(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039481
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】表皮部材及び内装部材
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20240314BHJP
B29C 65/48 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
B60R13/02 B
B29C65/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144072
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187193
【弁理士】
【氏名又は名称】林 司
(74)【代理人】
【識別番号】100181766
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 均
(72)【発明者】
【氏名】内田 康洋
(72)【発明者】
【氏名】浅野 巌
【テーマコード(参考)】
3D023
4F211
【Fターム(参考)】
3D023BA01
3D023BB01
3D023BC01
3D023BD27
3D023BD29
3D023BE06
3D023BE14
3D023BE31
4F211AC03
4F211AH25
4F211AP12
4F211TA03
4F211TC03
4F211TD11
(57)【要約】
【課題】よれた形状や皺等に起因して製品の外観品質が低下することを防止又は抑制可能な表皮部材を提供する。
【解決手段】本発明の表皮部材(20,60)は、表皮本体部(22,62)と、表皮本体部(22,62)から延びて、更に折り返されることにより、略U字状に折り曲げられた形状を備える表皮側縁部(23,63)とを有し、表皮側縁部(23,63)は、基端部(24,64)と、基端部(24,64)から延びる折曲部(25,65)と、折曲部(25,65)から延びるとともに基端部(24,64)の裏面側に重ねられる折り返し縁部(26,66)とを有し、基端部(24,64)の一部の内周面と、折曲部(25,65)の内周面と、折り返し縁部(26,66)の少なくとも一部の内周面とに接着層(41,81)が設けられ、基端部(24,64)の内周面は、接着層(41,81)が設けられていない非接着面(45,85)を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表皮本体部と、前記表皮本体部から第1方向の一方に延びて、更に前記第1方向の他方に折り返されることにより、略U字状に折り曲げられた形状を備える表皮側縁部とを有し、
前記表皮側縁部は、前記表皮本体部に接続する基端部と、前記基端部から延びるとともに折り曲げられる折曲部と、前記折曲部から延びるとともに前記基端部の裏面側に重ねられる折り返し縁部とを有し、
前記基端部の一部の内周面と、前記折曲部の内周面と、前記折り返し縁部の少なくとも一部の内周面とに接着層が設けられ、
前記基端部の内周面は、前記接着層が設けられていない非接着面を有する
ことを特徴とする表皮部材。
【請求項2】
前記基端部の前記非接着面は、前記第1方向に沿った断面視において、前記基端部の前記表皮本体部に対する境界部から、前記折曲部に近付く方向に向けて連続的に配されている
請求項1記載の表皮部材。
【請求項3】
前記基端部の前記非接着面は、前記第1方向に沿った断面視において、前記基端部の内周面の半分の範囲、又は前記半分を超える範囲に配されている
請求項1記載の表皮部材。
【請求項4】
前記折り返し縁部の内周面は、前記接着層が設けられていない非接着面を有し、
前記第1方向に沿った断面視において、前記基端部の前記非接着面の少なくとも一部と、前記折り返し縁部の前記非接着面の少なくとも一部とは、互いに対向して配されている
請求項1記載の表皮部材。
【請求項5】
請求項1~4の何れかに記載の前記表皮部材と、前記表皮部材により被覆されている基材部とを有することを特徴とする内装部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材部の被覆に用いられる表皮部材、及び、その表皮部材により基材部が被覆されている内装部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2019-89536号公報(特許文献1)には、基材部を被覆する表皮部材が記載されている。この特許文献1に記載されている表皮部材は、2つの表皮片のそれぞれの側縁部(表皮側縁部)をU字状に折り曲げて、更に、その側縁部の折り曲げられた部分同士を互いに突き合わせて縫い合わせることによって、形成されている。
【0003】
また従来において、表皮部材を基材部に被せるときには、基材部の表面に接着剤を塗布して接着層を形成するとともに、例えば
図7に示すように、表皮部材90の裏面の一部にも接着剤を塗布して接着層95を形成することがある。これにより、基材部と表皮部材90とを、基材部の接着層及び表皮部材90の接着層95を介して貼り合わせることができる。またこの場合、表皮部材90の左右の表皮片91については、各表皮片91における表皮側縁部92の内周面全面にも接着剤を塗布して接着層95を形成することにより、表皮側縁部92のU字状に折り曲げられた形状を固定することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図7に示したように、表皮部材90は、左右の各表皮片91の表皮側縁部92がそれぞれU字状に折り曲げられた状態で基材部に被せられて取り付けられる(固定される)。このような従来の表皮部材90において、例えば表皮部材90を、左右の表皮片91を突き合わせる部分を、左右にカーブさせるように湾曲した形状で形成する場合等では、U字状に折り曲げられた表皮側縁部92の裏面側(所謂、縫い代の部分)がよれ易くなることや、その裏面側に皺が部分的に発生すること等があった。
【0006】
しかし、この表皮部材90では、
図7に示したように、表皮側縁部92のU字状に折り曲げられた形状が接着層95によって固定されているため、表皮側縁部92の裏面側に生じたよれた形状(歪んだ形状)や皺等も接着層95によって固定され、そのよれた形状や皺等が、接着層95を介して表皮部材90の外面に凸部(凸形状)として表出することがあった。その結果、表皮部材90が取り付けられた製品(例えば、内装部材等)の外観品質が損なわれることがあった。
【0007】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、表皮側縁部に生じるよれた形状や皺等に起因して製品の外観品質が低下することを防止又は抑制可能な表皮部材、及び、その表皮部材により基材部が被覆されている内装部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明によれば、表皮本体部と、前記表皮本体部から第1方向の一方に延びて、更に前記第1方向の他方に折り返されることにより、略U字状に折り曲げられた形状を備える表皮側縁部とを有し、前記表皮側縁部は、前記表皮本体部に接続する基端部と、前記基端部から延びるとともに折り曲げられる折曲部と、前記折曲部から延びるとともに前記基端部の裏面側に重ねられる折り返し縁部とを有し、前記基端部の一部の内周面と、前記折曲部の内周面と、前記折り返し縁部の少なくとも一部の内周面とに接着層が設けられ、前記基端部の内周面は、前記接着層が設けられていない非接着面を有する表皮部材が提供される。
【0009】
本発明の表皮部材において、前記基端部の前記非接着面は、前記第1方向に沿った断面視において、前記基端部の前記表皮本体部に対する境界部から、前記折曲部に近付く方向に向けて連続的に配されていることが好ましい。
また、前記基端部の前記非接着面は、前記第1方向に沿った断面視において、前記基端部の内周面の半分の範囲、又は前記半分を超える範囲に配されていることが好ましい。
【0010】
また、本発明の表皮部材において、前記折り返し縁部の内周面は、前記接着層が設けられていない非接着面を有し、前記第1方向に沿った断面視において、前記基端部の前記非接着面の少なくとも一部と、前記折り返し縁部の前記非接着面の少なくとも一部とは、互いに対向して配されている。
【0011】
更に本発明によれば、上述した構成を備える前記表皮部材と、前記表皮部材により被覆されている基材部とを有する内装部材が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、表皮側縁部に生じるよれた形状や皺等を接着層に固定され難くして、よれた形状や皺等に起因して製品の外観品質が低下することを防止又は抑制できる表皮部材と、その表皮部材により基材部が被覆されている内装部材とが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例1に係る内装部材の要部を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図1に示した内装部材の表面(外面)を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図1に示した内装部材に用いられる表皮部材の裏面(内面)を模式的に示す図である。
【
図4】表皮部材に使用される表皮片に接着層及び非接着面を形成する方法を模式的に説明する模式図である。
【
図5】表皮片の折り曲げを模式的に説明する模式図である。
【
図6】本発明の実施例2に係る表皮部材の要部を模式的に示す断面図である。
【
図7】従来の表皮部材の要部を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施の形態について、実施例を挙げて図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。
【実施例0015】
図1は、本実施例1の内装部材の要部を模式的に示す断面図であり、
図2は、その内装部材の表面(外面)を模式的に示す平面図である。
図3は、本実施例の内装部材に用いられる表皮部材の裏面(内面)を模式的に示す図である。
【0016】
本実施例1の内装部材1は、自動車の車室に用いられる内装部材1であり、例えば自動車のインストルメントパネル、ガーニッシュ、又はコンソールボックス等に用いられる。また、本実施例1の内装部材1は、車内の設置部位に応じた所定の形状を有する基材部10と、基材部10を外側から被覆する表皮部材20とを有する。
【0017】
なお、以下の内装部材1に関する説明において、上下方向は、基材部10に対して表皮部材20を近接・離間させる方向に沿った方向を意味し、例えば
図1の紙面における上下方向と同じ方向である。この場合、表皮部材20を基材部10に近付ける向きを下方とし、表皮部材20を基材部10から離間させる向きを上方とする。左右方向は、表皮部材20を後述する縫い合わせ部32に交差する方向(好ましくは、縫い合わせ部32に直交する方向)に切断したときの断面視において、上下方向に直交する方向を意味し、例えば
図1の紙面における左右方向と同じ方向である。また、本実施例1及び後述する実施例2における左右方向は、特許請求の範囲に規定する第1方向に対応する方向である。前後方向は、上下方向と左右方向とに直交する方向を意味し、例えば
図1の紙面の表裏方向と同じ方向である。
【0018】
内装部材1の基材部10は、合成樹脂により形成されており、取り付けられた表皮部材20を支持している。基材部10は、表皮部材20に覆われる外面11と、外面11に対して凹設される凹溝部12とを有する。基材部10の凹溝部12は、表皮部材20における後述する左右の表皮側縁部23の一部(具体的には、表皮側縁部23における折り返し縁部26と折曲部25の下半部)を収容して保持する部分であり、表皮部材20で左右の表皮側縁部23が配される位置に対応して設けられている。また、基材部10の外面11には、基材側接着層13が設けられている。本実施例1において、基材側接着層13は、表皮部材20に形成される後述の第2接着層42の形成部分に対応して設けられている。
【0019】
なお本発明において、基材部10の材質、大きさ、及び形状、凹溝部12の大きさ及び形状、並びに、基材側接着層13の材質等は特に限定されない。また、基材部10は、例えば上述した凹溝部12を設けずに形成されていてもよく、また、基材側接着層13を設けずに形成されていてもよい。
【0020】
本実施例1の内装部材1において、表皮部材20は、基材部10を外側から被覆するとともに、表皮部材20の一部が基材部10の凹溝部12に収容されるようにして基材部10に取り付けられている。表皮部材20は、表皮本体部22及び表皮側縁部23を備える2つの表皮片21と、2つの表皮片21を縫い合わせる縫合部31と、表皮片21における表皮側縁部23の内周面に設けられる第1接着層41と、表皮片21の表皮本体部22を基材部10に固定する第2接着層42とを有する。
【0021】
本実施例1において、表皮部材20を形成する2つの表皮片21のうち、縫合部31に対して左右方向の一方側(例えば左側)に配される表皮片21を第1表皮片21aと規定し、左右方向の他方側(例えば右側)に配される表皮片21を第2表皮片21bと規定する。
【0022】
第1表皮片21a及び第2表皮片21bは、布等の生地又は合成皮革等の皮革により、薄く形成されている。また、第1表皮片21a及び第2表皮片21bは、基材部10を被覆可能な大きさ及び形状を有するとともに、可撓性を備えている。第1表皮片21aと第2表皮片21bとは、縫合部31によって縫い合わされている。また、第1表皮片21aと第2表皮片21bの縫い合わせ部(突き合わせ部)32は、基材部10に取り付けられた表皮部材20を上方から見たときに(
図2を参照)、1本の線のように連続して形成されている。
【0023】
本実施例1の第1表皮片21a及び第2表皮片21bは、それぞれ、基材部10の外面11に沿って配されることにより基材部10を被覆する表皮本体部22と、表皮部材20の縫い合わせ部32に交差する断面(
図1)を見たときに略U字状に折り曲げられた形状を備える表皮側縁部23とを有する。なお、本実施例1において、表皮部材20の縫い合わせ部32に交差する断面(好ましくは、縫い合わせ部32に直交する断面)は、左右方向(第1方向)に沿った断面と言うこともできる。また、以下の説明において、「表皮部材20の断面視」という記載は、表皮部材20の縫い合わせ部32に交差する断面を見るときのことを意味する。
【0024】
本実施例1の表皮側縁部23は、表皮本体部22と一体的に形成されているとともに、表皮本体部22から連続的に延びている。また、表皮側縁部23は、表皮部材20の断面視(
図1)において、表皮本体部22から左右方向の一方に延びて、更に、左右方向の他方に折り返されることによって略U字状に形成されている。
【0025】
このような略U字状の表皮側縁部23は、表皮本体部22に接続する基端部24と、基端部24から表皮本体部22とは反対の方向に延びるとともに折り曲げられる折曲部25と、折曲部25から更に延びるとともに基端部24の裏面側に重ねられる折り返し縁部26とを有する。
【0026】
この場合、表皮部材20の断面視(
図1)において、例えば表皮側縁部23における折り返し縁部26の先端の位置から、上下方向に沿う直線を仮想的に延ばしたときに、その仮想的な直線と表皮片21とが交わる位置を、その表皮片21における表皮本体部22と表皮側縁部23の境界部27とする。ここで、折り返し縁部26の先端は、表皮部材20の断面視(
図1)において、折り返し縁部26における折曲部25に接続する側とは反対側の末端を意味する。
【0027】
また本実施例1において、表皮部材20の裏面及び表皮片21の裏面とは、表皮部材20及び表皮片21の互いに反対側に配される第1表面及び第2表面のうち、基材部10に面する側又は対向する側の表面を意味する。また、略U字状の表皮側縁部23は、前記断面視において、内側に配される内周面と、外側に向く外周面とを有する。この場合、表皮側縁部23における基端部24の外周面が、表皮片21の外部に露呈する表面(外面)の一部を形成し、また、表皮側縁部23における折り返し縁部26の外周面が、表皮片21の基材部10に対向する裏面(内面)となる。
【0028】
本実施例1の第1表皮片21a及び第2表皮片21bにおいて、表皮側縁部23の基端部24は、上述した境界部27から、左右方向の内側に向けて、表皮本体部22に沿うように延びている。ここで、左右方向の内側とは、左右方向において縫い合わせる相手側の表皮片21に近付く向きを意味する。
【0029】
表皮側縁部23の折曲部25は、基端部24における境界部27とは反対側の端縁から下方に向けて、左右方向の内側へ凸状に膨らむように湾曲しながら延びている。表皮側縁部23の折り返し縁部26は、折曲部25における基端部24に接続する側とは反対側の端縁から、左右方向の外側に向けて、基端部24と平行又は略平行に延びている。
【0030】
縫合部31は、第1表皮片21aと第2表皮片21bを縫い合わせる縫製加工を行うことによって形成されており、また、第1表皮片21a及び第2表皮片21bを刺通して縫い合わせる縫製糸により形成されている。本実施例1では、表皮部材20を上側から見た平面視(
図2)において、縫合部31によって縫い合わされた第1表皮片21aと第2表皮片21bの縫い合わせ部32(言い換えると、第1表皮片21aと第2表皮片21bの突き合わせ部32)は、左右方向にカーブするように湾曲した形状に形成されている。その結果、表皮部材20の裏面側では、例えば
図3に示したように、第1表皮片21a及び第2表皮片21bの折り返し縁部26に、よれた形状(歪んだ形状)35や皺が形成され易くなる。
【0031】
表皮部材20の第1接着層41及び第2接着層42は、表皮片21に接着剤を塗布することによって形成されている。本実施例1の第1接着層41は、表皮側縁部23における基端部24の内周面の一部と、折曲部25の内周面の全体と、折り返し縁部26の内周面の全体とに設けられている。このように第1接着層41が設けられていることにより、表皮側縁部23の略U字状に折り曲げられた形状を固定できる。
【0032】
また、表皮側縁部23における基端部24の内周面は、第1接着層41が設けられていない非接着面45を有する。本実施例1において、基端部24に設けられる非接着面45は、表皮部材20の断面視(
図1)において、基端部24及び表皮本体部22間の境界部27から、折曲部25に近付く方向に向けて連続的に延びている。この場合、基端部24の非接着面45は、基端部24の内周面の全体の50%の範囲に、又は、内周面の全体の50%を少し超える範囲に配されている。
【0033】
このような非接着面45が表皮側縁部23の基端部24に設けられていることにより、第1表皮片21a及び第2表皮片21bの折り返し縁部26に
図3に示したようなよれた形状35や皺等が生じたとしても、そのよれた形状35や皺等に起因するような凸部(凸形状)を表皮部材20の外面に、特に、表皮側縁部23の基端部24の外面に、表出させ難くすることができる。
【0034】
本実施例1の第2接着層42は、表皮部材20を基材部10に固定するために、表皮本体部22の裏面(内面)に設けられている。なお本実施例1において、第2接着層42は、表皮本体部22の裏面の少なくとも一部に設けられていればよく、第2接着層42の形成範囲は限定されない。
【0035】
本実施例1において、表皮本体部22の裏面は、第2接着層42が設けられていない非接着面45を有する。この場合、表皮本体部22の非接着面45は、表皮本体部22及び基端部24間の境界部27から、折曲部25から離れる方向に向けて連続的に延びており、また、基端部24の上述した非接着面45に連続して形成されている。
【0036】
表皮部材20の非接着面45が、上述のように境界部27を介して表皮側縁部23の基端部24と表皮本体部22とに亘って連続的に形成されていることにより、表皮部材20の表皮側縁部23が、基材部10の凹溝部12内にて、凹溝部12の長さ方向に沿って僅かに移動することを許容できる。これにより、表皮部材20の表皮側縁部23を、凹溝部12の形状に沿って、凹溝部12内に容易に挿入して収容できる。また、表皮部材20の表皮側縁部23を、凹溝部12内で基材部10に引っ掛かり難くすることができるため、表皮部材20の引っ掛かりに起因して表皮部材20に皺等が発生することを抑制できる。
【0037】
次に、本実施例1の表皮部材20を作製する方法について説明する。
先ず、所要の形状に裁断された第1表皮片21a及び第2表皮片21bを用意する。続いて、用意された第1表皮片21a及び第2表皮片21bに対して縫製加工を行う。この縫製加工によって、縫製糸を第1表皮片21a及び第2表皮片21bに刺通させて、縫製糸による縫合部31を形成するとともに、その縫合部31で第1表皮片21aと第2表皮片21bとを縫い合わせる。
【0038】
次に、縫合部31によって縫い合わされた第1表皮片21aと第2表皮片21bとに対し、
図4に示すようにマスキング50を形成して、このマスキング50によって第1表皮片21a及び第2表皮片21bの一部を被覆する。この場合、マスキング50は、表皮本体部22の裏面及び表皮側縁部23の内周面を形成する表皮片21の一方の面に形成される。なお本発明において、マスキング50を形成する方法は特に限定されない。
【0039】
第1表皮片21a及び第2表皮片21bにマスキング50を形成した後、第1表皮片21a及び第2表皮片21bの前記一方の面に接着剤を塗布することによって接着層40を形成する(
図4を参照)。また、接着層40が形成された後、第1表皮片21a及び第2表皮片21bからマスキング50を剥がすことにより、マスキング50上に形成された接着層40が除去されるため、第1表皮片21a及び第2表皮片21bの一方の面に非接着面45が形成される。この場合、第1表皮片21a及び第2表皮片21bに形成された接着層40のうち、非接着面45の位置よりも表皮側縁部23側に形成されている接着層40が第1接着層41となり、非接着面45の位置よりも表皮側縁部23の反対側に形成されている接着層40が第2接着層42となる。
【0040】
その後、接着層40及び非接着面45が形成された第1表皮片21a及び第2表皮片21bを、
図5に示すように、それぞれ、縫合部31の位置で折り曲げて折曲部25を形成するとともに、その折曲部25から延びる折り返し縁部26を基端部24に重ね合わせる。このとき、第1表皮片21a及び第2表皮片21bは、縫合部31及びその周辺部に形成されている接着層40が内側に包まれるように折り曲げられて、当該接着層40同士が貼り合わせられる。
【0041】
以上の工程を行うことにより、
図1~
図3に示すような表皮部材20が作製される。
なお本発明において、表皮部材20の作製方法は特に限定されない。例えば本実施例1では、第1表皮片21aと第2表皮片21bとを縫合部31で縫い合わせた後に、第1表皮片21a及び第2表皮片21bに接着層40(第1接着層41及び第2接着層42)を形成することによって、表皮部材20を作製している。しかし本発明では、第1表皮片21a及び第2表皮片21bに接着層40を形成した後に、その接着層40を備えた第1表皮片21aと第2表皮片21bとを縫合部31で縫い合わせることによって表皮部材20が作製されてもよい。
【0042】
以上の工程が行われて作製された表皮部材20は、その後、別途に形成された凹溝部12を有する基材部10に取り付けられる。このとき、表皮部材20は、
図1に示すように、表皮本体部22で基材部10の外面11を被覆するととともに、表皮側縁部23を基材部10の凹溝部12内に挿入するようにして、基材部10に取り付けられる。また、第1表皮片21a及び第2表皮片21bの表皮本体部22に設けた第2接着層42を、基材部10に設けた基材側接着層13に貼り合わせることにより、表皮本体部22を基材部10に固定する。これによって、基材部10が表皮部材20により被覆された本実施例1の内装部材1が製造される。
【0043】
上述のように製造された本実施例1の内装部材1では、第1表皮片21a及び第2表皮片21bの各表皮側縁部23に第1接着層41と非接着面45とが設けられている。特に、非接着面45は、表皮部材20の断面視において、基端部24の内周面の半分の範囲に、又は、基端部24の内周面の半分を少し超える範囲に設けられている(すなわち、非接着面45は、基端部24の内周面の半分以上の範囲に設けられている)。
【0044】
これにより、表皮側縁部23の略U字状に折り曲げられた形状を、第1接着層41によって安定して保持できる。また、第1表皮片21a及び第2表皮片21bの折り返し縁部26に、
図3に示したようなよれた形状35や皺が発生しても、その折り返し縁部26のよれた形状35や皺(特に、よれた形状35及び皺の左右方向の外側端部)が、第1接着層41を介して表皮側縁部23の基端部24に固定され難くなり、且つ、よれた形状35や皺が表皮側縁部23の折り返し縁部26にて分散し易くなる。
【0045】
このため、表皮部材20の意匠面となる表面(外面)に、よれた形状35や皺に起因する凸部(凸形状)を表出させ難くすることができる。その結果、内装部材1の外観品質が低下することを防止又は抑制できるため、良好な見栄え又は優れた外観性を備える内装部材1を安定して提供することができる。
本実施例2の表皮部材60は、表皮本体部62及び表皮側縁部63を備える2つの表皮片61(第1表皮片61a及び第2表皮片61b)と、第1表皮片61a及び第2表皮片61bを縫い合わせる縫合部71と、表皮片61における表皮側縁部63の内周面に設けられる接着層80(第1接着層81)と、表皮側縁部63に形成される加飾縫製部87とを有する。
本実施例2の表皮部材60は、前述の実施例1において表皮本体部22に設けられる第2接着層42を備えることなく形成されており、表皮本体部62の裏面の全体が非接着面85として形成されている。なお、本実施例2の表皮部材60では、前述の実施例1と同様の第2接着層が、表皮部材60の表皮本体部62の裏面に形成されていてもよい。
本実施例2の第1表皮片61a、第2表皮片61b、及び縫合部71は、前述の実施例1の第1表皮片21a、第2表皮片21b、及び縫合部31とそれぞれ実質的に同様に形成されている。すなわち、本実施例2の第1表皮片61a及び第2表皮片61bは、それぞれ、表皮本体部62と、略U字状の表皮側縁部63とを有する。また、略U字状の表皮側縁部63は、基端部64、折曲部65、及び折り返し縁部66を有する。
本実施例2の第1接着層81は、表皮側縁部63における基端部64の内周面の一部と、折曲部65の内周面の全体と、折り返し縁部66の内周面の一部とに設けられており、この第1接着層81により、表皮側縁部63の略U字状に折り曲げられた形状が固定されている。
本実施例2において、基端部64の非接着面85と折り返し縁部66の非接着面85とは、互いに同じ面積又は略同じ面積で形成されている。また、基端部64の非接着面85と折り返し縁部66の非接着面85とは、非接着面85の全体を上下方向に互いに対向させて配されている。このように基端部64と折り返し縁部66の両方に非接着面85を向かい合わせて設けることにより、表皮側縁部63の折り返し縁部66によれた形状や皺が形成される場合でも、そのよれた形状や皺に起因して表皮部材60の意匠面となる外面に凸部(凸形状)が表出することをより効果的に防止又は抑制できる。
なお本発明において、表皮側縁部63の基端部64と折り返し縁部66の両方に非接着面85を設ける場合、基端部64の非接着面85と折り返し縁部66の非接着面85とは、非接着面85の全体で上下方向に互いに対向させるのではなく、少なくとも一部の領域で上下方向に互いに対向するように配されていてもよい。
本実施例2の加飾縫製部87は、表皮側縁部63の基端部64と折り返し縁部66とを縫い合わせるように形成されている。この場合、加飾縫製部87は、基端部64及び折り返し縁部66における左右方向の中央部に配されている。本実施例2では、表皮側縁部63の折り返し縁部66が、第1接着層81の形成部分と非接着面85となる部分の両方が形成可能なように左右方向に長く形成されている。このように折り返し縁部66が左右方向に長く形成されていることにより、表皮側縁部63の基端部64と折り返し縁部66とに対して縫製加工を容易に施すことができ、それによって、加飾縫製部87を安定して形成することができる。
このような加飾縫製部87が、表皮部材60の外面に表出することにより、表皮部材60が取り付けられる内装部材を装飾できる。それによって、内装部材の意匠性若しくは装飾性を高めること、又は、内装部材に高級感を与えることができる。なお、加飾縫製部87の形成位置、形成範囲、及び形成方法等は特に限定されない。また、表皮部材60は、例えば前述の実施例1のように、加飾縫製部87を設けずに形成されていてもよい。
上述のような本実施例2の表皮部材60を基材部10に取り付けることによって内装部材が製造される。このように製造された内装部材では、第1表皮片61a及び第2表皮片61bの各表皮側縁部63に、第1接着層81と非接着面85とが設けられている。このため、表皮側縁部63の略U字状に折り曲げられた形状を安定して保持できる。それと同時に、上述したように、表皮側縁部63の折り返し縁部66によれた形状や皺が形成される場合でも、そのよれた形状や皺に起因して表皮部材60の外面に凸部が表出することをより効果的に防止又は抑制できる。従って、本実施例2の表皮部材60を用いることによって、内装部材の外観品質が低下することを防止又は抑制して、良好な見栄え又は優れた外観性を備えた内装部材を提供することが可能となる。
なお、上述した実施例1及び実施例2では、凹溝部12が設けられた基材部10に表皮部材20,60の一部(具体的には、表皮側縁部23,63の一部)を挿入して収容するとともに、その表皮部材20,60を基材部10に被せるようにして表皮部材20,60が基材部10に取り付けられている。しかし本発明では、表皮部材の一部を収容する凹溝部を設けずに基材部が形成されていてもよい。すなわち、本発明の表皮部材は、表皮部材の一部を収容する構造で形成された基材部に取り付けて使用することも可能であり、また、表皮部材を収容しない構造で形成された基材部に取り付けて使用することも可能である。
更に、上述した実施例1及び実施例2では、表皮部材20,60を形成する第1表皮片21a,61aと第2表皮片21b,61bの両方が、第1接着層41,81が設けられた表皮側縁部23,63を有している。しかし、本発明は、表皮部材を形成する第1表皮片と第2表皮片の何れか一方のみが、第1接着層が設けられた表皮側縁部を有する場合にも適用可能である。