(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039500
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/70 20060101AFI20240314BHJP
A47C 7/14 20060101ALI20240314BHJP
A47C 7/30 20060101ALI20240314BHJP
A47C 7/35 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
B60N2/70
A47C7/14 B
A47C7/30
A47C7/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144099
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市村 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】勝部 健一
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084BA00
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】駆動モータ等のアクチュエータを用いることなく安定した着座感を得る。
【解決手段】車両用シート12は、押上装置10を備えている。押上装置10は、第2のシートスプリング20S2に設けられた第1押上部30と、第1のシートスプリング20S1及び第2のシートスプリング20S2に取付けられた第2押上部32と、第2押上部32に傾動可能に支持された第3押上部34と、を備えている。第1のシートスプリング20S1がシート下方側へ撓み変形して第2押上部32が変位した際に、第3押上部34が第1押上部30に接触した状態で第2押上部32に対して傾動してクッションパッド16のシート幅方向の外側部分16Aをシート上方側へ向けて押し上げる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッションフレームと、前記クッションフレームに取付けられたクッションパッドと、を有し、着座乗員の臀部をシート下方側から支持するシートクッションと、
前記クッションパッドのシート下方側において前記クッションフレームにシート前後方向に掛け渡され、シート下方側への荷重が入力されることで撓み変形する第1のシートスプリングと、
前記クッションパッドのシート下方側かつ前記第1のシートスプリングに対してシート幅方向外側において前記クッションフレームにシート前後方向に掛け渡され、シート下方側への荷重が入力されることで撓み変形する第2のシートスプリングと、
前記第2のシートスプリングに設けられた第1押上部と、前記第1のシートスプリング及び前記第2のシートスプリングに取付けられた第2押上部と、前記第2押上部に傾動可能に支持された第3押上部と、を有し、前記第1のシートスプリングがシート下方側へ撓み変形して前記第2押上部が変位した際に、前記第3押上部が前記第1押上部に接触した状態で前記第2押上部に対して傾動して前記クッションパッドのシート幅方向の外側部分をシート上方側へ向けて押し上げる押上装置と、
を備えた車両用シート。
【請求項2】
前記第2のシートスプリングの一部が前記第1押上部となっている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記第2のシートスプリングとは別の部材の前記第1押上部が、前記第2のシートスプリングに固定されている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項4】
クッションフレームと、前記クッションフレームに取付けられたクッションパッドと、を有し、着座乗員の臀部をシート下方側から支持するシートクッションと、
前記クッションパッドのシート下方側において前記クッションフレームにシート前後方向に掛け渡され、シート下方側への荷重が入力されることで撓み変形する第1のシートスプリングと、
前記クッションパッドのシート下方側かつ前記第1のシートスプリングに対してシート幅方向外側において前記クッションフレームにシート前後方向に掛け渡され、シート下方側への荷重が入力されることで撓み変形する第2のシートスプリングと、
前記第2のシートスプリングに傾動可能に支持された傾動支持部と、前記傾動支持部からシート幅方向外側へ延出する外側延出部と、前記傾動支持部から前記第1のシートスプリング側へ向けて延出する内側延出部と、を有し、前記第1のシートスプリングがシート下方側へ撓み変形して前記内側延出部がシート下方側へ向けて変位した際に、前記外側延出部が前記クッションパッドのシート幅方向の外側部分をシート上方側へ向けて押し上げる押上装置と、
を備えた車両用シート。
【請求項5】
前記内側延出部の一部が前記第1のシートスプリングに係止されている請求項4に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記内側延出部の一部が前記第1のシートスプリングの下方側に配置されている請求項4に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、安定した着座感を得ることができる車両用シートが開示されている。この文献に記載された車両用シートでは、ステアリングの舵角及び操舵方向が検出されると、その舵角及び操舵方向に応じて駆動モータが駆動される。これにより、シートクッションのアッパフレームが左方向又は右方向に傾動され、車両用シートが遠心力と反対方向に傾斜する。これにより、車両のコーナリング時において安定した着座感を得ることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された車両用シートでは、安定した着座感を得るためには駆動モータ等のアクチュエータが必要になり、車両用シートの低コスト化が妨げられる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、駆動モータ等のアクチュエータを用いることなく安定した着座感を得ることができる車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様の車両用シートは、クッションフレームと、前記クッションフレームに取付けられたクッションパッドと、を有し、着座乗員の臀部をシート下方側から支持するシートクッションと、前記クッションパッドのシート下方側において前記クッションフレームにシート前後方向に掛け渡され、シート下方側への荷重が入力されることで撓み変形する第1のシートスプリングと、前記クッションパッドのシート下方側かつ前記第1のシートスプリングに対してシート幅方向外側において前記クッションフレームにシート前後方向に掛け渡され、シート下方側への荷重が入力されることで撓み変形する第2のシートスプリングと、前記第2のシートスプリングに設けられた第1押上部と、前記第1のシートスプリング及び前記第2のシートスプリングに取付けられた第2押上部と、前記第2押上部に傾動可能に支持された第3押上部と、を有し、前記第1のシートスプリングがシート下方側へ撓み変形して前記第2押上部が変位した際に、前記第3押上部が前記第1押上部に接触した状態で前記第2押上部に対して傾動して前記クッションパッドのシート幅方向の外側部分をシート上方側へ向けて押し上げる押上装置と、を備えている。
【0007】
第1の態様の車両用シートによれば、シートクッションに着座した乗員の臀部からクッションパッドに入力されるシート下方側への荷重が高まることで、押上装置が作動する。詳述すると、シートクッションに着座した乗員の臀部からクッションパッドに入力されるシート下方側への荷重が高まることにより、第1のシートスプリングがシート下方側へ撓み変形して第2押上部が変位すると、第3押上部が第1押上部に接触した状態で第2押上部に対して傾動する。これにより、第3押上部がクッションパッドのシート幅方向の外側部分をシート上方側へ向けて押し上げる。その結果、着座乗員の臀部を第3押上部に押し上げられたクッションパッドのシート幅方向の外側部分によって支持することができる。このように、第1の態様の車両用シートでは、駆動モータ等のアクチュエータを用いることなく安定した着座感を得ることができる。
【0008】
第2の態様の車両用シートは、第1の態様の車両用シートにおいて、前記第2のシートスプリングの一部が前記第1押上部となっている。
【0009】
第2の態様の車両用シートによれば、第2のシートスプリングの一部が第1押上部となっている。これにより、第1押上部が第2のシートスプリングとは別の部材となっている構成と比べて、車両用シートを構成する部品の点数を削減することができる。
【0010】
第3の態様の車両用シートは、第1の態様の車両用シートにおいて、前記第2のシートスプリングとは別の部材の前記第1押上部が、前記第2のシートスプリングに固定されている。
【0011】
第3の態様の車両用シートによれば、第1押上部が第2のシートスプリングとは別の部材となっている。これにより、第2のシートスプリングの一部が第1押上部となっている構成と比べて、第1押上部の形状のバリエーションを増やすことができる。
【0012】
第4の態様の車両用シートは、クッションフレームと、前記クッションフレームに取付けられたクッションパッドと、を有し、着座乗員の臀部をシート下方側から支持するシートクッションと、前記クッションパッドのシート下方側において前記クッションフレームにシート前後方向に掛け渡され、シート下方側への荷重が入力されることで撓み変形する第1のシートスプリングと、前記クッションパッドのシート下方側かつ前記第1のシートスプリングに対してシート幅方向外側において前記クッションフレームにシート前後方向に掛け渡され、シート下方側への荷重が入力されることで撓み変形する第2のシートスプリングと、前記第2のシートスプリングに傾動可能に支持された傾動支持部と、前記傾動支持部からシート幅方向外側へ延出する外側延出部と、前記傾動支持部から前記第1のシートスプリング側へ向けて延出する内側延出部と、を有し、前記第1のシートスプリングがシート下方側へ撓み変形して前記内側延出部がシート下方側へ向けて変位した際に、前記外側延出部が前記クッションパッドのシート幅方向の外側部分をシート上方側へ向けて押し上げる押上装置と、を備えている。
【0013】
第4の態様の車両用シートによれば、シートクッションに着座した乗員の臀部からクッションパッドに入力されるシート下方側への荷重が高まることで、押上装置が作動する。詳述すると、シートクッションに着座した乗員の臀部からクッションパッドに入力されるシート下方側への荷重が高まることにより、第1のシートスプリングがシート下方側へ撓み変形して内側延出部がシート下方側へ向けて変位すると、外側延出部がクッションパッドのシート幅方向の外側部分をシート上方側へ向けて押し上げる。その結果、着座乗員の臀部を外側延出部に押し上げられたクッションパッドのシート幅方向の外側部分によって支持することができる。このように、第4の態様の車両用シートでは、駆動モータ等のアクチュエータを用いることなく安定した着座感を得ることができる。
【0014】
第5の態様の車両用シートは、第4の態様の車両用シートにおいて、前記内側延出部の一部が前記第1のシートスプリングに係止されている。
【0015】
第5の態様の車両用シートによれば、内側延出部の一部が第1のシートスプリングに係止されている。これにより、第1のシートスプリングと第2シートスプリングとを押上装置によって連結することができる。
【0016】
第6の態様の車両用シートは、第4の態様の車両用シートにおいて、前記内側延出部の一部が前記第1のシートスプリングの下方側に配置されている。
【0017】
第6の態様の車両用シートによれば、内側延出部の一部が第1のシートスプリングの下方側に配置されている。この構成では、第1のシートスプリングがシート下方側へ撓み変形した際に、内側延出部の一部を第1のシートスプリングによってシート下方側へ押圧することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る車両用シートは、駆動モータ等のアクチュエータを用いることなく安定した着座感を得ることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態の押上装置を備えた車両用シートのシートクッションを左斜め前方側から見た斜視図である。
【
図2】第1実施形態の押上装置等を示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態の押上装置の組立工程を説明するための斜視図である。
【
図4】第1実施形態の押上装置を示す斜視図である。
【
図5】
図2に示された5-5線に沿って切断した押上装置等を示す断面図であり、乗員がシートクッションに着座する前の状態を示している。
【
図6】
図2に示された5-5線に沿って切断した押上装置等を示す断面図であり、乗員がシートクッションに着座している状態を示している。
【
図7】第2実施形態の押上装置等を示す斜視図である。
【
図8】第2実施形態の押上装置の組立工程を説明するための斜視図である。
【
図9】第3実施形態の押上装置等を示す斜視図である。
【
図10】第3実施形態の押上装置の組立工程を説明するための斜視図である。
【
図11】第4実施形態の押上装置等を示す斜視図である。
【
図12】第4実施形態の押上装置の組立工程を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1~
図6を用いて、本発明の第1実施形態に係る押上装置10を備えた車両用シート12について説明する。なお、図中に示す矢印FR、矢印UP、矢印RH及び矢印LHは、車両用シート12に着座した乗員から見たシート前方側、上方側、右側及び左側をそれぞれ示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、シート前後方向の前後、シート上下方向の上下、シート左右方向の左右を示すものとする。また、シート幅方向は、シート左右方向と一致している。
【0021】
図1には、第1実施形態の押上装置10を備えた車両用シート12のシートクッション14を左斜め前方側から見た斜視図が示されている。なお、
図1においては、クッションパッド16(
図5参照)の図示を省略している。
【0022】
シートクッション14は、当該シートクッション14の骨格を構成するクッションフレーム18と、クッションフレーム18に取付けられたシートスプリング20と、シートスプリング20の上方側に配置されていると共にクッションフレーム18に取付けられたクッションパッド16(
図5参照)と、を備えている。
【0023】
クッションフレーム18は、左右方向に間隔をあけて配置され前後方向に延びる左右一対のサイドフレーム部22と、左右一対のサイドフレーム部22の前端側を左右方向につなぐ前フレーム部24と、左右一対のサイドフレーム部22の後端側を左右方向につなぐ後フレーム部26と、を備えている。前フレーム部24は、一例として鋼鈑材にプレス加工等が施されることにより形成されている。後フレーム部26は、一例として左右方向を軸方向とする筒状に形成されている。
【0024】
図2及び
図3に示されるように、シートスプリング20は、棒状の鋼材が折り曲げられること等により形成されている。ここで、本実施形態では、4本のシートスプリング20が左右方向に並んで設けられている。4本のシートスプリング20の後方側の端部は、後係止部20Aとなっている。後係止部20Aは、下方側が開放されたU字状に湾曲された形状になっている。この後係止部20Aは、クッションフレーム18の後フレーム部26(
図1参照)に係止される。また、4本のシートスプリング20の前方側の端部は、前係止部20Bとなっている。この前係止部20Bは、クッションフレーム18の前フレーム部24(
図1参照)に係止されるようになっている。そして、
図1に示されるように、4本のシートスプリング20は、クッションフレーム18の前フレーム部24と後フレーム部26との間に掛け渡される。
【0025】
図2及び
図3に示されるように、シートスプリング20において前係止部20Bと後係止部20Aとの間の部分は、撓み部20Cとなっている。この撓み部20Cは、前係止部20B側から後係止部20A側にかけて左右方向に繰り返し屈曲している形状となっている。乗員のシートクッション14への着座等に伴う下方側への荷重が、シートクッションパッド16(
図5参照)を介して4本のシートスプリング20に入力されると、当該4本のシートスプリング20の撓み部20Cが下方側へ撓み変形するようになっている。なお、以下の説明においては、4本のシートスプリング20のうち左右方向の中央部に配置された2本のシートスプリング20をそれぞれ第1のシートスプリング20S1と呼ぶ場合がある。また、2本の第1のシートスプリング20S1に対してシート幅方向外側(右側又は左側)に配置された2本のシートスプリング20をそれぞれ第2のシートスプリング20S2と呼ぶ場合がある。
【0026】
図1及び
図2に示されるように、シートクッション14には、押上装置10が設けられている。この押上装置10は、6つの押上板構成体28によって構成されている。本実施形態では、右側の第1のシートスプリング20S1及び第2のシートスプリング20S2に沿って3つの押上板構成体28が設けられており、これら3つの押上板構成体28は前後方向に間隔をあけて配置されている。また、左側の第1のシートスプリング20S1及び第2のシートスプリング20S2に沿って3つの押上板構成体28が設けられており、これら3つの押上板構成体28は前後方向に間隔をあけて配置されている。なお、これら6つの押上板構成体28の構成は互いに同一の構成となっている。そのため、以下においては1つの押上板構成体28の構成について説明し、他の5つの押上板構成体28の構成の説明は省略する。また、押上板構成体28の数や配置は、シートクッション14の形状や寸法等を考慮して適宜設定すればよい。
【0027】
図3及び
図4に示されるように、押上板構成体28は、第1押上部30、第2押上部32及び第3押上部34を含んで構成されている。
【0028】
図3に示されるように、第1押上部30は、一例として定められた形状に切断された鋼鈑材に曲げ加工等が施されることにより形成されている。この第1押上部30は、第2のシートスプリング20S2に溶接やカシメ等により固定されるスプリング固定部30Aと、スプリング固定部30Aから第1のシートスプリング20S1側へ向けて延びると共に上方側から見て矩形状に形成された接触板部30Bと、を備えている。
【0029】
図3及び
図4に示されるように、第2押上部32は、一例として鋼鈑材や樹脂材料を用いて形成されている。この第2押上部32は、第1のシートスプリング20S1に上方側から係止される内側係止部32Aと、第2のシートスプリング20S2に上方側から係止される外側係止部32Bと、内側係止部32Aと外側係止部32Bとをシート幅方向に接続する接続板部32Cと、を備えている。接続板部32Cのシート幅方向の中央部には、後述する第3押上部34が支持される前後一対の第3押上部支持部32Dが設けられている。また、接続板部32Cのシート幅方向外側の一部分には、前述の第1押上部30の接触板部30Bと対応する形状に切り欠かれた凹部32Eが形成されている。
【0030】
第3押上部34は、一例として鋼材や樹脂材料を用いて形成されており、前後方向を軸方向とする円柱状に形成された軸部34Aと、軸部34Aの軸方向の中央部から当該軸部34Aの径方向外側へ向けて延出する矩形板状の押上板部34Bと、を備えている。軸部34Aの両端部は、第2押上部32の前後一対の第3押上部支持部32D内に配置される。これにより、第3押上部34が第2押上部32に傾動可能に支持される。ここで、軸部34Aの両端部と第2押上部32の前後一対の第3押上部支持部32Dとの接触状態を調節可能とすることにより、両者がトルクヒンジとして機能するようにしてもよい。また、軸部34Aと第2押上部32の第3押上部支持部32Dとの間に、第3押上部34を第2押上部32の外側係止部32B側に回転付勢するリターンスプリングを設けてもよい。
【0031】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0032】
図5には、車両の乗員がシートクッション14に着座していない状態の押上装置10等の断面が示されている。車両の乗員がシートクッション14に着座していない状態では、第1押上部30の接触板部30Bが、第2押上部32に形成された凹部32E内に配置された状態で第3押上部34の押上板部34Bと上下方向に対向して配置されている。
【0033】
図6に示されるように、車両の乗員がシートクッション14に着座すると、下方側への荷重Fが、シートクッションパッド16を介して4本のシートスプリング20に入力される。これにより、4本のシートスプリング20の撓み部20Cが下方側へ撓む。ここで、車両の乗員は、シートクッション14におけるシート幅方向の中央部に着座する。そのため、第1のシートスプリング20S1の撓み部20Cの下方側への撓み量が、第2のシートスプリング20S2の撓み部20Cの下方側への撓み量よりも多くなる。その結果、第1のシートスプリング20S1の撓み部20Cと第2のシートスプリング20S2の撓み部20Cとの間に高さの差Hが生じる。
【0034】
第1のシートスプリング20S1の撓み部20Cが第2のシートスプリング20S2の撓み部20Cに対して下方側へ変位すると、第2押上部32が傾倒するように変位して、第1押上部30の接触板部30Bと第3押上部34の押上板部34Bとが接触する。また、第1のシートスプリング20S1の撓み部20Cが第2のシートスプリング20S2の撓み部20Cに対して下方側へさらに変位すると、第3押上部34の押上板部34Bが、第1押上部30の接触板部30Bに接触した状態で、第2押上部32に対して車幅方向内側へ傾動する。これにより、第3押上部34の押上板部34Bがクッションパッド16のシート幅方向の外側部分16Aを上方側へ向けて押し上げる。その結果、着座乗員の臀部を第3押上部34の押上板部34Bに押し上げられたクッションパッド16のシート幅方向の外側部分16Aによって支持することができる。このように、本実施形態の車両用シート12では、駆動モータ等のアクチュエータを用いることなく安定した着座感を得ることができる。
【0035】
また、車両の乗員がシートクッション14に着座した状態で、車両が右左折等をすると、乗員には遠心力が作用する。この場合、遠心力が作用する側の第1のシートスプリング20S1の撓み部20Cが下方側へさらに撓むことになる。これにより、第3押上部34の押上板部34Bがクッションパッド16において上記遠心力が作用する側のシート幅方向の外側部分16Aを上方側へ向けてさらに押し上げる。その結果、本実施形態の車両用シート12では、上記遠心力が作用した場合においても安定した着座感を得ることができる。
【0036】
なお、本実施形態の車両用シート12では、車両の乗員が着座した際に、第3押上部34の押上板部34Bがクッションパッド16のシート幅方向の外側部分16Aを上方側へ向けて押し上げるようにした例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記の遠心力が作用した場合のみにおいて、第3押上部34の押上板部34Bがクッションパッド16のシート幅方向の外側部分16Aを上方側へ向けて押し上げるようにしてもよい。
【0037】
また、本実施形態の押上装置10では、第1押上部30が第2のシートスプリング20S2とは別の部材となっている。これにより、第2のシートスプリング20S2の一部が第1押上部30となっている構成と比べて、第1押上部30の形状のバリエーションを増やすことができる。
【0038】
また、本実施形態の押上装置10では、第1のシートスプリング20S1と第2のシートスプリング20S2とを左右方向に連結する機能を第2押上部32に持たせることができる。
【0039】
(第2実施形態の押上装置36)
次に、
図7及び
図8を用いて、第2実施形態の押上装置36について説明する。なお、第2実施形態の押上装置36において前述の第1実施形態の押上装置10と対応する部材及び部分には、第1実施形態の押上装置10と対応する部材及び部分と同じ符号を付して、その説明を省略することがある。
【0040】
図7及び
図8に示されるように、本実施形態の押上装置36では、第2のシートスプリング20S2の撓み部20Cの一部が第1押上部30となっている。これにより、本実施形態の押上装置36では、第1押上部30が第2のシートスプリング20S2とは別の部材となっている構成と比べて、車両用シート12を構成する部品の点数を削減することができる。
【0041】
(第3実施形態の押上装置38)
次に、
図9及び
図10を用いて、第3実施形態の押上装置38について説明する。なお、第3実施形態の押上装置38において既に説明した第1実施形態の押上装置10等と対応する部材及び部分には、第1実施形態の押上装置10等と対応する部材及び部分と同じ符号を付して、その説明を省略することがある。
【0042】
図9及び
図10に示されるように、本実施形態の押上装置38は、6つの押上板40によって構成されている。本実施形態では、右側の第1のシートスプリング20S1及び第2のシートスプリング20S2に沿って3つの押上板40が設けられており、これら3つの押上板40は前後方向に間隔をあけて配置されている。また、左側の第1のシートスプリング20S1及び第2のシートスプリング20S2に沿って3つの押上板40が設けられており、これら3つの押上板40は前後方向に間隔をあけて配置されている。なお、これら6つの押上板40の構成は互いに同一の構成となっている。そのため、以下においては1つの押上板40の構成について説明し、他の5つの押上板40の構成の説明は省略する。また、押上板40の数や配置は、シートクッション14の形状や寸法等を考慮して適宜設定すればよい。
【0043】
押上板40は、一例として鋼鈑材や樹脂材料等を用いて形成されている。この押上板40は、第2のシートスプリング20S2の撓み部20Cに傾動可能に支持される傾動支持部40Aと、傾動支持部40Aからシート幅方向外側へ延出する外側延出部40Bと、傾動支持部40Aから第1のシートスプリング20S1側へ向けて延出する内側延出部40Cと、を備えている。内側延出部40Cにおける傾動支持部40Aとは反対側の端部には、内側係止部32Aが形成されている。
【0044】
以上説明した本実施形態の押上装置38を備えた車両用シート12では、車両の乗員がシートクッション14に着座すること等により、第1のシートスプリング20S1の撓み部20Cが第2のシートスプリング20S2の撓み部20Cに対して下方側へ変位すると、押上板40が傾動して、外側延出部40Bが上昇する。これにより、外側延出部40Bがクッションパッド16のシート幅方向の外側部分16Aを上方側へ向けて押し上げる。その結果、着座乗員の臀部を外側延出部40Bに押し上げられたクッションパッド16のシート幅方向の外側部分16Aによって支持することができる。このように、本実施形態の押上装置38を備えた車両用シート12では、駆動モータ等のアクチュエータを用いることなく安定した着座感を得ることができる。
【0045】
また、本実施形態の押上装置38では、第1のシートスプリング20S1と第2のシートスプリング20S2とを左右方向に連結する機能を押上板40に持たせることができる。
【0046】
(第4実施形態の押上装置42)
次に、
図11及び
図12を用いて、第4実施形態の押上装置42について説明する。なお、第4実施形態の押上装置42において既に説明した第1実施形態の押上装置10等と対応する部材及び部分には、第1実施形態の押上装置10等と対応する部材及び部分と同じ符号を付して、その説明を省略することがある。
【0047】
本実施形態の押上装置42では、押上板40の内側延出部40Cの一部が第1のシートスプリング20S1の撓み部20Cの下方側に配置されている。なお、押上板40には、内側係止部32A(
図9参照)は設けられていない。
【0048】
以上説明した本実施形態の押上装置42を備えた車両用シート12では、車両の乗員がシートクッション14に着座すること等により、第1のシートスプリング20S1の撓み部20Cが第2のシートスプリング20S2の撓み部20Cに対して下方側へ変位すると、第1のシートスプリング20S1の撓み部20Cが、押上板40の内側延出部40Cを下方側へ向けて押圧する。これにより、押上板40が傾動して、外側延出部40Bが上昇し、外側延出部40Bがクッションパッド16のシート幅方向の外側部分16Aを上方側へ向けて押し上げる。その結果、着座乗員の臀部を外側延出部40Bに押し上げられたクッションパッド16のシート幅方向の外側部分16Aによって支持することができる。このように、本実施形態の押上装置42を備えた車両用シート12では、駆動モータ等のアクチュエータを用いることなく安定した着座感を得ることができる。
【0049】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0050】
10 押上装置
12 車両用シート。
14 シートクッション
16 クッションパッド
18 クッションフレーム
20S1 第1のシートスプリング
20S2 第2のシートスプリング
30 第1押上部
32 第2押上部
34 第3押上部
36 押上装置
38 押上装置
40A 傾動支持部
40B 外側延出部
40C 内側延出部
42 押上装置