に左右されることなく各ステップを識別可能な浮き上がり検出装置を提供する。
【解決手段】循環移動する無端状に連結された複数のステップを有する乗客コンベアにおいて、ステップの踏板の浮き上がりを検出する浮き上がり検出装置であって、ステップの踏板に接触する接触部材と、接触部材の変位を検出する変位センサと、ステップ間の隙間を検出する測距センサと、を設けるようにした。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環移動する無端状に連結された複数のステップを有する乗客コンベアにおいて、前記ステップの踏板の浮き上がりを検出する浮き上がり検出装置であって、
前記ステップの踏板に接触する接触部材と、
前記接触部材の変位を検出する変位センサと、
前記ステップ間の隙間を検出する測距センサと、
を備える浮き上がり検出装置。
【請求項2】
前記測距センサは、前記乗客コンベアの乗場のコームプレートに設けられているくし板と前記接触部材との間で前記ステップ間の隙間を検出するように設けられる、
請求項1に記載の浮き上がり検出装置。
【請求項3】
前記測距センサにより検出された前記測距センサからの距離を示す距離データを入力し、入力した距離データが所定の値以上を示すデータを特定し、特定したデータをもとに前記ステップの踏板を識別するデータ処理部を備える、
請求項2に記載の浮き上がり検出装置。
【請求項4】
前記データ処理部は、前記変位センサにより検出された前記ステップの踏板の変位を示す変位データと、前記測距センサにより検出された前記測距センサからの距離を示す距離データとを入力し、前記変位データの変位点と前記距離データのピークとのデータ位置を合わせ、前記ステップの踏板ごとの前記変位データをもとに前記ステップの踏板の浮き上がり量を算出する、
請求項3に記載の浮き上がり検出装置。
【請求項5】
前記測距センサの設置位置および前記測距センサの設置角度の少なくとも1つを調整可能な調整機構を備える、
請求項2に記載の浮き上がり検出装置。
【請求項6】
循環移動する無端状に連結された複数のステップを有する乗客コンベアと、前記ステップの踏板の浮き上がりを検出する浮き上がり検出装置と、を備える乗客コンベアシステムであって、
前記ステップの踏板に接触する接触部材と、
前記接触部材の変位を検出する変位センサと、
前記ステップ間の隙間を検出する測距センサと、
を備える乗客コンベアシステム。
【請求項7】
循環移動する無端状に連結された複数のステップを有する乗客コンベアにおいて、前記ステップの踏板の浮き上がりを検出する浮き上がり検出方法であって、
変位センサが、前記ステップの踏板に接触する接触部材の変位を検出することと、
測距センサが、前記ステップ間の隙間を検出することと、
を含む浮き上がり検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、乗客コンベアのステップの踏板の浮き上がり量の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレーターは、建築構造物に設置されるフレームと、このフレーム内に設けられて循環移動する無端状に連結された複数のステップとを備えている。複数のステップには、無端状のチェーンが連結されており、チェーンが回転駆動することで、複数のステップが循環移動する。ステップは、外的要因や設置環境により、人が乗る部分である踏板部分が浮き上がることがある。外的要因とは、踏板の波板部分に小石が挟まること、取扱い不良により踏板の波板部分が変形し、そこに人が乗ることにより繰り返し応力がかかること等である。設置環境とは、例えば、屋外等の現場において踏板部分に雨がかかり、錆が発生する環境のことである。
【0003】
従来、ステップの踏板の浮き上がりを検査する方法としては、ステップの踏板に浮き上がりを検出する検出棒を接触させてその変位量を計測するとともに、カメラにより撮像した画像データより、踏板と踏板に設けられているデマケーションとの明るさの変化からステップ1枚ごとの浮き上がり量を算出する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、踏板と踏板に設けられているデマケーションとの明るさの変化から各ステップを検出している。しかしながら、照度が著しく明るい環境、照度が著しく暗い環境、デマケーションがないステップが設けられている環境といった現場環境によっては、ステップ1枚ごとを検出することができない。
【0006】
本発明は、以上の点を考慮してなされたもので、現場環境に左右されることなく各ステップを識別可能な浮き上がり検出装置等を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため本発明においては、循環移動する無端状に連結された複数のステップを有する乗客コンベアにおいて、前記ステップの踏板の浮き上がりを検出する浮き上がり検出装置であって、前記ステップの踏板に接触する接触部材と、前記接触部材の変位を検出する変位センサと、前記ステップ間の隙間を検出する測距センサと、を設けるようにした。
【0008】
上記構成によれば、測距センサが用いられてステップ間の隙間が検出されるので、例えば、現場環境に左右されることなく各ステップを識別することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、利便性の高い浮き上がり検出装置等を実現することができる。上記以外の課題、構成、および効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施の形態によるエスカレーターに係る構成の一例を示す図である。
【
図2】第1の実施の形態によるステップに係る構成の一例を示す図である。
【
図3】第1の実施の形態による浮き上がり検出装置に係る構成の一例を示す図である。
【
図4】第1の実施の形態による踏板の変位量を検出する検出機構の一例を示す図である。
【
図5】第1の実施の形態による浮き上がり検出装置のシステム構成の一例を示す図である。
【
図6】第1の実施の形態による浮き上がり検出装置の設置状態の一例を示す図である。
【
図7】第1の実施の形態による浮き上がり検出装置の設置状態の一例を示す図である。
【
図8】第1の実施の形態による信号データの一例を示す図である。
【
図9】第1の実施の形態による浮き上がり検出方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(I)第1の実施の形態
以下、本発明の一実施の形態を詳述する。ただし、本発明は、実施の形態に限定されるものではない。
【0012】
本実施の形態は、乗客コンベアに設けられたステップごとに、ステップの踏板の浮き上がり量を算出するための技術に関するものである。なお、乗客コンベアは、エスカレーター、オートライン等である。
【0013】
本実施の形態の浮き上がり検出装置は、ステップ間の隙間を検出するための測距センサを備える。測距センサは、ステップ間の隙間を検出する手段の一例である。測距センサは、光学式センサ、超音波センサ等である。光学式センサは、例えば、LiDAR(Light Detection And Ranging)センサであり、より具体的にはToF(Time Of Flight)センサでよい。なお、測距センサは、ミリ波センサ、Radar(Radio Detecting and Ranging)等であってもよい。浮き上がり検出装置は、測距センサにより取得された測距データを用いて各ステップを識別(検出)する。
【0014】
より具体的には、浮き上がり検出装置は、循環移動する無端状に連結された複数のステップを有する乗客コンベアにおいて、ステップの踏板に接触(接地)する接触部材の上下の動きを検出する変位センサと、ステップの踏板までの距離を検出可能な測距センサと、を備える。
【0015】
測距センサは、レーザー光、電波、超音波等をステップの踏板に照射するよう下向きに浮き上がり検出装置の本体に設置されている。また、測距センサは、現地での乗客コンベアの設置時に、コームプレートに設けられているくし板と浮き上がり検出装置の接触部材との間でステップ間の隙間を検出するように設置されている。
【0016】
浮き上がり検出装置は、測距センサにより検出された距離に基づいてステップの区切りを検出し、変位センサにより検出された変位量に基づいてステップごとの踏板の浮き上がり量を算出する。上記構成によれば、現場環境に左右されることなくステップを1枚ごとに識別し、ステップの踏板の浮き上がり量を算出することができる。
【0017】
本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」等の表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数または順序を限定するものではない。また、構成要素の識別のための番号は、文脈毎に用いられ、1つの文脈で用いた番号が、他の文脈で必ずしも同一の構成を示すとは限らない。また、ある番号で識別された構成要素が、他の番号で識別された構成要素の機能を兼ねることを妨げるものではない。
【0018】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は、単数でも複数でも構わない。
【0019】
図1において、100は、全体として第1の実施の形態によるエスカレーターを示す。
【0020】
エスカレーター100は、建築構造物に設置された枠体101と、制御盤102と、欄干103と、ステップ104と、ハンドレール105と、駆動機構106と、を備えている。
【0021】
駆動機構106は、電動機107および減速機108を含んで構成されている。電動機107には、制御盤102から電力が供給される。電動機107は、制御盤102によりその動作が制御される。電動機107の駆動プーリには、図示しないベルト部材が巻き掛けられている。当該ベルト部材は、減速機108の従動プーリに巻き掛けられている。これにより、電動機107の回転力は、当該ベルト部材を介して減速機108に伝達される。
【0022】
また、減速機108の伝達スプロケットには、伝達チェーン109が巻き掛けられている。伝達チェーン109は、駆動スプロケット110に巻き掛けられている。駆動機構106の駆動力が伝達チェーン109を介して駆動スプロケット110に伝達され、駆動スプロケット110が回転する。
【0023】
駆動スプロケット110と従動スプロケット111とには、ステップチェーン112が巻き掛けられている。駆動スプロケット110が回転することで、従動スプロケット111およびステップチェーン112が回転する。
【0024】
また、枠体101には、図示しないガイド部材が設けられており、複数のステップ104は、当該ガイド部材に移動可能に支持される。複数のステップ104は、ステップチェーン112を介して無端状に連結されている。複数のステップ104は、枠体101に取り付けられた当該ガイド部材に案内されて往路側と復路側とを循環移動する。乗客は、往路側を移動するステップ104に乗って搬送される。
【0025】
次に、浮き上がり検出方法にて踏板202の浮き上がり量を算出するステップ104について、
図2を用いて説明する。
【0026】
ステップ104には、フレーム本体201と、踏板202と、デマケーション203とが設けられている。踏板202は、人が乗る部分であり、波板状の形状を有し、フレーム本体201に複数箇所溶接にて固定されている。デマケーション203は、ステップ境界の乗り込みを防止する注意喚起する部分であり、踏板202の四辺に設けられている。
【0027】
なお、デマケーション203については、現場仕様(動く歩道等)によっては、色が黄色であったり、色が黒色であったり、デマケーション203自体が設けられていななかったりするエスカレーター100が存在する。
【0028】
次に、ステップ104の踏板202ごとに浮き上がり量を算出するために使用される浮き上がり検出装置300について、
図3を用いて説明する。
【0029】
浮き上がり検出装置300は、検出棒301と、測距センサ302と、本体カバー303とを含んで設けられている。検出棒301は、ステップ104の踏板202の浮き上がり状態に合わせてステップ104の踏板202を追従し、上下に変位する。測距センサ302は、ステップ104間(ステップ104同士)の隙間を検出する。
【0030】
本体カバー303内には、後述の変位センサ510、後述のカメラ520、測距センサ302等の制御を行っている後述の制御部560等が設けられている。検出棒301と本体カバー303とが本体304に固定される形で構成されている。なお、本体304は、エスカレーター100の仕様に応じて準備され、エスカレーター100に適した本体304が用いられてもよい。付言するならば、本体304は、測距センサ302の設置位置および測距センサ302の設置角度の少なくとも1つを調整可能な調整機構であってもよい。また、変位センサ510は、ステップ104の踏板202の浮き上がり量を検出するための手段の一例である。カメラ520は、計測時の状態(検出棒301の動き、装置設置状態等)を捉える手段の一例である。
【0031】
次に、浮き上がり検出装置300がステップ104の踏板202の変位量を検出する検出機構について、
図4を用いて説明する。
【0032】
検出棒301は、本体304に固定されている可動アーム401の先端に固定されている。検出棒301は、本体304の軸402を中心とし、ステップ104の踏板202の状態にあわせて上下に変位する機構となっている。ここで、可動アーム401には、センサ受光板403が設けられている。センサ受光板403は、検出棒301と同じく上下に変位する。ステップ104の踏板202の変位量を検出するための手段である後述の変位センサ510から出力されたレーザー410をセンサ受光板403に当てることで、ステップ104の踏板202の変位量を検出する機構となっている。
【0033】
次に、浮き上がり検出装置300のシステム構成について、
図5を用いて説明する。
【0034】
浮き上がり検出装置300は、ステップ104間の隙間を捉える測距センサ302と、検出棒301を捉える変位センサ510と、計測時の状態(検出棒301の動き、装置設置状態等)を捉えるカメラ520と、信号データ処理部530と、A/D変換部540と、電源部550と、制御部560とを備える。浮き上がり検出装置300は、変位センサ510、カメラ520、および測距センサ302の各々において検出された信号を信号データ処理部530にてアンプおよびフィルタ処理を行い、A/D変換部540にてA/D変換を行い、変換された信号データを制御部560に出力し、制御部560にてPC等の情報処理装置570に信号データを送信し、情報処理装置570にてステップ104の踏板202の浮き上がり量を算出する。なお、電源部550は、浮き上がり検出装置300に電源を供給する。
【0035】
より具体的には、制御部560は、演算処理部561と、データ保管部562と、外部通信部563とを備える。演算処理部561は、CPU等のプロセッサであり、演算処理を行う。データ保管部562は、SDカード等の記憶装置であり、各種のセンサより取得された信号データ、計測プログラム等を格納する。外部通信部563は、WiFi等により、情報処理装置570と接続し、データの送受信を行う。
【0036】
付言するならば、浮き上がり検出装置300の機能は、例えば、プロセッサが補助記憶装置に格納されたプログラムを主記憶装置に読み出して実行すること(ソフトウェア)により実現されてもよいし、専用の回路等のハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとが組み合わされて実現されてもよい。なお、浮き上がり検出装置300の1つの機能は、複数の機能に分けられていてもよいし、複数の機能は、1つの機能にまとめられていてもよい。また、浮き上がり検出装置300の機能の一部は、別の機能として設けられてもよいし、他の機能に含められていてもよい。また、浮き上がり検出装置300は、情報処理装置570または情報処理装置570の機能(例えば、浮き上がり量の算出に係る機能)を含んで実現されてもよい。
【0037】
次に、浮き上がり検出装置300のエスカレーター100への設置状態について、
図6および
図7を用いて説明する。
【0038】
エスカレーターシステム600は、エスカレーター100と浮き上がり検出装置300と情報処理装置570とを含んで構成される。
【0039】
エスカレーターシステム600では、例えば、上部乗り場のコームプレート601に、浮き上がり検出装置300の本体304が固定部材にて固定される。固定部材は、磁石、両面テープ等である。この際、検出棒301がステップ104の踏板202に接触するように浮き上がり検出装置300が設置される。
【0040】
なお、測距センサ302には、どの現場でも、検出棒301とコームプレート601に設けられているくし板602との間に設置可能とする調整機構(例えば、本体304)が設けられている。調整機構によれば、検出棒301とコームプレート601に設けられているくし板602との間に測距センサ302が配置されるように浮き上がり検出装置300が設置される。これにより、測距センサ302は、ステップ104間の隙間を検出することが可能になる。
【0041】
作業者は、この状態で、エスカレーター100を運転させて、浮き上がり検出装置300は、ステップ104の踏板202の変位量を検出する。
【0042】
次に、浮き上がり検出装置300にて取得(計測)される各種の信号より、ステップ104を1枚ごとに区切る手段について、
図8を用いて説明する。
【0043】
図8は、変位センサ510および測距センサ302の信号データ800の一例(グラフ)を示している。上側に変位センサ510による信号データ810(踏板202の浮き上がり量)、下側に測距センサ302の信号データ820(距離)を示している。
【0044】
作業者がエスカレーター100を運転すると、第1のステップ104が移動していき、次の第2のステップ104が移動してくると、第1のステップ104と第2のステップ104との間に隙間が現れる。このため、測距センサ302の信号データ820では、ステップ104の踏板202が計測されている間は一定値の信号データ821となっていたのが、ステップ104間の隙間が現れると、ステップ隙間区間802のように信号データ820が落ち込む(距離が遠くなる)形となる。
【0045】
この一連の流れが、ステップ104が移動するたびに繰り返されることになるため、エスカレーターシステム600は、測距センサ302の信号データ820よりステップ隙間区間802を検出し、その信号データ820をもとにして変位センサ510による信号データ810を処理し、踏板区間801を検出し、そこからステップ104の踏板202の浮き上がり量(例えば、全体のうねり)を算出する。
【0046】
次に、浮き上がり検出方法にて踏板202の浮き上がり量を算出する作業手順について、
図9を用いて説明する。
【0047】
始めに、作業者は、浮き上がり検出装置300をコームプレート601に固定部材にて固定する。この際、作業者は、検出棒301がステップ104の踏板202に接触するように浮き上がり検出装置300を設置する(S901)。
【0048】
作業者は、設置が完了した後、図示しない建屋電源または図示しないバッテリーに浮き上がり検出装置300を接続し、図示しない電源スイッチにより電源を入れる。その後、作業者は、浮き上がり検出装置300と情報処理装置570とを無線にて接続し、情報処理装置570を介して現地の仕様等の必要な情報を入力する(S902)。
【0049】
作業者は、必要な情報を入力し、準備が完了した場合、情報処理装置570を介して浮き上がり検出装置300に計測開始の指令を送り、その後、エスカレーター100を運転する(S903)。
【0050】
作業者は、エスカレーター100を少なくとも1周(最低1周)させた後、エスカレーター100を停止させ、情報処理装置570を介して浮き上がり検出装置300に計測終了の指令を送り、計測を終了する。計測の終了後、浮き上がり検出装置300から情報処理装置570にデータが伝送される(S904)。
【0051】
情報処理装置570は、測距センサ302にて計測された信号データ820より、ステップ隙間区間802を検出する。この際、ステップ104の隙間以外で信号データが変化する場合も考えられるため、情報処理装置570は、一定値の信号データ821に所定値(例えば、2倍)以上の変化があった信号データ820の区間をステップ隙間区間802と検出する(S905)。
【0052】
なお、ステップ104の寸法とエスカレーター100の速度は一定であることから、ステップ隙間区間802は、一定のデータ数となるため、ステップ隙間区間802に抜けがある区間についてはデータを補完する形としてもよい(S906~S909)。
【0053】
情報処理装置570は、ステップ隙間区間802に問題があるか否かを判定する(S906)。情報処理装置570は、ステップ隙間区間802に問題がないと判定した場合、問題がないことを示す情報を出力する(S907)。他方、情報処理装置570は、ステップ隙間区間802に問題があると判定した場合、問題があることを示す情報を出力し(S908)、ステップ隙間区間802を補完する(S909)。例えば、情報処理装置570は、エスカレーター100の速度とステップ104の踏板202の奥行とをもとに、ステップ隙間区間802を補完する。
【0054】
情報処理装置570は、踏板区間801をもとに変位センサ510の信号データ810からステップ104を1枚ごとに切り分け、そこから踏板202の浮き上がり量を算出する(S910)。
【0055】
この際、情報処理装置570は、変位センサ510の信号データ810と測距センサ302の信号データ820との位置合わせを行う。例えば、情報処理装置570は、ステップ104の定速運転の開始時に現れた信号データ820のピークと計測終了の直前に現れた信号データ820のピークとの少なくとも1つを特定する。情報処理装置570は、特定したピークが検出された時刻の前後の数個の信号データ810のうちから変位点(上向きから下向きに変わる点、換言するならば、上向きに突出している点)を特定し、特定した変位点とピークとのデータ位置を合わせる。
【0056】
なお、情報処理装置570は、ステップ104の走行速度と、変位センサ510と測距センサ302との距離と、変位センサ510の応答速度および測距センサ302の応答速度とに基づいてデータの位置合わせを事前に行っていてもよい。付言するならば、データの位置合わせは、作業者による情報処理装置570の操作を介して行われてもよい。
【0057】
情報処理装置570は、データ位置が合わされた信号データ810および信号データ820から、ステップ隙間区間802のデータのピーク、データの中央値等をもとに踏板区間801を検出する。情報処理装置570は、踏板区間801と変位量との対応関係からステップ104の1枚ごとの踏板202の浮き上がり量を算出する。
【0058】
情報処理装置570は、算出した結果に基づいて判定結果を表示する(S911~S914)。例えば、情報処理装置570は、浮き上がり量が規定値を超えるステップ104(異常)があるか否かを判定し、判定結果を生成する。
【0059】
情報処理装置570は、判定結果がOKであるか、NGであるかを判定する(S911)。情報処理装置570は、判定結果がOKであると判定した場合、問題がないことを示す情報を情報処理装置570に出力し、作業者は、判定結果に問題がなければ、確認不要であり、作業を終了する(S912)。
【0060】
情報処理装置570は、判定結果がNGであると判定した場合、問題があることを示す情報を出力する。判定結果に問題がある場合、作業者は、NGであると判定されたステップ104の踏板202の浮き上がり状況を確認し(S913)、必要に応じてステップ104を交換する(S914)。
【0061】
本実施の形態では、エスカレーター100について説明したが、空港等に設置されているオートライン(斜行含む)についてステップ104の踏板202の浮き上がり量の検査を行ってもよい。
【0062】
また、浮き上がり検出装置300は、コームプレート601に設置されているが、下部乗り場に設置されてもよい。
【0063】
また、ステップ104間の隙間を検出してステップ104を1枚ごとに区切る手段である測距センサ302に超音波センサを使用してもよい。超音波センサを使用する場合、測距センサ302に比べて外乱に影響されやすく、また、設置の角度によってはステップ104間の隙間を検出しにくくなってしまうため、設置箇所に注意が必要となる。ただし、超音波センサによれば、埃、蒸気、対象物の汚れ、対象物の色等の影響を受けることなく、ステップ104間の隙間を安定して検出することができる。
【0064】
また、測距センサ302は、本体カバー303の側面に設けられる構成に限らない。例えば、測距センサ302は、本体カバー303の底面に設けられていてもよい。
【0065】
(II)付記
上述の実施の形態には、例えば、以下のような内容が含まれる。
【0066】
上述の実施の形態においては、本発明をエスカレーターに適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この他種々のシステム、装置、方法、プログラムに広く適用することができる。
【0067】
また、上述の実施の形態において、プログラムの一部またはすべては、プログラムソースから、浮き上がり検出装置を実現するコンピュータのような装置にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、ネットワークで接続されたプログラム配布サーバまたはコンピュータが読み取り可能な記録媒体(例えば非一時的な記録媒体)であってもよい。また、上述の説明において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されてもよい。
【0068】
また、上述の実施の形態において、情報の出力は、ディスプレイへの表示に限るものではない。情報の出力は、スピーカによる音声出力であってもよいし、ファイルへの出力であってもよいし、印刷装置による紙媒体等への印刷であってもよいし、プロジェクタによるスクリーン等への投影であってもよいし、その他の態様であってもよい。
【0069】
また、上記の説明において、各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0070】
上述した実施の形態は、例えば、以下の特徴的な構成を有する。
【0071】
(1)
循環移動する無端状に連結された複数のステップ(例えば、ステップ104)を有する乗客コンベア(例えば、エスカレーター100)において、上記ステップの踏板(例えば、踏板202)の浮き上がりを検出する浮き上がり検出装置(例えば、浮き上がり検出装置300)であって、上記ステップの踏板に接触する接触部材(例えば、検出棒301)と、上記接触部材の変位を検出する変位センサ(例えば、変位センサ510)と、上記ステップ間の隙間を検出する測距センサ(測距センサ302、ToFセンサ、ミリ波センサ、Radar、超音波センサ等)と、を備える。
【0072】
上記構成によれば、測距センサが用いられてステップ間の隙間が検出されるので、例えば、現場環境に左右されることなく各ステップを識別することができる。
【0073】
(2)
上記測距センサは、上記乗客コンベアの乗場のコームプレート(例えば、コームプレート601)に設けられているくし板(例えば、くし板602)と上記接触部材との間で上記ステップ間の隙間を検出するように設けられる。
【0074】
上記構成によれば、例えば、ステップが平行移動している位置でステップ間の隙間を検出することができるので、各ステップを精度よく識別することができる。
【0075】
(3)
上記浮き上がり検出装置は、上記測距センサにより検出された上記測距センサからの距離を示す距離データを入力し、入力した距離データが所定の値以上を示すデータを特定し、特定したデータをもとに上記ステップの踏板を識別するデータ処理部(情報処理装置570、制御部560、演算処理部561、回路等)を備える。
【0076】
上記構成によれば、測距センサにより照射された電磁波または超音波の反射波に基づいて測距センサからの距離が算出されるので、例えば、所定値以上の距離がある部分を隙間とみなすことで、各ステップを容易に識別することができる。
【0077】
(4)
上記データ処理部は、上記変位センサにより検出された上記ステップの踏板の変位を示す変位データ(例えば、信号データ810)と、上記測距センサにより検出された上記測距センサからの距離を示す距離データ(例えば、信号データ820)とを入力し、上記変位データの変位点と上記距離データのピークとのデータ位置を合わせ、上記ステップの踏板ごとの上記変位データをもとに上記ステップの踏板の浮き上がり量を算出する(例えば、S910参照)。
【0078】
(5)
浮き上がり検出装置は、上記測距センサの設置位置および上記測距センサの設置角度の少なくとも1つを調整可能な調整機構(例えば、本体304)を備える。なお、浮き上がり検出装置300は、前後方向(ステップ104の走行方向)、左右方向(ステップ104の幅方向、検出棒301の長手方向)、および上下方向の少なくとも1つの方向に測距センサ302を移動可能な調整機構(スライド機構、可動アーム等)を含んでいてもよい。
【0079】
上記調整機構によれば、例えば、浮き上がり検出装置を様々な仕様の乗客コンベアに容易に設置することができる。
【0080】
また上述した構成については、本発明の要旨を超えない範囲において、適宜に、変更したり、組み替えたり、組み合わせたり、省略したりしてもよい。
【0081】
「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」という形式におけるリストに含まれる項目は、(A)、(B)、(C)、(AおよびB)、(AおよびC)、(BおよびC)または(A、B、およびC)を意味することができると理解されたい。同様に、「A、B、またはCのうちの少なくとも1つ」の形式においてリストされた項目は、(A)、(B)、(C)、(AおよびB)、(AおよびC)、(BおよびC)または(A、B、およびC)を意味することができる。
【符号の説明】
【0082】
300……浮き上がり検出装置、302……測距センサ、510……変位センサ。