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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039529
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】階段昇降装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/06 20060101AFI20240314BHJP
   A61G 5/04 20130101ALI20240314BHJP
   B62B 5/02 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
A61G5/06
A61G5/04 707
A61G5/04 701
B62B5/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144148
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】506310865
【氏名又は名称】CYBERDYNE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高間 正博
(72)【発明者】
【氏名】原 大雅
(72)【発明者】
【氏名】亘理 大樹
【テーマコード(参考)】
3D050
【Fターム(参考)】
3D050AA04
3D050DD01
3D050EE08
3D050EE15
3D050FF03
3D050KK04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、電動車椅子と兼用でき、かつ対象者が着座した状態のまま自らの操作で階段を昇降移動することが可能な階段昇降装置を提案する。
【解決手段】電動車椅子1としての走行状態では、後輪駆動部33および前輪駆動部43を制御して、対象者の操作に応じた方向および速度で走行駆動させる一方、走行状態から階段の昇降状態に移行する際、前側回動駆動部42A、42Bおよび前側直動駆動部44A、44Bを制御して、第2フレーム10Bの下端が接地しても座部11を水平に維持するように一対の前輪部40A、40Bを後方移動させると同時に、昇降駆動部20を制御して、支持シャフト21を一対の後側アーム部31A、31Bおよび一対の後輪部30A、30Bとともに第3フレーム10Cの上端まで移動させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車椅子と兼用可能であり、対象者が着座した状態で所望の階段を一段ずつ昇降移動する階段昇降装置において、
前記電動車椅子の座部を水平に支持する第1フレームを基準として、足置き部を支持する第2フレームと、背もたれ部を支持する第3フレームとが、当該第1フレームの前端および後端にそれぞれ所定の傾斜角で固定されたフレーム構造体と、
前記第1フレームの後端に設けられ、前記第3フレームの長手方向に沿ってスライド自在に係合された支持シャフトを、当該第3フレームに対して水平状態を保持しながらスライド移動させる昇降駆動部と、
前記支持シャフトの中心軸を回動中心として、当該支持シャフトの両端に回動自在に接続された一対の後側アーム部の一端を、それぞれ回動駆動する後側回動駆動部と、
前記一対の後側アーム部の他端に設けられた駆動軸を回動中心として、当該一対の後側アーム部の他端に接続された一対の後輪部を、それぞれ回動駆動する後輪駆動部と、
前記一対の後側アーム部はそれぞれ一端を基準に他端が長手方向に沿って延長可能に構成され、当該一対の後側アーム部を、それぞれ対応する前記後輪部とともに延長または短縮するように直動駆動する後側直動駆動部と、
前記後側回動駆動部と同軸方向の回動軸を回動中心として、前記第1フレームの前端両側に接続された一対の前側アーム部の一端を、それぞれ回動駆動する前側回動駆動部と、
前記一対の前側アーム部の他端に設けられた駆動軸を回動中心として、当該一対の前側アーム部の他端に接続された一対の前輪部を、それぞれ回動駆動する前輪駆動部と、
前記一対の前側アーム部はそれぞれ一端を基準に他端が長手方向に沿って延長可能に構成され、当該一対の前側アーム部を、それぞれ対応する前記前輪部とともに延長または短縮するように直動駆動する前側直動駆動部と、
前記昇降駆動部、前記後側回動駆動部、前記後輪駆動部、前記後側直動駆動部、前記前側回動駆動部、前記前輪駆動部および前記前側直動駆動部を統括して制御する統括制御部とを備え、
前記統括制御部は、
前記電動車椅子としての走行状態では、前記後輪駆動部および前記前輪駆動部を制御して、前記対象者の操作に応じた方向および速度で走行駆動させる一方、
前記走行状態から前記階段の昇降状態に移行する際、前記前側回動駆動部および前記前側直動駆動部を制御して、前記第2フレームの下端が接地しても前記座部を水平に維持するように前記一対の前輪部を後方移動させると同時に、前記昇降駆動部を制御して、前記支持シャフトを前記一対の後側アーム部および前記一対の後輪部とともに前記第3フレームの上端まで移動させる
ことを特徴とする階段昇降装置。
【請求項2】
前記第1フレームの後端に設けられ、前記階段の踏み面および蹴上げ面に対する当該第1フレームの後端の近接距離を計測する第1距離計測部を備え、
前記階段の昇段準備時には、前記対象者の操作に応じて後向走行させて、前記一対の後輪部が前記階段の蹴上げ面に当接した状態にあり、
前記統括制御部は、前記第1距離計測部による計測結果に応じて、前記階段の一段ごとの昇降高さを算出しながら、前記第1フレームの下端面が前記階段の踏み面と順次当接するように、前記後側回動駆動部、前記後側直動駆動部、前記前側回動駆動部および前記前側直動駆動部を連動して制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の階段昇降装置。
【請求項3】
前記第2フレームの下端に設けられ、前記階段の踏み面および蹴上げ面に対する当該第2フレームの下端の近接距離を計測する第2距離計測部を備え、
前記階段の降段時には、前記対象者の操作に応じて前向走行させて、前記第2フレームの下端が前記階段の段鼻の手前に位置する状態にあり、
前記統括制御部は、前記第1距離計測部および前記第2距離計測部による計測結果に応じて、前記階段の一段ごとの昇降高さを算出しながら、前記第1フレームの下外面が前記階段の踏み面と順次当接するように、前記後側回動駆動部、前記後側直動駆動部、前記前側回動駆動部および前記前側直動駆動部を連動して制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の階段昇降装置。
【請求項4】
前記第1フレームの水平状態を検出する角度検出部をさらに備え、
前記統括制御部は、前記階段の昇降時には、前記角度検出部の検出結果に基づいて、前記第1フレームが前記階段の踏み面と常に平行関係を保つように、前記後側回動駆動部、前記後側直動駆動部、前記前側回動駆動部および前記前側直動駆動部を独立して制御する
ことを特徴とする請求項1から3までのいずれか一項に記載の階段昇降装置。
【請求項5】
前記統括制御部は、前記階段の昇降時に、前記第1フレームの下端面が前記階段の踏み面と当接した着床状態から次段の踏み面に移行する際、前記一対の後輪部および前記一対の前輪部をすべて当該踏み面から離着させるように、前記後側回動駆動部、前記後側直動駆動部、前記前側回動駆動部および前記前側直動駆動部を制御する
ことを特徴とする請求項1から3までのいずれか一項に記載の階段昇降装置。
【請求項6】
前記昇降駆動部、前記後側回動駆動部、前記後側直動駆動部、前記前側回動駆動部および前記前側直動駆動部は、それぞれロック機構を有し、前記昇降状態において装置全体が給電オフになっても、当該各ロック機構により、前記支持シャフト、前記一対の後側アーム部および前記一対の前側アーム部が給電オフ時の姿勢で固定保持される
ことを特徴とする請求項1から3までのいずれか一項に記載の階段昇降装置。
【請求項7】
前記一対の後輪部は、駆動輪および少なくとも1以上の従動輪に無端ベルトが掛け渡された無限軌道体からそれぞれ構成され、
前記後輪駆動部は、前記一対の後側アーム部の他端に設けられた前記駆動軸を回動中心として、当該一対の後側アーム部の他端に接続された前記一対の駆動輪を、それぞれ回動駆動するようにして、前記一対の無限軌道体を走行駆動させる
ことを特徴とする請求項1から3までのいずれか一項に記載の階段昇降装置。
【請求項8】
前記一対の前輪部は、駆動輪および少なくとも1以上の従動輪に無端ベルトが掛け渡された無限軌道体からそれぞれ構成され、
前記前輪駆動部は、前記一対の前側アーム部の他端に設けられた前記駆動軸を回動中心として、当該一対の前側アーム部の他端に接続された前記一対の駆動輪を、それぞれ回動駆動するようにして、前記一対の無限軌道体を走行駆動させる
ことを特徴とする請求項1から3までのいずれか一項に記載の階段昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車椅子と兼用可能であり、対象者が着座した状態で所望の階段を一段ずつ昇降移動する階段昇降装置を提案しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
従来、対象者を搭載して階段を昇降可能な階段昇降機が多数提案されている。例えば、螺旋階段でもガイドレールが不要で昇降可能な階段昇降装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
この階段昇降装置では、階段の踏み板面に対して水平方向の二次元平面内に回転移動および平行移動が可能なアーム機構を有し、直線状の階段のみならず、螺旋階段のように経路が曲がった階段においても、階段昇降を行い得るようになされている。
【0004】
また、人や物の階段昇降を支援や補助する階段昇降装置も提案されている(特許文献2参照)。この階段昇降装置では、搭載部と昇降部とが相対的に軌跡に沿って循環する並進運動を行うことが可能な循環移動機構を有し、階段の踏み面から面で支持しながら左右方向のみならず前後方向も安定して安全に昇降し得るようになされている。
【0005】
さらに、折畳み可能な支持棒を上下に揺動させるようにして無限軌道のように階段を昇降するようになされた電動車椅子も提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-235229号公報
【特許文献2】特開2019-127197号公報
【特許文献3】特開2022-95277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述の特許文献1の階段昇降装置は、螺旋階段のような螺旋状に昇降する階段においても昇降可能であるが、前後の直動装置による支持部材の垂直高さを揃える必要があるため、一段ごとの昇降高さが不揃いな階段に対しては適用することが非常に困難となる。さらに一段ずつ前後の直動装置をボールねじ駆動により昇降させるため、階段昇降に要する時間が著しく長くかかるという問題も生じる。
【0008】
また、上述の特許文献2の階段昇降装置では、循環移動機構が単一駆動源により所定の閉じられた軌跡に沿って移動する移動体を有しており、この移動体と搭載部が連結されて当該軌跡に沿って相対移動する構成であるため、運動軌跡の形状および長さによって移動範囲が制限されるのみならず、棒状アームを支点とする支持構造のために装置全体に対する荷重割合が偏っており、安全性の面で実用上不十分である。
【0009】
さらに、上述の特許文献3の電動車椅子では、無限軌道の代わりに支持棒による階段昇降機構を有しているが、座部を傾斜させながら支持棒を階段の段鼻に押し当てて滑らせるため、座部に着座する対象者の安全性を確保することが十分でない問題が残る。
【0010】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、電動車椅子と兼用でき、かつ対象者が着座した状態のまま自らの操作で階段を昇降移動することが可能な階段昇降装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するため本発明においては、電動車椅子と兼用可能であり、対象者が着座した状態で所望の階段を一段ずつ昇降移動する階段昇降装置において、電動車椅子の座部を水平に支持する第1フレームを基準として、足置き部を支持する第2フレームと、背もたれ部を支持する第3フレームとが、当該第1フレームの前端および後端にそれぞれ所定の傾斜角で固定されたフレーム構造体と、第1フレームの後端に設けられ、第3フレームの長手方向に沿ってスライド自在に係合された支持シャフトを、当該第3フレームに対して水平状態を保持しながらスライド移動させる昇降駆動部と、支持シャフトの中心軸を回動中心として、当該支持シャフトの両端に回動自在に接続された一対の後側アーム部の一端を、それぞれ回動駆動する後側回動駆動部と、一対の後側アーム部の他端に設けられた駆動軸を回動中心として、当該一対の後側アーム部の他端に接続された一対の後輪部を、それぞれ回動駆動する後輪駆動部と、一対の後側アーム部はそれぞれ一端を基準に他端が長手方向に沿って延長可能に構成され、当該一対の後側アーム部を、それぞれ対応する後輪部とともに延長または短縮するように直動駆動する後側直動駆動部と、後側回動駆動部と同軸方向の回動軸を回動中心として、第1フレームの前端両側に接続された一対の前側アーム部の一端を、それぞれ回動駆動する前側回動駆動部と、一対の前側アーム部の他端に設けられた駆動軸を回動中心として、当該一対の前側アーム部の他端に接続された一対の前輪部を、それぞれ回動駆動する前輪駆動部と、一対の前側アーム部はそれぞれ一端を基準に他端が長手方向に沿って延長可能に構成され、当該一対の前側アーム部を、それぞれ対応する前輪部とともに延長または短縮するように直動駆動する前側直動駆動部と、昇降駆動部、後側回動駆動部、後輪駆動部、後側直動駆動部、前側回動駆動部、前輪駆動部および前側直動駆動部を統括して制御する統括制御部とを備え、統括制御部は、電動車椅子としての走行状態では、後輪駆動部および前輪駆動部を制御して、対象者の操作に応じた方向および速度で走行駆動させる一方、走行状態から階段の昇降状態に移行する際、前側回動駆動部および前側直動駆動部を制御して、第2フレームの下端が接地しても座部を水平に維持するように一対の前輪部を後方移動させると同時に、昇降駆動部を制御して、支持シャフトを一対の後側アーム部および一対の後輪部とともに第3フレームの上端まで移動させるようにした。
【0012】
この結果、階段昇降装置では、電動車椅子に乗っている対象者が階段に差し掛かった際、当該対象者は着座した状態のまま自らの操作で階段の昇降準備に移行することができる。
【0013】
また本発明においては、第1フレームの後端に設けられ、階段の踏み面および蹴上げ面に対する当該第1フレームの後端の近接距離を計測する第1距離計測部を備え、階段の昇段準備時には、対象者の操作に応じて後向走行させて、一対の後輪部が階段の蹴上げ面に当接した状態にあり、統括制御部は、第1距離計測部による計測結果に応じて、階段の一段ごとの昇降高さを算出しながら、第1フレームの下端面が階段の踏み面と順次当接するように、後側回動駆動部、後側直動駆動部、前側回動駆動部および前側直動駆動部を連動して制御するようにした。この結果、階段昇降装置では、対象者は着座した状態のまま階段を一段ずつ昇降移動することができる。
【0014】
さらに本発明においては、第2フレームの下端に設けられ、階段の踏み面および蹴上げ面に対する当該第2フレームの下端の近接距離を計測する第2距離計測部を備え、階段の降段時には、対象者の操作に応じて前向走行させて、第2フレームの下端が階段の段鼻の手前に位置する状態にあり、統括制御部は、第1距離計測部および第2距離計測部による計測結果に応じて、階段の一段ごとの昇降高さを算出しながら、第1フレームの下外面が階段の踏み面と順次当接するように、後側回動駆動部、後側直動駆動部、前側回動駆動部および前側直動駆動部を連動して制御するようにした。この結果、階段昇降装置では、対象者は着座した状態のまま階段を一段ずつ降段移動することができる。
【0015】
さらに本発明においては、第1フレームの水平状態を検出する角度検出部をさらに備え、統括制御部は、階段の昇降時には、角度検出部の検出結果に基づいて、第1フレームが階段の踏み面と常に平行関係を保つように、後側回動駆動部、後側直動駆動部、前側回動駆動部および前側直動駆動部を独立して制御するようにした。この結果、階段昇降装置では、階段の昇降時において座面が常に平坦に保たれるため、対象者は安定した状態で着座したまま階段を昇降移動することができる。
【0016】
さらに本発明においては、統括制御部は、階段の昇降時に、第1フレームの下端面が階段の踏み面と当接した着床状態から次段の踏み面に移行する際、一対の後輪部および一対の前輪部をすべて当該踏み面から離着させるように、後側回動駆動部、後側直動駆動部、前側回動駆動部および前側直動駆動部を制御するようにした。
【0017】
この結果、階段昇降装置では、座部を支持する第1フレームが階段の踏み面に接地した安定状態において、一対の後輪部および一対の前輪部をすべて階段の踏み面から離着させることにより、対象者の荷重を階段の踏み面にかける分、昇降駆動時の負荷をその分だけ減少させることができ、駆動効率を格段と向上させることができる。
【0018】
さらに本発明においては、昇降駆動部、後側回動駆動部、後側直動駆動部、前側回動駆動部および前側直動駆動部は、それぞれロック機構を有し、昇降状態において装置全体が給電オフになっても、当該各ロック機構により、支持シャフト、一対の後側アーム部および一対の前側アーム部が給電オフ時の姿勢で固定保持されるようにした。この結果、階段昇降装置では、階段昇降時に給電オフ状態になっても常に対象者の安全性を確保することができる。
【0019】
さらに本発明においては、一対の後輪部は、駆動輪および少なくとも1以上の従動輪に無端ベルトが掛け渡された無限軌道体からそれぞれ構成され、後輪駆動部は、一対の後側アーム部の他端に設けられた駆動軸を回動中心として、当該一対の後側アーム部の他端に接続された一対の駆動輪を、それぞれ回動駆動するようにして、一対の無限軌道体を走行駆動させるようにした。
【0020】
この結果、階段昇降装置では、一対の後輪部を車輪の点接触から無電軌道体の面接触に変更することにより、階段の昇降時(特に昇段移動時)における踏み面に対する後輪部の滑り可能性を格段と低減することができる。
【0021】
さらに本発明においては、一対の前輪部は、駆動輪および少なくとも1以上の従動輪に無端ベルトが掛け渡された無限軌道体からそれぞれ構成され、前輪駆動部は、一対の前側アーム部の他端に設けられた駆動軸を回動中心として、当該一対の前側アーム部の他端に接続された一対の駆動輪を、それぞれ回動駆動するようにして、一対の無限軌道体を走行駆動させるようにした。
【0022】
この結果、階段昇降装置では、一対の前輪部を車輪の点接触から無電軌道体の面接触に変更することにより、階段の昇降時(特に降段移動)における踏み面に対する前輪部の滑り可能性を格段と低減することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、対象者が着座した状態のまま自らの操作で安全かつ安定した階段昇降をすることが可能な階段昇降装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施の形態による階段昇降装置の外観構成を示す斜視図である。
図2】本実施の形態による階段昇降装置の内部構成を示すブロック図である。
図3図1に示す階段昇降装置の走行状態および階段の昇降状態を示す略線図である。
図4】階段昇降装置による階段の昇段時の動作の説明に供する略線図である。
図5】階段昇降装置による階段の昇段時の動作の説明に供する略線図である。
図6】階段昇降装置による階段の昇段時の動作の説明に供する略線図である。
図7】階段昇降装置による階段の降段時の動作の説明に供する略線図である。
図8】階段昇降装置による階段の降段時の動作の説明に供する略線図である。
図9】階段昇降装置による階段の降段時の動作の説明に供する略線図である。
図10】他の実施の形態による階段昇降装置の外観構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0026】
(1)本実施の形態による階段昇降装置の構成
図1(A)および(B)に本実施の形態による階段昇降装置1の外観構成を示す。階段昇降装置1は、対象者の操作に応じて床面を走行する四輪駆動型の電動車椅子と兼用可能であり、対象者が着座した状態で所望の階段を一段ずつ昇降移動することが可能である。
【0027】
階段昇降装置1は、第1フレーム10A、第2フレーム10Bおよび第3フレーム10Cが一体化するように接続されたフレーム構造体10を有する。このフレーム構造体10は、電動車椅子の座部11を水平に支持する第1フレーム10Aを基準として、足置き部12を支持する第2フレーム10Bと、背もたれ部13を支持する第3フレーム10Cとが、当該第1フレーム10Aの前端および後端にそれぞれ所定の傾斜角で固定されている。
【0028】
第1フレーム10Aの後端には、昇降駆動部20が設けられ、第3フレーム10Cの長手方向に沿ってスライド自在に係合された支持シャフト21を、当該第3フレーム10Cに対して水平状態を保持しながらスライド移動させるようになされている。
【0029】
昇降駆動部20は、駆動用アクチュエータ(図示せず)を有し、当該駆動用アクチュエータの出力軸に係合されたボールねじ(図示せず)の回転運動を支持シャフト21の直線運動に変換させながら、当該支持シャフト21を第3フレーム10Cの長手方向に沿ってスライド移動させる。
【0030】
支持シャフト21の両端には、第3フレーム10Cを間に挟むように、先端に後輪部30A、30Bが設けられた一対の後側アーム部31A、31Bが、それぞれ対応する駆動機構系(後側回動駆動部32A、32B、後輪駆動部33A、33B(図2参照)、後側直動駆動部34A、34B)と一体となって係合されている。
【0031】
後側回動駆動部32A、32Bは、支持シャフト21の中心軸を回動中心として、当該支持シャフト21の両端に回動自在に接続された一対の後側アーム部31A、31Bの一端を、それぞれ回動駆動する。
【0032】
後輪駆動部33A、33Bは、一対の後側アーム部31A、31Bの他端に設けられた駆動軸を回動中心として、当該一対の後側アーム部31A、31Bの他端に接続された一対の後輪部30A、30Bを、それぞれ回動駆動する。
【0033】
一対の後側アーム部31A、31Bは、それぞれ一端を基準に他端が長手方向に沿って延長可能に構成されている。後側直動駆動部34A、34Bは、一対の後側アーム部31A、31Bを、それぞれ対応する後輪部30A、30Bとともに延長または短縮するように直動駆動する。
【0034】
第1フレーム10Aの前端両側には、当該第1フレーム10Aを間に挟むように、先端に前輪部40A、40Bが設けられた一対の前側アーム部41A、41Bが、それぞれ対応する駆動機構系(前側回動駆動部42A、42B、前輪駆動部43A、43B(図2参照)、前側直動駆動部44A、44B)と一体となって係合されている。
【0035】
前側回動駆動部42A、42Bは、上述した後側回動駆動部32A、32Bと同軸方向の回動軸を回動中心として、第1フレーム10Aの前端両側に接続された一対の前側アーム部41A、41Bの一端を、それぞれ回動駆動する。
【0036】
前輪駆動部43A、43Bは、一対の前側アーム部41A、41Bの他端に設けられた駆動軸を回動中心として、当該一対の前側アーム部41A、41Bの他端に接続された一対の前輪部40A、40Bを、それぞれ回動駆動する。
【0037】
一対の前側アーム部41A、41Bは、それぞれ一端を基準に他端が長手方向に沿って延長可能に構成されている。前側直動駆動部44A、44Bは、一対の前側アーム部41A、41Bを、それぞれ対応する前輪部40A、40Bとともに延長または短縮するように直動駆動する。
【0038】
なお、フレーム構造体10における第2フレーム10Bは、第1フレーム10Aに対して所定の傾斜角で固定されているが、第1フレーム10Aとの接続部から下端までの長さを階段の蹴上げ面に合わせて伸縮自在に調整することができるとともに、当該下端に支持されている足置き部12を階段の踏み面に合わせて回転自在に可動することができるようになされている。
【0039】
ここで図2に階段昇降装置1の制御系に関する回路構成を示す。階段昇降装置1には、第3フレーム10C内部にCPU(Central Processing Unit)やメモリが搭載された MCM(Multi-Chip Module)からなる統括制御部50が内蔵され、昇降駆動部20、後側回動駆動部32A、32B、後輪駆動部33A、33B、後側直動駆動部34A、34B、前側回動駆動部42A、42B、前輪駆動部43A、43Bおよび前側直動駆動部44A、44Bを統括して制御するようになされている。
【0040】
昇降駆動部20、後側回動駆動部32A、32B、後輪駆動部33A、33B、後側直動駆動部34A、34B、前側回動駆動部42A、42B、前輪駆動部43A、43Bおよび前側直動駆動部44A、44Bは、それぞれ駆動用アクチュエータ(図示せず)を有し、統括制御部50による制御に応じて各駆動用アクチュエータを駆動させて出力を伝達させるようになされている。
【0041】
統括制御部50は、図3(A)に示すような電動車椅子としての走行状態では、一対の後輪駆動部33A、33Bおよび一対の前輪駆動部43A、43Bをそれぞれ独立して制御して、後輪部30A、30Bおよび前輪部40A、40Bの前進回転または後進回転によって前進または後進し、対象者の操作に応じて後輪部30A、30Bおよび前輪部40A、40Bの前進方向を所望方向に向けることによって所望の速度で前進しつつ右あるいは左に走行する。
【0042】
また統括制御部50は、図3(B)に示すような走行状態から階段の昇降状態に移行する際、前側回動駆動部42A、42Bおよび前側直動駆動部44A、44Bを制御して、第2フレーム10Bの下端が接地しても座部を水平に維持するように一対の前輪部40A、40Bを後方移動させると同時に、昇降駆動部20を制御して、支持シャフト21を一対の後側アーム部31A、31Bおよび一対の後輪部30A、30Bとともに第3フレーム10Cの上端まで移動させる。
【0043】
このように階段昇降装置1では、電動車椅子に乗っている対象者が階段に差し掛かった際、当該対象者は着座した状態のまま自らの操作で階段の昇降準備に移行することができる。
【0044】
また上述の図2において、第1距離計測部60は、第1フレーム10Aの後端に設けられ、階段の踏み面および蹴上げ面に対する当該第1フレーム10Aの後端の近接距離を計測する。第2距離計測部61は、第2フレーム10Bの下端に設けられ、階段の踏み面および蹴上げ面に対する当該第2フレーム10Bの下端の近接距離を計測する。さらに、角度検出部62は、第1フレーム10Aの水平状態を検出する。
【0045】
さらに階段昇降装置1は、二次電池またはキャパシタからなる比較的大容量の駆動用バッテリ63を第1フレーム(座部11の下方)10Aに内蔵しており、昇降駆動部20、後側回動駆動部32A、32B、後輪駆動部33A、33B、後側直動駆動部34A、34B、前側回動駆動部42A、42B、前輪駆動部43A、43Bおよび前側直動駆動部44A、44Bの各駆動用アクチュエータに対する電力供給が可能である。
【0046】
(2)階段昇降装置による階段の昇段時の動作
階段昇降装置1において、電動車椅子としての走行状態から階段の昇段準備状態を経て、階段を一段ずつ昇段移動する動作を説明する。
【0047】
階段昇降装置1において、統括制御部50は、対象者の操作に応じて後向走行させて、一対の後輪部30A、30Bが階段の1段目の蹴上げ面に当接した状態となるように、走行状態から階段の昇段準備をする(図4(A))。
【0048】
統括制御部50は、前側回動駆動部42A、42Bおよび前側直動駆動部44A、44Bを制御して、第2フレーム10Bの下端が接地しても座部11を水平に維持するように一対の前輪部40A、40Bを後方移動させて、階段の1段目の蹴上げ面に当接させると同時に、昇降駆動部20を制御して、支持シャフト21を一対の後側アーム部31A、31Bおよび一対の後輪部30A、30Bとともに第3フレーム10Cの上端まで移動させる(図4(B))。
【0049】
続いて、統括制御部50は、第1距離計測部60による計測結果に応じて、階段の一段ごとの昇降高さを算出しながら、前側回動駆動部42A、42Bおよび前側直動駆動部44A、44Bを連動して制御するようにして、一対の前輪部40A、40Bをほぼ同等の高さ位置に相当する数段目の蹴上げ面に当接させる(図4(C))。
【0050】
一対の後輪部30A、30Bおよび一対の前輪部40A、40Bによる4点支持状態において、統括制御部50は、第1フレーム10Aの下端面がほぼ同等の高さ位置に相当する階段の踏み面と当接するように、後側回動駆動部32A、32B、後側直動駆動部34A、34B、前側回動駆動部42A、42Bおよび前側直動駆動部44A、44Bを連動して制御する(図5(A))。
【0051】
階段の最初の踏み面(1段目)に着床した後、2段目以降は、統括制御部50は、第1距離計測部60による計測結果に応じて、階段の一段ごとの昇降高さを算出しながら、第1フレーム10Aの下端面が階段の踏み面と順次当接するように、後側回動駆動部32A、32B、後側直動駆動部34A、34B、前側回動駆動部42A、42Bおよび前側直動駆動部44A、44Bを連動して制御する(図5(B)から図6(B)まで)。
【0052】
このような階段の昇段時に、第1フレーム10Aの下端面が階段の踏み面と当接した着床状態から次段の踏み面に移行する際、統括制御部50は、一対の後輪部30A、30Bおよび一対の前輪部40A、40Bをすべて当該踏み面から離着させるように(4点支持でのリフトアップ状態となるように)、後側回動駆動部32A、32B、後側直動駆動部34A、34B、前側回動駆動部42A、42Bおよび前側直動駆動部44A、44Bを制御する(図5(B)および図6(B))。
【0053】
この結果、階段昇降装置1では、座部11を支持する第1フレーム10Aが階段の踏み面に接地した安定状態において、一対の後輪部30A、30Bおよび一対の前輪部40A、40Bをすべて階段の踏み面から離着させることにより、対象者の荷重を階段の踏み面にかける分、昇降駆動時の負荷をその分だけ減少させることができ、駆動効率を格段と向上させることができる。
【0054】
また階段の昇段時には、統括制御部50は、角度検出部62の検出結果に基づいて、第1フレーム10Aが階段の踏み面と常に平行関係を保つように、後側回動駆動部32A、32B、後側直動駆動部34A、34B、前側回動駆動部42A、42Bおよび前側直動駆動部44A、44Bを独立して制御する(図4(C)、図5(B)および図6(B))。この結果、階段昇降装置1では、階段の昇段時において座面が常に平坦に保たれるため、対象者は安定した状態で着座したまま階段を昇段移動することができる。
【0055】
なお、階段昇降装置1において、昇降駆動部20、後側回動駆動部32A、32B、後側直動駆動部34A、34B、前側回動駆動部42A、42Bおよび前側直動駆動部44A、44Bは、それぞれロック機構(図示せず)を有し、昇段状態において装置全体が給電オフになっても、当該各ロック機構により、支持シャフト21、一対の後側アーム部31A、31Bおよび一対の前側アーム部41A、41Bが給電オフ時の姿勢で固定保持される。この結果、階段昇降装置1では、階段昇段時に給電オフ状態になっても常に対象者の安全性を確保することができる。
【0056】
このように階段昇降装置1では、電動車椅子としての走行状態から階段の昇段準備状態を経て、対象者は着座した状態のまま階段を一段ずつ昇段移動することができる。
【0057】
(3)階段昇降装置による階段の降段時の動作
階段昇降装置1において、電動車椅子としての走行状態から階段の降段準備状態を経て、階段を一段ずつ降段移動する動作を説明する。
【0058】
階段昇降装置1において、統括制御部50は、対象者の操作に応じて前向走行させて、第2フレーム10Bの下端が階段の段鼻の手前に位置する状態となるように、走行状態から階段の降段準備をする(図7(A))。
【0059】
統括制御部50は、前側回動駆動部42A、42Bおよび前側直動駆動部44A、44Bを制御して、第2フレーム10Bの下端が接地しても座部11を水平に維持するように一対の前輪部40A、40Bを前方かつ下方移動させて、階段の1段目の踏み面に当接させる(図7(B))。
【0060】
続いて、統括制御部50は、前側回動駆動部42A、42Bおよび前側直動駆動部44A、44Bを制御して、第2フレーム10Bの下端が接地しても座部11を水平に維持するように一対の前輪部40A、40Bを後方移動させて、階段の1段目の蹴上げ面に当接させると同時に、昇降駆動部20を制御して、支持シャフト21を一対の後側アーム部31A、31Bおよび一対の後輪部30A、30Bとともに第3フレーム10Cの上端まで移動させる(図7(C))。
【0061】
続いて、統括制御部50は、第1距離計測部60および第2距離計測部61による計測結果に応じて、階段の一段ごとの昇降高さを算出しながら、前側回動駆動部42A、42Bおよび前側直動駆動部44A、44Bを連動して制御するようにして、一対の前輪部40A、40Bを一段下の踏み面に当接させる(図8(A))。これと同時に、統括制御部50は、後側直動駆動部34A、34Bを制御して、一対の後側アーム部31A、31Bを伸長させて一対の後輪部30A、30Bを接地させる(同図)。
【0062】
床面に着床した後、1段目以降は、統括制御部50は、第1距離計測部60および第2距離計測部61による計測結果に応じて、階段の一段ごとの昇降高さを算出しながら、後側回動駆動部32A、32B、後側直動駆動部34A、34B、前側回動駆動部42A、42Bおよび前側直動駆動部44A、44Bを連動して制御するようにして、一対の前輪部40A、40Bをさらに一段下の踏み面に当接させるとともに、一対の後輪部30A、30Bを階段の段鼻の手前に位置させる(図8(B))。
【0063】
一対の後輪部30A、30Bおよび一対の前輪部40A、40Bによる4点支持状態において、統括制御部50は、第1フレーム10Aの下端面がほぼ同等の高さ位置に相当する階段の踏み面と当接するように、後側回動駆動部32A、32B、後側直動駆動部34A、34B、前側回動駆動部42A、42Bおよび前側直動駆動部44A、44Bを連動して制御する(図9(A)および(B))。
【0064】
このような階段の降段時に、第1フレーム10の下端面が階段の踏み面と当接した着床状態から次段の踏み面に移行する際、統括制御部50は、一対の後輪部30A、30Bおよび一対の前輪部40A、40Bをすべて当該踏み面から離着させるように(4点支持でのリフトアップ状態となるように)、後側回動駆動部32A、32B、後側直動駆動部34A、34B、前側回動駆動部42A、42Bおよび前側直動駆動部44A、44Bを制御する(図9(A))。
【0065】
この結果、階段昇降装置1では、座部11を支持する第1フレーム10Aが階段の踏み面に接地した安定状態において、一対の後輪部30A、30Bおよび一対の前輪部40A、40Bをすべて階段の踏み面から離着させることにより、対象者の荷重を階段の踏み面にかける分、昇降駆動時の負荷をその分だけ減少させることができ、駆動効率を格段と向上させることができる。
【0066】
また階段の降段時には、統括制御部50は、角度検出部62の検出結果に基づいて、第1フレーム10Aが階段の踏み面と常に平行関係を保つように、後側回動駆動部32A、32B、後側直動駆動部34A、34B、前側回動駆動部42A、42Bおよび前側直動駆動部44A、44Bを独立して制御する(図9(A))。この結果、階段昇降装置1では、階段の降段時において座面が常に平坦に保たれるため、対象者は安定した状態で着座したまま階段を降段移動することができる。
【0067】
なお、階段昇降装置1において、昇降駆動部20、後側回動駆動部32A、32B、後側直動駆動部34A、34B、前側回動駆動部42A、42Bおよび前側直動駆動部44A、44Bは、それぞれロック機構(図示せず)を有し、降段状態において装置全体が給電オフになっても、当該各ロック機構により、支持シャフト21、一対の後側アーム部31A、31Bおよび一対の前側アーム部41A、41Bが給電オフ時の姿勢で固定保持される。この結果、階段昇降装置1では、階段降段時に給電オフ状態になっても常に対象者の安全性を確保することができる。
【0068】
このように階段昇降装置1では、電動車椅子としての走行状態から階段の降段準備状態を経て、対象者は着座した状態のまま階段を一段ずつ降段移動することができる。
【0069】
(4)他の実施の形態
なお上述のように本実施の形態においては、一対の後輪部30A、30Bおよび一対の前輪部40A、40Bをそれぞれ回動駆動が可能な車輪から構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、電動車椅子としての走行機能を有すれば、車輪以外の種々の走行機構を適用するようにしてもよい。
【0070】
例えば、図1(A)および(B)との対応部分に同一符号を付した図10(A)および(B)に示すように、階段昇降装置70は、一対の後輪部80A、80Bおよび一対の前輪部90A、90Bを、駆動輪および少なくとも1以上の従動輪に無端ベルトが掛け渡された無限軌道体からそれぞれ構成するようにしてもよい。
【0071】
一対の後輪部80A、80Bを無限軌道体から構成したことに対応して、後輪駆動部33A、33Bは、一対の後側アーム部31A、31Bの他端に設けられた駆動軸を回動中心として、当該一対の後側アーム部31A、31Bの他端に接続された一対の駆動輪を、それぞれ回動駆動するようにして、一対の無限軌道体(80A、80B)を走行駆動させる。
【0072】
同様に、一対の前輪部90A、90Bを無限軌道体から構成したことに対応して、前輪駆動部43A、43Bは、一対の前側アーム部41A、41Bの他端に設けられた駆動軸を回動中心として、当該一対の前側アーム部41A、41Bの他端に接続された一対の駆動輪を、それぞれ回動駆動するようにして、一対の無限軌道体(90A、90B)を走行駆動させる。
【0073】
このように階段昇降装置70では、一対の後輪部80A、80Bおよび一対の前輪部90A、90Bを車輪の点接触から無電軌道体の面接触に変更することにより、階段の昇降時における踏み面に対する後輪部80A、80Bおよび前輪部90A、90Bの滑り可能性を格段と低減することができる。
【0074】
なお、図10(A)および(B)においては、一対の後輪部80A、80Bおよび一対の前輪部90A、90Bをすべて無限軌道体から構成するようにした場合について述べたが、一対の後輪部80A、80Bのみを無限軌道体から構成して一対の前輪部40A、40Bは車輪から構成するようにしてもよく、また一対の前輪部90A、90Bのみを無限軌道体から構成して一対の後輪部30A、30Bは車輪から構成するようにしてもよい。さらに、車輪と無限軌道体とをユニット交換可能に構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1、70…階段昇降装置、10…フレーム構造体、10A…第1フレーム、10B…第2フレーム、10C…第3フレーム、11…座部、12…足置き部、13…背もたれ部、20…昇降駆動部、21…支持シャフト、30A、30B、80A、80B…後輪部、31A、31B…後側アーム部、32A、32B…後側回動駆動部、33A、33B…後輪駆動部、34A、34B…後側直動駆動部、40A、40B、90A、90B…前輪部、41A、41B…前側アーム部、42A、42B…前側回動駆動部、43A、43B…前輪駆動部、44A、44B…前側直動駆動部、50…統括制御部、60…第1距離計測部、61…第2距離計測部、62…角度検出部、63…駆動用バッテリ。
図1
図2
図3
図4
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図7
図8
図9
図10