(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039440
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】アルコール飲料、アルコール飲料の製造方法、及び、アルコール飲料の香味向上方法
(51)【国際特許分類】
C12G 3/04 20190101AFI20240314BHJP
【FI】
C12G3/04
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144011
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】永安 弘樹
【テーマコード(参考)】
4B115
【Fターム(参考)】
4B115LG02
4B115LH11
(57)【要約】
【課題】とげとげしい酸味が低減され、あと切れの良い甘さが増強されたアルコール飲料、アルコール飲料の製造方法、及び、アルコール飲料の香味向上方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係るアルコール飲料は、酸度が0.1~1.5w/v%であり、甘味度が1.0~10.0w/v%であるアルコール飲料であって、色度a*値が-0.3~5であり、色度b*値が5~30であり、明度L*値が50~100である。本発明に係るアルコール飲料の香味向上方法は、酸度が0.1~1.5w/v%であり、甘味度が1.0~10.0w/v%であるアルコール飲料のとげとげしい酸味を低減しつつ、あと切れの良い甘さを増強させる香味向上方法であって、前記アルコール飲料の色度a*値を-0.3~5とし、色度b*値を5~30とし、明度L*値を50~100とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸度が0.1~1.5w/v%であり、甘味度が1.0~10.0w/v%であるアルコール飲料であって、
色度a*値が-0.3~5であり、
色度b*値が5~30であり、
明度L*値が50~100であるアルコール飲料。
【請求項2】
濁度(OD660)が2.0以下である請求項1に記載のアルコール飲料。
【請求項3】
ノナナールの含有量が0.01ppm以上であり、デカナールの含有量が0.01ppm以上である請求項1又は請求項2に記載のアルコール飲料。
【請求項4】
アルコール度数が1~12%である請求項1又は請求項2に記載のアルコール飲料。
【請求項5】
柑橘風味飲料である請求項1又は請求項2に記載のアルコール飲料。
【請求項6】
酸度を0.1~1.5w/v%とし、甘味度を1.0~10.0w/v%とするとともに、色度a*値を-0.3~5とし、色度b*値を5~30とし、明度L*値を50~100とする工程を含むアルコール飲料の製造方法。
【請求項7】
酸度が0.1~1.5w/v%であり、甘味度が1.0~10.0w/v%であるアルコール飲料のとげとげしい酸味を低減しつつ、あと切れの良い甘さを増強させる香味向上方法であって、
前記アルコール飲料の色度a*値を-0.3~5とし、色度b*値を5~30とし、明度L*値を50~100とするアルコール飲料の香味向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール飲料、アルコール飲料の製造方法、及び、アルコール飲料の香味向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコールを含有するアルコール飲料については、これまでにも、飲料の香味に着目した様々な発明が創出されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、その含有量が1.0ppb以上であるチモールと、その含有量が50ppb以上10000ppb以下であるシネオールとを含有する柑橘風味アルコール飲料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、香味(おいしさ)の改善を目的とし、チモールとシネオールの含有量を特定した柑橘風味アルコール飲料を提案している。
【0006】
一方、本発明者は、アルコール飲料の外観(色)が飲用者の香味の感じ方に大きな影響を及ぼすことを確認し、アルコール飲料の外観を変更することによって、アルコール飲料の香味の調整ができることを見出した。
そして、本発明者は、酸度が所定値以上のアルコール飲料(酸味を呈するアルコール飲料)について、外観の調整によって「とげとげしい酸味」を低減できれば、良質な酸味を呈するアルコール飲料を提供できるのではないかと考えた。
また、本発明者は、甘味度が所定値以上のアルコール飲料(甘味を呈するアルコール飲料)について、外観の調整によって「あと切れの良い甘さ」を増強できれば、あと味の印象の良い甘味を呈するアルコール飲料を提供できるのではないかと考えた。
【0007】
そこで、本発明は、とげとげしい酸味が低減され、あと切れの良い甘さが増強されたアルコール飲料、アルコール飲料の製造方法、及び、アルコール飲料の香味向上方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、以下の手段により解決することができる。
(1)酸度が0.1~1.5w/v%であり、甘味度が1.0~10.0w/v%であるアルコール飲料であって、色度a*値が-0.3~5であり、色度b*値が5~30であり、明度L*値が50~100であるアルコール飲料。
(2)濁度(OD660)が2.0以下である前記1に記載のアルコール飲料。
(3)ノナナールの含有量が0.01ppm以上であり、デカナールの含有量が0.01ppm以上である前記1又は前記2に記載のアルコール飲料。
(4)アルコール度数が1~12%である前記1から前記3のいずれか1つに記載のアルコール飲料。
(5)柑橘風味飲料である前記1から前記4のいずれか1つに記載のアルコール飲料。
(6)酸度を0.1~1.5w/v%とし、甘味度を1.0~10.0w/v%とするとともに、色度a*値を-0.3~5とし、色度b*値を5~30とし、明度L*値を50~100とする工程を含むアルコール飲料の製造方法。
(7)酸度が0.1~1.5w/v%であり、甘味度が1.0~10.0w/v%であるアルコール飲料のとげとげしい酸味を低減しつつ、あと切れの良い甘さを増強させる香味向上方法であって、前記アルコール飲料の色度a*値を-0.3~5とし、色度b*値を5~30とし、明度L*値を50~100とするアルコール飲料の香味向上方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るアルコール飲料は、とげとげしい酸味が低減し、あと切れの良い甘さが増強している。
本発明に係るアルコール飲料の製造方法は、とげとげしい酸味が低減し、あと切れの良い甘さが増強したアルコール飲料を製造することができる。
本発明に係るアルコール飲料の香味向上方法は、アルコール飲料について、とげとげしい酸味を低減させ、あと切れの良い甘さを増強させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るアルコール飲料、アルコール飲料の製造方法、及び、アルコール飲料の香味向上方法を実施するための形態(本実施形態)について説明する。
【0011】
[アルコール飲料]
本実施形態に係るアルコール飲料は、酸度が所定範囲内であり、甘味度が所定範囲内であるアルコール飲料であって、L*a*b*表色系の色度a*値、色度b*値、明度L*値が、それぞれ所定範囲内である。また、本実施形態に係るアルコール飲料は、ノナナール、デカナールを含有してもよい。
ここで、アルコール飲料とは、アルコールを含有する飲料であり、特定の種類の飲料に限定されないものの、例えば、チューハイテイスト飲料が挙げられる。そして、このチューハイテイスト飲料とは、チューハイのような味わいを呈する飲料、つまり、チューハイの香味が感じられるように香味設計された飲料である。なお、チューハイの香味には、サワーやカクテルといった香味も含まれる。
そして、本実施形態に係るアルコール飲料は、酸味と甘味を呈することから、例えば、柑橘風味(柑橘テイスト)のアルコール飲料(柑橘の香味が感じられるように香味設計されたアルコール飲料、柑橘原料や柑橘原料に含まれる香気成分を使用したアルコール飲料)に適用するのが好ましい。
以下、本実施形態に係るアルコール飲料を構成する各要素について説明する。
【0012】
(酸度)
本実施形態に係るアルコール飲料の酸度(クエン酸換算の酸度)は、以下のとおりである。
酸度は、0.1w/v%以上であり、0.2w/v%以上、0.25w/v%以上、0.3w/v%以上、0.35w/v%以上、0.4w/v%以上、0.42w/v%以上が好ましい。酸度が所定値以上であることによって、アルコール飲料に酸味を付与して柑橘風味に近づけることができるとともに、本発明の効果(とげとげしい酸味の低減効果)をしっかりと発揮させることができる。
酸度の上限は特に限定されないものの、例えば、3.0w/v%以下、2.0w/v%以下、1.5w/v%以下、1.0w/v%以下である。
【0013】
なお、本明細書における酸度(クエン酸換算の酸度:クエン酸相当量として換算した酸度の値)は、果実飲料の日本農林規格(令和元年6月27日農林水産省告示第475号)に定められた方法で求めることができる。具体的には、飲料を水酸化ナトリウム溶液(0.1mol/L)で中和滴定し、中和滴定において必要となった水酸化ナトリウム溶液の「滴定量(ml)」、滴定に使用した飲料の「重量(g)」、「0.0064」(0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液1mLに相当するクエン酸の重量(g))という定数などを用いて算出すればよい。
また、酸度は、後記の酸味料などの含有量によって調整することができる。
【0014】
(甘味度)
本実施形態に係るアルコール飲料の甘味度(ショ糖換算の甘味度)は、以下のとおりである。
甘味度は、1.0w/v%以上が好ましく、2.0w/v%以上、3.0w/v%以上、4.0w/v%以上、5.0w/v%以上、5.5w/v%以上がより好ましい。甘味度が所定値以上であることによって、アルコール飲料に甘味を付与して柑橘風味に近づけることができるとともに、本発明の効果(あと切れの良い甘さの増強効果)をしっかりと発揮させることができる。
甘味度の上限は特に限定されないものの、例えば、20.0w/v%以下、15.0w/v%以下、12.0w/v%以下、10.0w/v%以下、8.0w/v%以下である。
【0015】
甘味度は甘味料などによって調製することができ、甘味料は、例えば、果糖ブドウ糖液糖、ブドウ糖果糖液糖といった異性化液糖や、果糖(フルクトース)、ブドウ糖(グルコース)、ガラクトースといった単糖類、ショ糖(スクロース)、マルトース、ラクトースといった二糖類、アセスルファムK、ネオテーム、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームといった高甘味度甘味料、さらには、オリゴ糖、糖アルコールなどが含まれる。なお、果糖ブドウ糖液糖とは、「異性化液糖及び砂糖混合異性化液糖」(JAS0208:2019)に規定されているとおりであって、果糖含有率が50%以上90%未満のものである。
そして、アルコール飲料の甘味度(ショ糖換算)は、「飲料における甘味料の含有量(w/v%)」に対して「甘味料の甘味度/ショ糖の甘味度(100)」を乗じることにより算出することができる。例えば、マルトースを1.0w/v%含有する飲料の場合、「1.0w/v%」に対して「33/100」(=マルトースの甘味度/ショ糖の甘味度)を乗じて得られた「0.33w/v%」がショ糖換算の甘味度となる。
なお、各甘味料の甘味度については、例えば、果糖ブドウ糖液糖:100、ブドウ糖果糖液糖:80、果糖:150、ブドウ糖:75、ラクトース:16、ガラクトース:32、マルトース:33、ショ糖:100、アセスルファムK:20000、スクラロース:60000、ネオテーム:1000000、サッカリンナトリウム:50000、ステビア:25000という値を用いればよい。また、オリゴ糖の甘味度については、フラクトオリゴ糖:45、ガラクトオリゴ糖:20、キシロオリゴ糖:45、乳果オリゴ糖:60、ラフィノース:20、イソマルトオリゴ糖:30、大豆オリゴ糖:70という値を用い、糖アルコールの甘味度については、ソルビトール:65、マンニトール:60、マルチトール:85、キシリトール:60、還元パラチノース:45、エリスリトール:75という値を用いればよい。また、アルコール飲料中の甘味料の含有量については、高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて測定することができる。
【0016】
(L*a*b*表色系)
本実施形態に係るアルコール飲料は、L*a*b*表色系の色度a*値が-0.3~5であり、色度b*値が5~30であり、明度L*値が50~100である。
ここで、L*a*b*表色系(エルスター・エースター・ビースター表色系)とは、物体の色を表すのに使用される指標であり、1976年に国際照明委員会(CIE)で規格化され、JIS Z8781-4:2013に規定されている。
L*a*b*表色系では、明度がL*値で表され、色度(色相と彩度)がa*値とb*値とで表される。そして、L*値は、値が大きいほど明るいことを示す。また、a*とb*とは、それぞれ色の方向を示しており、a*は赤方向、-a*は緑方向を示し、b*は黄方向、-b*は青方向を示す。
【0017】
本発明者は、アルコール飲料の色度について鋭意検討した結果、クロスモダリティ(各知覚が互いに影響を及ぼし合う現象であって、本発明では、その中でも、視覚が味覚に影響を及ぼす現象)により、色度a*値と色度b*値とを其々所定範囲内とすることで、「とげとげしい酸味」の低減効果、「あと切れの良い甘さ」の増強効果、さらには、「果汁感」の増強効果が得られることを見出した。
なお、クロスモダリティについては、例えば、Vanessa Harrar and Charles Spence「The taste of cutlery: how the taste of food is affected by the weight, size, shape, and colour of the cutlery used to eat it」Flavour 2013,2:21(http://www.flavourjournal.com/content/2/1/21)に説明されており、食品のクロスモダリティに関する事例としてヨーグルトの香味にスプーンの色が影響を与える内容について説明されている。
飲食品におけるクロスモダリティの詳細なメカニズムについては明らかでないケースが多く、飲食品の種類によってクロスモダリティがもたらす影響(効果)が異なるというのは技術常識である。
【0018】
(色度a*値)
色度a*値は、-0.3以上(-0.300以上)が好ましく、-0.280以上、-0.270以上、-0.260以上、-0.248以上がより好ましい。
色度a*値は、5以下(5.000以下)が好ましく、3.000以下、1.000以下、0.500以下、0.450以下、0.400以下、0.350以下、0.330以下、0.321以下がより好ましい。
色度a*値が所定範囲内であることによって、アルコール飲料の色度が所望のものとなり、本発明の各効果(とげとげしい酸味の低減効果、あと切れの良い甘さの増強効果、果汁感の増強効果)を発揮することができる。
【0019】
(色度b*値)
色度b*値は、5以上(5.000以上)が好ましく、5.300以上、5.500以上、5.700以上、5.778以上、8.000以上、9.000以上、10.000以上、10.755以上がより好ましい。
色度b*値は、30以下(30.000以下)が好ましく、28.000以下、25.000以下、22.000以下、21.000以下、20.500以下、20.171以下がより好ましい。
色度b*値が所定範囲内であることによって、アルコール飲料の色度が所望のものとなり、本発明の各効果(とげとげしい酸味の低減効果、あと切れの良い甘さの増強効果、果汁感の増強効果)を発揮することができる。
【0020】
(明度L*値)
明度L*値は、50以上(50.000以上)が好ましく、60.000以上、70.000以上、80.000以上、90.000以上、90.137以上がより好ましい。
明度L*値は、100以下(100.000以下)が好ましく、99.500以下、99.000以下、98.900以下、98.861以下がより好ましい。
明度L*値が所定範囲内であることによって、アルコール飲料が所望の明るさを呈するため、色度a*値と色度b*値に基づく各効果をしっかりと発揮させることができる。
【0021】
色度a*値と色度b*値と明度L*値とは、着色料によって制御することができる。
なお、着色料については、特に限定されないものの、カラメル系色素(I~IV)、フラボノイド系色素、食用タール色素、カロチノイド系色素、紅花黄色素、コチニール色素、トマト色素、クチナシ赤色色素、アントシアニン系色素、カラメルソースなどが挙げられる。
【0022】
L*a*b*表色系の各値は、例えば、市販の分光測色計(装置名:CM-3600A コニカミノルタ株式会社製)を用いた透明物体色測定により求めることができる。
【0023】
本実施形態に係るアルコール飲料は、前記したとおり、色度a*値、色度b*値、明度L*値が其々所定範囲内となっていればよいが、カラメル色素を含有する場合、カラメル色素の含有量は、例えば、20.0ppm以上、25.0ppm以上、30.0ppm以上、50.0ppm以上であり、400.0ppm以下、300.0ppm以下、200.0ppm以下、150.0ppm以下であればよい。
【0024】
(濁度)
濁度(OD660)とは、濁りの度合いを示す指標であって、アルコール飲料の660nmにおける吸光度である。
濁度(OD660)は、2.0以下(2.000以下)が好ましく、1.000以下、0.500以下、0.300以下、0.150以下、0.110以下がより好ましい。
濁度が所定値以下であることによって、色度a*値と色度b*値に基づく各効果が濁りによって阻害されるといった事態を回避することができる。
濁度(OD660)の下限値は特に限定されないものの、例えば、0.000以上、0.002以上、0.004以上、0.010以上である。
【0025】
濁度は、乳化香料といった色合いの濃い物質の添加量などによって制御することができる。
なお、濁度は、例えば、市販の分光光度計(装置名:UV-1800 SHIMADZU社製)を用いて、660nmにおけるアルコール飲料の吸光度を測定することによって求めることができる。なお、測定対象の濁度が高い場合は、測定対象をイオン水で希釈した後に測定し、得られた吸光度に希釈倍率を乗じて算出すればよい。
【0026】
(ノナナール)
ノナナール(nonanal)とは、化学式C9H18Oで表されるアルデヒドの一種であり、ノニルアルデヒドとも呼ばれる。
ノナナールの含有量は、0.01ppm以上が好ましく、0.05ppm以上、0.10ppm、0.20ppm以上、0.25ppm以上、0.30ppm以上がより好ましい。ノナナールの含有量が所定値以上であることによって、アルコール飲料を柑橘風味により近づけることができる。
ノナナールの含有量は、15.00ppm以下が好ましく、10.00ppm以下、9.00ppm以下、8.00ppm以下、7.00ppm以下がより好ましい。ノナナールの含有量が所定値以下であることによって、香味のバランスが崩れてしまうといった事態を回避することができる。
なお、本明細書において、「ppm」という単位は「mg/L」と同義である。
【0027】
(デカナール)
デカナール(decanal)とは、化学式C10H20Oで表されるアルデヒドの一種であり、デシルアルデヒドとも呼ばれる。
デカナールの含有量は、0.01ppm以上が好ましく、0.05ppm以上、0.07ppm以上、0.08ppm以上、0.10ppm以上がより好ましい。デカナールの含有量が所定値以上であることによって、アルコール飲料を柑橘風味により近づけることができる。
デカナールの含有量は、12.00ppm以下が好ましく、10.00ppm以下、8.00ppm以下、6.00ppm以下、5.00ppm以下がより好ましい。デカナールの含有量が所定値以下であることによって、香味のバランスが崩れてしまうといった事態を回避することができる。
【0028】
なお、ノナナールとデカナールとは本発明の必須の成分ではないものの、ノナナールの含有量とデカナールの含有量とが其々所定範囲内となるアルコール飲料について、後記の実施例で示すとおり、本発明の各効果(とげとげしい酸味の低減効果、あと切れの良い甘さの増強効果、果汁感の増強効果)が発揮されることを確認している。
【0029】
ノナナールの含有量とデカナールの含有量は、例えば、溶媒抽出-GC-MS法により測定することができる。具体的に、あらかじめNaClを添加したサンプルに2倍量のジクロロメタンもしくはペンタンと、内部標準液を添加し、15分間振とうして抽出する(添加する内部標準成分は対ノナナールやデカナールと挙動が似ている成分を選択し、特に安定同位体でラベルした成分を用いることが好ましい)。遠心して2層に分離した後、有機溶媒相を回収して硫酸ナトリウムで脱水し、そのままもしくは適宜濃縮したものをGC/MSにより分析する。例えば以下のような条件で分析できる。
・分析機器:8890 GC、5977B MSD(Agilent Technologies)
・カラム:InertCap(登録商標)Pure‐WAX、30m(長さ)×0.25mm(内径)、0.25μm(膜厚)(GLサイエンス)
・注入量 1μL
・線速度:37cm/sec
・キャリアガス:ヘリウム
・注入口温度:250℃
・注入モード:スプリットレス
・オーブン温度:40℃(3分)→5℃/分→250℃(5分)
・MS検出器:SIMモード
上述の溶媒抽出-GC-MS法においては、試料にノナナール及びデカナールの標準液を別途添加して作成した検量線を使用する標準添加法により定量することが好ましい。また、夾雑物質の影響を受ける場合は、カラムの種類や長さ、オーブンの温度プログラムからなる群より選択される1以上の条件を適宜変更すること、及び/又は、GC/MS/MS又は2次元GC/MSを使用することが好ましい。
【0030】
本実施形態に係るアルコール飲料は、ミルセン、ゲラニオールをさらに含有してもよい。
そして、ミルセンやゲラニオールの含有量は、例えば、それぞれ0.03ppm以上であり、3.00ppm以下である。
なお、ミルセンやゲラニオールの含有量の測定方法は、前記したノナナールやデカナールの含有量の測定方法と同じでよい。
【0031】
(アルコール)
本実施形態に係るアルコール飲料は、アルコールを含有している。
アルコールは飲用することができるアルコールであればよく、本発明の効果が阻害されない範囲であれば、種類、製法、原料などに限定されることがないが、ウイスキー、ブランデー、スピリッツ類(例えばジン、ウォッカ、ラム等のスピリッツ、及び、原料用アルコール等)、リキュール類、焼酎等、さらには清酒、果実酒、ビール等の醸造酒を使用することができ、これらの中でも、特に、蒸留酒であるウォッカ、原料用アルコールのうちの1種以上が好ましい。
なお、本明細書においてアルコールとは、特に明記しない限り、エタノールのことをいう。
【0032】
(アルコール度数)
本実施形態に係るアルコール飲料のアルコール度数は、1%(v/v%)以上であるのが好ましく、3%以上、4%以上、5%以上であるのがより好ましい。また、本実施形態に係るアルコール飲料のアルコール度数は、12%以下であるのが好ましく、10%以下、8%以下、7%以下であるのがより好ましい。
本実施形態に係るアルコール飲料のアルコール度数は、例えば、国税庁所定分析法(訓令)3清酒3-4アルコール分(振動式密度計・ガスクロマトグラフ分析法)に基づいて測定することができる。
【0033】
(発泡性)
本実施形態に係るアルコール飲料は、炭酸ガスを含有する発泡性のもの、つまり、炭酸飲料であるのが好ましい。ここで、本実施形態における発泡性とは、20℃におけるガス圧(全圧)が0.5kg/cm2以上であることをいい、1.0kg/cm2以上が好ましく、1.5kg/cm2以上、2.0kg/cm2以上、2.5kg/cm2以上がより好ましく、また、5.0kg/cm2以下が好ましく、4.0kg/cm2以下、3.5kg/cm2以下、3.0kg/cm2以下がより好ましい。
【0034】
(その他)
本実施形態に係るアルコール飲料は、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で飲料として通常配合される酸化防止剤、香料、酸味料、塩類、食物繊維など(以下、適宜「添加剤」という)を含有していてもよいし、当然、含有しなくてもよい。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどを用いることができる。酸味料としては、例えば、クエン酸、アジピン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸、DL-リンゴ酸ナトリウム、リン酸などを用いることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムなどを用いることができる。食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ペクチン、ポリデキストロース、グアーガム分解物などを用いることができる。
そして、前記した各原料は、一般に市販されているものを使用することができる。
【0035】
本実施形態に係るアルコール飲料は、仮に、チューハイテイスト飲料とする場合、フルーツフレーバー(フルーツ様の香りを付与するフレーバー)、果汁(果実を搾った汁)、果実エキス(果実又は果汁から水やアルコールなどを用いて当該果実の有効成分を抽出した抽出物)を含有させることもできる。そして、果汁としては、例えば、濃縮果汁、還元果汁、ストレート果汁といった各種果汁、果実ピューレ(火を通した果実あるいは生の果実をすりつぶしたり裏ごししたりした半液体状のもの)、これらの希釈液、濃縮液、混合液などを用いることができる。
果汁の由来となる果実(および、果実フレーバーや果実エキスの果実種)は、柑橘類果実である、レモン、ライム、ミカン、オレンジ、グレープフルーツ、ユズ、シークワーサー等や、バラ科果実である、梅、リンゴ、イチゴ、桃、さくらんぼ(黄桃)等、これら以外にも、ぶどう、プラム、ざくろ、ブルーベリー、カシス、クランベリー、マキベリー、マンゴー、パイナップル、キウイ、梨等といった従来公知の果実も挙げることができる。
なお、本発明の各効果は、フレーバー・果汁・果実エキスの香味タイプや香味の強弱から直接的な影響は受けず、少なくとも、当該効果が消失してしまうといったことはないと考えることから、フレーバーなどによる香味タイプは前記のとおり多様であってもよく、含有量についても特に限定されない。
【0036】
(容器詰めアルコール飲料)
本実施形態に係るアルコール飲料は、各種容器に入れて提供することができる。各種容器にアルコール飲料を詰めることにより、長期間の保管による品質の劣化を好適に防止することができる。
なお、容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器などを適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分および光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
【0037】
そして、本実施形態に係るアルコール飲料は、飲料の色度等に基づいて本発明の各効果が発揮されることから、ガラス容器やペットボトル容器などのように飲用者が飲料の色を視認できる態様が好ましい。ただし、金属製の容器などであっても、飲用者がグラスなどに注いでから飲用すれば、本発明の各効果が発揮される。よって、金属製の容器などの場合、グラスなどに注いでから飲用した方が好ましい旨を当該容器に明記してもよい。
なお、飲用者が飲料の色を視認できる態様であれば、本発明の効果は発揮されることとなる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態に係るアルコール飲料は、とげとげしい酸味が低減し、あと切れの良い甘さが増強している。
また、本実施形態に係るアルコール飲料は、果汁感が増強している。
【0039】
[アルコール飲料の製造方法]
次に、本実施形態に係るアルコール飲料の製造方法を説明する。
本実施形態に係るアルコール飲料の製造方法は、混合工程と、後処理工程と、を含む。
【0040】
混合工程では、混合タンクに、水、酸味料、甘味料、ノナナール、デカナール、着色料、アルコール、添加剤などを適宜投入して混合後液を製造する。
この混合工程において、各色度や明度などが前記した所定範囲内となるように各原料を混合し、調整すればよい。
【0041】
そして、後処理工程では、例えば、ろ過、殺菌、炭酸ガスの付加、容器への充填などの処理を必要に応じて選択的に行う。
なお、後処理工程のろ過処理は、一般的なフィルター又はストレーナーによって行うことができる。また、後処理工程の殺菌処理は、処理速度等の観点から、プレート殺菌によって行うのが好ましいが、同様の処理を行うことができるのであればこれに限定されることなく適用可能である。また、後処理工程の充填処理は、飲料品の製造において通常行われる程度にクリーン度を保ったクリーンルームにおいて充填するのが好ましい。そして、後処理工程での各処理の順序は特に限定されない。
【0042】
なお、混合工程及び後処理工程において行われる各処理は、RTD飲料(Ready to Drink)などを製造するために一般的に用いられている設備によって行うことができる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係るアルコール飲料の製造方法によると、とげとげしい酸味が低減し、あと切れの良い甘さが増強したアルコール飲料を製造することができる。
また、本実施形態に係るアルコール飲料の製造方法によると、果汁感が増強したアルコール飲料を製造することができる。
【0044】
[アルコール飲料の香味向上方法]
次に、本実施形態に係るアルコール飲料の香味向上方法を説明する。
本実施形態に係るアルコール飲料の香味向上方法は、酸度が所定範囲内であり甘味度が所定範囲内であるアルコール飲料について、とげとげしい酸味を低減しつつ、あと切れの良い甘さを増強させる香味向上方法であって、アルコール飲料の色度a*値と、色度b*値と、明度L*値とを、其々所定範囲内とする方法である。
なお、色度等の指標や各成分の含有量等については、前記した「アルコール飲料」において説明した値と同じである。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係るアルコール飲料の香味向上方法によると、アルコール飲料について、とげとげしい酸味を低減させ、あと切れの良い甘さを増強させることができる。
また、本実施形態に係るアルコール飲料の香味向上方法によると、アルコール飲料について、果汁感を増強させることができる。
【実施例0046】
次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明について説明する。
【0047】
[事前試験]
事前試験では、後記する本試験で使用した「カラメル色素」と「乳化香料」について、飲料に対する香味の影響を確認した。
【0048】
(事前試験:サンプルの準備)
炭酸水(20℃におけるガス圧(全圧)は2.1kg/cm2)に対して、カラメル色素(商品名:カラメルCN、池田糖化工業株式会社製、カラメルIV)を添加し、カラメル色素の含有量を、20ppm、50ppm、100ppm、200ppm、400ppmとした各サンプルを準備した。
また、炭酸水(20℃におけるガス圧(全圧)は2.1kg/cm2)に対して、乳化香料(商品名:ネオクラNo.36237、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)を添加し、乳化香料の含有量を、20ppm、50ppm、100ppm、200ppmとした各サンプルを準備した。
【0049】
(事前試験:試験内容)
訓練された識別能力のあるパネル7名が、アイマスクで目隠しした状態で、純水とカラメル色素を所定量含有した各サンプルとを飲み比べて(2点識別試験法)、香味の区別がつくか否かを判定した。
また、訓練された識別能力のあるパネル7名が、アイマスクで目隠しした状態で、純水と乳化香料を所定量含有した各サンプルとを飲み比べて(2点識別試験法)、香味の区別がつくか否かを判定した。
【0050】
(事前試験:試験結果)
カラメル色素の含有量を20ppm、50ppm、100ppm、200ppm、400ppmとした各サンプルと炭酸水との間に、香味に関して有意差はないとの結果が得られた。
また、乳化香料の含有量を20ppm、50ppm、100ppm、200ppmとした各サンプルと炭酸水との間に、香味に関して有意差はないとの結果が得られた。
これらの事前試験の結果によると、飲料におけるカラメル色素と乳化香料との含有量が其々所定範囲内では、視覚に基づく情報が得られない状態の飲用者は、飲料の香味に大きな差を認識できないことが確認できた。
【0051】
[本試験]
次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明について説明する。
【0052】
(本試験:表1~2の各サンプルの準備)
表1~2の各サンプルは、表に示す量となるように、ウォッカ、ノナナール、デカナール、カラメル色素(商品名:カラメルCN、池田糖化工業株式会社製、カラメルIV)、乳化香料(商品名:ネオクラNo.36237、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)、甘味料(果糖ブドウ糖液糖)、酸味料(クエン酸(無水)、クエン酸三ナトリウム)、炭酸水、純水を適宜配合してサンプル(柑橘風味アルコール飲料)を準備した。
なお、表1~2の各サンプルの20℃におけるガス圧(全圧)は2.1kg/cm2であった。
【0053】
(本試験:表3の各サンプルの準備)
表3のサンプル5-1は、市販品(レモンチューハイテイスト飲料)を準備した。そして、サンプル5-2は、サンプル5-1に対してカラメル色素を添加して準備した。
なお、表3の各サンプルの20℃におけるガス圧(全圧)は2.1kg/cm2であった。
【0054】
(本試験:試験内容)
前記の方法により製造した各サンプルについて、訓練された識別能力のあるパネル5名が下記評価基準に則って「とげとげしい酸味」、「口に入れた瞬間の口当たりの強さ」、「果汁感」、「あと切れの良い甘さ」について、-2点、-1点、0点、1点、2点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。
なお、全ての評価は、透明の容器に注がれたサンプルをパネルが視認しつつ、飲んで評価を行った。また、全ての評価は、一般的な明るさの室内(明るさ800lx:ILLUMINANCE METER T-10:MINOLTA社製での測定値)で行った。
【0055】
そして、各評価は、サンプル番号の後方番号が1であるサンプルを対象サンプルとし、当該対象サンプルの表に示す点数を基準点とした。そして、各評価は、サンプル番号の前方番号が同じ対象サンプルと比較して評価した。具体的には、対象サンプルは、サンプル1-1、2-1、3-1、4-1、5-1であり、例えば、サンプル3-2のとげとげしい酸味の評価は、サンプル番号の前方番号が同じであって後方番号が1であるサンプル3-1(対象サンプル)のとげとげしい酸味を0点(基準点)とした比較によって評価を行った。
【0056】
(とげとげしい酸味:評価基準)
とげとげしい酸味の評価は、対象サンプルの0点を基準とし、「とげとげしい酸味が非常に弱い」場合を-2点、「とげとげしい酸味が弱くも強くもない(対象サンプルと同程度である)」場合を0点、「とげとげしい酸味が非常に強い」場合を2点と評価した。そして、とげとげしい酸味については、点数が低いほど低減されており、好ましいと判断できる。
【0057】
(口に入れた瞬間の口当たりの強さ:評価基準)
口に入れた瞬間の口当たりの強さの評価は、対象サンプルの0点を基準とし、「口に入れた瞬間の口当たりが非常に弱い」場合を-2点、「口に入れた瞬間の口当たりが弱くも強くもない(対象サンプルと同程度である)」場合を0点、「口に入れた瞬間の口当たりが非常に強い」場合を2点と評価した。そして、口に入れた瞬間の口当たりについては、点数が高いほど増強されており、好ましいと判断できる。
ここで、「口に入れた瞬間の口当たり」とは、サンプルを口に含んだ際に感じる味のボリューム(厚み)であり、ボリュームを大きく感じるほど、口当たりが強いとの評価となる。
【0058】
(果汁感:評価基準)
果汁感の評価は、対象サンプルの0点を基準とし、「果汁感が非常に弱い」場合を-2点、「果汁感が弱くも強くもない(対象サンプルと同程度である)」場合を0点、「果汁感が非常に強い」場合を2点と評価した。そして、果汁感については、点数が高いほど増強されており、好ましいと判断できる。
ここで、「果汁感」とは、フレッシュな果汁様の香味である。
【0059】
(あと切れの良い甘さ:評価基準)
あと切れの良い甘さの評価は、対象サンプルの0点を基準とし、「甘さのあと切れが非常に悪い」場合を-2点、「甘さのあと切れが良くも悪くもない(対象サンプルと同程度である)」場合を0点、「甘さのあと切れが非常に良い」場合を2点と評価した。そして、あと切れの良い甘さについては、点数が高いほど甘さのあと切れが良く、好ましいと判断できる。
ここで、「あと切れの良い甘さ」の評価は、あと味における甘さの切れの状態で評価しており、口腔内から迅速に甘さが無くなり、あと味においてダラダラと甘さが残らないと点数が高くなる。
つまり、本明細書において、「あと切れの良い甘さが増強している」とは、詳細には、甘さが増強しているのではなく、あと切れが増強しているイメージであって、「甘さに関して、あと切れが良くなっている(あと切れが増強している)」という意味である。
【0060】
表に、各サンプルの含有量等を示すとともに、各評価の結果を示す。なお、表に示す各成分の数値および指標は、最終製品における含有量および指標である。
そして、色度a*値、色度b*値、明度L*値は、CM-3600A(KONICA MINOLTA社製)によって測定した値であり、濁度(OD660)は、UV-1800(SHIMADZU社製)によって測定した値である。また、酸度は、クエン酸換算の酸度であって、中和滴定法によって測定した値である。また、表1、2の甘味度は、ショ糖換算の甘味度であって、添加した甘味料の量と本実施形態で示した甘味度に基づいて算出した値であり、表3の甘味度は、当該品のエキス分から酸度を除いた数値をもとに本実施形態で示した甘味度に基づいてショ糖換算の甘味度を算出した値である。また、表1、2のノナナールとデカナールの含有量は添加量に基づいて算出した値であり、表3のノナナールとデカナールとミルセンとゲラニオールの含有量は、溶媒抽出-GC-MS法(本実施形態において説明した方法)によって測定した値である。
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
(結果の検討)
表1のサンプル1-1~1-6の結果から、色度a*値、色度b*値、明度L*値が其々所定範囲内となっていると、対象サンプル1-1と比較して、「とげとげしい酸味」が低減し、「果汁感」が増強し、「あと切れの良い甘さ」が増強することが確認できた。
そして、全ての評価を考慮すると、サンプル1-1~1-6の中でも、サンプル1-3~1-6(特に、サンプル1-4~1-6)について非常に好ましい結果が得られた。
【0065】
また、表1のサンプル1-5と1-6とを比較すると、両者は濁度(OD660)が大きく異なっているものの、各評価項目について同じような点数となった。したがって、濁度にあまり左右されることなく、広い濁度の範囲内において、本発明の各効果(とげとげしい酸味の低減効果、あと切れの良い甘さの増強効果、果汁感の増強効果)が発揮されることが確認できた。
【0066】
表2は、ノナナールとデカナールの含有量を変化させた場合の結果を示す。
表2のサンプル2-1と2-2、サンプル3-1と3-2、サンプル4-1と4-2を比較すると、いずれのノナナール含有量、デカナール含有量であろうと、本発明の各効果(とげとげしい酸味の低減効果、あと切れの良い甘さの増強効果、果汁感の増強効果)が発揮されることが確認できた。
つまり、色度a*値、色度b*値、明度L*値が其々所定範囲内となっていれば、ノナナールの含有量やデカナールの含有量にあまり左右されることなく、広い含有量の範囲内において、本発明の各効果が発揮されることが確認できた。
【0067】
表3は、市販品を使用した場合の結果を示す。
表3のサンプル5-1と5-2の結果は、表2の各サンプルの結果と同様の傾向となり、ミルセンやゲラニオールといった他の成分を含んでいても、本発明の各効果(とげとげしい酸味の低減効果、あと切れの良い甘さの増強効果、果汁感の増強効果)が発揮されることが確認できた。
つまり、色度a*値、色度b*値、明度L*値が其々所定範囲内となっていれば、他の成分にあまり左右されることなく、本発明の各効果が発揮されることが確認できた。
酸度が0.1~1.5w/v%であり、甘味度が1.0~10.0w/v%であるアルコール飲料のとげとげしい酸味を低減しつつ、あと切れの良い甘さを増強させる香味向上方法であって、
前記アルコール飲料の色度a*値を-0.280~0.350とし、色度b*値を5.000~20.171とし、明度L*値を90.000~98.861とし、濁度(OD660)を1.000以下とするアルコール飲料の香味向上方法。
酸度が0.1~1.5w/v%であり、甘味度が1.0~10.0w/v%であるアルコール飲料のとげとげしい酸味を低減しつつ、あと切れの良い甘さを増強させる香味向上方法であって、
前記アルコール飲料の色度a*値を-0.280~0.350とし、色度b*値を5.000~20.171とし、明度L*値を90.000~98.861とし、濁度(OD660)を0.110以下とするアルコール飲料の香味向上方法。