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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039516
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】半導体装置およびスイッチング回路
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/0812 20060101AFI20240314BHJP
   H03K 17/08 20060101ALI20240314BHJP
   H03K 17/687 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
H03K17/0812
H03K17/08 C
H03K17/687 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144126
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 裕一
(72)【発明者】
【氏名】近松 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】蔵本 流星
【テーマコード(参考)】
5J055
【Fターム(参考)】
5J055AX33
5J055AX47
5J055AX55
5J055AX56
5J055AX64
5J055BX16
5J055CX07
5J055CX19
5J055DX13
5J055DX25
5J055DX55
5J055EX07
5J055EY01
5J055EY12
5J055EY21
5J055EY24
5J055EZ16
5J055EZ62
5J055FX12
5J055FX18
5J055FX21
5J055FX33
5J055FX35
5J055GX01
5J055GX05
(57)【要約】
【課題】耐圧オーバーを抑制可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】スイッチングトランジスタM1は、GaNチップに形成されるGaN-HEMT(HighElectronMobilityTransistor)である。インピーダンス素子である抵抗R1は、第1ゲート端子G1とスイッチングトランジスタM1のゲートの間に接続される。第1整流素子D1は、第1ゲート端子G1とスイッチングトランジスタM1のゲートの間に抵抗R1と並列に、アノードがスイッチングトランジスタM1のゲート側となる向きで接続される。第2整流素子D2は、第1ゲート端子G1とスイッチングトランジスタM1のゲートの間に抵抗R1と並列に、カソードがスイッチングトランジスタM1のゲート側となる向きで接続される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
GaNチップと、
前記GaNチップ上に形成されるGaN-HEMT(High Electron Mobility Transistor)であるスイッチングトランジスタと、
前記スイッチングトランジスタのドレインと接続されたドレイン端子と、
前記スイッチングトランジスタのソースと接続されたソース端子と、
第1ゲート端子と、
前記第1ゲート端子と前記スイッチングトランジスタのゲートの間に接続されたインピーダンス素子と、
前記第1ゲート端子と前記スイッチングトランジスタの前記ゲートの間に前記インピーダンス素子と並列に、アノードが前記スイッチングトランジスタの前記ゲート側となる向きで接続された第1整流素子と、
前記第1ゲート端子と前記スイッチングトランジスタの前記ゲートの間に前記インピーダンス素子と並列に、カソードが前記スイッチングトランジスタの前記ゲート側となる向きで接続された第2整流素子と、
を備える、半導体装置。
【請求項2】
前記GaN-HEMTの前記ゲートと直接接続される第2ゲート端子をさらに備える請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1整流素子および前記第2整流素子はそれぞれ、ゲートドレイン間をショートしたGaN-HEMTである、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記インピーダンス素子は、抵抗である、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項5】
スイッチングトランジスタン
前記インピーダンス素子は、ゲートソース間をショートしたノーマリオンのGaN-HEMTである、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載の半導体装置と、
前記半導体装置の前記スイッチングトランジスタを駆動するゲート駆動回路と、
を備える、スイッチング回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DC/DCコンバータや、AC/DCコンバータ、インバータをはじめとするパワーエレクトロニクスの分野において、ハーフブリッジ回路やフルブリッジ回路などのスイッチング回路が用いられる。
【0003】
パワーエレクトロニクス分野では、スイッチング回路に使用されるスイッチングデバイスとして、従来のSiデバイスからGaNデバイスへの移行が進められている。GaNデバイスはSiデバイスに比べてオン抵抗が小さいことから、高効率動作が可能である。また、スイッチング損失が小さいことから、スイッチング周波数を高めることができ、これにより、付随するインダクタなどのサイズを小さくでき、装置を小型化できるという利点をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0044554号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、GaN-HEMTは、Si-MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)に比べて優れた特性を有するが、ゲート耐圧が低いという問題がある。具体的にはSi-MOSFETは、ゲートソース間しきい値電圧が2~4Vであるのに対して、ゲート耐圧は±20V程度である。一方、GaN-HEMTは、しきい値電圧が0.6~2.5V程度であるのに対して、ゲート耐圧が、2~10Vと低い。
【0006】
GaN-HEMTのゲート信号の伝送経路上に、寄生インダクタが存在すると、リンギングによってゲート電圧が跳ね上がり、耐圧を超えるおそれがある。
【0007】
本開示は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、耐圧オーバーを抑制可能な半導体装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のある態様の半導体装置は、GaNチップと、GaNチップ上に形成されるGaN-HEMT(High Electron Mobility Transistor)であるスイッチングトランジスタと、スイッチングトランジスタのドレインと接続されたドレイン端子と、スイッチングトランジスタのソースと接続されたソース端子と、第1ゲート端子と、第1ゲート端子とスイッチングトランジスタのゲートの間に接続されたインピーダンス素子と、第1ゲート端子とスイッチングトランジスタのゲートの間にインピーダンス素子と並列に、アノードがスイッチングトランジスタのゲート側となる向きで接続された第1整流素子と、第1ゲート端子とスイッチングトランジスタのゲートの間にインピーダンス素子と並列に、カソードがスイッチングトランジスタのゲート側となる向きで接続された第2整流素子と、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明あるいは本開示の態様として有効である。さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0010】
本開示のある態様によれば、ゲート電圧が耐圧を超えるのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態に係るスイッチング回路のブロック図である。
図2図2は、スイッチングトランジスタMのターンオン動作を説明する波形図である。
図3図3は、スイッチングトランジスタMのターンオフ動作を説明する波形図である。
図4図4は、変形例1に係るスイッチング回路の回路図である。
図5図5は、変形例2に係るスイッチング回路の回路図である。
図6図6は、変形例3に係るスイッチング回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0013】
一実施形態に係る半導体装置は、GaNチップと、GaNチップ上に形成されるGaN-HEMT(High Electron Mobility Transistor)であるスイッチングトランジスタと、スイッチングトランジスタのドレインと接続されたドレイン端子と、スイッチングトランジスタのソースと接続されたソース端子と、第1ゲート端子と、第1ゲート端子とスイッチングトランジスタのゲートの間に接続されたインピーダンス素子と、第1ゲート端子とスイッチングトランジスタのゲートの間にインピーダンス素子と並列に、アノードがスイッチングトランジスタのゲート側となる向きで接続された第1整流素子と、第1ゲート端子とスイッチングトランジスタのゲートの間にインピーダンス素子と並列に、カソードがスイッチングトランジスタのゲート側となる向きで接続された第2整流素子と、を備える。
【0014】
この構成によると、スイッチングトランジスタをターンオンする際に、第1ゲート端子にハイ電圧Vが印加されたときに、スイッチングトランジスタのゲート容量は、第1整流素子を介して充電され、ゲート電圧は、V-Vまで上昇し、その後、抵抗を介してVまで上昇する。Vは第1整流素子の順方向電圧である。リンギングは、ハイ電圧Vが印加された直後の数nsの時間期間の間に発生するが、この間は、第1整流素子に電流が流れているため、第1整流素子による電圧クランプが有効であるから、ゲート電圧の跳ね上がりを抑制でき、ゲート耐圧を超えるのを抑制できる。
【0015】
一実施形態において、半導体装置は、GaN-HEMTのゲートと直接接続される第2ゲート端子をさらに備えてもよい。これにより、抵抗および第1整流素子、第2整流素子を経由せずに、直接、スイッチングトランジスタのゲートに、ハイ電圧あるいはロー電圧を印加することができるため、セルフターンオンなどを防止できるようになる。
【0016】
一実施形態において、第1整流素子および第2整流素子はそれぞれ、ゲートドレイン間をショートしたGaN-HEMTであってもよい。
【0017】
一実施形態において、インピーダンス素子は、抵抗であってもよい。
【0018】
一実施形態において、スイッチングトランジスタン インピーダンス素子は、ゲートソース間をショートしたノーマリオンのGaN-HEMTであってもよい。
【0019】
一実施形態に係るスイッチング回路は、上述のいずれかの半導体装置と、半導体装置のスイッチングトランジスタを駆動するゲート駆動回路と、を備えてもよい。
【0020】
一実施形態において、ゲート駆動回路は、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0021】
(実施形態)
以下、好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、開示および発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示および発明の本質的なものであるとは限らない。
【0022】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0023】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に接続された(設けられた)状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0024】
また本明細書において、電圧信号、電流信号などの電気信号、あるいは抵抗、キャパシタ、インダクタなどの回路素子に付された符号は、必要に応じてそれぞれの電圧値、電流値、あるいは回路定数(抵抗値、容量値、インダクタンス)を表すものとする。
【0025】
図1は、実施形態に係るスイッチング回路100のブロック図である。スイッチング回路100は、半導体装置200およびゲート駆動回路300を備える。半導体装置200は、GaNチップ(GaN基板)202、ドレイン端子D、第1ゲート端子G1、ソース端子Sを備える。
【0026】
スイッチングトランジスタM1は、GaNチップ202上に形成されるGaN-HEMT(High Electron Mobility Transistor)である。ドレイン端子Dは、スイッチングトランジスタM1のドレインと接続され、ソース端子Sは、スイッチングトランジスタM1のソースSと接続される。
【0027】
GaNチップ202には、スイッチングトランジスタM1に加えて、抵抗R1、第1整流素子D1、第2整流素子D2が集積化されている。
【0028】
抵抗R1は、第1ゲート端子G1とスイッチングトランジスタM1のゲートの間に接続されるインピーダンス素子である。
【0029】
第1整流素子D1は、第1ゲート端子G1とスイッチングトランジスタM1のゲートの間に抵抗R1と並列に、アノードがスイッチングトランジスタM1のゲート側となる向きで接続される。
【0030】
第2整流素子D2は、第1ゲート端子G1とスイッチングトランジスタM1のゲートの間に抵抗R1と並列に、カソードがスイッチングトランジスタM1のゲート側となる向きで接続される。
【0031】
ゲート駆動回路300は、入力端子INの制御信号に応じて、半導体装置200のスイッチングトランジスタM1を駆動する。ゲート駆動回路300は、Siチップ上に形成されており、その最終段に設けられたプリドライバ302を含む。プリドライバ302は、PMOSトランジスタMP1と、NMOSトランジスタMN1を含んでもよい。PMOSトランジスタMP1のソースには、ハイ電圧として電源電圧VDDが印加される。ここでは、各電圧の基準を、スイッチングトランジスタM1のソース(ソース端子S)にとるものとする。ここでは、理解の容易化と説明の簡潔化のため、ソース端子Sの電圧は、0Vであるとする。ゲート駆動回路300には、プリドライバ302の他に、ロジック回路やその他の回路ブロックが形成される。
【0032】
ゲート駆動回路300の第1出力端子OUT1は、半導体装置200の第1ゲート端子G1と接続されている。スイッチング回路100は、ひとつのパッケージに収容されていてもよいし、半導体装置200とゲート駆動回路300が別々のパッケージに収容されていてもよい。
【0033】
以上がスイッチング回路100の構成である。続いてその動作を説明する。
【0034】
図2は、スイッチングトランジスタM1のターンオン動作を説明する波形図である。時刻tより前において、制御信号INはローであり、ゲート駆動回路300の第1出力端子OUT1および半導体装置200の第1ゲート端子G1の電圧VG1は、0Vである。スイッチングトランジスタM1のゲート電圧Vgもゼロであり、スイッチングトランジスタM1はオフ状態である。
【0035】
時刻tに制御信号INがハイとなると、半導体装置200の第1ゲート端子G1の電圧VG1は、電源電圧VDDに向かって上昇する。スイッチングトランジスタM1のターンオン動作では、VG1>Vgの関係が成り立つから、第2整流素子D2には電流は流れず、第1整流素子D1および抵抗R1を経由して、スイッチングトランジスタM1のゲート容量が充電される。ここで、抵抗R1のインピーダンスは、第1整流素子D1のインピーダンスよりも高く、時刻tの直後は、主として、第1整流素子D1を介した経路で、スイッチングトランジスタM1のゲート容量が充電され、ゲート電圧VgはVDD-Vまで上昇する(t)。Vは、第1整流素子D1の順方向電圧である。ゲート電圧VgがVDD-Vまで達すると、第1整流素子D1に電流が流れなくなり、抵抗R1を介して、スイッチングトランジスタM1のゲート容量が充電され、ゲート電圧Vgは、電源電圧VDDまで上昇する。
【0036】
以上がスイッチング回路100のターンオン動作である。プリドライバ302の出力から、スイッチングトランジスタM1のゲートに至る経路上には、ボンディングワイヤや配線などが存在し、それらは寄生インダクタンスを有する。寄生インダクタは共振回路を形成するため、ゲート電圧をスイッチングすると共振回路にリンギングが発生する。
【0037】
このリンギングは、ターンオン直後の短い時間区間(数nsのオーダ)に発生する。リンギングが、第1整流素子D1に電流が流れる期間t~tにおいて発生するとき、第1整流素子D1による電圧クランプが有効であるから、ゲート電圧Vgは、VDD-V以下にクランプされる。これにより、ゲート電圧Vgが、スイッチングトランジスタM1のゲート耐圧を超えるのを抑制できる。
【0038】
図3は、スイッチングトランジスタM1のターンオフ動作を説明する波形図である。時刻tより前において、制御信号INはハイであり、ゲート駆動回路300の第1出力端子OUT1および半導体装置200の第1ゲート端子G1の電圧VG1は、ハイ電圧VDDである。スイッチングトランジスタM1のゲート電圧Vgもハイ電圧VDDであり、スイッチングトランジスタM1はオン状態である。
【0039】
時刻tに制御信号INがローとなると、半導体装置200の第1ゲート端子G1の電圧VG1は、0Vに向かって低下する。スイッチングトランジスタM1のターンオフ動作では、VG1<Vgの関係が成り立つから、第1整流素子D1には電流は流れず、第2整流素子D2および抵抗R1を経由して、スイッチングトランジスタM1のゲート容量が放電される。ここで、抵抗R1のインピーダンスは、第2整流素子D2のインピーダンスよりも高く、時刻tの直後は、主として、第2整流素子D2を介した経路で、スイッチングトランジスタM1のゲート容量が放電され、ゲート電圧Vgは0+Vまで低下する(t)。Vは、第2整流素子D2の順方向電圧である。ゲート電圧Vgが0+Vまで低下すると、第2整流素子D2に電流が流れなくなり、抵抗R1を介して、スイッチングトランジスタM1のゲート容量が放電され、ゲート電圧Vgは0Vまで低下する。
【0040】
以上がスイッチング回路100のターンオフ動作である。ターンオフ時にも、ゲート電圧の遷移に起因して、共振回路にリンギングが発生する。リンギングが、第2整流素子D2に電流が流れる期間t~tにおいて発生するとき、第2整流素子D2による電圧クランプが有効であるから、ゲート電圧Vgは、0V+V以上にクランプされる。これにより、ゲート電圧Vgが、スイッチングトランジスタM1の負側のゲート耐圧を超えるのを抑制できる。
【0041】
続いてスイッチング回路100の変形例を説明する。
【0042】
図4は、変形例1に係るスイッチング回路100Aの回路図である。半導体装置200Aは、第2ゲート端子G2をさらに備える。第2ゲート端子G2は、スイッチングトランジスタM1のゲートと直接接続されている。
【0043】
ゲート駆動回路300Aは、第2出力端子OUT2およびプリドライバ304をさらに備える。第2出力端子OUT2は、第2ゲート端子G2と接続される。
【0044】
プリドライバ304は、PMOSトランジスタMP2およびNMOSトランジスタMN2を含む。PMOSトランジスタMP2は、スイッチングトランジスタM1のゲート電圧Vgが電源電圧VDD付近まで上昇した後にオンとなり、スイッチングトランジスタM1のゲート電圧Vgを電源電圧VDDに固定する。NMOSトランジスタMN2は、スイッチングトランジスタM1のゲート電圧Vgが0Vに遷移した後にオンとなり、スイッチングトランジスタM1のゲート電圧Vgを0Vに固定する。
【0045】
図5は、変形例2に係るスイッチング回路100Bの回路図である。この変形例において、第1整流素子D1および第2整流素子D2は、ゲートドレイン間をショートしたGaN-HEMTで構成されている。GaN-HEMTは、ゲートが非絶縁であり、ゲートソース間に一定以上の電圧が印加されると、ダイオード特性を示す。このダイオード特性を、整流素子として利用することができる。
【0046】
図6は、変形例3に係るスイッチング回路100Cの回路図である。この変形例においては、スイッチングトランジスタM1のゲートと第1ゲート端子G1の間のインピーダンス素子として、ゲートソース間をショートしたノーマリオンのGaN-HEMT(デプレッション型トランジスタ)MD1が利用される。デプレッション型トランジスタMD1はオン状態となり、そのオン抵抗が、インピーダンス素子として機能する。
【0047】
実施形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【0048】
(付記)
本明細書には以下の技術が開示される。
【0049】
(項目1)
GaNチップと、
前記GaNチップ上に形成されるGaN-HEMT(High Electron Mobility Transistor)であるスイッチングトランジスタと、
前記スイッチングトランジスタのドレインと接続されたドレイン端子と、
前記スイッチングトランジスタのソースと接続されたソース端子と、
第1ゲート端子と、
前記第1ゲート端子と前記スイッチングトランジスタのゲートの間に接続されたインピーダンス素子と、
前記第1ゲート端子と前記スイッチングトランジスタの前記ゲートの間に前記インピーダンス素子と並列に、アノードが前記スイッチングトランジスタの前記ゲート側となる向きで接続された第1整流素子と、
前記第1ゲート端子と前記スイッチングトランジスタの前記ゲートの間に前記インピーダンス素子と並列に、カソードが前記スイッチングトランジスタの前記ゲート側となる向きで接続された第2整流素子と、
を備える、半導体装置。
【0050】
(項目2)
前記GaN-HEMTの前記ゲートと直接接続される第2ゲート端子をさらに備える項目1に記載の半導体装置。
【0051】
(項目3)
前記第1整流素子および前記第2整流素子はそれぞれ、ゲートドレイン間をショートしたGaN-HEMTである、項目1または2に記載の半導体装置。
【0052】
(項目4)
前記インピーダンス素子は、抵抗である、項目1から3のいずれかに記載の半導体装置。
【0053】
(項目5)
スイッチングトランジスタン
前記インピーダンス素子は、ゲートソース間をショートしたノーマリオンのGaN-HEMTである、項目1から4のいずれかに記載の半導体装置。
【0054】
(項目6)
項目1から5のいずれかに記載の半導体装置と、
前記半導体装置の前記スイッチングトランジスタを駆動するゲート駆動回路と、
を備える、スイッチング回路。
【符号の説明】
【0055】
100 スイッチング回路
200 半導体装置
202 GaNチップ
M1 スイッチングトランジスタ
G1 第1ゲート端子
G2 第2ゲート端子
R1 抵抗
D1 第1整流素子
D2 第2整流素子
300 ゲート駆動回路
302,304 プリドライバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6