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特開2024-39530乾燥海苔製造装置における海苔抄き装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039530
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】乾燥海苔製造装置における海苔抄き装置
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/60 20160101AFI20240314BHJP
【FI】
A23L17/60 103Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144149
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000149457
【氏名又は名称】株式会社オーツボ
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【弁理士】
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】大坪 誠一郎
【テーマコード(参考)】
4B019
【Fターム(参考)】
4B019LT21
(57)【要約】
【課題】乾燥海苔の商品価値(単価)を確実に安定させることを可能にする海苔抄き装置を提供する。
【解決手段】海苔抄き装置1は、海苔ミス6を、その上下に設けられた、透明マス8と可撓性を有する保水袋10とで挟み込み、保水袋10を圧縮することで、海苔ミス6の上面を保水袋10の内部に保水されていた水で満たした後、海苔ミス6上に所定量の海苔生地液Lを流下し、その後、保水袋10を膨張させることで、海苔ミス6の上面を満たしていた水を保水袋10の内部に戻して、海苔ミス6で海苔生地を抄くように構成されている。そして、保水袋10は、その側板(周面部)が上下方向に伸縮可能なジャバラ(蛇腹)状に形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海苔ミスを、その上下に設けられた、透明マスと可撓性を有する保水袋とで挟み込み、前記保水袋を圧縮することで、前記海苔ミスの上面を前記保水袋の内部に保水されていた水で満たした後、前記海苔ミス上に所定量の海苔生地液を流下し、その後、前記保水袋を膨張させることで、前記海苔ミスの上面を満たしていた前記水を前記保水袋の内部に戻して、前記海苔ミスで海苔生地を抄くように構成された海苔抄き装置であって、
前記保水袋は、その周面部が上下方向に伸縮可能なジャバラ(蛇腹)状に形成されていることを特徴とする海苔抄き装置。
【請求項2】
前記保水袋の板厚は、約1.8mm~約2.2mmの範囲内にある、請求項1に記載の海苔抄き装置。
【請求項3】
前記保水袋の材質は、天然ゴム又は合成ゴムである、請求項1に記載の海苔抄き装置。
【請求項4】
前記保水袋は、スノコ状に形成された下マスの下部に圧縮及び膨張可能に取り付けられている、請求項1に記載の海苔抄き装置。
【請求項5】
前記保水袋の下方に昇降動作する捨水台が配置され、
前記捨水台を昇降させることで、前記保水袋が圧縮又は膨張される、請求項4に記載の海苔抄き装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥海苔製造装置における海苔抄き装置に関する。さらに詳細には、本発明は、乾燥海苔の商品価値(単価)を確実に安定させることを可能にする海苔抄き装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食用に供される乾燥海苔は、予め細かくミンチされた生海苔と水との混合液(以下、単に「海苔生地液」という)を抄箱内に連続的に供給し、スノコ状の海苔ミスによって矩形平板状に抄製(海苔抄き)した後、脱水し、乾燥し、海苔ミスから剥離する工程を経て製品化されるのが一般的である。
【0003】
従来、乾燥海苔製造装置における海苔抄き装置としては、例えば、特許文献1等に開示されたものが知られている。
図8に示すように、特許文献1に開示された海苔抄き装置101は、抄箱102と、海苔生地液供給機構103と、を有している。海苔生地液供給機構103は、抄箱102の上方背面側に設けられた、海苔生地液Lを貯留する分流タンク104と、当該分流タンク104から抄箱102内に海苔生地液Lを供給する分流器105と、を備えている。そして、海苔抄き装置101は、抄箱102の下方に設けられた、海苔ミス搬送機構(図示せず)によって水平方向に搬送される海苔ミス106を、その上下に設けられた、透明マス108と保水機構107とで挟むように構成されている。
【0004】
抄箱102には、その底板102bに複数の海苔生地液流出孔102cが形成されており、これら海苔生地液流出孔102cは、抄弁102dに垂設された複数の抄バルブ(押し下げバルブ)102eによって開閉できるようにされている。抄弁102dは、抄箱102の内部の上端部に設けられた抄バルブハンガープレート102fから垂下される複数の弁棒102gによって支承されており、抄バルブ102eの開閉動作は、抄アーム112の上下駆動による抄バルブハンガープレート102fの昇降移動に追随して行われる。
【0005】
保水機構107は、矩形板状でスノコ状に形成された下マス109の下部に、可撓性を有する保水袋110を圧縮及び膨張可能に取り付けると共に、その下方に昇降動作する捨水台111を配置することにより、構成されている。そして、下マス109には、上下に貫通する複数の通水孔(図示せず)が穿設されており、保水袋110は、捨水台111を昇降させることで圧縮又は膨張され、その内部に保水された水の水面位置を上下に変動できるようにされている。
【0006】
図8図9に示すように、保水袋110は、平面視略矩形環状の鍔部(フランジ)110aと、鍔部110aの内周に連続して当該鍔部110aの下側に設けられた上端開口の保水袋本体110bと、を備えている。保水袋本体110bは、一体成形された、側板110cと、矩形平板状の底板110dと、を有し、側板110cと底板110dとの接続部分は略円弧状の丸みを帯びた断面形状をなしている。ここで、保水袋110の材質は天然ゴムであり、保水袋本体110bの板厚は約2.5mmである。
【0007】
図8図10に示すように、以上説明した海苔抄き装置101においては、海苔ミス106が透明マス108と下マス109との間の停止位置まで移動してきたら(図8の矢印カを参照)、透明マス108が降下し(図8の矢印ヨを参照)、下マス109が上昇する(図8の矢印タを参照)。これにより、海苔ミス106が、透明マス108と下マス109とで挟み込まれた状態となる(図10の状態)。海苔ミス106が、透明マス108と下マス109とで挟み込まれたら、捨水台111が上昇し(図8の矢印レを参照)、保水袋110の下部中央が上方に押し上げられることで、保水袋110が圧縮される(図10の状態)。これにより、保水袋110の内部に保水されていた水が下マス109の通水孔から海苔ミス106を透過して透明マス108の内部に流出され、海苔ミス106の上面が水で満たされた状態となる。次いで、抄バルブ102eが一旦降下した後、上昇して(図10の両矢印ソを参照)、抄箱102の底板102bの海苔生地液流出孔102cが一旦開放された後、閉塞状態となる。これにより、抄箱102から海苔ミス106上に所定量の海苔生地液Lが流下される。次いで、捨水台111が降下して(図10の矢印ツを参照)、保水袋110が膨張する。これにより、海苔ミス106の上面を満たしていた水が当該海苔ミス106及び下マス109を透過して保水袋110の内部に戻される。
以上により、海苔ミス106で海苔生地が抄かれ、海苔抄き工程(抄製)が完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2022-114304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に開示された保水袋110の保水袋本体110bは、板厚が約2.5mmの天然ゴムからなると共に、一体成形された、側板110cと、矩形平板状の底板110dと、を有し、側板110cと底板110dとの接続部分が略円弧状の丸みを帯びた断面形状をなしただけのものである。このため、上下左右へは板厚約2.5mmの天然ゴムの弾性分しか伸縮できず、海苔ミス106上に流下される海苔生地液Lの衝撃をほとんど吸収することができない。したがって、海苔ミス106が透明マス108と下マス109とで挟み込まれていても、隙間から海苔生地液Lが吹き出してしまう虞がある。そして、その結果、海苔全面の厚さにバラツキが生じ、海苔を乾燥した際に形状が悪くなったり、乾燥海苔のフチ(縁)部が薄くなったりして、厚い部分と薄い部分で乾燥誤差が生じてしまう虞がある。また、部分的に薄くなることで、海苔ミスと乾燥海苔を剥離する際に当該乾燥海苔が破れてしまう虞もある。
すなわち、特許文献1に開示された海苔抄き装置101は、乾燥海苔の商品価値(単価)を下げてしまう虞があるという課題をかかえていた。
そこで、本発明者らは、乾燥海苔の商品価値(単価)を確実に安定させるべく鋭意研究を重ね、その結果、海苔ミス上に流下される海苔生地液の衝撃を十分に吸収することが可能な保水袋の形状に想到し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、海苔ミス上に流下される海苔生地液の衝撃を十分に吸収することが可能な形状の保水袋を用いることにより、乾燥海苔の商品価値(単価)を確実に安定させることを可能にする海苔抄き装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明に係る海苔抄き装置の構成は、
(1)海苔ミスを、その上下に設けられた、透明マスと可撓性を有する保水袋とで挟み込み、前記保水袋を圧縮することで、前記海苔ミスの上面を前記保水袋の内部に保水されていた水で満たした後、前記海苔ミス上に所定量の海苔生地液を流下し、その後、前記保水袋を膨張させることで、前記海苔ミスの上面を満たしていた前記水を前記保水袋の内部に戻して、前記海苔ミスで海苔生地を抄くように構成された海苔抄き装置であって、
前記保水袋は、その周面部が上下方向に伸縮可能なジャバラ(蛇腹)状に形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の海苔抄き装置の上記(1)の構成は、次のような作用効果を奏する。
すなわち、上記(1)の構成によれば、保水袋の周面部が上下方向に伸縮可能なジャバラ(蛇腹)状に形成されている。このため、ジャバラ(蛇腹)形状の効果で上下左右に伸縮しやすくなり、海苔ミス上に流下される海苔生地液の衝撃を十分に吸収することが可能となる。したがって、海苔ミスが透明マスと保水袋とで挟み込まれた状態で、隙間から海苔生地液が吹き出してしまうことが無くなる。そして、その結果、海苔全面の厚さが均一になって、海苔を乾燥した際に形状が安定し、乾燥時に乾燥誤差が生じてしまうことが無くなる。また、部分的に薄くなる箇所がないため、海苔ミスと乾燥海苔を剥離する際に当該乾燥海苔が破れてしまうことも無くなる。
したがって、上記(1)の構成によれば、乾燥海苔の商品価値(単価)を確実に安定させることを可能にする海苔抄き装置を提供することができる。
【0013】
本発明の海苔抄き装置の上記(1)の構成においては、以下の(2)~(5)のような構成にすることが好ましい。
【0014】
(2)上記(1)の構成において、前記保水袋の板厚は、約1.8mm~約2.2mmの範囲内にある。
上記(2)の好ましい構成によれば、従来の保水袋に比べて板厚が薄くなり、これによる弾性分の伸縮も加算されて、海苔ミス上に流下される海苔生地液の衝撃をほぼ完全に吸収することが可能となる。
【0015】
(3)上記(1)の構成において、前記保水袋の材質は、天然ゴム又は合成ゴムである。合成ゴムとしては、例えば、ニトリルゴム、シリコーンゴム、ポリウレタンゴム等を挙げることができる。
【0016】
(4)上記(1)の構成において、前記保水袋は、スノコ状に形成された下マスの下部に圧縮及び膨張可能に取り付けられている。
【0017】
(5)上記(4)の構成において、前記保水袋の下方に昇降動作する捨水台が配置され、
前記捨水台を昇降させることで、前記保水袋が圧縮又は膨張される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、乾燥海苔の商品価値(単価)を確実に安定させることを可能にする海苔抄き装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の一実態形態における海苔抄き装置の構成を示す一部破断側面図である。
図2図2は、本発明の一実態形態における海苔抄き装置の構成部材である保水袋を示す図((a)は平面図、(b)は(a)のA-A線で一部を破断した側面図、(c)は正面図)である。
図3図3は、本発明の一実態形態における海苔抄き装置の動作(海苔生地液の圧送→供給(自然排出)→溢出→海苔ミスの移動搬送→透明マスの降下/下マスの上昇)を説明するための一部破断側面図である。
図4図4は、本発明の一実態形態における海苔抄き装置の動作(透明マスと下マスとによる海苔ミスの挟み込み→捨水台の上昇)を説明するための一部破断側面図である。
図5図5は、本発明の一実態形態における海苔抄き装置の動作(保水袋の圧縮→海苔ミスの上面が水で満たされた状態にする)を説明するための一部破断側面図である。
図6図6は、本発明の一実態形態における海苔抄き装置の動作(海苔生地液の流下→保水袋の膨張→海苔ミスの上面を満たしていた水が保水袋の内部に戻る→抄製→透明マスの上昇/下マスの降下)を説明するための一部破断側面図である。
図7図7は、本発明の一実態形態における海苔抄き装置の動作(抄製された海苔ミスの脱水工程への搬送→新たな海苔ミスの移動搬送)を説明するための一部破断側面図である。
図8図8は、従来技術における海苔抄き装置の構成を示す一部破断側面図である。
図9図9は、従来技術における海苔抄き装置の構成部材である保水袋を示す図((a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図、(d)は(a)のB-B線及びC-C線で破断した断面図)である。
図10図10は、従来技術における海苔抄き装置の動作(海苔生地液の流下→保水袋の膨張→海苔ミスの上面を満たしていた水が保水袋の内部に戻る→抄製)を説明するための一部破断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、好適な実施形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、下記の実施形態は本発明を具現化した例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0021】
(海苔抄き装置の構成)
まず、本発明の一実施形態における海苔抄き装置の構成について、図1図2を参照しながら説明する。この海苔抄き装置は、乾燥海苔製造装置の一部を構成するものである。
【0022】
図1は、本実態形態における海苔抄き装置の構成を示す一部破断側面図、図2は、当該海苔抄き装置の構成部材である保水袋を示す図((a)は平面図、(b)は(a)のA-A線で一部を破断した側面図、(c)は正面図)である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態の海苔抄き装置1は、抄箱2と、海苔生地液供給機構3と、を有している。海苔生地液供給機構3は、抄箱2の上方背面側に設けられた、海苔生地液Lを貯留する分流タンク(混合液タンク)4と、当該分流タンク4から抄箱2内に海苔生地液Lを供給する分流器(供給パイプ)5と、を備えている。そして、海苔抄き装置1は、抄箱2の下方に設けられた、海苔ミス搬送機構(図示せず)によって水平方向に搬送される海苔ミス6を、その上下に設けられた、透明マス8と保水機構7とで挟むように構成されている。
ここで、抄箱2及び分流器5は、図1の紙面に垂直な方向に複数並設されている。
【0024】
海苔生地液供給機構3の分流器5は、その上端が分流タンク4の底部に連通されると共に、下端部が漏斗状に先細りに形成された供給口5aを有する屈曲した中空管からなっている。そして、分流器5は、下端部が抄箱2の肩部から挿入され、供給口5aから抄箱2内に海苔生地液Lを供給できるようにされている。また、抄箱2には、分流器5が挿入される肩部から下方に向かって延出して、当該抄箱2からオーバーフローした海苔生地液Lを排出する溢出口2aが形成されている。
【0025】
抄箱2には、その底板2bに複数の海苔生地液流出孔2cが形成されており、これら海苔生地液流出孔2cは、抄弁2dに垂設された複数の抄バルブ2eによって開閉できるようにされている。抄弁2dは、抄箱2の内部の上端部に設けられた抄バルブハンガープレート2fから垂下される複数の弁棒2gによって支承されており、抄バルブ2eの開閉動作は、抄バルブハンガープレート2fの昇降移動に追随して行われる。
【0026】
抄バルブハンガープレート2fは、抄箱2の上方に配設された抄アーム12を上下駆動させることにより、抄箱2頂部の弁枠2hとの間にスプリング13を介して当該抄バルブハンガープレート2fに連結保持された主弁棒14が押圧されることで、弾発的に昇降移動するようにされている。
【0027】
すなわち、抄アーム12の上下駆動によって抄弁2dを昇降させることで、海苔生地液流出孔2cを開閉できるようにされている。さらに、抄箱2の下部には、上下が開放されると共に上端周縁に鍔部(フランジ)8aが形成された筒状の上記透明マス8が配置されている。この透明マス8は、上下に昇降動作して海苔ミス6に対し接離できるようにされている。
【0028】
上記した保水機構7は、矩形板状でスノコ状に形成された下マス9の下部に、可撓性を有する保水袋10を圧縮及び膨張可能に取り付けると共に、その下方に昇降動作する捨水台11を配置することにより、構成されている。下マス9は、上下に昇降動作して海苔ミス6に対し接離できるようにされている。そして、下マス9には、上下に貫通する複数の通水孔(図示せず)が穿設されており、保水袋10は、捨水台11を昇降させることで圧縮又は膨張され、その内部に保水された水の水面位置を上下に変動できるようにされている。
【0029】
図1図2に示すように、保水袋10は、平面視略矩形環状の鍔部(フランジ)10aと、鍔部10aの内周に連続して当該鍔部10aの下側に設けられた上端開口の保水袋本体10bと、を備えている。保水袋本体10bは、一体成形された、側板(周面部)10cと、矩形平板状の底板10dと、を有し、側板10cは、上下方向に伸縮可能なジャバラ(蛇腹)状に形成されている。
ここで、保水袋10の材質は天然ゴムであり、鍔部10a及び保水袋本体10b(保水袋10)の板厚は約2.0mmである。また、鍔部10aの幅は約12.0mm、保水袋本体10bの上端開口部の一辺の長さは約223.0mm、保水袋本体10bの伸長した状態での高さは約102.0mmである。
なお、保水袋10の底板10dには、複数の排水孔10eと、当該排水孔10eを開閉する開閉弁(図示せず)と、が設けられている。排水孔10eは、保水袋10の内部に溜まった海苔屑等の汚れを、排水と一緒に汚水として排出するためのものであり、通常、排水孔10eは閉塞された状態となっている。
【0030】
(海苔抄き装置の動作)
次に、本発明の一実施形態における海苔抄き装置の動作について、図3図7を参照しながら説明する。
【0031】
図3は、本実態形態における海苔抄き装置の動作(海苔生地液の圧送→供給(自然排出)→溢出→海苔ミスの移動搬送→透明マスの降下/下マスの上昇)を説明するための一部破断側面図、図4は、当該海苔抄き装置の動作(透明マスと下マスとによる海苔ミスの挟み込み→捨水台の上昇)を説明するための一部破断側面図、図5は、当該海苔抄き装置の動作(保水袋の圧縮→海苔ミスの上面が水で満たされた状態にする)を説明するための一部破断側面図、図6は、当該海苔抄き装置の動作(海苔生地液の流下→保水袋の膨張→海苔ミスの上面を満たしていた水が保水袋の内部に戻る→抄製→透明マスの上昇/下マスの降下)を説明するための一部破断側面図、図7は、当該海苔抄き装置の動作(抄製された海苔ミスの脱水工程への搬送→新たな海苔ミスの移動搬送)を説明するための一部破断側面図である。
【0032】
図3に示すように、まず、海苔抄き装置1が始動すると、海苔生地液供給機構3の分流タンク4に、常時、ポンプで圧送して(図3の矢印イを参照)貯留されている海苔生地液Lが、抄箱2内に分流器5によって分流して供給(自然排出)される(図3の矢印ロを参照)。抄箱2内に供給された海苔生地液Lは、抄箱2内を満たし、充満した場合は、オーバーフローして溢出口2aから溢出される(図3の矢印ハを参照)。
海苔ミス6は、所定のサイクルで搬送経路に沿って間欠的に所定距離ごと移動搬送される(図3の矢印ニを参照)。
【0033】
次いで、図3図4に示すように、海苔ミス6が透明マス8と下マス9との間の停止位置まで移動してきたら、透明マス8が降下し(図3の矢印ホを参照)、下マス9が上昇する(図3の矢印ヘを参照)。これにより、海苔ミス6が、透明マス8と下マス9とで挟み込まれた状態となる(図4の状態)。
【0034】
次いで、図4図5に示すように、海苔ミス6が、透明マス8と下マス9とで挟み込まれたら、捨水台11が上昇し(図4の矢印トを参照)、保水袋10の下部中央が上方に押し上げられることで、ジャバラ(蛇腹)が折り畳まれて保水袋10が上方向に圧縮される(図5の状態)。これにより、保水袋10の内部に保水されていた水が下マス9の通水孔から海苔ミス6を透過して透明マス8の内部に流出され、海苔ミス6の上面が水で満たされた状態となる。
【0035】
次いで、図6に示すように、抄バルブ2eが一旦降下した後、上昇して(図6の両矢印チを参照)、抄箱2の底板2bの海苔生地液流出孔2cが一旦開放された後、閉塞状態となる。これにより、抄箱2から海苔ミス6上に所定量の海苔生地液Lが流下される。海苔ミス6上に流下される海苔生地液Lの量は、抄箱2内において海苔生地液Lの量が約35mm程度下がる量(約1L(リットル))で調整されている。
この場合、上記のように、海苔ミス6の上面が水で満たされた状態となっているため、海苔ミス6上に流下された海苔生地液Lは海苔ミス6上で均等に分散される。
【0036】
本実施形態においては、保水袋10の側板(周面部)10cが上下方向に伸縮可能なジャバラ(蛇腹)状に形成されている。このため、ジャバラ(蛇腹)形状の効果で上下左右に伸縮しやすくなり、海苔ミス6上に流下される海苔生地液Lの衝撃を十分に吸収することが可能となる。したがって、海苔ミス6が透明マス8と下マス9(保水袋10)とで挟み込まれた状態で、隙間から海苔生地液Lが吹き出してしまうことが無くなる。そして、その結果、海苔全面の厚さが均一になって、海苔を乾燥した際に形状が安定し、乾燥時に乾燥誤差が生じてしまうことが無くなる。また、部分的に薄くなる箇所がないため、海苔ミス6と乾燥海苔を剥離する際に当該乾燥海苔が破れてしまうことも無くなる。
したがって、本実施形態の保水袋10を用いれば、乾燥海苔の商品価値(単価)を確実に安定させることを可能にする海苔抄き装置1を提供することができる。
【0037】
また、本実施形態の保水袋10の板厚は、約2.0mmであり、従来の保水袋に比べて板厚が薄くなるため、これによる弾性分の伸縮も加算されて、海苔ミス6上に流下される海苔生地液Lの衝撃をほぼ完全に吸収することが可能となる。
【0038】
次いで、図6に示すように、捨水台11が降下し(図6の矢印リを参照)、保水袋10がジャバラ(蛇腹)の作用によって元の状態に復帰する(下方向に膨張する 図7の状態)。これにより、海苔ミス6の上面を満たしていた水が当該海苔ミス6及び下マス9を透過して保水袋10の内部に戻される。
【0039】
以上により、海苔ミス6で海苔生地が抄かれ、海苔抄き工程(抄製)が完了する。この海苔抄き工程においては、上記のように、海苔ミス6上に流下された海苔生地液Lが海苔ミス6上で均等に分散されることとなるため、抄製された海苔が均一化し、乾燥海苔における抄きムラの発生を最小限に抑えることが可能となる。
【0040】
抄製後、図6図7に示すように、透明マス8が上昇し(図6の矢印ヌを参照)、下マス9が降下する(図6の矢印ルを参照)。
次いで、図7に示すように、抄製された海苔ミス6が脱水工程に搬送される(図7の矢印ヲを参照)と同時に、新たな海苔ミス6が透明マス8と下マス9との間の停止位置まで移動してきて停止し(図7の矢印ワを参照)、上記と同様の動作が反復継続される。
【0041】
なお、本実施形態においては、保水袋10の材質が天然ゴムであり、保水袋10の板厚が約2.0mmである場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。保水袋10の材質は、例えば、ニトリルゴム、シリコーンゴム、ポリウレタンゴム等の合成ゴムであってもよい。また、保水袋10の板厚は、例えば、約1.8mm~約2.2mmの範囲内にあれば、所期の目的を達成することができる。
【0042】
また、本実施形態においては、保水袋10(保水袋本体10b)が矩形平板状の底板10dを有する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。保水袋(保水袋本体)は、例えば、湾曲板状の底板を有していてもよい。
【0043】
また、本実施形態においては、下マス9の下部に保水袋10が取り付けられている場合を例に挙げて説明した。この場合は、下マス9と保水袋10の全体を「保水袋」とみなして本発明が適用される。
【符号の説明】
【0044】
1 海苔抄き装置
6 海苔ミス
8 透明マス
9 下マス
10 保水袋
10a 鍔部(フランジ)
10b 保水袋本体
10c 側板(周面部)
10d 底板
11 捨水台
L 海苔生地液
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10