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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039502
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】感熱記録材料
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/333 20060101AFI20240314BHJP
   B41M 5/337 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
B41M5/333 220
B41M5/337 212
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144102
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】391052574
【氏名又は名称】三光株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100199912
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 雅之
(72)【発明者】
【氏名】石橋良三
(72)【発明者】
【氏名】木西良一
【テーマコード(参考)】
2H026
【Fターム(参考)】
2H026AA07
2H026BB02
2H026BB24
2H026DD14
2H026DD45
2H026DD53
(57)【要約】
【課題】
従来よりも高温熱水性ならびに高温高湿性を向上させた感熱記録材料を提供する。
【解決手段】
顕色剤としてN,N’-ジ-〔3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル〕尿素を含み、保存安定剤として、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタンあるいは1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタンの少なくともどちらか一方を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温で無色ないし淡色の塩基性染料と、
加熱により該染料と接触して呈色し得る顕色剤と、
保存安定剤とを含有する感熱記録層を支持体上に設けた感熱記録材料であって、
前記顕色剤としてN,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素と、
前記保存安定剤として1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタンあるいは1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタンの少なくともどちらか一方を含む、
耐熱水性を有する感熱記録材料。
【請求項2】
耐熱水性として、80℃の熱水に5分間接触し続けても劣化が少ない、請求項1に記載の感熱記録材料。
【請求項3】
記録後の前記感熱記録材料を温度80℃の熱水に5分間接触し続け、その後に乾燥したときのマクベス反射濃度計で測定した印字部の発色濃度をAとしたとき、
A ≧ 1.00
を満たす、請求項1または2に記載の感熱記録材料。
【請求項4】
常温で無色ないし淡色の塩基性染料と、
加熱により該染料と接触して呈色し得る顕色剤と、
保存安定剤とを含有する感熱記録層を支持体上に設けた感熱記録材料であって、
前記顕色剤としてN,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素と、
前記保存安定剤として1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタンあるいは1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタンの少なくともどちらか一方を含む、
耐高温高湿性を有する感熱記録材料。
【請求項5】
耐高温高湿性として、温度70℃かつ湿度90%RHの環境下で24時間放置しても劣化が少ない、請求項4に記載の感熱記録材料。
【請求項6】
記録後の前記感熱記録材料を温度70℃かつ湿度90%RHの環境下に24時間放置した後のマクベス反射濃度計における印字部の発色濃度をDとしたとき、
D ≧ 1.20
を満たす、請求項4または5に記載の感熱記録材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感熱記録材料に関し、顕色剤としてN,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、保存安定剤として、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタンおよび1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタンを少なくとも1つを併用することにより、高温熱水性、高温高湿性を共に向上させた感熱記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、感熱記録材料は常温で無色ないし淡色の塩基性染料と有機顕色剤とを感熱ヘッド、熱ペン等の熱エネルギー(ジユール熱)を加えることにより発色記録が得るようにした感熱記録材料はすでに広く実用化されている。
【0003】
その感熱記録材料に求められる性能として、未印字部の白色度と種々の環境条件における未印字部の白色度、印字部の発色濃度とその印字部の保存安定性などが挙げられる。
印字部の保存安定性とは、印字画像が熱や高湿度の環境下に置かれた場合、水が付着した場合、油類やアルコール類の付着した場合、又は財布等の革製品に使用される鞣しやフィルム製品の可塑性を出すのに使用される可塑剤に付着した場合等に印字部が消失しない性能を意味する。
【0004】
また、このように各方面での使用により感熱記録材料について、更に厳しい条件でも印字保存性が求められるようになった。その例として、例えば80℃の高温熱水に浸漬したり、60℃や70℃の高温環境下で、しかも湿度が90%RHと過酷な高温高湿下においても印字部の消失が少ない品質が求められるようになった。
【0005】
一方、感熱記録材料によって形成される印字の前記要求性能は、感熱記録材料の主成分であるロイコ染料、顕色剤、増感剤、保存安定剤に拠るところが大きく、とりわけ、顕色剤の影響が特に大きい。この為、上記の要求性能を満足する顕色剤として、フェノール系化合物、スルホニル尿素化合物など石油化学由来の合成化合物が提案されてきた。その中でもフェノール系化合物が数多く開発され、実用化されている。
【0006】
しかしながら、フェノール系化合物の一部には内分泌攪乱物質の疑義があり、その使用が抑制される傾向がある。例えば、ビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン)はポリエステル用原料として、または感熱紙用顕色剤などで多量に使用されていたが、改正前の化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律では、第二および第三監視化学物質として、改正後の同法律では優先評価化学物質として認定されており、更に内分泌攪乱物質の疑いからその使用が欧州、米国、カナダ国、日本国等では既に自粛されている。
【0007】
ビスフェノールS(4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン)は染色体異常などの疑義から改正前の化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律では、指定化学物質に登録され、第二監視化学物質として、規制されていた。更に欧州を始め海外ではビスフェノールAの類似化合物として規制の対象の可能性が高まっている。
【0008】
スルホニルウレア化合物等の非フェノール系顕色剤として、4,4’-ジアミノジフェニルアルカンなどの合成化合物を原料として用いるなどの提案がある(特許文献1)。更にN-3-((p-トルエンスルホニル)オキシ)フェニル-N’-(p-トルエンスルホニル)尿素(特許文献2)、N-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミド(特許文献3)、3-[(3-フェニルウレイド)フェニル]=4-メチルベンゼンスルホナート(特許文献4)およびN-m-トリル-3,5-ジ(m-トリルカルボニルアミノ)ベンゼンスルホンアミド(特許文献5)の非フェノール系顕色剤が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許2679524号公報
【特許文献2】特許4601174号公報
【特許文献3】特許5887423号公報
【特許文献4】特許6529197号公報
【特許文献5】WO2021/041600号公報
【特許文献6】特許6751479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に提案のスルホニルウレア化合物は、その構成成分として、ビスフェノールAと類似の分子構造である合成化合物を原料として用いるなどの課題があり、また、感熱記録材料の顕色剤としての要求性能に対して充分といえるものではなかった。特許文献2に提案された顕色剤は環境中で分解し、水性毒性を有することが知られている。特許文献3および4は印字部保存特性が低いために、他の顕色剤や保存安定剤との併用が提案されているが、過酷な条件下での保存特性を満足する特性が得られていない。更に、特許文献5で示される顕色剤も飽和濃度が出難い特性があり広くは使用されていないのが実情である。
【0011】
これに対し、特許文献6では非フェノール系顕色剤で環境にも配慮されたN,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素が開示されている。これは良好な印字部の保存特性、特に耐湿熱性、耐水性、耐洗剤性、耐光性および耐アルコール性に優れていることが開示されている。
【0012】
しかし、過酷な条件である、例えば80℃高温下の熱水性や、60℃や70℃での高温下で更に湿度が90%RHの高温高湿下ついてはそれほど高い特性を有していなかった。
【0013】
また、一般的に使用されているフェノール系顕色剤:ビスフェノールA、ビスフェノールS、4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-n-プロポキシジフェニルスルホン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルホンおよび4-ベンジルオキシフェニル-4’-ヒドロキシフェニルスルホンおよび非フェノール系顕色剤:N-3-[(p-トルエンスルホニル)オキシ]フェニル-N’-(p-トルエンスルホニル)尿素、N-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミドや3-[(3-フェニルウレイド)フェニル]=4-メチルベンゼンスルホナート、N-m-トリル-3,5-ジ(m-トリルカルボニルアミノ)ベンゼンスルホンアミドも同様に高温下の耐熱水性や高温高湿下の過酷な条件下については耐性を殆ど有していない。
【0014】
感熱記録材料の用途は拡大しており、ガス、水道、電気料金等の領収書を始め、金融機関のATMの利用明細書、財務関係の記録用紙、観劇等のチケット用紙、宝くじ、競馬や競艇等のゲーミングチケット用紙等の投票券、鉄道、バス等の切符や領収書、航空タグ用紙、物流関係のラベル用紙、総菜やおにぎり等の食品用ラベル用紙、コンビエンスストアーやスーパーマーケット等のPOSレジ用紙、医療用ラベル、心電図用紙、医療診断用のフィルム感熱、交通系定期券等で使用されおり、用途により様々な特性が要求されている。
【0015】
これらの用途の特殊性から、感熱記録材料については印刷後の経時安定性が求められる。感熱記録材料の経時的な変化については、印刷後の印字部の濃度の低下により、地肌部(非印字部)と濃度差が無くなり、印字部が視認できなくなる。
【0016】
特に、80℃などの高温での熱水条件や、70℃90%RH下といった高温高湿条件については、印刷後も安定性を有する感熱記録材料はこれまで殆ど提案されていなかった。
【0017】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、発色濃度、白色度、および内分泌攪乱作用の懸念がないN,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素を使用し、印字部の耐高温熱水性、耐高温高湿性を共に高めた感熱記録材料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者等は、顕色剤としてN,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素を使用し、保存安定剤として、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタンを少なくとも1つを併用することにより、感熱記録材料の発色濃度、白色度、良好な各種の保存特性を低下させずに、過酷な環境条件である耐熱水性、耐高温高湿性を格段に向上させることが判明し、本発明を完成するに至った。
【0019】
具体的には、本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)常温で無色ないし淡色の塩基性染料と、
加熱により該染料と接触して呈色し得る顕色剤と、
保存安定剤とを含有する感熱記録層を支持体上に設けた
感熱記録材料であって、
前記顕色剤としてN,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素と、
前記保存安定剤として1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタンあるいは1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタンの少なくともどちらか一方を含む、
耐熱水性を有する感熱記録材料。
(2)耐熱水性として、80℃の熱水に5分間接触し続けても劣化が少ない、前記(1)に記載の感熱記録材料。
(3)記録後の前記感熱記録材料を温度80℃の熱水に5分間接触し続け、その後に乾燥したときのマクベス反射濃度計で測定した印字部の発色濃度をAとしたとき、
A ≧ 1.00
を満たす、前記(1)~(2)のいずれかに感熱記録材料。
(4)前記感熱記録材料の記録後におけるマクベス反射濃度計で測定した印字部の発色濃度をBとしたとき、A/Bで表される印字部の濃度の残存率が、式
A/B ≧ 75%
を満たす、前記(1)~(3)のいずれかに記載の感熱記録材料。
(5)記録後の前記感熱記録材料を温度80℃の熱水に5分間放置したときのマクベス反射濃度計における地肌部の発色濃度をCとしたとき、印字部と地肌部の発色濃度の測定値の差が、式
B-C ≧ 0.90
を満たす、前記(1)~(4)のいずれかに記載の感熱記録材料。
【0020】
(6)常温で無色ないし淡色の塩基性染料と、
加熱により該染料と接触して呈色し得る顕色剤と、
保存安定剤とを含有する感熱記録層を支持体上に設けた
感熱記録材料であって、
前記顕色剤としてN,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素と、
前記保存安定剤として1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタンあるいは1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタンの少なくともどちらか一方を含む、
耐高温高湿性を有する感熱記録材料。
(7)耐高温高湿性として、温度70℃かつ湿度90%RHの環境下で24時間放置しても劣化が少ない、前記(6)に記載の感熱記録材料。
(8)記録後の前記感熱記録材料を温度70℃かつ湿度90%RHの環境下に24時間放置した後のマクベス反射濃度計における印字部の発色濃度をDとしたとき、
D ≧ 1.20
を満たす、前記(6)~(7)のいずれかに記載の感熱記録材料。
(9)前記感熱記録材料の記録後におけるマクベス反射濃度計で測定した印字部の発色濃度をEとしたとき、D/Eで表される印字部の濃度の残存率が、式
D/E ≧ 80%
を満たす、前記(6)~(8)のいずれかに記載の感熱記録材料。
(10)記録後の前記感熱記録材料を温度70℃かつ湿度90%RHの環境下に24時間放置したときのマクベス反射濃度計における地肌部の発色濃度をFとしたとき、印字部と地肌部の発色濃度の測定値の差が、式
D-F ≧ 1.00
を満たす、前記(6)~(9)のいずれかに記載の感熱記録材料。
【0021】
本発明における「高熱水性」とは、印字後の感熱記録材料を、水温80℃の熱水に5分間接触し続けても劣化が少ない、すなわち印字部の濃度変化が少ないことをいう。
【0022】
したがって、水温20℃の水には耐久性を有しても、水温80℃の熱水に耐久性を有しない場合は、本発明における「高熱水性」を有しているとは言えない。
【0023】
本発明における「高温高湿性」とは、印字後の感熱記録材料を、温度70℃かつ湿度90%RHの環境下に24時間放置しても劣化が少ない、すなわち印字部の濃度変化が少ないことをいう。
【0024】
したがって、温度40℃かつ湿度90%RHの環境下には耐久性を有しても、温度70℃かつ湿度90%RHの環境下に耐久性を有しない場合は、本発明における「高温高湿性」を有しているとは言えない。
【0025】
高温条件での耐久性の観点から、記録後の前記感熱記録材料を温度80℃の熱水に5分間接触し続けた後にも印字部の濃度の変化が少ないことが望ましい。
【0026】
具体的には、温度80℃の熱水に5分間接触し続け、常温(20℃)で乾燥した後にマクベス反射濃度計で測定した印字部の発色濃度については0.95以上であり、1.00以上が好ましく、1.04以上がより好ましい。
【0027】
経時的な保存安定性の観点から、感熱記録材料の記録後におけるマクベス反射濃度計での計測値を基準として、温度80℃の熱水に5分間放置した後の印字部の濃度の残存率が70%以上であり、75%以上が好ましく、77%以上がより好ましい。
【0028】
過酷条件後の文字の視認性の観点から、温度80℃の熱水に5分間放置した後のマクベス反射濃度計で測定した印字部の発色濃度と、同条件後の地肌部(非印字部)の発色濃度の差が0.90以上であり、0.93以上がより好ましい。
【0029】
高湿条件での耐久性の観点から、記録後の前記感熱記録材料を温度70℃かつ湿度90%RHの環境下に24時間放置したときにも印字部の濃度の変化が少ないことが望ましい。
【0030】
具体的には、温度70℃かつ湿度90%RHの環境下に24時間放置したときのマクベス反射濃度計で測定した印字部の発色濃度については1.00以上であり、1.10以上が好ましく、1.20以上がより好ましい。
【0031】
経時的な保存安定性の観点から、感熱記録材料の記録後におけるマクベス反射濃度計での計測値を基準として、温度70℃かつ湿度90%RHの環境下に24時間放置した後の印字部の濃度の残存率が75%以上であり、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましい。
【0032】
過酷条件後の文字の視認性の観点から、温度70℃かつ湿度90%RHの環境下に24時間放置した後のマクベス反射濃度計で測定した印字部の発色濃度と、同条件後の地肌部(非印字部)の発色濃度の差が1.00以上であり、1.05以上が好ましく、1.10以上がより好ましい。
【0033】
上記の特性を得るため、
常温で無色ないし淡色の塩基性染料と、
加熱により該染料と接触して呈色し得る顕色剤と、
保存安定剤とを含有する感熱記録層を支持体上に設けた感熱記録材料であることが望ましい。
【0034】
前記顕色剤としては、主にN,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素が挙げられる。
【0035】
前記保存安定剤としては、主に1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタンや1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタンが挙げられる。
【0036】
また、前記保存安定剤の配合については、2種以上使用しても良いが、前記1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタンあるいは1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタンのうち、いずれか一方の使用が好ましい。
【0037】
また、前記顕色剤と保存安定剤の配合比は、100:5~100:50であり、100:10~100:4が好ましく、100:12~100:40がより好ましい。
【発明の効果】
【0038】
本発明を構成する顕色剤N,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素を使用し、保存安定剤として、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタンを少なくとも1つを併用することにより、求められる感熱記録材料の要求性能を満足し、かつ内分泌攪乱作用等のない安全な感熱記録材料を提供する。
【0039】
更に、感熱記録材料の発色濃度、白色度、各種印字部の保存安定性を有し、特に過酷な環境条件である耐熱水性、耐高温高湿性を格段に向上させた感熱記録材料を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の感熱記録材料は、常温で無色ないし淡色の塩基性染料と、加熱により該染料と接触して呈色し得る顕色剤としてN,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素使用し、保存安定剤として、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタンを少なくとも1つを併用することによりを含有する感熱記録層を支持体上に設けた感熱記録材料である。
【0041】
本発明の感熱記録材料は、常温で無色ないし淡色の塩基性染料と、加熱により該染料と接触して呈色し得る顕色剤とを含有する感熱記録層を支持体上に設けた感熱記録材料であって、前記顕色剤として、N,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、前記保存安定剤として、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタンを少なくとも1つを併用することにより、N,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素が有する良好な、地肌耐熱性、印字部の保存特性、特に耐湿熱性、耐水性、耐熱水性、耐洗剤性、耐光性および耐アルコール性に、更に良好な耐可塑剤性を有することを特徴とし、感熱記録材料に求められる全てを有することができる。
【0042】
本発明の感熱記録材料の感熱記録層は、前記塩基性染料と前記一般式で表される顕色剤と、N,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、保存安定剤として、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタンを少なくとも1つを併用し、バインダー、増感剤、充填剤、滑材、その他各種添加剤等を添加して得た塗工液を調製し、これを紙、プラスティックフィルム、加工紙等の支持体上に塗工して形成される。
【0043】
本発明において、本発明の効果を阻害することのない範囲で、既存の顕色剤と併用してもよい。
【0044】
本発明の感熱記録材料において、常温で無色ないし淡色の塩基性染料としてトリフェニルメタン系、フルオラン系、ジフェニルメタン系、スピロ系、フルオレン系、チアジン系化合物が挙げられ、従来公知のロイコ染料から選ぶことができる。
【0045】
例えば、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)フタリド、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3,3-ビス(P-メチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-ジエチルアミノ-7-ジベンジルアミノベンゾ[α]フルオラン、3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-3-(4-ジエチルアミノ-2-n-ヘキシルオキシフェニル-4-アザフタリド、3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-3-(4-ジエチルアミノ)-2-メチルフェニル-4-アザフタリド、3-(4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3-(2-メチル-1-n-オクチルインドール-3-イル)-3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-4-アザフタリド、3,3’-ビス(1-n-アミル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3’-ビス(1-n-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3’-ビス(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3’-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)フタリドなどのフタリド化合物、
【0046】
3-(N-エチル-N-イソペンチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(o,p-ジメチルアニリノ)フルオラン、3-(N-エチル-N-p-トルイジノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-シクロヘキシル-N-メチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(m-トリフロロメチルアニリノ)フルオラン、3-ジ(n-ペンチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-[N-(3-エトキシプロピル)-N-エチルアミノ]6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-n-ヘキシル-N-エチルアミノ)-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-(N-エチル-N-2-テトラヒドロフルフリルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、2,2-ビス{4-[6’-(N-シクロヘキシル-N-メチルアミノ)-3’-メチルスピロ[フタリド-3,9’-キサンテン]-2’-イルアミノ]フェニル}プロパンおよび3-ジブチルアミノ-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3,6-ジメトキシフルオラン、3-ピロリジノ-6-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-7,8-ジベンゾフルオラン、3-ジエチルアミノ-6,7-ジメチルフルオラン、3-(N-メチル-p-トルイジノ)-7-メチルフルオラン、3-(N-メチル-N-イソアミルアミノ)-7,8-ベンゾフルオラン、3-(N-メチル-N-イソアミルアミノ)-7-フェノキシフルオラン、3-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)-7-(N-フェニル-N-メチルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-ベンジルアミノフルオラン、3-ピロリジノ-7-ジベンジルアミノフルオランなどのフルオラン化合物、
からも選ぶことができ、本発明はこれらに限定されるものではなく、又2種類以上を併用してもよい。
【0047】
本発明の増感剤として従来公知の増感剤を併用することができる。
例えば、ステアリン酸アミド、ビスステアリン酸アミド、パルミチン酸アミドなどの脂肪酸アミド、p-トルエンスルホンアミド、ステアリン酸、ベヘン酸やパルミチン酸などのカルシウム、亜鉛あるいはアルミニウムなどの脂肪酸金属塩、p-ベンジルビフェニル、ジフェニルスルホン、ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、2-ベンジルオキシナフタレン、1,2-ビス(p-トリルオキシ)エタン、1,2-ビス(フェノキシ)エタン、1,2-ビス(3-メチルフェノキシ)エタン、1,3-ビス(フェノキシ)プロパン、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸p-メチルベンジル、m-ターフェニル、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸などが挙げられる。
【0048】
更に、本発明は従来公知の保存安定剤を併用することができる。
例えば、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-エチリデンビス(4、6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(2-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(6-tert-ブチルm-クレゾール)、4,4’-ビス[(4-メチル-3-フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド]ジフェニルスルホン、トリス(2,6-ジメチル-4-tert-ブチル-3-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’-チオビス(3-メチルフェノール)、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’,5,5’-テトラブロモジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシ3,3’,5,5’-テトラメチルジフェニルスルホン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン等のヒンダードフェノール化合物、1,4-ジグリシジルオキシベンゼン、4,4’-ジグリシジルオキシジフェニルスルホン、4-ベンジルオキシ-4’-(2-メチルグリシルオキシ)ジフェニルスルホン、テレフタル酸グリシジル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂型、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ化合物、N,N’―ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェイトのナトリウム塩または多価金属塩、ビス(4-エチレンイミンカルボニルアミノフェニル)メタン、4,4’-ビス[(4-メチル-3-フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド]ジフェニルスルホンおよび、下記一般式(2)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物等が挙げられ、これらの保存安定剤は、感熱記録材料の印字部の保存安定性に寄与する。
【0049】
【化1】
(式中、nは1~7の整数を表す。)
【0050】
前記保存安定剤の含有量は、該顕色剤100質量部に対して5~50質量部であり、10~45質量部が好ましく、12~40質量部がより好ましい。
【0051】
また、助剤としては、例えばジオクチオルコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウム、脂肪酸金属塩等の分散剤、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレンワックス、カルナバロウ、パラフィンワックス、エステルワックス等のワックス類、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物、グリオキザール、ホウ酸、ジアルデヒドスターチ、メチロール尿素、グリオキシル酸塩、エポキシ系化合物等の耐水化剤、消泡剤、着色染料、蛍光染料、および顔料等が挙げられる。
【0052】
本発明で感熱記録層に使用されるバインダーとしては、重合度200~1900の完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、アミド変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、ブチラール変性ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレンーブタジエン共重合体ならびにエチルセルロース、アセチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルブチラールポリスチロールおよびそれらの共重合体、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、クロマン樹脂などが挙げられる。これらのバインダーは単独または2種以上を使用でき、溶剤に溶解して使用するほか、水または他の媒体中に乳化あるいはペースト状に分散した状態で使用することもできる。
【0053】
感熱記録層に配合される顔料としては、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、ケイソウ土、タルク、酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、ポリスチレン樹脂、尿素-ホルマリン樹脂、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体や中空プラスチックピグメント等の無機あるいは有機顔料等が挙げられる。
【0054】
本発明において感熱記録層に使用される塩基性染料、顕色剤、増感剤、バインダー、顔料およびその他の添加剤の種類や使用量は、感熱記録層に要求される品質性能に応じて適宜決定される。
【0055】
本発明における感熱記録層において、顕色剤として前記一般式(1)で表されるN-置換アミノ酸誘導体の含有量は、発色濃度の観点から、感熱記録層の塩基性染料1質量部に対して、0.3~5質量部が好ましく、更には0.4~3質量部がより好ましい。
【0056】
更に、増感剤はロイコ染料1部に対し0.2~4質量部、バインダーは全固形分中5~50質量%が適当である。支持体としては、紙、再生紙、合成紙、プラスティックフィルム、不織布、金属箔等が使用可能である。また、これらを組み合せた複合シートも使用可能である。
【0057】
また、保存安定性を高める目的で有機顔料を含有する高分子物質からなるオーバーコート層を設けても良い。さらにサーマルヘッドヘの粕付着を防止、印字画質向上、感度を向上させる目的で有機顔料、無機顔料や中空微粒子などを含有するアンダーコート層を設けても良い。
【0058】
本発明において感熱記録層に使用される塩基性染料、顕色剤、増感剤および必要により保存安定剤等は、例えば水を分散媒体として、ボールミル、アトライター、サンドミル等の攪拌粉砕機によって平均粒子径が2μm以下になるように微分散され使用される。
このように微分散された分散液に、必要により顔料、バインダー、助剤等を混合撹拌することで感熱記録層塗料を調整される。
このようにして得られた感熱記録層塗料を、乾燥後の塗布量が1.5~12g/m程度、より好ましくは3~7g/m程度になるように、支持体上に塗布し、乾燥することで形成される。
【実施例0059】
以下、実施例、比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、実施例中、「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」を表わす。
【0060】
[アンダーコート用塗料の作成]
プラスチック中空粒子(商品名:ローペイクSN-1055:中空率:55%、固形分26.5%)100部、焼成カオリンの50%分散液100部、スチレン-ブタジエン系ラテックス(商品名:L-1571 固形分48%)25部、酸化澱粉の10%水溶液50部および水20部を混合して、アンダーコート用塗料を作成した。
【0061】
(実施例1)
[感熱記録用塗料の作成]
A液(染料分散液の調製)
3-(N,N-ジブチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン 10部
10%ポリビニルアルコール水溶液 10部
水 16.7部
【0062】
B液(顕色剤分散液の調製)
N,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素)25部
10%ポリビニルアルコール水溶液 25部
水 41.8部
【0063】
C液(保存安定剤分散液の調製)
1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)
ブタン 10部
10%ポリビニルアルコール水溶液 10部
水 16.7部
【0064】
D液(増感剤分散液の調製)
1,2-ビス(3-メチルフェノキシ)エタン 7.5部
10%ポリビニルアルコール水溶液 7.5部
水 12.5部
【0065】
上記A液、B液およびC液の分散液をサンドグラインダーで平均粒子径が1μm以下になるまで粉砕し、下記割合で分散液を混合して塗布液とした。
A液(染料剤分散液) 36.7部
B液(顕色剤分散液) 91.8部
C液(保存安定剤分散液) 36.7部
D液(増感剤分散液) 27.5部
【0066】
水酸化アルミニウム(商品名:ハイジライトH-42 27部、無定形シリカ(商品名:ミズカシルP-605)10部、酸化澱粉の10%溶解物150部、ステアリン酸亜鉛分散液(商品名:ハイドリンZ-8-36)20部および水50部からなる組成分を混合して感熱記録用塗料を作製した。
【0067】
[感熱記録材料の作成]
支持体として坪量が53gの上質紙(酸性紙)にアンダーコート用塗料を乾燥後の面積当たりの質量が6g/mとなるように塗布および乾燥し、その後、感熱塗料が乾燥後の面積当たりの質量が4.0g/mになるように塗布乾燥した。
このシートをス-パーカレンダーで平滑度(JISP8155:2010)が900~1200sになるように処理して感熱記録材料を作成した。
【0068】
本発明の感熱記録材料について、従来の感熱記録材料と同等の発色性を有しつつ、従来の感熱記録材料より優れた耐熱水性ならびに耐高温高湿性を有する点について、比較する為に以下の試験を行った。
【0069】
[各種試験]
1.感熱記録性試験(発色試験)
作成した感熱記録材料について、感熱記録紙印字試験機(大倉電気社製TH-PMD)を用い、印加エネルギー0.38mJ/dotで印加した。記録後の感熱記録材料の印字部と地肌部(未印字部)の印字濃度はマクベス反射濃度計RD-914(グレタグマグベス社製)で測定した。
【0070】
2.耐水性試験
感熱記録性試験で記録した感熱記録材料を試験温度20℃の水に15時間接触し続けた後、試験片の印字部画像濃度と地肌部の濃度をマクベス反射濃度計で測定した。
【0071】
3.耐水熱性試験
感熱記録性試験で記録した感熱記録材料を試験温度80℃の熱水に5分間接触し続けた後、試験片の印字部画像濃度と地肌部の濃度をマクベス反射濃度計で測定した。
【0072】
4.耐湿熱性試験
感熱記録性試験で記録した感熱記録材料を試験温度40℃かつ90%RHの環境下に24時間放置した後、試験片の印字部画像濃度と地肌部の濃度をマクベス反射濃度計で測定した。
【0073】
5.耐高温高湿熱試験
感熱記録性試験で記録した感熱記録材料を試験温度70℃かつ90%RHの環境下に24時間放置した後、試験片の印字部画像濃度と地肌部の濃度をマクベス反射濃度計で測定した。
【0074】
この実施例による感熱記録材料の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0075】
(実施例2)
実施例1のC液を18.4部使用した以外は実施例1と同様の操作をおこなった。
この実施例による感熱記録材料の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0076】
(実施例3)
実施例1のC液を11.0部使用した以外は実施例1と同様の操作をおこなった。
この実施例による感熱記録材料の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0077】
(実施例4)
実施例2のC液の保存安定剤を1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタンの代わりに1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタンを使用した以外は実施例2と同様の操作をおこなった。
この実施例による感熱記録材料の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0078】
[参考例1]
実施例2のC液を使用しない以外は実施例2と同様の操作をおこなった。
この参考例による感熱記録材料の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0079】
[比較例1]
実施例2のB液の顕色剤N,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素をビスフェノールAに代える以外は実施例2と同様の操作をおこなった。この比較例による感熱記録材料の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0080】
[比較例2]
実施例1のB液の顕色剤N,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素をN-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミに代える以外は実施例2と同様の操作をおこなった。この比較例による感熱記録材料の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0081】
[比較例3]
実施例1のB液の顕色剤N,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素を3-[(3-フェニルウレイド)フェニル]=4-メチルベンゼンスルホナートに代える以外は実施例2と同様の操作をおこなった。この比較例による感熱記録材料の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0082】
実施例、比較例で測定された記録後におけるマクベス反射濃度計で測定した印字部の発色濃度に対する、耐熱水性試験および耐高温高湿性試験における発色濃度の測定値を印字部の濃度の残存率として、表2に計算値を記す。
【0083】
実施例、比較例で測定された耐熱水性試験および耐高温高湿性試験後の印字部と地肌部の発色濃度の測定値の差を、表2に記す。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
表1より明らかなように、顕色剤として、N,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、保存安定剤として、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタンを少なくとも1つを併用することにより、高熱水性、高温高湿性を共に満足される感熱記録材料が得られる。
【0087】
表1より、本発明の感熱記録材料は耐熱水性試験後の発色濃度は1.00以上であり、参考例、比較例の発色濃度が0.95を優に下回ることに対し非常に優れている。
また、本発明の感熱記録材料は耐高温高湿性試験後の発色濃度は1.20以上であり、参考例、比較例の発色濃度が1.00を優に下回ることに対し非常に優れている。
【0088】
表2より、本発明の感熱記録材料は耐熱水性試験後の印字部濃度の残存率は75%以上を有しており、参考例、比較例が70%以下であることに対し非常に優れている。
また、耐熱高温高湿性試験後の印字部の濃度の残存率は85%以上を有しており、参考例、比較例が80%を優に下回ることに対し非常に優れている。
【0089】
表2より、本発明の感熱記録材料は耐熱水性試験後の印字部と地肌部の差は0.90以上を有しており、参考例、比較例が0.85以下であることに対し非常に優れている。
また、耐熱高温高湿性試験後の印字部と地肌部の差は1.10以上を有しており、参考例、比較例が1.00を優に下回ることに対し非常に優れている。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の感熱記録材料は、顕色剤としてN,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素を使用し、保存安定剤として1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタンあるいは1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタンを少なくとも1つを併用することにより、耐高熱水性や耐高温高湿性といった過酷な条件下での保存特性を一層向上させることが可能なことから、従来の感熱記録材料の使用範囲を広めることが出来、産業上の利用可能性は極めて有望である。