(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039493
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】搬送器材
(51)【国際特許分類】
B63C 9/06 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
B63C9/06
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144092
(22)【出願日】2022-09-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】591196577
【氏名又は名称】海上保安庁長官
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米山 将平
(57)【要約】
【課題】水中で要救助者を搬送すること。
【解決手段】本開示に係る搬送器材は、要救助者を収容する収容体と、前記収容体に水圧がかかるときに前記収容体の内部の空気を排出可能な抜気弁と、を備える。本開示に係る搬送器材によれば、収容体に収容された要救助者の呼吸を確保しつつ、浮力となる余分な空気を排気弁から排出しながら搬送器材を水中へ引き込むことが可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
要救助者を収容する収容体と、
前記収容体に水圧がかかるときに前記収容体の内部の空気を排出可能な抜気弁と
を備えることを特徴とする搬送器材。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送器材であって、
前記抜気弁は、前記要救助者の頭頂側に配置されている、
ことを特徴とする搬送器材。
【請求項3】
請求項2に記載の搬送器材であって、
2つの前記抜気弁が、前記収容体の左右方向に離れて配置されている、
ことを特徴とする搬送器材。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の搬送器材であって、
前記要救助者の足先側に別の抜気弁が配置されている、
ことを特徴とする搬送器材。
【請求項5】
請求項1に記載の搬送器材であって、
前記収容体は、前記要救助者に空気を供給するボンベを収容可能である、
ことを特徴とする搬送器材。
【請求項6】
請求項1又は5に記載の搬送器材であって、
前記収容体は、ボンベを固定するボンベ固定部を有する、
ことを特徴とする搬送器材。
【請求項7】
請求項6に記載の搬送器材であって、
前記ボンベ固定部は、前記要救助者の足の間で前記ボンベを固定可能である、
ことを特徴とする搬送器材。
【請求項8】
請求項7に記載の搬送器材であって、
前記ボンベ固定部は、前記ボンベのファーストステージ部を足先側に向けた状態で前記ボンベを固定可能である、
ことを特徴とする搬送器材。
【請求項9】
請求項1又は5に記載の搬送器材であって、
前記収容体は、ボンベの残圧を計測する残圧計を確認するための窓を有する、
ことを特徴とする搬送器材。
【請求項10】
請求項1又は5に記載の搬送器材であって、
ボンベから空気を所定流量で供給するレギュレータを更に有する、
ことを特徴とする搬送器材。
【請求項11】
請求項10に記載の搬送器材であって、
前記収容体は、前記レギュレータを確認するための窓を有する、
ことを特徴とする搬送器材。
【請求項12】
請求項10に記載の搬送器材であって、
前記レギュレータに連結され、前記要救助者に取り付けるマスクを更に有する、
ことを特徴とする搬送器材。
【請求項13】
請求項1に記載の搬送器材であって、
前記収容体は、前記収容体の外部から内部に空気を供給するためのバルブを有する、
ことを特徴とする搬送器材。
【請求項14】
請求項1に記載の搬送器材であって、
柔軟な前記収容体の外周を締め付けるベルトを更に有する、
ことを特徴とする搬送器材。
【請求項15】
請求項14に記載の搬送器材であって、
前記ベルトは、前記要救助者の頭部よりも足側に配置されている、
ことを特徴とする搬送器材。
【請求項16】
請求項1に記載の搬送器材であって、
前記収容体を把持するための取っ手を更に有する、
ことを特徴とする搬送器材。
【請求項17】
請求項1に記載の搬送器材であって、
前記収容体は、ウェイトを取り付けるためのウェイト取付部を有する、
ことを特徴とする搬送器材。
【請求項18】
請求項1に記載の搬送器材であって、
前記収容体は、前記要救助者の顔面を確認するための窓を有する、
ことを特徴とする搬送器材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送器材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、津波や水害等の非常時にヒトを収容するための収容カプセルが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の収容カプセルは、水に浮くように構成されている。このように水に浮くように構成された搬送器材は、要救助者を水中で搬送する状況下では浮力が強く作用してしまう。このため、水に浮くように構成された搬送器材は、水中での要救助者の搬送に用いることができない。
【0005】
本発明は、水中で要救助者を搬送することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための発明は、要救助者を収容する収容体と、前記収容体に水圧がかかるときに前記収容体の内部の空気を排出可能な抜気弁とを備えることを特徴とする搬送器材である。
【0007】
本発明の他の特徴については、後述する明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、水中で要救助者を搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図2は、開いた状態の搬送器材1の説明図である。
【
図3】
図3は、要救助者を収容した状態で開いた状態の搬送器材1の説明図である。
【
図4】
図4A及び
図4Bは、要救助者を収容した状態で閉じた状態の搬送器材1の説明図である。
【
図5】
図5は、搬送器材1に収容した要救助者を水中で搬送する様子の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
===本実施形態===
【0011】
本実施形態の第1形態の搬送器材は、要救助者を収容する収容体と、前記収容体に水圧がかかるときに前記収容体の内部の空気を排出可能な抜気弁とを備える。このような搬送器材によれば、水中で要救助者を搬送することができる。
【0012】
第2形態の搬送器材は、上記第1形態の搬送器材であるとともに、前記抜気弁は、前記要救助者の頭頂側に配置されている。これにより、水中で要救助者の頭部を上にしたときに、要救助者の頭部に溜まる空気を抜気弁から排出することができる。
【0013】
第3形態の搬送器材は、上記第2形態の搬送器材であるとともに、2つの前記抜気弁が、前記収容体の左右方向に離れて配置されている。これにより、収容体の左右方向の浮力のバランスを調整することができる。
【0014】
第4形態の搬送器材は、上記第2又は第3形態の搬送器材であるとともに、前記要救助者の足先側に別の抜気弁が配置されている。これにより、要救助者の足側に溜まる空気を抜気弁から排出することができ、水中で要救助者の頭部を上にし易くなる。
【0015】
第5形態の搬送器材は、上記第1~第4形態のいずれかの搬送器材であるとともに、前記収容体は、前記要救助者に空気を供給するボンベを収容可能である。これにより、要救助者は、収容体の内部で呼吸可能である。
【0016】
第6形態の搬送器材は、上記第1~第5形態のいずれかの搬送器材であるとともに、前記収容体は、ボンベを固定するボンベ固定部を有する。これにより、収容体の内部でボンベを固定できる。
【0017】
第7形態の搬送器材は、上記第6形態の搬送器材であるとともに、前記ボンベ固定部は、前記要救助者の足の間で前記ボンベを固定可能である。これにより、収容体の長手方向の寸法を短縮化できるともに、要救助者の搬送時にボンベの位置を安定させることができる。
【0018】
第8形態の搬送器材は、上記第7形態の搬送器材であるとともに、前記ボンベ固定部は、前記ボンベのファーストステージ部を足先側に向けた状態で前記ボンベを固定可能である。これにより、ファーストステージ部と要救助者の股とが干渉することを防止できる。
【0019】
第9形態の搬送器材は、上記第1~第8形態のいずれかの搬送器材であるとともに、前記収容体は、ボンベの残圧を計測する残圧計を確認するための窓を有する。これにより、救助者は、収容体の内部に配置されている残圧計を確認できる。
【0020】
第10形態の搬送器材は、上記第1~第9形態のいずれかの搬送器材であるとともに、ボンベから空気を所定流量で供給するレギュレータを更に有する。これにより、要救助者の呼吸を確保し易くなる。
【0021】
第11形態の搬送器材は、上記第10形態の搬送器材であるとともに、前記収容体は、前記レギュレータを確認するための窓を有する。これにより、救助者は、収容体の内部に配置されているレギュレータを確認できる。
【0022】
第12形態の搬送器材は、上記第10又は第11形態の搬送器材であるとともに、前記レギュレータに連結され、前記要救助者に取り付けるマスクを更に有する。これにより、要救助者の搬送時に収容体が水圧を受けても、要救助者に空気を供給することができる。
【0023】
第13形態の搬送器材は、上記第1~第12形態のいずれかの搬送器材であるとともに、前記収容体は、前記収容体の外部から内部に空気を供給するためのバルブを有する。これにより、バルブを介して収容体に空気を供給することが可能である。
【0024】
第14形態の搬送器材は、上記第1~第13形態のいずれかの搬送器材であるとともに、柔軟な前記収容体の外周を締め付けるベルトを更に有する。これにより、収容体の容積を縮小させることができ、収容体の浮力を低減させることができるため、水中での要救助者の搬送が容易になる。
【0025】
第15形態の搬送器材は、上記第14形態の搬送器材であるとともに、前記ベルトは、前記要救助者の頭部よりも足側に配置されている。これにより、要救助者の頭部の周辺に空間を確保できる。
【0026】
第16形態の搬送器材は、上記第1~第15形態のいずれかの搬送器材であるとともに、前記収容体を把持するための取っ手を更に有する。これにより、要救助者の水中での搬送が容易になる。
【0027】
第17形態の搬送器材は、上記第1~第16形態のいずれかの搬送器材であるとともに、前記収容体は、ウェイトを取り付けるためのウェイト取付部を有する。これにより、収容体の浮力を調整できる。
【0028】
第18形態の搬送器材は、上記第1~第17形態のいずれかの搬送器材であるとともに、前記収容体は、前記要救助者の顔面を確認するための窓を有する。これにより、救助者は、収容体に収容されている要救助者の様子を確認することができる。
【0029】
===本実施形態に係る搬送器材1===
図1A~
図1Dは、搬送器材1の説明図である。なお、
図1Aは左側面図であり、
図1Bは上面図であり、
図1Cは右側面図であり、
図1Dは底面図である。
図2は、開いた状態の搬送器材1の説明図である。
図3は、要救助者を収容した状態で開いた状態の搬送器材1の説明図である。
図4A及び
図4Bは、要救助者を収容した状態で閉じた状態の搬送器材1の説明図である。なお、
図4Aは、締付ベルト51を締める前の状態の搬送器材1の説明図である。
図4Bは、締付ベルト51を締めた状態の搬送器材1の説明図である。
図5は、搬送器材1に収容した要救助者を水中で搬送する様子の説明図である。
【0030】
以下では、
図1A~
図1Dに示すように、各方向を定めて説明する。収容体10に要救助者を収容したときの要救助者の身長方向を「長手方向」と呼び、要救助者から見て頭頂部の側を「頭頂側」又は「頭側」と呼び、反対側を「足先側」又は「足側」と呼ぶ。また、収容体10に要救助者を仰向けで収容したときの要救助者の左右方向を「左右方向」と呼び、要救助者の左側を「右側」と呼び、要救助者の右側を「左側」と呼ぶ(要救助者と対面する救助者から見て、右側を「右側」と呼び、左側を「左側」と呼ぶ)。なお、収容体10に要救助者を収容していない場合においても、搬送器材1の各部を説明するときに、頭頂側(又は頭側)、足先側(又は足側)、右側、左側などと呼ぶことがある。また、鉛直方向に沿って「上下方向」を定め、鉛直方向の上側を「上」と呼び、逆側を「下」と呼ぶことがある。
【0031】
搬送器材1は、水中での要救助者の搬送に用いられる器材である。ここでは、転覆船の船内に取り残された要救助者を救助するため、救助者(潜水士)が船内で要救助者を搬送器材1に収容するとともに(
図4A及び
図4B参照)、搬送器材1を用いて水中で要救助者を搬送することを想定している(
図5参照)。但し、搬送器材1は、転覆船からの要救助者の救助に限られるものではなく、他の用途での要救助者の水中での搬送に用いることが可能である。また、ここでは、顔面に面体が密着しないような小児(身長130cm程度の人;小学校4年生未満の人)が要救助者であることを想定している。但し、要救助者は、小児に限られるものではなく、大人でも良い。
【0032】
搬送器材1は、収容体10と、抜気弁21とを有する。
【0033】
収容体10は、要救助者を収容するための部材である。収容体10は、長手方向に長尺な収容空間を有する部材である。収容体10は、要救助者とともにボンベ31も収容可能である。なお、ボンベ31や、ボンベ31を含む呼吸装置30については、後述する。
【0034】
収容体10は、開閉可能に構成されている。収容体10は、本体部11と、蓋部12とを有する。本体部11は、要救助者を収容する収容部を構成する部位である。蓋部12は、本体部11を塞ぐ部位である。蓋部12を開くことによって、本体部11を開放することができる。ここでは、収容体10の左側(要救助者の右手側)では本体部11と蓋部12とが取り付けられた状態であり、収容体10の右側(要救助者の左手側)から蓋部12を開くことができるように構成されている。但し、左右逆側から蓋部12を開くことができように構成されても良いし、要救助者の頭側又は足側から蓋部12を開くことができるように構成されても良い。また、蓋部12が本体部11に着脱可能であっても良い。なお、収容体10を袋状(口の部分だけを開放可能にした形状)に構成し、袋の口の部分から収容体10の内部に要救助者を入れるように、収容体10が構成されても良い。但し、蓋部12を開くことによって本体部11を広く開放できる構成であれば、要救助者を収容体10に収容する作業が容易になる。
【0035】
収容体10は、防水ファスナー13によって開閉可能に構成されている。
図1A及び
図1Cに示すように、防水ファスナー13は、収容体10の側面に、外周に沿って設けられている。防水ファスナー13によって、本体部11と蓋部12との隙間を塞ぐことができ、収容体10の内部への水の浸入を抑制することができる。但し、本体部11と蓋部12との隙間を防水可能であれば、防水ファスナー13を用いずに開閉可能な収容体10が構成されても良い。
【0036】
収容体10は、柔軟な防水シートで構成されている。収容体10が柔軟な部材で構成されているため、収容体10は変形可能である。これにより、後述するように、収容体10に水圧がかかるときに、収容体10の容積を縮小させることができる。また、収容体10が防水シートで構成されることによって、収容体10の内部への水の浸入を防ぐことができる。
【0037】
抜気弁21(21A,21B)は、収容体10の内部の空気を排出可能な弁である。抜気弁21は、収容体10の外部から内部への水の流入を防止しつつ、収容体10の内部から外部に空気を排出する。抜気弁21は、例えば一方通行弁で構成されている。抜気弁21は、搬送器材1を水中へ引き込むときに収容体10にかかる水圧によって生じる圧力差で作動する。抜気弁21は、例えば0.015MPa程度の比較的低い圧力で作動する(0.015MPa程度の圧力差で収容体10の内部から外部に空気が排出される)。収容体10に水圧がかかるときに、収容体10の内部の空気が収容体10の外部に排出される。これにより、収容体10の容積を縮小させて収容体10の浮力を低減させることができ、水中での要救助者の搬送が容易になる。
【0038】
なお、抜気弁21は、ロックボタン(不図示)を有する。ロックボタンが解除された状態(解除状態)では、抜気弁21から空気を排出することができる。ロックボタンが押された状態(ロック状態)では、抜気弁21からの空気の排出が停止される。抜気弁21がロックボタンを有することによって、解除状態とロック状態とを切り替えることができる。これにより、救助者は、ロックボタンの操作によって、収容体10の浮力を調節したり、収容体10の浮力のバランスを調整したりすることができ、要救助者の水中での搬送が容易になる。
【0039】
図1A~
図1Dに示すように、抜気弁21Aは、要救助者の頭頂側に配置されている。これにより、
図5に示すように、水中で要救助者の頭部を上にしたときに、要救助者の頭部に溜まる空気を抜気弁21Aから排出することができ、要救助者を搬送し易くなる。
【0040】
図1Bに示すように、要救助者の頭頂側に2つの抜気弁21Aが左右方向に離れて配置されている。このように、2つの抜気弁21Aが収容体10の左右方向に離れて配置されることによって、収容体10の左右方向の浮力のバランスを調整することができる。なお、収容体10の左右方向に離れて配置する2つの抜気弁21Aは、要救助者の頭頂側に配置されていなくても良い。但し、要救助者の頭頂側に2つの抜気弁21Aが左右方向に離れて配置されていれば、その2つの抜気弁21Aを用いて、要救助者の頭部に溜まる空気を抜気弁21Aから排出すること、及び、収容体10の左右方向の浮力のバランスを調整すること、の両方を行うことが可能である。
【0041】
図1A~
図1Cに示すように、別の抜気弁21Bが要救助者の足先側に配置されている。これにより、要救助者の足側に溜まる空気を抜気弁21Bから排出することができ、水中で要救助者の頭部を上にし易くなる。
【0042】
収容体10は、ボンベ31(
図3参照)を収容可能である。ボンベ31は、要救助者に供給する空気の供給源である。ボンベ31は、タンクと呼ばれることもある。ボンベ31から空気が供給されることによって、要救助者は、収容体10の内部で呼吸可能である。ここでは、内容積が4L(リットル)~10L(リットル)のボンベ31が収容体10に収容されることを想定している。例えば、転覆船から要救助者を救助する場合、救助時間は10分程度であることが想定され、要救助者に空気を15分程度供給できれば良いので、4L(リットル)のボンベ31を収容体10に収容する。一方、沈没船から要救助者を救助する場合には、救助時間が転覆船の場合よりも長くなることから、10L(リットル)のボンベ31を収容体10に収容する。
【0043】
収容体10は、ボンベ固定部41(
図2及び
図3参照)を有する。ボンベ固定部41は、収容体10の内部でボンベ31を固定するための部位である。ボンベ固定部41は、収容体10の本体部11の底面に設けられている。ここでは、ボンベ固定部41はベルトによって構成されており、ベルトの中央部が収容体10に固定されており、ベルトの両端に面ファスナーが設けられており、ボンベ31の外周にベルトを巻いた状態でベルトの端部同士を面ファスナーで留めることによってボンベ31を収容体10に固定することができる。但し、ボンベ固定部41は、ボンベ31を固定できれば、ベルトとは別の構成でも良い。なお、ベルトの端部に面ファスナーの代わりにバックルを設けても良いが、柔軟な面ファスナーを採用することによってボンベ31の損傷を抑制できる。また、ここでは、ボンベ固定部41は、本体部11に取り付けられた複数本(ここでは3本)のベルトによって構成されている。但し、ボンベ固定部41を構成するベルトの数は、3以外の複数でも良いし、単数(1本)でも良い。収容体10がボンベ固定部41を有することによって、要救助者の搬送時にボンベ31の位置を安定させることができる。但し、収容体10がボンベ固定部41を備えていなくても良い。
【0044】
図3に示すように、ボンベ固定部41は、要救助者の足の間でボンベ31を固定可能である。このため、ボンベ固定部41は、収容体10の足側に配置されるとともに、収容体10の左右方向の中央部に配置されている。ボンベ31が要救助者の足の間に固定されることによって、収容体10の長手方向の寸法を短縮化できるともに、要救助者の搬送時にボンベ31の位置を安定させることができる。特に、収容体10に水圧がかかるとボンベ31が要救助者の足で挟まれた状態になるため、要救助者の搬送時にボンベ31の位置を安定させることができる。なお、ボンベ固定部41が、要救助者の足の間でボンベ31を固定しなくても良い。例えば、要救助者の左右どちらか一方にボンベ31が固定されても良い。但し、この場合、左右いずれかに重心が偏るため、要救助者の搬送時に左右のバランスが悪くなる。また、例えば、要救助者の足よりも先にボンベ31が固定されても良い。但し、この場合、収容体10の長手方向の寸法が長くなる。
【0045】
図3に示すように、ボンベ固定部41は、ファーストステージ部31Aを足先側に向けた状態にして、ボンベ31を固定可能である。仮にボンベ31のファーストステージ部31Aが要救助者の股側になるようにボンベ31を配置すると、ファーストステージ部31Aと要救助者の股とが干渉してしまい、ボンベ31の誤動作を招くおそれや、要救助者に不快感を与えるおそれがある。これに対し、ボンベ固定部41がファーストステージ部31Aを足先側に向けた状態でボンベ31を固定することによって、ファーストステージ部31Aと要救助者の股とが干渉することを防止できる。但し、ボンベ固定部41は、逆方向((ファーストステージ部31Aが要救助者の股側になる方向)にボンベ31を固定しても良い。
【0046】
図3に示すように、ボンベ固定部41を構成する3本のベルトのうち、足先側のベルトは、他のベルトと比べて、幅が太い。これにより、ボンベ固定部41がファーストステージ部31Aを足先側に向けた状態でボンベ31を固定するときに、幅の太いベルト(足先側のベルト)によってファーストステージ部31Aを覆うことができる。このように、ボンベ固定部41がファーストステージ部31Aを覆うことによって、ファーストステージ部31Aを保護することができる。但し、足先側のベルトが他のベルトと比べて幅が太く構成されていなくても良い。また、ボンベ固定部41は、ファーストステージ部31Aを覆うように構成されていなくても良い。
【0047】
収容体10は、ボンベ31とともに、残圧計32と、レギュレータ33と、マスク35とを収容可能である(
図3参照)。なお、ボンベ31と、残圧計32と、レギュレータ33と、マスク35とによって、要救助者の呼吸を維持するための呼吸装置30が構成されている。つまり、搬送器材1は、呼吸装置30を更に備えており、収容体10は、呼吸装置30を収容可能である。収容体10が呼吸装置30を収容することによって、収容体10に収容された要救助者の呼吸を確保することができる。
【0048】
残圧計32(
図3参照)は、ボンベ31の残圧を計測する。残圧計32は、ホース(高圧ホース)を介して、ボンベ31のファーストステージ部31Aに連結されている。
【0049】
収容体10は、残圧計保持部42Aを有する(
図2及び
図3参照)。残圧計保持部42Aは、収容体10の内部で残圧計32を保持する部位である。ここでは、残圧計保持部42Aは、袋状(ポケット状)に構成されている。残圧計保持部42Aは、収容体10の蓋部12の内側に設けられている。収容体10が残圧計保持部42Aを有することによって、要救助者の搬送時に残圧計32の位置を安定させることができる。
また、収容体10は、残圧計固定部42Bを有する。残圧計固定部42Bは、残圧計保持部42Aに保持された状態で残圧計32を固定する部位である。残圧計固定部42Bは、収容体10の蓋部12の内側に設けられている。ここでは、残圧計固定部42Bは面ファスナーで構成されており、残圧計32から延び出るホース(高圧ホース)を面ファスナーで固定することによって、残圧計32を残圧計保持部42Aに固定する。収容体10が残圧計固定部42Bを有することによって、要救助者の搬送時に残圧計32の位置を安定させることができる。なお、残圧計固定部42Bは、残圧計32から延び出るホースを固定する代わりに、残圧計32を直接的に残圧計保持部42Aに固定しても良い。また、残圧計固定部42Bが収容体10に設けられていなくても良い。
【0050】
収容体10は、残圧計32を確認するための窓(残圧確認窓42C)を有する(
図1B、
図4A及び
図4B参照)。残圧確認窓42Cは、透明な部材で構成されている。収容体10が残圧確認窓42Cを有することによって、救助者は、残圧確認窓42Cを介して、収容体10の内部に配置されている残圧計32を確認できる。残圧確認窓42Cは、収容体10の蓋部12に設けられており、残圧計保持部42Aが設けられた部位に設けられている。言い換えると、残圧確認窓42Cの裏側(収容体10の内側)に残圧計保持部42Aが設けられている。これにより、残圧計32が残圧確認窓42Cから外れることを抑制できるため、要救助者の搬送時に残圧計32の確認を安定して行うことができる。
【0051】
レギュレータ33(
図3参照)は、空気の圧力を調整する。レギュレータ33は、セカンドステージと呼ばれることもある。レギュレータ33は、ホース(中圧ホース)を介して、ボンベ31のファーストステージ部31Aに連結されている。
【0052】
レギュレータ33は、ボンベ31から空気を所定流量で供給するように構成されている。ここでは、レギュレータ33は、毎分10L(リットル)の空気を供給するように構成されている。但し、レギュレータ33から供給される空気の流量は、毎分10Lに限られるものではない。レギュレータ33は、要救助者がいる水深の圧力(環境圧)と同じ圧力で、所定流量の空気を供給するように構成されている(このため、水深が深くなるほど、ボンベ31の空気の消費量は多くなる)。レギュレータ33から所定流量で空気が供給されることによって、要救助者が面体を装着できない状況下でも、要救助者の呼吸を確保し易くなる。
【0053】
収容体10は、レギュレータ保持部43Aを有する(
図2及び
図3参照)。レギュレータ保持部43Aは、収容体10の内部でレギュレータ33を保持する部位である。レギュレータ保持部43Aは、収容体10の蓋部12の内側に設けられている。ここでは、レギュレータ保持部43Aは、袋状(ポケット状)に構成されている。収容体10がレギュレータ保持部43Aを有することによって、要救助者の搬送時にレギュレータ33の位置を安定させることができる。
また、収容体10は、レギュレータ固定部43Bを有する。レギュレータ固定部43Bは、レギュレータ保持部43Aに保持された状態でレギュレータ33を固定する部位である。レギュレータ固定部43Bは、収容体10の蓋部12の内側に設けられている。ここでは、レギュレータ固定部43Bは面ファスナーで構成されており、レギュレータ33から延び出たシャットオフバルブ34(後述)を面ファスナーで固定することによって、レギュレータ33をレギュレータ保持部43Aに固定する。収容体10がレギュレータ固定部43Bを有することによって、要救助者の搬送時にレギュレータ33の位置を安定させることができる。なお、レギュレータ固定部43Bは、シャットオフバルブ34(後述)を固定する代わりに、レギュレータ33から延び出たホース(中圧ホース)を固定することによってレギュレータ33をレギュレータ保持部43Aに固定しても良いし、レギュレータ33を直接的にレギュレータ保持部43Aに固定しても良い。また、レギュレータ固定部43Bが収容体10に設けられていなくても良い。
【0054】
収容体10は、レギュレータ33を確認するための窓(レギュレータ確認窓43C)を有する(
図1B、
図4A及び
図4B参照)。レギュレータ確認窓43Cは、透明な部材で構成されている。収容体10がレギュレータ確認窓43Cを有することによって、救助者は、レギュレータ確認窓43Cでレギュレータ33を確認しながら、収容体10の内部に配置されているレギュレータ33を操作できる(例えば、収容体10の柔軟な防水シート越しにレギュレータ33のパージボタンを操作できる)。レギュレータ確認窓43Cは、収容体10の蓋部12に設けられており、レギュレータ保持部43Aが設けられた部位に設けられている。言い換えると、レギュレータ確認窓43Cの裏側(収容体10の内側)にレギュレータ保持部43Aが設けられている。これにより、要救助者がレギュレータ33を操作するときに、レギュレータ33がレギュレータ確認窓43Cから外れることを抑制できる。
【0055】
図3に示すように、レギュレータ33とホース(中圧ホース)との間に、シャットオフバルブ34が設けられている。シャットオフバルブ34は、空気の流路を開閉する部材(制御弁)である。シャットオフバルブ34が設けられることによって、レギュレータ33からの空気の供給と遮断を手動で切り替えることができる。例えば、レギュレータ33からの空気の供給が不要な場合には、シャットオフバルブ34を閉じて流路を遮断することによって、ボンベ31の空気の消費を抑制できる。なお、シャットオフバルブ34が設けられていなくても良い。但し、後述するように、シャットオフバルブ34を設けることによって、救助者の作業が容易になる。
【0056】
マスク35(
図3参照)は、要救助者の口や鼻を覆いつつ、空気を供給するために要救助者に取り付けられる部材である。マスク35は、チューブを介して、レギュレータ33に連結されている。このため、マスク35には、レギュレータ33から所定流量で空気が供給されることになる。マスク35が用いられることによって、要救助者の搬送時に収容体10が水圧を受けても、要救助者の顔面(特に口や鼻の周囲)に空気を供給することができる。また、マスク35にレギュレータ33から所定流量で空気が供給されることによって、要救助者が面体を装着できない状況下でも、要救助者の呼吸を確保し易くなる。
【0057】
図6は、マスク35の説明図である。
マスク35は、マスク本体35Aと、リザーバ35Bと、接続部35Cとを有する。つまり、マスク35は、リザーバ付きマスクである。マスク本体35Aは、要救助者の口や鼻を覆う部材である。マスク本体35Aには、一方向弁が設けられており、マスク本体35A内の空気(要救助者の呼気)を一方向弁から外に排出可能である。リザーバ35Bは、レギュレータ33から供給される空気を貯留する部材(バッグ)である。接続部35Cは、マスク本体35Aとリザーバ35Bとの間に配置された部材であり、流路を構成する管状(分岐管状)の部材である。接続部35Cは、リザーバ35Bに貯留された空気をマスク本体35Aに供給可能である。なお、接続部35Cとマスク本体35Aとの間には一方向弁が設けられていても良い。接続部35Cには、レギュレータ33に連結されたチューブが連結されている。チューブから接続部35Cに供給された空気は、リザーバ35Bに一旦貯留され、要救助者が息を吸うときに、リザーバ35Bの空気が接続部35Cを介してマスク本体35Aの内部に供給されることになる。また、チューブから供給された空気の一部は接続部35Cを介してマスク本体35Aの内部に供給されても良い。リザーバ付きマスクが用いられることによって、要救助者の呼吸を維持し易くなる。特に、レギュレータ33から所定流量で空気が供給される状況下では、要救助者の呼吸を維持するためにリザーバ付きマスクを用いることが有効である。但し、マスク35は、リザーバ付きマスクでなくても良い。また、マスク35が用いられなくても良く、例えば、マスク35の代わりに面体が用いられても良い。
【0058】
収容体10は、インフレータバルブ44(
図1A~
図1C参照)を有する。インフレータバルブ44は、収容体10の外部から内部に空気を供給することが可能なバルブである。インフレータバルブ44は、収容体10への水の流入を防止しつつ、収容体10の外部から内部への一方向のみに空気を供給可能である。非常時に(例えば、ボンベ31の空気の残量が足りない時に)、救助者は、自身の空気タンク又は予備のホンベからインフレータバルブ44を介して収容体10に空気を供給することが可能である。インフレータバルブ44は、収容体10の蓋部12に設けられている。これにより、救助者は、自身の空気タンクからインフレータバルブ44を介して収容体10に空気を供給し易くなる。但し、インフレータバルブ44は、蓋部12に設けられていなくても良い。なお、インフレータバルブ44を介して収容体10に十分な空気を供給することが可能であれば、収容体10にボンベ31を収容しないことも可能である。収容体10は、インフレータバルブ44を備えていなくても良い。但し、収容体10がインフレータバルブ44を備えることによって、より安全に要救助者を水中で搬送することができる。
【0059】
搬送器材1は、更に締付ベルト51(
図1A~
図1D参照)を備える。
締付ベルト51は、収容体10の外周を締め付ける部材(ベルト)である。収容体10は柔軟なシートで構成されており、柔軟な収容体10の外周を締付ベルト51によって締め付けることによって、収容体10の容積を縮小させることができる(
図4B参照)。収容体10の容積を縮小させることによって、収容体10の浮力を低減させることができるため、水中での要救助者の搬送が容易になる。
【0060】
締付ベルト51の端部には、留め具52(
図1C参照)が設けられている。留め具52は、締付ベルト51を環状に留めるための部材である。例えば、留め具52は、バックルで構成されている。留め具52によって締付ベルト51を環状に留めつつ、締付ベルト51の端部を引っ張ることによって、締付ベルト51によって収容体10の外周を締め付けることができる(
図4B参照)。留め具52を外すことによって、環状に留められた締付ベルト51を開放することができ、これにより、収容体10を開くことができる。
図1Cに示すように、留め具52によって締付ベルト51を環状に留めたとき、留め具52は、防水ファスナー13の近傍に配置される。留め具52を防水ファスナー13の近傍に配置することによって、救助者の作業(防水ファスナー13の開閉作業、留め具52の着脱作業、締付ベルト51の端部を引っ張る作業(収容体10を締め付ける作業)など)が容易になる。
【0061】
締付ベルト51は、収容体10に取り付けられている。ここでは、収容体10にベルト挿通部55(
図1B及び
図1D)が設けられており、ベルト挿通部55に締付ベルト51が挿通されることによって、締付ベルト51が収容体10に取り付けられている。ベルト挿通部55は、締付ベルト51を挿通させるためのループ状の部位である。締付ベルト51が収容体10に取り付けられていれば、締付ベルト51が収容体10から分離しないので、便利である。但し、締付ベルト51が収容体10と分離した部材であっても良い。
【0062】
留め具52(バックル;
図1C参照)の大きさは、ベルト挿通部55を挿通できない程度の大きさであることが望ましい。これにより、締付ベルト51がベルト挿通部55から外れることを抑制できる。なお、留め具52の大きさがベルト挿通部55を挿通できる程度の大きさであっても、留め具52の幅が締付ベルト51の幅よりも大きければ、留め具52をベルト挿通部55から外れ難くすることができる。
【0063】
なお、締付ベルト51の留め具52は、バックルで構成されていなくても良い。例えば、締付ベルト51の留め具52として、面ファスナーが採用されても良い。但し、締付ベルト51の留め具52をバックルで構成することによって、要救助者の搬送時に留め具52が外れ難くなる。
【0064】
図1A~
図1Dに示すように、収容体10は、複数本(ここでは3本)の締付ベルト51を有する。但し、締付ベルト51の数は、3以外の複数でも良いし、単数(1本)でも良い。
【0065】
締付ベルト51は、要救助者の頭部よりも足側に配置されている(
図4A及び
図4B参照)。言い換えると、最も頭側に配置された締付ベルト51は、要救助者の頭部よりも足側に配置されている。ここでは、締付ベルト51は、窓63(後述)よりも足側に配置されている。締付ベルト51が要救助者の頭部よりも足側に配置されることによって、収容体10が締付ベルト51によって締め付けられたときにも(締付ベルト51が収容体10の容積を縮小させたときにも)、要救助者の頭部の周辺に空間を確保できる。なお、収容体10の足側の容積を縮小させつつ、収容体10の頭側の容積が大きくなることによって、水中で要救助者の頭部を上にした状態で要救助者を搬送し易くなる。
【0066】
図4A及び
図4Bに示すように、足側に配置されている締付ベルト51は、収容体10越しにボンベ31と要救助者(詳しくは要救助者の足)を締め付け可能である。これにより、要救助者の搬送時にボンベ31と要救助者の姿勢を安定させることができる。特に、要救助者の足の間でボンベ31を固定する場合には、締付ベルト51が収容体10越しにボンベ31と要救助者の足を締め付けることによって、要救助者の搬送時にボンベ31の位置を安定させることができる。
【0067】
また、収容体10は、取っ手61と、ウェイト取付部62と、窓63とを有する。
【0068】
取っ手61(
図1A~
図1D参照)は、収容体10を把持する部位である。取っ手61が収容体10に設けられることによって、要救助者の水中での搬送が容易になる(
図5参照)。取っ手61は、収容体10の頭頂部と足先部にそれぞれ1つずつ設けられている。これにより、水中で要救助者を搬送するときに、要救助者の上下方向の姿勢を調整し易くなる(例えば、水中で要救助者の頭部を上にした状態で要救助者を搬送し易くなる)。また、取っ手61は、収容体10の左右それぞれの側面に2つずつ設けられている。これにより、水中で要救助者を搬送するときに、収容体10の側方から要救助者の上下方向の姿勢を調整し易くなる。
【0069】
取っ手61の色は、収容体10の色とは異なることが望ましい。これにより、救助者が収容体10の把持すべき部位を認識し易くなる。取っ手61の色は、収容体10の色よりも明るい色であることが更に望ましい。例えば、収容体10は黒色で構成されるのに対し、取っ手61は黄色(若しくはオレンジ色)で構成される。なお、収容体10は強度の高い防水シートで構成する必要があるため、収容体10の色の選択肢は狭くなり、この結果、収容体10は、暗い水中で視認し難い色(例えば黒色)になることがある。これに対し、取っ手61は、収容体10と比べて、採用可能な色の選択肢が広いため、収容体10よりも明るい色を採用することが容易である。暗い水中で要救助者の搬送を行うことがあるため、取っ手61が収容体10よりも明るい色で構成されることによって、より安全に要救助者を水中で搬送することができる。
【0070】
前述の締付ベルト51は、収容体10と取っ手61の間に挿通されていることが望ましい(
図1A~
図1D参照)。これにより、締付ベルト51によって締め付けられた部位を把持することができる。締付ベルト51によって締め付けられた部位では収容体10の形状が安定しているため(収容体10を構成するシートがグラグラしないため)、締付ベルト51が収容体10と取っ手61の間に挿通されることによって、要救助者の水中での搬送が容易になる。但し、締付ベルト51が収容体10と取っ手61の間に挿通されていなくても良い。また、収容体10が取っ手61を備えていなくても良い。
【0071】
ウェイト取付部62(
図1A、
図1C及び
図1D参照)は、ウェイト(錘)を取り付ける部位である。ここでは、ウェイト取付部62は、ウェイトを収容可能な袋状(ポケット状)に構成されている。但し、ウェイトを収容体10に取り付けることができれば、ウェイト取付部62は、袋状に構成されていなくても良い。収容体10がウェイト取付部62を備えることにより、収容体10の浮力を調整できる。ウェイト取付部62は、収容体10の外面に設けられている。これにより、救助者は、水中での要救助者の搬送時に(
図5参照)、ウェイトを調整することができる。収容体10は、複数のウェイト取付部62を有する。これにより、それぞれのウェイト取付部62に取り付けるウェイトを調整することによって、収容体10の浮力のバランスを調整できる。ウェイト取付部62は、収容体10に固定されても良いし、例えば面ファスナーなどによって収容体10に着脱可能に構成されても良い。なお、収容体10がウェイト取付部62を備えていなくても良い。
【0072】
窓63(
図1B参照)は、要救助者の顔面を確認するための透明な部位である。
図4A及び
図4Bに示すように、窓63は、収容体10に収容された要救助者の顔面に対向する部位に設けられている。救助者は、窓63越しに要救助者の様子を確認することができる。なお、要救助者も窓63越しに救助者や外部の様子を見ることができるため、収容体10が窓63を備えることによって、要救助者に安心感を与えることができる。なお、収容体10は、窓63を備えていなくても良い。但し、収容体10が窓63を備えることによって、より安全に要救助者を水中で搬送することができる。
【0073】
搬送器材1は、頭部保護具70(
図2及び
図3参照)を備えていても良い。収容体10は頭部保護具70を収容可能に構成されている。頭部保護具70は、要救助者の頭部を保護する部材である。頭部保護具70は、ヘッドイモビライザーとも呼ばれる部材である。頭部保護具70は、収容体10に着脱可能である。収容体10の内部の底面に面ファスナーが設けられており、収容体10の内部の底面に頭部保護具70を固定することができる。収容体10に頭部保護具70を固定することによって、要救助者の姿勢を安定させることができる。なお、収容体10が頭部保護具70を備えていなくても良い。但し、収容体10が頭部保護具70を備えることによって、より安全に要救助者を水中で搬送することができる。
【0074】
頭部保護具70は、ベース部71と、一対のサポート部72とを有する。ベース部71は、板状の部材である。ベース部71は、ベースパッド又はベースプレートと呼ばれることもある。ベース部71は、要救助者の頭部や胸部を固定するためのタイベルト71Aを有する。サポート部72は、要救助者の側頭部を支持する部材である。要救助者の頭部を一対のサポート部72で挟み込むことによって、要救助者の頭部を支持することができる。要救助者の耳を確認するための耳穴がサポート部72に設けられていても良い。サポート部72は、ベース部71に着脱可能である。ベース部71の表面とサポート部72の底面に面ファスナーが設けられており、要救助者の頭部に適合させてサポート部72をベース部71に固定することができる。なお、サポート部72を用いずに、ベース部71のみを頭部保護具70として用いることも可能である。
【0075】
上記の通り、本実施形態に係る搬送器材1は、収容体10と、抜気弁21(21A,21B)を備えている。これにより、収容体10に水圧がかかるときに収容体10の内部の空気が抜気弁21から排出されるため、収容体10の容積を縮小させて収容体10の浮力を低減させることができ、水中での要救助者の搬送が容易になる。また、次述するように、搬送器材1を用いて生存者(要救助者)を救助する際に、収容体10に収容された要救助者の呼吸を確保しつつ、浮力となる余分な空気を排気弁21から排出しながら搬送器材1を水中へ引き込むことが可能となる。
【0076】
<搬送方法>
次に、搬送器材1を用いた搬送方法(搬送器材1の使用方法)について説明する。ここでは、転覆船に閉じ込められた生存者(要救助者)を救助する場合について説明する。
【0077】
まず、救助者は、搬送器材1を準備する。このとき、収容体10の内部に、呼吸装置30(ボンベ31、残圧計32、レギュレータ33及びマスク35)が予め収容されていることが望ましい。これにより、収容体10と呼吸装置30とを別々に携える場合と比べて、救助者が要救助者の元に移動し易くなる。また、このとき、ボンベ31はボンベ固定部41に固定され、残圧計32は残圧計保持部42Aに保持された状態で残圧計固定部42Bによって固定され、レギュレータ33はレギュレータ保持部43Aに保持された状態でレギュレータ固定部43Bによって固定されていることが更に望ましい。これにより、救助者が転覆船の内部で要救助者を収容する作業が容易になる。また、必要に応じて、収容体10の内部に、頭部保護具70などが収容されていても良い。また、要救助者の保温のための毛布などの部材を収容体10に収容しても良い。
なお、この段階において、ボンベ31のファーストステージ部31Aにおいて予めボンベ31を開状態にしつつ、シャットオフバルブを閉状態にしておくことが望ましい。この点については、後述する。
【0078】
次に、救助者は、搬送器材1を携えて、転覆船の内部の要救助者の元に向かうことになる。救助者が搬送器材1を携えて水中を移動する際に、締付ベルト51によって収容体10を締め付けておくことが望ましい。これにより、収容体10の容積を縮小させることができるため、救助者が搬送器材1を携えて水中を移動し易くなる。
【0079】
救助者は、転覆船の内部の要救助者の元に到達した後、空気の残存している転覆船の内部で収容体10を展開し、収容体10の本体部11に要救助者を収容する。救助者は、できる限り水平な面に収容体10を載置するとともに、開いた収容体10の内部に要救助者を仰向けに寝かした状態で、要救助者を収容体10の本体部11に収容する。このとき、救助者は、収容体10の頭頂側に要救助者をできるだけ寄せるように要救助者を収容体10に配置することが望ましい。これにより、搬送時の収容体10の容積を縮小させ易くなる。また、このとき、救助者は、ボンベ31が要救助者の足の間に配置されるように、要救助者にボンベ31を跨がせた状態で要救助者を収容体10に収容する。また、救助者は、必要に応じて、頭部保護具70を用いて要救助者の頭部を保護したり、毛布で要救助者を包んだりしても良い。なお、救助者は、要救助者の足とボンベ31の間に毛布を挟み込ませても良い。
【0080】
また、救助者は、要救助者にマスク35を取り付ける。このとき、救助者は、シャットオフバルブを操作してシャットオフバルブ34を開放し、ボンベ31からの空気の供給を開始する。ボンベ31からの空気の供給が開始されると、レギュレータ33から所定流量(ここでは毎分10L)の空気が要救助者のマスク35に供給される。なお、前述の搬送器材1を準備する段階で、予めボンベ31を開状態にしつつシャットオフバルブを閉状態にしておくことによって、ボンベ31からの空気の供給を速やかに開始できる。
【0081】
救助者は、収容体10の本体部11に要救助者を収容した後、蓋部12を閉じて、防水ファスナー13を閉じる。これにより、収容体10の内部に要救助者が収容される。救助者は、収容体10の内部に要救助者を収容した後、締付ベルト51の留め具52を留めるとともに、締付ベルト51の端部を引っ張ることによって、締付ベルト51によって収容体10の外周を締め付ける。これにより、収容体10の容積を縮小させることができる。なお、留め具52(バックル)が、防水ファスナー13の近傍に配置されているため、救助者は、防水ファスナー13を閉じる作業や、留め具52を留める作業や、締付ベルト51の端部を引っ張る作業(収容体10を締め付ける作業)を速やかに行うことができる。
【0082】
次に、救助者は、要救助者を収容した搬送器材1を水中に引き込む。このとき、収容体10に水圧がかかり、収容体10の内部の空気が抜気弁21(21A,21B)を介して排出される。これにより、収容体10の容積を縮小させて収容体10の浮力を低減させることができ、水中での要救助者の搬送が容易になる。このように、搬送器材1を用いて生存者(要救助者)を救助する際に、収容体に収容された要救助者の呼吸を確保しつつ、浮力となる余分な空気を排気弁から排出しながら搬送器材1を水中へ引き込むことが可能となる。救助者は、要救助者の足側から徐々に搬送器材1を水中に引き込むことが望ましい。これにより、収容体10の足側に先に水圧がかかるため、収容体10の足側の容積を先に縮小させることができ、水中で要救助者の頭部を上にした状態で要救助者を搬送し易くなる。
【0083】
救助者は、要救助者を収容した搬送器材1を水中に引き込んだ後、要救助者を水中搬送して、転覆船から脱出する。水中で要救助者を搬送するとき、収容体10の内部において、レギュレータ33からマスク35に所定流量で空気が供給されるため、要救助者は、呼吸を確保することができる。また、所定流量の空気が収容体10の内部に供給され続けても、収容体10の内部の空気は抜気弁21から排出されるため、収容体10の浮力を抑制できる。また、救助者は、収容体10の姿勢を調整することによって、抜気弁21からの空気の排出を調整することができ、収容体10の浮力を調節したり、収容体10の浮力のバランスを調整したりすることができる。取っ手61が収容体10に設けられているため、救助者は、水中で要救助者を搬送するときに、取っ手61を把持しながら、収容体10の上下方向の姿勢を調整することによって、抜気弁21からの空気の排出を調整することができる。なお、救助者は、抜気弁21のロックボタンの操作や、ウェイト取付部62のウェイトの調整によって、収容体10の浮力を調節したり、収容体10の浮力のバランスを調整したりすることもできる。
【0084】
救助者は、水中で要救助者を搬送するときに、窓63越しに要救助者の様子を確認することができる。また、救助者は、水中で要救助者を搬送するときに、残圧確認窓42Cから残圧計32を確認できる。また、救助者は、水中で要救助者を搬送するときに、レギュレータ確認窓43Cでレギュレータ33を確認しながら、収容体10の柔軟な防水シート越しに、収容体10の内部に配置されているレギュレータ33のパージボタンを操作できる。また、非常時に(例えば、ボンベ31の空気の残量が足りない時に)、救助者は、自身の空気タンク又は予備のホンベからインフレータバルブ44を介して収容体10に空気を供給することが可能である。
【0085】
水中から搬送器材1を引き上げた後、収容体10を展開し、要救助者を収容体10から引き上げることになる。なお、水中から搬送器材1を引き上げた後、要救助者が収容された状態で、収容体10ごと要救助者をストレッチャーに搭載しても良い。
【0086】
上記の説明では、転覆船に閉じ込められた要救助者を救助する場合について説明したが、搬送器材1の利用方法は、これに限られるものではない。例えば、沈没船から要救助者を救助する場合や、潜水が必要な洞窟から要救助者を救助する場合などにおいても、上記の搬送器材1を用いて水中で要救助者を搬送することも可能である。
【0087】
===その他===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0088】
1 搬送器材、10 収容体、
11 本体部、12 蓋部、13 防水ファスナー、
21 抜気弁、21A 頭頂側の抜気弁、21B 足先側の抜気弁、
30 呼吸装置、31 ボンベ、31A ファーストステージ部、
32 残圧計、33 レギュレータ、
34 シャットオフバルブ、35 マスク、
35A マスク本体、35B リザーバ、35C 接続部、
41 ボンベ固定部、42A 残圧計保持部、
42B 残圧計固定部、42C 残圧確認窓、
43A レギュレータ保持部、43B レギュレータ固定部、
43C レギュレータ確認窓、44 インフレータバルブ、
51 締付ベルト、52 留め具、55 ベルト挿通部、
61 取っ手、62 ウェイト取付部、63 窓、
70 頭部保護具、71 ベース部、
71A タイベルト、72 サポート部
【手続補正書】
【提出日】2022-12-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
要救助者を収容する柔軟な収容体と、
前記収容体の内部の空気を排出可能な抜気弁と
を備え、
前記収容体にかかる水圧によって前記収容体の内部の空気を前記抜気弁から排出させて前記収容体の容積を縮小させることによって、前記要救助者を収容した前記収容体を水中に引き込むことを可能とする、
ことを特徴とする前記要救助者の水中搬送用の搬送器材。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送器材であって、
前記抜気弁は、前記要救助者の頭頂側に配置されている、
ことを特徴とする搬送器材。
【請求項3】
請求項2に記載の搬送器材であって、
2つの前記抜気弁が、前記収容体の左右方向に離れて配置されている、
ことを特徴とする搬送器材。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の搬送器材であって、
前記要救助者の足先側に別の抜気弁が配置されている、
ことを特徴とする搬送器材。
【請求項5】
請求項1に記載の搬送器材であって、
前記収容体は、前記要救助者に空気を供給するボンベを収容可能である、
ことを特徴とする搬送器材。
【請求項6】
請求項1又は5に記載の搬送器材であって、
前記収容体は、ボンベを固定するボンベ固定部を有する、
ことを特徴とする搬送器材。
【請求項7】
要救助者を収容する収容体と、
前記収容体に水圧がかかるときに前記収容体の内部の空気を排出可能な抜気弁と
を備え、
前記収容体は、前記要救助者の足の間でボンベを固定可能なボンベ固定部を有する、
ことを特徴とする搬送器材。
【請求項8】
請求項7に記載の搬送器材であって、
前記ボンベ固定部は、前記ボンベのファーストステージ部を足先側に向けた状態で前記ボンベを固定可能である、
ことを特徴とする搬送器材。
【請求項9】
請求項1又は5に記載の搬送器材であって、
前記収容体は、ボンベの残圧を計測する残圧計を確認するための窓を有する、
ことを特徴とする搬送器材。
【請求項10】
請求項1又は5に記載の搬送器材であって、
ボンベから空気を所定流量で供給するレギュレータを更に有する、
ことを特徴とする搬送器材。
【請求項11】
請求項10に記載の搬送器材であって、
前記収容体は、前記レギュレータを確認するための窓を有する、
ことを特徴とする搬送器材。
【請求項12】
請求項10に記載の搬送器材であって、
前記レギュレータに連結され、前記要救助者に取り付けるマスクを更に有する、
ことを特徴とする搬送器材。
【請求項13】
請求項1に記載の搬送器材であって、
前記収容体は、前記収容体の外部から内部に空気を供給するためのバルブを有する、
ことを特徴とする搬送器材。
【請求項14】
請求項1に記載の搬送器材であって、
柔軟な前記収容体の外周を締め付けるベルトを更に有する、
ことを特徴とする搬送器材。
【請求項15】
請求項14に記載の搬送器材であって、
前記ベルトは、前記要救助者の頭部よりも足側に配置されている、
ことを特徴とする搬送器材。
【請求項16】
請求項1に記載の搬送器材であって、
前記収容体を把持するための取っ手を更に有する、
ことを特徴とする搬送器材。
【請求項17】
要救助者を収容する収容体と、
前記収容体に水圧がかかるときに前記収容体の内部の空気を排出可能な抜気弁と
を備え、
前記収容体は、ウェイトを取り付けるためのウェイト取付部を有する、
ことを特徴とする搬送器材。
【請求項18】
請求項1に記載の搬送器材であって、
前記収容体は、前記要救助者の顔面を確認するための窓を有する、
ことを特徴とする搬送器材。