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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003943
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】保持装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240109BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L23/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103317
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三輪 要
【テーマコード(参考)】
5F131
5F136
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131BA03
5F131BA04
5F131BA19
5F131CA02
5F131EA03
5F131EA04
5F131EB11
5F131EB81
5F131EB82
5F136CB06
5F136DA21
5F136DA31
5F136EA23
5F136FA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】板状部材とベース部材との間の熱膨張差に起因する保持装置の反りや割れの発生を抑制しつつ、保持装置の熱伝導性を高める保持装置を提供する。
【解決手段】静電チャックは、半導体ウェハ、ガラス基板等の対象物(ウェハW)を吸着保持できる保持装置であって、対象物を保持する第1表面と、反対側の第2表面10Bと、を有する絶縁性板状部材10と、第2表面10Bに接着されるベース部材20と、板状部材10の第2表面10Bに接合された金属製の熱伝導部材30と、を備える。ベース部材20には、熱伝導部材30の少なくとも一部をそれぞれ収容する複数の凹部22が形成されている。凹部22は、熱伝導部材30が抜けない形状をしている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を保持する第1表面と、前記第1表面の反対側に位置する第2表面と、を有する絶縁性の板状部材と、
前記第2表面に対向して配される第3表面を有するベース部材と、
前記板状部材の前記第2表面に接合された金属製の複数の熱伝導部材と、を備え、
前記ベース部材には、前記第3表面から凹み、前記熱伝導部材の少なくとも一部をそれぞれ収容する複数の凹部が形成されており、
前記凹部は、幅狭部と、前記幅狭部よりも前記第1表面に平行な方向に幅広に形成される幅広部と、を有し、
前記幅狭部は、前記幅広部と連通し、前記幅広部より前記第3表面側に配され、
前記熱伝導部材は、前記第2表面から前記ベース部材側に延びる軸部と、前記軸部の先端部に形成される返し部と、を備え、
前記軸部は前記幅狭部に挿通され、
前記返し部は、前記幅広部の内壁と接触し、前記熱伝導部材を前記凹部内に抜け止めしている、保持装置。
【請求項2】
前記熱伝導部材は、前記軸部から前記第1表面に平行な方向に拡径する拡径部を備え、
前記拡径部は前記第3表面に接触している、請求項1に記載の保持装置。
【請求項3】
前記板状部材を主に構成する材料の熱膨張係数と、前記ベース部材を主に構成する材料
の熱膨張係数とが異なる場合に、
前記幅狭部の内壁と前記軸部との間には隙間が設けられている、請求項1または請求項2に記載の保持装置。
【請求項4】
前記第2表面と前記第3表面との間には、樹脂製の接合部が介在している、請求項1または請求項2に記載の保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体製造装置の処理チャンバ内でウェハを保持する保持装置として、静電チャックが用いられる。静電チャックは、セラミックスを含む材料により形成された板状部材と、金属により形成されたベース部材と、板状部材とベース部材とを接合する接合部と、板状部材の内部に設けられたチャック電極とを備えている。静電チャックは、チャック電極に電圧が印加されることにより発生する静電引力を利用して、板状部材の表面にウェハを吸着して保持する。板状部材とベース部材とを接合する接合部は、例えば特許文献1に記載されるように、樹脂を含む材料により形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-143796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の静電チャックの構成では、板状部材とベース部材とを接合する接合部が樹脂を含む材料により形成されているため、接合部の熱伝導性に改善の余地がある。なお、静電チャックの熱伝導性を向上させるために、接合部を、樹脂と比べて熱伝導率の高い無機材料(金属やセラミックス等の無機接着材)により形成することも考えられる。しかしながら、無機材料により接合部を形成すると、無機材料は樹脂と比較して硬いため、板状部材とベース部材との間の熱膨張差に起因する応力を効果的に緩和することができず、該熱膨張差に起因する静電チャックの反りや割れが発生する場合がある。
【0005】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、板状部材とベース部材との間の熱膨張差に起因する保持装置の反りや割れの発生を抑制しつつ、保持装置の熱伝導性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の保持装置は、対象物を保持する第1表面と、前記第1表面の反対側に位置する第2表面と、を有する絶縁性の板状部材と、前記第2表面に対向して配される第3表面を有するベース部材と、前記板状部材の前記第2表面に接合された金属製の複数の熱伝導部材と、を備え、前記ベース部材には、前記第3表面から凹み、前記熱伝導部材の少なくとも一部をそれぞれ収容する複数の凹部が形成されており、前記凹部は、幅狭部と、前記幅狭部よりも前記第1表面に平行な方向に幅広に形成される幅広部と、を有し、前記幅狭部は、前記幅広部と連通し、前記幅広部より前記第3表面側に配され、前記熱伝導部材は、前記第2表面から前記ベース部材側に延びる軸部と、前記軸部の先端部に形成される返し部と、を備え、前記軸部は前記幅狭部に挿通され、前記返し部は、前記幅広部の内壁と接触し、前記熱伝導部材を前記凹部内に抜け止めしている、保持装置である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、板状部材とベース部材との間の熱膨張差に起因する保持装置の反りや割れの発生を抑制しつつ、保持装置の熱伝導性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1にかかる静電チャックの外観構成を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、静電チャックの模式的な断面図である。
図3図3は、図2において一点鎖線で囲まれた部分の拡大図である。
図4図4は、板状部材の図示を省略し、熱伝導部材の周辺を拡大して示す静電チャックの模式的な平面図である。
図5図5は、第1の具体例にかかる熱伝導部材について示す図である。
図6図6は、第1の具体例にかかる凹部の突出部を示す静電チャックの模式的な断面図である。
図7図7は、第2の具体例にかかる熱伝導部材について示す図である。
図8図8は、第2の具体例にかかる熱伝導部材を凹部に挿入する様子を示す説明図である。
図9図9は、実施形態2にかかる熱伝導部材の周辺を拡大して示す静電チャックの模式的な断面図である。
図10図10は、実施形態3にかかる熱伝導部材の周辺を拡大して示す静電チャックの模式的な断面図である。
図11図11は、実施形態4にかかる熱伝導部材の周辺を拡大して示す静電チャックの模式的な断面図である。
図12図12は、実施形態5にかかる熱伝導部材を凹部に挿入する様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列挙して説明する。
(1)本開示の保持装置は、対象物を保持する第1表面と、前記第1表面の反対側に位置する第2表面と、を有する絶縁性の板状部材と、前記第2表面に対向して配される第3表面を有するベース部材と、前記板状部材の前記第2表面に接合された金属製の複数の熱伝導部材と、を備え、前記ベース部材には、前記第3表面から凹み、前記熱伝導部材の少なくとも一部をそれぞれ収容する複数の凹部が形成されており、前記凹部は、幅狭部と、前記幅狭部よりも前記第1表面に平行な方向に幅広に形成される幅広部と、を有し、前記幅狭部は、前記幅広部と連通し、前記幅広部より前記第3表面側に配され、前記熱伝導部材は、前記第2表面から前記ベース部材側に延びる軸部と、前記軸部の先端部に形成される返し部と、を備え、前記軸部は前記幅狭部に挿通され、前記返し部は、前記幅広部の内壁と接触し、前記熱伝導部材を前記凹部内に抜け止めしている、保持装置である。
【0010】
金属製の熱伝導部材がベース部材の凹部の幅広部の内壁に接触するように配されるから、ベース部材と板状部材との間の熱伝導を向上させることができる。また、返し部により熱伝導部材が凹部内に抜け止めされるから、ベース部材と板状部材との接合性を向上させることができる。
【0011】
(2)上記(1)の保持装置において、前記熱伝導部材は、前記軸部から前記第1表面に平行な方向に拡径する拡径部を備え、前記拡径部は前記第3表面に接触していることが好ましい。
【0012】
拡径部がベース部材の第3表面に接触するから、ベース部材と板状部材との間の熱伝導をより一層向上させることができる。
【0013】
(3)上記(1)または(2)の保持装置において、前記板状部材を主に構成する材料の熱膨張係数と、前記ベース部材を主に構成する材料の熱膨張係数とが異なる場合に、前記幅狭部の内壁と前記軸部との間には隙間が設けられていることが好ましい。
【0014】
板状部材とベース部材との間に熱膨張差がある場合、熱膨張により第1表面に平行な方向について板状部材とベース部材とが互いにずれて配される。上記の構成では、幅狭部の内壁と軸部との間に隙間が設けられるから、熱膨張により第1表面に平行な方向について板状部材とベース部材とが互いにずれて配される場合でも、熱伝導部材の破損を抑制することができる。
【0015】
(4)上記(1)、(2)または(3)の保持装置において、前記第2表面と前記第3表面との間には、樹脂製の接合部が介在していることが好ましい。
【0016】
第2表面と第3表面との間に樹脂製の接合部を介在させることで、熱伝導部材が配置されない部分の抜熱と真空を確保することができる。また、ベース部材と板状部材との接合性をより一層向上させることができる。
【0017】
[本開示の実施形態1の詳細]
本開示の実施形態1について、図1から図8を参照しつつ説明する。なお、本開示は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明においては、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材の符号を省略する場合がある。
【0018】
<静電チャック>
本開示の保持装置は、半導体ウェハ、ガラス基板等の対象物(以下「ウェハW」という)を吸着保持できる静電チャック100である。静電チャック100は、例えば、図示しない半導体製造装置の処理チャンバに取り付けられ、プラズマを用いてウェハWに対する各処理(成膜、エッチング等)を行うために用いられる。
【0019】
静電チャック100は、図1に示すように、板状部材10と、ベース部材20と、熱伝導部材30(図2参照)と、を備える。静電チャック100は、ウェハWを静電引力により吸着保持できるようになっている。
【0020】
<ベース部材>
ベース部材20は、円盤状の部材であり、例えば、340mm程度の直径と35mm程度の厚みをもった形状に成形することができる。ベース部材20は、アルミニウム、アルミニウム合金等の導電性材料を主成分として構成されている。なお、ここでいう主成分とは、含有割合(重量割合)の最も多い成分を意味する。図2に示すように、ベース部材20は、板状部材10側に配される第3表面20Aと、第3表面20Aと反対側に配される第4表面20Bと、を有する。第3表面20Aはベース部材20の上側に配され、第4表面20Bはベース部材20の下側に配されている。
【0021】
ベース部材20の内部には、冷媒流路21が設けられている。冷媒流路21は図示しない冷媒循環装置に接続されている。冷媒循環装置は、フッ素系不活性液体、水等の冷媒を冷媒流路21に循環可能に構成されている。冷媒流路21に冷媒が流されると、ベース部材20が冷却され、後述する熱伝導部材30を介したベース部材20と板状部材10との間の伝熱(熱引き)により、板状部材10が冷却され、板状部材10の第1表面10Aで保持されたウェハWが冷却される。これにより、ウェハWの温度を制御できる。
【0022】
<凹部、幅狭部、幅広部>
図3に示すように、ベース部材20には、複数の凹部22が第3表面20Aから下方(第4表面20B側)に凹んで形成されている。凹部22は、幅狭部23と、幅狭部23よりも水平方向(第1表面10Aに平行な方向)に幅広とされる幅広部24と、を有する。幅狭部23は、幅広部24と連通し、幅広部24よりも第3表面20A側に配されている。幅狭部23及び幅広部24は、図4に示すように、上下方向から見て略円形状に設けることができる。また、幅狭部23及び幅広部24は、上下方向から見て例えば略多角形状であってもよい。
【0023】
<板状部材>
板状部材10は、全体として円盤状をなし、例えば、300mm程度の直径と5mm程度の厚みをもった形状に成形することができる。板状部材10は絶縁性の基板であって、例えば、窒化アルミニウム(AlN)やアルミナ(Al)を主成分とするセラミックスにより形成されている。板状部材10は、ウェハWを保持する第1表面10A(図1参照)と、第1表面10Aと反対側に配される第2表面10B(図2参照)と、を有する。図2に示すように、第1表面10Aは板状部材10の上側に配され、第2表面10Bは板状部材10の下側に配されている。第2表面10Bは、ベース部材20の第3表面20Aと対向して配されている。
【0024】
板状部材10の内部の第1表面10A側には、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されたチャック電極40が配置されている。チャック電極40にチャック電極用の端子(不図示)を介してチャック用電源(不図示)から電圧が印加されると、静電引力が発生し、この静電引力によってウェハWが板状部材10の第1表面10Aに吸着固定される。
【0025】
また、板状部材10の内部には、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)を含む抵抗発熱体により構成されたヒータ電極50が配置されている。ヒータ電極50にヒータ電極用の端子(不図示)を介してヒータ用電源(不図示)から電圧が印加されると、ヒータ電極50が発熱することによって板状部材10が温められ、板状部材10の第1表面10Aに保持されたウェハWが温められる。これにより、ウェハWの温度分布の制御が実現される。
【0026】
<熱伝導部材>
板状部材10の第2表面10Bには、複数の熱伝導部材30が接合されている。熱伝導部材30は、アルミニウムや銅、ステンレス等の金属から構成されている。板状部材10と熱伝導部材30とは、例えばロウ付け等により接合されている。上下方向から見た熱伝導部材30の寸法(外径)は、例えば5~10mm程度とされている。
【0027】
<軸部、返し部>
図3に示すように、熱伝導部材30は、軸部31と、軸部31の先端部に形成される返し部32と、を備える。軸部31は第2表面10Bに接続されており、ベース部材20側(下方)に延びている。返し部32は、軸部31の下端部に配されている。返し部32は、軸部31から水平方向に突出した形状を有する。図4に示すように、本実施形態の熱伝導部材30には、4つの返し部32が設けられ、上下方向から見て軸部31から放射状に広がる形態とされている。
【0028】
図3に示すように、静電チャック100において、熱伝導部材30はベース部材20の凹部22内に収容されている。軸部31は幅狭部23に挿通され、返し部32は幅広部24内に配されている。返し部32は、幅狭部23よりも水平方向について外側まで延びている。これにより、熱伝導部材30が凹部22内に抜け止めされるようになっている。返し部32は幅広部24の内壁に接触している。したがって、熱伝導部材30を介してベース部材20と板状部材10との間で熱伝導しやすくなっている。
【0029】
本実施形態では、板状部材10の主成分であるセラミック材料の熱膨張係数と、ベース部材20の主成分である導電性材料の熱膨張係数とは、異なっている。詳細には、板状部材10の主成分であるセラミック材料の熱膨張係数は、ベース部材20の主成分である導電性材料の熱膨張係数よりも小さい。このため、静電チャック100の温度が変化すると、板状部材10とベース部材20との間で、熱膨張による寸法変化の大きさに差が生じる。
【0030】
例えば静電チャック100の温度が変化した場合に、ベース部材20が板状部材10よりも水平方向に大きく膨張または収縮することで、幅狭部23の内壁が軸部31に圧接し、凹部22や熱伝導部材30が破損することがありうる。しかし、本実施形態では、幅狭部23の水平方向の寸法は、軸部31の水平方向の寸法よりも大きく設定され、幅狭部23の内壁と軸部31との間には隙間CLが設けられている。これにより、静電チャック100の温度が変化した場合でも、熱膨張による寸法変化に伴って幅狭部23の内壁が軸部31に接触しにくくなり、凹部22や熱伝導部材30の破損を抑制することができる。
【0031】
以下、熱伝導部材30の形状、及び凹部22への熱伝導部材30の挿入について、熱伝導部材30A(第1の具体例)及び熱伝導部材30B(第2の具体例)を例示して説明する。なお、本開示の熱伝導部材30の形状、及び凹部22への熱伝導部材30の挿入方法は、これらの具体例に限定されない。
【0032】
<第1の具体例>
第1の具体例にかかる熱伝導部材30Aは、凹部22内に挿入される前の段階では、図5に示すような形状をなし、返し部32は、軸部31に対して広がっていない形態とされている。熱伝導部材30Aを凹部22内に挿入する前の状態の返し部32を、脚部33とする。脚部33は、例えば円形状の軸部31の下端部にスリットを入れることで形成することができる。
【0033】
脚部33を幅狭部23よりも幅広とならない程度に軸部31に対して外方に広げた状態で、熱伝導部材30Aを凹部22内に挿入すると、脚部33が凹部22の底面に摺接することで脚部33が軸部31に対して外方へ押し広げられる。これにより、凹部22の幅広部24の内壁に返し部32が接触した状態にすることができる(図6参照)。
【0034】
熱伝導部材30Aが挿入される凹部22には、図6に示すように、凹部22の底面から第3表面20A側に突出する突出部25を設けてもよい。これにより、熱伝導部材30Aが凹部22内に挿入される際、脚部33が軸部31に対して外方に広がりやすくなる。
【0035】
<第2の具体例>
図7に示すように、第2の具体例にかかる熱伝導部材30Bは、熱伝導部材30Aと異なり、凹部22に挿入される前後で形状が略同一とされている。熱伝導部材30Bの返し部32は、軸部31を基端部として弾性変形可能な弾性片34とされている。弾性片34は、例えば円柱状の軸部31の先端部をプレス加工することで形成することができる。
【0036】
図8に示すように、熱伝導部材30Bを凹部22内に挿入すると、弾性片34が幅狭部23の内壁に摺接し、弾性変形する。熱伝導部材30Bをさらに凹部22の奥方へ押し込むと、弾性片34が幅広部24内に到達する。弾性片34は自然状態に復帰するか、もしくは、やや弾性変形した状態で、幅広部24の内壁に接触するようになっている。
【0037】
<実施形態1の効果>
以上のように、実施形態1の保持装置(静電チャック100)は、対象物(ウェハW)を保持する第1表面10Aと、第1表面10Aの反対側に位置する第2表面10Bと、を有する絶縁性の板状部材10と、第2表面10Bに対向して配される第3表面20Aを有するベース部材20と、板状部材10の第2表面10Bに接合された金属製の複数の熱伝導部材30と、を備え、ベース部材20には、第3表面20Aから凹み、熱伝導部材30の少なくとも一部をそれぞれ収容する複数の凹部22が形成されており、凹部22は、幅狭部23と、幅狭部23よりも第1表面10Aに平行な方向に幅広に形成される幅広部24と、を有し、幅狭部23は、幅広部24と連通し、幅広部24より第3表面20A側に配され、熱伝導部材30は、第2表面10Bからベース部材20側に延びる軸部31と、軸部31の先端部に形成される返し部32と、を備え、軸部31は幅狭部23に挿通され、返し部32は、幅広部24の内壁と接触し、熱伝導部材30を凹部22内に抜け止めしている。
【0038】
金属製の熱伝導部材30がベース部材20の凹部22の幅広部24の内壁に接触するように配されるから、ベース部材20と板状部材10との間の熱伝導を向上させることができる。また、返し部32により熱伝導部材30が凹部22内に抜け止めされるから、ベース部材20と板状部材10との接合性を向上させることができる。
【0039】
実施形態1では、板状部材10を主に構成する材料の熱膨張係数と、ベース部材20を主に構成する材料の熱膨張係数とが異なる場合に、幅狭部23の内壁と軸部31との間には隙間CLが設けられている。
【0040】
板状部材10とベース部材20との間に熱膨張差がある場合、熱膨張により第1表面10Aに平行な方向について板状部材10とベース部材20とが互いにずれて配される。上記の構成では、幅狭部23の内壁と軸部31との間に隙間CLが設けられるから、熱膨張により第1表面10Aに平行な方向について板状部材10とベース部材20とが互いにずれて配される場合でも、熱伝導部材30の破損を抑制することができる。
【0041】
[本開示の実施形態2の詳細]
本開示の実施形態2について、図9を参照しつつ説明する。実施形態2の静電チャック200は、板状部材10と、ベース部材20と、熱伝導部材130と、を備える。熱伝導部材130は拡径部135を備える点で、実施形態1の熱伝導部材30と異なっている。実施形態2のその他の構成については、実施形態1と同様であるから、実施形態1と同一の部材に対して同一の符号を付して説明を省略する。
【0042】
熱伝導部材130は、軸部31と、返し部32と、軸部31の第2表面10B側(上側)の位置に配される拡径部135と、を備える。拡径部135は、軸部31に対して水平方向(第1表面10Aに平行な方向)に外方に広がっている。上下方向から見て拡径部135は、例えば多角形状や円形状をなしている。拡径部135の第2表面10B側(上側)の端面は、第2表面10Bと接合されている。拡径部135はベース部材20の第3表面20Aに対向して配される対向面136を有する。拡径部135の上下方向及び水平方向の寸法は、対向面136の少なくとも一部が第3表面20Aに接触するように設定されている。
【0043】
<実施形態2の効果>
実施形態2では、熱伝導部材130は、軸部31から第1表面10Aに平行な方向に拡径する拡径部135を備え、拡径部135は第3表面20Aに接触している。
【0044】
拡径部135がベース部材20の第3表面20Aに接触するから、ベース部材20と板状部材10との間の熱伝導をより一層向上させることができる。
【0045】
[本開示の実施形態3の詳細]
本開示の実施形態3について、図10を参照しつつ説明する。実施形態3の静電チャック300は、板状部材10とベース部材20とを接合する接合部260を備える点で、実施形態1の静電チャック100と異なっている。実施形態3のその他の構成については、実施形態1と同様であるから、実施形態1と同一の部材に対して同一の符号を付して説明を省略する。
【0046】
接合部260は、例えば、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の接着剤によって構成されている。接合部260は、板状部材10の第2表面10Bとベース部材20の第3表面20Aとの間に配されている。接合部260は、少なくとも凹部22及び熱伝導部材30の周囲を囲むように配置される。接合部260が第2表面10Bと第3表面20Aの間の空間のほぼ全体を占める場合には、接合部260は、凹部22及び熱伝導部材30に対応する位置に貫通孔261を有して形成される。
【0047】
<実施形態3の効果>
実施形態3では、第2表面10Bと第3表面20Aとの間には、樹脂製の接合部260が介在している。
【0048】
第2表面10Bと第3表面20Aとの間に樹脂製の接合部260を介在させることで、熱伝導部材30が配置されない部分の抜熱と真空を確保することができる。また、ベース部材20と板状部材10との接合性をより一層向上させることができる。
【0049】
[本開示の実施形態4の詳細]
本開示の実施形態4について、図11を参照しつつ説明する。実施形態4の静電チャック400は、実施形態2の熱伝導部材130と、実施形態3の接合部260と、を備える。実施形態4の構成及び作用効果については、実施形態1から実施形態3で説明した構成及び作用効果と同様であるため、説明を省略する。
【0050】
[本開示の実施形態5の詳細]
本開示の実施形態5について、図12を参照しつつ説明する。実施形態5の静電チャック500は、熱伝導部材430の返し部432の形態が実施形態1と異なっている。実施形態5のその他の構成については、実施形態1と同様であるから、実施形態1と同一の部材に対して同一の符号を付して説明を省略する。
【0051】
実施形態5の返し部432は、一対の変形部433と、一対の変形部433により囲まれて構成されるスリット部434と、を有する。熱伝導部材430が凹部22に挿入される前の段階では、一対の変形部433は上下方向に延びており、一対の変形部433の差し渡し寸法は軸部31と略同一とされている。スリット部434は上下方向に長い長孔状となっている。
【0052】
熱伝導部材430が凹部22に挿入されると、熱伝導部材430の先端部が凹部22の底面に当接して、一対の変形部433が軸部31に対して外側に広がるように変形する。熱伝導部材430が凹部22の奥方まで挿入された状態では、一対の変形部433は幅広部24の内壁に接触するようになっている。この状態では、スリット部434は水平方向に長い長孔状をなしている。
【0053】
実施形態5の作用効果については、実施形態1の作用効果と同様であるため、説明を省略する。
【0054】
<他の実施形態>
上記実施形態における凹部22及び熱伝導部材30,130,430の形状や大きさ等はあくまで一例であり、例えば、下記のように適宜変更可能である。
(1)返し部は軸部から放射状に広がる形態でなくてもよい。
(2)1つの熱伝導部材に設けられる返し部の個数は任意に設定してよい。
【符号の説明】
【0055】
10…板状部材 10A…第1表面 10B…第2表面
20…ベース部材 20A…第3表面 20B…第4表面 21…冷媒流路 22…凹部 23…幅狭部 24…幅広部 25…突出部
30,130,430…熱伝導部材 30A…熱伝導部材 30B…熱伝導部材 31…軸部 32,432…返し部 33…脚部 34…弾性片 135…拡径部 136…対向面 433…一対の変形部 434…スリット部
40…チャック電極
50…ヒータ電極
100,200,300,400,500…静電チャック
260…接合部 261…貫通孔
CL…隙間
W…ウェハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12