(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039474
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】人形用眼球の保持機構
(51)【国際特許分類】
A63H 3/40 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
A63H3/40
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144063
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】521264659
【氏名又は名称】岩本 峰司
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩本 峰司
【テーマコード(参考)】
2C150
【Fターム(参考)】
2C150CA04
2C150DA25
2C150EB37
2C150EH08
2C150FB43
(57)【要約】
【課題】大きさの異なる別の眼球への交換が見栄えを損なうことなく行えるようにするとともに、様々な方向の視線が簡単に作れるようにする。
【解決手段】人形用眼球の保持機構1は、人形用眼球を付勢する付勢部材6、7と、付勢部材6、7を支持する支持部材8と、フレーム部材9とを備えている。フレーム部材9には、支持部材8が取り付けれる取付部が設けられている。取付部には、第1固定孔が形成されている。支持部材8には、第2固定孔が形成されている。第1固定孔及び第2固定孔の一方は、前後方向に間隔をあけて複数形成されている。第1固定孔及び第2固定孔に固定部材10が差し込まれる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人形の頭部内に設けられ、顔面部材に形成された眼孔の周縁部に対して前記頭部内から人形用眼球を押し付けて保持する人形用眼球の保持機構であって、
前記人形用眼球を前記頭部内から前記眼孔の周縁部に向けて付勢する付勢部材と、
前記付勢部材を支持する支持部材と、
前記人形の頭部内に固定されるフレーム部材とを備え、
前記フレーム部材には、前記人形の前後方向に延びるように形成され、前記支持部材が取り付けれる取付部が設けられ、
前記取付部には、前記前後方向と交差する方向に延びる第1固定孔が形成され、
前記支持部材には、前記第1固定孔と一致する第2固定孔が形成され、
前記第1固定孔及び前記第2固定孔の一方は、前記前後方向に間隔をあけて複数形成され、
前記第1固定孔及び前記第2固定孔に固定部材が差し込まれることを特徴とする人形用眼球の保持機構。
【請求項2】
請求項1に記載の人形用眼球の保持機構において、
前記付勢部材は、左の人形用眼球を付勢する左側付勢部材と、右の人形用眼球を付勢する右側付勢部材とを含んでおり、
前記支持部材は、前記左側付勢部材を支持する左側部と、前記右側付勢部材を支持する右側部と、前記左側部と前記右側部との間を前後方向に貫通する貫通孔とを有し、
前記フレーム部材の前記取付部は、前記貫通孔に挿通されることを特徴とする人形用眼球の保持機構。
【請求項3】
請求項2に記載の人形用眼球の保持機構において、
前記第1固定孔は、上下方向に延びるように形成されて前記取付部の上面に開口し、
前記第2固定孔は、上下方向に延びるように形成されて前記支持部材における前記貫通孔が形成されている部分の上面に開口していることを特徴とする人形用眼球の保持機構。
【請求項4】
請求項2に記載の人形用眼球の保持機構において、
前記フレーム部材の前記取付部は、上下方向の断面が多角形状とされ、
前記貫通孔は、前記取付部の断面形状と一致する多角形状とされていることを特徴とする人形用眼球の保持機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人形用眼球の大きさを変更可能にする人形用眼球の保持機構に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されているように、人形の頭部の内部に左右の目をそれぞれ2種類収容しておき、外部からの操作によって一方から他方、他方から一方へ切替可能にすることが知られている。特許文献1の目動作装置では、中心角120度程度の扇状に形成された目保持体が上下方向に延びる軸周りに回動可能に、頭部の内部に支持されている。目保持体には、第1の左目及び第1の右目と、第2の左目及び第2の右目とが左から右へ順に形成されている。そして、目保持体を上記軸周りに回動させることにより、第1の左目及び第1の右目をそれぞれ左右の眼孔から露出させた状態と、第2の左目及び第2の右目をそれぞれ左右の眼孔から露出させた状態とに切替可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、人形の視線はその人形の表情を作る上で極めて重要なものであることから、ユーザは人形の視線を変化させて表情を様々に変えたいというニーズを持っている。
【0005】
しかしながら、特許文献1の目動作装置では、左右の目が第1の目と第2の目の2種類しかないので、切替操作によって変化する視線の種類は2種類しかない。加えて、目保持体の移動方向が左右方向に限定されているので、視線を上下方向に変えることは不可能である。よって、例えば第1の目でできる視線と第2の目でできる視線の間の視線を作ることや、第1の目または第2の目でできる視線から微妙にずらした視線を作ることは無理であり、表情の変化の自由度が低かった。
【0006】
また、視線だけでなく、瞳孔の大きさ、角膜の色、虹彩の色や形状も別のものに変えることでさらなる表情の多様化を図ることが可能になるが、この場合、眼球を別の眼球に交換する必要がある。ところが、眼球ごとに作製者が異なるといった事情から、眼球の大きさは様々である。例えば、交換後の眼球の大きさが元の眼球に比べて小さいと、顔の眼孔の周縁部と眼球表面との隙間が大きくなり、見栄えが悪くなる。反対に、交換後の眼球の大きさが元の眼球に比べて大きいと、その眼球を組み込むこと自体が困難になる。
【0007】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、大きさの異なる別の眼球への交換が見栄えを損なうことなく行えるようにするとともに、様々な方向の視線が簡単に作れるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の一態様では、人形の頭部内に設けられ、顔面部材に形成された眼孔の周縁部に対して前記頭部内から人形用眼球を押し付けて保持する人形用眼球の保持機構を前提とすることができる。人形用眼球の保持機構は、前記人形用眼球を前記頭部内から前記眼孔の周縁部に向けて付勢する付勢部材と、前記付勢部材を支持する支持部材と、前記人形の頭部内に固定されるフレーム部材とを備えている。前記フレーム部材には、前記人形の前後方向に延びるように形成され、前記支持部材が取り付けれる取付部が設けられており、また、前記取付部には、前記前後方向と交差する方向に延びる第1固定孔が形成されている。さらに、前記支持部材には、前記第1固定孔と一致する第2固定孔が形成されている。前記第1固定孔及び前記第2固定孔の一方は、前記前後方向に間隔をあけて複数形成されており、前記第1固定孔及び前記第2固定孔に固定部材が差し込まれるようになっている。
【0009】
この構成によれば、固定部材をフレーム部材の第1固定孔及び支持部材の第2固定孔に挿入することで、支持部材がフレーム部材に対して前後動不能に固定される。フレーム部材の第1固定孔が前後方向に間隔をあけて設けられている場合には、例えば前側の第1固定孔と支持部材の第2固定孔と合わせた状態で両固定孔に固定部材を差し込むと、支持部材が前寄りに配置される。これにより、例えば小さめの人形用眼球であっても眼孔の周縁部に押し付けられて保持されるので、人形用眼球と眼孔の周縁部との間が大きく開くことはなく、見栄えが良好になる。
【0010】
一方、後側の第1固定孔と支持部材の第2固定孔と合わせた状態で両固定孔に固定部材を差し込むと、支持部材が後寄りに配置される。これにより、見栄えを損なうことなく、大きめの人形用眼球を付けることも可能になる。
【0011】
また、人形用眼球は付勢部材の付勢力によって眼孔の周縁部に押し付けられているだけなので、例えば外から人形用眼球を操作することで上下方向や左右方向に回動させて視線を無段階に変えることができる。
【0012】
本開示の他の態様に係る付勢部材は、左の人形用眼球を付勢する左側付勢部材と、右の人形用眼球を付勢する右側付勢部材とを含んでいてもよい。この場合、前記支持部材は、前記左側付勢部材を支持する左側部と、前記右側付勢部材を支持する右側部と、前記左側部と前記右側部との間を前後方向に貫通する貫通孔とを有しており、前記フレーム部材の前記取付部は、前記貫通孔に挿通させることができる。
【0013】
この構成によれば、左右の人形用眼球がそれぞれ左側付勢部材及び右側付勢部材によって付勢されるので、左右の大きさや形状のバラツキが吸収される。そして、支持部材の貫通孔をフレーム部材の取付部に挿通することで、貫通孔がガイド孔のように機能するので、支持部材を取付部に沿って前後方向に簡単に移動させることができ、前後方向の位置の調整が容易に行える。
【0014】
本開示の他の態様に係る第1固定孔は、上下方向に延びるように形成されて前記取付部の上面に開口していてもよい。この場合、第2固定孔は、上下方向に延びるように形成されて前記支持部材における前記貫通孔が形成されている部分の上面に開口させることができる。これにより、第1固定孔と第2固定孔を一致させると、その上方から固定部材を差し込めばよいので、固定する作業が簡単に行える。
【0015】
本開示の他の態様に係るフレーム部材の前記取付部は、上下方向の断面が多角形状とされていていてもよい。この場合、前記貫通孔は、前記取付部の断面形状と一致する多角形状とすることができる。これにより、取付部を貫通孔に挿通した状態で相対的な回動が阻止されるので、支持部材を頭部内で安定させることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、フレーム部材に複数の第1固定孔を前後方向に間隔をあけて設けておき、第1固定孔と一致するように支持部材の第2固定孔を配置してから両固定孔に固定部材を差し込むことで、大きさの異なる別の人形用眼球への交換を、見栄えを損なうことなく行えるとともに、外から人形用眼球を回動させることで様々な方向の視線を簡単に作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態1に係る人形用眼球の保持機構を備えた人形の頭部の正面図である。
【
図2】人形用眼球の保持機構を前方から見た斜視図である。
【
図9】まぶた部材が閉じた状態を示す
図4相当図である。
【
図11】本発明の実施形態2に係る人形用眼球の保持機構を後方から見た斜視図である。
【
図12】実施形態2に係る人形用眼球の保持機構の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0019】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る人形用眼球の保持機構1を備えた人形の頭部100の正面図である。この実施形態の説明では、人形の前になる側を単に前といい、人形の後になる側を単に後といい、人形の左になる側を単に左といい、人形の右になる側を単に右というものとする。また、上及び下は、人形の上及び下に対応している。また、
図1に示す仮想線Hは髪である。
【0020】
頭部100は、図示しない胴体に対して着脱可能に構成されており、この実施形態の説明では、頭部100のみを図示している。頭部100は、顔から首の上までを構成する顔面部材101と、後頭部から首の後ろまでを構成する後側部材(図示せず)と、頭頂部を構成する上側部材103とで構成されている。
【0021】
顔面部材101、後側部材及び上側部材103は、例えば硬質樹脂材等で構成されている。顔面部材101の後端部に後側部材の前端部を嵌合させることにより、顔面部材101と後側部材とが一体化する。また、顔面部材101と後側部材の上端部に上側部材103の下端部を嵌合させることにより、顔面部材101と後側部材と上側部材103とが一体化する。顔面部材101、後側部材及び上側部材103の嵌合構造は、例えば係合爪を用いた構造や、係合ピンを用いた構造等を挙げることができ、どのような構造であってもよい。
【0022】
図1に示すように、顔面部材101の左側には左の眼孔101aが形成され、また、顔面部材101の右側には右の眼孔101bが形成されている。この人形の目は、一般的な人間の目に比べて大きく形成されており、よって、顔面に占める眼孔101a、101bの開口面積が一般的な人間のそれに比べて広くなっている。眼孔101a、101bの開口面積が広くなっていることに対応して、左の眼孔101aから露出する左の人形用眼球2及び右の眼孔101bから露出する右の人形用眼球3も大きなものになっている。また、図示しないが、眼孔101a、101bの下縁部には下まつげを付けてもよい。
【0023】
図5にも示すように、左の人形用眼球2及び右の人形用眼球3は、半球状の部材で構成されている。左の人形用眼球2及び右の人形用眼球3の外径は、眼孔101a、101bの径よりも大きく設定されており、左の人形用眼球2が左の眼孔101aの周縁部に対して頭部100内から押し付けられて保持され、右の人形用眼球3が右の眼孔101bの周縁部に対して頭部100内から押し付けられて保持される。
【0024】
左の人形用眼球2及び右の人形用眼球3を構成する部材は、例えば樹脂材からなるものであってもよいし、ガラスからなるものであってもよい。左の人形用眼球2及び右の人形用眼球3は前方へ向けて膨出するように形成されており、左の人形用眼球2は、後端面を閉塞する半球状の左側閉塞部材2cを有しており、右の人形用眼球3は、後端面を閉塞する半球状の右側閉塞部材3cを有している。左側閉塞部材2cは、左の人形用眼球2の後側を構成する部分である。また、右側閉塞部材3cは、右の人形用眼球3の後側を構成する部分である。左側閉塞部材2c及び右側閉塞部材3cを、左の人形用眼球2及び右の人形用眼球3とは異なる眼球としてもよい。これにより、左の人形用眼球2及び右の人形用眼球3を半回転させることで、左側閉塞部材2c及び右側閉塞部材3cが眼孔101a、101bから外部に臨むように配置されて異なる眼球に切り替えられる。
【0025】
図1に示すように、左の人形用眼球2及び右の人形用眼球3は、それぞれ角膜を模した角膜部2a、3aと、角膜部2a、3aを囲む結膜を模した結膜部2b、3bとを有している。角膜部2a、3aが真正面に向いた状態で、角膜部2a、3aの全周に結膜部2b、3bが見えるように、眼孔101a、101bの大きさが設定されている。
【0026】
左の人形用眼球2及び右の人形用眼球3は、別の人形用眼球(図示せず)に交換可能になっている。左の人形用眼球2及び右の人形用眼球3が、図示しているものよりも小さなものであってもよいし、図示しているものよりも大きなものであってもよい。また、角膜部2a、3aの盛り上がりが大きな人形用眼球や、角膜部2a、3aの盛り上がりが小さな人形用眼球がある。また、結膜部2b、3bの曲率が大きな人形用眼球や、結膜部2b、3bの曲率が小さな人形用眼球がある。さらに、前後方向の寸法が長い人形用眼球や、短い人形用眼球がある。つまり、左の人形用眼球2及び右の人形用眼球3を眼孔101a、101bの周縁部に押し付けて保持するといっても、小さな人形用眼球2、3に交換してしまうと所期の力で押し付けることができなくなったり、また、大きな人形用眼球2、3には交換できないといった制約が生じる可能性がある。
【0027】
本実施形態に係る人形用眼球の保持機構1は、小さな人形用眼球2、3から大きな人形用眼球2、3への交換を可能にするとともに、大きな人形用眼球2、3から小さな人形用眼球2、3への交換を可能にする機構である。すなわち、人形用眼球の保持機構1は、人形の頭部100内に設けられており、顔面部材101に形成された眼孔101a、101bの周縁部に対して頭部100内から左右の人形用眼球2、3を押し付けて保持するとともに、左右の人形用眼球2、3を左右方向及び上下方向に無段階に動かすことで人形の視線を左右、上下、斜めの様々な方向に無段階に変えるためのものである。
【0028】
図2~
図5等に示すように、人形用眼球の保持機構1は、左側ベース4及び右側ベース5と、左側付勢部材6及び右側付勢部材7と、支持部材8と、フレーム部材9と、固定部材10とを備えている。左側ベース4及び右側ベース5は、左右の人形用眼球2、3の間隔と略同じ間隔をあけて配置される。その他、人形用眼球の保持機構1は、まぶたを形成しているまぶた部材11も備えているが、まぶた部材11は、本発明に必須なものではない。本実施形態では、付勢部材が、左の人形用眼球2を付勢する左側付勢部材6と、右の人形用眼球3を付勢する右側付勢部材7とを含んでいる。左側付勢部材6は、左の人形用眼球2を頭部100内から眼孔101aの周縁部に向けて付勢するための部材であり、また、右側付勢部材7は、右の人形用眼球3を頭部100内から眼孔101bの周縁部に向けて付勢するための部材である。このように、左右の人形用眼球2、3を個別に付勢可能になっているので、左右の形状バラツキ等を吸収できる。
【0029】
左側ベース4は、左の人形用眼球2の真後ろに配置され、左の人形用眼球2に対して後から接触、即ち左側閉塞部材2cの後面に接触する部材である。
図5に示すように、左側ベース4は、上下方向及び左右方向に延びる板状の樹脂製部材からなる本体部4aと、金属製の棒状部4bとを有している。本体部4aの中心部には中心孔4cが前後方向に貫通するように形成されている。本体部4aにおける前面には、中心孔4cを囲むように4本の棒状部4bが配置され、固定されている。棒状部4bは、本体部4aの上部及び下部においてそれぞれ左右方向に延びるものと、本体部4aの左側部及び右側部においてそれぞれ上下方向に延びるものとがあり、合計で4本設けられている。各棒状部4bの外面が左側閉塞部材2cの後面に点接触または線接触することで、接触面積の低減が図られている。
【0030】
左側付勢部材6は、伸縮方向が前後方向となるように配置されたコイルバネで構成されている。左側付勢部材6の前端部は、左側ベース4の本体部4aの中心孔4cの周囲に固定されている。
【0031】
右側ベース5は、右の人形用眼球3の真後ろに配置され、右の人形用眼球3に対して後から接触、即ち右側閉塞部材3cの後面に接触する部材である。右側ベース5は、左側ベース4と同様に構成されており、中心孔5cを有する本体部5aと、4本の棒状部5bとを有している。右側付勢部材7は、左側付勢部材6と同様に、伸縮方向が前後方向となるように配置されたコイルバネで構成されており、その前端部は、右側ベース5の本体部5aの中心孔5cの周囲に固定されている。
【0032】
支持部材8は、左右方向に長い形状の樹脂製部材で構成されており、左側付勢部材6を支持する左側部8aと、右側付勢部材7を支持する右側部8bとを有している。
図6に示すように、左側部8aの前面には、左側付勢部材6の後端部が嵌合することによって固定される左側凹部8cが形成されている。右側部8bの前面には、右側付勢部材7の後端部が嵌合することによって固定される右側凹部8dが形成されている。
【0033】
支持部材8は、貫通孔8eも有している。貫通孔8eは、左側部8aと右側部8bとの間を前後方向に貫通するように設けられている。貫通孔8eは、後述する取付部9dの断面形状と一致する多角形状とされている。この実施形態では、取付部の断面形状が四角形であるため、貫通孔8eの形状も四角形とされている。貫通孔8eは、取付部の断面形状と一致する多角形状であればよく、長方形であってもよいし、正方形であってもよい。また、貫通孔8eの形状は、四角形以外の多角形であってもよい。
【0034】
支持部材8には、2つの可動側固定孔(本発明の第2固定孔)8fが形成されている。2つの可動側固定孔8fは、共に円形であり、同じ大きさとされている。可動側固定孔8fは、後述する取付部9dに形成されている複数のフレーム側固定孔(本発明の第1固定孔)9eと一致するように形成されている。具体的には、2つの可動側固定孔8fは、支持部材8における貫通孔8eが形成されている部分を上下方向に延びるように形成されている。各可動側固定孔8fの上端部は、支持部材8における貫通孔8eが形成されている部分の上面に開口している。また、2つの可動側固定孔8fは、左右方向に間隔をあけて設けられている。尚、可動側固定孔8fの数は、2つに限られるものではなく、1つ、または3つ以上であってもよい。可動側固定孔8fは左右方向に延びるものであってもよい。
【0035】
フレーム部材9は、樹脂材からなる一体成形品であり、人形の頭部100内に固定される。すなわち、
図7に示すように、フレーム部材9の上側部分には、前方へ向けて延びる上側固定部9aが設けられており、この上側固定部9aの前端部が顔面部材101の内面の上側部分に固定されるようになっている。フレーム部材9の下側部分には、前方へ向けて延びる下側固定部9bが設けられており、この下側固定部9bの前端部が顔面部材101の内面の下側部分に固定されるようになっている。下側固定部9bは上側固定部9aよりも短く設定されており、下側固定部9bの前端部は上側固定部9aよりも後に位置している。このように、フレーム部材9の互いに離れた複数箇所が顔面部材101に固定されることになるので、フレーム部材9を安定させることができる。
【0036】
フレーム部材9の上下方向中間部には、左右方向に貫通する軸受孔9cが形成されている。軸受孔9cには、後述するまぶた部材を支持する支持棒21(
図5に示す)が回動可能に挿入されるようになっている。
【0037】
フレーム部材9には、前後方向に延びるように形成され、支持部材8が取り付けられる取付部9dが設けられている。取付部9dは、フレーム部材9の上下方向中間部から後方へ突出する角柱状をなしている。取付部9dは、上下方向の断面が四角形状とされており、支持部材8の貫通孔8eの形状と一致するようになっている。取付部9dは、支持部材8の貫通孔8eに挿通される。挿通した状態で、支持部材8を取付部9dに対して前後方向に相対移動させることが可能になっている。つまり、取付部9dは、支持部材8を前後方向に案内する案内部となり、取付部9dが延びている方向に沿って支持部材8を容易に移動させることができる。
【0038】
取付部9dの断面形状は、四角形以外の多角形状であってもよい。取付部9dの断面形状を多角形状とし、支持部材8の貫通孔8eも多角形状とすることで、取付部9dを貫通孔8eに挿通した状態で相対的な回動が阻止されるので、支持部材8を頭部100内で安定させることができる。
【0039】
取付部9dには、前後方向と交差する方向、即ち上下方向に延びる複数のフレーム側固定孔9eが前後方向に間隔をあけて形成されている。各フレーム側固定孔9eの上端部は、取付部9dの上面に開口している。また、各フレーム側固定孔9eの下端部は、取付部9dの下面に開口している。つまり、各フレーム側固定孔9eは取付部9dの上下方向に貫通している。尚、可動側固定孔8fが左右方向に延びている場合には、フレーム側固定孔9eも左右方向に延びるように形成する。
【0040】
実施形態では、
図8に示すように、4つのフレーム側固定孔9eが前後方向に並んでおり、また2つのフレーム側固定孔9eが左右方向に間隔をあけて形成されている。合計8つのフレーム側固定孔9eは、全て円形であり、同じ大きさとされており、可動側固定孔8fと同径である。尚、前後方向に並ぶフレーム側固定孔9eの数は、4つに限られるものではなく、3つ以下、または5つ以上であってもよい。また、左右方向に並ぶフレーム側固定孔9eの数は、2つに限られるものではなく、1つ、または3つ以上であってもよい。左右方向に並ぶフレーム側固定孔9eの数及び間隔は、左右方向に並ぶ可動側固定孔8fの数及び間隔と同じに設定されている。
【0041】
図7に示すように、取付部9dの後端部には、爪部9fが形成されている。
図4に示すように、爪部9fは、取付部9dの後端部に取り付けられる後端部材12に係合するようになっている。
【0042】
図5に示すように、固定部材10は、2本の金属製の固定ピン10aと、2本の固定ピン10aを結合して一体化するための樹脂製の結合部10bとを備えている。2本の固定ピン10aは上下方向に延びている。固定ピン10aの上端部が結合部10bに固定されており、これにより、2本の固定ピン10aが左右方向に間隔をあけて配置されるようになっている。固定ピン10aの間隔は、左右方向に並ぶ可動側固定孔8fの間隔、即ち左右方向に並ぶフレーム側固定孔9eの間隔と同じに設定されている。従って、支持部材8の可動側固定孔8fと、フレーム側固定孔9eのいずれかとを一致させた状態にすると、2本の固定ピン10aが左右方向に並ぶ可動側固定孔8f及び左右方向に並ぶフレーム側固定孔9eに差し込まれる。これにより、支持部材8が固定部材10によって取付部9dに固定されて前後方向の相対移動が阻止される。尚、可動側固定孔8f及びフレーム側固定孔9eが左右方向に延びている場合には、固定ピン10aを可動側固定孔8f及びフレーム側固定孔9eに対して左右方向から差し込めばよい。
【0043】
図2に示すように、まぶた部材11は、左の人形用眼球2の上側部分に沿って湾曲する板状に形成された左側湾曲部11aと、右の人形用眼球3の上側部分に沿って湾曲する板状に形成された右側湾曲部11bとを有している。さらに、
図10に示すように、まぶた部材11は、左側湾曲部11aと右側湾曲部11bとの間の部分に、左右方向に貫通する挿通孔11cが形成されている。挿通孔11cには、
図5に示す支持棒21が挿通されるようになっている。まぶた部材11は支持棒21周りに回動することで、
図9に示すように閉じた状態に切り替えることができる。
【0044】
図5に示すように、まぶた部材11における挿通孔11cよりも上側部分には、手動操作用の第1操作部材(図示せず)が取り付けられる第1取付孔11dが形成されている。また、まぶた部材11における挿通孔11cよりも下側部分には、手動操作用の第2操作部材(図示せず)が取り付けられる第2取付孔11eが形成されている。第1操作部材及び第2操作部材は、それぞれ糸状、ワイヤー状の部材で構成されており、容易に屈曲したり、撓むようになっており、人形の頭部100の外部(後方)へ延びている。第2操作部材を頭部100の外部から引っ張ることで、
図9に示すようにまぶた部材11が下へ回動してまぶたが閉じた状態になる。一方、第1操作部材を頭部100の外部から引っ張ることでまぶた部材11が上へ回動してまぶたが開いた状態になる。
【0045】
図5や
図8等に示すように、フレーム部材9の上側固定部9aには、前後方向に延びるスリット90が形成されている。スリット90は、上側固定部9aを上下方向に貫通するように形成されている。
【0046】
図10に示すように、まぶた部材11の左右方向中間部には、上方へ突出する突出部11fが形成されている。突出部11fは、フレーム部材9のスリット90に下から差し込まれており、当該スリット90内を前後方向に移動可能になっている。突出部11fの前面には、磁石91が固定されている。まぶた部材11が閉じた状態になると、磁石91がフレーム部材9に設けられている棒状の吸着部材14に吸着する。吸着部材14は磁性体で構成されており、磁石91が吸着部材14に吸着することにより、まぶた部材11が閉じた状態で保持される。一方、閉じた状態のまぶた部材11を開く場合には、磁石91の吸着力に抗して第1操作部材を引っ張ればよい。尚、図示しないが、磁石をフレーム部材9に固定し、磁性部材(吸着部材)をまぶた部材11に固定してもよい。
【0047】
また、
図5に示すように、フレーム部材9の上側固定部9aには前後方向に長い長孔9hが形成されている。長孔9hの内部には、吸着部材14が左右方向に延びるように配置されている。吸着部材14には、可動部材13が取り付けられている。可動部材13を前後方向に移動させると、それに連動して吸着部材14も前後方向に移動する。この吸着部材14に磁石91が吸着してまぶた部材11が保持されるので、吸着部材14を後に移動させると、まぶた部材11が開きぎみで固定され、一方、吸着部材14を前に移動させると、まぶた部材11が閉じた状態で固定される。つまり、前後方向に長い長孔9h及び吸着部材14は、まぶた部材11の閉じ位置ないし開度を調整する調整部を構成している。
【0048】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、固定部材10の固定ピン10aをフレーム部材9のフレーム側固定孔9e及び支持部材8の可動側固定孔8fに挿入することで、支持部材8がフレーム部材9に対して前後動不能に固定される。フレーム側固定孔9eは、前後方向に間隔をあけて複数設けられているので、例えば前側に設けられているフレーム側固定孔9eと支持部材8の可動側固定孔8fと合わせた状態で両固定孔9e、8fに固定部材10を差し込むと、支持部材8が前寄りに配置される。これにより、例えば小さめの人形用眼球2、3であっても眼孔101a、101bの周縁部に押し付けられて保持されるので、人形用眼球2、3と眼孔101a、101bの周縁部との間が大きく開くことはなく、見栄えが良好になる。
【0049】
一方、後側に設けられているフレーム側固定孔9eと支持部材8の可動側固定孔8fと合わせた状態で両固定孔9e、8fに固定部材10を差し込むと、支持部材8が後寄りに配置される。これにより、左側ベース4及び右側ベース5が後に移動することになるので、見栄えを損なうことなく、大きめの人形用眼球2、3を付けることも可能になる。
【0050】
また、人形用眼球2、3はそれぞれ左側付勢部材6及び右側付勢部材7の付勢力によって眼孔101a、101bの周縁部に押し付けられているだけなので、例えば外から人形用眼球2、3をそれぞれ操作することで上下方向や左右方向に回動させて視線を無段階に変えることができる。
【0051】
(実施形態2)
図11及び
図12は、本発明の実施形態2に係る人形用眼球の保持機構1を示すものである。この実施形態2では、左側ベース4と右側ベース5との左右方向の間隔を変更できるように構成されている点と、可動側固定孔8fが前後方向に間隔をあけて複数形成されている点で実施形態1のものと相違している。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0052】
図12に示すように、フレーム部材9は上下方向に長い形状を有している。フレーム部材9の前部には、ロッド94が挿通するロッド挿通孔95が左右方向に貫通するように形成されている。
【0053】
フレーム部材9の後部には、支持部材8が差し込まれる差込孔96が形成されている。差込孔96は、フレーム部材9の後端面に開口して前後方向に延びている。差込孔96の上下方向の断面は四角形状とされている。フレーム側固定孔9eは、1つだけ形成されている。具体的には、フレーム側固定孔9eは、フレーム部材9における差込孔96が形成されている部分の上面に開口するとともに、当該部分を上下方向に貫通している。差込孔96は複数形成されていてもよい。
【0054】
支持部材8には、前方へ突出するとともに、フレーム部材9の差込孔96に差し込まれる差込部80が形成されている。差込部80の上下方向の断面は、差込孔96の断面形状と一致する四角形状とされている。差込部80には、複数の可動側固定孔8fが前後方向に間隔をあけて形成されている。可動側固定孔8fは差込部80を上下方向に貫通している。尚、フレーム側固定孔9e及び可動側固定孔8fは、左右方向に複数並ぶように形成されていてもよい。
【0055】
固定部材10は、固定ピン10aを1本だけ有している。この固定ピン10aの上部には、操作部10cが固定されている。固定ピン10aをフレーム側固定孔9e及びいずれかの可動側固定孔8fに差し込むことで、支持部材8が固定部材10によってフレーム部材9に固定される。
【0056】
支持部材8の後部には、左右方向に貫通する上側貫通孔81及び下側貫通孔82が形成されている。上側貫通孔81には、上側支軸83が挿通された状態で固定され、また、下側貫通孔82には、下側支軸84が挿通された状態で固定されている。
【0057】
実施形態2では、実施形態1の支持部材8の左側部8a及び右側部8bの代わりに、左側可動部材85及び右側可動部材86が設けられている。左側可動部材85の前面には、左側付勢部材6の後端部が固定されている。左側可動部材85の後面には、上側支軸83の左側部分が挿通される上側固定孔85aと、下側支軸84の左側部分が挿通される下側固定孔85bとが形成されている。左側可動部材85は、上側支軸83及び下側支軸84の延びる方向、即ち上側支軸83及び下側支軸84に対して左右方向に移動可能に取り付けられている。
【0058】
右側可動部材86の前面には、右側付勢部材7の後端部が固定されている。右側可動部材86の後面には、上側支軸83の右側部分が挿通される上側固定孔86aと、下側支軸84の左側部分が挿通される下側固定孔86bとが形成されている。右側可動部材86も、上側支軸83及び下側支軸84に対して左右方向に移動可能に取り付けられている。
【0059】
ここで、人形の種類や大きさによっては、左右の人形用眼球2、3の間隔が異なることがある。本実施形態では、左右の人形用眼球2、3の間隔が狭い場合には、左側可動部材85及び右側可動部材86が互いに接近する方向に移動させて左側可動部材85及び右側可動部材86の間隔を狭めることで対応することができる。一方、左右の人形用眼球2、3の間隔が広い場合には、左側可動部材85及び右側可動部材86が互いに遠ざかる方向に移動させて左側可動部材85及び右側可動部材86の間隔を広げることで対応することができる。
【0060】
したがって、実施形態2によれば、実施形態1と同様に大きさの異なる人形用眼球2、3に対応できる。さらに、左右の人形用眼球2、3の間隔を変えることも可能になる。
【0061】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上説明したように、本開示に係る人形用眼球の保持機構は、人形用眼球の大きさを変更可能にする場合や、視線の変化を可能にする場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 人形用眼球の保持機構
2、3 人形用眼球
6 左側付勢部材
7 右側付勢部材
8 支持部材
8a 左側部
8b 右側部
8e 貫通孔
8f 可動側固定孔(本発明の第2固定孔)
9 フレーム部材
9d 取付部
9e フレーム側固定孔(本発明の第1固定孔)
10 固定部材
100 頭部
101a、101b 眼孔