(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003951
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20240109BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
B41J2/165 211
B41J2/175 301
B41J2/175 111
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103329
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】木元 太一朗
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB50
2C056JC00
2C056KC01
2C056KC16
(57)【要約】
【課題】液体が新たに供給されたときに、液体の吐出を早期に開始できる手段を提供する。
【解決手段】プリンタ10において、ヘッド32に含まれる複数のノズル33は、第1から第4ノズル列K1~K4を形成している。第1センサ41および第2センサ42は、サブタンク35に貯留されたインクの液面がセンサの位置以上であることに応じてハイレベル信号を出力し、液面がセンサの位置未満であることに応じてローレベル信号を出力する。制御部60は、第1センサ41からローレベル信号を受信した後にハイレベル信号を受信したことに応じて(S25:Yes)、第1ノズル列K1の排気パージを実行し(S28)、その後に第2センサ42からハイレベル信号を受信したことに応じて(S29:Yes)、第2から第4ノズル列K2~K4の排気パージなどを実行し(S43~S46)、その後にインクの吐出処理を実行する(S13)。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留するタンクと、
上記タンクから供給された液体を吐出する複数のノズルを含むヘッドと、
上記タンクに液体を供給するカートリッジまたは上記タンクに貯留された液体の液面が第1位置以上であることに応じて第1信号を出力し、上記液面が上記第1位置未満であることに応じて第2信号を出力する第1センサと、
制御部と、を備え、
上記複数のノズルは、第1方向に並んで複数のノズル列を形成しており、
上記制御部は、
上記第1センサから上記第2信号を受信した後に上記第1信号を受信したことに応じて、上記ヘッドに含まれる一部のノズル列に対するメンテナンス処理を実行する第1メンテナンス処理を実行し、
上記第1メンテナンス処理を実行した後に、所定の条件が満たされたことに応じて、上記ヘッドに含まれる残りのノズル列に対するメンテナンス処理を実行する第2メンテナンス処理を実行し、
上記第1メンテナンス処理および上記第2メンテナンス処理を実行した後に、上記複数のノズルからシートに対して液体を吐出させる吐出処理を実行する液体吐出装置。
【請求項2】
上記複数のノズル列は、排気ポートをそれぞれ有し、
上記制御部は、上記ヘッドのメンテナンス処理として、上記ノズル列内のノズルを吸引する吸引パージと、上記ノズル列の排気ポートを吸引する排気パージとを実行し、
上記制御部は、上記第1メンテナンス処理において、上記一部のノズル列に対して、上記吸引パージおよび上記排気パージの少なくとも一方を実行する請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
上記液面が上記第1位置より高い第2位置以上のときに第3信号を出力し、上記液面が上記第2位置未満のときに第4信号を出力する第2センサをさらに備え、
上記制御部は、上記第1メンテナンス処理を実行した後に、上記第2センサから上記第3信号を受信したことに応じて、上記第2メンテナンス処理を実行する請求項1または2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
報知機をさらに備え、
上記制御部は、上記第1メンテナンス処理を実行した後に、上記第2センサから上記第3信号を受信しないことに応じて、上記報知機を作動させる請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
上記制御部は、上記報知機を作動させた後に、上記第1センサから上記第1信号を受信したことに応じて、上記第1メンテナンス処理を実行せず、上記第2センサから上記第3信号を受信したことに応じて、上記第2メンテナンス処理を実行する請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
上記制御部は、上記複数のノズル列のすべてに対するメンテナンス処理を行う第3メンテナンス処理を実行し、
上記制御部は、上記第3メンテナンス処理を実行する際に、上記第2センサから上記第3信号を受信したことに応じて、第1量の液体でメンテナンス処理を実行し、上記第2センサから上記第4信号を、上記第1センサから上記第1信号を受信したことに応じて、上記タンクから供給される液体で上記第3メンテナンス処理を実行できるように、上記第1量より少ない第2量の液体でメンテナンス処理を実行する請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
上記制御部は、
上記第1センサから受信される信号が上記第1信号から上記第2信号に変化した後の液体の消費量である第1消費量を算出する処理と、
上記第2センサから受信される信号が上記第3信号から上記第4信号に変化した後の液体の消費量である第2消費量を算出する処理と、
上記第2センサから上記第4信号を受信した後、上記第1センサから上記第2信号を受信するまでは、上記第2消費量に基づき、上記第1センサから上記第2信号を受信した後は、上記第1消費量と固定値とに基づき、累積液体消費量を算出する処理と、を実行する請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
上記制御部は、上記第1メンテナンス処理を実行した後に、上記第1センサから上記第1信号を受信してから所定の時間が経過したことに応じて、上記第2メンテナンス処理を実行する請求項1または2に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のノズル列を含むヘッドを備えた液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを貯留するカートリッジを装着可能で、装着されたカートリッジから供給されたインクを貯留するタンクと、タンクから供給されたインクを吐出する複数のノズルを含むヘッドとを備えたプリンタが知られている。このようなプリンタでは、タンクに新しいカートリッジが装着されると、カートリッジからタンクにインクが供給される。タンクに貯留されたインクの量が所定以上になると、プリンタはヘッドにインクを導入する。
【0003】
特許文献1には、インクの液面が第1位置より高いか否かを検知する第1センサと、インクの液面が第1位置より上方の第2位置より高いか否かを検知する第2センサとを備えた画像記録装置が開示されている。この画像記録装置は、インクの液面が第2位置より低くなった後に第1位置より低くなったときに、インク残量が少ないことを報知し、カートリッジが装着された後にインクの液面が第1位置より高くなったときに、上記報知を解除する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヘッドが複数のノズル列を含む場合、従来のプリンタは、すべてのノズル列についてインクを導入可能な量のインクがタンクに貯留された後に、ヘッドにインクを導入することが考えられる。しかしながら、この構成では、タンクに貯留されたインクの量が必要量になるまでに時間がかかるので、カートリッジが装着されてからインクの吐出を開始するまでの時間が長くなる。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液体が新たに供給されたときに、液体の吐出を早期に開始できる手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明の液体吐出装置は、液体を貯留するタンクと、上記タンクから供給された液体を吐出する複数のノズルを含むヘッドと、上記タンクに液体を供給するカートリッジまたは上記タンクに貯留された液体の液面が第1位置以上であることに応じて第1信号を出力し、上記液面が上記第1位置未満であることに応じて第2信号を出力する第1センサと、制御部と、を備えている。上記複数のノズルは、第1方向に並んで複数のノズル列を形成している。上記制御部は、上記第1センサから上記第2信号を受信した後に上記第1信号を受信したことに応じて、上記ヘッドに含まれる一部のノズル列に対するメンテナンス処理を実行する第1メンテナンス処理を実行し、上記第1メンテナンス処理を実行した後に、所定の条件が満たされたことに応じて、上記ヘッドに含まれる残りのノズル列に対するメンテナンス処理を実行する第2メンテナンス処理を実行し、上記第1メンテナンス処理および上記第2メンテナンス処理を実行した後に、上記複数のノズルからシートに対して液体を吐出させる吐出処理を実行する。
【0008】
液体の液面が第1位置に到達したことに応じて、一部のノズル列に対するメンテナンス処理を先行して実行し、その後に所定の条件が満たされたことに応じて、残りのノズル列に対するメンテナンス処理を実行することにより、液体が新たに供給されたときに、メンテナンス処理を早期に開始し、液体の吐出を早期に開始できる。
【0009】
(2) 好ましくは、上記複数のノズル列は、排気ポートをそれぞれ有し、上記制御部は、上記ヘッドのメンテナンス処理として、上記ノズル列内のノズルを吸引する吸引パージと、上記ノズル列の排気ポートを吸引する排気パージとを実行し、上記制御部は、上記第1メンテナンス処理において、上記一部のノズル列に対して、上記吸引パージおよび上記排気パージの少なくとも一方を実行してもよい。
【0010】
(3) 好ましくは、上記液体吐出装置は、上記液面が上記第1位置より高い第2位置以上のときに第3信号を出力し、上記液面が上記第2位置未満のときに第4信号を出力する第2センサをさらに備え、上記制御部は、上記第1メンテナンス処理を実行した後に、上記第2センサから上記第3信号を受信したことに応じて、上記第2メンテナンス処理を実行してもよい。
【0011】
(4) 好ましくは、上記液体吐出装置は、報知機をさらに備え、上記制御部は、上記第1メンテナンス処理を実行した後に、上記第2センサから上記第3信号を受信しないことに応じて、上記報知機を作動させてもよい。
【0012】
(5) 好ましくは、上記制御部は、上記報知機を作動させた後に、上記第1センサから上記第1信号を受信したことに応じて、上記第1メンテナンス処理を実行せず、上記第2センサから上記第3信号を受信したことに応じて、上記第2メンテナンス処理を実行してもよい。
【0013】
(6) 好ましくは、上記制御部は、上記複数のノズル列のすべてに対するメンテナンス処理を行う第3メンテナンス処理を実行し、上記制御部は、上記第3メンテナンス処理を実行する際に、上記第2センサから上記第3信号を受信したことに応じて、第1量の液体でメンテナンス処理を実行し、上記第2センサから上記第4信号を、上記第1センサから上記第1信号を受信したことに応じて、上記タンクから供給される液体で上記第3メンテナンス処理を実行できるように、上記第1量より少ない第2量の液体でメンテナンス処理を実行してもよい。
【0014】
(7) 好ましくは、上記制御部は、上記第1センサから受信される信号が上記第1信号から上記第2信号に変化した後の液体の消費量である第1消費量を算出する処理と、上記第2センサから受信される信号が上記第3信号から上記第4信号に変化した後の液体の消費量である第2消費量を算出する処理と、上記第2センサから上記第4信号を受信した後、上記第1センサから上記第2信号を受信するまでは、上記第2消費量に基づき、上記第1センサから上記第2信号を受信した後は、上記第1消費量と固定値とに基づき、累積液体消費量を算出する処理と、を実行してもよい。
【0015】
(8) 好ましくは、上記制御部は、上記第1メンテナンス処理を実行した後に、上記第1センサから上記第1信号を受信してから所定の時間が経過したことに応じて、上記第2メンテナンス処理を実行してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、液体が新たに供給されたときに、液体の吐出を早期に開始できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るプリンタ10の外観斜視図である。
【
図2】
図2は、プリンタ10の内部構造を示す縦断面図である。
【
図3】
図3は、キャリッジ31の移動範囲を示す図である。
【
図5】
図5(A)は、ヘッド32におけるノズル33の配置を示す図であり、
図5(B)は、高画質モードで印刷された画像の拡大図であり、
図5(C)は、高速モードで印刷された画像の拡大図である。
【
図6】
図6は、メンテナンス部51の構成を示す図である。
【
図7】
図7は、メイン処理のフローチャートである。
【
図8】
図8は、初期導入パージ処理のフローチャートである。
【
図9】
図9は、パージ処理のフローチャートである。
【
図10】
図10は、ドットカウント処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。以下の説明では、矢印の起点から終点に向かう進みが向きと表現され、矢印の起点と終点とを結ぶ線上の往来が方向と表現される。また、プリンタ10が使用可能に設置された状態(
図1の状態)を基準として上下方向7が定義され、プリンタ10の開口13が形成された面を前面として前後方向8が定義され、プリンタ10を前面から視て左右方向9が定義される。上下方向7、前後方向8、及び左右方向9は、互いに直交している。
【0019】
[プリンタ10の概要]
本実施形態に係るプリンタ10は、インクジェット印刷方式でシートに対してインク(液体の一例)を吐出する液体吐出装置の一例である。プリンタ10は、シートにブラックのインクを吐出するモノクロプリンタである。
【0020】
プリンタ10は、概ね直方体形状の筐体11を有する。
図1および
図2に示されるように、筐体11の内部には、給送トレイ14と、給送ローラ21と、搬送ローラ22と、キャリッジ31と、キャリッジ31に搭載され、複数のノズル33を有するヘッド32と、ヘッド32に対面するプラテン23と、排出ローラ24と、排出トレイ15と、サブタンク35と、カートリッジ37を装着可能な装着ケース36と、装着ケース36に装着されたカートリッジ37およびヘッド32を連通させるチューブ34とが位置している。複数のノズル33は、ヘッド32の下面において前後方向8に並んでいる。
【0021】
プリンタ10は、給送ローラ21および搬送ローラ22を駆動して、給送トレイ14に支持されたシートを搬送路(
図2において一点鎖線で示される経路)に沿ってプラテン23の位置まで搬送する。次に、プリンタ10は、装着ケース36に装着されたカートリッジ37からサブタンク35およびチューブ34を経由して供給されるインクを、ヘッド32のノズル33から吐出させる。これにより、プラテン23に支持されたシートにインクが着弾して、形成すべき画像がシート上に印刷される。プリンタ10は、排出ローラ24を駆動して、画像が印刷されたシートを排出トレイ15に排出する。
【0022】
キャリッジ31は、左右方向9に延伸する2本のガイドレール48、49によって支持されており、左右方向9に往復移動する。プリンタ10は、キャリッジ31が左右方向9に移動する間に、ヘッド32のノズル33からインクを吐出させる。これにより、ヘッド32に対面するシートの一部の領域に画像が記録される。次に、プリンタ10は、次に画像が記録されるべき領域がヘッド32に対面するように、搬送ローラ22にシートを搬送させる。これらの処理を交互に繰り返し実行させることによって、シート上に画像が記録される。
【0023】
図1に示されるように、筐体11は、筐体11の前面12で、かつ左右方向9の右端部にカバー18を備える。カバー18の位置には、開口(図示せず)が形成されている。カバー18は、開口を閉塞させる位置(
図1に示される位置)と、開口を開放する位置との間を回動可能である。開口の奥に広がる筐体11内部の収容空間には、1個の装着ケース36が位置している。装着ケース36には、ブラックのインクを貯留したカートリッジ37が装着される。
【0024】
カートリッジ37は、インクを貯留可能な液室38(
図2参照)を有する。カートリッジ37が装着ケース36に装着されると、液室38に貯留されたインクは、液室38とサブタンク35とを連通するインク流路39を経由してサブタンク35に流入する。サブタンク35は、流入したインクを一時的に貯留する。サブタンク35に貯留されたインクは、チューブ34を経由してヘッド32に供給される。
【0025】
[液面センサと装着センサ43]
図2に示されるように、サブタンク35の後面には、第1センサ41および第2センサ42が位置する。第2センサ42は、第1センサ41の上方に位置する。第1センサ41は、サブタンク35を挟んで対向する発光素子(図示せず)および受光素子(図示せず)を含んでいる。例えば、発光素子はサブタンク35の左側に位置し、受光素子はサブタンク35の右側に位置する。少なくとも第1センサ41の位置および第2センサ42の位置では、サブタンク35は光を透過する材料で形成されている。
【0026】
サブタンク35に貯留されたインクの液面が第1センサ41の位置未満のとき、発光素子から出射された光は受光素子に入射する。このとき、第1センサ41は、例えばローレベル信号を出力する。一方、サブタンク35に貯留されたインクの液面が第1センサ41の位置以上のとき、発光素子から出射された光は、サブタンク35に貯留されたインクによって散乱し、受光素子に入射する光の量は減少する。このとき、第1センサ41は、例えばハイレベル信号を出力する。第2センサ42は、第1センサ41と同じ構成を有し、第1センサ41と同様に動作する。
【0027】
第1センサ41の上下方向7の位置は、第1位置の一例である。第1センサ41から出力されるハイレベル信号は、第1信号の一例である。第1センサ41から出力されるローレベル信号は、第2信号の一例である。第2センサ42の上下方向7の位置は、第2位置の一例である。第2センサ42から出力されるハイレベル信号は、第3信号の一例である。第2センサ42から出力されるローレベル信号は、第4信号の一例である。
【0028】
第1センサ41は、サブタンク35に貯留されたインクの液面が第1位置以上であることに応じて第1信号を出力し、液面が第1位置未満であることに応じて第2信号を出力する。第2センサ42は、サブタンク35に貯留されたインクの液面が第2位置以上であることに応じて第3信号を出力し、液面が第2位置未満であることに応じて第4信号を出力する。以下の説明では、第1センサ41および第2センサ42は、ハイレベル信号を出力しているときにはON、ローレベル信号を出力しているときにはOFFと呼ばれる。
【0029】
装着センサ43は、装着ケース36に装着されたカートリッジ37の上方に位置する。装着センサ43は、発光素子(図示せず)および受光素子(図示せず)を含んでいる。カートリッジ37の上面には、装着検知用の突起部(図示せず)が位置する。突起部は、光を透過しない材料で形成されている。装着ケース36にカートリッジ37が装着されている状態では、突起部は装着センサ43の発光素子と受光素子との間に位置する。
【0030】
装着ケース36にカートリッジ37が装着されていない状態では、発光素子から出射された光は受光素子に入射する。このとき、装着センサ43は、ローレベル信号を出力する。一方、装着ケース36にカートリッジ37が装着されている状態では、発光素子から出射された光は、突起部によって遮られ受光素子に入射しない。このとき、装着センサ43は、ハイレベル信号を出力する。
【0031】
なお、以上の説明では、第1センサ41、第2センサ42、および装着センサ43は光学式のセンサであることとしたが、これらのセンサの構成は任意でよい。例えば、第1センサ41および第2センサ42は、フロート式のセンサや、電極式のセンサでもよい。
【0032】
[キャリッジ31の移動範囲]
図3に示されるように、プラテン23は、左右方向9に長い形状を有し、上下方向7においてキャリッジ31の下方に位置する(
図2参照)。プラテン23の左端は、左右方向9において、ガイドレール48、49の左端付近に位置する。プラテン23の右端は、左右方向9において、ガイドレール48、49の中央より右に位置する。左右方向9においてプラテン23の右には、メンテナンス部51が位置する。
【0033】
メンテナンス部51は、4つのノズルキャップ52および排気ポートキャップ53を含んでいる。プリンタ10が印刷を実行している間、キャリッジ31は、プラテン23の範囲内で左右方向9に移動する。プリンタ10が印刷を実行していない間、キャリッジ31は、ヘッド32がノズルキャップ52および排気ポートキャップ53に対向する位置(以下、待機位置と称される)に位置する。
【0034】
[制御部60]
筐体11の内部には、
図4に示される制御部60が位置している。制御部60は、CPU61、ROM62、RAM63、EEPROM64、およびASIC65を備えている。ROM62は、CPU61が各種の処理を実行するためのプログラムなどを記憶している。RAM63は、CPU61がプログラムを実行する際に用いるデータや信号などを一時的に記録する記憶領域、あるいはデータ処理の作業領域として使用される。EEPROM64は、電源オフ後も保持すべき情報を記憶している。
【0035】
制御部60は、給送ローラ21、搬送ローラ22、排出ローラ24、キャリッジ31、およびヘッド32を制御する。制御部60は、ASIC65を通じてモータ(図示せず)を駆動させることによって、給送ローラ21、搬送ローラ22、および排出ローラ24を回転させる。制御部60は、ASIC65を通じてモータ(図示せず)を駆動させることによって、キャリッジ31を左右方向9に移動する。制御部60は、ASIC65を通じてヘッド32の駆動素子(図示せず)に駆動信号を出力することによって、ヘッド32のノズル33からインクを吐出させる。ASIC65は、ノズル33から吐出すべきインクの量に応じた駆動信号を出力する。
【0036】
制御部60は、第1センサ41、第2センサ42、および装着センサ43から出力された信号を、ASIC65を経由して受信する。制御部60は、第1センサ41から受信される信号に基づき、サブタンク35に貯留されたインクの液面が第1センサ41の位置以上であるか否かを検知する。制御部60は、第2センサ42から受信される信号に基づき、サブタンク35に貯留されたインクの液面が第2センサ42の位置以上であるか否かを検知する。制御部60は、装着センサ43から受信される信号に基づき、装着ケース36にカートリッジ37が装着されているか否かを検知する。
【0037】
制御部60は、メンテナンス部51の各部を制御する。制御部60は、ASIC65を通じてモータ(図示せず)を駆動させることによって、ノズルキャップ52および排気ポートキャップ53を一緒に上下方向7に移動する。制御部60は、ASIC65を通じてモータ(図示せず)を駆動させることによって、昇降部材54を上下方向7に移動する。制御部60は、ASIC65を通じて制御信号を出力することによって、流路切替部56の状態を切り換える。制御部60は、ASIC65を通じて制御信号を出力することによって、ポンプ57を動作させる。なお、メンテナンス部51の構成は後述される。
【0038】
ASIC65には、表示部16と、操作パネル17とが接続されている。表示部16は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどである。表示部16は、例えば、プリンタ10の状態を画面に表示する。操作パネル17は、ユーザによる操作に応じた操作信号を制御部60に出力する。操作パネル17は、例えば、押ボタンを有していてもよく、表示部16に重畳されたタッチセンサを有していてもよい。表示部16は、報知機の一例である。
【0039】
[ノズル33の配置]
図5(A)には、ヘッド32におけるノズル33の配置が示されている。
図5(A)において、横方向はキャリッジ31の移動方向であり、縦方向はシートの搬送方向である。以下の説明では、前者は主走査方向、後者は副走査方向と称される。本実施形態では、主走査方向と副走査方向とは直交する。
図5(A)に示される白い円は、ヘッド32を上から視たときのノズル33の位置を示す。
【0040】
ヘッド32は、第1ノズル列K1、第2ノズル列K2、第3ノズル列K3、および第4ノズル列K4を含んでいる。第1ノズル列K1は、複数のノズル33がピッチPで副走査方向(第1方向の一例)に並んだものである。第2から第4ノズル列K2~K4は、いずれも、第1ノズル列K1と同数のノズル33が同じピッチPで副走査方向に並んだものである。本実施形態では、ピッチPは1/300インチである。第2ノズル列K2は、第1ノズル列K1の右に位置する。第3ノズル列K3は、第2ノズル列K2の右に位置する。第4ノズル列K4は、第3ノズル列K3の右に位置する。なお、2個のノズル列間の主走査方向の距離は任意である。
【0041】
第2ノズル列K2内のノズル33の副走査方向の位置は、第1ノズル列K1内のノズル33の副走査方向の位置からピッチPの1/4(すなわち、1/1200インチ)だけずれている。第3ノズル列K3内のノズル33の副走査方向の位置は、第1ノズル列K1内のノズル33の副走査方向の位置からピッチPの1/2だけずれている。第4ノズル列K4内のノズル33の副走査方向の位置は、第1ノズル列K1内のノズル33の副走査方向の位置からピッチPの3/4だけずれている。
【0042】
第1から第4ノズル列K1~K4内のノズル33は、副走査方向の配置順に4個ずつのグループに分けられ、各グループ内の4個のノズル33は互いに対応する。例えば、1行目から4行目に位置するノズル33は互いに対応し、5行目から8行目に位置するノズル33は互いに対応する。
【0043】
なお、
図5(A)には各ノズル列について4個のノズル33が記載されているが、各ノズル列内のノズル33の個数は実際には4個より多い。また、ヘッド32は4個のノズル列を含むこととしたが、ヘッド32は2個、3個、あるいは5個以上のノズル列を含んでいてもよい。
【0044】
図5(A)に示される態様に複数のノズル33を配置する方法には、副走査方向の位置がノズル列ごとに異なるように複数のノズル33をヘッド32に形成する方法以外に、副走査方向の位置がノズル列間で同じになるように複数のノズル33をヘッド32に形成し、当該ヘッド32を小さい角度だけ傾けて(水平面内で小さい角度だけ回転させて)キャリッジ31に取り付ける方法がある。
【0045】
[プリンタ10の動作モード]
プリンタ10は、高画質モード、および高速モードのいずれかで動作する。
図5(B)には、高画質モードで印刷された画像が拡大して示されている。
図5(C)には、高速モードで印刷された画像が拡大して示されている。
図5(B)および
図5(C)に示される黒い円は、ノズル33から吐出されたインクによるドットを示す。
【0046】
高画質モード(
図5(B))では、キャリッジ31は主走査方向に所定の速度で移動し、キャリッジ31が主走査方向に1/600インチ移動するごとに、第1から第4ノズル列K1~K4内のノズル33からインクが吐出される。この場合、1個のノズル33から吐出されたインクによるドット群によって、画像の1ラインが形成される。したがって、高画質モードでは、シート上には、主走査方向の解像度が600dpi、副走査方向の解像度が1200dpiの画像が形成される。
【0047】
高速モード(
図5(C))では、キャリッジ31は主走査方向に高画質モードより速い速度で移動し、キャリッジ31が主走査方向に1/300インチ移動するごとに、第1から第4ノズル列K1~K4内のノズル33からインクが吐出される。ただし、第2ノズル列K2および第4ノズル列K4内のノズル33からのインク吐出タイミングは、これらのノズル33から吐出されたインクの着弾位置が、第1ノズル列K1および第3ノズル列K3内のノズル33から吐出されたインクの着弾位置に対して、キャリッジ31の主走査方向に1/600インチ分だけずれるように遅くなる。
【0048】
この場合、1個のノズル33から吐出されたインクによるドット群と、隣接するノズル33から吐出されたインクによるドット群とによって、画像の1ラインが形成される。具体的には、画像の奇数ライン目は、第1ノズル列K1内のノズル33から吐出されたインクによるドット群と、第2ノズル列K2内のノズル33から吐出されたインクによるドット群とによって形成される。画像の偶数ライン目は、第3ノズル列K3内のノズル33から吐出されたインクによるドット群と、第4ノズル列K4内のノズル33から吐出されたインクによるドット群とによって形成される。ドット間の主走査方向の間隔は、1/600インチである。したがって、高速モードでは、主走査方向の解像度が600dpi、副走査方向の解像度が600dpiの画像が印刷される。
【0049】
[メンテナンス部51]
図6には、ヘッド32のうち1個のノズル列に対応する部分と、メンテナンス部51の構成とが記載されている。ヘッド32の下面には、複数のノズル33が副走査方向に並ぶ第1から第4ノズル列K1~K4と、各ノズル列にそれぞれ対応する4つの排気ポート71とが位置する。
図6には、このうち、1個のノズル列と、当該ノズル列に対応する排気ポート71とが記載されている。
【0050】
キャリッジ31が待機位置に位置するとき、ノズルキャップ52はノズル列に対向し、排気ポートキャップ53は排気ポート71に対向する。ヘッド32の内部には、インクの流入口73とノズル33とを接続するインク流路72が形成されている。排気ポート71は、流路74を介してインク流路72の上部に接続されている。
【0051】
流路74は、拡径部75を有する。拡径部75の内部空間には、バネ76と弁体77とが位置する。弁体77は、本体部78と突出部79とを有する。本体部78は、拡径部75の内径にほぼ等しい外径を有し、拡径部75内に位置する。突出部79は、拡径部75の内径より小さい外径を有し、拡径部75から排気ポート71に向けて下方へ突出している。バネ76は、弁体77の上方に位置し、弁体77を下向きに付勢する。通常状態では、本体部78はバネ76の作用により拡径部75の底面に押しつけられており、排気ポート71は閉じた状態にある。排気ポートキャップ53の下方には、上向きに突出した当接部55を有する昇降部材54が位置する。
【0052】
ノズルキャップ52および排気ポートキャップ53は、制御部60からの制御に従い、ヘッド32の下面に当接する位置(以下、被覆位置と称される)と、ヘッド32の下面から離間した位置(以下、離間位置と称される)との間で上昇および下降する。キャリッジ31が待機位置に位置するときに、ノズルキャップ52および排気ポートキャップ53は被覆位置に位置する。このとき、ノズルキャップ52はノズル列の周囲に当接してノズル列を覆い、排気ポートキャップ53は排気ポート71の周囲に当接して排気ポート71を覆う。キャリッジ31が待機位置以外に位置するときに、ノズルキャップ52および排気ポートキャップ53は離間位置に位置する。このとき、ノズルキャップ52はノズル列の周囲から下方に離間した位置に位置し、排気ポートキャップ53は排気ポート71の周囲から下方に離間した位置に位置する。
【0053】
ノズルキャップ52の底面は、排出口81を有する。ノズルキャップ52の内部空間は、排出口81を介して流路切替部56の端子に接続されている。排気ポートキャップ53の底面は、排出口82を有する。排気ポートキャップ53の内部空間は、排出口82を介して流路切替部56の別の端子に接続されている。また、
図6には記載されていないが、流路切替部56の別の端子には、他のノズル列に対応するノズルキャップ52の内部空間が接続されている。流路切替部56の別の端子は、ポンプ57の一端に接続されている。流路切替部56は、4つのノズルキャップ52の内部空間および排気ポートキャップ53の内部空間のうちいずれかをポンプ57の一端に接続する。ポンプ57の他端は、廃液タンク58に接続されている。廃液タンク58は、パージ処理によってヘッド32から排出されたインクを貯留する。
【0054】
メンテナンス部51は、4つの排気ポート71に対応して、4つの昇降部材54を有する。昇降部材54は、制御部60からの制御に従い、ノズルキャップ52、排気ポートキャップ53および他の昇降部材54とは独立して、相対的に高い当接位置と相対的に低い非当接位置との間で上下方向7に移動する。排気ポートキャップ53が被覆位置に位置し、かつ昇降部材54が当接位置に位置するとき、当接部55の上面は突出部79の底面に当接する。このとき、弁体77は、バネ76の復元力に抗して上向きに移動し、拡径部75の底面から離れる。このため、排気ポート71は開いた状態になる。
【0055】
ノズルキャップ52および排気ポートキャップ53が被覆位置に位置し、かつ昇降部材54が非当接位置に位置するときには、排気ポート71は閉じた状態になる。この状態で、流路切替部56によってノズルキャップ52の内部空間とポンプ57とを接続した上でポンプ57を駆動することにより、インク流路72にノズル33から吸引圧が付与される。これにより、インク流路72内のインクおよび気体は、ノズル33から排出される。ノズル33から排出されたインクは、廃液タンク58に貯留される。このようにして、ノズル列内のノズル33を吸引する吸引パージが実行される。
【0056】
ノズルキャップ52および排気ポートキャップ53が被覆位置に位置し、かつ昇降部材54が当接位置に位置するときには、排気ポート71は開いた状態になる。この状態で、流路切替部56によって排気ポートキャップ53の内部空間とポンプ57とを接続した上でポンプ57を駆動することにより、インク流路72に排気ポート71から吸引圧が付与される。これにより、インク流路72内のインクおよび気体は、排気ポート71から排出される。排気ポート71からは、主に気体が排出される。このようにして、ノズル列の排気ポート71を吸引する排気パージが実行される。
【0057】
制御部60は、メンテナンス部51を制御することにより、ヘッド32のメンテナンス処理として、吸引パージと排気パージとを異なるタイミングで実行する。制御部60は、昇降部材54と流路切替部56とを制御することにより、第1から第4ノズル列K1~K4のうちから選択した1以上のノズル列について吸引パージおよび排気パージの一方を実行する。
【0058】
[メイン処理]
制御部60は、CPU61がRAM63に記憶されたプログラムを実行することにより、
図7に示されるメイン処理を実行する。制御部60は、メイン処理の実行中に条件が満たされれば、初期導入パージ処理(
図8)、パージ処理(
図9)、およびドットカウント処理(
図10)を実行する。
【0059】
図7が参照されて、制御部60が実行するメイン処理が説明される。
図7に示されるように、制御部60は、メイン処理の先頭において、印刷を実行するか否かを判断する(S11)。制御部60は、S11において、例えばユーザから印刷指示を受けた場合に、印刷を実行すると判断する。制御部60は、印刷を実行すると判断したことに応じて(S11:Yes)、S12へ進む。この場合、制御部60は、印刷が完了したか否かを判断する(S12)。制御部60は、印刷が完了していないと判断したことに応じて(S12:No)、S13へ進む。この場合、制御部60は、印刷処理(S13)とドットカウント処理(S14)とを実行し、S12へ進む。制御部60は、S13において、サブタンク35から供給されたインクを複数のノズル33からシートに対して吐出させる。制御部60は、S12において印刷が完了したと判断したことに応じて(S12:Yes)、S11へ進む。
【0060】
制御部60は、S11において印刷を実行しないと判断したことに応じて(S11:No)、S15へ進む。この場合、制御部60は、初期導入パージを実行するか否かを判断する(S15)。制御部60は、S15において、例えばユーザから初期導入パージ指示を受けた場合に、初期導入パージを実行すると判断する。制御部60は、初期導入パージを実行すると判断したことに応じて(S15:Yes)、S16へ進む。この場合、制御部60は、初期導入パージ処理を実行し(S16)、S11へ進む。
【0061】
制御部60は、S15において初期導入パージを実行しないと判断したことに応じて(S15:No)、S17へ進む。この場合、制御部60は、パージ処理を実行するか否かを判断する(S17)。パージ処理では、ヘッド32に含まれるすべてのノズル列(第1から第4ノズル列K1~K4)について吸引パージおよび排気パージの少なくとも一方が実行される。制御部60は、S17において、例えばユーザからパージ指示を受けた場合や、パージ指示を前回実行してから所定時間が経過した場合に、パージ処理を実行すると判断する。制御部60は、パージ処理を実行すると判断したことに応じて(S17:Yes)、S18へ進む。この場合、制御部60は、パージ処理を実行し(S18)、S11へ進む。制御部60は、S17においてパージ処理を実行しないと判断したことに応じて(S17:No)、S19へ進む。この場合、制御部60は、他の処理(印刷処理、初期導入パージ処理、およびパージ処理以外の処理)を実行し(S19)、S11へ進む。
【0062】
[初期導入パージ処理]
図8が参照されて、制御部60が実行する初期導入パージ処理が説明される。初期導入パージ処理では、装着ケース36にカートリッジ37が装着されてからの時間が計測され、エラーフラグが使用される。エラーフラグの初期値は、OFFである。エラーフラグは、カートリッジ37が装着されてから所定時間が経過する間に、第1センサ41がONになり、第2センサ42がONにならないときに、ONに設定される。エラーフラグがONである状態は、第1ノズル列K1の排気パージを実行済みの状態である。
【0063】
図8に示されるように、制御部60は、初期導入パージ処理の先頭において、装着センサ43から受信される信号に基づき、装着ケース36にカートリッジ37が装着されているか否かを判断する(S21)。制御部60は、カートリッジ37が装着されていないと判断したことに応じて(S21:No)、S22へ進む。この場合、制御部60は、カートリッジを装着すべきことを表示部16に表示し(S22)、S21へ進む。
【0064】
制御部60は、S21においてカートリッジ37が装着されていると判断したことに応じて(S21:Yes)、S23へ進む。この場合、制御部60は、計時を開始する(S23)。次に、制御部60は、エラーフラグがONであるか否かを判断する(S24)。エラーフラグは、第1ノズル列K1の排気パージを実行済みの場合はON、実行されていない場合はOFFに設定されている。
【0065】
制御部60は、エラーフラグがONでない(第1ノズル列K1の排気パージは実行されていない)と判断したことに応じて(S24:No)、S25へ進む。この場合、制御部60は、第1センサ41がONであるか否かを判断する(S25)。第1センサ41は、サブタンク35に貯留されたインクの液面が第1センサ41の位置以上のときにはON、液面が第1センサ41の位置未満のときにはOFFと判断される。
【0066】
制御部60は、第1センサ41がONでない(液面が第1センサ41の位置未満)と判断したことに応じて(S25:No)、S26へ進む。この場合、制御部60は、流入待ちを表示部16に表示する(S26)。次に、制御部60は、所定時間が経過したか否かを判断する(S27)。S27における所定時間は、第1ノズル列K1の排気パージを実行可能な量のインクがサブタンク35に供給されると予測される時間である。制御部60は、所定時間が経過していないと判断したことに応じて(S27:No)、S25へ進む。制御部60は、S25からS27において、サブタンク35に貯留されたインクの液面が第1センサ41の位置以上になるまで待機する。
【0067】
制御部60は、S25において第1センサ41がONである(液面が第1センサ41の位置以上)と判断したことに応じて(S25:Yes)、S28へ進む。この場合、制御部60は、第1ノズル列K1の排気パージを実行する(S28)。制御部60は、サブタンク35に貯留されたインクの液面が第1センサ41の位置以上になると、第1ノズル列K1の排気パージを実行する。
【0068】
次に、制御部60は、第2センサ42がONであるか否かを判断する(S29)。第2センサ42は、サブタンク35に貯留されたインクの液面が第2センサ42の位置以上のときにはON、第2センサ42の位置未満のときにはOFFと判断される。
【0069】
制御部60は、第2センサ42がONでない(液面が第2センサ42の位置未満)と判断したことに応じて(S29:No)、S31へ進む。この場合、制御部60は、流入待ちを表示部16に表示する(S31)。次に、制御部60は、所定時間が経過したか否かを判断する(S32)。S32における所定時間は、S43からS46におけるパージを実行可能な量のインクがサブタンク35に供給されると予測される時間であり、S27における所定時間以上である。制御部60は、所定時間が経過していないと判断したことに応じて(S32:No)、S29へ進む。制御部60は、S29、S31およびS32において、サブタンク35に貯留されたインクの液面が第2センサ42の位置以上になるまで待機する。
【0070】
制御部60は、S29において第2センサ42がONである(液面が第2センサ42の位置以上)と判断したことに応じて(S29:Yes)、S41へ進む。この場合、制御部60は、計時を終了し(S41)、エラーフラグをOFFに設定する(S42)。次に、制御部60は、第2から第4ノズル列K2~K4の排気パージ(S43)、第1ノズル列K1の吸引パージ(S44)、および第2から第4ノズル列K2~K4の吸引パージ(S45)を順に実行する。
【0071】
次に、制御部60は、残りのパージ処理を実行する(S46)。制御部60は、S46において、第1から第4ノズル列K1~K4の排気パージおよび吸引パージを複数回(例えば、3回)繰り返し実行する。このとき、制御部60は、第1センサ41および第2センサ42から受信される信号に基づき、サブタンク35に貯留されているインクの液面を検知し、十分な量のインクがサブタンク35に貯留されていることを確認した後に、各パージ処理を実行する。次に、制御部60は、ドットカウント処理を実行し(S47)、初期導入パージ処理を終了する。
【0072】
制御部60は、S24においてエラーフラグがONである(第1ノズル列K1の排気パージを実行済みである)と判断したことに応じて(S24:Yes)、S25~S28を実行することなく、S29へ進む。制御部60は、第1ノズル列K1の排気パージを実行済みの場合には、第1ノズル列K1の排気パージを実行することなく、サブタンク35に貯留されたインクの液面が第2センサ42の位置以上になるまで待機する。
【0073】
制御部60は、S27において所定時間が経過したと判断したことに応じて(S27:Yes)、S34へ進む。この場合、制御部60は、インクの流入エラーが発生したことを表示部16に表示し(S34)、初期導入パージ処理を終了する。
【0074】
制御部60は、S32において所定時間が経過したと判断したことに応じて(S32:Yes)、S33へ進む。この場合、制御部60は、エラーフラグをONに設定し(S33)、インクの流入エラーが発生したことを表示部16に表示し(S34)、初期導入パージ処理を終了する。
【0075】
初期導入パージ処理において、S28は、ヘッド32に含まれる一部のノズル列に対するメンテナンス処理を実行する第1メンテナンス処理の一例である。第2センサ42がONであることは、所定の条件の一例である。S43~S46は、ヘッド32に含まれる残りのノズル列に対するメンテナンス処理を実行する第2メンテナンス処理の一例である。メイン処理において、S13は、第1メンテナンス処理および第2メンテナンス処理を実行した後に、複数のノズル33からシートに対して液体を吐出させる吐出処理の一例である。
【0076】
制御部60が始めてS35に到達したとき、サブタンク35に貯留されたインクの液面は低く、第1センサ41はOFFである。その後、カートリッジ37からサブタンク35にインクが供給され、サブタンク35に貯留されたインクの液面が第1センサ41の位置以上になると、第1センサ41はONになる。制御部60は、第1センサ41がOFFからONに変化したことに応じて(第1センサ41から第2信号を受信した後に第1信号を受信したことに応じて)、S28(第1メンテナンス処理)を実行する。
【0077】
制御部60は、S28を実行した後に、S29において第2センサ42がONであると判断したことに応じて(第2センサ42から第3信号を受信したことに応じて)、S43~S46(第2メンテナンス処理)を実行する。制御部60は、S28を実行した後に、第2センサ42がONにならないことに応じて(第2センサ42から第3信号を受信しないことに応じて)、S34において表示部16を報知機として作動させる。制御部60は、S34において報知機を作動させた後に、第1センサ41がONしても(第1センサ41から第1信号を受信しても)、S28(第1メンテナンス処理)を実行せず、S29において第2センサ42がONであると判断したことに応じて(第2センサ42から第3信号を受信したことに応じて)、S43~S46(第2メンテナンス処理)を実行する。
【0078】
[パージ処理]
図9が参照されて、制御部60が実行するパージ処理が説明される。パージ処理では、実行するパージのランクRと、パージの実行に必要なインク量Vとが取得される。パージランクRは、例えば、1、2、3、4、5、および「なし」のいずれかである。パージランクRが高いほど、必要インク量Vは多くなる。パージランクR「なし」は、パージの種類が固定されており、パージランクRを変更できないことを示す。
【0079】
以下の説明では、インクの液面が第1センサ41の位置にあるときにサブタンク35に貯留されているインクの量をV1、インクの液面が第2センサ42の位置にあるときにサブタンク35に貯留されているインクの量をV2、第1センサ41から出力される信号がハイレベル信号からローレベル信号に変化した後(液面が第1センサ41の位置に到達した後)のインク消費量をC1、第2センサ42から出力される信号がハイレベル信号からローレベル信号に変化した後(液面が第2センサ42の位置に到達した後)のインク消費量をC2とする。
【0080】
図9に示されるように、制御部60は、パージ処理の先頭において、実行するパージのランクRを取得する(S51)。制御部60は、S51において、例えば、ユーザが設定したランクをパージのランクRとして取得してもよく、ノズルの吐出検知により取得される異常ノズルの割合や個数に基づき、パージのランクRを取得してもよい。次に、制御部60は、パージの実行に必要なインク量Vを取得する(S52)。例えば、ROM62がパージのランクRと必要インク量Vとを対応づけたテーブルを記憶しており、CPU61がS51で取得されたランクRに対応する必要インク量VをROM62に記憶されたテーブルから読み出してもよい。
【0081】
次に、制御部60は、第2センサ42がONであるか否か(液面が第2センサ42の位置以上か否か)を判断する(S53)。第2センサ42がONであるときには、パージ処理の実行に十分な量のインクがサブタンク35に貯留されている。制御部60は、第2センサ42がONであると判断したことに応じて(S53:Yes)、S54へ進む。この場合、制御部60は、ランクRのパージ(S54)とドットカウント処理(S55)とを実行し、パージ処理を終了する。
【0082】
制御部60は、S53で第2センサ42がONでない(液面が第2センサ42の位置未満)と判断したことに応じて(S53:No)、S56へ進む。この場合、制御部60は、第1センサ41がONであるか否か(液面が第1センサ41の位置以上か否か)を判断する(S56)。
【0083】
制御部60は、第1センサ41がONであると判断したことに応じて(S56:Yes)、S57へ進む。この場合、制御部60は、必要インク量VがV1(第1センサ41がONからOFFに変化する時点でのインク量)以下であるか否かを判断する(S57)。必要インク量VがV1以下である場合には、パージ処理の実行に必要な量のインクがサブタンク35に貯留されている。制御部60は、インク量VがV1以下であると判断したことに応じて(S57:Yes)、S54へ進む。この場合、制御部60は、ランクRのパージ(S54)とドットカウント処理(S55)とを実行し、パージ処理を終了する。
【0084】
制御部60は、S57においてインク量VがV1以下でないと判断したことに応じて(S57:No)、S61へ進む。この場合、制御部60は、インク量Vが(V2-C2)未満であるか否かを判断する(S61)。(V2-C2)は、この時点でサブタンク35に貯留されているインクの量である。必要インク量Vが(V2-C2)未満である場合には、パージ処理の実行に必要な量のインクがサブタンク35に貯留されている。制御部60は、必要インク量Vが(V2-C2)未満であると判断したことに応じて(S61:Yes)、S54へ進む。この場合、制御部60は、ランクRのパージ(S54)とドットカウント処理(S55)とを実行し、パージ処理を終了する。
【0085】
制御部60は、S61において必要インク量Vが(V2-C2)未満でないと判断したことに応じて(S61:No)、S62へ進む。この場合、制御部60は、パージランクRが「1」または「なし」であるか否かを判断する(S62)。パージランクRが「1」または「なし」である場合には、パージランクRを下げることができない。制御部60は、パージランクRが「1」または「なし」であると判断したことに応じて(S62:Yes)、S64へ進む。この場合、制御部60は、パージの実行を拒否することを表示部16に表示し(S64)、パージ処理を終了する。
【0086】
制御部60は、S62においてパージランクRが「1」または「なし」でないと判断したことに応じて(S62:No)、S63へ進む。この場合、制御部60は、パージランクを下げ(S63)、S57へ進む。制御部60は、S63において、下げた後のランクRのパージの実行に必要なインク量をVとする。
【0087】
制御部60は、S56において第1センサ41がONでない(液面が第1センサ41の位置未満)と判断したことに応じて(S56:No)、S65へ進む。この場合、制御部60は、必要インク量Vが(V1-C1)未満であるか否かを判断する(S62)。(V1-C1)は、この時点でサブタンク35に貯留されているインクの量である。必要インク量Vが(V1-C1)未満である場合には、パージ処理の実行に必要な量のインクがサブタンク35に貯留されている。制御部60は、必要インク量Vが(V1-C1)未満であると判断したことに応じて(S65:Yes)、S54へ進む。この場合、制御部60は、ランクRのパージ(S54)とドットカウント処理(S55)とを実行し、パージ処理を終了する。
【0088】
制御部60は、S65において必要インク量Vが(V1-C1)未満でないと判断したことに応じて(S65:No)、S66へ進む。この場合、制御部60は、パージランクが「1」または「なし」であるか否かを判断する(S66)。制御部60は、パージランクが「1」または「なし」であると判断したことに応じて(S66:Yes)、S64へ進む。この場合、制御部60は、パージの実行を拒否することを表示部16に表示し(S64)、パージ処理を終了する。
【0089】
制御部60は、S66においてパージランクRが「1」または「なし」でないと判断したことに応じて(S66:No)、S67へ進む。この場合、制御部60は、パージランクを下げ(S67)、S65へ進む。制御部60は、S67において、下げた後のランクRのパージの実行に必要なインク量をVとする。
【0090】
パージ処理は、ヘッド32に含まれる複数のノズル列のすべてに対するメンテナンス処理を行う第3メンテナンス処理の一例である。S53でYesと判断された場合のS54は、第1量の液体で実行されるメンテナンス処理の一例である。S63を実行した後に実行されるS54は、第1量より少ない第2量の液体で実行されるメンテナンス処理の一例である。
【0091】
制御部60は、複数のノズル列のすべてに対するメンテナンス処理を行う第3メンテナンス処理を実行する際に、第2センサ42から第3信号を受信したことに応じて、第1量のインクでメンテナンス処理を実行し、第2センサ42から第4信号を、第1センサ41から第1信号を受信したことに応じて、サブタンク35から供給されるインクで第3メンテナンス処理を実行できるように、第1量より少ない第2量のインクでメンテナンス処理を実行する。
【0092】
[ドットカウント処理]
図10を参照して、制御部60が実行するドットカウント処理が説明される。ドットカウント処理では、インク消費量を累積加算することにより、3つのインク消費量(ドットカウントC0、センサドットカウントC1、センサドットカウントC2)が算出される。
【0093】
ドットカウントC0は、新品のカートリッジ37が装着ケース36に装着された初期状態より後のインク消費量である。ドットカウントC0は、所定のタイミングで0にリセットされ、その後のインク消費量を累積加算することにより算出される。センサドットカウントC1は、パージ処理で説明されたC1であり、第1センサ41から受信される信号がハイレベル信号からローレベル信号に変化した後のインク消費量である。センサドットカウントC1は、第1センサ41から受信される信号がハイレベル信号からローレベル信号に変化したときに0にリセットされ、その後のインク消費量を累積加算することにより算出される。センサドットカウントC2は、パージ処理で説明されたC2であり、第2センサ42から受信される信号がハイレベル信号からローレベル信号に変化した後のインク消費量である。センサドットカウントC2は、第2センサ42から受信される信号がハイレベル信号からローレベル信号に変化したときに0にリセットされ、その後のインク消費量を累積加算することにより算出される。
【0094】
図10に示されるように、制御部60は、ドットカウント処理の先頭において、今回のインク消費量をXとする(S71)。今回のインク消費量Xは、ドットカウント処理の前に実行された印刷処理(S13)またはパージ処理(S28およびS43~S46、またはS54)で消費されたインクの量である。
【0095】
次に、制御部60は、第2センサ42がONであるか否かを判断する(S72)。制御部60は、第2センサ42がONであると判断したことに応じて(S72:Yes)、S81へ進む。制御部60は、第2センサ42がONでないと判断したことに応じて(S72:No)、S73へ進む。この場合、制御部60は、第1センサ41がONであるか否かを判断する(S73)。制御部60は、第1センサ41がONであると判断したことに応じて(S73:Yes)、S83へ進む。制御部60は、第1センサ41がONでないと判断したことに応じて(S73:No)、S86へ進む。
【0096】
サブタンク35に貯留されたインクの液面が第2センサ42の位置以上である場合に、制御部60はS81に到達する。この場合、制御部60は、ドットカウントC0にインク消費量Xを加算する(S81)。次に、制御部60は、ドットカウントC0を累積インク消費量とする(S82)。
【0097】
サブタンク35に貯留されたインクの液面が第1センサ41の位置以上かつ第2センサ42の位置未満である場合に、制御部60はS83に到達する。この場合、制御部60は、ドットカウントC0にインク消費量Xを加算し(S83)、センサドットカウントC2にもインク消費量Xを加算する(S84)。次に、制御部60は、センサドットカウントC2に基づき累積インク消費量を算出する(S85)。制御部60は、例えば、第2センサ42がONからOFFに変化した時点のドットカウントC0をRAM63に記憶させ、S85において、RAM63に記憶されたドットカウントC0とセンサドットカウントC2との和を累積インク消費量とする。
【0098】
サブタンク35に貯留されたインクの液面が第1センサ41の位置未満である場合に、制御部60はS86に到達する。この場合、制御部60は、ドットカウントC0にインク消費量Xを加算し(S86)、センサドットカウントC2にもインク消費量Xを加算し(S87)、さらにセンサドットカウントC1にもインク消費量Xを加算する(S88)。次に、制御部60は、センサドットカウントC1と(V2-V1)とに基づきにインク消費量を算出する(S89)。(V2-V1)は、インクの液面が第2センサ42の位置にあるときにサブタンク35に貯留されているインクの量V2と、インクの液面が第1センサ41の位置にあるときにサブタンク35に貯留されているインクの量V1との差であり、固定値である。制御部60は、S89において、RAM63に記憶された、第2センサ42がONからOFFに変化した時点のドットカウントC0、センサドットカウントC1、および(V2-V1)の和を累積インク消費量とする。
【0099】
制御部60は、S82、S85、およびS89を実行した後、ドットカウント処理を終了する。S82、S85、およびS89で得られた累積インク消費量は、プリンタ10における各種の処理に用いられる。例えば、制御部60は、累積インク消費量に基づいて、カートリッジ37を交換すべきことなどを表示部16に表示する。
【0100】
センサドットカウントC1は、第1消費量の一例である。S88は、第1消費量を算出する処理の一例である。センサドットカウントC2は、第2消費量の一例である。S84およびS87は、第2消費量を算出する処理の一例である。累積インク消費量は、累積液体消費量の一例である。S85およびS89は、累積液体消費量を算出する処理の一例である。
【0101】
[作用効果]
以上に示されるように、本実施形態に係るプリンタ10は、サブタンク35と、複数のノズル33を含むヘッド32と、第1センサ41と、制御部60とを備えている。複数のノズル33は、副走査方向に並んで複数のノズル列を形成している。制御部60は、第1センサ41からローレベル信号を受信した後にハイレベル信号を受信したことに応じて第1メンテナンス処理(一部のノズル列に対するメンテナンス処理を実行する処理)を実行し、第1メンテナンス処理を実行した後に、所定の条件が満たされたことに応じて、第2メンテナンス処理(残りのノズル列に対するメンテナンス処理を実行する処理)を実行し、第1メンテナンス処理および第2メンテナンス処理を実行した後に、複数のノズル33からシートに対してインクを吐出させる吐出処理を実行する。
【0102】
したがって、カートリッジ37が装着され、インクの液面が第1センサ41の位置に到達したことに応じて、一部のノズル列に対するメンテナンス処理を先行して実行し、その後に所定の条件が満たされたことに応じて、残りのノズル列に対するメンテナンス処理を実行することにより、カートリッジ37が装着され、新たなインクが供給されたときに、メンテナンス処理を早期に開始し、インクの吐出を早期に開始できる。
【0103】
複数のノズル列は、排気ポート71をそれぞれ有している。制御部60は、ヘッド32のメンテナンス処理として、吸引パージと排気パージとを実行する。制御部60は、第1メンテナンス処理において、一部のノズル列に対して、吸引パージおよび排気パージの少なくとも一方を実行する。これにより、第1メンテナンス処理において、一部のノズル列に対して吸引パージおよび排気パージの少なくとも一方を実行できる。
【0104】
制御部60は、第1メンテナンス処理を実行した後に、第2センサ42からハイレベル信号を受信したことに応じて、第2メンテナンス処理を実行する。このように第1メンテナンス処理を実行した後に、インクの液面が第2センサ42の位置に到達したことに応じて、第2メンテナンス処理を実行することにより、第2メンテナンス処理に必要な量のインクがサブタンク35に貯留された後に、第2メンテナンス処理を実行できる。
【0105】
プリンタ10は、報知機として作動する表示部16をさらに備えている。制御部60は、第1メンテナンス処理を実行した後に、第2センサ42からハイレベル信号を受信しないことに応じて、報知機を作動させる。第1メンテナンス処理を実行した後に、インクの液面が第2位置に到達しないことに応じて報知を行うことにより、ユーザはカートリッジ37を交換するなどの対応を取り得る。
【0106】
制御部60は、報知機を作動させた後に、第1センサ41からハイレベル信号を受信したことに応じて、第1メンテナンス処理を実行せず、第2センサ42からハイレベル信号を受信したことに応じて、第2メンテナンス処理を実行する。したがって、第1メンテナンス処理を既に実行済みの場合に、第1メンテナンス処理を省略することにより、メンテナンス処理で消費されるインクを節約できる。
【0107】
制御部60は、パージ処理において、複数のノズル列のすべてに対するメンテナンス処理を行う第3メンテナンス処理を実行する。制御部60は、第3メンテナンス処理を実行する際に、第2センサ42からハイレベル信号を受信したことに応じて、第1量のインクでメンテナンス処理を実行し、第2センサ42からローレベル信号を、第1センサ41からハイレベル信号を受信したことに応じて、サブタンク35から供給されるインクで第3メンテナンス処理を実行できるように、第1量より少ない第2量のインクでメンテナンス処理を実行する。インクの液面が第1センサ41の位置より高く、第2センサ42の位置より低いときには、通常より少ない量のインクでメンテナンス処理を実行することにより、サブタンク35から供給されるインクで複数のノズル列のすべてに対してメンテナンス処理を実行できる。
【0108】
制御部60は、ドットカウント処理において、センサドットカウントC1を算出する処理と、センサドットカウントC2を算出する処理と、第2センサ42からローレベル信号を受信し、第1センサ41からローレベル信号を受信するまでは、センサドットカウントC2に基づき、第1センサ41からローレベル信号を受信した後は、センサドットカウントC1と固定値(V2-V1)とに基づき、累積インク消費量を算出する処理と、を実行する。したがって、インクの液面が所定位置まで低下したことを契機として算出されるインクの消費量を用いることにより、累積インク消費量の算出精度を向上できる。
【0109】
[変形例]
上記実施形態に係るプリンタ10については、各種の変形例を構成できる。プリンタ10の第1センサ41および第2センサ42は、サブタンク35に貯留されたインクの液面に応じた信号を出力することとした。変形例に係るプリンタでは、液面センサは、タンクにインクを供給するカートリッジに貯留されたインクの液面に応じた信号を出力することとしてもよい。液面センサは、タンクにインクを供給するカートリッジまたはタンクに貯留されたインクの液面に応じた信号を出力すればよい。
【0110】
プリンタ10の制御部60は、第1センサ41がOFFからONに変化したことに応じて実行される第1メンテナンス処理において、第1ノズル列K1の排気パージを実行することとした。変形例に係るプリンタの制御部は、第1メンテナンス処理において、第1ノズル列K1の吸引パージを実行してもよく、第2から第4ノズル列K2~K4の排気パージまたは吸引パージの一部を実行してもよい。変形例に係るプリンタの制御部は、第1メンテナンス処理において、複数のノズル列のうち1以上の一部のノズル列に対して、吸引パージおよび排気パージの少なくとも一方を実行すればよい。その際、第1センサ41の位置は、第1メンテナンス処理で必要なインク量を検出できる位置に配置すればよい。また、第2センサ42の位置は、第2メンテナンス処理で必要なインク量を検出できる位置に配置すればよい。
【0111】
プリンタ10の制御部60は、第1メンテナンス処理を実行した後に、第2センサ42から受信される信号がハイレベル信号であることに応じて、第2メンテナンス処理を実行することとした。この構成では、「第2センサ42から受信される信号がハイレベル信号(第3信号)である」は、所定の条件の一例である。変形例に係るプリンタの制御部は、第1メンテナンス処理を実行した後に、第1センサ41からハイレベル信号を受信してから所定の時間が経過したことに応じて、第2メンテナンス処理を実行してもよい。この場合、「第1センサ41から受信される信号がハイレベル信号に変化したから所定の時間が経過する」は、所定の条件の一例である。変形例に係るプリンタは、少なくとも第1センサ41を備えていればよく、必ずしも第2センサ42を備えている必要はない。
【0112】
インクの液面が第1センサ41の位置に到達してから所定の時間が経過した時点で、サブタンク35は第2メンテナンス処理に必要な量のインクを貯留していると予想される。この時点で第2メンテナンス処理を実行することにより、1個の液面センサを用いて、第2メンテナンス処理を実行するタイミングを知ることができる。
【0113】
プリンタ10は、タンクとして、カートリッジ37に連結され、カートリッジ37から供給されたインクを貯留するサブタンク35を備えることとした(カートリッジモデル)。カートリッジモデルのプリンタでは、装着ケース36に新しいカートリッジ37が装着されることにより、プリンタに新たなインクが供給される。変形例に係るプリンタは、サブタンク35の代わりに、インクの注入口を有するタンクを備えていてもよい(タンクモデル)。タンクモデルのプリンタでは、ユーザがインクボトルに収容されたインクをタンクの注入口に注ぐことにより、プリンタに新たなインクが供給される。
【0114】
プリンタ10は、ヘッド32のメンテナンス処理として、初期導入パージ処理を実行することとした。プリンタ10は、ヘッド32のメンテナンス処理として、定期的なメンテナンス処理を実行してもよく、ユーザが指示したタイミングでメンテナンス処理を実行してもよい。
【0115】
プリンタ10のメンテナンス部51は、4つのノズルキャップ52と排気ポートキャップ53とを備え、排気ポートキャップ53は4つの排気ポートに対応することとした。変形例に係るプリンタのメンテナンス部は、第1ノズル列K1に対する排気パージと第2から第4ノズル列K2~K4に対する排気パージとを異なるタイミングで実行するために、第1ノズル列K1に対向するノズルキャップと、第2から第4ノズル列K2~K4に対応するノズルキャップとを備えていてもよい。また、変形例に係るプリンタのメンテナンス部は、4つの排気ポートに対応して、4つの排気ポートキャップを備えていてもよい。
【符号の説明】
【0116】
10・・・プリンタ(液体吐出装置)
16・・・表示部(報知機)
32・・・ヘッド
33・・・ノズル
35・・・サブタンク(タンク)
37・・・カートリッジ
41・・・第1センサ
42・・・第2センサ
60・・・制御部
71・・・排気ポート