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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039416
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】MEMSデバイス
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/08 20060101AFI20240314BHJP
   G01P 15/125 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
G01P15/08 102D
G01P15/125 Z
G01P15/08 101A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143952
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】西ノ原 大介
(72)【発明者】
【氏名】橋本 秀明
(72)【発明者】
【氏名】藤田 有真
(57)【要約】
【課題】バンプストップを大型化することなく耐衝撃性を向上させたバンプストップを備えたMEMSデバイスを提供する。
【解決手段】可動部を備えたMEMSデバイスは、基板と、基板に設けられた凹部と、凹部内に中空で支持された可動部と、凹部内に中空で支持され、可動部と接触することで可動部の動きを制限するバンプストップとを含み、バンプストップは、可動部に接触する突起部と、突起部と基板との間に設けられ、弾性変形することで突起部に加わった衝撃力の少なくとも一部を吸収する衝撃吸収部とを含む。また、MEMSデバイスは、可動部と接触して弾性変形することで可動部から加わった衝撃力の少なくとも一部を吸収する第1バンプストップと、可動部と接触することで可動部の動きを制限する第2バンプストップと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部を備えたMEMSデバイスであって、
基板と、
基板に設けられた凹部と、
凹部内に中空で支持された可動部と、
凹部内に中空で支持され、可動部と接触することで可動部の動きを制限するバンプストップと、を含み、
バンプストップは、可動部に接触する突起部と、突起部と基板との間に設けられ、弾性変形することで突起部に加わった衝撃力の少なくとも一部を吸収する衝撃吸収部と、を含むMEMSデバイス。
【請求項2】
突起部は、可動部の可動方向に延在する請求項1に記載のMEMSデバイス。
【請求項3】
衝撃吸収部は、第1端が基板に固定され、第2端が突起部に固定された片持ち梁である請求項1または2に記載のMEMSデバイス。
【請求項4】
衝撃吸収部は、基板に固定された格子状の梁である請求項1または2に記載のMEMSデバイス。
【請求項5】
可動部を備えたMEMSデバイスであって、
基板と、
基板に設けられた凹部と、
凹部内に中空で支持された可動部と、
凹部内に中空で支持され、可動部と接触して弾性変形することで可動部から加わった衝撃力の少なくとも一部を吸収する第1バンプストップと、
凹部内に中空で支持され、可動部と接触することで可動部の動きを制限する第2バンプストップと、を含み、
可動部と第1バンプストップとの間隔W1は、可動部と第2バンプストップとの間隔W2より小さいMEMSデバイス。
【請求項6】
第1バンプストップは、可動部に接触する突起部と、突起部と基板との間に設けられ、弾性変形することで突起部に加わった衝撃力の少なくとも一部を吸収する衝撃吸収部と、を含む請求項5に記載のMEMSデバイス。
【請求項7】
第2バンプストップは、基板に固定され、可動部の可動方向に延在する突起部を含む請求項5に記載のMEMSデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はMEMデバイスに関し、特にバンプストップを備えたMEMSデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
MEMS構造を用いた加速度センサでは、基板に設けた固定電極とプルーフマスに設けた可動電極とが対向配置された容量素子からなる検出部を形成する。加速度が加わった場合に、固定電極に対して可動電極が相対的に移動し、このときの容量素子の容量変化を測定することで加速度を検出する。加速度センサに加速度が加わり、可動電極が固定電極に接近し過ぎた場合、静電力により可動電極が固定電極に張り付く場合があるために、基板からプルーフマスに向けて突起状のバンプストップを設けて、可動電極と固定電極が一定距離以上に接近しないようにして張り付きを防止していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009-500635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば大きな加速度が加わった場合などは、プルーフマスからバンプストップに対して短時間に大きな力(衝撃力)が加わるため、バンプストップが折れてストッパとしての役目が果たせなくなったり、折れたバンプストップが電極部等に引っかかり故障原因になる等の問題があった。
【0005】
これに対して、バンプストップの断面積を大きくすることによりバンプストップの強度は向上するが、相対的にバンプストップ以外の配置面積が小さくなるという問題があった。また製造工程で基板をエッチングして凹部を形成する場合にエッチャントの回り込みが不十分となり、可動電極やプルーフマスを基板から十分に分離できないという問題もあった。
【0006】
そこで、本発明は、大型化することなく耐衝撃性を向上させたバンプストップを備えたMEMSデバイスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの形態は、
可動部を備えたMEMSデバイスであって、
基板と、
基板に設けられた凹部と、
凹部内に中空で支持された可動部と、
凹部内に中空で支持され、可動部と接触することで可動部の動きを制限するバンプストップと、を含み、
バンプストップは、可動部に接触する突起部と、突起部と基板との間に設けられ、弾性変形することで突起部に加わった衝撃力の少なくとも一部を吸収する衝撃吸収部と、を含むMEMSデバイスである。
【0008】
本発明の他の形態は、
可動部を備えたMEMSデバイスであって、
基板と、
基板に設けられた凹部と、
凹部内に中空で支持された可動部と、
凹部内に中空で支持され、可動部と接触して弾性変形することで可動部から加わった衝撃力の少なくとも一部を吸収する第1バンプストップと、
凹部内に中空で支持され、可動部と接触することで可動部の動きを制限する第2バンプストップと、を含み、
可動部と第1バンプストップとの間隔W1は、可動部と第2バンプストップとの間隔W2より小さいMEMSデバイスである。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかるMEMSデバイスでは、構成を大きくすることなく、耐衝撃性を向上させたバンプストップを備えたMEMSデバイスの提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態1にかかるMEMSセンサのレイアウト図である。
図2図1のMEMSセンサのバンプストップ近傍Aの拡大平面図である。
図3図1のMEMSセンサのバンプストップ近傍Aの拡大斜視図である。
図4】本発明の実施の形態2にかかるMEMSセンサのレイアウト図である。
図5図3のMEMSセンサのバンプストップ近傍Bの拡大平面図である。
図6】本発明の実施の形態3にかかるMEMSセンサのレイアウト図である。
図7図5のMEMSセンサのバンプストップ近傍Cの拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施の形態1>
図1は、全体が100で表される、本発明の実施の形態1にかかるMEMSセンサのレイアウト図であり、ここではMEMSセンサの一例として加速度センサを示す。
【0012】
MEMSセンサ100は、例えばシリコンからなる基板10と、基板10の内部に設けられた凹部20を含む。凹部20内には、可動状態で中空に支持されたプルーフマス30と、これに接続された可動電極42、46とを備える。
【0013】
一方、凹部20内には、基板10に固定状態で支持される固定電極44を備える。固定電極44を挟んで平行に対向配置される2つの可動電極42、46は、1組の容量素子40を構成する。
【0014】
基板10の上には、可動電極42、46および固定電極44のそれぞれに接続された配線層(図示せず)を備える。
【0015】
MEMSセンサ100では、X軸方向に加速度が加わった場合、プルーフマス30に接続された可動電極42、46が、基板10に固定された固定電極44に対して相対的に移動する。そしてそれぞれの可動電極42、46と固定電極44との間の距離の変化に基づく容量変化を検出することにより、加速度が検出される。
【0016】
図2は、図1に破線Aで示す、MEMSセンサ100のバンプストップ近傍の拡大平面図であり、図3は、バンプストップ近傍Aの拡大斜視図である。図2、3中、図1と同一符号は、同一または相当箇所を示す。
【0017】
図2、3に示すように、基板10には、プルーフマス30のX軸方向の移動を制限するためにバンプストップ50が設けられている。図1に示すように、バンプストップ50はプルーフマス30の両側に設けられる(以下の実施の形態2、3においても同じ)。バンプストップ50は、基板10に設けられた凹部20の上に、基板10からY軸方向に片持ち梁状に延びた衝撃吸収部51と、衝撃吸収部51の端部に接続され、X軸方向に延びた突起部54とを有する。バンプストップ50は、基板10をエッチングして形成され、図3に示すように、基板10に一端が固定され、中空に保持されている。バンプストップ50は、基板10と同様に例えばシリコンから形成される。
【0018】
また、バンプストップ50とプルーフマス30とは、配線層12により接続されて、同一の電位に保たれるのが好ましい。両者の間に斥力が働き、張り付きを防止できるからである。図3では、絶縁膜14の上に設けられた配線層12が、ビア16を介して絶縁膜14の下にある、シリコンからなる突起部54に接続されている。
【0019】
MEMSセンサ100では、バンプストップ50がプルーフマス30と接触することにより、プルーフマス30の可動範囲を制限する。これにより、プルーフマス30に接続された可動電極42、46と、固定電極44とが一定の距離以上に接近しないようにして、可動電極42、46と固定電極44との接触や張り付きを防止できる。
【0020】
さらに、MEMSセンサ100に大きな加速度が印加された場合のように、短時間(例えば10μsec)に大きな力(衝撃力)がX軸方向に加わった場合、プルーフマス30がバンプストップ50に接触した後に、衝撃吸収部52がX軸方向に撓むことにより衝撃の少なくとも一部を吸収する。これにより、突起部54に加わる力が低減され、突起部54の破損や折れを防止できる。
【0021】
このように、本発明の実施の形態1にかかるMEMSセンサ100では、バンプストップ50を衝撃吸収部52と突起部54とで構成することにより、バンプストップ50の耐衝撃性が向上する。
【0022】
MEMSセンサ100(MEMSセンサ300においても同様)では、衝撃吸収部51を基板10からY軸方向に片持ち梁状に延びた構造としたが、衝撃力を受けた場合にX軸方向に撓む構造であれば、凹部20の上を引き回された梁のような構造等であっても構わない。
【0023】
<実施の形態2>
図4は、全体が200で表される、本発明の実施の形態2にかかるMEMSセンサのレイアウト図であり、図5は、図4に破線Bで示す、MEMSセンサ200のバンプストップ近傍の拡大平面図である。図4、5中、図1、2と同一符号は、同一または相当箇所を示す。
【0024】
図5に示すように、MEMSセンサ200のバンプストップ60は、基板10に設けられた凹部20内に、基板10からY軸方向に張り出した格子状の梁(メッシュ構造)からなる衝撃吸収部62と、衝撃吸収部62に接続され、X軸方向に延びた突起部64とを有する。上述のバンプストップ50と同様に、バンプストップ60は基板10をエッチングして形成され、基板10と同様に例えばシリコンから形成される。バンプストップ60とプルーフマス30とは配線層12により同一電位に保たれるのが好ましい。
【0025】
本発明の実施の形態2にかかるMEMSセンサ200では、MEMSセンサ200に対して衝撃力がX軸方向に加わった場合、プルーフマス30がバンプストップ60に接触した後に、メッシュ構造の衝撃吸収部62が撓むことにより衝撃を部分的に吸収する。これにより、突起部64に加わる衝撃が低減され、突起部64の破損や折れを防止できる。
【0026】
即ち、図5に示すように、衝撃吸収部62は、基板10からY軸方向に延びた3本の片持ち梁と、これらの片持ち梁をX軸方向に相互に接続する1本の梁からなる格子状の梁となっている。突起部64に対してX軸方向に衝撃力が加わった場合、格子が歪んで弾性変形することで衝撃を緩和し、突起部64に加わる力を低減する。
【0027】
このように、本発明の実施の形態2にかかるMEMSセンサ200では、バンプストップ60を衝撃吸収部62と突起部64とで構成することにより、バンプストップ60の耐衝撃性が向上する。
【0028】
なお、図5では、衝撃吸収部62は、Y軸方向に延びた3本の片持ち梁と、これらをX軸方向に相互に接続する1本の梁からなるメッシュ構造としたが、X軸方向に力を受けた場合に弾性変形する格子構造であれば、梁の数はこれらに限定されるものではない。
【0029】
<実施の形態3>
図6は、全体が300で表される、本発明の実施の形態3にかかるMEMSセンサのレイアウト図であり、図7は、図6に破線Cで示す、MEMSセンサ300のバンプストップ近傍の拡大平面図である。図6、7中、図1、2と同一符号は、同一または相当箇所を示す。
【0030】
図7に示すように、MEMSセンサ300では、衝撃吸収部72と突起部74からなる第1バンプストップ70と、基板10に固定された第2バンプストップ80とを有する。第1バンプストップ70の突起部74と第2バンプストップ80は、X軸方向に平行に配置される。
【0031】
第2バンプストップ80の突起部74とプルーフマス30との間の距離W1は、第2バンプストップ80とプルーフマス30との間の距離W2より小さくなっている(W1<W2)。このため、プルーフマス30に、X軸方向に衝撃力が加わった場合、プルーフマス30はまず第1バンプストップ70の突起部74に接触する。第1バンプストップ70は、格子構造の梁からなる衝撃吸収部72を有するため、衝撃吸収部72が歪んで弾性変形することで衝撃を緩和する。
【0032】
さらにプルーフマス30がX軸方向に移動することで、第2バンプストップ80に接触するが、突起部74に加わる衝撃力は衝撃吸収部72で緩和されているため、第2バンプストップ80は破損することなく、プルーフマス30の可動範囲を制限できる。
【0033】
このように、本発明の実施の形態3にかかるMEMSセンサ300では、衝撃吸収部72を有する第1バンプストップ70と、第2バンプストップ80を組み合わせることで、第2バンプストップ80の耐衝撃性が向上する。
【0034】
特に、MEMSセンサ300では、第2バンプストップ80は基板10に固定されているため、プルーフマス30の可動範囲をより正確に制限できる。
【0035】
なお、図7の格子構造の衝撃吸収部72の梁の数はこれらに限定されるものではない。また、図6、7では、衝撃吸収部72を格子構造としたが、実施の形態1のような片持ち梁構造であっても構わない。
【0036】
本発明の実施の形態1~3では、加速度センサを例に説明したが、例えばプリンタヘッド、デジタルミラーデバイス、圧力センサ等のバンプストップを有する他のMEMSデバイスにおいても広く適用することができる。
【0037】
<付記>
本開示は、
可動部を備えたMEMSデバイスであって、
基板と、
基板に設けられた凹部と、
凹部内に中空で支持された可動部と、
凹部内に中空で支持され、可動部と接触することで可動部の動きを制限するバンプストップと、を含み、
バンプストップは、可動部に接触する突起部と、突起部と基板との間に設けられ、弾性変形することで突起部に加わった衝撃力の少なくとも一部を吸収する衝撃吸収部と、を含むMEMSデバイスである。
バンプストップを衝撃吸収部と突起部で構成することにより、バンプストップの耐衝撃性が向上する。
【0038】
本開示では、突起部は、可動部の可動方向に延在する。
かかる構成により、可動部の可動範囲を制限できる。
【0039】
本開示では、衝撃吸収部は、第1端が基板に固定され、第2端が突起部に固定された片持ち梁である。
衝撃吸収部を片持ち梁構造とすることで、片持ち梁が変形して、突起部に加わった衝撃力を吸収できる。
【0040】
本開示では、衝撃吸収部は、基板に固定された格子状の梁である。
衝撃吸収部を格子状の梁構造とすることで、格子状の梁が変形して、突起部に加わった衝撃力を吸収できる。
【0041】
本開示は、
可動部を備えたMEMSデバイスであって、
基板と、
基板に設けられた凹部と、
凹部内に中空で支持された可動部と、
凹部内に中空で支持され、可動部と接触して弾性変形することで可動部から加わった衝撃力の少なくとも一部を吸収する第1バンプストップと、
凹部内に中空で支持され、可動部と接触することで可動部の動きを制限する第2バンプストップと、を含み、
可動部と第1バンプストップとの間隔W1は、可動部と第2バンプストップとの間隔W2より小さいMEMSデバイスである。
かかる構成とすることで、第1バンプストップが衝撃力を吸収し、第2バンプストップで可動部の可動範囲を正確に制限できる。
【0042】
本開示では、第1バンプストップは、可動部に接触する突起部と、突起部と基板との間に設けられ、弾性変形することで突起部に加わった衝撃力の少なくとも一部を吸収する衝撃吸収部と、を含む。
かかる構成により、第1バンプストップが可動部からの衝撃力の少なくとも一部を吸収し、第2バンプストップが受ける衝撃力を低減できる。
【0043】
本開示では、第2バンプストップは、基板に固定され、可動部の可動方向に延在する突起部を含む。
かかる構成により、第2バンプストップで可動部の可動範囲を正確に制限できる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、加速度センサや圧力センサ等のMEMSセンサ、プリンタヘッド、デジタルミラーデバイス等のMEMSデバイスに適用できる
【符号の説明】
【0045】
10 基板
20 凹部
30 プルーフマス
40 容量素子
42、46 可動電極
44 固定電極
50、60、70 バンプストップ
100、200、300 MEMSセンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7