(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039458
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】人力駆動車用の制御装置
(51)【国際特許分類】
B62M 25/08 20060101AFI20240314BHJP
B62M 9/122 20100101ALI20240314BHJP
B62M 9/123 20100101ALI20240314BHJP
B62M 9/132 20100101ALI20240314BHJP
B62M 9/133 20100101ALI20240314BHJP
B62M 11/16 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
B62M25/08
B62M9/122
B62M9/123
B62M9/132
B62M9/133
B62M11/16 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144037
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼柳 徹
(72)【発明者】
【氏名】謝花 聡
(57)【要約】
【課題】変速装置を好適に制御できる人力駆動車用の制御装置を提供する。
【解決手段】人力駆動車用の制御装置は、前記人力駆動車のクランク軸に対する車輪の回転速度の比率を変更する変速装置を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記比率を変更するように前記変速装置を制御する変速条件が成立する場合、前記人力駆動車に入力される人力駆動力に応じて、前記変速装置による変速動作の開始を所定期間が経過するまで遅延するように前記変速装置を制御するように構成され、前記変速条件が成立し、かつ、前記変速装置に関する状態が所定状態の場合、前記遅延を実行させずに前記変速動作を開始するように前記変速装置を制御するように構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力駆動車用の制御装置であって、
前記人力駆動車のクランク軸に対する車輪の回転速度の比率を変更する変速装置を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記比率を変更するように前記変速装置を制御する変速条件が成立する場合、前記人力駆動車に入力される人力駆動力に応じて、前記変速装置による変速動作の開始を所定期間が経過するまで遅延するように前記変速装置を制御するように構成され、
前記変速条件が成立し、かつ、前記変速装置に関する状態が所定状態の場合、前記遅延を実行させずに前記変速動作を開始するように前記変速装置を制御するように構成される、制御装置。
【請求項2】
前記所定状態は、前記比率が所定比率範囲内の状態を含む、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記変速装置は、前記人力駆動車のチェーンを複数のスプロケットのうちの1つから他の1つに掛け替える外装変速機を含む、請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記所定状態は、前記複数のスプロケットの回転角度が所定角度範囲内の状態を含む、請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記変速動作の開始前に前記チェーンが巻き掛けられている前記複数のスプロケットのうちの前記1つは、少なくとも1つの第1変速促進領域を有し、
前記所定角度範囲は、前記少なくとも1つの第1変速促進領域間の回転角度に基づいて設定され、
前記少なくとも1つの第1変速促進領域は、前記比率を大きくする場合に前記変速動作を促進するように構成される、請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記変速動作の完了後に前記チェーンが巻き掛けられている前記複数のスプロケットのうちの前記他の1つは、少なくとも1つの第2変速促進領域を有し、
前記所定角度範囲は、前記少なくとも1つの第2変速促進領域間の回転角度に基づいて設定され、
前記少なくとも1つの第2変速促進領域は、前記比率を小さくする場合に前記変速動作を促進するように構成される、請求項4に記載の制御装置。
【請求項7】
前記所定状態は、前記変速動作の開始前に前記チェーンが巻き掛けられている前記複数のスプロケットのうちの前記1つに含まれる少なくとも1つの第1変速促進領域の数が第1所定数範囲内の状態を含み、
前記少なくとも1つの第1変速促進領域は、前記比率を大きくする場合に前記変速動作を促進するように構成される、請求項3に記載の制御装置。
【請求項8】
前記所定状態は、前記変速動作の完了後に前記チェーンが巻き掛けられる前記複数のスプロケットのうちの前記他の1つに含まれる少なくとも1つの第2変速促進領域の数が第2所定数範囲内の状態を含み、
前記少なくとも1つの第2変速促進領域は、前記比率を小さくする場合に前記変速動作を促進するように構成される、請求項3に記載の制御装置。
【請求項9】
前記所定状態は、前記複数のスプロケットのうちの前記他の1つへの前記チェーンの巻き付け長さが所定長さ範囲内である状態を含む、請求項3に記載の制御装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記人力駆動力が所定駆動力以下の状態において前記変速装置の動作が完了するように前記所定期間を算出するように構成される、請求項1から9のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記人力駆動力が所定駆動力以下の状態において前記変速装置の動作が完了するように前記所定期間を算出するように構成され、
前記変速動作の開始前に前記チェーンが巻き掛けられている前記複数のスプロケットのうちの前記1つは、少なくとも1つの第1変速促進領域を有し、
前記所定期間は、前記少なくとも1つの第1変速促進領域間の回転角度に基づいて算出され、
前記少なくとも1つの第1変速促進領域は、前記比率を大きくする場合に前記変速動作を促進するように構成される、請求項3に記載の制御装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記人力駆動力が所定駆動力以下の状態において前記変速装置の動作が完了するように前記所定期間を算出するように構成され、
前記変速動作の完了後に前記チェーンが巻き掛けられている前記複数のスプロケットのうちの前記他の1つは、少なくとも1つの第2変速促進領域を有し、
前記所定期間は、前記少なくとも1つの第2変速促進領域間の回転角度に基づいて設定され、
前記少なくとも1つの第2変速促進領域は、前記比率を小さくする場合に前記変速動作を促進するように構成される、請求項3に記載の制御装置。
【請求項13】
前記所定期間は、前記複数のスプロケットのうちの前記他の1つへの前記チェーンの巻き付け長さに基づいて算出される、請求項11または12に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人力駆動車用の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されている人力駆動車用の制御装置は、人力駆動車の変速装置を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的の1つは、変速装置を好適に制御できる人力駆動車用の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1側面に従う制御装置は、人力駆動車用の制御装置であって、前記人力駆動車のクランク軸の回転速度に対する車輪の回転速度の比率を変更する変速装置を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記比率を変更するように前記変速装置を制御する変速条件が成立する場合、前記人力駆動車に入力される人力駆動力に応じて、前記変速装置による変速動作の開始を所定期間が経過するまで遅延するように前記変速装置を制御するように構成され、前記変速条件が成立し、かつ、前記変速装置に関する状態が所定状態の場合、前記遅延を実行させずに前記変速動作を開始するように前記変速装置を制御するように構成される。
第1側面の制御装置によれば、変速装置に関する状態が所定状態の場合、遅延を実行させずに変速動作を開始するため、早期に比率を変更できる。したがって、制御部は、変速装置を好適に制御できる。
【0006】
本開示の第1側面に従う第2側面の制御装置において、前記所定状態は、前記比率が所定比率範囲内の状態を含む。
第2側面の制御装置によれば、比率が所定比率範囲内の場合、遅延を実行させずに変速動作を開始できる。
【0007】
本開示の第1または第2側面に従う第3側面の制御装置において、前記変速装置は、前記人力駆動車のチェーンを複数のスプロケットのうちの1つから他の1つに掛け替える外装変速機を含む。
第3側面の制御装置によれば、外装変速機を含む人力駆動車において、変速装置に関する状態が所定状態の場合、遅延を実行させずに変速動作を開始できる。
【0008】
本開示の第3側面に従う第4側面の制御装置において、前記所定状態は、前記複数のスプロケットの回転角度が所定角度範囲内の状態を含む。
第4側面の制御装置によれば、複数のスプロケットの回転角度が所定角度範囲内の場合、遅延を実行させずに変速動作を開始できる。
【0009】
本開示の第4側面に従う第5側面の制御装置において、前記変速動作の開始前に前記チェーンが巻き掛けられている前記複数のスプロケットのうちの前記1つは、少なくとも1つの第1変速促進領域を有し、前記所定角度範囲は、前記少なくとも1つの第1変速促進領域間の回転角度に基づいて設定され、前記少なくとも1つの第1変速促進領域は、前記比率を大きくする場合に前記変速動作を促進するように構成される。
第5側面の制御装置によれば、複数のスプロケットの回転角度が、第1変速促進領域間の回転角度に基づいて設定される所定角度範囲内の場合、遅延を実行させずに変速動作を開始できる。
【0010】
本開示の第4側面に従う第6側面の制御装置において、前記変速動作の完了後に前記チェーンが巻き掛けられている前記複数のスプロケットのうちの前記他の1つは、少なくとも1つの第2変速促進領域を有し、前記所定角度範囲は、前記少なくとも1つの第2変速促進領域間の回転角度に基づいて設定され、前記少なくとも1つの第2変速促進領域は、前記比率を小さくする場合に前記変速動作を促進するように構成される。
第6側面の制御装置によれば、複数のスプロケットの回転角度が、第2変速促進領域間の回転角度に基づいて設定される所定角度範囲内の場合、遅延を実行させずに変速動作を開始できる。
【0011】
本開示の第3または第4側面に従う第7側面の制御装置において、前記所定状態は、前記変速動作の開始前に前記チェーンが巻き掛けられている前記複数のスプロケットのうちの前記1つに含まれる少なくとも1つの第1変速促進領域の数が第1所定数範囲内の状態を含み、前記少なくとも1つの第1変速促進領域は、前記比率を大きくする場合に前記変速動作を促進するように構成される。
第7側面の制御装置によれば、少なくとも1つの第1変速促進領域の数が第1所定数範囲内の場合、遅延を実行させずに変速動作を開始できる。
【0012】
本開示の第3、第4、および、第7側面のいずれか1つに従う第8側面の制御装置において、前記所定状態は、前記変速動作の完了後に前記チェーンが巻き掛けられる前記複数のスプロケットのうちの前記他の1つに含まれる少なくとも1つの第2変速促進領域の数が第2所定数範囲内の状態を含み、前記少なくとも1つの第2変速促進領域は、前記比率を小さくする場合に前記変速動作を促進するように構成される。
第8側面の制御装置によれば、少なくとも1つの第2変速促進領域の数が第1所定数範囲内の場合、遅延を実行させずに変速動作を開始できる。
【0013】
本開示の第3から第8側面のいずれか1つに従う第9側面の制御装置において、前記所定状態は、前記複数のスプロケットのうちの前記他の1つへの前記チェーンの巻き付け長さが所定長さ範囲内である状態を含む。
第9側面の制御装置によれば、複数のスプロケットのうちの他の1つへのチェーンの巻き付け長さが所定長さ範囲内の場合、遅延を実行させずに変速動作を開始できる。
【0014】
本開示の第1から第9側面のいずれか1つに従う第10側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動力が所定駆動力以下の状態において前記変速装置の動作が完了するように前記所定期間を算出するように構成される。
第10側面の制御装置によれば、人力駆動力が所定駆動力以下の状態において変速装置の動作を完了できるため、変速性能の低下が抑制される。
【0015】
本開示の第3側面に従う第11側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動力が所定駆動力以下の状態において前記変速装置の動作が完了するように前記所定期間を算出するように構成され、前記変速動作の開始前に前記チェーンが巻き掛けられている前記複数のスプロケットのうちの前記1つは、少なくとも1つの第1変速促進領域を有し、前記所定期間は、前記少なくとも1つの第1変速促進領域間の回転角度に基づいて算出され、前記少なくとも1つの第1変速促進領域は、前記比率を大きくする場合に前記変速動作を促進するように構成される。
第11側面の制御装置によれば、人力駆動力が所定駆動力以下の状態において変速装置の動作を完了できるため、変速性能の低下が抑制される。
【0016】
本開示の第3側面に従う第12側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動力が所定駆動力以下の状態において前記変速装置の動作が完了するように前記所定期間を算出するように構成され、前記変速動作の完了後に前記チェーンが巻き掛けられている前記複数のスプロケットのうちの前記他の1つは、少なくとも1つの第2変速促進領域を有し、前記所定期間は、前記少なくとも1つの第2変速促進領域間の回転角度に基づいて設定され、前記少なくとも1つの第2変速促進領域は、前記比率を小さくする場合に前記変速動作を促進するように構成される。
第12側面の制御装置によれば、人力駆動力が所定駆動力以下の状態において変速装置の動作を完了できるため、変速性能の低下が抑制される。
【0017】
本開示の第11または第12側面に従う第13側面の制御装置において、前記所定期間は、前記複数のスプロケットのうちの前記他の1つへの前記チェーンの巻き付け長さに基づいて算出される。
第13側面の制御装置によれば、複数のスプロケットのうちの他の1つへのチェーンの巻き付け長さに基づいて算出される所定期間に基づいて、変速動作を開始できる。
【発明の効果】
【0018】
本開示の人力駆動車用の制御装置は、変速装置を好適に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態の人力駆動車用の制御装置を含む人力駆動車の側面図である。
【
図3】
図1の人力駆動車の電気的な構成を示すブロック図である。
【
図4】
図2の制御部によって実行され、変速装置を制御する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態>
図1から
図4を参照して、人力駆動車用の制御装置60が説明される。人力駆動車は、少なくとも1つの車輪を有し、少なくとも人力駆動力によって駆動できる乗り物である。例えば、人力駆動車は、マウンテンバイク、ロードバイク、シティバイク、カーゴバイク、ハンドバイク、および、リカンベントなど種々の種類の自転車を含む。人力駆動車が有する車輪の数は限定されない。例えば、人力駆動車は、1輪車および2輪以上の車輪を有する乗り物も含む。人力駆動車は、人力駆動力のみによって駆動できる乗り物に限定されない。人力駆動車は、人力駆動力だけではなく、電気モータの駆動力を推進に利用するE-bikeを含む。E-bikeは、電気モータによって推進が補助される電動アシスト自転車を含む。以下、それぞれの実施形態において、人力駆動車は、自転車として説明される。
【0021】
人力駆動車10は、クランク軸12と、第1回転体14と、車輪16と、第2回転体18と、伝達体20とを含む。クランク軸12は、人力駆動力が入力されるように構成される。第1回転体14は、クランク軸12に接続される。第2回転体18は、車輪16に接続される。伝達体20は、第1回転体14および第2回転体18に係合して、第1回転体14と第2回転体18との間において駆動力を伝達するように構成される。
【0022】
例えば、人力駆動車10は、車体24をさらに含む。例えば、車体24は、フレーム26を含む。例えば、車輪16は、前輪16Fと、後輪16Rと、を含む。例えば、クランク軸12は、フレーム26に対して回転可能である。例えば、人力駆動車10は、クランク28を含む。クランク28は、クランク軸12および2つのクランクアーム28A,28Bを含む。例えば、クランクアーム28Aは、クランク軸12の軸方向の第1端部に設けられ、クランクアーム28Bは、クランク軸12の軸方向の第2端部に設けられる。例えば、人力駆動車10は、2つのペダル30を含む。例えば、クランクアーム28Aには、2つのペダル30のうちの1つが連結される。クランクアーム28Bには、2つのペダル30のうちの他の1つが連結される。例えば、後輪16Rは、クランク軸12が回転することによって駆動される。例えば、後輪16Rは、フレーム26に支持される。
【0023】
フレーム26には、フロントフォーク32を介して前輪16Fが取り付けられる。フロントフォーク32には、ステム34を介してハンドルバー36が連結される。
【0024】
例えば、人力駆動車10は、駆動機構38をさらに含む。例えば、前輪16Fおよび後輪16Rの少なくとも1つと、クランク28とは、駆動機構38によって連結される。本実施形態では、後輪16Rとクランク28とが、駆動機構38によって連結される。
【0025】
例えば、駆動機構38は、少なくとも1つの第1回転体14、少なくとも1つの第2回転体18、および、伝達体20を含む。少なくとも1つの第1回転体14は、クランク軸12に接続される。少なくとも1つの第2回転体18は、車輪16に接続される。伝達体20は、少なくとも1つの第1回転体14および少なくとも1つの第2回転体18に係合して、少なくとも1つの第1回転体14と少なくとも1つの第2回転体18との間において駆動力を伝達するように構成される。例えば、伝達体20は、少なくとも1つの第1回転体14の回転力を少なくとも1つの第2回転体18に伝達する。
【0026】
例えば、少なくとも1つの第1回転体14と、クランク軸12とは、同軸に配置される。少なくとも1つの第1回転体14と、クランク軸12とは、同軸に配置されなくてもよい。例えば、少なくとも1つの第1回転体14と、クランク軸12とが、同軸に配置されない場合、少なくとも1つの第1回転体14と、クランク軸12とは、第1伝達機構を介して接続される。第1伝達機構は、複数の歯車を含んでいてもよく、スプロケットおよびチェーンを含んでいてもよく、プーリおよびベルトを含んでいてもよく、シャフトおよびベベルギアを含んでいてもよい。例えば、少なくとも1つの第1回転体14は、少なくとも1つの第1スプロケットを含む。
【0027】
例えば、少なくとも1つの第2回転体18と、後輪16Rとは、同軸に配置される。少なくとも1つの第2回転体18と、後輪16Rとは、同軸に配置されなくてもよい。例えば、少なくとも1つの第2回転体18と、後輪16Rとが、同軸に配置されない場合、少なくとも1つの第2回転体18と、後輪16Rとは、第2伝達機構を介して接続される。第2伝達機構は、複数の歯車を含んでいてもよく、スプロケットおよびチェーンを含んでいてもよく、プーリおよびベルトを含んでいてもよく、シャフトおよびベベルギアを含んでいてもよい。例えば、少なくとも1つの第2回転体18は、少なくとも1つの第2スプロケットを含む。
【0028】
少なくとも1つの第2回転体18と、後輪16Rとは、第3ワンウェイクラッチを介して接続される。例えば、第3ワンウェイクラッチは、ローラクラッチ、スプラグクラッチ、および、ラチェットクラッチの少なくとも1つを含む。第3ワンウェイクラッチは、第1回転体14の前転に伴って、第2回転体18が回転する場合に、第2回転体18から後輪16Rに駆動力を伝達し、後輪16Rが前転する速度が、第2回転体18が前転する速度よりも高い場合に、後輪16Rと第2回転体18との相対回転を許容するように構成される。
【0029】
例えば、人力駆動車10は、バッテリ40をさらに含む。バッテリ40は、1または複数のバッテリ素子を含む。バッテリ素子は、充電池を含む。例えば、バッテリ40は、制御装置60、および、変速装置42に電力を供給するように構成される。例えば、バッテリ40は、制御装置60と有線または無線によって通信可能に接続される。例えば、バッテリ40は、電力線通信(PLC;Power Line Communication)、CAN(Controller Area Network)、または、UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)によって制御装置60と通信可能である。
【0030】
人力駆動車10は、例えば、変速装置42を含む。変速装置42は、人力駆動車10のクランク軸12の回転速度に対する車輪16の回転速度の比率Rを変更する。変速装置42は、例えば、人力駆動車10における人力駆動力の伝達経路に設けられ、かつ、比率Rを変更するように構成される。比率Rは、例えば、クランク28の回転速度に対する車輪16の回転速度の比率Rである。車輪16の回転速度は、例えば、駆動輪の回転速度を含む。
【0031】
変速装置42は、外装変速機42Aおよび内装変速機の少なくとも1つを含む。本実施形態では、変速装置42は、人力駆動車10のチェーンを複数のスプロケットのうちの1つから他の1つに掛け替える外装変速機42Aを含む。本実施形態の変速装置42は、外装変速機42Aを含む。外装変速機42Aは、クランク軸12の回転速度に対する車輪16の回転速度の比率Rを変更するために伝達体20を操作するように構成される。外装変速機42Aは、例えば、フロントディレーラ、および、リアディレーラの少なくとも1つを含む。外装変速機42Aがフロントディレーラ、および、リアディレーラの少なくとも1つを含む場合、伝達体20は、チェーンを含む。
【0032】
外装変速機42Aは、例えば、複数のスプロケットのうちの1つに係合する伝達体20を、複数のスプロケットのうちの他の1つに移動させる。変速装置42が内装変速機を含む場合、内装変速機は、例えば、後輪16Rのハブに設けられる。内装変速機は、CVT(Continuously Variable Transmission)を含んでいてもよい。変速装置42は、例えば、電動アクチュエータ42Bを含む。電動アクチュエータ42Bは、例えば、変速装置42を動作するように構成される。電動アクチュエータ42Bは、例えば、外装変速機42Aを動作するように構成される。
【0033】
外装変速機42Aは、クランク軸12の回転速度に対する車輪16の回転速度の比率Rを変更するために伝達体20を操作するように構成される。例えば、外装変速機42Aは、人力駆動車10における人力駆動力の伝達経路に設けられ、かつ、比率Rを変更するように構成される。例えば、外装変速機42Aは、伝達体20を操作して、少なくとも1つの第1回転体14および少なくとも1つの第2回転体18の少なくとも1つと、伝達体20との係合状態を変更することによって比率Rを変更させる。比率Rと、車輪16の回転速度と、クランク軸12の回転速度との関係は、式(1)によって表される。式(1)において、Rは、比率Rを示す。式(1)において、Wは、車輪16の回転速度を示す。式(1)において、Cは、クランク軸12の回転速度を示す。
式(1):R=W(rpm)/C(rpm)
【0034】
例えば、外装変速機42Aは、比率Rを少なくとも1つの変速ステージごとに変更可能である。例えば、外装変速機42Aは少なくとも1つの変速ステージを変更するために伝達体20を操作するように構成される。例えば、少なくとも1つの変速ステージは、少なくとも1つの第1回転体14および少なくとも1つの第2回転体18の少なくとも1つに応じて設定される。例えば、少なくとも1つの変速ステージが複数の変速ステージを含む場合、複数の変速ステージのそれぞれには、異なる比率Rが設定される。例えば、変速ステージが高くなるほど、比率Rは大きくなる。
【0035】
例えば、少なくとも1つの第1回転体14が複数の第1回転体14を含み、かつ、少なくとも1つの第2回転体18が複数の第2回転体18を含む場合、変速ステージは、複数の第1回転体14のうちの1つおよび複数の第2回転体18のうちの1つの組み合わせに応じて設定される。例えば、少なくとも1つの第1回転体14が1つの第1回転体14を含み、少なくとも1つの第2回転体18が複数の第2回転体18を含む場合、変速ステージは、複数の第2回転体18の数に応じて設定される。例えば、少なくとも1つの第1回転体14が複数の第1回転体14を含み、少なくとも1つの第2回転体18が1つの第2回転体18を含む場合、変速ステージは、複数の第1回転体14の数に応じて設定される。
【0036】
例えば、外装変速機42Aは、複数のスプロケットのうちの1つに係合するチェーンを、複数のスプロケットのうちの他の1つに移動させる。例えば、複数の第1スプロケットのうちの、歯数が最小のスプロケットと、複数の第2スプロケットのうちの、歯数が最大のスプロケットと、の組合せは外装変速機42Aによって実現可能な最小の変速ステージと対応する。例えば、複数の第1スプロケットのうちの、歯数が最大のスプロケットと、複数の第2スプロケットのうちの、歯数が最小のスプロケットとの組合せは、外装変速機42Aによって実現可能な最大の変速ステージと対応する。
【0037】
外装変速機42Aがフロントディレーラを含む場合、例えば、複数の第1回転体14は、2枚以上3枚以下のスプロケットを含む。例えば、複数の第1回転体14は、2枚のスプロケットを含む。
【0038】
外装変速機42Aがフロントディレーラを含む場合、例えば、外装変速機42Aは、変速動作において複数の第1回転体14のうちの1つから複数の第1回転体14のうちの他の1つに伝達体20を移動させるように構成される。フロントディレーラは、伝達体20を操作して、少なくとも1つの第1回転体14と、伝達体20との係合状態を変更することによって比率Rを変更させる。例えば、複数の第1回転体14は、複数のスプロケットを含む。
【0039】
例えば、外装変速機42Aがリアディレーラを含む場合、少なくとも1つの第2回転体18は、2枚以上20枚以下のスプロケットを含む。例えば、複数の第2回転体18は、12枚のスプロケットを含む。
【0040】
外装変速機42Aがリアディレーラを含む場合、例えば、複数の第2回転体18のうちの少なくとも1つは、周方向において少なくとも2つの変速促進領域22を含む。少なくとも2つの変速促進領域22は、例えば、複数の第2回転体18の少なくとも1つに、個別に設定される。少なくとも2つの変速促進領域22は、リアディレーラによる、複数の第2回転体18のうちの1つから複数の第2回転体18のうちの隣接する他の1つへの伝達体20の移動を促進する領域である。
【0041】
少なくとも2つの変速促進領域22が、複数の第2回転体18のそれぞれに、個別に設定される場合、例えば、少なくとも2つの変速促進領域22は、複数の第2回転体18の全てにおいてそれぞれ異なっていてもよく、少なくとも2つが同じであってもよい。複数の第2回転体18のうちの少なくとも1つは、少なくとも2つの変速促進領域22を含んでいなくてもよい。複数の第2スプロケットのうちの最小の第2スプロケットは、例えば、少なくとも2つの変速促進領域22を含まず、他の第2スプロケットは、少なくとも2つの変速促進領域22を含む。
【0042】
少なくとも2つの変速促進領域22が、複数の第2回転体18のそれぞれに、個別に設定される場合、例えば、少なくとも2つの変速促進領域22は、第1変速促進領域22Aと、第2変速促進領域22Bとを含む。第1変速促進領域22Aは、例えば、複数のスプロケットのうちの1つから、複数の第2スプロケットのうちの他の1つへのチェーンの移動を促進する。少なくとも1つの第1変速促進領域22Aは、比率Rを大きくする場合に変速動作を促進するように構成される。第1変速促進領域22Aは、例えば、複数のスプロケットのうちの歯数が多い第2スプロケットから複数のスプロケットのうちの歯数が少ないスプロケットへのチェーンの移動を促進する。第1変速促進領域22Aは、例えば、チェーンがスプロケットの歯から外れやすい構造を有するスプロケットの歯を含む。
【0043】
第2変速促進領域22Bは、例えば、複数のスプロケットのうちの他の1つから複数のスプロケットのうちの1つへのチェーンの移動を促進する。少なくとも1つの第2変速促進領域22Bは、比率Rを小さくする場合に変速動作を促進するように構成される。第2変速促進領域22Bは、例えば、複数のスプロケットのうちの歯数が少ないスプロケットから複数のスプロケットのうちの歯数が多いスプロケットへのチェーンの移動を促進する。第2変速促進領域22Bは、例えば、チェーンがスプロケットの歯に係合しやすい構造を有するスプロケットの歯を含む。
【0044】
図4には、複数の第2回転体18のうちの1つが示される。
図4に示される複数の第2回転体18のうちの1つにおいて、第1変速促進領域22Aおよび第2変速促進領域22Bは、例えば、4つ設けられる。4つの第1変速促進領域22Aのそれぞれと、4つの第2変速促進領域22Bのそれぞれは、例えば、複数の第2回転体18のうちの1つの周方向において交互に設けられる。
【0045】
外装変速機42Aがフロントディレーラを含む場合、例えば、複数の第1回転体14のうちの少なくとも1つには、複数の第2回転体18のうちの少なくとも1つと同様に変速促進領域22が設けられてもよい。
【0046】
例えば、人力駆動車10は、変速操作装置44をさらに含む。変速操作装置44は、例えば、ハンドルバー36に設けられる。変速操作装置44は、例えば、比率Rを大きくするための第1操作部、および、比率Rを小さくするための第2操作部を含む。
【0047】
例えば、人力駆動車10は、車速検出部46をさらに含む。例えば、車速検出部46は、制御部62と有線または無線によって通信可能に接続される。例えば、車速検出部46は、人力駆動車10の車速に関する情報を検出するように構成される。例えば、車速検出部46は、車輪16の回転速度に関する情報を検出するように構成される。例えば、車速検出部46は、前輪16Fおよび後輪16Rの少なくとも1つに設けられる磁石を検出するように構成される。
【0048】
例えば、車速検出部46は、車輪16が1回転する間に、予め定める回数の検出信号を出力するように構成される。例えば、予め定める回数は、1である。例えば、車速検出部46は、車輪16の回転速度に応じた信号を出力する。制御部62は、車輪16の回転速度に応じた信号と、車輪16の周長に関する情報とに基づいて人力駆動車10の車速を算出できる。例えば、記憶部64には車輪16の周長に関する情報が記憶される。
【0049】
例えば、人力駆動車10は、人力駆動力検出部48をさらに含む。人力駆動力検出部48は、制御部62と有線または無線によって通信可能に接続される。人力駆動力検出部48は、人力駆動力によってクランク軸12に与えられるトルクに応じた信号を出力するように構成される。人力駆動力によってクランク軸12に与えられるトルクに応じた信号は、人力駆動車10に入力される人力駆動力に関する情報を含む。
【0050】
例えば、人力駆動力検出部48は、人力駆動力の伝達経路、または、人力駆動力の伝達経路に含まれる部材の近傍に設けられる部材に設けられる。例えば、人力駆動力の伝達経路に含まれる部材は、クランク軸12、クランク軸12と少なくとも1つの第1回転体14との間において人力駆動力を伝達する部材を含む。例えば、動力伝達部は、クランク軸12の外周部に設けられる。
【0051】
人力駆動力検出部48は、歪センサ、磁歪センサ、または、圧力センサなどを含む。歪センサは、歪ゲージを含む。人力駆動力検出部48は、人力駆動力に関する情報を取得できればどのような構成であってもよい。
【0052】
例えば、人力駆動力検出部48は、クランクアーム28A,28B、または、2つのペダル30のうちの少なくとも1つに設けられてもよい。例えば、人力駆動力検出部48が2つのペダル30のうちの少なくとも1つに設けられる場合、人力駆動力検出部48は、2つのペダル30のうちの少なくとも1つに与えられる圧力を検出するセンサを含んでいてもよい。例えば、人力駆動力検出部48は、伝達体20に含まれるチェーンに設けられてもよい。例えば、人力駆動力検出部48がチェーンに設けられる場合、人力駆動力検出部48は、チェーンの張力を検出するセンサを含んでいてもよい。
【0053】
例えば、人力駆動車10は、クランク回転状態検出部50をさらに含む。例えば、クランク回転状態検出部50は、制御部62と有線または無線によって通信可能に接続される。クランク回転状態検出部50は、クランク軸12および少なくとも1つの第1回転体14の少なくとも1つの回転量を検出する。例えば、クランク回転状態検出部50は、クランク軸12の回転速度に応じた情報を検出するように構成される。例えば、クランク回転状態検出部50は、少なくとも1つの第1回転体14の回転速度に応じた情報を検出するように構成される。クランク軸12の回転速度に応じた情報は、クランク軸12の角加速度を含む。少なくとも1つの第1回転体14の回転速度に応じた情報は、少なくとも1つの第1回転体14の角加速度を含む。
【0054】
例えば、クランク回転状態検出部50は、磁界の強度に応じた信号を出力する磁気センサを含む。クランク回転状態検出部50は、周方向に複数の磁極が並ぶ環状の磁石を含む。環状の磁石は、クランク軸12、少なくとも1つの第1回転体14、または、クランク軸12から少なくとも1つの第1回転体14までの動力伝達経路の間に設けられる。例えば、環状の磁石は、1つのS極と、1つのN極とを含む。1つのS極と、1つのN極とは、クランク軸12の軸線まわりに、それぞれ180°連続して延びる。
【0055】
例えば、クランク回転状態検出部50は、クランク軸12の回転速度、および、少なくとも1つの第1回転体14の回転速度の少なくとも1つに応じた信号を出力する。例えば、クランク回転状態検出部50は、クランク軸12の回転速度、および、少なくとも1つの第1回転体14の回転速度の少なくとも1つが1回転する間において、クランク軸12の回転角度に対応する検出信号を出力するように構成される。クランク回転状態検出部50は、磁気センサに代えて光学センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、または、トルクセンサなどを含んでいてもよい。
【0056】
例えば、クランク回転状態検出部50は、人力駆動車10のフレーム26に設けられる。例えば、クランク回転状態検出部50がフレーム26に設けられる場合、クランク回転状態検出部50は、車速センサを含んで構成されていてもよい。クランク回転状態検出部50が車速センサを含む場合、制御部62は、車速センサによって検出される車速と、比率Rとに応じてクランク軸12の回転速度を算出するように構成されてもよい。
【0057】
クランク回転状態検出部50は、少なくとも1つの第2回転体18の回転量を検出するように構成されてもよい。クランク回転状態検出部50は、少なくとも1つの第2回転体18の回転速度に応じた情報を検出するように構成されてもよい。例えば、少なくとも1つの第2回転体18の回転速度に応じた情報は、少なくとも1つの第2回転体18の角加速度を含む。例えば、クランク回転状態検出部50は、少なくとも1つの第2回転体18の回転速度に応じた信号を出力してもよい。
【0058】
例えば、人力駆動車10は、勾配検出部52をさらに含む。勾配検出部52は、例えば、傾斜センサおよびGPS(Global Positioning System)受信機の少なくとも1つを含む。傾斜センサは、例えば、ジャイロセンサおよび加速度センサの少なくとも1つを含む。勾配検出部52が、GPS受信機を含む場合、記憶部64に走行路の勾配に関する情報を含む地図情報を予め記憶され、制御部62は、人力駆動車10の現在地の走行路の勾配を取得する。
【0059】
人力駆動車用の制御装置60は、制御部62を備える。例えば、制御部62は、予め定める制御プログラムを実行する演算処理装置を含む。例えば、制御部62に含まれる演算処理装置は、CPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)を含む。
【0060】
例えば、制御部62に含まれる演算処理装置は、相互に離れた複数の場所に設けられてもよい。例えば、演算処理装置の一部は、人力駆動車10に設けられ、演算処理装置の他の一部は、インターネットに接続されるサーバに設けられてもよい。演算処理装置が、相互に離れた複数の場所に設けられる場合、演算処理装置の各部分は、無線通信装置を介して相互に通信可能に接続される。制御部62は、1または複数のマイクロコンピュータを含んでいてもよい。
【0061】
例えば、制御装置60は、記憶部64をさらに備える。例えば、記憶部64は、制御部62と有線または無線によって通信可能に接続される。例えば、記憶部64には、制御プログラムおよび制御処理に用いられる情報が記憶される。例えば、記憶部64は、例えば不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含む。例えば、不揮発性メモリは、ROM(Read-Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、および、フラッシュメモリの少なくとも1つを含む。例えば、揮発性メモリは、RAM(Random Access Memory)を含む。
【0062】
制御部62は、変速装置42を制御する。制御部62は、比率Rを変更するように変速装置42を制御する変速条件が成立する場合、人力駆動車10に入力される人力駆動力に応じて、変速装置42による変速動作の開始を所定期間が経過するまで遅延するように変速装置42を制御するように構成される。制御部62は、変速条件が成立し、かつ、変速装置42に関する状態が所定状態の場合、遅延を実行させずに変速動作を開始するように変速装置42を制御するように構成される。
【0063】
変速条件は、例えば、人力駆動車10の走行状態および走行環境の少なくとも1つに関する。走行状態は、例えば、クランク軸12の回転速度、人力駆動力、および、車速の少なくとも1つを含む。走行環境は、例えば、走行路の勾配を含む。走行状態および走行環境の少なくとも1つは、例えば、走行抵抗を含む。走行抵抗は、例えば、空気抵抗、転がり抵抗、勾配抵抗、および、加速抵抗の少なくとも1つを含む。
【0064】
変速条件は、例えば、クランク軸12の回転速度、人力駆動力、および、車速の少なくとも1つを含む。本実施形態では、変速条件は、クランク軸12の回転速度を含む。制御部62は、例えば、クランク軸12の回転速度が上限閾値よりも大きい場合、比率Rが大きくなるように変速装置42を制御し、クランク軸12の回転速度が下限閾値よりも小さい場合、比率Rが小さくなるように変速装置42を制御する。
【0065】
変速条件が人力駆動力を含む場合、変速条件は、例えば、人力駆動力が第1範囲外にある場合に満たされる。変速条件が車速を含む場合、変速条件は、例えば、車速が第2範囲外にある場合に満たされる。
【0066】
変速条件は、例えば、走行路の勾配、および、走行抵抗の少なくとも1つを含む。変速条件が走行路の勾配を含む場合、変速条件は、例えば、走行路の勾配が第3範囲外にある場合に満たされる。変速条件が走行抵抗を含む場合、変速条件は、例えば、走行抵抗が第4範囲外にある場合に満たされる。
【0067】
制御部62は、例えば、人力駆動力が所定駆動力以下の状態において変速装置42の動作が完了するように所定期間を算出するように構成される。所定駆動力は、例えば、変速装置42の変速性能が担保される値が設定される。制御部62は、比率Rに応じて所定駆動力を変更してもよい。例えば、制御部62は、人力駆動力が所定駆動量以下の状態において、変速装置42の動作が開始され、かつ、人力駆動力が所定駆動量以下の状態において、変速装置42の動作が完了するように、所定期間を算出するように構成される。
【0068】
変速動作の開始前にチェーンが巻き掛けられている複数のスプロケットのうちの1つは、例えば、少なくとも1つの第1変速促進領域22Aを有する。所定期間は、例えば、少なくとも1つの第1変速促進領域22A間の回転角度に基づいて算出される。少なくとも1つの第1変速促進領域22Aが1つである場合、例えば、第1変速促進領域22A間の回転角度は、360度である。少なくとも1つの第1変速促進領域22Aが2つである場合、かつ、等間隔に配置される場合、例えば、第1変速促進領域22A間の回転角度は、180度である。第1変速促進領域22A間の回転角度が全て150度以下になるように、スプロケットに3つ以上の第1変速促進領域22Aが設けられることが好ましい。
【0069】
例えば、制御部62は、比率Rを大きくするように変更する場合、変速動作の開始前にチェーンが巻き掛けられているスプロケットの第1変速促進領域22A間の回転角度に基づいて所定期間を算出する。例えば、制御部62は、比率Rを大きくするように変更する場合、変速動作の開始前にチェーンが巻き掛けられているスプロケットの第1変速促進領域22Aとチェーンとが対応する位置にある場合に、外装変速機42Aが動作するように、外装変速機42Aを制御するように構成される。
【0070】
変速動作の開始後にチェーンが巻き掛けられている複数のスプロケットのうちの1つは、例えば、少なくとも1つの第2変速促進領域22Bを有する。所定期間は、例えば、少なくとも1つの第2変速促進領域22B間の回転角度に基づいて設定される。少なくとも1つの第2変速促進領域22Bが1つである場合、例えば、第2変速促進領域22B間の回転角度は、360度である。少なくとも1つの第2変速促進領域22Bが2つであり、かつ、等間隔に配置される場合、例えば、第2変速促進領域22B間の回転角度は、180度である。第2変速促進領域22B間の回転角度が全て150度以下になるように、スプロケットに3つ以上の第2変速促進領域22Bが設けられることが好ましい。
【0071】
例えば、制御部62は、比率Rを小さくするように変更する場合、第2変速促進領域22B間の回転角度に基づいて所定期間を算出する。例えば、制御部62は、比率Rを小さくするように変更する場合、変速動作の完了後にチェーンが巻き掛けられているスプロケットの第2変速促進領域22B間の回転角度に基づいて所定期間を算出する。例えば、制御部62は、比率Rを小さくするように変更する場合、変速動作の完了後にチェーンが巻き掛けられているスプロケットの第2変速促進領域22Bとチェーンとが対応する位置にある場合に、外装変速機42Aが動作するように、外装変速機42Aを制御するように構成される。
【0072】
所定期間は、例えば、複数のスプロケットのうちの他の1つへのチェーンの巻き付け長さに基づいて算出される。チェーンの巻き付け長さは、例えば、変速動作の完了後にチェーンが巻き掛けられているスプロケットの歯と係合するチェーンの長さと対応する。チェーンの巻き付け長さは、例えば、スプロケットの歯数が大きいほど大きくなる。例えば、複数のスプロケットのそれぞれのチェーンの巻き付け長さが、予め記憶部64に記憶される。
【0073】
例えば、所定期間は、人力駆動力と、少なくとも1つの第1変速促進領域22A間の回転角度または少なくとも1つの第2変速促進領域22B間の回転角度と、チェーンの巻き付け長さと、に基づいて算出される。例えば、所定期間は、人力駆動力と、少なくとも1つの第1変速促進領域22A間の回転角度または少なくとも1つの第2変速促進領域22B間の回転角度と、チェーンの巻き付け長さと、に加えて、制御部62および変速装置42間の通信にかかる時間と、に基づいて算出される。
【0074】
制御部62は、例えば、変速装置42による変速動作の開始を遅延させても、人力駆動力が所定駆動力以下の状態において変速装置42の動作が完了しない場合、変速装置42に関する状態が所定状態であると判断する。制御部62は、所定期間が上限期間よりも大きい場合、変速装置42に関する状態が所定状態であると判断してもよい。制御部62は、クランク軸12の回転角度が上限回転角度よりも大きくなるまで、変速装置42による変速動作の開始を遅延させるように所定期間が算出される場合、変速装置42に関する状態が所定状態であると判断してもよい。
【0075】
所定状態は、例えば、比率Rが所定比率範囲内の状態を含む。所定比率範囲は、例えば、変速装置42の変速性能が担保される値が設定される。
【0076】
所定状態は、例えば、複数のスプロケットの回転角度が所定角度範囲内の状態を含む。所定角度範囲は、少なくとも1つの第1変速促進領域22A間の回転角度に基づいて設定される。比率Rが大きくなるように比率Rを変更する場合、例えば、所定角度範囲は、少なくとも1つの第1変速促進領域22A間の回転角度に基づいて設定される。所定角度範囲は、少なくとも1つの第2変速促進領域22B間の回転角度に基づいて設定される。比率Rが小さくなるように比率Rを変更する場合、例えば、所定角度範囲は、少なくとも1つの第2変速促進領域22B間の回転角度に基づいて設定される。
【0077】
所定状態は、例えば、変速動作の開始前にチェーンが巻き掛けられている複数のスプロケットのうちの1つに含まれる少なくとも1つの第1変速促進領域22Aの数が第1所定数範囲内の状態を含む。第1所定数範囲は、比率Rごとに異なっていてもよい。第1所定数範囲内は、例えば、第1所定数以下である。
【0078】
所定状態は、例えば、変速動作の完了後にチェーンが巻き掛けられる複数のスプロケットのうちの他の1つに含まれる少なくとも1つの第2変速促進領域22Bの数が第2所定数範囲内の状態を含む。第2所定数範囲は、比率Rごとに異なっていてもよい。第2所定数範囲内は、例えば、第2所定数以下である。
【0079】
所定状態は、例えば、複数のスプロケットのうちの他の1つへのチェーンの巻き付け長さが所定長さ範囲内である状態を含む。所定長さ範囲内は、例えば、所定長さ以下である。
【0080】
図4を参照して、制御部62が変速装置42を制御する処理について説明する。制御部62は、例えば、制御部62に電力が供給されると、処理を開始して
図4に示すフローチャートのステップS11に移行する。制御部62は、
図4のフローチャートが終了すると、例えば、電力の供給が停止されるまでは、予め定める周期後にステップS11からの処理を繰り返す。
【0081】
制御部62は、ステップS11において、変速条件が成立するか否かを判定する。制御部62は、ステップS11において変速条件が成立しない場合、処理を終了する。制御部62は、変速条件が成立する場合、ステップS12に移行する。
【0082】
制御部62は、ステップS12において、変速装置42に関する状態が所定状態か否かを判定する。制御部62は、変速装置42に関する状態が所定状態の場合、ステップS13に移行する。制御部62は、ステップS13において、変速動作を開始するように変速装置42を制御し、処理を終了する。
【0083】
制御部62は、ステップS12において、変速装置42に関する状態が所定状態ではない場合、ステップS14に移行する。制御部62は、ステップS14において、変速開始可能か否かを判定する。制御部62は、例えば、変速条件が成立してから所定期間が経過した場合、変速開始可能と判定する。制御部62は、変速開始可能ではない場合、ステップS14の判定を再び行う。制御部62は、変速開始可能の場合、ステップS15に移行する。制御部62は、ステップS15において、変速動作を開始するように変速装置42を制御し、処理を終了する。
【0084】
<変更例>
実施形態に関する説明は、本開示に従う人力駆動車用の制御装置が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本開示に従う人力駆動車用の制御装置は、例えば以下に示される実施形態の変更例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変更例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変更例において、実施形態の形態と共通する部分については、実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0085】
・制御部62は、変速装置42が外装変速機42Aおよび内装変速機のいずれかを判定可能に構成されてもよい。制御部62は、変速装置42が内装変速機であると判定すると、遅延を実行しないように変速装置42を制御するように構成されてもよい。
【0086】
本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【符号の説明】
【0087】
10…人力駆動車、12…クランク軸、16…車輪、22A…第1変速促進領域、22B…第2変速促進領域、42…変速装置、42A…外装変速機、60…制御装置、62…制御部。