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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039467
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】防水板装置
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/00 20060101AFI20240314BHJP
   E06B 7/22 20060101ALN20240314BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E06B7/22 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144054
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000252034
【氏名又は名称】株式会社鈴木シャッター
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100128392
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】榎本 祐二
(72)【発明者】
【氏名】深川 大樹
【テーマコード(参考)】
2E036
2E239
【Fターム(参考)】
2E036AA01
2E036BA01
2E036CA01
2E036GA02
2E036HA02
2E036HB23
2E036HC03
2E036HC06
2E239AC04
(57)【要約】
【課題】大雨等の非常事態により内水氾濫等になって水が出入り口部Eから室内に浸入するのを防止するため、防水板3を収納状態から防水姿勢に揺動変姿させる際に、防水板3の収納部2の内壁G寄りの部分が、収納部2の内壁Gより出入り口部E側に突出することを防止できる。出入り口部Eの損傷等を防止できる。
【解決手段】防水板3が、支持体16にて支持されつつ第1回転軸11aおよび第2回転軸12aのそれぞれを回転中心として収納姿勢から起立する。可動範囲規制体17が連結片13に当接してり第2回転軸12aの回転を規制し、この規制に伴い第1回転軸11aのみを回転中心として起立する。防水板3の出入り口部E側の内G壁寄りの端部が連結片13に当接して第1回転軸11aの回転を規制し、この規制に伴い第2回転軸12aのみを回転中心として、防水板3が出入り口部Eと当接するまで起立する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物における出入り口部の屋外側の地面または床面に穿設される収納部に倒伏して収納される収納姿勢と、起立して出入り口部の防水をする防水姿勢と、に揺動変姿する防水板と、
防水板の基端部を揺動自在に軸支する第1回転軸と、
第1回転軸より下方であって収納部の出入り口部側の内壁寄りの位置に設けられ、収納部の内壁に対し第1回転軸を揺動自在に軸支する第2回転軸と、
第1回転軸と第2回転軸とを接続する連結片と、
収納部に取り付けられ、収納姿勢の防水板を支持する支持体と、
収納部の支持体の基端側に設けられ連結片に当接することにより第2回転軸の回転を規制する可動範囲規制体と、を備え、
防水板は、支持体にて支持されつつ第1回転軸および第2回転軸のそれぞれを回転中心として収納姿勢から起立し、可動範囲規制体が連結片に当接して第2回転軸の回転を規制し、この規制に伴い第1回転軸のみを回転中心として起立し、防水板の出入り口部側の内壁寄りの端部が連結片に当接して第1回転軸の回転を規制し、この規制に伴い第2回転軸のみを回転中心として、防水板が出入り口部と当接するまで起立する、
ことを特徴とする防水板装置。
【請求項2】
第1回転軸と第2回転軸とは、L字状に屈曲した羽根にて連結されている、
ことを特徴とする請求項1記載の防水板装置。
【請求項3】
収納姿勢の防水板の下面に沿って取り付けられたフレーム体、を備え、
支持体は、フレーム体を支持する、
ことを特徴とする請求項1または2記載の防水板装置。
【請求項4】
第1回転軸および第2回転軸は、第1ヒンジおよび第2ヒンジにて構成され、
第1ヒンジは、一方の羽板が防水板の下面に固定され、他方の羽板が第2ヒンジの一方の羽板に固定され、
第2ヒンジは、他方の羽板が収納部の内壁に対し所定の間隙を介して固定され、
連結片は、固定された第1ヒンジの他方の羽板と第2ヒンジの一方の羽板とで構成されている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の防水板装置。
【請求項5】
収納部と防水板との間に取り付けられ、防水板の防水姿勢を固定する固定体を備えている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の防水板装置。
【請求項6】
固定体は、防水姿勢の防水板を出入り口部に押し付けるロックペダルであり、
ロックペダルは、出入り口部と当接するまで防水板が起立した状態で、第1回転軸および第2回転軸のそれぞれを回転中心として防水板を回転させて、防水板を出入り口部に押し付けた状態として保持し防水板を防水姿勢とする、
ことを特徴とする請求項5記載の防水板装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の出入り口部の屋外側部位に設けられる防水板装置の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、ビル等の建築物の出入り口部に、大雨等の非常事態により内水氾濫等が発生した場合に、この溢れ出た水の出入り口部から室内への浸入を防止するため、出入り口部の屋外側部位に防水板を設けることがあるが、このような防水板は、平常時は出入り口部における通行の邪魔になるため、屋外側の地面や床面に凹溝状に形成した収納部に倒伏した収納姿勢で収納しておき、内水氾濫等の発生が予想される非常時(非常予想時)に防水板を起立(立設)した防水姿勢にして防水するようにした構成がある。
このように防水板を、平常時において地面等に形成した収納部に収納する構成にしたものでは、防水板を起立した防水姿勢としたときに、出入り口部の戸当りに取り付けられたゴムパッキンに防水板を押し付けて防水性を確保する構成としているが、防水姿勢のときの防水板と出入り口部の戸当たりとの水密性を確保できなければ、出入り口部と防水板との間に形成される隙間から、溢れ出た水が屋内に侵入してきてしまうおそれがある。
このようなことを回避するため、防水板を防水姿勢にしたときに、ヒンジ機構を用いて防水板を戸当たりに押し付けて、防水板の水密性を上げるようにしたものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-63799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載のものは、非常時が回避された場合に防水板を回動させる等して、倒伏した収納姿勢として収納部に収納させる際に、ヒンジの作用によって、防水板の下端部が出入り口部のゴムパッキンに接触するおそれがあり、出入り口部のゴムパッキン等を損傷させてしまうという問題があり、これに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、建築物における出入り口部の屋外側の地面または床面に穿設される収納部に倒伏して収納される収納姿勢と、起立して出入り口部の防水をする防水姿勢と、に揺動変姿する防水板と、防水板の基端部を揺動自在に軸支する第1回転軸と、第1回転軸より下方であって収納部の出入り口部側の内壁寄りの位置に設けられ、収納部の内壁に対し第1回転軸を揺動自在に軸支する第2回転軸と、第1回転軸と第2回転軸とを接続する連結片と、収納部に取り付けられ、収納姿勢の防水板を支持する支持体と、収納部の支持体の基端側に設けられ連結片に当接することにより第2回転軸の回転を規制する可動範囲規制体と、を備え、防水板は、支持体にて支持されつつ第1回転軸および第2回転軸のそれぞれを回転中心として収納姿勢から起立し、可動範囲規制体が連結片に当接して第2回転軸の回転を規制し、この規制に伴い第1回転軸のみを回転中心として起立し、防水板の出入り口部側の内壁寄りの端部が連結片に当接して第1回転軸の回転を規制し、この規制に伴い第2回転軸のみを回転中心として、防水板が出入り口部と当接するまで起立する、ことを特徴とする防水板装置である。
請求項2の発明は、第1回転軸と第2回転軸とは、L字状に屈曲した羽根にて連結されている、ことを特徴とする請求項1記載の防水板装置。
請求項3の発明は、収納姿勢の防水板の下面に沿って取り付けられたフレーム体、を備え、支持体は、フレーム体を支持する、ことを特徴とする請求項1または2記載の防水板装置である。
請求項4の発明は、第1回転軸および第2回転軸は、第1ヒンジおよび第2ヒンジにて構成され、第1ヒンジは、一方の羽板が防水板の下面に固定され、他方の羽板が第2ヒンジの一方の羽板に固定され、第2ヒンジは、他方の羽板が収納部の内壁に対し所定の間隙を介して固定され、連結片は、固定された第1ヒンジの他方の羽板と第2ヒンジの一方の羽板とで構成されている、ことを特徴とする請求項1または2記載の防水板装置である。
請求項5の発明は、収納部と防水板との間に取り付けられ、防水板の防水姿勢を固定する固定体を備えている、ことを特徴とする請求項1または2記載の防水板装置である。
請求項6の発明は、固定体は、防水姿勢の防水板を出入り口部に押し付けるロックペダルであり、ロックペダルは、出入り口部と当接するまで防水板が起立した状態で、第1回転軸および第2回転軸のそれぞれを回転中心として防水板を回転させて、防水板を出入り口部に押し付けた状態として保持し防水板を防水姿勢とする、ことを特徴とする請求項5記載の防水板装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、収納姿勢の防水板が支持体にて支持されつつ第1回転軸および第2回転軸のそれぞれを回転中心として収納姿勢から起立していき、可動範囲規制体が連結片に当接して第2回転軸の回転を規制し、この規制に伴い第1回転軸のみを回転中心として起立する。そして、防水板の出入り口部側の内壁寄りの端部が連結片に当接して第1回転軸の回転を規制し、この規制に伴い第2回転軸のみを回転中心として、防水板が出入り口部と当接するまで起立する構成としている。このとき、第2回転軸を第1回転軸より下方であって収納部の出入り口部側の内壁寄りの位置に第2回転軸を設けているため、防水板を収納姿勢から防水姿勢に揺動変姿させる際に、この防水板の収納部の内壁寄りの部分が、収納部の内壁に接触しなくできるから、収納部や出入り口部の損傷等を防止できる。
請求項2の発明とすることにより、第1回転軸と第2回転軸とをL字状に屈曲した羽根にて連結させている。このため、羽板を用いることで第2回転軸を第1回転軸より下方であって収納部の出入り口部側の内壁寄りの位置に容易に設けることができる。よって、第1回転軸と第2回転軸とを連結する構成を簡略にできるから、防水板装置の構成を簡略化できる。
請求項3の発明とすることにより、防水板を防水姿勢に変姿させる際に、支持体がフレーム体にて支持されつつ第1回転軸および第2回転軸のそれぞれを回転中心として回転するため、第1回転軸および第2回転軸を回転中心とする防水板の変姿操作を容易に行うことができる。
請求項4の発明とすることにより、第1回転軸および第2回転軸を第1ヒンジおよび第2ヒンジにて構成し、第1ヒンジの他方の羽板と第2ヒンジの一方の羽板とで連結片を構成している。このため、第1回転軸および第2回転軸によるそれぞれの回転を簡単な構成で実現することができる。
請求項5の発明とすることにより、防水姿勢とした防水板を固定体にて固定することができるので、防水板の防水姿勢を維持することができる。
請求項6の発明とすることにより、出入り口部と当接するまで防水板が起立した状態で、ロックペダルにて第1回転軸および第2回転軸のそれぞれを回転中心として防水板を回転させることにより、防水板を出入り口部に押し付けた状態で保持し防水板を防水姿勢にできるので、建築物の出入り口部に対する防水板の防水機能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】防水板が収納姿勢となった状態の防水板装置の平面図である。
図2】同上防水板装置の側面図である。
図3】防水板が防水姿勢となった状態の防水板装置の側面図である。
図4】防水板が収納姿勢となった状態の防水板装置の概略側面図である。
図5】上記図4の部分拡大図である。
図6】第1回転軸および第2回転軸を回転中心として防水板を回転させている状態の防水板装置の概略側面図である。
図7】上記図6の部分拡大図である。
図8】第1回転軸を回転中心として防水板を回転させている状態の防水板装置の概略側面図である。
図9】上記図8の部分拡大図である。
図10】防水板が防水姿勢となった状態の防水板装置の概略側面図である。
図11】上記図10の部分拡大図である。
図12】ロックペダルで防水板の防水姿勢を固定した状態の防水板装置の概略側面図である。
図13】上記図12の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図面において、1は防水板装置であって、防水板装置1は、ビル等の建築物の出入り口部Eの屋外側に設けられる手動跳ね上げ式の起伏式防水板である。出入り口部Eの屋外側床面Fには、凹溝状の収納部2が形成されている。収納部2の底面部2aの出入り口部E寄りの屋内側には、防水板(止水板本体)3の基端部(屋内側端部)が揺動可能に軸支されている。防水板3は、基端部を揺動中心として収納部2に収納される収納姿勢(倒伏姿勢)と、収納部2から起立して出入り口部Eの左右に設けた躯体部(壁部)Kに当接して防水機能を発揮する防水姿勢(起立姿勢)とに揺動変姿する。躯体部K側には、防水姿勢となった防水板3の周縁部屋内側面が当接して防水機能を向上させる弾性を有した防水材(パッキン材)Sが設けられているが、防水材Sは防水板3側に設けてもよい。また、防水板3は、収納姿勢の状態で、収納部2の底面部2aに取り付けられている防水板支持部材2cに当接して収納することで、床面Fと略面一状になる設定とされている。
【0009】
収納部2の底面部2aには、一対のアシスト機構4が所定の間隔を空けて取り付けられている。各アシスト機構4は、ガスダンパ(ガススプリング)やオイルダンパ等から構成されるダンパ部材5を有し、ダンパ部材5のロッド部5aの基端部が支軸5bを介して揺動自在に軸支されている。ダンパ部材5は、伸長方向(長さが長くなる方向)に付勢(蓄勢)されている。ダンパ部材5のシリンダ部5cの先端部は、棒状のシャフト体6の一端に回転可能に連結されている。そして、シャフト体6の他端部は、収納部2の底面部2aに設置されたスペーサ5eを介して支軸5bより内壁G側に設置された支軸5dに揺動可能に軸支されている。ダンパ部材5は、防水板3が収納姿勢の状態で縮小し、防水板3を収納姿勢に保持して固定する施錠機構(閉鎖ロック)7の開錠操作をすることで、自らの付勢力で伸長して防水板3を起立揺動させて防水板3を収納姿勢から防水姿勢に自動的に変姿させる。
【0010】
ここで、防水板3の起立作動の当初は慣性の関係もあって円滑な起立作動が実行されない場合があるため、収納部2の底面部2aには、防水板3の先端部(屋外側端部)等を把持して持上げることで起立作動の当初の援助をする一対の初動起伏機構8が取り付けられている。一対の初動起伏機構8は、収納部2の底面部2aに取り付けられている。各初動起伏機構8は、ガスダンパ(ガススプリング)やオイルダンパ等から構成されたダンパ部材9を備えている。ダンパ部材9は、伸長方向に付勢され、ロッド部9aの基端側が支軸9bを介して収納部2の底面部2aに揺動可能に軸支されている。ダンパ部材8のシリンダ部9cの先端部は、棒状のシャフト体10の一端に回転可能に連結され、シャフト体10の他端は、収納部2の底面部2aに設置されたスペーサ10aを介して支軸9bより内壁G側に設置された支軸9dに揺動自在に軸支されている。初動起伏機構8は、防水板3が収納姿勢の状態で縮小し、施錠機構7の開錠操作により、自らの付勢力を受けて伸長し、防水板3の先端側と床面Fとの間に操作者の手が入る程度の隙間を生じさせるとともに、この隙間に手を入れて防水板3を起立動作させる際の初動時の防水板3の起立揺動を援助する初動起伏操作援助機構である。
なお、支軸5dは支軸5bより、支軸9dは支軸9bより高い位置に配置することが望ましい。
【0011】
図4に示すように、防水板3の基端部の内側面(収納状態での下面)には、第1回転軸11aを有する第1ヒンジ11の一方の平板状の羽板11bが固定されている。第1ヒンジ11の他方の平板状の羽板11cは、第2回転軸12aを有する第2ヒンジ12の一方の羽板12bに固定されている。一方の羽板12bは、水平方向から上側にL字状に屈曲した形状とされ、一方の羽板12bのL字状に屈曲した先端部に、第1ヒンジ11の他方の羽板11cが連結固定され、第1ヒンジ11の他方の羽板11cと第2ヒンジ12の一方の羽板12bの先端部との接続部分が、第1回転軸11aと第2回転軸12aとを接続する連結片(プレート部)13として構成されている。そして、第2ヒンジ12の他方の羽板12cは、収納部2の出入り口部E側の内壁Gに取り付けられたスペーサ12dに固定されている。
【0012】
要するに、第1ヒンジ11の第1回転軸11aは、防水板3の基端部を揺動自在に軸支し、第2ヒンジ12の第2回転軸12aは、収納部2の内壁Gに対し第1回転軸11aを揺動自在に軸支する構成となっている。第2ヒンジ12の第2回転軸12aは、第1ヒンジ11の第1回転軸11aより下方であって収納部2の出入り口部E側の内壁G寄りに位置している。第2回転軸12aは、図10に示すように、防水板3を防水姿勢にした状態で、防水板3の基端部の下方に位置している。
【0013】
防水板3の内側面の両縁部には、防水板3の内側面(下面)に沿って細長いレール状のフレーム体15が前後方向に亘って平行に取り付けられている。フレーム体15の下面は、防水板3の内側面と並行な平坦面15aとなっている。そして、フレーム体15の平坦面15aを支持する支持体16は、第1回転軸11aより収納部2の底面部2aの屋外側寄りの位置に取り付けられている。支持体16は、収納姿勢にある防水板3を支持し、ローラ16aと、ローラ16aを回転可能に支持する支持台16bとを有している。支持台16bは、防水板3を収納姿勢にした状態で、ローラ16aの外周面がフレーム体15の平坦面15aに接触して支持する構成とされている。
【0014】
支持体16より収納部2の底面部2aの内壁G寄り(基端側)の位置には、防水板3の可動範囲を規制する可動範囲規制体17が取り付けられている。可動範囲規制体17は、収納部2の底面部2aに垂直に取り付けられた本体部17aと、この本体部17aの先端部から収納部2の屋外側に向けて水平に突出した係止片17bとを有している。係止片17bは、本体部17aからの突出量を調整可能とするねじ込み式とされている。可動範囲規制体17は、防水板3を収納姿勢にした状態で、フレーム体15の平坦面15aに係止片17bが接触しない位置に取り付けられている。そして、可動範囲規制体17は、収納姿勢にある防水板3が防水姿勢となるように第1ヒンジ11の第1回転軸11aおよび第2ヒンジ12の第2回転軸12aのそれぞれを回転中心として起立させていく途中(防水板3を例えば20°~30°程度傾けた状態)で、係止片17bが連結片13に当接して第2ヒンジ12の第2回転軸11aによる回動を規制し、この当接以降の防水板3の揺動を第1ヒンジ11の第1回転軸11aを回転中心した揺動動作とする構成とされている。
【0015】
収納部2と防水板3の内側面との間には、防水板3の防水姿勢を固定する一対のロック機構(固定体)18が取り付けられている。一対のロック機構18は、一対の初動起伏機構8の両側に取り付けられている。各ロック機構18は、防水姿勢にある防水板3を内側から押圧して、防水板3の外側面を出入り口部Eの両躯体部Kに取り付けられた防水材Sに押し付けて防水機能を発揮させる。具体的に、ロック機構18は、一端が防水板3の内側面に支軸18aにて揺動可能に軸支されたロックフレーム18bと、ロックフレーム18bの長手方向の中間位置に一端が支軸18cにて揺動可能に軸支された支持フレーム18dとを有している。支持フレーム18dの他端は、収納部2の底面部2aに対してスペーサ18eを介して支軸18fにて揺動可能に軸支されている。
【0016】
要するに、ロック機構18は、防水板3を防水姿勢にした状態で、ロックフレーム18bの他端側を踏む等してさらに揺動させて屈曲させることで、防水姿勢にある防水板3による第2ヒンジ12の第2回転軸12aを回転中心とした揺動(防水板3の倒れ)を固定する。さらに、支持フレーム18の他端寄りの位置には、ロック機構18による防水板3の固定を解除するための棒状の解除バー18gが取り付けられている。解除バー18gは、各支持フレーム18dから収納部2の幅方向に沿って突出した構成となっている。要するに、ロック機構18は、解除バー18gに足を掛ける等して手前(屋内側)に引くことにより、ロック機構18のロックフレーム18bと支持フレーム18dとの支軸18cを回転中心とした屈曲による防水板3の押し付け保持を解除させるロックペダルである。
【0017】
叙述の如く構成された本実施の形態において、出入り口部Eの屋外側に設けられる防水板装置1は、床面Fに設けられた収納部2に倒伏して収納される収納姿勢と起立して出入り口部Eの防水をする防水姿勢とに揺動変姿する防水板3と、防水板3の基端部を揺動自在に軸支する第1回転軸11aと、第1回転軸11aより下方であって収納部2の出入り口部E側の内壁G寄りの位置に設けられ、収納部2の内壁Gに対し第1回転軸11aを揺動自在に軸支する第2回転軸12aと、第1回転軸11aと第2回転軸12aとを接続する連結片13と、収納姿勢の防水板3を支持する支持体16と、収納部2の支持体16の基端側に設けられ連結片13に当接することにより第2回転軸12aの回転を規制する可動範囲規制体17と、を備え、支持体16にて支持されつつ第1回転軸11aおよび第2回転軸12aのそれぞれを回転中心として防水板3が収納姿勢から起立し、可動範囲規制体17が連結片13に当接して第2回転軸12aの回転を規制し、この規制に伴い第1回転軸11aのみを回転中心として起立し、防水板3の出入り口部E側の内壁G寄りの端部が連結片13に当接することにより第1回転軸11aの回転を規制し、この規制に伴い第2回転軸12aのみを回転中心として、防水板3が出入り口部Eと当接するまで起立する構成となっている。
【0018】
なお、図4ないし図13に示す防水板装置1については、施錠機構7や、アシスト機構4、初動起伏機構8および解除バー18等の防水板3の操作をアシストする機能について、その構成を省略している。
【0019】
要するに、防水板装置1は、図4および図5に示す収納姿勢の防水板3を起立動作させると、第1段階として、防水板3のフレーム体15の平坦面15aが支持体16のローラ16aにて支持され、第1ヒンジ11の第1回転軸11aと第2ヒンジ12の第2回転軸12aとのそれぞれが回転可能であるため、第1回転軸11aが(図5の右回り方向に)回転するとともに第2回転軸12aが(図5の左回り方向に)それぞれ回転し、支持体15のローラ16a上を防水板3が出入り口部E側の逆方向に第2回転軸12aの回転分のみスライドしながら防水板3が起立していく。さらに、図6および図7に示すように、第2回転軸12aの回転により連結片13が傾斜していき可動範囲規制体17に接触するまで防水板3が起立していく。
【0020】
次いで、第2段階として、図6および図7に示すように、連結片13が傾斜して可動範囲規制体17の係止片17bと当接(接触)することにより、この係止片17bへの連結片13の当接によって第2ヒンジ12の第2回転軸12aを回転中心とした回転が規制される。そして、この第2回転軸12aの回転規制に伴い、図8および図9に示すように、可動範囲規制体17の係止片17bと連結片13とが接触したままの状態で、第1ヒンジ11の第1回転軸11aを回転中心として支持体16から離れるように防水板3が起立していく。このとき、第1ヒンジ11の第1回転軸11aより下方であって収納部2の出入り口部E側の内壁G寄りの位置に第2ヒンジ12の第2回転軸12aを設けていることにより、防水板3を防水姿勢に揺動変姿させる際に、防水板3の収納部2の内壁G寄りの部分(基端部)が、収納部2の内壁Gに接触しないようになる。
【0021】
さらに、第3段階として、図8および図9に示すように、第1ヒンジ11の第1回転軸11aを回転中心として回転した防水板3の出入り口部E側の端部が連結片13に当接し、第1ヒンジ11の羽板11bと羽板11cとの成す角度が90°~180°になる。そして、この当接によって第1回転軸11aを回転中心とした回転が規制され、第2回転軸12aを回転中心とした回転(図9の右回り方向)にて防水板3が起立していく。このとき、連結片13と可動範囲規制体17の係止片17bとが離れた状態となる。また、図10および図11に示すように、防水板3の上端部が防水材Sに接触する位置まで防水板3が起立しているものの、防水板3の下端部は防水材Sに接触していない状態となる。
【0022】
そして、第4段階として、図12および図13に示すように、ロック機構18のロックフレーム18bの他端側を踏む等して操作して、防水板3の下端側を防水材Sに押し付ける力を加え、この防水板3を防水材Sに押し付ける。このとき、第1ヒンジ11の第1回転軸11aおよび第2ヒンジ12の第2回転軸12aのそれぞれを回転中心とした回転が何ら規制されないため、これら第1回転軸11aおよび第2回転軸12aのそれぞれを回転中心として回転し、防水板3の全体が防水材Sと同じ角度となって押し付けられ、防水板3による防水機能が発揮される。
【0023】
したがって、防水板3を収納姿勢から防水姿勢に揺動変姿させる際に生じ得る、防水板3の基端部による出入り口部Eに取り付けられた防水材Sや収納部2の内壁Gへの接触を抑制することができる。よって、防水板3を起立させて防水姿勢に変姿させる際における、出入り口部Eに取り付けた防水材Sや収納部2の内壁G等の損傷を防止することができる。
【0024】
ここで、本発明に係る防水板装置1は、上記特許文献1に対し、上記の第3段階および第4段階が相違している。要するに、防水板装置1は、防水板3の出入り口部E側端部が、防水板3の自重にて連結片13に押し付けられた状態にとなる。さらに、防水板3を起立させた状態で、第2回転軸12aが第1回転軸11bより下側の出入り口部E側寄りに位置するため、第1回転軸11aの回転が安定した状態を保つようになる。これに対し、特許文献1では、防水扉1を起立させた状態で、枢軸17(本発明の「第1回転軸11a」に相当)が枢軸18(本発明の「第2回転軸12a」に相当)より戸当り3(本発明の「出入り口部E」に相当)側に位置するため、防水扉1の自重により枢軸18が防水扉1の下端部から離れる方向に力が作用する(特許文献1の図7参照)。この結果、防水扉1は枢軸18を回転中心として斜め下方向に動作することとなり、防水扉1は自重にてゴムパッキン13(本発明の「防水材S」に相当)に押し付けられて防水姿勢となる構成となっている。
【0025】
しかしながら、特許文献1においては、防水姿勢から防水扉1を倒して格納函2に収納させようと操作したとき、防水扉1が枢軸17を回転中心として回転可能であるため、起立動作時と同じ移動軌跡とはならず、防水扉1の下端とゴムパッキン13とを回転中心とした回転動作となる。この結果、防水扉1の下端部にてゴムパッキン13が擦られてしまい、ゴムパッキン13を痛めて損傷させてしまうおそれがある。
【0026】
さらに、防水板装置1による出入り口部Eの防水が不要となった場合に、図12および図13に示す防水姿勢の防水板3を収納姿勢に変姿させる際には、ロック機構18の解除バー18gに足を掛ける等して手前に引くことにより、図10および図11に示すように、ロック機構18による防水板3の押し付け保持が容易に解除される。この後、図8および図9に示すように、第2ヒンジ12の第2回転軸12aを回転中心として防水板3を揺動させて収納部2に収納させていく。その後、図6および図7に示すように、可動範囲規制体17の係止片17bによる連結片13の当接が解除されると、第1ヒンジ11の第1回転軸11aおよび第2ヒンジ12の第2回転軸12aのそれぞれを回転中心として防水板3を揺動させ、図4および図5に示すように、収納部2に防水板3を収納させた収納姿勢とさせる。
【0027】
しかも、防水板3を収納姿勢から防水姿勢に変姿させる際に、支持体16のローラ16aにてフレーム体15の平坦面15aを支持する構成としているため、防水板3を第1ヒンジ11の第1回転軸11aおよび第2ヒンジ12の第2回転軸12aのそれぞれを回転中心として揺動させる際に、支持体16のローラ16aが回転してフレーム体15の平坦面15aを支持し続ける。このため、第1回転軸11aおよび第2回転軸12aのそれぞれを回転中心とする防水板3の変姿操作を容易に行うことができる。また、防水板3をさらに変姿操作させていき、可動範囲規制体17の係止片17bが連結片13に当接することで、第2ヒンジ12の第2回転軸12aを回転中心とした防水板3の揺動が規制され、この規制に伴って第1ヒンジ11の第1回転軸11aを回転中心とした防水板3の変姿操作が可能となる構成としている。このため、本体部17aと係止片17bとで構成した可動範囲規制体17という比較的簡単な構成で、防水板3の可動範囲の規制を実現できる。
【0028】
さらに、可動範囲規制体17の係止片17bをねじ込み式としているため、係止片17bの本体部17aからの突出量が調整可能となる。よって、可動範囲規制体17による第1ヒンジ11の第1回転軸11aおよび第2ヒンジ12の第2回転軸12aのそれぞれを回転中心とした防水板3の揺動範囲を設置前後のいずれの状況であっても適正に調整できる。また、第1回転軸11aおよび第2回転軸12aを第1ヒンジ11および第2ヒンジ12にて構成し、第1ヒンジ11の他方の羽板11cと第2ヒンジ12の一方の羽板12bとで連結片13を構成しているため、第1回転軸11aおよび第2回転軸12aによるそれぞれの回転を簡単な構成で確実に実現できる。
【0029】
また同時に、第1回転軸11aと第2回転軸12aとを、第2ヒンジ12のL字状に屈曲した羽根12bにて連結固定しているため、第1回転軸11aより下方であって収納部2の出入り口部E側の内壁G寄りの所定の位置に第2回転軸12aを容易に設けることができる。よって、これら第1回転軸11aと第2回転軸12aとを連結する構成を簡略にできるから、防水板装置1の構成を簡略化できる。
【0030】
そして、防水板3を防水姿勢とした状態で、ロック機構18のロックフレーム18bの他端側を踏む等して揺動させて屈曲させることにより、第1回転軸11aおよび第2回転軸12aのそれぞれを回転中心として回転して、防水板3がさらに揺動する。そして、躯体部K側に取り付けられた防水材Sに防水板3が同じ角度、要するに水平に押し付けられ、防水板3による防水機能が発揮される構成としている。このため、ロックフレーム18bと支持フレーム18dとを備えた比較的簡単な構成のロック機構18により、防水板3による防水機能を確実に発揮させた状態で維持でき、防水姿勢とした防水板3を固定できるので、建築物の出入り口部Eに対する防水板3の防水機能を向上できる。
【0031】
しかもこのものでは、施錠機構7の開錠操作により、自らの付勢力を受けてダンパ部材9が伸長し、防水板3の先端側と床面Fとの間に操作者の手が入る程度の隙間を初動起伏機構8にて生じさせる構成としている。このため、防水板3の先端側と床面Fとの間の隙間に、操作者が手を入れて防水板3を起立動作させる際の初動時の防水板3の起立揺動が初動起伏機構8にて援助される。よって、防水板3の初動時の起立操作を比較的小さな力で行うことが可能となる。
【0032】
また同時に、施錠機構7の開錠操作により、自らの付勢力を受けてダンパ部材5伸長し、初動起伏機構8による防水板3の初期時の起立揺動以降の、防水板3の起立揺動がアシスト機構4にてアシストされ、防水板3が収納姿勢から防水姿勢に自動的に変姿する構成としている。よって、初動起伏機構8およびアシスト機構4によるアシストにより、収納姿勢から防水姿勢への防水板3の変姿操作を容易かつ適切に行うことが可能となる。
【0033】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されないものであることは勿論であって、前記実施の形態においては、防水板3の変姿操作をアシストするアシスト機構4や初動起伏機構8としてダンパ部材5,9を備えた構成としているが、このような防水板3の変姿姿勢をアシストする構成として弾機によるものであってもよく、さらには電動モータの駆動力を利用した電動的なものであっても勿論よい。
【0034】
また、第1ヒンジ11の羽板11cを第2ヒンジ12の羽板12bに連結固定するのではなく、これら羽板11c,12bを連続性のある一体とした部材としてもよい。さらに、アシスト機構4および初動起伏機構8は、一対に限定されず、防水板3の大きさや重量等に応じ、1つや複数の場合であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、建築物の出入り口部の屋外側部位に設けられる防水板装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 防水板装置
2 収納部
2a 底面部
2b 縁部
2c 防水板支持部材
3 防水板
4 アシスト機構
5 ダンパ部材
5a ロッド部
5b 支軸
5c シリンダ部
5d 支軸
5e スペーサ
6 シャフト体
7 施錠機構
8 初動起伏機構
9 ダンパ部材
9a ロッド部
9b 支軸
9c シリンダ部
9d 支軸
10 シャフト体
10a スペーサ
11 第1ヒンジ
11a 第1回転軸
11b,11c 羽板
12 第2ヒンジ
12a 第2回転軸
12b,12c 羽板
12d スペーサ
13 連結片
15 フレーム体
15a 平坦面
16 支持体
16a ローラ
16b 支持台
17 可動範囲規制体
17a 本体部
17b 係止片
18 ロック機構
18a 支軸
18b ロックフレーム
18c 支軸
18d 支持フレーム
18e スペーサ
18f 支軸
18g 解除バー
E 出入り口部
F 床面
G 内壁
K 躯体部
S 防水材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13