(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039473
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】吊り具
(51)【国際特許分類】
B66C 1/28 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
B66C1/28 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144062
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】500213915
【氏名又は名称】株式会社ワイテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小盛 健之介
【テーマコード(参考)】
3F004
【Fターム(参考)】
3F004AA08
3F004AB15
3F004AF01
3F004EA03
(57)【要約】
【課題】複数の積み上げられた吊り上げ対象物を、煩雑な操作を伴うことなく、荷姿が崩れないように安定した状態で吊り上げ可能にする。
【解決手段】吊り具1は、水平方向に開閉する第1アーム11及び第2アーム12と、第1アーム11に対して第1揺動軸53周りに揺動自在に取り付けられ、吊り上げ対象物の側面に沿って上下方向に延びる第1サポート部材51と、第2アーム12に対して第2揺動軸54周りに揺動自在に取り付けられ、吊り上げ対象物の側面に沿って上下方向に延びる第2サポート部材52と、第1サポート部材51の下側部分から突出し、一番下に位置する吊り上げ対象物の下面に係止する第1爪部51aと、第2サポート部材52の下側部分から突出し、一番下に位置する吊り上げ対象物の下面に係止する第2爪部52aとを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の積み上げられた吊り上げ対象物を吊り上げる吊り具であって、
クレーンによって昇降する昇降部材と、
前記昇降部材に対して水平方向に開閉可能に支持され、前記吊り上げ対象物を水平方向から挟むように配置される第1アーム及び第2アームと、
前記第1アーム及び前記第2アームを開位置で保持する保持部材と、
前記第1アームにおける前記吊り上げ対象物の側面に対応する部分に対して水平方向に延びる第1揺動軸周りに揺動自在に取り付けられ、複数の積み上げられた前記吊り上げ対象物の側面に沿って上下方向に延びる第1サポート部材と、
前記第2アームにおける前記吊り上げ対象物の側面に対応する部分に対して水平方向に延びる第2揺動軸周りに揺動自在に取り付けられ、複数の積み上げられた前記吊り上げ対象物の側面に沿って上下方向に延びる第2サポート部材と、
前記第1サポート部材の前記第1揺動軸よりも下側部分から前記第2サポート部材側へ向けて突出し、一番下に位置する前記吊り上げ対象物の下面に係止する第1爪部と、
前記第2サポート部材の前記第2揺動軸よりも下側部分から前記第1サポート部材側へ向けて突出し、一番下に位置する前記吊り上げ対象物の下面に係止する第2爪部とを備えていることを特徴とする吊り具。
【請求項2】
請求項1に記載の吊り具において、
前記昇降部材には、前記第1アーム側へ向けて延びるとともに当該第1アームを支持する一対の第1平行リンクと、前記第2アーム側へ向けて延びるとともに当該第2アームを支持する一対の第2平行リンクとが、それぞれ上下方向に揺動自在に設けられていることを特徴とする吊り具。
【請求項3】
請求項2に記載の吊り具において、
前記第1アームにおける前記第1サポート部材よりも上側部分には、前記第2アーム側へ突出する第1ブラケットが取り付けられ、
前記第1ブラケットには、前記第1平行リンクよりも下へ突出する第1突出部材が取り付けられ、
前記第1突出部材の下側部分には、一番上に位置する前記吊り上げ対象物の上面に当接する第1当接部材が設けられていることを特徴とする吊り具。
【請求項4】
請求項3に記載の吊り具において、
前記第1当接部材は、一番上に位置する前記吊り上げ対象物の上面を転動するローラで構成されていることを特徴とする吊り具。
【請求項5】
請求項4に記載の吊り具において、
前記ローラは、一番上に位置する前記吊り上げ対象物の上面に沿う方向に複数設けられていることを特徴とする吊り具。
【請求項6】
請求項3に記載の吊り具において、
前記第1突出部材は、前記第1ブラケットに対して上下方向に位置調整可能に取り付けられていることを特徴とする吊り具。
【請求項7】
請求項3に記載の吊り具において、
前記第2アームにおける前記第2サポート部材よりも上側部分には、前記第1アーム側へ突出する第2ブラケットが取り付けられ、
前記第2ブラケットには、前記第2平行リンクよりも下へ突出する第2突出部材が取り付けられ、
前記第2突出部材の下側部分には、一番上に位置する前記吊り上げ対象物の上面に当接する第2当接部材が設けられていることを特徴とする吊り具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の積み上げられた吊り上げ対象物を、荷姿を崩すことなく、安定した状態で吊り上げることのできる吊り具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば工場や荷役作業場では、各種吊り上げ対象物をホイストクレーンで吊り上げて所望の場所まで搬送することが行われている。特許文献1に開示されている吊り具は、左右一対の爪付きフォークを水平方向に移動可能に支持するフレームを備えている。このフレームには、上下方向に揺動自在にアームが取り付けられており、アームの先端部には吊り上げ対象物の上面を押さえる押さえローラが回動可能に支持されている。また、特許文献1では、吊り上げ対象物の側面に接触するフォークガイドを設け、幅寄せハンドルを回すことによってフォークガイドの位置調整を行うようにしている。
【0003】
また、特許文献2には、ホイストクレーンのワイヤに接続される主軸と、吊り上げ対象物を把持する複数のアーム把持部とを備えた吊り具が開示されている。この吊り具は、主軸の自重による降下で複数のアーム把持部を全開位置まで揺動させ、この状態で主軸をホイストクレーンで吊り上げることによって複数のアーム把持部を互いに接近する方向に揺動させ、互いに接近する方向に揺動したアーム把持部により吊り上げ対象物を把持するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第2599340号公報
【特許文献2】実用新案登録第2526298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の吊り具では、吊り上げ対象物の上面を押さえローラによって押さえることができるので、荷姿が崩れにくくなると考えられる。しかしながら、複数の積み上げられた吊り上げ対象物をまとめて吊り上げる場合を想定すると、一番上に位置する吊り上げ対象物は押さえローラによって押さえることができるものの、それよりも下、即ち積み上げ方向の中間部に位置する吊り上げ対象物を押さえローラによって直接押さえることはできないので、搬送時の揺れ等によって中間部に位置する吊り上げ対象物が水平方向に動いてしまい、荷姿が崩れるとともに安定した搬送ができなくなるおそれがある。
【0006】
このことに対して、特許文献1では、吊り上げ対象物の側面に接触するフォークガイドを設けているが、このフォークガイドは幅寄せハンドルを回すことによって位置調整する必要がある。すなわち、吊り下げ前の準備段階では、フォークガイドが吊り上げ対象物の幅寸法よりも広い間隔で配置されるように幅寄せハンドルを回し、その後、吊り下げ時には、フォークガイドが吊り上げ対象物の側面に接触するまで幅寄せハンドルを回さなければならず、何度も吊り上げ対象物を吊り上げる現場では操作が煩雑になる。
【0007】
また、特許文献2の吊り具では、主軸の自重、主軸の吊り上げ動作によって吊り上げ対象物を吊り上げ可能にしているが、この吊り具は、1つのドラム缶を吊り上げるものであることから、複数の積み上げられた吊り上げ対象物をまとめて吊り上げることは想定されていない。よって、特許文献2の吊り具も、搬送時に荷姿が崩れるとともに安定した搬送ができなくなるおそれがある。
【0008】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、複数の積み上げられた吊り上げ対象物をまとめて吊り上げる際に、煩雑な操作を伴うことなく、荷姿が崩れないように安定した状態で吊り上げ可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本開示の一態様では、複数の積み上げられた吊り上げ対象物を吊り上げる吊り具を前提とすることができる。吊り具は、クレーンによって昇降する昇降部材と、前記昇降部材に対して水平方向に開閉可能に支持され、前記吊り上げ対象物を水平方向から挟むように配置される第1アーム及び第2アームと、前記第1アーム及び前記第2アームを開位置で保持する保持部材と、前記第1アームにおける前記吊り上げ対象物の側面に対応する部分に対して水平方向に延びる第1揺動軸周りに揺動自在に取り付けられ、複数の積み上げられた前記吊り上げ対象物の側面に沿って上下方向に延びる第1サポート部材と、前記第2アームにおける前記吊り上げ対象物の側面に対応する部分に対して水平方向に延びる第2揺動軸周りに揺動自在に取り付けられ、複数の積み上げられた前記吊り上げ対象物の側面に沿って上下方向に延びる第2サポート部材と、前記第1サポート部材の前記第1揺動軸よりも下側部分から前記第2サポート部材側へ向けて突出し、一番下に位置する前記吊り上げ対象物の下面に係止する第1爪部と、前記第2サポート部材の前記第2揺動軸よりも下側部分から前記第1サポート部材側へ向けて突出し、一番下に位置する前記吊り上げ対象物の下面に係止する第2爪部とを備えている。
【0010】
この構成によれば、吊り上げ対象物を吊り上げる前に、第1アーム及び第2アームを開位置にして保持部材で保持することで、第1アームと第2アームとの間隔が広く確保される。この状態で、クレーンによって昇降部材を吊り上げ対象物の上方から下降させていくと、第1アームと第2アームとの間に吊り上げ対象物が配置される。その後、保持部材による保持を解除することで、第1アーム及び第2アームが吊り上げ対象物を水平方向から挟むように配置される。このとき、第1サポート部材の第1爪部及び第2サポート部材の第2爪部が一番下の吊り上げ対象物の下面に係止するので、クレーンによって昇降部材を上昇させていくと、第1爪部及び第2爪部に対して吊り上げ対象物の荷重、即ち下向きの力が加わることになる。第1爪部に下向きの力が加わると、第1サポート部材の第1揺動軸よりも上側部分が吊り上げ対象物の側面に接触する方向に、当該第1サポート部材が第1揺動軸周りに揺動する。第2サポート部材も同様に第2揺動軸よりも上側部分が吊り上げ対象物の側面に接触する方向に揺動する。よって、従来例のような幅寄せハンドルによる操作は不要になる。そして、第1サポート部材及び第2サポート部材が吊り上げ対象物へ接触する力は、吊り上げ対象物の重量が重ければ重いほど強くなるので、重量物の荷姿が崩れにくく、安定する。
【0011】
本開示の他の態様では、平面視で前記第1アームと前記第2アームとの間に前記昇降部材が位置付けられていてもよい。昇降部材には、前記第1アーム側へ向けて延びるとともに当該第1アームを支持する一対の第1平行リンクと、前記第2アーム側へ向けて延びるとともに当該第2アームを支持する一対の第2平行リンクとが、それぞれ上下方向に揺動自在に設けられている。
【0012】
この構成によれば、第1アーム及び第2アームを互いに平行な状態で開閉動作させることが可能になるので、第1サポート部材及び第2サポート部材も互いに平行な姿勢とすることができる。よって、複数の積み上げられた吊り上げ部材を互いに平行な第1サポート部材及び第2サポート部材で両側方から挟むことができるので、荷姿がより一層安定する。
【0013】
本開示の他の態様では、前記第1アームにおける前記第1サポート部材よりも上側部分には、前記第2アーム側へ突出する第1ブラケットが取り付けられていてもよい。前記第1ブラケットには、前記第1平行リンクよりも下へ突出する第1突出部材が取り付けられていてもよく、また、前記第1突出部材の下側部分には、一番上に位置する前記吊り上げ対象物の上面に当接する第1当接部材が設けられていてもよい。
【0014】
この構成によれば、第1当接部材が第1アームに取り付けられているので、第1当接部材と第1爪部との上下方向の間隔を、複数の積み上げられた吊り上げ部材の高さ寸法に対応させておくことができる。これにより、クレーンによって昇降部材を吊り上げ対象物の上方から下降させて第1アームと第2アームとの間に吊り上げ対象物が配置されると、第1当接部材が一番上の吊り上げ対象物に当接した時、第1爪部を一番下の吊り上げ対象物の下面に確実に係止させることができる。
【0015】
本開示の他の態様に係る第1当接部材は、一番上に位置する前記吊り上げ対象物の上面を転動するローラで構成されていてもよい。この構成によれば、第1当接部材が吊り上げ対象物の上面に当接した際に転動することで、第1アームの開閉動作がスムーズに行われる。
【0016】
本開示の他の態様に係るローラは、一番上に位置する前記吊り上げ対象物の上面に沿う方向に複数設けられていてもよい。この構成によれば、形状が異なる吊り上げ対象物を吊り上げる場合に、いずれかのローラを、一番上に位置する吊り上げ対象物の上面に当接させることが可能になる。
【0017】
本開示の他の態様に係る第1突出部材は、前記第1ブラケットに対して上下方向に位置調整可能に取り付けられていてもよい。これにより、吊り上げ対象物の高さに合わせて第1当接部材の高さを調整することができる。
【0018】
また、第2アームにおける前記第2サポート部材よりも上側部分には、前記第1アーム側へ突出する第2ブラケットが取り付けられ、前記第2ブラケットには、前記第2平行リンクよりも下へ突出する第2突出部材が取り付けられ、前記第2突出部材の下側部分には、一番上に位置する前記吊り上げ対象物の上面に当接する第2当接部材が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、開閉可能な第1アーム及び第2アームにそれぞれ第1サポート部材及び第2サポート部材を揺動軸周りに揺動自在に設け、第1サポート部材及び第2サポート部材の揺動軸よりも下側部分に吊り上げ対象物の下面に係止する第1爪及び第2爪を設けたので、複数の積み上げられた吊り上げ対象物を、煩雑な操作を伴うことなく、荷姿が崩れないように安定した状態で吊り上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態1に係る吊り具の正面図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る吊り具の側面図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係る吊り具の平面図である。
【
図4】実施形態1に係る吊り具を吊り上げ対象物の上方に配置した状態を示す正面図である。
【
図5】吊り具を降下させて両アームの間に吊り上げ対象物が配置された状態を示す
図4相当図である。
【
図6】保持部材によるアームの保持を解除した状態を示す
図4相当図である。
【
図7】昇降部材を上昇させて吊り上げ対象物を把持した状態を示す
図4相当図である。
【
図8】吊り上げ対象物を吊り上げた状態を示す
図4相当図である。
【
図9】1段目の吊り上げ対象物を吊り上げる場合を説明する
図5相当図である。
【
図10】本発明の実施形態2に係る吊り具を示す
図5相当図である。
【
図11】本発明の実施形態2に係る吊り具を示す
図7相当図である。
【
図12】第1ローラと第2ローラの位置関係を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0022】
(実施形態1)
図1~
図3は、本発明の実施形態1に係る吊り具1を示すものである。また、
図4~
図9は、吊り具1を用いて吊り上げ対象物Wをまとめて吊り上げる様子を示すものである。吊り具1は、複数の積み上げられた吊り上げ対象物Wをまとめて吊り上げるための器具である。この実施形態では、複数枚の鋼板が厚み方向に積み上げられた吊り上げ対象物Wをまとめて吊り上げる場合について説明するが、吊り上げ対象物Wは鋼板に限られるものではなく、各種金属製の板材、木製の板材、シート材、フィルム材、箱、ケース、部品等、上下方向に積み重ねられた荷姿を持つものを吊り上げ対象物Wとすることができる。尚、吊り具1により、1つの吊り上げ対象物Wを吊り上げることも可能である。上記鋼板は、例えばプレス加工前の鋼板等であってもよい。この場合、吊り上げ対象物Wをプレス機(図示せず)の材料供給部へ移動してセットする際に、吊り具1を用いることができる。
【0023】
図4では、複数の積み上げられた吊り上げ対象物Wがさらに3段積み重ねられている状態を示している。
図9では、複数の積み上げられた吊り上げ対象物Wが1段の場合を示している。このように、複数段積み重ねられた吊り上げ対象物Wを最も上の段から順次吊り上げて別の場所に搬送する場合や、1段のみの吊り上げ対象物Wを吊り上げて別の場所に搬送する場合等に、吊り具1を使用することができる。
【0024】
吊り上げ対象物Wを吊り上げて搬送する際に用いられる揚重機としては、例えばホイストクレーン等のクレーン(図示せず)を挙げることができる。このクレーンによって巻き上げられるワイヤやチェーンA(
図1に示す)の先端部にはフックBが取り付けられており、このフックBに吊り具1を引っ掛けて使用することができる。吊り具1及びクレーンを合わせて搬送装置と呼ぶこともできる。クレーンは、例えば工場内に設置されたものであってもよいし、屋外の荷役作業場等に設置されたものであってもよい。また、クレーンの形式はホイストクレーンに限られるものではなく、他の形式のクレーンを用いてもよい。
【0025】
図1~
図3に示すように、吊り具1の左右方向と奥行方向をそれぞれ定義する。この方向の定義は説明の便宜を図るためであり、吊り具1の使用時の姿勢や製造時の姿勢を限定するものではない。吊り具1の左右方向は幅方向と呼ぶこともでき、また奥行方向は前後方向と呼ぶこともできる。
【0026】
図1に示すように、吊り具1は、第1アーム11と、第2アーム12と、昇降部材13と、第1リンク21と、第2リンク22とを備えている。
図2及び
図3に示すように、第1アーム11、第2アーム12、第1リンク21及び第2リンク22は、吊り具1の手前側と奥側とにそれぞれ設けられている。一方、昇降部材13は、吊り具1の奥行方向中間部に1つのみ設けられている。吊り具1を構成する各部材は、例えば鋼材等の高強度な部材である。吊り具1を構成する各部材は板材であってもよいし、パイプ材であってもよい。
【0027】
昇降部材13は、クレーンによって昇降する部材であり、上下方向に長い形状とされている。昇降部材13の上部には、クレーンのフックBを引っ掛けることが可能なU字部材13aが水平軸周りに回動可能に取り付けられている。U字部材13aを省略し、昇降部材13の上部に開口部(図示せず)を形成し、この開口部にフックBを引っ掛けてもよい。また、ワイヤやチェーンAを昇降部材13に直接引っ掛けるようにしてもよい。
【0028】
吊り具1は、上部軸30と、中間第1軸31と、中間第2軸32と、中間第3軸33とをさらに備えている。上部軸30、中間第1軸31、中間第2軸32及び中間第3軸33は、全て吊り具1の奥行方向に延びており、互いに平行である。上部軸30、中間第1軸31、中間第2軸32及び中間第3軸33のうち、上部軸30が最も上に配置され、中間第3軸33が最も下に配置される。上部軸30及び中間第3軸33は、吊り具1の左右方向中央部に配置されている。中間第1軸31は、上部軸30及び中間第3軸33の左側方に配置され、また、中間第2軸32は、上部軸30及び中間第3軸33の右側方に配置されている。上部軸30は、最も大径の部材で構成されている。
【0029】
上部軸30の長手方向(奥行方向)中央部に、昇降部材13の下側が取り付けられている。手前側の第1リンク21及び第2リンク22の一端部は、上部軸30の手前側の端部に対して軸芯周りに揺動自在に取り付けられている。また、奥側の第1リンク21及び第2リンク22の一端部は、上部軸30の奥側の端部に対して軸芯周りに揺動自在に取り付けられている。第1リンク21及び第2リンク22は同じ長さである。
【0030】
手前側の第1リンク21の他端部及び奥側の第1リンク21の他端部は、それぞれ、中間第1軸31の手前側の端部及び奥側の端部に対して軸芯周りに揺動自在に取り付けられている。中間第1軸31が上部軸30の左側方に位置しているので、手前側及び奥側の第1リンク21は、左右方向に延びる姿勢となっている。
【0031】
また、手前側の第2リンク22の他端部及び奥側の第2リンク22の他端部は、それぞれ、中間第2軸32の手前側の端部及び奥側の端部に対して軸芯周りに揺動自在に取り付けられている。中間第2軸32が上部軸30の右側方に位置しているので、手前側及び奥側の第2リンク22は、左右方向に延びる姿勢となっている。
【0032】
第1アーム11及び第2アーム12は、昇降部材13に対して第1リンク21及び第2リンク22を介して水平方向に開閉可能に支持され、吊り上げ対象物Wを水平方向から挟むように配置される部材である。手前側の第1アーム11と奥側の第1アーム11とは同じであり、また、手前側の第2アーム12と奥側の第2アーム12とは同じである。
【0033】
第1アーム11は、上下方向に延びる第1アーム本体部11aと、第1アーム本体部11aの上部から左側へ延びる第1被連結部11bとを有している。第1アーム本体部11aは、吊り上げ対象物Wの右側面に対応する部分である。第1アーム本体部11aの上下方向の寸法は、吊り上げ対象物Wの上下方向の寸法よりも長く設定されている。第1被連結部11bの左端部が第1アーム11の上端部となっている。手前側の第1アーム11の第1被連結部11bの左端部は、中間第1軸31の手前側の端部に対して軸芯周りに揺動自在に取り付けられている。また、奥側の第1アーム11の第1被連結部11bの左端部は、中間第1軸31の奥側の端部に対して軸芯周りに揺動自在に取り付けられている。
【0034】
手前側の第1アーム11の第1被連結部11bの左右方向中央部は、中間第3軸33の手前側の端部に対して軸芯周りに揺動自在に取り付けられている。また、奥側の第1アーム11の第1被連結部11bの左右方向中央部は、中間第3軸33の奥側の端部に対して軸芯周りに揺動自在に取り付けられている。
【0035】
第2アーム12は、上下方向に延びる第2アーム本体部12aと、第2アーム本体部12aの上部から右側へ延びる第2被連結部12bとを有している。第2アーム本体部12aは、吊り上げ対象物Wの左側面に対応する部分である。第2アーム本体部12aの上下方向の寸法は、吊り上げ対象物Wの上下方向の寸法よりも長く設定されている。第2被連結部12bの右端部が第2アーム12の上端部となっている。手前側の第2アーム12の第2被連結部12bの右端部は、中間第2軸32の手前側の端部に対して軸芯周りに揺動自在に取り付けられている。また、奥側の第2アーム12の第2被連結部12bの右端部は、中間第2軸32の奥側の端部に対して軸芯周りに揺動自在に取り付けられている。
【0036】
手前側の第2アーム12の第2被連結部12bの左右方向中央部は、中間第3軸33の手前側の端部に対して軸芯周りに揺動自在に取り付けられている。また、奥側の第2アーム12の第2被連結部12bの左右方向中央部は、中間第3軸33の奥側の端部に対して軸芯周りに揺動自在に取り付けられている。
【0037】
吊り具1は、第1連結部材41及び第2連結部材42をさらに備えている。第1連結部材41は、手前側の第1アーム11と奥側の第1アーム11とを連結するための部材であり、吊り具1の奥行方向に延びている。第1連結部材41の手前側の端部が手前側の第1アーム本体部11aの上端部に固定され、第1連結部材41の奥側の端部が奥側の第1アーム本体部11aの上端部に固定されている。また、第2連結部材42の手前側の端部が手前側の第2アーム本体部12aの上端部に固定され、第2連結部材42の奥側の端部が奥側の第2アーム本体部12aの上端部に固定されている。これにより、手前側及び奥側の2つの第1アーム11を連動させることができるとともに、手前側及び奥側の2つの第2アーム12を連動させることができる。
【0038】
吊り具1は、把持部43を更に備えている。把持部43は、吊り具1を作業者が水平方向に動かす際に力を加える部分であり、この実施形態では手前側の第1アーム11の上側部分に取り付けられている。把持部43の先端部は、第1アーム11から右側方へ突出するように形成されている。この把持部43の先端部を作業者が把持することで、吊り具1を水平方向に動かして位置調整できるようになっている。
【0039】
吊り具1は、保持部材44を更に備えている。保持部材44は、第1アーム11及び第2アーム12を開位置で保持するための部材である。
図1~
図3は、第1アーム11及び第2アーム12が開位置にある状態を示している。一方、
図7及び
図8は、第1アーム11及び第2アーム12が吊り上げ対象物Wを水平方向から挟んだ状態を示しており、閉位置にある。
【0040】
保持部材44は左右方向に延びる操作部44aと、係合部44bとを備えている。操作部44aの左端部は、第2連結部材42に対して奥行方向に延びる軸芯周りに回動可能に連結されている。係合部44bは、操作部44aの左右方向中央部よりも右寄りの部分から下方へ突出するように設けられている。係合部44bは、第1連結部材41に対して右側から当接することによって係合する。
【0041】
すなわち、第1アーム11及び第2アーム12を開くことによって開位置にすると、第1連結部材41と第2連結部材42との間隔が所定の間隔になる。この所定の間隔になった時に、操作部44aを上から下へ回動させると、当該操作部44aに取り付けられている係合部44bが第1連結部材41に係合する。これにより、第1連結部材41と第2連結部材42との間隔が所定の間隔で保持されるので、第1アーム11及び第2アーム12が開位置のままになる。第1アーム11及び第2アーム12を閉位置にするには、操作部44aを上方へ回動させて係合部44bを第1連結部材41から外せばよい。
【0042】
吊り具1は、第1サポート部材51と第2サポート部材52とを更に備えている。第1サポート部材51は、複数の積み上げられた吊り上げ対象物Wを右側方から支持し、荷姿が右側へ崩れるのを抑制するための部材であり、また、第2サポート部材52は、複数の積み上げられた吊り上げ対象物Wを左側方から支持し、荷姿が左側へ崩れるのを抑制するための部材である。
【0043】
第1サポート部材51は、手前側の第1アーム11の第1アーム本体部11aを厚み方向に挟むように、手前と奥側とにそれぞれ設けられている。また、奥側にも手前側と同様に、第1アーム本体部11aを厚み方向に挟むように、手前と奥側とにそれぞれ設けられている。
【0044】
第1サポート部材51は、第1アーム本体部11aに対して水平方向に延びる第1揺動軸53周りに揺動自在に取り付けられており、複数の積み上げられた吊り上げ対象物Wの右側面に沿って上下方向に延びている。第1揺動軸53は、第1アーム本体部11aの下側部分に対して奥行方向に延びる姿勢とされて取り付けられている。平面視では、第1揺動軸53よりも左に中間第2軸32が位置付けられる。また、第1サポート部材51の上端部は、吊り上げ対象物Wの上端部よりも上に位置付けられるように形成されている。
【0045】
第2サポート部材52は、手前側の第2アーム12の第2アーム本体部12aを厚み方向に挟むように、手前と奥側とにそれぞれ設けられている。また、奥側にも手前側と同様に、第2アーム本体部12aを厚み方向に挟むように、手前と奥側とにそれぞれ設けられている。
【0046】
第2サポート部材52は、第2アーム本体部12aに対して水平方向に延びる第2揺動軸54周りに揺動自在に取り付けられており、複数の積み上げられた吊り上げ対象物Wの左側面に沿って上下方向に延びている。第2揺動軸54は、第2アーム本体部12aの下側部分に対して奥行方向に延びる姿勢とされて取り付けられている。平面視では、第2揺動軸54よりも右に中間第1軸31が位置付けられる。第2サポート部材52の上端部は、吊り上げ対象物Wの上端部よりも上に位置付けられるように形成されている。
【0047】
吊り具1は、第1爪部51a及び第2爪部52aを有している。第1爪部51aは、各第1サポート部材51の第1揺動軸53よりも下側部分から第2サポート部材52側(左側)へ向けて突出し、一番下に位置する吊り上げ対象物Wの下面に係止するように形成されている。第1揺動軸53よりも左側に第1爪部51aが位置している。第2爪部52aは、各第2サポート部材52の第2揺動軸54よりも下側部分から第1サポート部材51側(右側)へ向けて突出し、一番下に位置する吊り上げ対象物Wの下面に係止するように形成されている。第2揺動軸54よりも右側に第2爪部52aが位置している。
【0048】
(吊り上げ対象物の吊り上げ作業)
次に、上記のように構成された吊り具1を用いて吊り上げ対象物Wを吊り上げる場合について説明する。まず、第1アーム11及び第2アーム12を開位置にし、保持部材44によって第1アーム11及び第2アーム12を開位置で保持する。第1アーム11及び第2アーム12を開位置にする際には、床面Fに置いて開くことができる。第1アーム11及び第2アーム12が開位置になると、第1リンク21及び第2リンク22が水平に近い傾斜角度となるまで揺動するが、第1リンク21は左端部が右端部に比べて下に位置し、第2リンク22は右端部が左端部に比べて下に位置した傾斜状態になる。
【0049】
その後、
図4に示すように、吊り具1をクレーンで上昇させてから吊り上げ対象物Wの上方まで移動させる。このとき、作業者が把持部43を把持して吊り具1に対して水平方向の力を加えて吊り具1の動きを安定させることや、他の設備との接触を回避することもできる。
【0050】
その後、
図5に示すように、吊り具1をクレーンによって降下させていく。このとき、第1アーム11の第1アーム本体部11aと、第2アーム12の第2アーム本体部12aとの間に吊り上げ対象物Wが入るように、かつ、第1爪部51a及び第2爪部52aが吊り上げ対象物Wに当たらないように、作業者が把持部43を把持して吊り具1を水平方向に動かすことができる。第1爪部51a及び第2爪部52aが一番下に位置する吊り上げ対象物Wの下面よりも下方に達すると、クレーンによる降下を停止させる。
【0051】
次いで、
図6に示すように、保持部材44を上方へ回動させて係合部44bを第2連結部材42から離脱させる。すると、自重により第1リンク21、第2リンク22、第1アーム11及び第2アーム12が揺動し、第1アーム11及び第2アーム12が閉方向に揺動する。これにより、第1アーム11及び第2アーム12が吊り上げ対象物Wを左右方向から挟むように配置される。このとき、第1リンク21は左端部が下へ変位するように揺動し、第2リンク22は右端部が下へ変位するように揺動する。
【0052】
図7に示すようにクレーンによって吊り具1を上昇させると、第1アーム11及び第2アーム12が閉じようとしているので、第1サポート部材51の第1爪部51a及び第2サポート部材52の第2爪部52aが吊り上げ対象物Wの下面に係止する。
図8に示すように、クレーンによって吊り具1をさらに上昇させていくと、第1爪部51a及び第2爪部52aに対して吊り上げ対象物Wの荷重、即ち下向きの力が加わることになる。第1爪部51aに下向きの力が加わると、第1サポート部材51の第1揺動軸53よりも上側部分が吊り上げ対象物Wの右側面に接触する方向に、当該第1サポート部材51が第1揺動軸53周りに揺動する。第2サポート部材52も同様に第2揺動軸54よりも上側部分が吊り上げ対象物Wの左側面に接触する方向に揺動する。よって、従来例のような幅寄せハンドルによる操作は不要になる。
【0053】
そして、吊り上げ対象物Wの重量が重ければ重いほど第1アーム11及び第2アーム12の閉じる力が強くなる。したがって、第1サポート部材51及び第2サポート部材52が吊り上げ対象物Wへ接触する力は、吊り上げ対象物Wの重量が重ければ重いほど強くなるので、重量物の荷姿が崩れにくく、安定する。
【0054】
図9に示すように、最下段の吊り上げ対象物Wを吊り上げる際には、第1サポート部材51及び第2サポート部材52の下端部が床面Fに接触する。第1サポート部材51及び第2サポート部材52の下端部が床面Fを滑ることにより、第1アーム11及び第2アーム12が閉じる。
【0055】
(実施形態2)
図10及び
図11は、本発明の実施形態2に係る吊り具1を示すものである。実施形態2は、平行リンクを備えている点と、高さ位置の規制構造を備えている点とで実施形態1のものとは異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。実施形態1でも示したように、吊り具1の手前側と奥側とは同様に構成されている。
【0056】
実施形態2では、昇降部材13がベース部材13Aと可動部材13Bとを備えている。ベース部材13Aは、上下方向に長く形成されており、上下方向に長い長孔13cを有している。可動部材13Bは、ベース部材13Aに対して上下方向に相対移動可能に支持されている。可動部材13BにフックBが引っ掛かるようになっている。
【0057】
第1リンク21及び第2リンク22が揺動自在に取り付けられている上部軸30は、ベース部材13Aの長孔13cに挿入されており、この長孔13cに沿って上下方向に移動可能になっている。ベース部材13Aの長孔13cよりも下側部分には、吊り具1の奥行方向に延びる上側支軸34及び下側支軸35がそれぞれ取り付けられている。上側支軸34及び下側支軸35が共通の部材であるベース部材13Aに取り付けられているので、上側支軸34及び下側支軸35の相対的な変位を抑制することができる。
【0058】
昇降部材13には、第1アーム11側へ向けて延びるとともに当該第1アーム11を支持する一対の第1平行リンク61と、第2アーム12側へ向けて延びるとともに当該第2アーム12を支持する一対の第2平行リンク62とがそれぞれ上下方向に揺動自在に設けられている。実施形態2では、第1アーム11が第1被連結部11bを有しておらず、また、第2アーム12が第2被連結部12bを有していない。また、第1アーム11と第2アーム12とは上下方向に延びるとともに、互いに略平行になっている。
【0059】
一対の第1平行リンク61は、上下方向に互いに間隔をあけて平行に延びている。上側の第1平行リンク61の長さは、第1リンク21よりも長く設定されている。また、下側の第1平行リンク61の長さは、上側の第1平行リンク61の長さよりも短く設定されている。さらに、下側の第1平行リンク61の長さは、第1リンク21よりも長く設定されている。
【0060】
上側の第1平行リンク61の長手方向中間部は、上側支軸34に対して当該上側支軸34周りに回動可能に取り付けられている。上側の第1平行リンク61の一端部(左端部)は、中間第1軸31に対して軸芯周りに揺動自在に取り付けられている。上側の第1平行リンク61の他端部(右端部)は、第1アーム11の上側部分に対して奥行方向に延びる第1支軸36を介して軸芯周りに揺動自在に取り付けられている。下側の第1平行リンク61の一端部(左端部)は、下側支軸35に対して当該下側支軸35周りに回動可能に取り付けられている。下側の第1平行リンク61の他端部(右端部)は、第1アーム11の第1支軸36よりも下側部分に対して奥行方向に延びる第2支軸37を介して軸芯周りに揺動自在に取り付けられている。第1支軸36及び第2支軸37は、中間第2軸32よりも右に位置している。
【0061】
一対の第2平行リンク62は、第1平行リンク61と同様に、上下方向に互いに間隔をあけて平行に延びている。上側の第2平行リンク62の長さと、上側の第1平行リンク61の長さとは等しく設定され、また、下側の第2平行リンク62の長さと、下側の第1平行リンク61の長さとは等しく設定されている。
【0062】
上側の第2平行リンク62の長手方向中間部は、上側支軸34に対して当該上側支軸34周りに回動可能に取り付けられている。上側の第2平行リンク62の一端部(右端部)は、中間第2軸32に対して軸芯周りに揺動自在に取り付けられている。上側の第2平行リンク62の他端部(左端部)は、第2アーム12の上側部分に対して奥行方向に延びる第3支軸38を介して軸芯周りに揺動自在に取り付けられている。下側の第2平行リンク62の一端部(右端部)は、下側支軸35に対して当該下側支軸35周りに回動可能に取り付けられている。下側の第2平行リンク62の他端部(左端部)は、第2アーム12の第3支軸38よりも下側部分に対して奥行方向に延びる第4支軸39を介して軸芯周りに揺動自在に取り付けられている。第3支軸38及び第4支軸39は、中間第1軸31よりも左に位置している。また、第3支軸38及び第4支軸39の上下方向の間隔は、第1支軸36及び第2支軸37の上下方向の間隔と等しくなっている。
【0063】
第1支軸36及び第2支軸37により、手前側の第1平行リンク61と奥側の第1平行リンク61とを連結できるとともに、手前側の第1アーム11と奥側の第1アーム11とを連結できる。また、第3支軸38及び第4支軸39により、手前側の第2平行リンク62と奥側の第2平行リンク62とを連結できるとともに、手前側の第2アーム12と奥側の第2アーム12とを連結できる。
【0064】
第1アーム11を第1平行リンク61で支持し、第2アーム12を第2平行リンク62で支持することにより、第1アーム11及び第2アーム12を互いに平行な状態で開閉動作させることができる。これにより、複数の積み上げられた吊り上げ部材Wを互いに平行な第1サポート部材51及び第2サポート部材52で両側方から挟むことができるので、荷姿がより一層安定する。
【0065】
また、第1アーム11における第1サポート部材51よりも上側部分には、左側(第2アーム12側)へ突出する第1ブラケット64が取り付けられている。第1ブラケット64には、第1平行リンク61よりも下へ突出する第1突出部材65が第1ブラケット64に対して上下方向に位置調整可能に取り付けられている。具体的には、第1突出部材65は上下方向に長く形成されている。第1突出部材65には上下方向に長いスリット状の開口部65aが形成されている。一方、第1ブラケット64には、2つの締結部材64aが上下方向に間隔をあけて取り付けられており、これら締結部材64aがそれぞれ第1突出部材65の開口部65aに挿通された状態で、第1突出部材65を第1ブラケット64に対して締結可能になっている。よって、締結部材64aを緩めることで、第1突出部材65を上下方向の任意の位置に配置することが可能になり、任意の位置に配置した後、締結部材64aによって第1ブラケット64に締結固定できる。開口部65aは、第1突出部材65を上下方向に案内する案内部である。
【0066】
第1突出部材65には、一番上に位置する吊り上げ対象物Wの上面に当接して転動する複数の第1ローラ(第1当接部材)66が設けられている。第1ローラ66は、第1ローラブラケット66aを介して第1突出部材65に支持されており、第1ローラ66の回転軸は吊り具1の奥行方向に延びている。また、複数の第1ローラ66は、一番上に位置する吊り上げ対象物Wの上面に沿う方向、即ち吊り具1の左右方向に並んでいる。また、全ての第1ローラ66の高さは同じである。第1突出部材65の上下方向の位置を調整することで、第1ローラ66の高さ、即ち、第1ローラ66と第1爪部51aとの間隔を調整することができる。
【0067】
また、第2アーム12における第2サポート部材52よりも上側部分には、右側(第1アーム11側)へ突出する第2ブラケット67が取り付けられている。第2ブラケット67には、第2平行リンク62よりも下へ突出する第2突出部材68が第2ブラケット67に対して上下方向に位置調整可能に取り付けられている。具体的には、第2突出部材68は上下方向に長く形成されている。第2突出部材68には上下方向に長いスリット状の開口部68aが形成されている。一方、第2ブラケット67には、2つの締結部材67aが上下方向に間隔をあけて取り付けられており、これら締結部材67aがそれぞれ第2突出部材68の開口部68aに挿通された状態で、第2突出部材68を第2ブラケット67に対して締結可能になっている。
【0068】
第2突出部材68には、一番上に位置する吊り上げ対象物Wの上面に当接して転動する複数の第2ローラ(第2当接部材)69が設けられている。第2ローラ69は、第2ローラブラケット69aを介して第2突出部材68に支持されており、第2ローラ69の回転軸は吊り具1の奥行方向に延びている。また、複数の第2ローラ69は、第1ローラ66と同様に配置されている。
【0069】
第1アーム11及び第2アーム12が開位置から閉位置に切り替わる際には、可動部材13Bがベース部材13Aに対して上方へ相対的に移動するとともに、第1リンク21及び第2リンク22の傾斜が大きくなるように両リンク21、22が揺動する。また、第1平行リンク61、第2平行リンク62も、傾斜が大きくなるように揺動する。可動部材13Bがベース部材13Aに対して上方へ相対的に移動して上昇端位置に配置されると、可動部材13Bの一部がベース部材13Aに係合し、可動部材13Bの上昇力がベース部材13Aに伝達される。
【0070】
この実施形態2によれば、実施形態1と同様な作用効果を奏することができる。さらに、第1ローラ66が第1アーム11に取り付けられているので、第1爪部51aとの上下方向の間隔を、複数の積み上げられた吊り上げ部材Wの高さ寸法に対応させておくことができる。これにより、クレーンによって昇降部材13を吊り上げ対象物Wの上方から下降させて第1アーム11と第2アーム12との間に吊り上げ対象物Wが配置されると、第1ローラ66が一番上の吊り上げ対象物Wに当接した時、第1爪部51aを一番下の吊り上げ対象物Wの下面に確実に係止させることができる。第2ローラ69によっても同様な作用効果を奏することができる。
【0071】
また、
図11にのみ仮想線で示しているが、カバー80を設けてもよい。カバー80は、第1リンク21、第2リンク22、第1平行リンク61、第2平行リンク62を覆うように形成されている。カバー80を設けることで、指等が第1リンク21、第2リンク22、第1平行リンク61、第2平行リンク62に挟まれてしまう事故を未然に防止できる。
【0072】
保持部材44の操作部44aの左端部は、第4支軸39に対して奥行方向に延びる軸芯周りに回動可能に連結されている。係合部44bは、第2支軸37に対して右側から当接することによって係合する。これにより、第1アーム11及び第2アーム12を開位置で保持できる。
【0073】
図12は、第1ローラ66と第2ローラ69の位置関係を示す平面図である。FIG.12Aは、第1アーム11と第2アーム12とが開位置にある場合を示しており、FIG.12Bは、第1アーム11と第2アーム12とが閉位置にある場合を示している。すなわち、第1アーム11と第2アーム12とが閉位置にあるときに、第1ローラ66と第2ローラ69とが当たらないように、第1ローラ66と第2ローラ69とを奥行方向にずらしている。これにより、第1アーム11と第2アーム12との可動範囲を拡大させることができ、様々な大きさの吊り上げ対象物Wを吊り上げることができる。
【0074】
図13は、本発明の実施形態2の変形例1に係るものである。この変形例1では、第1ローラ66及び第2ローラ69をそれぞれ1つだけ設けている。吊り上げ対象物Wの形状が決まっている場合には、第1ローラ66及び第2ローラ69は1つだけであってもよいが、吊り上げ対象物Wの形状が決まっていない場合には、第1ローラ66及び第2ローラ69を複数設けておき、様々な形状の吊り上げ対象物Wに対応できるようにしておくのが好ましい。第1ローラ66及び第2ローラ69の数は、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0075】
図14は、本発明の実施形態2の変形例2に係る保持部材44であり、FIG.14Aは平面図を、FIG.14Bは正面図をそれぞれ示している。変形例2に係る保持部材44は、操作部44aが挿通可能な筒部材44cを有している。筒部材44cは、操作部44aの軸芯方向に相対移動可能に構成されている。係合部44bは、筒部材44cの下に固定され、当該筒部材44cから下方へ突出するように配置されている。操作部44aには、複数の位置決め孔44dが当該操作部44aの軸芯方向に互いに間隔をあけて設けられている。筒部材44cには、ボルト44eが取り付けられている。このボルト44eを緩めることで、筒部材44cを操作部44aの軸芯方向に移動させることができる。一方、ボルト44eを任意の位置決め孔44dにねじ込むことで、筒部材44cを操作部44aに対して固定できる。
【0076】
変形例2では、係合部44bを移動させることができるので、保持部材44で保持した時の第1アーム11及び第2アーム12の開度を調整できる。この変形例2は、実施形態1にも適用可能である。
【0077】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上説明したように、本発明に係る吊り具は、例えば工場や荷役作業場で吊り上げ対象物を吊り上げる場合に利用できる。
【符号の説明】
【0079】
1 吊り具
11 第1アーム
12 第2アーム
13 昇降部材
44 保持部材
51 第1サポート部材
51a 第1爪部
52 第2サポート部材
52a 第2爪部
53 第1揺動軸
54 第2揺動軸
61 第1平行リンク
62 第2平行リンク
64 第1ブラケット
65 第1突出部材
66 第1ローラ(第1当接部材)
W 吊り上げ対象物