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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039507
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】検査方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
G01N21/88 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144116
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田守 信也
(72)【発明者】
【氏名】大原 達也
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA01
2G051AB02
2G051CA03
2G051DA06
2G051DA08
2G051ED04
(57)【要約】
【課題】被検査物のエッジ領域における欠陥を検出する技術を改善する。
【解決手段】本開示の検査方法は、検査装置によって実行され、被検査物のエッジを含む所定の領域のうち被検査物が占める領域のサイズを算出すること(S1)と、所定の領域を所定の方向に移動させること(S2)と、所定の領域の移動に伴う当該サイズの変化に基づいて、被検査物のエッジ領域における欠陥の有無を判定すること(S4)とを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査装置が実行する検査方法であって、
被検査物のエッジを含む所定の領域のうち前記被検査物が占める領域のサイズを算出することと、
前記所定の領域を所定の方向に移動させることと、
前記所定の領域の移動に伴う前記サイズの変化に基づいて、前記被検査物のエッジ領域における欠陥の有無を判定することと
を含む、検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の検査方法であって、
前記所定の方向は、前記被検査物の長軸及び/又は短軸に沿う方向であり、且つ前記所定の領域は、前記所定の方向と交差する方向に延在する、検査方法。
【請求項3】
請求項1に記載の検査方法であって、
前記所定の方向は、前記被検査物に設定された点を中心とする回転方向であり、且つ前記所定の領域は、前記点から前記エッジに向けて延在する、検査方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の検査方法であって、
前記所定の領域から選択された注目領域に対応する前記サイズと、前記注目領域に対して前記所定の方向の逆方向に位置する領域に対応する前記サイズとの第1の差分を算出することと、
前記注目領域に対応する前記サイズと、前記注目領域に対して前記所定の方向の順方向に位置する領域に対応する前記サイズとの第2の差分を算出することと、
前記第1の差分及び前記第2の差分に基づいて、前記変化が極値を伴うか否かを判定するための特徴量を算出することと、
前記特徴量に基づいて前記変化が極値を伴うと判定され、且つ前記特徴量が所定の閾値以上である場合、前記欠陥が存在すると判定することと
を更に含む、検査方法。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の検査方法であって、
前記被検査物の形状は不定形である、検査方法。
【請求項6】
コンピュータに、
被検査物のエッジを含む所定の領域のうち前記被検査物が占める領域のサイズを算出することと、
前記所定の領域を所定の方向に移動させることと、
前記所定の領域の移動に伴う前記サイズの変化に基づいて、前記被検査物のエッジ領域における欠陥の有無を判定することと
を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検査方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検査物における欠陥の有無は、被検査物が撮像された画像に対するコントラストを活用することによって判定されてきた。特許文献1には、撮影部により撮影された画像中の注目領域と当該注目領域に対する周辺領域とのコントラストを活用した検査システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-111085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、被検査物のエッジ領域における欠陥を検出するには改善の余地があった。
【0005】
本開示の目的は、被検査物のエッジ領域における欠陥を検出する技術を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る検査方法は、検査装置が実行する検査方法であって、被検査物のエッジを含む所定の領域のうち前記被検査物が占める領域のサイズを算出することと、前記所定の領域を所定の方向に移動させることと、前記所定の領域の移動に伴う前記サイズの変化に基づいて、前記被検査物のエッジ領域における欠陥の有無を判定することとを含む。
【0007】
本開示に係るプログラムは、コンピュータに、被検査物のエッジを含む所定の領域のうち前記被検査物が占める領域のサイズを算出することと、前記所定の領域を所定の方向に移動させることと、前記所定の領域の移動に伴う前記サイズの変化に基づいて、前記被検査物のエッジ領域における欠陥の有無を判定することとを実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、被検査物のエッジ領域における欠陥を検出する技術を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施形態に係る検査装置の構成を示す図である。
図2】本開示の一実施形態に係る検査装置の動作を示す図である。
図3】本開示の一実施形態における特徴量を説明する図である。
図4】本開示の一実施形態における特徴量の差分の変化を説明する図である。
図5】本開示の一変形例における特徴量を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
従来の技術では、上述したように、被検査物のエッジ領域における欠陥を検出することが困難であった。これは、被検査物を含む画像において、被検査物のエッジ領域のうち欠陥が存在する領域が非検査領域(背景)として認識されるからである。そこで、本発明者
らは、被検査物のエッジ形状に円弧又は線分といった幾何学的形状を追従させることにより、エッジ領域における欠陥を検出することを試みた。しかしながら、この方法では、製品の形状が製品毎にばらつき、且つばらつきに規則性を見出すことが難しい不定形の被検査物については、当該幾何学的形状を追従させるには限界があった。また、この方法では、被検査物の先端部分における欠陥を検出することが困難であった。そこで、本発明者らは、鋭意検討したところ、被検査物のエッジを含む所定の領域のうち被検査物が占める領域のサイズに着目することにより、不定形の被検査物であってもエッジ領域における欠陥を検出することが可能となることを見出した。
【0011】
以下、図面を参照して、本開示の一実施形態を説明する。なお、本実施形態において、不定形の被検査物は、製品の形状又は大きさが製品毎に数ミリ程度又は数十ミリ程度ばらつく製品のみならず、製品に外接する近似図形(例えばバウンディングボックス等の矩形)の形状又は大きさが製品毎に数ミリ程度又は数十ミリ程度ばらつく製品を含んでもよい。このばらつきは、ロット生産における段取り替え時に大きく発生するが、これに限られず、製品が製造される度に発生することもある。製品としては、冷凍食品、菓子類、及びパン類等を含む加工食品が挙げられるが、製品自体が柔らかいもの、或いは原材料が柔らかいために製造工程で多少の変形が見込まれるものであれば、必ずしも加工食品に限られない。また、エッジ領域は、例えば、被検査物のエッジから被検査物の中心又は重心に向けて、被検査物の中心又は重心からエッジまでの距離の少なくとも5%までの、少なくとも10%までの、少なくとも15%までの、又は少なくとも20%までの領域であるが、これらに限られない。
【0012】
図1を参照して、本実施形態に係る検査装置10の構成を説明する。
【0013】
検査装置10は、制御部11と、記憶部12と、撮像部13と、入力部14と、出力部15と、を備える。
【0014】
制御部11は、1つ以上のプロセッサ、1つ以上のプログラマブル回路、1つ以上の専用回路、又はこれらの組合せを含む。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)若しくはGPU(Graphics Processing Unit)等の汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。プログラマブル回路は、例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)である。専用回路は、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)である。制御部11は、検査装置10の各部を制御しながら、検査装置10の動作に関わる各種処理を実行する。
【0015】
記憶部12は、1つ以上の半導体メモリ、1つ以上の磁気メモリ、1つ以上の光メモリ、又はこれらの組合せを含む。半導体メモリは、例えばRAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)である。記憶部12は、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部12には、検査装置10の動作に用いられる情報と、検査装置10の動作によって得られた情報とが記憶される。
【0016】
撮像部13は、視野内の被検査物を撮影した画像を生成する任意のカメラを含む。カメラは、可視光領域の波長を検出可能なカメラであってもよく、或いは非可視光領域の波長を検出可能なカメラであってもよい。非可視光領域は、例えば赤外線領域、紫外線領域、又はX線領域である。カメラは、例えばレンズ等の光学系と、CCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像素子とを含む。
【0017】
入力部14は、1つ以上の入力用インタフェースを含む。入力用インタフェースは、例えば物理キー、静電容量キー、ポインティングデバイス、又はディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーンである。入力部14は、検査装置10の動作に用いられる情報をユーザが入力する操作を受け付ける。入力部14は、検査装置10に備えられる代わりに、例えばUSB(Universal Serial Bus)、HDMI(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等の任意の方式により、PC(Personal Computer)又はタブレット端末等の外部の入力機器として検査装置10に接続されてもよい。
【0018】
出力部15は、1つ以上の出力用インタフェースを含む。出力用インタフェースは、例えばディスプレイである。ディスプレイは、例えばLCD(Liquid Crystal Display)又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイである。出力部15は、検査装置10の動作によって得られる情報を出力する。出力部15は、検査装置10に備えられる代わりに、例えばUSB(Universal
Serial Bus)、HDMI(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等の任意の方式により、PC(Personal Computer)又はタブレット端末等の外部の出力機器として検査装置10に接続されてもよい。
【0019】
図2乃至4を参照して、本実施形態に係る検査装置10の動作を説明する。本動作は、本実施形態に係る検査方法に相当する。
【0020】
ステップS1:検査装置10の制御部11は、被検査物Wのエッジを含む所定の領域のうち被検査物Wが占める領域のサイズを算出する。
【0021】
具体的には、まず、検査装置10の制御部11は、撮像部13を介して被検査物Wが撮像された画像を取得する。そして、検査装置10の制御部11は、任意の画像認識の技術を用いることにより、取得された画像において、被検査物Wの主表面に外接する近似図形(例えば1つのバウンディングボックス)を特定する。ここで、検査装置10の制御部11は、被検査物Wの主表面に外接する近似図形の全領域が撮像部13の視野内に含まれていない場合、当該近似図形の全領域が撮像部13の視野内に含まれるように、撮像部13を制御することが可能である。そして、検査装置10の制御部11は、任意の画像認識の技術を用いることにより、取得された画像に基づいて、被検査物Wのエッジを特定する。そして、検査装置10の制御部11は、任意の画像認識の技術を用いることにより、特定されたエッジを含む所定の領域のうち被検査物Wが占める領域のサイズを算出する。なお、所定の領域の大きさ及び形状は、検査装置10の入力部14を介してユーザが適宜設定することが可能である。また、検査装置10の制御部11は、撮像部13によって取得された画像を二値化することによって生成された二値画像を用いて、被検査物Wのエッジを含む所定の領域のうち被検査物Wが占める領域のサイズを算出してもよい。
【0022】
図3に示される例では、検査装置10の制御部11は、所定の領域に相当する領域Rnのうち、偏平状の加工食品である被検査物Wの短軸方向に沿う長さLnを算出する。ここで、「n」は、ステップS1乃至S3の処理の繰り返し回数を示す。そして、検査装置10の制御部11は、算出された長さLnを記憶部12に記憶する。ここで、領域Rnの、被検査物Wの長軸方向に沿う幅(以下、「領域Rnの幅」)は、例えば1ピクセルであるが、これに限られない。また、領域Rnの、被検査物Wの短軸方向に沿う長さ(以下、「領域Rnの長さ」)は、例えば被検査物Wの主表面に外接する長方形の短辺よりも長く設定されてもよく、或いは当該長方形の短辺の長さと一致してもよいが、これらに限られない。領域Rnの幅及び長さを含む領域Rnの形状は、検査装置10の入力部14を介してユーザが適宜設定することが可能である。また、長さLnに代えて、領域Rnのうち被検
査物Wが占める領域の面積が用いられてもよい。なお、被検査物Wの短軸方向は、例えば被検査物Wに外接する長方形の短辺に沿う方向であるが、これに限られない。被検査物Wの短軸方向は、例えば被検査物Wの主表面の形状を楕円で近似した場合における当該楕円の短軸方向であってもよい。
【0023】
ステップS2:検査装置10の制御部11は、ステップS1における所定の領域を移動させる。
【0024】
図3に示される例では、検査装置10の制御部11は、ステップS1において取得された画像上において、ステップS1の算出に用いられた領域Rnの位置とは異なる位置に、領域Rnの大きさ及び形状を維持しながら、被検査物Wの長軸方向に沿って所定の移動幅だけ領域Rnを移動させる。すなわち、被検査物Wに対して領域Rnは相対的に移動し、領域Rnの移動先は領域Rn+1となる。移動幅は、ユーザが検出対象とする欠陥の大きさが5mm以上である場合には例えば8ピクセルであるが、これに限られない。領域Rnの移動方向及び移動幅は、ユーザが検出対象とする欠陥の大きさも考慮して、検査装置10の入力部14を介してユーザが適宜設定することが可能である。なお、被検査物Wの長軸方向は、例えば被検査物Wの主表面に外接する長方形の長辺に沿う方向であるが、これに限られない。被検査物Wの長軸方向は、例えば被検査物Wの主表面の形状を楕円で近似した場合における当該楕円の長軸方向であってもよい。
【0025】
ステップS3:検査装置10の制御部11は、ステップS1における算出を続行するか否かを判定する。算出を続行すると判定された場合、プロセスはステップS1に戻る。算出を続行すると判定されなかった場合、プロセスはステップS4に進む。
【0026】
図3に示される例では、プロセスがステップS1に戻ると、検査装置10の制御部11は、上述した方法と同様にして移動後の所定の領域に相当する領域Rn+1のうち被検査物Wの短軸方向に沿う長さLn+1を算出する。なお、検査装置10の制御部11は、ステップS1において取得された画像の一端(図3において紙面上端)から他端(図3において紙面下端)までの走査(移動)が完了していない場合、算出を続行すると判定してもよい。
【0027】
ステップS4:検査装置10の制御部11は、所定の領域の移動に伴うステップS2におけるサイズの変化に基づいて、被検査物Wのエッジ領域における欠陥の有無を判定する。
【0028】
具体的には、検査装置10の制御部11は、所定の領域から選択された例えば1つの注目領域に対応するステップS1で算出されたサイズと、当該注目領域に対して所定の方向に相当する移動方向の逆方向に位置する領域に対応するステップS1で算出されたサイズと、の第1の差分を算出する。また、検査装置10の制御部11は、当該注目領域に対応するステップS1で算出されたサイズと、当該注目領域に対して所定の方向に相当する移動方向の順方向に位置する領域に対応するステップS1で算出されたサイズと、の第2の差分を算出する。そして、検査装置10の制御部11は、第1の差分及び第2の差分に基づいて、ステップS1で算出されたサイズの移動に伴う変化が極値を伴うか否かを判定するための特徴量を算出する。そして、検査装置10の制御部11は、当該特徴量に基づいて当該変化が極値を伴うと判定され、且つ特徴量が所定の閾値以上である場合、被検査物Wのエッジ領域における欠陥が存在すると判定する。そして、検査装置10の制御部11は、出力部15を介して、判定の結果をユーザに提示する。このように差分が用いられるのは、不定形の被検査物Wについては、被検査物Wの半径等の何らかの基準からのステップS1で算出されたサイズのずれを欠陥の有無の判定基準として用いることが困難であるからである。また、所定の閾値が用いられるのは、特徴量に極値が存在する場合であって
も、欠陥に起因する極値ではなく、被検査物Wのエッジ形状のばらつき(ここでは、個々の被検査物Wにおけるエッジ形状の変動)に起因する極値を取り除くためである。本実施形態によれば、図4に示される例のように、欠陥に関連する差分の立上り及び立下りを容易に認識することができる。
【0029】
より具体的には、図3に示される例では、ステップS1乃至S3の処理が繰り返されることにより、検査装置10の記憶部12には、領域R1に対応する長さL1、領域R2に対応する長さL2、・・・、領域RNに対応する長さLNが記憶されることとなる。ここで、領域R1乃至RNのうち、注目領域をRj(但し、jは2以上(N-1)以下の自然数)とする。また、注目領域Rjに対して、ステップS2における移動方向の逆方向に位置する領域をRi(但し、iは、1以上(N-2)以下であり、且つj未満である自然数)とする。また、注目領域Rjに対して、ステップS2における移動方向の順方向に位置する領域をRk(但し、kは3以上N以下であり、且つj超えである自然数)とする。検査装置10の制御部11は、注目領域Rjに対応する長さLjと領域Riに対応する長さLiとの第1の差分Δji(例えばΔji=Lj-Li)を算出する。また、検査装置10の制御部11は、注目領域Rjに対応する長さLjと領域Rkに対応する長さLkとの第2の差分Δjk(例えばΔjk=Lj-Lk)を算出する。そして、検査装置10の制御部11は、第1の差分Δji及び第2の差分Δjkに基づいて、極値の有無を判定するための特徴量Δ(例えばΔ=Δji×Δjk)を算出する。そして、検査装置10の制御部11は、特徴量Δが0以上である場合、長さLnの移動に伴う変化が極値を伴うと判定する。したがって、i、j、及びkが連続する自然数である場合、例えばL1=100(pix)、L2=120(pix)、及びL3=140(pix)については極値が存在しないのに対して、L4=140(pix)、L5=100(pix)、L6=120(pix)については極値が存在することになる。そして、検査装置10の制御部11は、長さLnの移動に伴う変化が極値を伴い、且つ特徴量Δが所定の閾値以上である場合、被検査物Wのエッジ領域に欠陥が存在すると判定する。ただし、本開示はこれらに限られない。なお、i、j、及びkは、必ずしも連続する自然数でなくてもよく、ユーザが検出対象とする欠陥の大きさ及びステップS2における移動幅に応じて、検査装置10の入力部14を介してユーザが適宜設定することが可能である。また、所定の閾値は、ユーザが検出対象とする欠陥の大きさに応じて、検査装置10の入力部14を介してユーザが適宜設定することが可能である。
【0030】
上述のように、本実施形態に係る検査方法は、被検査物Wのエッジを含み且つ所定の方向に相当する被検査物Wの長軸に沿う方向と交差する方向(短軸に沿う方向)に延在する所定の領域のうち、被検査物Wが占める領域のサイズを算出すること(ステップS1)と、所定の領域を所定の方向に相当する被検査物Wの長軸に沿う方向に移動させること(ステップS2)と、所定の領域の移動に伴う当該サイズの変化に基づいて、被検査物Wのエッジ領域における欠陥の有無を判定すること(ステップS4)とを含む。なお、「交差」は、直交であってもよいが、所定の領域の延在方向が移動前後で平行又は略平行であれば(すなわち、実質的に平行であれば)、必ずしも直交でなくてもよい。
【0031】
本実施形態によれば、被検査物Wのエッジを含む所定の領域のうち被検査物Wが占める領域のサイズが特徴量として用いられる。そのため、被検査物Wのエッジ形状を幾何学的形状で追従させることに限界がある場合であっても、被検査物Wのエッジ領域における欠陥を検出することが可能となる。また、所定の領域の移動方向を適宜設定することにより、被検査物Wの先端部分における欠陥を検出することが可能となる。したがって、被検査物Wのエッジ領域における欠陥を検出する技術を改善することができる。なお、本実施形態に係る検査方法は、従来の技術のようにコントラストを活用することにより被検査物Wのうちエッジ領域以外に欠陥が存在しないことが判定された後に実施されてもよい。
【0032】
以上、諸図面及び実施例に基づいて本開示を説明してきたが、当業者であれば本開示に基づいて種々の変形及び改変を行ってもよいことに注意されたい。したがって、これらの変形及び改変は、本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップ等に含まれる機能等は、論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0033】
一変形例として、所定の方向は、被検査物Wの短軸に沿う方向であり、且つ所定の領域は、被検査物Wの短軸に沿う方向と交差する方向に延在してもよい。すなわち、本変形例は、被検査物Wのエッジを含み且つ所定の方向に相当する被検査物Wの短軸に沿う方向と交差する方向(長軸に沿う方向)に延在する所定の領域のうち、被検査物Wが占める領域のサイズを算出すること(ステップS1)と、所定の領域を所定の方向に相当する被検査物Wの短軸に沿う方向に移動させること(ステップS2)と、所定の領域の移動に伴う当該サイズの変化に基づいて、被検査物Wのエッジ領域における欠陥の有無を判定すること(ステップS4)とを含む。また、被検査物Wの先端部分における欠陥の検出精度を向上させる観点から、本変形例と上述した実施形態とを組み合わせて実施してもよい。なお、所定の領域の延在方向及び移動方向以外については、上述した実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0034】
また、一変形例として、図5に示される例のように、所定の方向は、被検査物Wに設定された点Oを中心とする回転方向であり、且つ所定の領域は、点Oから被検査物Wのエッジに向けて延在してもよい。すなわち、本変形例は、被検査物Wのエッジを含み且つ被検査物Wの点Oからエッジに向けて延在する所定の領域のうち、被検査物Wが占める領域のサイズを算出すること(ステップS1)と、所定の領域を所定の方向に相当する被検査物Wの点Oを中心とする回転方向に移動させること(ステップS2)と、所定の領域の移動に伴う当該サイズの変化に基づいて、被検査物Wのエッジ領域における欠陥の有無を判定すること(ステップS4)とを含む。なお、図5に示される例では、回転方向は時計回りであるが、これに限られず、反時計回りであってもよい。また、所定の領域の延在方向及び移動方向以外については、上述した実施形態と同様であるので、説明を省略する。本変形例は、被検査物Wの例えば主表面に外接する近似図形から任意の数学的手法を用いて算出可能な真円度が所定の閾値以上である場合に特に有効である。したがって、被検査物Wの真円度が所定の閾値未満である場合に図3を参照しつつ上述した実施形態に係る検査方法が実施され、被検査物Wの真円度が所定の閾値以上である場合に本変形例に係る検査方法が実施されてもよい。なお、点Oは、上述した実施形態におけるステップS1で撮像された画像のうち被検査物Wが占める領域の面積から、任意の画像認識の技術を用いて算出可能な重心であってもよいが、これに限られない。
【0035】
また、一変形例として、所定の方向は、被検査物Wのエッジ上における各点の法線方向と交差する方向であり、且つ所定の領域は、被検査物Wのエッジ上における各点の法線方向に沿って延在してもよい。すなわち、本変形例は、被検査物Wのエッジを含み且つ被検査物Wのエッジ上における各点の法線方向に沿って延在する所定の領域のうち、被検査物Wが占める領域のサイズを算出すること(ステップS1)と、所定の領域を所定の方向に相当する被検査物Wのエッジ上における各点の法線方向と交差する方向に移動させること(ステップS2)と、所定の領域の移動に伴う当該サイズの変化に基づいて、被検査物Wのエッジ領域における欠陥の有無を判定すること(ステップS4)とを含む。なお、所定の領域の延在方向及び移動方向以外については、上述した実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0036】
また、一変形例として、例えば汎用のコンピュータを、上述した実施形態に係る検査装置10の全部又は一部(例えば制御部11)として機能させる実施形態を採用することも可能である。具体的には、上述した実施形態に係る検査装置10の全部又は一部の機能を
実現する処理内容を記述したプログラムを、汎用のコンピュータのメモリに格納し、プロセッサによって当該プログラムを読み出して実行させる。したがって、本開示は、プロセッサが実行可能なプログラム、又は当該プログラムを記憶する非一時的なコンピュータ可読媒体としても実現可能である。なお、当該プログラムを実行するコンピュータは、例えば、PC(Personal Computer)、タブレット端末、又はスマートフォン等であるが、これらの例に限られない。
【0037】
上述した実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、本開示はこれらに限られない。
[付記1]
検査装置が実行する検査方法であって、
被検査物のエッジを含む所定の領域のうち前記被検査物が占める領域のサイズを算出することと、
前記所定の領域を所定の方向に移動させることと、
前記所定の領域の移動に伴う前記サイズの変化に基づいて、前記被検査物のエッジ領域における欠陥の有無を判定することと
を含む、検査方法。
[付記2]
付記1に記載の検査方法であって、
前記所定の方向は、前記被検査物の長軸及び/又は短軸に沿う方向であり、且つ前記所定の領域は、前記所定の方向と交差する方向に延在する、検査方法。
[付記3]
付記1又は2に記載の検査方法であって、
前記所定の方向は、前記被検査物に設定された点を中心とする回転方向であり、且つ前記所定の領域は、前記点から前記エッジに向けて延在する、検査方法。
[付記4]
付記1乃至3の何れか一つに記載の検査方法であって、
前記所定の領域から選択された注目領域に対応する前記サイズと、前記注目領域に対して前記所定の方向の逆方向に位置する領域に対応する前記サイズとの第1の差分を算出することと、
前記注目領域に対応する前記サイズと、前記注目領域に対して前記所定の方向の順方向に位置する領域に対応する前記サイズとの第2の差分を算出することと、
前記第1の差分及び前記第2の差分に基づいて、前記変化が極値を伴うか否かを判定するための特徴量を算出することと、
前記特徴量に基づいて前記変化が極値を伴うと判定され、且つ前記特徴量が所定の閾値以上である場合、前記欠陥が存在すると判定することと
を更に含む、検査方法。
[付記5]
付記1乃至4の何れか一つに記載の検査方法であって、
前記被検査物の形状は不定形である、検査方法。
[付記6]
コンピュータに、
被検査物のエッジを含む所定の領域のうち前記被検査物が占める領域のサイズを算出することと、
前記所定の領域を所定の方向に移動させることと、
前記所定の領域の移動に伴う前記サイズの変化に基づいて、前記被検査物のエッジ領域における欠陥の有無を判定することと
を実行させる、プログラム。
[付記7]
付記6に記載のプログラムであって、
前記所定の方向は、前記被検査物の長軸及び/又は短軸に沿う方向であり、且つ前記所定の領域は、前記所定の方向と交差する方向に延在する、プログラム。
[付記8]
付記6又は7に記載のプログラムであって、
前記所定の方向は、前記被検査物に設定された点を中心とする回転方向であり、且つ前記所定の領域は、前記点から前記エッジに向けて延在する、プログラム。
[付記9]
付記6乃至8の何れか一つに記載のプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記所定の領域から選択された注目領域に対応する前記サイズと、前記注目領域に対して前記所定の方向の逆方向に位置する領域に対応する前記サイズとの第1の差分を算出することと、
前記注目領域に対応する前記サイズと、前記注目領域に対して前記所定の方向の順方向に位置する領域に対応する前記サイズとの第2の差分を算出することと、
前記第1の差分及び前記第2の差分に基づいて、前記変化が極値を伴うか否かを判定するための特徴量を算出することと、
前記特徴量に基づいて前記変化が極値を伴うと判定され、且つ前記特徴量が所定の閾値以上である場合、前記欠陥が存在すると判定することと
を更に実行させる、プログラム。
[付記10]
付記6乃至9の何れか一つに記載のプログラムであって、
前記被検査物の形状は不定形である、プログラム。
【符号の説明】
【0038】
10 検査装置
11 制御部
12 記憶部
13 撮像部
14 入力部
15 出力部
図1
図2
図3
図4
図5