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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039419
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】二重容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/04 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
B65D77/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143956
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】室屋 洋輔
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AC01
3E067BA03C
3E067BA12B
3E067BB15B
3E067BB15C
3E067BB16B
3E067BB16C
3E067BC07C
3E067CA04
3E067EA02
3E067EB27
3E067EE56
3E067FA04
3E067FC01
3E067GB01
3E067GD08
(57)【要約】
【課題】内袋が不意に捻られることを抑制しつつ、内袋を容器本体から引き抜きやすい、二重容器を提供する。
【解決手段】本発明によれば、容器本体と、口部装着部材を備える、二重容器であって、前記容器本体は、内袋と、前記内袋を覆うように配置された外殻を備え、前記口部装着部材は、前記容器本体の口部に装着されており、前記外殻に対する前記内袋の口部の回転がロック機構又は回転防止シールによって規制されており、前記規制は、前記ロック機構によるロックの解除又は前記回転防止シールの除去若しくは破断によって解除される、二重容器が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と、口部装着部材を備える、二重容器であって、
前記容器本体は、内袋と、前記内袋を覆うように配置された外殻を備え、
前記口部装着部材は、前記容器本体の口部に装着されており、
前記外殻に対する前記内袋の口部の回転がロック機構又は回転防止シールによって規制されており、
前記規制は、前記ロック機構によるロックの解除又は前記回転防止シールの除去若しくは破断によって解除される、二重容器。
【請求項2】
請求項1に記載の二重容器であって、
前記外殻に対する前記内袋の口部の回転が前記ロック機構によって規制されており、
前記ロック機構は、前記外殻と前記内袋の周方向の係合によって前記内袋の口部の回転を規制する内袋ロック機構である、二重容器。
【請求項3】
請求項2に記載の二重容器であって、
前記内袋ロック機構は、前記内袋を前記外殻に対して軸方向に変位させることによって前記内袋ロック機構によるロックが解除可能に構成される、二重容器。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載の二重容器であって、
前記口部装着部材が前記内袋に対して周方向に係合しており、
前記外殻に対する前記内袋の回転が前記回転防止シールによって規制されており、
前記回転防止シールは、前記外殻と前記口部装着部材にまたがって貼り付けられる、二重容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外殻と内袋とを有する容器本体を備える二重容器が知られている。例えば、特許文献1には、外殻プリフォームと内袋プリフォームとを重ねた状態で二軸延伸ブロー成形を行うことによって形成した二重容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-10741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような二重容器の外殻と内袋とが別素材で成形されている場合や、使用後の内袋内に内容物が付着している場合等において、当該二重容器をリサイクルする際には、外殻と内袋とを分離することが望まれる。
【0005】
外殻と内袋は、内袋を容器本体から引き抜くことによって分離することが想定されており、内袋を容器本体から引き抜きやすくすることが望まれている。
【0006】
内袋は、内袋の口部を回転させて捻ることによって容器本体から引き抜きやすくなるが、内袋内に内容物が入った状態で内袋が不意に捻られてしまうと、内容物が溢れ出る虞がある。
【0007】
このため、内袋が不意に捻られることを抑制しつつ、内袋を容器本体から引き抜きやすくすることが望まれている。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、内袋が不意に捻られることを抑制しつつ、内袋を容器本体から引き抜きやすい、二重容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]容器本体と、口部装着部材を備える、二重容器であって、前記容器本体は、内袋と、前記内袋を覆うように配置された外殻を備え、前記口部装着部材は、前記容器本体の口部に装着されており、前記外殻に対する前記内袋の口部の回転がロック機構又は回転防止シールによって規制されており、前記規制は、前記ロック機構によるロックの解除又は前記回転防止シールの除去若しくは破断によって解除される、二重容器。
[2][1]に記載の二重容器であって、前記外殻に対する前記内袋の口部の回転が前記ロック機構によって規制されており、前記ロック機構は、前記外殻と前記内袋の周方向の係合によって前記内袋の口部の回転を規制する内袋ロック機構である、二重容器。
[3][2]に記載の二重容器であって、前記内袋ロック機構は、前記内袋を前記外殻に対して軸方向に変位させることによって前記内袋ロック機構によるロックが解除可能に構成される、二重容器。
[4][1]~[3]の何れか1つに記載の二重容器であって、前記口部装着部材が前記内袋に対して周方向に係合しており、前記外殻に対する前記内袋の回転が前記回転防止シールによって規制されており、前記回転防止シールは、前記外殻と前記口部装着部材にまたがって貼り付けられる、二重容器。
【0010】
本発明では、外殻に対する内袋の口部の回転がロック機構又は回転防止シールによって規制されているので、内袋が不意に捻れることが抑制される。また、ロック機構によるロックを解除するか、回転防止シールを除去又は破断することによって、内袋の口部が外殻に対して回転可能になるので、内袋の口部を外殻に対して回転させて内袋を捻ることによって、内袋が容器本体から引き抜きやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態の二重容器1の斜視図である。図中の一点鎖線は、表面形状を構成する面の曲率が変化する境界線を表す。他の図についても同様である。
図2図1の分解斜視図である。
図3図3Aは、図2中の領域Aの拡大図である。図3Bは、図3Aの状態から内袋4を軸方向に変位させてロック解除を行った後の状態を示す。
図4図3の分解斜視図である。内袋4は、開口端5c近傍の一部のみを図示している。
図5】外殻3の開口端近傍の斜視図である。
図6】オーバーキャップ27及び中栓26を斜め下側から見た斜視図である。
図7図7Aは、中栓26が内袋4に装着された状態を示す。内袋4は、口部5近傍を示す斜視図であり、中栓26は、縦断面斜視図である。図7Bは、中栓26の縦断面斜視図である。
図8】オーバーキャップ27を開封する前の時点での、図1に示す二重容器1の、口部5の中心を通る縦断面図である。
図9】内プリフォーム14及び外プリフォーム13が分離されている状態を示す斜視図である。
図10】内プリフォーム14に外プリフォーム13を被せることによって構成されたプリフォーム15を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0013】
1.第1実施形態
1-1.二重容器1の構成
<基本構成>
図1に示すように、本発明の第1実施形態の二重容器1は、容器本体2と、口部装着部材8を備える。
【0014】
図2図3に示すように、容器本体2は、口部5と、胴部6と、底部7を備える。口部5は、開口端5cを有する筒状(好ましくは円筒状)部位である。口部5は、キャップやポンプなどの口部装着部材8を装着可能な係合部4mを備える。係合部4mの詳細は、後述する。口部5には、フランジ5bが設けられている。フランジ5bは、口部5に口部装着部材8を装着する際に口部5を支持するために利用可能である。
【0015】
胴部6は、口部5よりも開口端5cから離れた側に口部5に隣接して配置される。胴部6は、口部5よりも外径(本明細書において、「外径」は、断面が円形でない場合は、円相当径を意味する。)が大きい。胴部6は筒状であり、底部7は、胴部6の下端に設けられ、胴部6の下端を閉塞する。胴部6は、口部5から離れるにつれて外径が大きくなる肩部6bを備える。また、胴部6は、肩部6bよりも底部7側に、胴部本体6cを備える。胴部本体6cは、例えば、底部7に向かって外径が略一定である形状であるか、又は底部7に向かって縮径する形状である。
【0016】
図4に示すように、容器本体2は、内袋4と、内袋4を覆うように配置された外殻3を備える。内袋4は、突出部4c以外の内袋本体4dが外殻3内に収容されている。以下の説明では、内袋4のうち、容器本体2の口部5、胴部6、及び底部7に相当する部位をそれぞれ、内袋4の口部5、胴部6、及び底部7のように称する。外殻3についても同様である。
【0017】
胴部6の高さ方向の中央での外殻3の平均肉厚は、例えば、200~800μmであり、250~500μmが好ましいこの肉厚は、具体的には例えば、具体的には例えば、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0018】
胴部6の高さ方向の中央での内袋4の平均肉厚は、例えば、50~250μmであり、50~100μmが好ましい。この肉厚は、具体的には例えば、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか以下であってもよい。本明細書において、所定の高さ位置での平均肉厚は、その高さ位置で周方向に等間隔に設定した8つの測定点での測定値の平均値を意味する。
【0019】
口部装着部材8に逆止弁が設けられていない場合は、内袋4の内容物を吐出した後にも内袋4が収縮しないので、外殻3の口部5を通じて、内袋4を引き出すことが容易でない。本発明は、内袋4を外殻3の口部5を通じて引き出すことを容易にするものであるので、口部装着部材8に逆止弁が設けられていない場合に、本発明を適用する意義が特に顕著である。一方、口部装着部材8に逆止弁を設け、且つ外殻3と内袋4の間に外気を導入する外気導入部を設けた場合、内袋4内に内容物の吐出に伴って内袋4が収縮する。本発明は、このような形態にも適用可能である。
【0020】
外殻3の口部5の内径は、例えば20~50mmであり、25~40mmが好ましい。外殻3の口部5の内径は、具体的には例えば、20、25、30、35、40、45、50mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。口部5の長さは、例えば15~45mmであり、具体的には例えば、15、20、25、30、35、40、45mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0021】
<外殻3と内袋4の詳細構造>
図3図4に示すように、内袋4は、外殻3の開口端3aから突出する突出部4cを備える。突出部4cは、突出筒4c1と、係合凸部4c2と、環状凸部4c5と、当接フランジ4c4を備える。
【0022】
環状凸部4c5は、口部装着部材8と軸方向に係合する。係合凸部4c2は、口部装着部材8と周方向に係合する。本明細書において、「軸方向」とは、口部5の中心軸Cが延びる方向であり、言い換えると、容器本体2から内袋4を引き抜く方向である。「周方向」とは、口部5の中心軸Cを中心として回転させる方向であり、言い換えると、口部5において内袋4を外殻3に対して、回転させる方向である。また、「上方向」は、軸方向上向きを意味し、「下方向」は、軸方向下向きを意味する。
【0023】
係合凸部4c2は、周方向に離間されて複数箇所(本実施形態では8箇所)に設けられることが好ましい。係合凸部4c2は、環状凸部4c5上に配置され、環状凸部4c5から径方向外側に向かって突出するように設けられる。環状凸部4c5及び係合凸部4c2は、上面にテーパー面4c8,4c3が設けられている。これによって、後述するように、口部装着部材8の環状凸部28c(図7Aに図示)が環状凸部4c5及び係合凸部4c2を乗り越えやすくなっている。
【0024】
また、図7Aに示すように、係合凸部4c2の下面4c6は、環状凸部4c5の下面4c7と面一であるか、環状凸部4c5の下面4c7よりも内袋4の開口端に近い位置に設けられている。このような構成によれば、環状凸部4c5と口部装着部材8の軸方向の係合が、係合凸部4c2によって補強されるので、口部装着部材8と内袋4との係合が強固になる。
【0025】
当接フランジ4c4は、開口端3aに当接する位置に配置され且つ突出筒4c1よりも拡径された環状部位である。当接フランジ4c4が開口端3aに当接することによって、内袋4が外殻3内に脱落することが回避される。
【0026】
図4に示すように、内袋本体4dの外周面には、係合凸部4hが設けられている。係合凸部4hの下面は、口部5の開口端5c側から見て、反時計周りに進むにつれて開口端5cに近づくように傾斜している。
【0027】
図4図5に示すように、外殻3の内周面には、カムレール3lと、係合凹部3mが設けられている。係合凹部3mの下面3m1とカムレール3lの上面3l1の間には段差3oが設けられている。カムレール3lの上面3l1は、開口端3a側から見て、反時計周りに進むにつれて開口端3aに近づくように傾斜している。
【0028】
図3Aに示すように、内袋4の引き抜き作業を開始する前の通常状態(つまり、当接フランジ4c4が開口端3aに当接している状態)では、係合凸部4hが、係合凹部3m内の低い位置に配置されている。この状態では、段差3oは、係合凸部4hの反時計回りの下流側の進路上に位置している。このため、内袋4を反時計周りに回転させようとすると、係合凸部4hが段差3oに当接するので、内袋4を回転させることができない。つまり、外殻3に対する内袋4の口部5の回転が、係合凸部4hと段差3oによって構成されるロック機構9によって規制される。本実施形態では、ロック機構9は、外殻3と内袋4の周方向の係合によって内袋4の口5部の回転を規制する内袋ロック機構9aである。このように、通常状態では、ロック機構9によって、外殻3に対する内袋4の口部5の回転を規制することによって、内袋4が不意に捻られることが抑制される。
【0029】
図3Aの状態では、係合凸部4hの上面と係合凹部3mの上面の間には隙間があり、係合凸部4hは、係合凹部3m内において上方向に移動可能になっている。図3Aの状態から、内袋4を引っ張ると、図3Bに示すように、当接フランジ4c4が開口端3aから離れると共に、係合凸部4hが係合凹部3m内において上方向に移動する。この状態では、係合凸部4hは、段差3oよりも高い位置に配置されるので(つまり、係合凸部4hの下面がカムレール3lの上面3l1よりも高い位置に配置されるので)、段差3oは、係合凸部4hの反時計回りの下流側の進路上に位置していない。このため、図3Bの状態では、ロック機構9によって規制されることなく、外殻3に対して内袋4の口部5を回転させることができる。このように、内袋4を外殻3に対して軸方向に変位させることによって内袋ロック機構9a(ロック機構9)によるロックを解除して、内袋4が回転可能になる。
【0030】
内袋4の口部5を反時計回りに回転させると、係合凸部4hの下面がカムレール3lの上面3l1に沿って移動する。係合凸部4hとカムレール3lによって、カム機構31が構成される。そして、内袋4の回転に伴って、カム機構31の作用によって、内袋4が容器本体2から抜け出す方向に移動する。この際に、内袋4が捻られて縮径される。本実施形態では、係合凹部3mは貫通孔であるが、非貫通孔であってもよい。
【0031】
内袋4の開口端4lには、拡径構造4kが設けられている。拡径構造4kによって、内袋4の口部5の剛性が高まり、内袋4の口部5の変形が抑制される。本実施形態では、内袋4に設けた係合部4m(より詳しくは環状凸部4c5及び係合凸部4c2)を用いて内袋4の引き抜きを行うので、内袋4に高い荷重が加わる場合があり、その場合に、内袋4の開口端4lが変形しやすいと内袋4を引き抜きにくくなる場合があるが、本実施形態では、内袋4の開口端4lの変形が抑制されるので、内袋4のスムーズな引き抜きが可能になる。
【0032】
<単純操作による内袋4の引き抜き>
口部装着部材8は、打栓式で容器本体2の口部5に装着可能に構成されており、口部装着部材8を口部5に被せた状態で、口部装着部材8を底部7の方向に押圧することによって、口部装着部材8を口部5に係合させて装着することができる。打栓式の口部装着部材8は、押圧するだけで装着可能であるので、内容物の充填ラインでの口部装着部材8の装着工程の単純化が可能であるという利点がある。
【0033】
ところで、打栓式の口部装着部材は、一般に、中栓から分離可能な分別バンドを備えていて、分別バンドの係合部を外殻の係合部に係合させることによって、容器本体に装着するように構成されている。そして、口部装着部材を口部から取り外す際には、最初に中栓と分別バンドの間の連結部を引き裂いて分別バンドを除去することによって、口部装着部材と外殻の係合力を弱める(通常は係合を解除する)操作を行い、その後に、口部装着部材を口部から取り外す操作を行う。しかし、口部装着部材を口部から取り外す操作を行う前に、口部装着部材と外殻の係合力を弱める操作を行うのは煩わしい。係合力を弱める操作は、例えば分別バンドを除去せずに、分別バンドに切れ込みを入れることによって、分別バンドと外殻の係合力を弱めるような操作であってもよい。
【0034】
本実施形態では、このような問題を解決すべく、口部装着部材8を外殻3に対して回転させることによって、内袋4が容器本体2から抜け出す方向に移動する(つまり、内袋4を浮き上がらせる)ように構成した上で、口部装着部材8を容器本体2に対して回転させる前に口部装着部材8と外殻3との係合力を弱める操作を行うことなく、口部装着部材8を外殻3に対して回転させることを可能にしている。つまり、口部装着部材8が容器本体2の口部5に装着された時点での口部装着部材8と外殻3の係合関係の状態のまま、口部装着部材8の回転が可能になっている。
【0035】
より具体的には、口部装着部材8は、打栓式で内袋4の口部5に周方向及び軸方向に係合されており、口部装着部材8の回転に伴って内袋4が外殻3に対して回転するように構成されている。そして、内袋4と外殻3の間に設けられたカム機構31の作用により、内袋4の回転に伴って内袋4が容器本体2から抜け出す方向に移動するように構成される。
【0036】
このような構成によれば、分別バンドの除去のような面倒な操作を事前に行うことなく、口部装着部材8を回転させるだけで、内袋4を容器本体2から抜け出る方向に移動させることができ、その後は、口部装着部材8を引っ張ることによって、内袋4を容器本体2から引き抜くことができる。つまり、口部装着部材8を回して引っ張るだけで、内袋4の引き抜きができるので、内袋4の引き抜きに必要な操作が非常に単純になる。この際の口部装着部材8の回転は、正ネジ緩め方向(つまり、二重容器1の上側から見て反時計回り方向)の回転であることが好ましい。この場合、内袋4が容器本体2から抜け出る方向に移動することが感覚的に理解しやすいという利点がある。
【0037】
また、容器本体2の胴部6は、口部5よりも外径が大きいので、単に、内袋4を引っ張るだけでは、外殻3の口部5を通じて内袋4を引き出すことは容易ではないが、内袋4の口部5を回転させて内袋4を捻って内袋4の胴部6を縮径させることによって、内袋4の胴部6が外殻3の口部5を通過しやすくなり、容器本体2から内袋4を容易に引き出すことができる。
【0038】
<口部装着部材8の詳細構造>
図2に示すように、本実施形態では、口部装着部材8は、キャップ8aであり、中栓26と、オーバーキャップ27を備える。中栓26は、打栓式で内袋4の口部5に周方向及び軸方向に係合されている。オーバーキャップ27は、中栓26に対して螺合されている。
【0039】
図2図6及び図8に示すように、オーバーキャップ27は、外筒27aと、中間筒27bと、内筒27cと、天板27dを備える。
【0040】
外筒27aの外周面には、ローレット27eが設けられており、オーバーキャップ27を把持して回転させやすくなっている。外筒27aの内周面には、雌ネジ部27fが設けられている。天板27dは、外筒27aの上面に設けられている。天板27dの下面には中間筒27b及び内筒27cが設けられている。中間筒27bは、外筒27aよりも直径が小さく、外筒27aの内部に配置される、いわゆるインナーリングである。内筒27cは、中間筒27bよりも直径が小さく、中間筒27bの内部に配置される。
【0041】
図2及び図6図8に示すように、中栓26は、本体部28と、開栓部32を備える。本体部28と開栓部32は、易引裂性の連結部30を介して互いに連結されている。
【0042】
本体部28は、外筒28aと、内筒28bと、環状凸部28cと、係合凸部28dと、天板28eと、吐出筒28fと、取付筒28gを備える。開栓部32及び連結部30は、吐出筒28f及び内筒28bの内側に配置されている。開栓部32には、不図示の係合部が設けられた係合筒32aが設けられており、内筒27cと係合筒32aが周方向及び軸方向に係合している。このような構成によれば、オーバーキャップ27を本体部28に対して回転させることによって、係合筒32aを本体部に対して回転させて、連結部30を破断させることが可能になる。連結部30を破断させることによって、開栓部32が本体部28から分離され、吐出筒28f及び内筒28bの内側に流通孔が形成される。内袋4内の内容物は、この流通孔を通じて吐出することができる。
【0043】
外筒27aの外周面には、ローレット28iが設けられており、中栓26を把持して回転させやすくなっている。天板28eは、外筒28aの上面に設けられる。天板28eの下面には内筒28bが設けられている。内筒28bは、外筒28aよりも直径が小さく、外筒28aの内部に配置される、いわゆるインナーリングである。中栓26を口部5に装着すると、内筒28bが内袋4内に挿入され、内筒28bの外周面が内袋4の内周面に密着する。
【0044】
天板28eの上面には、吐出筒28fと取付筒28gが設けられている。内袋4内の内容物は、吐出筒28fを通って吐出される。図2に示すように、取付筒28gの外周面には、雄ネジ部28hが設けられており、雄ネジ部28hが、オーバーキャップ27の外筒27aの内周面に設けられた雌ネジ部27fと係合することによって、オーバーキャップ27が中栓26に螺合される。この場合、オーバーキャップ27を中栓26に対して相対回転させることによって、オーバーキャップ27を中栓26に対して着脱させることができる。オーバーキャップ27を中栓26に装着すると、中間筒27bが吐出筒28f内に挿入され、中間筒27bの外周面が吐出筒28fの内周面に密着する。吐出筒28fの上側がオーバーキャップ27によって閉塞される。
【0045】
環状凸部28cは、外筒28aの内周面に周方向に延びるように設けられる環状の凸部である。環状凸部28cが係合凸部4c2と軸方向に係合することによって、本体部28が内袋4の口部5に軸方向に係合する。係合凸部28dは、周方向に離間されて複数箇所(本実施形態では8箇所)に設けられることが好ましい。係合凸部28dは、環状凸部28c上に配置され、環状凸部28cから径方向内側に向かって突出するように設けられる。係合凸部28dは、隣接する係合凸部4c2の間に配置され、これによって、本体部28が内袋4の口部5に周方向に係合する。
【0046】
<オーバーキャップ27と中栓26の回転方向及びトルク>
オーバーキャップ27は、好ましくは、正ネジによって中栓26に螺合されている。このため、中栓26に対してオーバーキャップ27を正ネジ緩め方向に回転させることによって、オーバーキャップ27と中栓26の螺合を解除することができる。また、外殻3に対して中栓26を正ネジ緩め方向に回転させることによって、内袋4が容器本体2から抜け出す方向に移動するように構成される。このように、正ネジ緩め方向にオーバーキャップ27を回転させることによって、オーバーキャップ27を取り外すことができ、正ネジ緩め方向に中栓26を回転させることによって、内袋4を浮き上がらせることができる。どちらも同じ回転方向の操作であるので、操作が単純であるという利点がある。
【0047】
一方、上記構成の場合、容器本体2とオーバーキャップ27を把持してオーバーキャップ27を正ネジ緩め方向に回転させると、オーバーキャップ27が中栓26に対して相対回転せずに、オーバーキャップ27と中栓26が一緒に容器本体2に対して相対回転し、その結果、内袋4が浮き上がってしまう虞がある。
【0048】
このような問題の発生を抑制すべく、本実施形態では、ロック機構9によって、外殻3に対する内袋4の口部5の回転を規制している。
【0049】
中栓26に対してオーバーキャップ27を初めて正ネジ緩め方向に回転させるのに必要なオーバーキャップ回転トルクをT1とすると、T1は、例えば、40~120N・cmであり、60~100N・cmが好ましい。T1は、具体的には例えば、40、50、60、70、80、90、100、110、120N・cmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか以上若しくは以下であってもよい。
【0050】
オーバーキャップ回転トルクT1は、本実施形態では、連結部30を破断させて開栓部32を本体部28から分離するのに必要なトルクである。別の実施形態では、中栓26に開栓部32を設ける代わりに、オーバーキャップ27に易引裂性の連結部を介して開封リングが設けられ、開封リングが中栓26に周方向に係合する。このような形態では、薄肉部を破断させて開封リングをオーバーキャップ27から分離するのに必要なトルクがオーバーキャップ回転トルクT1となる。また、さらに別に実施形態では、中栓26に対するオーバーキャップ27の回転を規制する回転規制構造が設けられており、回転規制構造による回転の規制が所定のトルクで解除される場合(例えばオーバーキャップ27の凸部と中栓26の凸部が当接することで回転が規制され、オーバーキャップ27の凸部が中栓26の凸部を乗り越えることで、回転の規制が解除される場合)、規制解除に必要なトルクがオーバーキャップ回転トルクT1となる。
【0051】
また、内袋4に対して中栓26を初めて正ネジ緩め方向に回転させるのに必要なオーバーターントルクをT3とすると、T3は、例えば200N・cm以上であり、200~1000N・cmが好ましく、具体的には例えば、200、250、300、350、400、500、1000N・cmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか以上であってもよい。オーバーターントルクT3は、本実施形態では、係合凸部28dが係合凸部4c2を乗り越えるのに必要なトルクである。
【0052】
<回転防止シール45を用いた誤操作抑制>
外殻3に対する内袋4の口部5の回転は、上述のロック機構9によって規制可能であるが、ロック機構9の代わりに、又はロック機構9と共に、回転防止シール45によって規制することもできる。
【0053】
本実施形態では、図1に示すように、回転防止シール45は、外殻3と口部装着部材8にまたがって貼り付けられている。回転防止シール45によって、外殻3に対して口部装着部材8が回転することが規制される。そしえて、口部装着部材8が、内袋4に対して周方向に係合しているので、結局、外殻3に対する内袋4の回転が回転防止シール45によって規制される。回転防止シール45による規制は、回転防止シール45を除去したり、回転防止シール45を破断させたりすることによって解除することが可能である。
【0054】
口部装着部材8が、中栓26とオーバーキャップ27を備える場合には、回転防止シール45は、外殻3と中栓26にまたがって貼り付けることができる。これによって、外殻3に対する中栓26の回転を規制することができるので、オーバーキャップ27を把持して回転させるつもりが、誤って中栓26を把持して回転させてしまうことを防止することができる。
【0055】
1-2.二重容器1の製造方法
図9図10に示すように、容器本体2は、プリフォーム15を加熱して二軸延伸ブロー成形することによって形成することができる。
【0056】
<内プリフォーム1、外プリフォーム13、プリフォーム15の構成>
プリフォーム15は、一例では、内袋4となる内プリフォーム14に、外殻3となる外プリフォーム13を被せて構成することができる。
【0057】
図9に示すように、内プリフォーム14は、有底筒状であり、口部14aと、胴部14bと、底部14cを備える。口部14aの開口端には、突出部14dが設けられている。突出部14dは、成形時に変形せずにそのままの形状で突出部4cとなる。従って、突出部4cについて述べた事項は、突出部14dにも当てはまる。突出部14dには、係合部14mが設けられて。係合部14mは、成形後に係合部4mとなり、内袋4の引き抜きに用いられる。底部14cは、胴部14bの下端を閉じるように設けられる。底部14cには、位置決めピン(不図示)を設けてもよい。
【0058】
図9に示すように、外プリフォーム13は、有底筒状であり、口部13aと、胴部13bと、底部13cを備える。底部13cは、胴部13bの下端を閉じるように設けられる。底部13cには、環状凸部13d及び位置決め孔(不図示)が設けられている。
【0059】
図10に示すように、内プリフォーム14に外プリフォーム13を被せることによって、プリフォーム15を形成することができる。内プリフォーム14に位置決めピンが設けられている場合には、この位置決めピンを外プリフォーム13の位置決め孔に挿入して、内プリフォーム14と外プリフォーム13を互いに位置決めすることができる。プリフォーム15では、口部14aと口部13aが対向し、胴部14bと胴部13bが対向する。
【0060】
口部13a,14aがプリフォーム15の口部15aとなり、胴部13b,14bがプリフォーム15の胴部15bとなり、底部13c,14cがプリフォーム15の底部15cとなる。胴部15b及び底部15cが、二軸延伸ブロー成形において主に延伸される。
【0061】
<内プリフォーム14、外プリフォーム13、プリフォーム15の材料・製造方法>
内プリフォーム14及び外プリフォーム13は、ポリエステル(例:PET)やポリオレフィン(例:ポリプロピレン、ポリエチレン)等の熱可塑性樹脂のダイレクトブロー成形や射出成形等によって形成可能である。一例では、内プリフォーム14がポリオレフィン(例:ポリプロピレン)で構成され、外プリフォーム13はPETで構成される。内プリフォーム14に用いられるポリオレフィンは、ポリエチレンよりもポリプロピレンが好ましい。ポリプロピレンの方が、ポリエチレンよりも、二軸延伸ブロー成形に適した温度がPETに近いからである。
【0062】
プリフォーム15は、内プリフォーム14と外プリフォーム13を別々に製造した後に、内プリフォーム14に外プリフォーム13を被せて構成してもおく、多層射出成形や二色成形によって製造してもよい。何れの方法によっても、内プリフォーム14と外プリフォーム13が積層されて構成されたプリフォーム15が得られる。
【0063】
多層射出成形では、内プリフォーム14と外プリフォーム13のそれぞれに対応する層を有する多層のプリフォーム15を一度の射出成形で製造することができる。
【0064】
二色成形では、第1成形工程で内プリフォーム14と外プリフォーム13の一方を成形し、第2成形工程で内プリフォーム14と外プリフォーム13の他方を成形する。第1成形工程は、ダイレクトブロー成形であっても射出成形であってもよい。第2成形工程は、射出成形が好ましい。
【0065】
<ダイレクトブロー成形による内プリフォーム14の製造>
内プリフォーム14は、溶融状態の筒状パリソンを用いたダイレクトブロー成形で形成することが好ましい。ダイレクトブロー成形では、射出成形に比べて、薄肉化及び多層化が容易であるので、ダイレクトブロー成形で内プリフォーム14を形成することによって、内袋4の薄肉化が可能であり、多層構造の内袋4を形成しやすい。
【0066】
<突出シール部42>
筒状パリソンの内面同士が溶着して構成されるシール部は、強度が不十分である場合があり、図9に示すように、シール部43を内プリフォーム14の本体部14qから突出させて突出シール部42とすることが好ましい。突出シール部42は、筒状パリソンの内面同士が溶着して構成され且つ内プリフォーム14の本体部14qから突出する。本体部14qは、内プリフォーム14のうち突出シール部42以外の部位を指す。図9に示すように、シール部43を突出させて突出シール部42とすることによって、シール面の面積が大きくなり、シール部43でのシール強度が高められる。
【0067】
2.その他の実施形態
本発明は、以下の形態でも実施することができる。
・口部装着部材8を内袋4の口部5に対して周方向に係合させ、外殻3と口部装着部材8を周方向に係合させることによって、外殻3に対する内袋4の口部5の回転を規制するロック機構9を構成してもよい。この場合、ロック機構9によるロックは、例えば、口部装着部材8を外殻3に対して軸方向に変位させることによって解除することができる。
・ロック機構9によるロックの解除のための軸方向変位は、上下のどちらの方向への変位であってもよい。
・ロック機構9によるロックの解除は、内袋4又は口部装着部材8の軸方向移動以外の方法で行ってもよい。例えば、内袋4又は口部装着部材8を径方向に変位させることによって行ってもよい。
・口部装着部材8は、内袋4の口部5に周方向のみに係合させてもよい。
・口部装着部材8は、ネジ式で口部5に装着されるものであってもよい。
・口部装着部材8を用いることは必須ではなく、内袋4を直接把持したり、口部装着部材8以外の治具を用いて内袋4の回転や引き抜きを行ったりしてもよい。
・回転防止シールは、内袋4と外殻3にまたがって貼り付けるようにしてもよい。
・カム機構31は、省略可能である。この場合でも、内袋4を捻ることによって内袋4が縮径されて引き抜きやすくなる。
【符号の説明】
【0068】
1 :二重容器
2 :容器本体
3 :外殻
3a :開口端
3l :カムレール
3l1 :上面
3m :係合凹部
3m1 :下面
3o :段差
4 :内袋
4c :突出部
4c1 :突出筒
4c2 :係合凸部
4c3 :テーパー面
4c4 :当接フランジ
4c5 :環状凸部
4c6 :下面
4c7 :下面
4c8 :テーパー面
4d :内袋本体
4h :係合凸部
4k :拡径構造
4l :開口端
4m :係合部
5 :口部
5b :フランジ
5c :開口端
6 :胴部
6b :肩部
6c :胴部本体
7 :底部
8 :口部装着部材
8a :キャップ
9 :ロック機構
9a :内袋ロック機構
13 :外プリフォーム
13a :口部
13b :胴部
13c :底部
13d :環状凸部
14 :内プリフォーム
14a :口部
14b :胴部
14c :底部
14d :突出部
14m :係合部
14q :本体部
15 :プリフォーム
15a :口部
15b :胴部
15c :底部
26 :中栓
27 :オーバーキャップ
27a :外筒
27b :中間筒
27c :内筒
27d :天板
27e :ローレット
27f :雌ネジ部
28 :本体部
28a :外筒
28b :内筒
28c :環状凸部
28d :係合凸部
28e :天板
28f :吐出筒
28g :取付筒
28h :雄ネジ部
28i :ローレット
30 :連結部
31 :カム機構
32 :開栓部
32a :係合筒
42 :突出シール部
43 :シール部
45 :回転防止シール
C :中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10