(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039457
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】人力駆動車用の制御装置
(51)【国際特許分類】
B62M 25/08 20060101AFI20240314BHJP
B62M 9/122 20100101ALI20240314BHJP
B62M 9/123 20100101ALI20240314BHJP
B62M 9/132 20100101ALI20240314BHJP
B62M 9/133 20100101ALI20240314BHJP
B62M 11/16 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
B62M25/08
B62M9/122
B62M9/123
B62M9/132
B62M9/133
B62M11/16 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144036
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】謝花 聡
(57)【要約】
【課題】変速装置を好適に制御できる人力駆動車用の制御装置を提供する。
【解決手段】人力駆動車用の制御装置は、人力駆動車のクランク軸に対する車輪の回転速度の比率を制御状態に応じて変更する変速装置を制御する制御部を備え、制御部は、変速条件、および、ユーザが操作可能な変速操作装置からの入力のそれぞれに基づいて比率を変更するように変速装置を制御可能に構成され、第1制御状態において、変速操作装置からの入力に基づいて、比率を変更するように変速装置を制御する場合、制御状態を第1制御状態から第2制御状態に移行するように構成され、第2制御状態において、人力駆動車の車両状態に関するパラメータの変化量が所定量以上になると、制御状態を第2制御状態から第1制御状態に移行するように構成され、第2制御状態では、第1制御状態よりも変速条件に応じて比率を変更することが抑制される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力駆動車用の制御装置であって、
前記人力駆動車のクランク軸の回転速度に対する車輪の回転速度の比率を制御状態に応じて変更する変速装置を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記制御状態を第1制御状態および第2制御状態のいずれかに選択可能に構成され、
変速条件、および、ユーザが操作可能な変速操作装置からの入力のそれぞれに基づいて前記比率を変更するように前記変速装置を制御可能に構成され、
前記第1制御状態において、前記変速操作装置からの入力に基づいて、前記比率を変更するように前記変速装置を制御する場合、前記制御状態を前記第1制御状態から前記第2制御状態に移行するように構成され、
前記第2制御状態において、前記人力駆動車の車両状態に関するパラメータの変化量が所定量以上になると、前記制御状態を前記第2制御状態から前記第1制御状態に移行するように構成され、
前記第2制御状態では、前記第1制御状態よりも前記変速条件に応じて前記比率を変更することが抑制される、制御装置。
【請求項2】
前記パラメータは、車速、および、前記車速の加速度の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記パラメータは、前記クランク軸の回転量を含み、
前記所定量は、前記比率に応じて設定される所定回転量を含む、請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記パラメータは、前記人力駆動車の走行路の路面勾配を含む、請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記パラメータは、前記人力駆動車に入力される人力駆動力を含む、請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記パラメータは、前記人力駆動車の車輪の回転量、および、前記人力駆動車の走行距離の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
前記パラメータは、前記クランク軸の回転速度を含む、請求項1に記載の制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第2制御状態において、車速が加速かつ第1車速を超える場合、および、前記車速が減速かつ第2車速未満になる場合の少なくとも1つにおいて、前記制御状態を前記第2制御状態から前記第1制御状態に移行するように構成される、請求項1に記載の制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記第2制御状態において、前記変速条件とは異なる所定変速条件が成立すると、前記制御状態を前記第2制御状態から前記第1制御状態に移行するように構成される、請求項1に記載の制御装置。
【請求項10】
人力駆動車用の制御装置であって、
前記人力駆動車のクランク軸の回転速度に対する車輪の回転速度の比率を制御状態に応じて変更する変速装置を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記制御状態を第1制御状態および第2制御状態のいずれかに選択可能に構成され、
変速条件、および、ユーザが操作可能な変速操作装置からの入力のそれぞれに基づいて前記比率を変更するように前記変速装置を制御可能に構成され、
前記第1制御状態において、前記変速操作装置からの入力に基づいて、前記比率を変更するように前記変速装置を制御する場合、前記制御状態を前記第1制御状態から前記第2制御状態に移行するように構成され、
前記第2制御状態において、車速が加速かつ第1車速を超える場合、および、前記車速が減速かつ第2車速未満になる場合の少なくとも1つにおいて、前記制御状態を前記第2制御状態から前記第1制御状態に移行するように構成され、
前記第2制御状態では、前記第1制御状態よりも前記変速条件に応じて前記比率を変更することが抑制される、制御装置。
【請求項11】
前記変速条件は、前記人力駆動車の走行状態および走行環境の少なくとも1つに関する、請求項1または10に記載の制御装置。
【請求項12】
前記変速条件は、前記クランク軸の回転速度、前記人力駆動車に入力される人力駆動力、および、車速の少なくとも1つを含む、請求項1または10に記載の制御装置。
【請求項13】
前記変速条件は、前記クランク軸の回転速度を含み、
前記制御部は、前記クランク軸の回転速度が上限閾値よりも大きい場合、前記比率が大きくなるように前記制御装置を制御し、前記クランク軸の回転速度が下限閾値よりも小さい場合、前記比率が小さくなるように前記制御装置を制御する請求項1または10に記載の制御装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記第1制御状態において、前記変速操作装置からの入力に基づいて、前記比率が増加および減少の一方となるように変更するように前記変速装置を制御する場合、前記制御状態を前記第1制御状態から前記第2制御状態に移行するように構成され、
前記第2制御状態では、前記第1制御状態よりも前記変速条件に応じて前記比率が増加および減少の他方となるように変更することが抑制される、請求項1または10に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人力駆動車用の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されている人力駆動車用の制御装置は、人力駆動車の変速装置を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的の1つは、変速装置を好適に制御できる人力駆動車用の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1側面に従う制御装置は、人力駆動車用の制御装置であって、前記人力駆動車のクランク軸の回転速度に対する車輪の回転速度の比率を制御状態に応じて変更する変速装置を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記制御状態を第1制御状態および第2制御状態のいずれかに選択可能に構成され、変速条件、および、ユーザが操作可能な変速操作装置からの入力のそれぞれに基づいて前記比率を変更するように前記変速装置を制御可能に構成され、前記第1制御状態において、前記変速操作装置からの入力に基づいて、前記比率を変更するように前記変速装置を制御する場合、前記制御状態を前記第1制御状態から前記第2制御状態に移行するように構成され、前記第2制御状態において、前記人力駆動車の車両状態に関するパラメータの変化量が所定量以上になると、前記制御状態を前記第2制御状態から前記第1制御状態に移行するように構成され、前記第2制御状態では、前記第1制御状態よりも前記変速条件に応じて前記比率を変更することが抑制される。
第1側面の制御装置によれば、変速操作装置からの入力に基づいて比率を変更するように変速装置を制御すると、車両状態に関するパラメータの変化量が所定量以上になるまで比率の変更が抑制されるため、変速装置を好適に制御できる。第1側面の制御装置によれば、変速操作装置からの入力に基づいて比率を変更するように変速装置を制御する場合、車両状態に関するパラメータの変化量が所定量以上になると、比率の変更の抑制が解除されるため、変速条件に応じて変速装置を好適に制御できる。
【0006】
本開示の第1側面に従う第2側面の制御装置において、前記パラメータは、車速、および、前記車速の加速度の少なくとも1つを含む。
第2側面の制御装置によれば、車速、および、車速の加速度の少なくとも1つの変化量が所定量以上になるまで比率の変更を抑制できる。
【0007】
本開示の第1または第2側面に従う第3側面の制御装置において、前記パラメータは、前記クランク軸の回転量を含み、前記所定量は、前記比率に応じて設定される所定回転量を含む。
第3側面の制御装置によれば、クランク軸の回転量が所定回転量以上になるまで比率の変更を抑制できる。
【0008】
本開示の第1から第3側面のいずれか1つに従う第4側面の制御装置において、前記パラメータは、前記人力駆動車の走行路の路面勾配を含む。
第4側面の制御装置によれば、路面勾配の変化量が所定量以上になるまで比率の変更を抑制できる。
【0009】
本開示の第1から第4側面のいずれか1つに従う第5側面の制御装置において、前記パラメータは、前記人力駆動車に入力される人力駆動力を含む。
第5側面の制御装置によれば、人力駆動力の変化量が所定量以上になるまで比率の変更を抑制できる。
【0010】
本開示の第1から第5側面のいずれか1つに従う第6側面の制御装置において、前記パラメータは、前記人力駆動車の車輪の回転量、および、前記人力駆動車の走行距離の少なくとも1つを含む。
第6側面の制御装置によれば、人力駆動車の車輪の回転量、および、人力駆動車の走行距離の少なくとも1つの変化量が所定量以上になるまで比率の変更を抑制できる。
【0011】
本開示の第1から第6側面のいずれか1つに従う第7側面の制御装置において、前記パラメータは、前記クランク軸の回転速度を含む。
第7側面の制御装置によれば、クランク軸の回転速度の変化量が所定量以上になるまで比率の変更を抑制できる。
【0012】
本開示の第1から第7側面のいずれか1つに従う第8側面の制御装置において、前記制御部は、前記第2制御状態において、車速が加速かつ第1車速を超える場合、および、前記車速が減速かつ第2車速未満になる場合の少なくとも1つにおいて、前記制御状態を前記第2制御状態から前記第1制御状態に移行するように構成される。
第8側面の制御装置によれば、車速が加速かつ第1車速を超える場合、および、車速が減速かつ第2車速未満になる場合の少なくとも1つになるまで、比率の変更を抑制できる。
【0013】
本開示の第1から第8側面のいずれか1つに従う第9側面の制御装置において、前記制御部は、前記第2制御状態において、前記変速条件とは異なる所定変速条件が成立すると、前記制御状態を前記第2制御状態から前記第1制御状態に移行するように構成される。
第9側面の制御装置によれば、所定変速条件が成立するまで、比率の変更を抑制できる。
【0014】
本開示の第10側面に従う制御装置は、人力駆動車用の制御装置であって、前記人力駆動車のクランク軸の回転速度に対する車輪の回転速度の比率を制御状態に応じて変更する変速装置を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記制御状態を第1制御状態および第2制御状態のいずれかに選択可能に構成され、変速条件、および、ユーザが操作可能な変速操作装置からの入力のそれぞれに基づいて前記比率を変更するように前記変速装置を制御可能に構成され、前記第1制御状態において、前記変速操作装置からの入力に基づいて、前記比率を変更するように前記変速装置を制御する場合、前記制御状態を前記第1制御状態から前記第2制御状態に移行するように構成され、前記第2制御状態において、車速が加速かつ第1車速を超える場合、および、前記車速が減速かつ第2車速未満になる場合の少なくとも1つにおいて、前記制御状態を前記第2制御状態から前記第1制御状態に移行するように構成され、前記第2制御状態では、前記第1制御状態よりも前記変速条件に応じて前記比率を変更することが抑制される。
第10側面の制御装置によれば、変速操作装置からの入力に基づいて比率を変更するように変速装置を制御すると、車速が加速かつ第1車速を超える場合、および、車速が減速かつ第2車速未満になる場合の少なくとも1つになるまで比率の変更が抑制されるため、変速装置を好適に制御できる。第1側面の制御装置によれば、変速操作装置からの入力に基づいて比率を変更するように変速装置を制御する場合、車速が加速かつ第1車速を超える場合、および、車速が減速かつ第2車速未満になる場合の少なくとも1つになると、比率の変更の抑制が解除されるため、変速条件に応じて変速装置を好適に制御できる。
【0015】
本開示の第1から第10側面のいずれか1つに従う第11側面の制御装置において、前記変速条件は、前記人力駆動車の走行状態および走行環境の少なくとも1つに関する。
第11側面の制御装置によれば、人力駆動車の走行状態および走行環境の少なくとも1つに応じて変速装置を好適に制御できる。
【0016】
本開示の第1から第11側面のいずれか1つに従う第12側面の制御装置において、前記変速条件は、前記クランク軸の回転速度、前記人力駆動車に入力される人力駆動力、および、車速の少なくとも1つを含む。
第12側面の制御装置によれば、クランク軸の回転速度、人力駆動力、および、車速の少なくとも1つに応じて変速装置を好適に制御できる。
【0017】
本開示の第1から第12側面のいずれか1つに従う第13側面の制御装置において、前記変速条件は、前記クランク軸の回転速度を含み、前記制御部は、前記クランク軸の回転速度が上限閾値よりも大きい場合、前記比率が大きくなるように前記制御装置を制御し、前記クランク軸の回転速度が下限閾値よりも小さい場合、前記比率が小さくなるように前記制御装置を制御する。
第13側面の制御装置によれば、クランク軸の回転速度が上限閾値よりも大きい場合、比率が大きくなるように変速装置を制御し、クランク軸の回転速度が下限閾値よりも小さい場合、比率が小さくなるように変速装置を制御できる。
【0018】
本開示の第1から第13側面のいずれか1つに従う第14側面の制御装置において、前記制御部は、前記第1制御状態において、前記変速操作装置からの入力に基づいて、前記比率が増加および減少の一方となるように変更するように前記変速装置を制御する場合、前記制御状態を前記第1制御状態から前記第2制御状態に移行するように構成され、前記第2制御状態では、前記第1制御状態よりも前記変速条件に応じて前記比率が増加および減少の他方となるように変更することが抑制される。
第13側面の制御装置によれば、第2制御状態では、第1制御状態よりも変速条件に応じて比率がユーザが操作した変速方向と反対となるように変更することが抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本開示の人力駆動車用の制御装置は、変速装置を好適に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態の人力駆動車用の制御装置を含む人力駆動車の側面図である。
【
図2】
図1の人力駆動車の電気的な構成を示すブロック図である。
【
図3】
図2の制御部によって実行され、変速装置を制御する処理のフローチャートである。
【
図4】
図2の制御部によって実行され、制御状態を変更する処理のフローチャートである。
【
図5】変更例の制御部によって実行され、制御状態を変更する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施形態>
図1から
図4を参照して、人力駆動車用の制御装置60が説明される。人力駆動車は、少なくとも1つの車輪を有し、少なくとも人力駆動力によって駆動できる乗り物である。例えば、人力駆動車は、マウンテンバイク、ロードバイク、シティバイク、カーゴバイク、ハンドバイク、および、リカンベントなど種々の種類の自転車を含む。人力駆動車が有する車輪の数は限定されない。例えば、人力駆動車は、1輪車および2輪以上の車輪を有する乗り物も含む。人力駆動車は、人力駆動力のみによって駆動できる乗り物に限定されない。人力駆動車は、人力駆動力だけではなく、電気モータの駆動力を推進に利用するE-bikeを含む。E-bikeは、電気モータによって推進が補助される電動アシスト自転車を含む。以下、それぞれの実施形態において、人力駆動車は、自転車として説明される。
【0022】
人力駆動車10は、クランク軸12と、第1回転体14と、車輪16と、第2回転体18と、伝達体20とを含む。クランク軸12は、人力駆動力が入力されるように構成される。第1回転体14は、クランク軸12に接続される。第2回転体18は、車輪16に接続される。伝達体20は、第1回転体14および第2回転体18に係合して、第1回転体14と第2回転体18との間において駆動力を伝達するように構成される。
【0023】
例えば、人力駆動車10は、車体24をさらに含む。例えば、車体24は、フレーム26を含む。例えば、車輪16は、前輪16Fと、後輪16Rと、を含む。例えば、クランク軸12は、フレーム26に対して回転可能である。例えば、人力駆動車10は、クランク28を含む。クランク28は、クランク軸12および2つのクランクアーム28A,28Bを含む。例えば、クランクアーム28Aは、クランク軸12の軸方向の第1端部に設けられ、クランクアーム28Bは、クランク軸12の軸方向の第2端部に設けられる。例えば、人力駆動車10は、2つのペダル30を含む。例えば、クランクアーム28Aには、2つのペダル30のうちの1つが連結される。クランクアーム28Bには、2つのペダル30のうちの他の1つが連結される。例えば、後輪16Rは、クランク軸12が回転することによって駆動される。例えば、後輪16Rは、フレーム26に支持される。
【0024】
フレーム26には、フロントフォーク32を介して前輪16Fが取り付けられる。フロントフォーク32には、ステム34を介してハンドルバー36が連結される。
【0025】
例えば、人力駆動車10は、駆動機構38をさらに含む。例えば、前輪16Fおよび後輪16Rの少なくとも1つと、クランク28とは、駆動機構38によって連結される。本実施形態では、後輪16Rとクランク28とが、駆動機構38によって連結される。
【0026】
例えば、駆動機構38は、少なくとも1つの第1回転体14、少なくとも1つの第2回転体18、および、伝達体20を含む。少なくとも1つの第1回転体14は、クランク軸12に接続される。少なくとも1つの第2回転体18は、車輪16に接続される。伝達体20は、少なくとも1つの第1回転体14および少なくとも1つの第2回転体18に係合して、少なくとも1つの第1回転体14と少なくとも1つの第2回転体18との間において駆動力を伝達するように構成される。例えば、伝達体20は、少なくとも1つの第1回転体14の回転力を少なくとも1つの第2回転体18に伝達する。
【0027】
例えば、少なくとも1つの第1回転体14と、クランク軸12とは、同軸に配置される。少なくとも1つの第1回転体14と、クランク軸12とは、同軸に配置されなくてもよい。例えば、少なくとも1つの第1回転体14と、クランク軸12とが、同軸に配置されない場合、少なくとも1つの第1回転体14と、クランク軸12とは、第1伝達機構を介して接続される。第1伝達機構は、複数の歯車を含んでいてもよく、スプロケットおよびチェーンを含んでいてもよく、プーリおよびベルトを含んでいてもよく、シャフトおよびベベルギアを含んでいてもよい。例えば、少なくとも1つの第1回転体14は、少なくとも1つの第1スプロケットを含む。
【0028】
例えば、少なくとも1つの第2回転体18と、後輪16Rとは、同軸に配置される。少なくとも1つの第2回転体18と、後輪16Rとは、同軸に配置されなくてもよい。例えば、少なくとも1つの第2回転体18と、後輪16Rとが、同軸に配置されない場合、少なくとも1つの第2回転体18と、後輪16Rとは、第2伝達機構を介して接続される。第2伝達機構は、複数の歯車を含んでいてもよく、スプロケットおよびチェーンを含んでいてもよく、プーリおよびベルトを含んでいてもよく、シャフトおよびベベルギアを含んでいてもよい。例えば、少なくとも1つの第2回転体18は、少なくとも1つの第2スプロケットを含む。
【0029】
少なくとも1つの第2回転体18と、後輪16Rとは、第3ワンウェイクラッチを介して接続される。例えば、第3ワンウェイクラッチは、ローラクラッチ、スプラグクラッチ、および、ラチェットクラッチの少なくとも1つを含む。第3ワンウェイクラッチは、第1回転体14の前転に伴って、第2回転体18が回転する場合に、第2回転体18から後輪16Rに駆動力を伝達し、後輪16Rが前転する速度が、第2回転体18が前転する速度よりも高い場合に、後輪16Rと第2回転体18との相対回転を許容するように構成される。
【0030】
例えば、人力駆動車10は、バッテリ40をさらに含む。バッテリ40は、1または複数のバッテリ素子を含む。バッテリ素子は、充電池を含む。例えば、バッテリ40は、制御装置60、および、変速装置42に電力を供給するように構成される。例えば、バッテリ40は、制御装置60と有線または無線によって通信可能に接続される。例えば、バッテリ40は、電力線通信(PLC;Power Line Communication)、CAN(Controller Area Network)、または、UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)によって制御装置60と通信可能である。
【0031】
人力駆動車10は、例えば、変速装置42をさらに含む。変速装置42は、人力駆動車10のクランク軸12の回転速度に対する車輪16の回転速度の比率Rを制御状態に応じて変更する。変速装置42は、例えば、人力駆動車10における人力駆動力の伝達経路に設けられ、かつ、比率Rを変更するように構成される。比率Rは、例えば、クランク28の回転速度に対する車輪16の回転速度の比率Rである。車輪16の回転速度は、例えば、駆動輪の回転速度を含む。
【0032】
変速装置42は、例えば、ディレーラ42Aおよび内装変速機の少なくとも1つを含む。本実施形態の人力駆動車10は、ディレーラ42Aをさらに含む。本実施形態の変速装置42は、ディレーラ42Aを含む。ディレーラ42Aは、クランク軸12の回転速度に対する車輪16の回転速度の比率Rを変更するために伝達体20を操作するように構成される。ディレーラ42Aは、例えば、フロントディレーラ、および、リアディレーラの少なくとも1つを含む。ディレーラ42Aがフロントディレーラ、および、リアディレーラの少なくとも1つを含む場合、伝達体20は、チェーンを含む。
【0033】
ディレーラ42Aは、例えば、複数のスプロケットのうちの1つに係合する伝達体20を、複数のスプロケットのうちの他の1つに移動させる。変速装置42が内装変速機を含む場合、内装変速機は、例えば、後輪16Rのハブに設けられる。内装変速機は、CVT(Continuously Variable Transmission)を含んでいてもよい。変速装置42は、例えば、電動アクチュエータ42Bを含む。電動アクチュエータ42Bは、例えば、変速装置42を動作するように構成される。電動アクチュエータ42Bは、例えば、ディレーラ42Aを動作するように構成される。
【0034】
ディレーラ42Aは、クランク軸12の回転速度に対する車輪16の回転速度の比率Rを変更するために伝達体20を操作するように構成される。例えば、ディレーラ42Aは、人力駆動車10における人力駆動力の伝達経路に設けられ、かつ、比率Rを変更するように構成される。例えば、ディレーラ42Aは、伝達体20を操作して、少なくとも1つの第1回転体14および少なくとも1つの第2回転体18の少なくとも1つと、伝達体20との係合状態を変更することによって比率Rを変更させる。比率Rと、車輪16の回転速度と、クランク軸12の回転速度との関係は、式(1)によって表される。式(1)において、Rは、比率Rを示す。式(1)において、Wは、車輪16の回転速度を示す。式(1)において、Cは、クランク軸12の回転速度を示す。
式(1):R=W(rpm)/C(rpm)
【0035】
例えば、ディレーラ42Aは、比率Rを少なくとも1つの変速ステージごとに変更可能である。例えば、ディレーラ42Aは少なくとも1つの変速ステージを変更するために伝達体20を操作するように構成される。例えば、少なくとも1つの変速ステージは、少なくとも1つの第1回転体14および少なくとも1つの第2回転体18の少なくとも1つに応じて設定される。例えば、少なくとも1つの変速ステージが複数の変速ステージを含む場合、複数の変速ステージのそれぞれには、異なる比率Rが設定される。例えば、変速ステージが高くなるほど、比率Rは大きくなる。
【0036】
例えば、少なくとも1つの第1回転体14が複数の第1回転体14を含み、かつ、少なくとも1つの第2回転体18が複数の第2回転体18を含む場合、変速ステージは、複数の第1回転体14のうちの1つおよび複数の第2回転体18のうちの1つの組み合わせに応じて設定される。例えば、少なくとも1つの第1回転体14が1つの第1回転体14を含み、少なくとも1つの第2回転体18が複数の第2回転体18を含む場合、変速ステージは、複数の第2回転体18の数に応じて設定される。例えば、少なくとも1つの第1回転体14が複数の第1回転体14を含み、少なくとも1つの第2回転体18が1つの第2回転体18を含む場合、変速ステージは、複数の第1回転体14の数に応じて設定される。
【0037】
例えば、ディレーラ42Aは、複数のスプロケットのうちの1つに係合するチェーンを、複数のスプロケットのうちの他の1つに移動させる。例えば、複数の第1スプロケットのうちの、歯数が最小のスプロケットと、複数の第2スプロケットのうちの、歯数が最大のスプロケットと、の組合せはディレーラ42Aによって実現可能な最小の変速ステージと対応する。例えば、複数の第1スプロケットのうちの、歯数が最大のスプロケットと、複数の第2スプロケットのうちの、歯数が最小のスプロケットとの組合せは、ディレーラ42Aによって実現可能な最大の変速ステージと対応する。
【0038】
ディレーラ42Aがフロントディレーラを含む場合、例えば、複数の第1回転体14は、2枚以上かつ3枚以下の第1スプロケットを含む。例えば、複数の第1回転体14は、2枚の第1スプロケットを含む。
【0039】
ディレーラ42Aがフロントディレーラを含む場合、例えば、ディレーラ42Aは、変速動作において複数の第1回転体14のうちの1つから複数の第1回転体14のうちの他の1つに伝達体20を移動させるように構成される。フロントディレーラは、伝達体20を操作して、少なくとも1つの第1回転体14と、伝達体20との係合状態を変更することによって比率Rを変更させる。例えば、複数の第1回転体14は、複数の第1スプロケットを含む。
【0040】
例えば、ディレーラ42Aがリアディレーラを含む場合、少なくとも1つの第2回転体18は、2枚以上かつ20枚以下の第2スプロケットを含む。例えば、複数の第2回転体18は、12枚の第2スプロケットを含む。
【0041】
例えば、人力駆動車10は、変速操作装置44をさらに含む。変速操作装置44は、例えば、ハンドルバー36に設けられる。変速操作装置44は、例えば、比率Rを大きくするための第1操作部、および、比率Rを小さくするための第2操作部を含む。
【0042】
例えば、人力駆動車10は、車速検出部46をさらに含む。例えば、車速検出部46は、制御部62と有線または無線によって通信可能に接続される。例えば、車速検出部46は、人力駆動車10の車速に関する情報を検出するように構成される。例えば、車速検出部46は、車輪16の回転速度に関する情報を検出するように構成される。例えば、車速検出部46は、前輪16Fおよび後輪16Rの少なくとも1つに設けられる磁石を検出するように構成される。
【0043】
例えば、車速検出部46は、車輪16が1回転する間に、予め定める回数の検出信号を出力するように構成される。例えば、予め定める回数は、1である。例えば、車速検出部46は、車輪16の回転速度に応じた信号を出力する。制御部62は、車輪16の回転速度に応じた信号と、車輪16の周長に関する情報とに基づいて人力駆動車10の車速を算出できる。例えば、記憶部64には車輪16の周長に関する情報が記憶される。
【0044】
例えば、人力駆動車10は、人力駆動力検出部48をさらに含む。人力駆動力検出部48は、制御部62と有線または無線によって通信可能に接続される。人力駆動力検出部48は、人力駆動力によってクランク軸12に与えられるトルクに応じた信号を出力するように構成される。人力駆動力によってクランク軸12に与えられるトルクに応じた信号は、人力駆動車10に入力される人力駆動力に関する情報を含む。
【0045】
例えば、人力駆動力検出部48は、人力駆動力の伝達経路、または、人力駆動力の伝達経路に含まれる部材の近傍に設けられる部材に設けられる。例えば、人力駆動力の伝達経路に含まれる部材は、クランク軸12、クランク軸12と少なくとも1つの第1回転体14との間において人力駆動力を伝達する部材を含む。例えば、動力伝達部は、クランク軸12の外周部に設けられる。
【0046】
人力駆動力検出部48は、歪センサ、磁歪センサ、または、圧力センサなどを含む。歪センサは、歪ゲージを含む。人力駆動力検出部48は、人力駆動力に関する情報を取得できればどのような構成であってもよい。
【0047】
例えば、人力駆動力検出部48は、クランクアーム28A,28B、または、2つのペダル30のうちの少なくとも1つに設けられてもよい。例えば、人力駆動力検出部48が2つのペダル30のうちの少なくとも1つに設けられる場合、人力駆動力検出部48は、2つのペダル30のうちの少なくとも1つに与えられる圧力を検出するセンサを含んでいてもよい。例えば、人力駆動力検出部48は、伝達体20に含まれるチェーンに設けられてもよい。例えば、人力駆動力検出部48がチェーンに設けられる場合、人力駆動力検出部48は、チェーンの張力を検出するセンサを含んでいてもよい。
【0048】
例えば、人力駆動車10は、クランク回転状態検出部50をさらに含む。例えば、クランク回転状態検出部50は、制御部62と有線または無線によって通信可能に接続される。クランク回転状態検出部50は、クランク軸12および少なくとも1つの第1回転体14の少なくとも1つの回転量を検出する。例えば、クランク回転状態検出部50は、クランク軸12の回転速度に応じた情報を検出するように構成される。例えば、クランク回転状態検出部50は、少なくとも1つの第1回転体14の回転速度に応じた情報を検出するように構成される。クランク軸12の回転速度に応じた情報は、クランク軸12の角加速度を含む。少なくとも1つの第1回転体14の回転速度に応じた情報は、少なくとも1つの第1回転体14の角加速度を含む。
【0049】
例えば、クランク回転状態検出部50は、磁界の強度に応じた信号を出力する磁気センサを含む。クランク回転状態検出部50は、周方向に複数の磁極が並ぶ環状の磁石を含む。環状の磁石は、クランク軸12、少なくとも1つの第1回転体14、または、クランク軸12から少なくとも1つの第1回転体14までの動力伝達経路の間に設けられる。例えば、環状の磁石は、1つのS極と、1つのN極とを含む。1つのS極と、1つのN極とは、クランク軸12の軸線まわりに、それぞれ180°連続して延びる。
【0050】
例えば、クランク回転状態検出部50は、クランク軸12の回転速度、および、少なくとも1つの第1回転体14の回転速度の少なくとも1つに応じた信号を出力する。例えば、クランク回転状態検出部50は、クランク軸12の回転速度、および、少なくとも1つの第1回転体14の回転速度の少なくとも1つが1回転する間において、クランク軸12の回転角度に対応する検出信号を出力するように構成される。クランク回転状態検出部50は、磁気センサに代えて光学センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、または、トルクセンサなどを含んでいてもよい。
【0051】
例えば、クランク回転状態検出部50は、人力駆動車10のフレーム26に設けられる。例えば、クランク回転状態検出部50がフレーム26に設けられる場合、クランク回転状態検出部50は、車速センサを含んで構成されていてもよい。クランク回転状態検出部50が車速センサを含む場合、制御部62は、車速センサによって検出される車速と、比率Rとに応じてクランク軸12の回転速度を算出するように構成されてもよい。
【0052】
クランク回転状態検出部50は、少なくとも1つの第2回転体18の回転量を検出するように構成されてもよい。クランク回転状態検出部50は、少なくとも1つの第2回転体18の回転速度に応じた情報を検出するように構成されてもよい。例えば、少なくとも1つの第2回転体18の回転速度に応じた情報は、少なくとも1つの第2回転体18の角加速度を含む。例えば、クランク回転状態検出部50は、少なくとも1つの第2回転体18の回転速度に応じた信号を出力してもよい。
【0053】
例えば、人力駆動車10は、勾配検出部52をさらに含む。勾配検出部52は、例えば、傾斜センサおよびGPS(Global Positioning System)受信機の少なくとも1つを含む。傾斜センサは、例えば、ジャイロセンサおよび加速度センサの少なくとも1つを含む。勾配検出部52が、GPS受信機を含む場合、記憶部64に走行路の勾配に関する情報を含む地図情報を予め記憶され、制御部62は、人力駆動車10の現在地の走行路の勾配を取得する。
【0054】
人力駆動車用の制御装置60は、制御部62を備える。例えば、制御部62は、予め定める制御プログラムを実行する演算処理装置を含む。例えば、制御部62に含まれる演算処理装置は、CPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)を含む。
【0055】
例えば、制御部62に含まれる演算処理装置は、相互に離れた複数の場所に設けられてもよい。例えば、演算処理装置の一部は、人力駆動車10に設けられ、演算処理装置の他の一部は、インターネットに接続されるサーバに設けられてもよい。演算処理装置が、相互に離れた複数の場所に設けられる場合、演算処理装置の各部分は、無線通信装置を介して相互に通信可能に接続される。制御部62は、1または複数のマイクロコンピュータを含んでいてもよい。
【0056】
例えば、制御装置60は、記憶部64をさらに備える。例えば、記憶部64は、制御部62と有線または無線によって通信可能に接続される。例えば、記憶部64には、制御プログラムおよび制御処理に用いられる情報が記憶される。例えば、記憶部64は、例えば不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含む。例えば、不揮発性メモリは、ROM(Read-Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、および、フラッシュメモリの少なくとも1つを含む。例えば、揮発性メモリは、RAM(Random Access Memory)を含む。
【0057】
制御部62は、変速装置42を制御する。制御部62は、変速条件、および、ユーザが操作可能な変速操作装置44からの入力のそれぞれに基づいて比率Rを変更するように変速装置42を制御可能に構成される。制御部62は、例えば、変速条件が満たされると、比率Rを変更するように変速装置42を動作させる。制御部62は、例えば、変速操作装置44が操作されると、比率Rを変更するように変速装置42を動作させる。
【0058】
変速条件は、例えば、人力駆動車10の走行状態および走行環境の少なくとも1つに関する。走行状態は、例えば、クランク軸12の回転速度、人力駆動力、および、車速の少なくとも1つを含む。走行環境は、例えば、走行路の勾配を含む。走行状態および走行環境の少なくとも1つは、例えば、走行抵抗を含む。走行抵抗は、例えば、空気抵抗、転がり抵抗、勾配抵抗、および、加速抵抗の少なくとも1つを含む。
【0059】
変速条件は、例えば、クランク軸12の回転速度、人力駆動力、および、車速の少なくとも1つを含む。本実施形態では、変速条件は、クランク軸12の回転速度を含む。制御部62は、例えば、クランク軸12の回転速度が上限閾値よりも大きい場合、比率Rが大きくなるように変速装置42を制御し、クランク軸12の回転速度が下限閾値よりも小さい場合、比率Rが小さくなるように変速装置42を制御する。
【0060】
変速条件が人力駆動力を含む場合、変速条件は、例えば、人力駆動力が第1範囲外にある場合に満たされる。変速条件が車速を含む場合、変速条件は、例えば、車速が第2範囲外にある場合に満たされる。
【0061】
変速条件は、例えば、走行路の勾配、および、走行抵抗の少なくとも1つを含む。変速条件が走行路の勾配を含む場合、変速条件は、例えば、走行路の勾配が第3範囲外にある場合に満たされる。変速条件が走行抵抗を含む場合、変速条件は、例えば、走行抵抗が第4範囲外にある場合に満たされる。
【0062】
制御部62は、制御状態を第1制御状態および第2制御状態のいずれかに選択可能に構成される。第1制御状態において、変速操作装置44からの入力に基づいて、比率Rを変更するように変速装置42を制御する場合、制御状態を第1制御状態から第2制御状態に移行するように構成される。制御部62は、第2制御状態において、人力駆動車10の車両状態に関するパラメータの変化量が所定量以上になると、制御状態を第2制御状態から第1制御状態に移行するように構成される。第2制御状態では、第1制御状態よりも変速条件に応じて比率Rを変更することが抑制される。
【0063】
制御部62は、オートモードおよびマニュアルモードを備えてもよい。オートモードが選択される場合、変速操作装置44からの入力、および、変速条件の両方に基づいて変速装置42を制御する。マニュアルモードが選択される場合、制御部62は、変速操作装置44からの入力に基づいて変速装置42を制御し、かつ、変速条件に基づいて変速装置42を制御しない。制御部62がオートモードおよびマニュアルモードを備える場合、第1制御状態および第2制御状態は、オートモードにおける制御状態である。
【0064】
制御部62は、例えば、第1制御状態において、変速操作装置44からの入力に基づいて、比率Rが増加および減少の一方となるように変更するように変速装置42を制御する場合、制御状態を第1制御状態から第2制御状態に移行するように構成される。第2制御状態では、例えば、第1制御状態よりも変速条件に応じて比率Rが増加および減少の他方となるように変更することが抑制される。第2制御状態では、例えば、変速条件に応じて比率Rが増加および減少の一方となるように変更することは、第1制御状態よりも抑制されない。第2制御状態では、変速条件に応じて比率Rが増加および減少の一方となるように変更することは、第1制御状態よりも抑制されてもよい。
【0065】
制御部62は、例えば、第1制御状態において、変速操作装置44からの入力に基づいて比率Rが増加するように変更するように変速装置42を制御する場合、第2制御状態では、第1制御状態よりも変速条件に応じて比率Rが減少するように変更することが抑制される。制御部62は、例えば、第1制御状態において、変速操作装置44からの入力に基づいて比率Rが減少するように変更するように変速装置42を制御する場合、第2制御状態では、第1制御状態よりも変速条件に応じて比率Rが増加するように変更することが抑制される。
【0066】
制御部62は、例えば、変速条件を変更することによって、比率Rの変更を抑制する。制御部62は、例えば、変速条件に含まれる範囲を変更することによって、比率Rの変更を抑制する。変速条件がクランク軸12の回転速度を含む場合、制御部62は、例えば、下限閾値を小さくすることによって、比率Rが減少する変更を抑制する。変速条件がクランク軸12の回転速度を含む場合、制御部62は、例えば、上限閾値を大きくすることによって、比率Rが増加する変更を抑制する。変速条件は、例えば、第1条件、および、第2条件を含む。制御部62は、第1制御状態では、例えば、第1条件に基づいて、変速装置42を制御する。制御部62は、第2制御状態では、例えば、第2条件に基づいて、変速装置42を制御する。第2条件は、第1条件よりも成立しにくい。例えば、第2条件に含まれる範囲が第1条件よりも広いことによって、第2条件が第1条件よりも成立しにくい。制御部62は、比率Rの変更を抑制する場合、変速条件に含まれる範囲を変更せず、比率Rの変更を禁止してもよい。
【0067】
パラメータは、例えば、比率Rの変更にともなって変化する車両状態の安定を判定可能な値である。パラメータの変化量は、例えば、比率Rが変更されてから車両状態が安定化するまでの値に基づいて設定される。
【0068】
パラメータは、例えば、車速、および、車速の加速度の少なくとも1つを含む。パラメータが車速を含む場合、例えば、所定量は、1km/h以上かつ10km/h以下である。パラメータが車速を含む場合、例えば、所定量は、5km/hである。パラメータが加速度を含む場合、例えば、所定量は、1km/h/s以上かつ5km/h/sである。パラメータが加速度を含む場合、例えば、所定量は、2km/h/sである。
【0069】
パラメータは、例えば、クランク軸12の回転量を含み、所定量は、比率Rに応じて設定される所定回転量を含む。クランク軸12の回転量は、ペダル30のストローク量で表されてもよい。表1は、変速ステージの数が12の場合の、ペダルストローク量と対応する所定量と変速ステージとの関係を示す。
【0070】
【0071】
パラメータは、例えば、人力駆動車10の走行路の路面勾配を含む。路面勾配は、例えば、傾斜角度によって表される。パラメータが路面勾配を含む場合、例えば、所定量は、2%以上かつ10%以下である。パラメータが路面勾配を含む場合、例えば、所定量は、5%である。制御部62は、路面勾配が10度以上の場合、パラメータの変化量に関わらず、制御状態を第2制御状態から第1制御状態に移行するように構成されてもよい。
【0072】
パラメータは、例えば、人力駆動車10に入力される人力駆動力を含む。パラメータが人力駆動力を含む場合、変速操作装置44の操作によって比率Rが増加するように変更される場合と、比率Rが減少するように変更された場合とのそれぞれにおいて所定量を異ならせてもよい。制御部62は、変速操作装置44の操作によって比率Rが増加するように変更される場合、人力駆動力が判定駆動力以上の場合、パラメータの変化量に関わらず、制御状態を第2制御状態から第1制御状態に移行するように構成されてもよい。判定駆動力は、例えば、30Nm以上かつ50Nmである。判定駆動力は、例えば、40Nmである。
【0073】
パラメータは、例えば、人力駆動車10の車輪16の回転量、および、人力駆動車10の走行距離の少なくとも1つを含む。
【0074】
パラメータは、例えば、クランク軸12の回転速度を含む。パラメータがクランク軸12の回転速度を含む場合、例えば、所定量は、10rpm以上かつ30rpm以下である。パラメータがクランク軸12の回転速度を含む場合、例えば、所定量は、20rpmである。
【0075】
制御部62は、例えば、第2制御状態において、車速が加速かつ第1車速を超える場合、および、車速が減速かつ第2車速未満になる場合の少なくとも1つにおいて、制御状態を第2制御状態から第1制御状態に移行するように構成される。第1車速は、例えば、20km/h以上かつ40km/h以下である。第1車速は、例えば、30km/hである。第2車速は、例えば、0km/h以上かつ20km/h以下である。第2車速は、例えば、10km/hである。制御部62は、例えば、第2制御状態において、人力駆動車10が停車すると、制御状態を第2制御状態から第1制御状態に移行するように構成されてもよい。
【0076】
図3を参照して、制御部62が変速装置42を制御する処理について説明する。制御部62は、例えば、制御部62に電力が供給されると、処理を開始して
図3に示すフローチャートのステップS11に移行する。制御部62は、
図3のフローチャートが終了すると、例えば、電力の供給が停止されるまでは、予め定める周期後にステップS11からの処理を繰り返す。
【0077】
制御部62は、ステップS11において、制御状態が第1制御状態か否かを判定する。制御部62は、制御状態が第1制御状態の場合、ステップS12に移行する。制御部62は、ステップS12において、第1条件が成立するか否かを判定する。制御部62は、第1条件が成立しない場合、処理を終了する。制御部62は、第1条件が成立する場合、ステップS13に移行する。制御部62は、ステップS13において、比率Rを変更するように変速装置42を制御し、処理を終了する。
【0078】
制御部62は、ステップS11において、制御状態が第1制御状態ではない場合、ステップS14に移行する。制御部62は、ステップS14において、第2条件が成立するか否かを判定する。制御部62は、第2条件が成立しない場合、処理を終了する。制御部62は、第2条件が成立する場合、ステップS15に移行する。制御部62は、ステップS15において、比率Rを変更するように変速装置42を制御し、処理を終了する。
【0079】
図4を参照して、制御部62が制御状態を変更する処理について説明する。制御部62は、例えば、制御部62に電力が供給されると、処理を開始して
図4に示すフローチャートのステップS21に移行する。制御部62は、
図4のフローチャートが終了すると、例えば、電力の供給が停止されるまでは、予め定める周期後にステップS21からの処理を繰り返す。
【0080】
制御部62は、ステップS21において、制御状態が第1制御状態か否かを判定する。制御部62は、制御状態が第1制御状態の場合、ステップS22に移行する。制御部62は、ステップS22において、変速操作装置44からの入力に基づいて比率Rを変更するように変速装置42を制御したか否かを判定する。制御部62は、変速操作装置44からの入力に基づいて比率Rを変更していない場合、処理を終了する。制御部62は、変速操作装置44からの入力に基づいて比率Rを変更した場合、ステップS23に移行する。制御部62は、ステップS23において、制御状態を第1制御状態から第2制御状態に移行し、処理を終了する。
【0081】
制御部62は、ステップS21において、制御状態が第1制御状態ではない場合、ステップS24に移行する。制御部62は、ステップS24において、パラメータの変化量が所定変化量以上か否かを判定する。制御部62は、パラメータの変化量が所定変化量以上の場合、ステップS27に移行する。制御部62は、パラメータの変化量が所定変化量以上ではない場合、ステップS25に移行する。
【0082】
制御部62は、ステップS25において、車速が加速かつ第1車速を超えたか否かを判定する。制御部62は、車速が加速かつ第1車速を超えた場合、ステップS27に移行する。制御部62は、車速が加速かつ第1車速を超えていない場合、ステップS26に移行する。制御部62は、ステップS26において、車速が減速かつ第2車速未満か否かを判定する。制御部62は、車速が減速かつ第2車速未満ではない場合、処理を終了する。制御部62は、車速が減速かつ第2車速未満の場合、ステップS27に移行する。制御部62は、ステップS27において、制御状態を第2制御状態から第1制御状態に移行し、処理を終了する。
【0083】
<変更例>
実施形態に関する説明は、本開示に従う人力駆動車用の制御装置が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本開示に従う人力駆動車用の制御装置は、例えば以下に示される実施形態の変更例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変更例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変更例において、実施形態の形態と共通する部分については、実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0084】
制御部62は、例えば、第2制御状態において、変速条件とは異なる所定変速条件が成立すると、制御状態を第2制御状態から第1制御状態に移行するように構成される。所定変速条件は、例えば、変速条件よりも成立しにくい条件である。所定変速条件は、例えば、クランク軸12の回転速度、人力駆動力、および、車速の少なくとも1つを含む。本実施形態では、所定変速条件は、クランク軸12の回転速度を含む。所定変速条件は、例えば、変速条件と同じ種類の検出値によって規定され、かつ、所定変速条件に含まれる範囲が、変速条件に含まれる範囲と異なる。所定変速条件が成立する場合、制御部62は、比率Rを変更してもよく、変更しなくてもよい。例えば、制御部62は、
図4のステップS25およびステップS26の処理に代えて、
図5のステップS31を実行する。
図5では、ステップS24においてNOの場合、ステップS31に移行する。制御部62は、ステップS31において、所定変速条件が成立したか否かを判定する。制御部62は、所定変速条件が成立する場合、ステップS27に移行する。制御部62は、所定変速条件が成立しない場合、処理を終了する。制御部62は、
図4のステップS25およびステップS26の処理に加えて、
図5のステップS31の処理を実行してもよい。制御部62は、例えば、ステップS24、ステップS25、ステップS26、および、ステップS31のいずれかの判定がYESであれば、制御状態を第2制御状態から第1制御状態に移行するように構成される。
【0085】
・制御部62は、第1制御状態において、変速操作装置44からの入力に基づいて、比率Rを変更するように変速装置42を制御する場合、制御状態を第1制御状態から第2制御状態に移行するように構成され、第2制御状態において、車速が加速かつ第1車速を超える場合、および、車速が減速かつ第2車速未満になる場合の少なくとも1つにおいて、制御状態を第2制御状態から第1制御状態に移行するように構成されてもよい。例えば、
図4のステップS24の処理を省略してもよい。
図4において、ステップS24が省略される場合、制御部62は、ステップS21においてYESの場合、ステップS25に移行する。
【0086】
・制御部62は、第1制御状態において、変速操作装置44からの入力に基づいて、比率Rが増加および減少の一方となるように変更するように変速装置42を制御する場合、第2制御状態では、第1制御状態よりも変速条件に応じて比率Rが増加および減少の一方となるように変更することが抑制されてもよい。制御部62は、例えば、第1制御状態において、変速操作装置44からの入力に基づいて比率Rが増加するように変更するように変速装置42を制御する場合、第2制御状態では、第1制御状態よりも変速条件に応じて比率Rが増加するように変更することが抑制される。制御部62は、例えば、第1制御状態において、変速操作装置44からの入力に基づいて比率Rが減少するように変更するように変速装置42を制御する場合、第2制御状態では、第1制御状態よりも変速条件に応じて比率Rが減少するように変更することが抑制される。本変更例において、変速操作装置44からの入力に基づいて、比率Rが増加および減少の一方になるように変更された後、変速条件に応じて比率Rが増加および減少の一方になるように抑制されるため、ライダが自身の望む比率Rにしやすくなる。したがって、変速装置42を好適に制御できる。
【0087】
本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【符号の説明】
【0088】
10…人力駆動車、12…クランク軸、16…車輪、42…変速装置、44…変速操作装置、60…制御装置、62…制御部。