(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003944
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】断熱容器
(51)【国際特許分類】
A61F 7/10 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
A61F7/10 330S
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103318
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】510049735
【氏名又は名称】日東商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】飯田 拓治
【テーマコード(参考)】
4C099
【Fターム(参考)】
4C099AA02
4C099CA03
4C099CA20
4C099EA08
4C099GA02
4C099GA17
4C099HA02
4C099LA01
4C099LA07
4C099LA11
4C099LA21
4C099NA02
4C099NA03
(57)【要約】
【課題】冷却部材または温熱部材を収納するための収納室を備え、当該収納室に収納された冷却部材からの冷気または温熱部材からの暖気を、被冷却体に対し選択的に放散させ、熱効率を向上させることが可能な断熱容器を提供する。
【解決手段】断熱容器100は、断熱部材22により構成された容器本体24と、容器本体24の内部に設けられ冷却部材10または温熱部材を収納するための収納室20と、収納室20に対し冷却部材10または温熱部材を出し入れ可能とする出入口部30を有し、収納室20を構成する壁面の所定領域に通気窓40が設けられ、通気窓40を介して収納室20と断熱容器100の外部とが通気可能である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱部材により構成された容器本体と、
前記容器本体の内部に設けられ冷却部材または温熱部材を収納するための収納室と、
前記収納室に対し前記冷却部材または前記温熱部材を出し入れ可能とする出入口部を有する断熱容器であって、
前記収納室を構成する壁面の所定領域に通気窓が設けられ、
前記通気窓を介して前記収納室と前記断熱容器の外部とが通気可能であることを特徴とする断熱容器。
【請求項2】
前記収納室を介して前記通気窓が設けられた面とは反対側の面に遮熱層が設けられている請求項1に記載の断熱容器。
【請求項3】
前記容器本体が発泡樹脂材および/またはエアー緩衝材を用いて構成されている請求項1または2に記載の断熱容器。
【請求項4】
前記収納室が2以上設けられており、前記収納室それぞれに1以上の前記通気窓が設けられている請求項3に記載の断熱容器。
【請求項5】
前記通気窓が、前記収納室を構成する壁面の一部に設けられた開口部と、当該開口部を覆う目付量30g/m2以上400g/m2以下および/または平均厚み35μm以上150μm以下の通気性シートとを用いて構成されている請求項3に記載の断熱容器。
【請求項6】
前記出入口部と前記通気窓が同じ面に設けられ兼用されている請求項3に記載の断熱容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱容器に関し、より詳しくは、内部に冷却部材または温熱部材を収納するための収納室を備えた断熱容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人体、食品などの任意の被冷却体を冷却するための冷却部材が知られている。冷却部材としては、たとえば、吸熱剤と水とを接触させて吸熱反応を生じさせるタイプのものや、含水させたジェル状の高吸収性ポリマーなどが知られる。このような冷却部材は、単体で取り扱われる場合もあるが、たとえば特許文献1に提案されるような保冷具に収納されて、被冷却体に対し固定されることによって被冷却体を冷却することが可能である。
【0003】
より具体的には、特許文献1に提案される保冷具は、面ファスナーにより使用者の首部に着脱できるベルトと、当該ベルトの内側に取り付けられた複数個のポケットとを有し、ポケットの上部に保冷剤を挿入するための開口部が設けられている。上記ポケットは伸縮性および吸湿性のあるニットで構成され、また上記保冷具ベルトは、ニットほどの伸縮性は要されないものの既存の綿と化繊の混紡品やポリウレタンを主とする弾性繊維で構成されている。かかるポケットに保冷剤を挿入した状態で当該保冷具を首部に巻き付けることによって、装着箇所において保冷剤がずれたりすることが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1に開示される保冷具は、以下の問題があった。
即ち、上述する保冷具において、保冷剤は、ニットから構成されるポケットと弾性繊維で構成されるベルトとの間に収納される。そのため、保冷剤からの冷気は、当該ポケットを構成するニットを介して人体側に伝達されるとともに、ベルトを構成する弾性繊維から人体とは反対側にも放散される。つまり、上記保冷具では、ポケット側だけでなくベルト側でも有意な熱交換がなされるため、保冷剤の冷熱が失われ易く冷却可能時間が短くなる虞があった。
【0006】
また特許文献1に開示される保冷具のポケットに、冷却部材の替りに使い捨てカイロのような温熱部材を収納することも可能であるが、この場合、温熱部材の暖気は、当該ポケットを構成するニットを介して人体側に伝達されるとともに、ベルトを構成する弾性繊維から人体とは反対側にも放散される。そのため、当該温熱部材からの温熱を首部に対し選択的に作用させることができず熱効率が悪い。
【0007】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、冷却部材または温熱部材を収納するための収納室を備え、当該収納室に収納された冷却部材からの冷気または温熱部材からの暖気を、被冷却体に対し選択的に放散させ、熱効率を向上させることが可能な断熱容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の断熱容器は、断熱部材により構成された容器本体と、上記容器本体の内部に設けられ冷却部材または温熱部材を収納するための収納室と、上記収納室に対し上記冷却部材または上記温熱部材を出し入れ可能とする出入口部を有する断熱容器であって、上記収納室を構成する壁面の所定領域に通気窓が設けられ、上記通気窓を介して上記収納室と上記断熱容器の外部とが通気可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の断熱容器は、断熱部材により構成された容器本体と、当該容器本体の内部に設けられ冷却部材または温熱部材を収納するための収納室を備えている。上記収納室には、通気窓が設けられており、当該通気窓を介して収納室の内部から外部に対し冷気または暖気を放散することができる。したがって、冷却部材または温熱部材を収納した本発明の断熱容器を用い、通気窓に対向する位置に被冷却体を配置することで、被冷却体を選択的に冷却または保温することができるため、熱効率が良い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第一実施形態にかかる断熱容器の通気窓を備える側から見た概略平 面図である。
【
図2】
図1に示す断熱容器のII-II線概略断面図である。
【
図3】
図1に示す断熱容器のII-II線概略断面図であり蓋部が開放された状態を示 す。
【
図4】(4A)および(4B)は本発明の第一実施形態の断熱容器の使用状態を説明するための説明図である。
【
図5】本発明の第二実施形態にかかる断熱容器の通気窓を備える側から見た概略平面図である。
【
図6】本発明の第二実施形態にかかる断熱容器の蓋部を備える側から見た概略平面図であり、複数の蓋部のうちの1つが開放された状態を示す。
【
図7】本発明の第三実施形態にかかる断熱容器の通気窓および出入口部を備える側から見た概略平面図である。
【
図8】本発明の第三実施形態にかかる断熱容器の概略平面図であり、蓋部が開放された状態を示す。
【
図9】
図7に示す断熱容器のIII-III線概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜に省略する。図示する本発明の実施態様は、理解容易のために、特定の部材を全体において比較的大きく図示する場合、または小さく図示する場合などがあるが、いずれも本発明の各構成の寸法比率を何ら限定するものではない。
【0012】
[第一実施形態]
以下に
図1~
図4を用いて本発明の第一実施形態について説明する。
図1は、本発明の第一実施形態にかかる断熱容器100の概略平面図である。
図1は、断熱容器100の通気性シート44が設けられた側を上面として観察した際の平面図である。
図2は、
図1に示す断熱容器100のII-II線概略断面図であり蓋部60が閉じた状態を示している。一方、
図3は、
図1に示す断熱容器100のII-II線概略断面図であり蓋部60が開放された状態を示している。
図4Aおよび
図4Bは第一実施形態の断熱容器100の使用状態を説明するための説明図である。
【0013】
図1に示すとおり断熱容器100は、断熱部材22により構成された容器本体24と、容器本体24の内部に設けられ冷却部材または温熱部材(本実施形態では冷却部材10)を収納するための収納室20と、収納室20に対し冷却部材または温熱部材を出し入れ可能とする出入口部30(
図3参照)を備える。収納室20を構成する壁面の所定領域には通気窓40が設けられており、通気窓40を介して収納室20と断熱容器100の外部とが通気可能である。尚、本発明の断熱容器における容器という概念は、容器本体の内部に冷却部材または温熱部材を収納可能な収納室を備えるものを広く含み、器状のもの、箱状のもの、袋状のものなどであってもよいし、これらに特に限定されない。
かかる構成を備える断熱容器100は、収納室20に収納された冷却部材から伝搬される冷気または温熱部材から伝搬される暖気が通気窓40から選択的に断熱容器100の外部に放散される。そのため、通気窓40以外の方向に熱エネルギーが放散することが抑制され、通気窓40に対向する位置に配置された被冷却体を効率よく冷却または保温することができる。また、冷却部材または温熱部材は断熱部材により構成された容器本体24の内部に収納されているため、外気温に影響を受け難く、冷却部材の冷却効果または温熱部材の温熱効果を長く維持することが可能である。
以下に本発明についてさらに詳細に説明する。尚、以下の説明では収納室20に冷却部材10が収納され、通気窓40から冷気が放散される例を用いて本発明を説明するが、冷却部材10は適宜温熱部材と入れ替えることが可能であり、その場合には通気窓40から暖気が放散される。
【0014】
断熱容器100に設けられた収納室20は、冷却部材10が収納された状態で、
図2の紙面上下方向において適宜の厚みtを有するが、断熱容器100全体としては略扁平状であり、通気性シート44が設けられた面と、当該面とは反対側の面とを少なくとも有する。
【0015】
本実施形態における断熱容器100は、断熱部材22で構成された容器本体24と、容器本体24の両端部に設けられたベルト70とを有し、全体として、一方方向に長尺状に構成されている。ベルト70の2つの自由端は、互いに一対となる接合手段72が設けられており、断熱容器100がリング状となるように留めることが可能である。そのため、たとえば
図4Aに示すように使用者200の首部に断熱容器100を巻き付け、
図4Bに示すようにベルト70の両端部に設けられた接合手段72により互いの位置関係を固定することによって、上記首部に断熱容器100を安定して装着することができる。接合手段72は、このように被冷却体に対して断熱容器100を巻き付ける等して固定可能な手段であればいずれのものでもよく、たとえば、面ファスナー、線ファスナー、点ファスナー、ボタンとボタンホールなどが例示される。
【0016】
容器本体24を構成する断熱部材22は、通気窓40に設けられる通気性シート44よりも断熱性能が高い部材から適宜選択される。これによって、収納室20を構成する壁面全体において、相対的に多くの熱エネルギー(冷気または暖気)を通気窓40から外部に放散させることが可能である。より高い断熱性を示すという観点からは、断熱部材22は、非通気性の部材であることが好ましい。また断熱容器100を、冷却体の種々の形状面に追従させ易く取り付け易くするという観点からは、断熱部材22は可撓性部材であることが好ましい。
【0017】
容器本体24の断熱性および可撓性のいずれの要求も良好に満たすという観点からは、容器本体24を構成するための断熱部材22は、発泡樹脂材および/またはエアー緩衝材であることが好ましい。上記発泡樹脂材としては、たとえばポリウレタン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂などが挙げられる。
たとえばこれらの発泡樹脂材を用い、内部に収納室20をなす空間が確保された所定形状の発泡樹脂成形体を容器本体24として用いることができる。あるいは、上述する発泡樹脂材を用いて形成されたシート状物を積層させて所定厚みを有する積層体を容器本体24として用いることもできる。かかる積層体を容器本体24に用いる場合には、少なくとも当該積層体を構成する樹脂シートのいずれかまたは全ての中央部を収納室20の形状に合わせて繰り抜くか、あるいは、樹脂シートを所定形状に切断した複数の樹脂パーツを用い、樹脂部材からなる枠組みを構成し当該枠組みの内側を収納室20とすることもできる。
【0018】
またエアー緩衝材を用い、内部に収納室20をなす空間が確保された所定形状の容器を容器本体24として用いることができる。ここでエアー緩衝材とは、ポリエチレンフィルムなどの可撓性のある樹脂フィルムで構成された密閉の空気室を複数有する部材を指す。たとえばエアー緩衝材の一例として、ベースシート部と、ベースシート部の一方側面において当該面から離れる方向に凸状の複数の空気室(気泡)を有するシート状の気泡緩衝材が挙げられる。かかる空気室(気泡)の大きさは特に限定されないが、一般的には、直径5mm以上20mm以下の程度である。かかるシート状の気泡緩衝材を用い、上述する発泡樹脂材を用いて形成されたシート状物を用いて積層体を成形する方法と同様に積層体を作製し、これを容器本体24として用いることができる。
また気泡緩衝材の異なる例として、エアーピローあるいはエアークッションなどと称呼されるエアー緩衝材を挙げることができ、特に被冷却体が大きい場合、あるいは比較的大きな空間を冷却したい場合などには、有用である。たとえば、所定形状の密閉の空気室が一方方向に並ぶ長尺状のエアーピローを用い、長さ方向両端部を接着してリング体を形成し、当該リング体の内部を収納室20とし、リング体の一方側の開口に通気窓40を構成する通気性シート44を設けるとともに、他方側の開口に蓋部60を設けてもよい。エアーピローあるいはエアークッションにおける空気室の大きさおよび形状は特に限定されないが、たとえば、1つの空気室が略長方形であり、隣り合う長方形の空気室の長辺同士あるいは短辺同士が連続してなる形状が例示される。
【0019】
以上に述べる容器本体24のいくつかの態様は、本発明における一例であって、本発明を何ら制限するものではない。本発明における容器本体24は、断熱部材22より構成され内部に収納室20が設けられるとともにかかる収納室20に面する所定の領域に通気窓40が設けられることによって、相対的に通気窓40から熱エネルギーを多く放散可能な構成をなすことが肝要である。
【0020】
容器本体24の両端には、ベルト70が設けられている。そのため
図4に示すように、本実施形態の断熱容器100は、首部(被冷却体)に対し通気窓40が設けられた面が対面する向きで使用者200に対し取付け固定される取付けタイプである。断熱容器100が取り付けられる箇所は、首部に限定されず、腕、脚、背中、頭などのいずれの箇所であってもよく、また人体以外の被冷却体に取り付けることもできる。
このような取付けタイプの断熱容器100は、収納室20に収納された冷却部材10からの冷気を、熱効率よく直接的に冷やしたい箇所に対し放散させることができる。
【0021】
ベルト70を構成する部材は特に限定されないが、可撓性があるものが好ましく、断熱容器100を人体に対し装着することを予定する場合には、織物や編物などの肌触りの良い部材であることが好ましい。
また、人体の任意の箇所に取付けて使用することが予定される断熱容器100は、人体に対する肌触りを向上させるために、適宜、通気窓40を除く人体に当接する側の最外面に、織物や編物などの肌触りの良い部材を設けることもできる。
【0022】
収納室20は、断熱部材22で構成された容器本体24の内部に設けられている。収納室20の寸法は、冷却部材10を収納できる範囲で適宜決定される。あるいは収納室20の寸法に併せて、適当な寸法の冷却部材10が選択されてもよい。本実施形態では1つの収納室20に1つの冷却部材10が収納された態様を説明するが、収納室20に複数の冷却部材10が収納されてもよい。
【0023】
通気窓40と蓋部60とが対向する面に設けられた本実施形態では、容器本体24の厚み方向を貫通する貫通穴が確保され、当該貫通穴の一方の端面を出入口部30、他方の端面を開口部42とし、これらに囲まれた内部が収納室20となっている。
【0024】
断熱容器100には、少なくとも1つの収納室20が設けられるが、本実施形態では、収納室20は、2以上設けられており、複数の収納室20それぞれに1以上の通気窓40が設けられている。本実施形態では、具体的には収納室20が2つ設けられており、1つの収納室20に1つの通気窓40が設けられている。
1つの大きな収納室20に、複数の冷却部材10を収納した場合、収納室20の内部において冷却部材10の位置が移動してしまい、通気窓40において冷熱の放散に偏りが発生する場合がある。これに対し、本実施形態のように、収納室20を複数設け、各収納室20に冷却部材10を収納することで、断熱容器100における冷却部材10の位置の移動を抑制し、被冷却体に対し広い面積を均等に冷却することができるため好ましい。
【0025】
収納室20に収納される冷却部材10は、外気温よりも低い温度の冷気を放散することのできる部材であればよく、冷気の放散を一定時間維持できるものであることがより好ましい。冷却効果を充分に上げるという観点では、冷却部材10の温度は、10℃以下であることが好ましく、5℃以下であることがより好ましく、0℃以下であることがさらに好ましい。冷却部材10の具体例としては、密封の袋や容器に収容された保冷剤、氷、ドライアイスなどが挙げられる。上記保冷剤としては、たとえば、含水させたジェル状の高吸収性ポリマーなどが挙げられるがこれに限定されず、保冷剤として一般的に知られる適宜の部材から選択可能である。
また本発明は、冷却部材10の替りに温熱部材を用いることもできるが、この温熱部材としては、外気温よりも高い温度の暖気を放散することのできる部材であればよく、暖気の放散を一定時間維持できるものであることがより好ましい。具体的には、市販の使い捨てカイロなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0026】
収納室20には、収納室20に対し冷却部材10を収納し、また取り出すための出入口部30が設けられている。本実施形態の出入口部30は、上面視において四方を断熱部材22で区画されることで形成されており、冷却部材10が通過可能な開口である。本実施形態では、出入口部30は、通気窓40が設けられた面とは反対側の面に設けられている(
図3参照)。使用時は、
図2に示すとおり、出入口部30は、蓋部60によって閉じられているため、収納室20に収納された冷却部材10の収納状態が維持されている。これに対し、冷却部材10を出し入れする場合には、
図3に示すとおり蓋部60を開けて出入口部30を露出させる。本実施形態では、複数の収納室20のそれぞれに設けられた複数の出入口部30の全てを覆う1つの蓋部60が設けられている。蓋部60は、出入口部30を覆い、出入口部30を区画する断熱部材22に対し取付け固定される。かかる取付け固定の手段は特に限定されないが、たとえば、蓋部60の所定の箇所と、断熱部材22の所定の箇所において互いに対となる接合手段を設けるとよい。接合手段の例は特に限定されないが、たとえば、面ファスナー、線ファスナー、点ファスナー、ボタンとボタンホールなどが例示される。
【0027】
蓋部60は、収納室20に収納された冷却部材10の収納状態を維持可能な程度の強度がある部材を用いて構成されるとよい。また
図4に示すように湾曲した被冷却体にも良好に対応できるよう、蓋部60を構成する部材は可撓性部材であることが好ましい。また、本実施形態のように、蓋部60が、通気窓40が設けられた面とは反対側の面に設けられる場合には、通気窓40に設けられた通気性シート44よりも断熱性の高い部材から蓋部60を構成するとよい。たとえば蓋部60は、ポリウレタン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂などから成形された樹脂シート、あるいは上述するエアー緩衝材により構成することができる。上記樹脂シートは、発泡樹脂シート52、あるいは非発泡樹脂シートのいずれでもよいが、断熱性能に優れるという観点から本実施形態では発泡樹脂シート52が採用されている。より好ましくは、本実施形態における蓋部60は、容器本体24を構成する断熱部材22と同様の部材から構成されるとよい。この場合、蓋部60を構成する部材と断熱部材22とが同一または同種であってもよいし異種であってもよい。
【0028】
また断熱容器100の断熱性をより向上させるため、断熱容器100は、収納室20を介して通気窓40が設けられた面とは反対側の面に、遮熱層50が設けられるとよい。本実施形態では、通気窓40とは反対側の面に設けられた蓋部60を構成する発泡樹脂シート52に、遮熱層50が積層され、蓋部60が構成されている。本実施形態では、発泡樹脂シート52の内側面(収納室20に向いている面)に遮熱層50が設けられた例を示すが、遮熱層50は、発泡樹脂シート52の外側面(上記内側面と反対側の面)に設けられてもよく、また発泡樹脂シート52の両面に設けられてもよい。
【0029】
遮熱層50を設けることで、より一層、遮熱層50が設けられた面から冷気が放散し難くなり、その結果、相対的に通気窓40からの冷気の放散が顕著となる。また遮熱層50を設けることで、外気温が冷却部材10に伝わり難くなるため、冷却部材10の温度が外気温により上昇することが抑制され、冷却時間を長く維持することができる。
尚、冷却部材10の替りに温熱部材を収納室20に収納した場合にも同様に、遮熱層50が設けられた面から暖気が放散し難くなり、その結果、相対的に通気窓40からの暖気の放散が顕著となる。また、収納室20において放散された暖気の一部が遮熱層50において反射して通気窓40に向かうため、通気窓40から外部に放出される暖気を一層増大させ得る。
【0030】
遮熱層50を構成する遮熱部材としては、断熱性が高い部材が好ましく、さらに輻射熱の出入りを良好に妨げることが可能な部材であることより好ましい。上記遮熱部材としては、たとえばアルミニウム、シリコン、アクリルシリコン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素樹脂などが挙げられるが、これに限定されない。これらの遮熱部材を、塗布あるいは蒸着などの手段により発泡樹脂シート52の少なくとも一方側面に積層させることで遮熱層50を形成してもよいし、あるいは、上記遮熱部材をシート状に成形してなる単層遮熱シート、あるいは基材シートに上記遮熱部材を積層させた積層遮熱シートを準備し、これを発泡樹脂シート52の少なくとも一方側面に積層させることで遮熱層50を構成することもできる。
【0031】
次に、通気窓40について説明する。通気窓40は、収納室20を構成する壁面の所定領域に設けられ、収納室20と断熱容器100の外部とを通気可能とする。本実施形態では、容器本体24に設けられた収納室20と、容器本体24の外部とを連通させるための所定形状の開口部42と、開口部42を覆う通気性シート44により通気窓40が構成されている。
ただし本実施形態の通気窓40は、一例であって、何ら本発明を制限するものではない。収納室20に収納された冷却部材10が脱落しない範囲において、通気窓40は、通気性シート44を有しない開口部42のみから構成されてもよい。たとえば図示省略する通気窓40の変形例としては、
図2、
図3に示す開口部42の位置に容器本体24に連続する壁部を設け、当該壁部に小径の孔を複数設け、この複数の孔を通気窓40とすることもできる。尚、ここでいう上記壁部は、容器本体24と一体成形されてもよいし、別部材を容器本体24に取り付けても良い。
【0032】
本実施形態における通気窓40を構成する通気性シート44は、収納室20に収納された冷却部材10の冷気が通過可能なシートであればよく、たとえば、織布や編物などの生地、不織布、メッシュシートなどのシート状部材が挙げられる。
通気性シート44の目付は、20g/m2以上450g/m2以下であることが好ましく、30g/m2以上400g/m2以下であることがより好ましい。上記目付を20g/m2以上とすることで収納室20に収納された冷却部材10の収納状態を良好に維持しシートの破損の発生を抑制することができるため好ましく、また上記目付を450g/m2以下とすることで、通気性シート44において良好に冷気又は暖気を通過させ外部に熱エネルギーを放散することができるための好ましい。
また通気性シート44の平均厚みは、25μm以上170μm以下であることが好ましく、35μm以上150μm以下であることがさらに好ましい。上記平均厚みを25μm以上とすることで収納室20に収納された冷却部材10の収納状態を良好に維持しシートの破損の発生を抑制することができるため好ましく、また上記平均厚みを170μm以下とすることで、通気性シート44において良好に冷気又は暖気を通過させ外部に熱エネルギーを放散することができるための好ましい。通気性シート44の平均厚みは、たとえば通気性シート44において無作為に選択された10箇所において厚みを実測し、その平均値を求めることで得られる。
【0033】
たとえば本実施形態におけるより通気性窓40の望ましい態様として、収納室20を構成する壁面の一部に設けられた開口部42と、開口部42を覆う、目付量30g以上400g以下および/または平均厚み35μm以上150μm以下の通気性シート44を用いて構成された通気窓40を上げることができる。かかる態様の通気窓40であれば、開口部42において、収納室20から外部に対し良好に冷気を放散させることができるため好ましい。
【0034】
[第二実施形態]
次に本発明の第二実施形態について
図5、
図6を用いて説明する。
図5は、本発明の第二実施形態にかかる断熱容器120の通気窓40を備える側から見た概略平面図である。
図6は、本発明の第二実施形態にかかる断熱容器120の蓋部60を備える側から見た概略平面図であり、複数の蓋部60のうちの1つが開放された状態を示す。
【0035】
本実施形態における断熱容器120は、平面視において、縦方向および横方向に配列された複数の収納室20を備える。断熱容器120は、収納室20に冷却部材10が収納された状態で、適宜の厚みを有するが、全体としては略平板状であり、通気性シート44が設けられた面と、当該面とは反対側の面とを少なくとも有する。
【0036】
断熱容器120は、取付け固定用のベルト70を有しておらず、任意の面に置いて設置する設置タイプ(置き型タイプ)である。設置タイプの断熱容器120は、通気窓40を上側にして設置することで、断熱容器120の上方の空間を冷却し、あるいは断熱容器120の上に置かれた物などを冷却することができる。ただし本発明は、第一実施形態と同様に、第二実施形態の断熱容器120に取付け固定用のベルト部を設け取付けタイプの使用態様とすることを包含する。
【0037】
断熱容器120は、断熱部材22により構成された容器本体24と、容器本体24の内部に設けられ冷却部材10を収納するための収納室20と、収納室20に対し冷却部材10を出し入れ可能とする出入口部30(
図6参照)を有する。略平板状の断熱容器120の一方側の面には、通気窓40が設けられている(
図5参照)。本実施形態における通気窓40は、各収納室20に設けられた開口部42と、これら全体を覆う一枚の通気性シート44とから構成されている。変形例として、1つの開口部42を覆う通気性シート44を開口部42の数だけ準備し、複数の開口部42を個別に通気性シート44で覆うことで窓部40を構成することもできる。
断熱容器120も、第一実施形態の断熱容器100と同様に、通気窓40を介して収納室20と断熱容器120の外部とが通気可能である。
【0038】
断熱容器120は、通気窓40が設けられた面とは反対側の面に、出入口部30とこれを覆う蓋部60とが設けられている(
図6参照)。本実施形態は、出入口部30が、複数の収納室20それぞれに設けられており、また複数の出入口部30それぞれに蓋部60が設けられている。
図6に示すとおり、1つの蓋部60を開けると、出入口部30が開口した状態となり、収納室20に収納された冷却部材10が露出する。
【0039】
たとえば、単に、袋や容器などの収容体の底面に保冷剤を複数置いたとしても、それらの保冷剤は収容体の底面上において移動してしまうため、当該収容体の底面において均等に冷気を放散させることが難しい。これに対し、縦方向および横方向に配列された複数の収納室20を備える断熱容器120を上記収容体の底面上に設置した場合、複数の収納室20に収納された各冷却部材10は、収納室20の内部でしか移動しないため、当該収容体の底面において均等に冷気を放散することができる。したがって、一定の面積を有する面全体で冷却を行いたい場合に有効である。具体例として、買い物バックやレジャー用の食品バックの底面に断熱容器120を設置した上、それらに食品等を入れることで、食品等を均等に冷却することができる。また、断熱容器120は、断熱容器100と同様に、通気窓40が設けられた面から冷気が放散され易い構造となっているため、冷却効果を長時間維持可能である。
【0040】
[第三実施形態]
次に本発明の第三実施形態について、
図7~
図9を用いて説明する。
図7は、本発明の第三実施形態にかかる断熱容器140の概略平面図であり、蓋部62が閉じられた状態を示している。
図8は、断熱容器140の概略平面図であり、蓋部62が開放された状態を示している。
図9は、
図7に示す断熱容器のIII-III線概略断面図である。
本実施形態では、出入口部30と通気窓40とが同じ面に設けられ兼用された態様について説明する。本実施形態によれば、構成の一部を兼用することによって、全体の構造をシンプルにすることができ、製造容易性および製造コストの抑制において好ましい。また、断熱容器140は、通気窓40と反対側の面が完全に封止されているため、より高い断熱性能が期待される。
【0041】
具体的には、断熱容器140は、
図8、
図9に示すとおり、冷却部材10の出入口部30と、通気窓40を構成する開口部42とが兼用されており、また出入口部30を塞ぐ蓋部62と、通気窓40を構成する通気性シート44とが兼用されている。蓋部62および通気性シート44を兼用するシートは、出入口部30および開口部42に兼用される開口を覆っており、当該開口を区画する断熱部材22に対し取付け固定される。かかる取付け固定の手段は特に限定されないが、たとえば、蓋部62であり通気性シート44である上記シートの所定の箇所と、断熱部材22の所定の箇所において互いに対となる接合手段を設けるとよい。接合手段の例は特に限定されないが、たとえば、面ファスナー、線ファスナー、点ファスナー、ボタンとボタンホールなどが例示される。
【0042】
本実施形態における容器本体42は、
図9に示すとおり、シート状の樹脂部材22Bと、枠状の樹脂部材22Aが積層されて構成されている。枠状の樹脂部材22Aは、
図8に示されるとおり平面視ロの字状であり、これによって収納室20を区画している。枠状の樹脂部材22Aは、一連の樹脂部材からロの字状に構成されてもよく、ロの字を構成するための複数の樹脂パーツで枠状に構成されてもよい。
樹脂部材22Aと樹脂部材22Bとは、適宜の接着手段により接着されるとよい。接着手段としては、樹脂部材22Aと樹脂部材22Bとが当接する面の少なくともいずれか一方に接着剤の塗布する手段、あるいは樹脂部材22Aと樹脂部材22Bとが当接する面の少なくともいずれか一方を加熱溶融させて粘着性を生じせしめこれによって接着する手段などが挙げられるがこれに限定されない。
樹脂部材22Aおよび樹脂部材22Bを構成する樹脂部材は、第一実施形態において説明した断熱部材22を構成する各部材から適宜選択することができる。また、本実施形態の変形例として、1種の樹脂部材により一連一体の容器本体24を成形してもよい。
【0043】
上述するとおり、本実施形態では、出入口部30と通気窓40とが同じ面に設けられているため、遮熱層50は、これらが設けられた面とは反対側の面に積層されている。具体的には本実施形態における遮熱層50は、容器本体24を構成するシート状の樹脂部材22Bの少なくとも一方の側面に積層されて、
図9では樹脂部材22Bの外側面(収容室20と対向する側とは反対側の面)に断熱層50が積層された例を具体的に示している。
【0044】
本実施形態の断熱容器140は、容器本体24にベルト70が設けられており、断熱容器100と同様の取付けタイプである。ただし、断熱容器200からベルト70を除去し、設置タイプとすることもできる。またベルト70を有したまま、設置タイプとして用いることもできる。
【0045】
出入口部30と通気窓40とが同じ面に設けられ兼用された本実施形態の他の態様として、断熱部材22などの断熱性の高い部材を用いて蓋部62を構成するとともに、かかる蓋部62において厚み方向に貫通する複数の孔を設けることによって通気可能とし、これによって出入口部30と通気窓40とを兼用してもよい。
【0046】
以上に本発明の第一実施形態から第三実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に何ら制限されるものではなく、適宜の変更、あるいは一の実施態様において他の実施態様の構成の一部を適用することを許容する。
たとえば、第三実施形態において示す出入口部30と通気窓40とを兼用する構成は、適宜、上述する第二実施形態にも適用可能である。即ち、
図5に示す通気性シート44を開閉可能とすることによって蓋部としても兼用することができ、これによって
図6に示す蓋部60を割愛し、
図6において示される面(通気窓40とは反対側の面)の全体を断熱部材22によって構成し、収納室20が露出しないよう構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の断熱容器は、被冷却体または被温熱体に対し熱効率よく熱エネルギーを付与することができる。したがって、人体の所定の箇所を冷やし、あるいは温めることに適性である。人体の冷却および加温に用いられる本発明の断熱容器は、レジャー時、外出時、スポーツ観戦時、運動時などにおける体温調整、運動後のクールダウン、炎症部の冷却や発熱時の冷却など、幅広い用途を提案することができる。
また本発明の断熱容器は、第二実施形態において説明したショッピングバックの底部に設置する用途などのような、非人体の温度調整にも好適に用いられる。
【0048】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)断熱部材により構成された容器本体と、
前記容器本体の内部に設けられ冷却部材または温熱部材を収納するための収納室と、
前記収納室に対し前記冷却部材または前記温熱部材を出し入れ可能とする出入口部を有する断熱容器であって、
前記収納室を構成する壁面の所定領域に通気窓が設けられ、
前記通気窓を介して前記収納室と前記断熱容器の外部とが通気可能であることを特徴とする断熱容器。
(2)前記収納室を介して前記通気窓が設けられた面とは反対側の面に遮熱層が設けられている上記(1)に記載の断熱容器。
(3)前記容器本体が発泡樹脂材および/またはエアー緩衝材を用いて構成されている上記(1)または(2)に記載の断熱容器。
(4)前記収納室が2以上設けられており、前記収納室それぞれに1以上の前記通気窓が設けられている上記(1)~(3)のいずれか一項に記載の断熱容器。
(5)前記通気窓が、前記収納室を構成する壁面の一部に設けられた開口部と、当該開口部を覆う目付量30g/m2以上400g/m2以下および/または平均厚み35μm以上150μm以下の通気性シートとを用いて構成されている上記(1)~(4)のいずれか一項に記載の断熱容器。
(6)前記出入口部と前記通気窓が同じ面に設けられ兼用されている上記(1)~(5)のいずれか一項に記載の断熱容器。
【符号の説明】
【0049】
10・・・冷却部材
20・・・収納室
22・・・断熱部材
22A、22B・・・樹脂部材
24・・・容器本体
30・・・出入口部
40・・・通気窓
42・・・開口部
44・・・通気性シート
50・・・遮熱層
52・・・発泡樹脂シート
60、62・・・蓋部
70・・・ベルト
72・・・接合手段
100、120、140・・・断熱容器
200・・・使用者
t・・・厚み