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特開2024-39521飛行体の離着陸場、飛行体の離着陸場用の構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039521
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】飛行体の離着陸場、飛行体の離着陸場用の構造体
(51)【国際特許分類】
   B64F 1/12 20060101AFI20240314BHJP
   E01F 3/00 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
B64F1/12
E01F3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144132
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】510262150
【氏名又は名称】エアロファシリティー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147348
【弁理士】
【氏名又は名称】堀井 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】木下 幹巳
(72)【発明者】
【氏名】小山 智
(57)【要約】
【課題】飛行体の通常の繰り返し離着陸(軟着陸)を可能とし、更には、屋上設置の場合の建物への影響を最小限にして硬着陸を可能とする飛行体の離着陸場及びその離着陸場用の構造材を提供すること、及び硬着陸時の衝撃荷重を吸収することにより、硬着陸に伴う二次災害を防止し、更に、破損した離着陸構造体を交換することで、容易に補修することができる飛行体の離着陸場及びその構造体を提供すること。
【解決手段】飛行体の離着陸場であって、略水平方向に延伸する部材を積層配置して中空筒状形状を構成する構造体を、複数、水平方向に平面状に敷設する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略水平方向に延伸する部材を積層配置して中空筒状形状を構成する構造体を、複数、水平方向に平面状に敷設した飛行体の離着陸場。
【請求項2】
前記構造体の積層配置された各層の中空筒状形状が略同一であることをを特徴とする請求項1に記載の飛行体の離着陸場。
【請求項3】
前記構造体が、複数の衝撃吸収能力の異なる層を有することを特徴とする請求項1に記載の飛行体の離着陸場。
【請求項4】
前記構造体が、上部構造体と下部構造体とからなり、前記中空筒状形状の延伸方向が、上部構造体と下部構造体とで平面視で直交するように段積みしたことを特徴とする請求項2に記載の飛行体の離着陸場。
【請求項5】
前記構造体が、上部構造体と下部構造体とからなり、前記中空筒状形状の延伸方向が、上部構造体と下部構造体とで平面視で直交するように段積みしたことを特徴とする請求項3に記載の飛行体の離着陸場。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1の請求項に記載された構造体を、略水平面内に、中空筒状形状の延伸方向が、隣接する構造体の間で、直角になるように、前記構造体を敷設した構成であることを特徴とする飛行体の離着陸場。
【請求項7】
略水平方向に延伸する部材を積層配置して中空筒状形状を構成する飛行体の離着陸場に用いられる構造体。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直離着陸機などの飛行体の離着陸場(離着陸場)及びその離着陸場を構成する構造材に関し、特に、硬着陸(ハードランディング)時の衝撃を吸収する構造を有する離着陸場及びその構造材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飛行体の中でもVTOL(Vertical Take-Off and Landing aircraft)と呼ばれる垂直離着陸機の需要が拡大しつつある。垂直離着陸機は全く滑走しないで垂直方向に離着陸する航空機(飛行体)であり、有人機では、「空飛ぶクルマ」「空飛ぶタクシー」として実用化に近づいており、無人機ではドローンによる物品の配送などに広く使われ始めている。
【0003】
なお、本発明は、垂直離着陸機に限定せず、飛行体であれば、ヘリコプターなども含むものとする。
【0004】
ここで、垂直離着陸機の更なる普及のためには、離着陸場の設置の拡大が急務であり、それについては、既存建物の屋上に繰り返し離着陸が可能な離着陸場を設置することができれば、極めて有効である。
【0005】
また、災害救助などの状況では、垂直離着陸機などの飛行体を、衝撃を伴いながらも強行着陸(硬着陸)する必要がある場合もあり、そのような想定以上の荷重にも対応できることが望ましい。
【0006】
その場合、建物の耐荷重が重要な要素となる。既存建物屋上に現在設置されているヘリコプター用の緊急離着陸場(Hマーク)や緊急救助用スペース(Rマーク)は、硬着陸時の耐荷重はおろか、繰り返し行われる通常着陸時(ソフトランディング)の耐荷重さえ満足していない。
【0007】
例えば、特許文献1に記載されるように、屋上緊急離着陸場の床面に必要な強度については、使用を想定されるヘリコプタ-の全備重量の2.25倍を積載荷重として計画するとされるが、この場合でも繰り返しの離着陸には対応できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000-328521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする課題は、既存建物の屋上などに設置して、飛行体の通常の繰り返し離着陸(軟着陸)を可能とし、更には、建物への影響を最小限にして硬着陸を可能とする飛行体の離着陸場及びその離着陸場用の構造材を提供することである。
【0010】
なお、設置場所は、既存建物の屋上以外にも、既存建物の中間階、陸上、海上、他の施設や乗り物の屋根などであってもよい。
【0011】
また、硬着陸とはエンジンの故障等により、機体が急降下して地面に叩き付けられる形で衝撃を伴いながら着陸することを意味します。
【0012】
別の課題としては、硬着陸時の衝撃荷重を吸収することにより、硬着陸に伴う二次災害を防止し、更に、破損した離着陸場の構造体を交換することで、容易に補修することができる飛行体の離着陸場を提供することである。
【0013】
更に別の課題としては、離着陸場の構造体を交換及び/又は追加することで、衝撃吸収能力の違う飛行体の離着陸場を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様は、飛行体の離着陸場であって、略水平方向に延伸する部材を積層配置して中空筒状形状を構成する構造体を、複数、水平方向に平面状に敷設したことを特徴とする。
【0015】
ここで、構造体における中空筒状形状(中空筒状部分と言ってもよい)としては、断面が正六角形(ハニカム形状)であることが、積層構造した場合の上面の平滑性や、積層の密着度などから好適であるが、それに限定するものではなく、正三角形、正八角形などの多角形や、円、楕円などの曲線図形であってもよい。
【0016】
また、構造体における積層する層の数は、3層程度が好適であるが、2層や4層以上、場合によっては単層であってもよい。
【0017】
また、中空筒状形状を形成する部材の材質としては、金属、特にアルミニウムが、軽量かつ高強度ということで望ましく、その製造方法としては押出し加工によることが望ましいが、材質・製造方法とも、その方法には限定されず、鋼鉄などの金属や樹脂で、成型などの加工方法であってもよい。
【0018】
また、部材同士の結合は、接着剤、両面テープ、リベット、溶接、ボルトなど、公知の結合技術によるものとする。
【0019】
なお、飛行体の離着陸場としては、このような構造体を複数敷設したものの上面に離着陸表面となる金属板(アルミ製・鋼製など)、樹脂マット、ゴムマットなどを設けることが好ましい。また、このような構造体を複数敷設したものの下面にも下方構造物への据付のための金属板などを設けることが好ましい。
【0020】
ここで、1つの構造体が平面視で略正方形の場合に、その1辺の寸法は、垂直離着陸機などの飛行体のスキッド長、又はタイヤの間隔より短い方が好ましい。
【0021】
また、構造体を敷設して離着陸場を構成する際には、各々の構造体における中空筒状形状の延伸方向を同一方向に揃えてもよいし、あるいは直交させてもよい。
【0022】
このようにすると、本発明の飛行体の離着陸場は、主要部分が中空筒状形状を有する構造体で構成され、軽量でかつ衝撃吸収能力を高くすることができるため、既存建物の屋上などの耐荷重に制限のある場所に設置するには極めて有効である。
【0023】
また、中空筒状形状部材の弾性により、通常着陸時の衝撃には耐え、硬着陸時の衝撃荷重が掛かった場合にはこの中空筒状形状が潰れる(破損する)ことにより、硬着陸時の衝撃荷重を吸収することができる。
【0024】
次に、本発明の第2の態様は、第1の態様の飛行体の離着陸場であって、前記構造体の積層配置された各層の中空筒状形状が略同一であることをを特徴としてもよい。
【0025】
すなわち、各層における中空筒状形状の断面形状が同一の、例えば六角形(ハニカム構造)で構成されているものである。
【0026】
このようにすると中空筒状形状の構成部材が同一のものが使用でき、製作が容易であり、また、強度(耐荷重)が構造体上面の中空筒状形状のどこでもほぼ均等になるため、離着陸場の設計が容易になる。
【0027】
次に、本発明の第3の態様は、第1の態様の飛行体の離着陸場であって、前記構造体が、複数の衝撃吸収能力の異なる層を有することを特徴としてもよい。
【0028】
ここで、積層する層の数は、2層から3層程度が好ましいが、更に4層以上であってもよい。
【0029】
また、各層毎の衝撃吸収能力は、構造体を構成する部材の形状(断面構造)・寸法・材質などを異ならせて達成するものとし、上方の層の衝撃吸収能力を小さくし、下方の層の衝撃吸収能力を大きくする、あるいは、その逆など、必要とされる状況に応じて変更すればよい。
【0030】
このようにすると、通常着陸時、あるいは硬着陸時の条件に対応した適切な離着陸場の構造を定めることができる。
【0031】
次に、本発明の第4の態様は、第2の態様の飛行体の離着陸場であって、前記構造体が、上部構造体と下部構造体とからなり、前記中空筒状形状の延伸方向が、上部構造体と下部構造体とで平面視で直交するように段積みしたことを特徴としてもよい。
【0032】
段積みする段の数は、上部構造体と下部構造体の2段が好ましいが、それには限定されず、更に段数が多くてもよく、一部でも中空筒状形状の延伸方向が平面視で直交するような構成であればよい。
【0033】
このようにすると、中空筒状形状の延伸方向を段毎に直角に段積みすることにより、構造体の垂直方向の衝撃吸収能力を略水平の面内で均一化することができる。
【0034】
次に、本発明の第5の態様は、第3の態様の飛行体の離着陸場であって、前記構造体が、上部構造体と下部構造体とからなり、前記中空筒状形状の延伸方向が、上部構造体と下部構造体とで平面視で直交するように段積みしたことを特徴としてもよい。
【0035】
このようにすると、先の実施形態と比べ、複数の衝撃吸収能力の異なる層を有するため、更に、衝撃吸収の効果が高くなる場合もあり得る。
【0036】
次に、本発明の第6の態様は、飛行体の離着陸場であって、第1から第5の態様に記載された構造体を、略水平面内に、中空筒状形状の延伸方向が、隣接する構造体の間で、直角になるように、前記構造体を敷設した構成であることを特徴としてもよい。
【0037】
すなわち、このような複数の構造体を、平面視で中空筒状形状が直角配置となる構成としたものであり、千鳥配置構成と呼んでもよい。
【0038】
特に、第4及び第5の態様の飛行体の離着陸場の構造体(延伸方向が直交するように段組みされている)を千鳥配置する場合は、その構造体の最上段の中空筒状形状の延伸方向が、隣接する構造体の間で、直角になるように敷設することが好適であるが、それには限定されず、中段や最下段の中空筒状形状の延伸方向が、隣接する構造体の間で、直角であってもよい。
【0039】
このようにすれば、飛行体の着陸時に離着陸場の表面(第4、第5の態様では、中段や最下段)に潰れやすい方向がなく、更に、それ以下の層において、種々の構造上の工夫がなされているため、単層の場合よりも衝撃荷重をより吸収するなどの利点が生じるため、安全に着陸でき、構造体の損傷も少なくできる可能性がある。
【0040】
次に、本発明の第7の態様は、飛行体の離着陸場に用いられる構造体であって略水平方向に延伸する部材を積層配置して中空筒状形状を構成することを特徴としてもよい。
【0041】
これによれば、このような特徴を有する構造体自体を発明としたもので、離着陸場の形態によらず、構造体の特徴を発揮させて、効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、中空筒状形状を主要部に有する飛行体の離着陸場を実現することができ、軽量かつ高い衝撃荷重吸収能力を有することから、既存建物の屋上設置の飛行体の離着陸場として極めて大きな効果を奏する。
【0043】
また、飛行体の離着陸場の構造体が破損した場合は、破損した構造体のみを交換することで、容易に補修することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明の第1の実施形態に係る飛行体の離着陸場の斜視図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る離着陸場を構成する構造体の斜視図である。
図3】本発明の第1の実施形態の離着陸場の構造体の部材の一例の斜視図である。
図4】本発明の第1の実施形態の離着陸場の構造体の部材の別の例の斜視図である。
図5】本発明の第1の実施形態の離着陸場の構造体の部材の別の例の斜視図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係る離着陸場の硬着陸時の運用の説明図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る離着陸場を構成する構造体の斜視図である。
図8】本発明の第3の実施形態に係る離着陸場を構成する構造体の斜視図である。
図9】本発明の第4の実施形態に係る飛行体の離着陸場の部分斜視図である。
図10】本発明の第5の実施形態に係る飛行体の離着陸場の部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の第1の実施形態の飛行体の離着陸場1について図面を用いて説明する。なお、以下では本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0046】
図1は本発明の第1の実施形態に係る飛行体の離着陸場1の斜視図であり、この図において、水平方向をX軸とY軸とで表わし、鉛直方向をZ軸で表わしている。また、図中の左下部は部分の詳細を示している。
【0047】
離着陸場1は、構造体10をX軸方向に20枚、Y軸方向に20枚、合計400枚、略水平に敷き詰めたものである。ここで、構造体10の敷設(敷き詰め)時の固定については、周知の結合方法を用いればよい。
【0048】
また、詳細図に示すように、飛行体VがX軸方向にスキッド98を有している場合、構造体10のX軸方向の寸法は、スキッド98の長さより長いことが好適である。このようにすれば、2枚以上の構造体10によって、スキッド98からの荷重を受けることができる。
【0049】
なお、本図に示す飛行体Vには、両側のスキッド98を連結するクロスチューブ99が設けられている。
【0050】
図2は本発明の第1の実施形態に係る飛行体の離着陸場1を構成する構造体10の斜視図である。構造体10は略水平方向に延伸する部材11を積層配置して中空筒状形状を構成したものである。
【0051】
なお、図1に示す離着陸場は、これらの構造体10の中空筒状形状の延伸方向は同一方向(図のX軸方向)となっている。
【0052】
また、図2に示す構造体10の上方には上面板部20、構造体10の下方には下面板部30が設けられている。
【0053】
図3は本発明の第1の実施形態に係る離着陸場1を構成る構造体10の部材11の一例を示す斜視図である。ここで図3(a)はアルミニウムを押出加工によって製作した薄肉棒状の部材11であり、断面形状は正六角形の部材11aと、正六角形の半分の部材11b、11cとがあり、これを図3(b)のように組み合わせて積層し、ハニカム(六角形)の中空筒状形状の構造体10を構成している。
【0054】
なお、構造体10の構成はこれに限定しない。図4は本発明の第1の実施形態に係る離着陸場1を構成する構造体10の部材11の別の例を示す斜視図である。ここで図4(a)はアルミニウムを押出加工によって製作した薄肉棒状の部材11であり、断面形状は正六角形に2カ所の張り出しを設けたものであり、同一の部材11dを図4(b)のように組み合わせて積層し、ハニカム(六角形)の中空筒状形状の構造体10を構成している。
【0055】
更に別の構造体10の構成を説明する。図5は本発明の第1の実施形態に係る離着陸場1を構成する構造体10の部材11の更に別の例を示す斜視図である。ここで図5(a)はアルミニウムを押出加工によって製作した薄肉棒状の部材11であり、断面形状は2つの正六角形の半分のものを連結した形状の部材11eであり、同一の部材11eを図5(b)のように組み合わせて積層し、ハニカム(六角形)の中空筒状形状の構造体10を構成している。
【0056】
なお、部材11については、素材はアルミニウムで押出加工のものが、軽量で、高い精度で、かつ、比較的低廉なコストで製作可能であり、好適である。
【0057】
但し、部材11の素材についてはアルミニウムでなく、鋼など他の金属やプラスチックであってもよい。必要強度、設置場所などによって適切なものを選択すればよい。
【0058】
また、加工法についても押出加工に限定せず、板金プレス加工、展張法などによってもよい。
【0059】
上面板部20は、構造体10の上方に、周知の方法(溶着・接着・ネジ締結・リベットなど)で固着されている。この上面板部20の表面が、飛行体Vの離着陸の用に供せられる。
【0060】
下面板部30は、構造体10の下方に、周知の方法(溶着・接着・ネジ締結・リベットなど)で固着されている。更に、下面板部30と建物の屋上とが(図示しない)アンカーボルトなどの方法で固着されている。
【0061】
ここで、上面板部20、下面板部30については、離着陸場1全体に対して単一に設けても、あるいは、離着陸場1を分割して複数の構造体10毎に設けてもよく、更には、各々の構造体10毎に設けてもよい。
【0062】
次に、このような構成の飛行体の離着陸場1の運用について説明する。
【0063】
通常状態での飛行体Vの着陸の場合は、上面板部20が受ける衝撃荷重は、構造体10の中空筒状形状によって、弾性変形によって吸収される。
【0064】
また、下面板部30においては、衝撃荷重が全体に分散され、固着された建物に対しては、均質化された荷重が負荷されるため、建物に与える影響は少ない。
【0065】
飛行体Vの硬着陸、すなわち、想定以上の重量あるいは衝撃荷重を離着陸場1に与える着陸の場合、中空筒状形状が破壊されることによって、衝撃荷重を吸収することになる。
【0066】
図6は本発明の第1の実施形態に係る離着陸場の硬着陸時の運用の説明図である。図中の上方から(矢印方向)の上面板部20への飛行体Vの硬着陸による衝撃荷重があった場合の状況を示したものである。
【0067】
図示したように、飛行体Vのスキッド98によって、構造体10の上面に近い正6角形部分が完全に潰されている。一方、下面に近い部分は、完全には潰れておらず、このようにして衝撃荷重が下面までに伝わらずに吸収され、下面板部30が固着されている建物への衝撃荷重の影響が少ないことが理解できる。
【0068】
なお、硬着陸時の飛行体Vの機体や乗員の保護は、飛行体Vの機体下部のスキッド98の間に渡されたクロスチューブ99で対応することができる。
【0069】
また、硬着陸によって図示するように一部が塑性変形した離着陸場は、塑性変形した構 造体10を交換することで、安価で容易に離着陸場としての機能を復元することができる。
【0070】
なお、損傷の度合いによっては上面板部20や下面板部30の全部または一部を交換することが必要な場合もある。
【0071】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。ここでは第1の実施形態と共通する部分は同一の符号とし、また説明を省略することがある。以降の実施形態についても同様とする。
【0072】
図7は本発明の第2の実施形態に係る飛行体の離着陸場1を構成する構造体10の斜視図である。この実施形態の構造体10は、上下方向の中間部分の上部に設けられた上部構造体10aと、上下方向の中間部分の下部に設けられた下部構造体10bとからなり、更に上部構造体10aの上方に設けられた上面板部20と、上部構造体10aと下部構造体10bとの間に設けられた中間板部40と、下部構造体10bの下方に設けられた下面板部30とを有する。
【0073】
上部構造体10aは第1の実施形態における構造体10と同様の構造であるが、部材11を適宜選択して積層することにより、上下方向に1層の正6角形の中空筒状形状を有するように構成される。なお、この場合、正6角形の寸法は比較的大きい。
【0074】
下部構造体10bは第1の実施形態における構造体10と同様の構造であり、部材11を適宜選択して積層することにより、上下方向に3層の正6角形の中空筒状形状を有するように構成される。なお、この場合、正6角形の寸法は、上部構造体10aの場合と比べ、比較的小さい。
【0075】
このようにして、飛行体の離着陸場1は、上部構造体10aと下部構造体10bとで異なる垂直方向の弾性係数、衝撃荷重破壊限度を有することになる。
【0076】
また、上部構造体10aの上方に設けられた上面板部20の表面が飛行体の離着陸の用に供され、下部構造体10bの下方に設けられた下面板部30が建物への固着の用に供される。
【0077】
なお、上部構造体10aと下部構造体10bとの間には、中間板部40を設けて両方の構造体を固着するようになっている。
【0078】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図8は本発明の第3の実施形態に係る飛行体の離着陸場1を構成する構造体10の斜視図である。この実施形態の構造体10は、上下方向の中間部分の上部に設けられた上部構造体10aと、上下方向の中間部分の下部に設けられた下部構造体10bと、上部構造体10aの上方に設けられた上面板部20と、上部構造体10aと下部構造体10bとの間に設けられた中間板部40と、下部構造体10bの下方に設けられた下面板部30とを有する。
【0079】
ここで、上部構造体10aは第1の実施形態における構造体10と同様の構造であり、部材11を適宜選択して積層することにより、上下方向に3層の正6角形の中空筒状形状を有して構成される。
【0080】
下部構造体10bも、上部構造体10aと同一の構成であるが、中空筒状形状の延伸方向が上部構造体10aとは直交するようになっている。
【0081】
このようにすると、飛行体Vの離着陸場1の略鉛直方向(Z軸方向)の衝撃吸収能力を略水平の面(X軸方向とY軸方向とで構成する面)内で均一化することができる。
【0082】
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。図9は本発明の第4の実施形態に係る飛行体の離着陸場1の部分斜視図である。ここでは離着陸場1の一部分として、4個(枚)の構造体10c、10d、10e、10fが水平に格子状に配置された部分であり、これらの配置の繰り返しによって離着陸場1の全体が構成される。
【0083】
ここでは、4個の構造体10c、10d、10e、10fに共通に、1枚の上面板部20、下面板部30を有しているが、これに限定されず、更に広い範囲、あるいは狭い範囲に対して、上面板部20、下面板部30を設けてもよい。
【0084】
構造体10cは、第1の実施形態のものと同様であり、部材11を適宜選択して積層することにより、上下方向に3層の正6角形の中空筒状形状を有して構成される。構造体10d、10e、10fも構造体10cと同様の構成である。
【0085】
ここで、構造体10cと隣接する構造体10dとは、中空筒状形状の延伸方向が直交しており、また、構造体10dと隣接する構造体10eとは、中空筒状形状の延伸方向が直交しており、構造体10eと隣接する構造体10fとは、中空筒状形状の延伸方向が直交している。
【0086】
このような複数の構造体10c-10fを中空筒状形状の方向が直交するように配置する(千鳥配置と呼ぶ)場合、飛行体Vの離着陸場1の表面において、潰れやすい方向を解消することができ、より安全な飛行体の離着陸場とすることができる。
【0087】
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。図10は本発明の第5の実施形態に係る飛行体の離着陸場1の部分斜視図である。離着陸場1は、4個の構造体10g、10h、10i、10jを水平に格子状に配置して構成されたる。
【0088】
ここで、構造体10gは、図8に示す実施形態のものと同様であり、上下方向の中間部分の上部に設けられた上部構造体10g1と、上下方向の中間部分の下部に設けられた下部構造体10g2とを有している。他の構造体10hも同様に上部構造体10h1、下部構造体10h2を有しており、構造体10i、10jも同様の構成である。
【0089】
このような構造体10を用いて、離着陸場1を構成する際に、隣り合う上部構造体10g1と10h1をそれらの中空筒状形状の延伸方向が直交するように敷設する。同様に、
構造体10hの上部と構造体10iの上部、構造体10iの上部と構造体10jの上部も中空筒状形状が直交するように千鳥配置で敷設する。
【0090】
このようにすると、上部構造体での潰れやすい個所、下部構造体での潰れやすい個所のいずれもが出現しにくくなり、更に安全な離着陸場が実現できる。
【0091】
なお、ここでは、4個の構造体10g、10h、10i、10jに共通に、1枚の上面板部20、下面板部30を有しているが、これに限定されず、更に広い範囲、あるいは狭い範囲に対して、上面板部20、下面板部30を設けてもよい。
【0092】
<構造体単独発明>
なお、これまでは、飛行体の離着陸場の発明として説明してきたが、これまで説明した飛行体の離着陸場に用いる構造材を単独の発明としてもよい。これまでに述べてきた離着陸場の形態ではない場合にも、種々の特徴を有する構造材は、離着陸場の全体あるいは一部分を構成する要素として、極めて有効に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の飛行体の離着陸場は、今後、需要が増大する飛行体の運航に必要な離着陸場の設置の拡大を図ることができるため、大いに産業上の利用可能性を有する。
【0094】
なお、これまでの説明では構造体を複数敷設して離着陸場を構成するとしたが、飛行体が極めて小さい場合には、単一の構造体で離着陸場を構成することも可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 飛行体の離着陸場
10 構造体
11 部材
20 上面板部
30 下面板部
40 中間板部
V 飛行体搬送手段


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10