(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039534
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】耐候性試験装置及び耐候性試験方法
(51)【国際特許分類】
G01N 17/00 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
G01N17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144153
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】柏女 恵
(72)【発明者】
【氏名】宮本 慎一
(72)【発明者】
【氏名】栃木 華恵
【テーマコード(参考)】
2G050
【Fターム(参考)】
2G050BA03
2G050BA05
2G050BA09
2G050CA01
2G050CA03
(57)【要約】
【課題】耐候性試験をより促進すると共に、自然界での劣化現象を再現することの可能な耐候性試験装置及び耐候性試験方法を提供する。
【解決手段】内部に試料Sが配置される加圧容器2と、光源4aを有し試料Sに光照射を行う光照射装置4と、を備え、光源4aからの照射光は、波長290nm以上450nm以下の光を含み、且つこの290nm以上450nm以下の波長のスペクトルの強度を積分した値が、25mW/cm
2以上である。このような構成とすることで、太陽光よりも高光量の光を試料Sに照射することができ、その結果、耐候性試験を容易に促進することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に試料が配置される加圧容器と、
光源を有し前記試料に光照射を行う光照射装置と、を備え、
前記光源からの照射光は、波長290nm以上450nm以下の光を含み、当該290nm以上450nm以下の波長のスペクトルの強度を積分した値が、25mW/cm2以上であることを特徴とする耐候性試験装置。
【請求項2】
前記加圧容器は、光を透過可能な光透過部を有し、
前記光照射装置は前記加圧容器の外に配置され、前記光源からの照射光を、前記光透過部を介して前記試料に照射することを特徴とする請求項1に記載の耐候性試験装置。
【請求項3】
前記光源からの照射光を平行光に変換する光学系を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の耐候性試験装置。
【請求項4】
前記光学系は、少なくとも一つのコリメートレンズを含むことを特徴とする請求項3に記載の耐候性試験装置。
【請求項5】
前記光源からの照射光は少なくとも紫外線を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の耐候性試験装置。
【請求項6】
前記光照射装置は、波長290nmより短い波長の紫外線を取り除く光学フィルタを備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の耐候性試験装置。
【請求項7】
前記光源からの照射光は、前記波長290nm以上450nm以下の波長のスペクトルの強度を積分した値が、150mW/cm2以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の耐候性試験装置。
【請求項8】
前記光源からの照射光は、300nm以下の波長の光をほとんど含まず、波長が310nmである光のスペクトルの強度を1としたとき、波長が320nmである光のスペクトルの強度が1.9±0.8であり、波長が330nmである光のスペクトルの強度が3.0±1.8であり、波長が340nmである光のスペクトルの強度が4.1±2.9であって、さらに、300nm以上340nm以下の波長域の光のスペクトルの強度が。波長の増加に伴い連続的に増加していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の耐候性試験装置。
【請求項9】
前記加圧容器内に酸素ガスを含む気体を導入するガス導入部と、
前記加圧容器内の気圧を調整する圧力調整部と、
前記気体を加湿する加湿部と、
前記加圧容器内において前記試料に液体を噴霧する噴霧部と、
前記試料の温度を調整する温度調整部と、
前記気体の導入量、前記気圧、前記気体の湿度、及び前記試料の温度の少なくとも1つを検出する検出部と、
前記検出部による検出値に基づいて、前記ガス導入部、前記圧力調整部、前記加湿部、前記噴霧部、及び、前記温度調整部の少なくとも1つを制御する制御部と、
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の耐候性試験装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記ガス導入部から導入される前記酸素ガスの前記気体全体に対する濃度が20%以上となるように、前記ガス導入部を制御することを特徴とする請求項9に記載の耐候性試験装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記ガス導入部から導入される前記酸素ガスの酸素分圧が0.2MPa以上0.9MPa以下となるように、前記ガス導入部及び前記圧力調整部の少なくとも一方を制御することを特徴とする請求項9に記載の耐候性試験装置。
【請求項12】
請求項1又は請求項2に記載の耐候性試験装置を用いて前記試料の耐候性を評価する試験方法であって、
前記加圧容器内に前記試料を配置する工程と、
前記光照射装置からの照射光を前記試料に照射する工程と、
を備えることを特徴とする耐候性試験方法。
【請求項13】
前記試料に照射される前記照射光が紫外光を含む平行光であることを特徴とする請求項12に記載の耐候性試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候性試験装置及び耐候性試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料や無機材料が、太陽などの光や熱、雨などの水分、大気中の酸素等によってどのくらいで劣化するかという耐候性試験を行う場合、実環境下で試験を行うことが最良である。しかし、実環境下での試験では、試験結果を得るまでに長期間を要してしまうことがある。そこで、太陽光よりも高光量の光源を有する耐候促進試験装置を用いて耐候性試験を行い、各種材料の耐候性の試験結果を早期に取得することが行われている。このような耐候性試験装置として、サンシャインウェザオメーター(SWOM)、メタルウェザーメーター(MW)、スーパーUV(SUV)、キセノンウェザーメーター(例えば特許文献1,2を参照)などが知られている。
【0003】
サンシャインウェザオメーターは、カーボンアークからなる光源を備え、紫外部から可視光部の波長を含む光をこの光源から試料に照射すると共に、水噴霧装置により一定時間試料に水を噴霧することにより、短期間で耐候性試験を実現する装置である。この装置では、ある程度の試験期間の短縮を行うことができる。また、メタルウェザーメーター及びスーパーUVは、サンシャインウェザオメーターよりも強力な光源であるメタルハライドランプを備え、紫外部から可視光部までの高光量の光をこの光源から試料に照射すると共に、水噴霧装置により一定時間試料に水を噴霧する装置である。これらの装置では、高光量の光源を用いているため、サンシャインウェザオメーターよりも短期間で耐候性試験を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平1-21891号公報
【特許文献2】特公平1-28897号公報
【特許文献3】特開平4-142446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2に記載された従来の耐候性試験装置では、用いる人工光源の光量に合わせて、容器内の酸素分圧を高め、耐候性試験を促進している。
しかしながら、光源と試料との間に距離を保って配置しているため、試料表面の受光量が少なく、耐候性試験の所要時間が長い。
本発明は、上述した課題を解決するためのものであり、耐候性試験をより促進すると共に、自然界での劣化現象を再現することの可能な耐候性試験装置及び耐候性試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、内部に試料が配置される加圧容器と、光源を有し試料に光照射を行う光照射装置と、を備え、光源からの照射光は、波長290nm以上450nm以下の光を含み、290nm以上450nm以下の波長のスペクトルの強度を積分した値が、25mW/cm2以上である耐候性試験装置が提供される。
また、本発明の他の態様によれば、上記態様の耐候性試験装置を用いて前記試料の耐候性を評価する試験方法であって、加圧容器内に試料を配置する工程と、光照射装置からの照射光を試料に照射する工程と、を備える耐候性試験方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、耐候性試験を促進しつつ、自然界での劣化現象をより再現することの可能な耐候性試験装置及び耐候性試験方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る耐候性試験装置の構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】光源からの照射光を平行光に変換する光学系の一例を模式的に示す構成図である。
【
図3】耐候性試験装置の変形例の構成を模式的に示す断面図である。
【
図4】耐候性試験装置の変形例の構成を模式的に示す断面図である。
【
図5】試料の一例としての化粧シートを示す構成図である。
【
図6】比較例6における照度ムラの測定方法を説明するための説明図である。
【
図7】実施例6における照度ムラの測定方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る耐候性試験装置及び耐候性試験方法について詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いる場合があり、重複する説明は省略する。
図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0010】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質や、それらの形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る耐候性試験装置の構成を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、耐候性試験装置1は、加圧容器2、試料保持部(保持部)3、光照射装置4、ガス導入管(ガス導入部)5、加湿器(加湿部)6、ガス排気管7、圧力調整器(圧力調整部)8、水噴霧管(噴霧部)9、水流量調整器10、排水管11、排水弁12、温度調整器(温度調整部)13、検出部14、及び制御部15を備えている。
【0012】
耐候性試験装置1では、加圧容器2内の試料保持部3上に試料Sを保持させ、ガス導入管5から酸素や窒素等のガスを導入しつつ圧力調整器8で加圧容器2内を所定の内圧となるように調整する。そして、その加圧状態を維持したまま、太陽光等を模した光照射装置4からの光Lを試料Sに照射しつつ、水噴霧管9の先端から水を試料Sに噴霧し、更に、温度調整器13により試料Sを加熱する。温度調整器13は、必要に応じて試料Sを冷却してもよい。ガス導入管5から導入される酸素等のガスは加湿器6により加湿されていてもよい。
このような環境に試料Sを所定期間置いておき、試料Sが太陽などの光や熱、雨などの水分、大気中の酸素等によってどのくらいで劣化するかという耐候性試験を行う。なお、耐候性試験装置1は、上述した各構成が収納される筐体1aを更に備え、光照射装置4から漏洩する紫外線や高光量の光が外に漏れないように構成されていてもよい。
【0013】
加圧容器2は、加圧可能な密閉容器であり、試料保持部3等を収納する収納部2aと、収納部2aの開口を塞ぐ蓋2bとを有している。加圧容器2は、例えば上部の蓋2bが取外し可能となっており、試料Sを加圧容器2内に設置する際に蓋2bを収納部2aから取り外して使用する。蓋2bは、内部が気密状態となるように収納部2aに取り付けられ、例えば収納部2a及び蓋2bそれぞれをその縁近傍でボルト等によって締めて固定される。加圧容器2の材料は、加圧容器2内の圧力に対する耐圧性を有するものであれば、各種の材料を用いることができるが、例えば、SUS、アルミニウム合金、鉄、チタン合金、タングステン合金などから構成することができる。
【0014】
収納部2aには、ガス導入管5、ガス排気管7、水噴霧管9、排水管11が接続されており、各管の先端が収納部2aの内部に位置するように構成されている。これにより、ガス導入管5から加圧容器2内に所定の試験ガス(酸素等)を導入できると共に、ガス排気管7からガスを排出可能となる。また、水噴霧管9から試料Sに水を噴霧することができると共に、排水管11から水を排出することができる。
図1に示す耐候性試験装置の例では、蓋2bを取り外す構成であるため、各種の管を収納部2aにまとめて接続しているが、これらの管の一部を蓋2bに接続してもよい。
【0015】
蓋2bの中央の試料保持部3(試料S)に対向する領域には、開口2cが設けられている。この開口2cには、石英ガラス板(光透過部)16が気密に嵌め込まれている。石英ガラス板16は、試料保持部3に対向するように位置し、光照射装置4から照射される光Lを減衰させることなく透過させて試料Sに光Lがそのまま照射されるように構成されている。石英ガラス板16は、光照射装置4から照射される光L(特に紫外線)を透過可能であれば他の材料からなる光透過部材であってもよい。なお、石英ガラス板16は、加圧容器2の一部を構成することから、加圧容器2内の雰囲気や圧力を保つ構造となっている。
【0016】
試料保持部3は、耐候性試験に用いられる試料Sを保持する部材である。試料保持部3は、例えば板状部材3aとそれを支持する支持部材3bとから構成され、試料Sは板状部材3aの上に配置されて、アルミテープなどで貼り付けられることにより保持される。試料保持部3の板状部材3aは、水平となるように支持部材3bに取り付けられてもよいが、水噴霧管9から噴霧される水が試料S上に滞留しないように、水平よりも多少傾斜していてもよい。また、試料保持部3には、温度調整器13が内蔵されていてもよい。温度調整器13は、ヒータ及び冷却用流路を内蔵して構成することができ、熱電対の値をフィードバックすることにより、試料Sを加熱したり又は冷却したりして、試料Sの温度を調整する。温度調整器13により、試料保持部3に保持される試料Sを所定の温度に加熱したり冷却したりして耐候性試験を行うことが可能となる。温度調整器13による試料Sの加熱において、加熱温度は室温以上で且つ試料Sの分解温度以下であることが好ましい。分解温度以下の加熱であることにより、熱による劣化だけを先に促進させずに、光や酸素、湿度等による劣化とのバランスを調整できる。なお、温度調整器13の代わりに又は併用して、ガス導入管5から導入されるガスを加熱したり冷却したりするガス温度調整機構を設けてもよいし、加圧容器2に温度調整器を設けて容器自体を温度調整してもよいし、これらを組み合わせて使用してもよい。
【0017】
光照射装置4は、光Lを照射する光源4aと、光源4aからの光から一部の波長の光を取り除く光学フィルタ4bとを有して構成される。光源4aは、少なくとも紫外線を含む光Lを照射する光源であればよく、例えば、耐候性試験に用いられるカーボンアーク、高圧水銀、キセノンランプ、メタルハライドなどを単独で又は2つの異なった種類の光源を組み合わせて使用することができる。光源4aは、LED光源やレーザー光源であってもよい。但し、光源4aとしては、太陽光の波長に最も近いキセノンを使用することが好ましい。また、光源4aから照射される光は、波長290nm以上450nm以下の範囲の光を含んでいることが好ましく、少なくとも波長290nm以上450nm以下の範囲の一部の光を含んでいることが好ましい。光源4aから照射される光のスペクトル形状は、太陽光のスペクトル形状に近いことが好ましく、290nmよりも短い波長の光は、含んでいてもよいが、光学フィルタ4bによりカットした方が好ましい。また、光源4aから照射される光Lにおいて、波長450nmよりも長い波長の光は、試料Sを劣化させる直接の要因とはならないものの、特に赤外部の波長の光は試料Sを加熱するなどの作用があるため、残してもよい。一方、試料Sの温度調整は上述した温度調整器13等で行うことから、光Lによる加熱の影響を排除するため、波長450nmより大きい赤外光を光学フィルタ4bでカットしてもよい。
特に、光源4aからの照射光に、紫外線を含むようにすることによって、太陽光に含まれており、試料Sの劣化に影響を与えやすい紫外線を照射光に含むことになり、実環境下での耐候性試験を再現した状態での耐候性試験結果を容易に得ることができる。
【0018】
光照射装置4は、光源4aからの光Lを平行光として試料Sに照射するように構成されていることが好ましいが、これに限定されない。例えば、光源4aからの光Lがある程度、放射状に広がる構成であってもよい。この場合は、光照射装置4からの光Lの照度が試料Sにおいて均一になるように(複数の試料Sを試験する場合は各試料Sでの照度が同じになるように)、試料Sの配置等を考慮することが好ましい。また、光照射装置4から照射される光Lの光量は太陽光よりも高光量であればよく、例えば、光源4aから照射される光のうち290nm以上450nm以下の波長のスペクトルの強度を積分した値、つまり、次式(1)で表される値が25mW/cm2以上150mW/cm2以下の範囲内であることが好ましい。さらに光源4aから照射される光は、300nm以下の波長の光をほとんど含まず、310nmの波長の光の強度を1としたとき、320nmの波長の光の強度が1.9±0.8であり、330nmの波長の光の強度が3.0±1.8であり、340nmの波長の光の強度が4.1±2.9であり、さらに、300nm以上340nm以下の波長域の光の強度が、波長が高くなるほど連続的に増加していることがより好ましい。このような構成にすることによって、特許文献3に記載されているように、地上における太陽光の分光分布により近似した光を照射することができ、太陽光下の劣化と相関性の高い、より自然界の劣化に即した劣化を実現することができる。
【0019】
【0020】
ガス導入管5は、加圧容器2の外からのガスを加圧容器2内に導入するための管であり、加圧容器2内の雰囲気を変えたり、圧力を高めたりするための部材である。ガス導入管5から加圧容器2内に導入されるガスは、少なくとも圧力調整器8で設定された圧力以上の圧力で加圧容器2内に導入される。ガス導入管5から導入されるガスは、例えば、酸素ガス又は窒素ガス若しくは酸素ガスと窒素ガスとが混合したガスであってもよい。ガス導入管5には、マスフローコントローラ5aを設けて、導入するガスの流量を調整するようにしてもよいし、二種以上のガスを導入する場合には、ガス混合器(不図示)を設けて、導入するガスの切替えや混合等を行ってもよい。
【0021】
加湿器6は、例えばガス導入管5に接続されており、加湿器6内の水をバブリングし、ガス導入管5により導入されるガスを加湿する装置である。加湿器6により、加圧容器2内の湿度が所定の範囲に設定される。なお、加湿器6と加圧容器2との間又は加圧容器2内に湿度計(不図示)を設けて、湿度計からの湿度情報に基づいて加湿器6による加湿を制御部15等により制御してもよい。
ガス排気管7は、加圧容器2内のガスを排出するための管である。ガス排気管7には、圧力調整器8が取り付けられており、圧力調整器8により加圧容器2内の圧力が設定した圧力に保持される。圧力調整器8は、加圧容器2内の圧力が設定した圧力以上になったことが後述の検出部14等により検出されると、制御部15の制御により、圧力調整器8内のバルブを開き、加圧容器2内の圧力が設定した圧力になるように圧力を調整する。
【0022】
水噴霧管9は、加圧容器2内に設置された試料Sに水を噴霧するための部材である。水噴霧管9は、加圧容器2の外から供給された水を水流量調整器10により流量を調整した後、加圧容器2内において試料Sに噴霧する。水流量調整器10は、水噴霧管9から試料Sに噴霧される水の量を調整する装置であり、必要な量に応じて水量を設定する。加圧容器2内の水噴霧管9の先端には、スプレーノズル(図示せず)が取り付けられており、このスプレーノズルにより水を試料Sの全体に噴霧(スプレー状、ミスト状、シャワー状)できるようになっている。水流量調整器10による調整で、このスプレーノズルから噴霧する水の勢いを調整することも可能である。水噴霧管9及び水流量調整器10による噴霧装置は、実環境下での雨を模した装置であり、噴霧する水は、純水、水道水、酸性雨を模したペーハー(pH)を調整した水、金属イオンを含んだ水、またはこれらを混合した水、または過酸化水素水等であってもよい。
【0023】
排水管11は、加圧容器2内において水噴霧管9から噴霧された水を加圧容器2の外に排出するための部材である。排水管11には、排水弁12が取り付けられており、排水弁を動作させることにより、加圧容器2内の水を排出する。排水弁12は、耐候性試験中は通常閉じた状態であり、加圧容器2内の圧力や雰囲気(酸素ガス濃度等)を保つように制御されている。排水弁12は、水位センサ(不図示)による検出情報や時間等によって所定の条件が満たされた場合、制御部15の制御により開かれて、これにより、加圧容器2内の水等が加圧容器2の外に排出される。排水弁12は、水位センサによる検出情報に基づき排水弁12を開状態とする条件が解消したり、所定の時間が経過したりすると、制御部15による制御で再び閉じられる。
【0024】
検出部14は、加圧容器2内の各種の状態を検出するセンサであり、例えば、湿度、温度(内部温度または試料温度)、圧力、ガス濃度、ガス流量、上述した水位等の何れか1つを検出する。検出部14は、検出した情報(検出値)を制御部15に出力する。
制御部15は、耐候性試験装置1の動作全体を制御する装置であり、例えば、CPU等を備えたコンピュータから構成される。制御部15は、ガス導入管5のマスフローコントローラ5a、加湿器6、圧力調整器8、水流量調整器10、排水弁12、温度調整器13、及び、検出部14に配線等を介して電気的に接続されている。制御部15は、検出部14等から検出されるガスの導入流量、加圧容器2内の気圧や温度、湿度、水位等に基づいて、ガス導入管5のマスフローコントローラ5a、加湿器6、圧力調整器8、水流量調整器10、排水弁12及び温度調整器13の動作を制御する。制御部15による制御により、耐候性試験装置1内に配置される試料Sが所定の環境下に配置された状態となる。また、制御部15は、加圧容器2の外に配置されている光照射装置4にも配線等を介して電気的に接続されており、照射する光Lの光量や照射時間や間隔等が制御されている。
【0025】
制御部15による制御では、具体的には、ガス導入管5のマスフローコントローラ5aや圧力調整器8等を制御して、ガス導入管5から導入するガスの濃度や加圧容器2内の圧力を調整する。例えば、ガス導入管5から導入するガスを加圧して、当該ガスに含まれる酸素分圧を大気中の酸素分圧よりも大きくなるようにしてもよい。また、制御部15は、ガス導入管5によって導入される酸素ガスと窒素ガス(不活性ガス)を任意の濃度となるようにマスフローコントローラ5aを制御してガスを混合してもよい。更に、制御部15は、ガス導入管5によって導入される酸素ガスと窒素ガス(不活性ガス)を任意の濃度に混合した後、圧縮ポンプなどで加圧容器2内に導入された混合ガスを加圧してもよい。なお、耐候性試験装置1による耐候性試験においては、導入される酸素ガスの濃度は大気中の酸素濃度よりも高濃度であることが好ましく、例えば、加圧容器2内の気体全体に対して、体積比で20%以上100%以下であってもよい。
【0026】
また、制御部15による制御において、圧力調整器8による加圧容器2内の気圧はゲージ圧で1MPa以下となるように調整されることが好ましい。この時に加圧下に導入するガスの酸素濃度は、加圧前の酸素濃度として1%~100%のガスが好ましい。さらに好ましくはゲージ圧で0.2MPa以上0.9MPa以下が好ましい。この加圧下に導入するガスの酸素濃度は、加圧前の酸素濃度として4%~100%のガスが好ましい。このように気圧を抑えることにより、加圧容器2の容器厚さを低減することができ、その結果、加圧容器2や耐候性試験装置1の小型化や軽量化を図ることができる。
【0027】
また、制御部15は、加湿器6を制御して、実環境下における湿度による耐候性を再現するようにしてもよい。制御部15による湿度の調整は、検出部14によって検出される湿度の情報に基づいて加湿器6による導入ガスへの加湿を行うことにより行われる。耐候性試験装置1での加湿は、ある程度の加湿が行われればよいが、加圧容器2内の湿度が40%~100%であることが好ましく、湿度が50%~100%であることがより好ましい。制御部15は、このような湿度範囲となるように加湿器6を制御する。なお、耐候性試験を行う場合には、実環境下における太陽光に含まれる紫外線量により試料が劣化する際に必要な酸素量に対して、耐候性試験装置1の光源4aから照射される紫外線量の光量に応じて加圧容器2内の酸素濃度を選択することが好ましい。さらに、試料S内部への酸素の拡散を促進するために、加圧容器2内の圧力を高めることにより、試料Sの劣化を促進することが可能となる。
【0028】
ここで、上述した構成の耐候性試験装置1を用いた耐候性試験方法について説明する。
この耐候性試験方法では、まず耐候性試験に用いる試料Sを準備する。試料Sは1つでもよいし、複数であってもよい。また、試料Sは、後述する化粧シートに限らず、各種の無機材料や有機材料からなる部材であってもよく、特に限定されない。このような試料Sが準備されると、加圧容器2の蓋2bを取り外して、試料保持部3に試料Sを貼り付けること等により、試料保持部3により試料Sを保持させる。その後、蓋2bを収納部2aに気密に取り付けてボルト等により固定する。これにより試料Sが収納された加圧容器2が密閉状態となる。
【0029】
続いて、制御部15の制御により、圧力調整器8による圧力を設定すると共に、ガス導入管5から所定流量のガス(酸素ガスや窒素ガス)を加圧容器2内に導入する。導入するガスの濃度や圧力(分圧)が所定の値となるように制御される。また、制御部15による水流量調整器10の制御により水量が調整された水が水噴霧管9のノズルから試料Sに連続的に又は所定の周期で供給される。更に、制御部15の制御により、温度調整器13が温度調整を行い、試料Sを所定の温度(例えば80℃)に保温する。この状態で、耐候性試験装置1では、光照射装置4から所定の光Lが石英ガラス板16を介して加圧容器2内に照射され、試料Sが照射される。
【0030】
続いて、このような光の照射、加圧、温度調整、及び水の供給を続けた状態を継続的に行って試料Sの劣化状態を試験する。このような試験は、例えば、3ヶ月~6ヶ月間連続して行ってもよいし、6ヶ月以上又は1年以上継続してもよい。また、所定の加圧となるように調整し、さらに温度調整を行った状態で、光の照射、水の噴霧等を所定の周期で繰り返してもよい。このような試験状態は、実環境下での試験と同様となるように適宜、選択され得る。
【0031】
なお、実環境下での試料の劣化は光が要因となる劣化だけでなく、雨や大気中に含まれる水分(湿度)による試料の劣化もある。試料表面に雨や湿度等により付着した水は、試料表面から試料内部へと拡散していき加水分解等により試料が劣化する。そこで、耐候性試験装置1では、光源の光量と酸素の関係と同様に、水による劣化を促進させるために、水噴霧の量、加圧容器2内の湿度も選択することができるようになっている。さらに加圧容器2内を加圧することにより、試料内部への水の拡散を促進させている。また、光照射により劣化した試料と酸素との反応、水による加水分解反応をさらに促進させるために試料Sの温度を変更できるようにもなっている。この試料の温度は、光照射装置4からの光の光量に基づいて調整されるようになっていてよい。耐候性試験装置1では、これら光量、酸素濃度、圧力、水、湿度、温度を適切に選択することにより、光による劣化と水による劣化とがバランスよく進行し、例えば光による影響のみを強く受けるといったような弊害を受けることなく、実環境下で長期間かけて行ったものと同様な耐候性試験結果を短期間で得ることが可能となる。
【0032】
以上、本発明の一実施形態に係る耐候性試験装置1では、光源4aからの照射光が290nm以上450nm以下の波長の光を含み、290nm以上450nm以下の波長のスペクトルの強度を積分した値が25mW/cm2以上となるようにしている。このようにすることによって、太陽光よりも高光量の光を試料Sに照射することになる。そのため、耐候性試験を容易に促進することができ、すなわち、試験時間の短縮を容易に図ることができる。
【0033】
また、加圧容器2を用いることで耐候性試験を容易に促進すると共に安全性を向上させることができると共に、例えば、照射する光の光量を高くしたり、照射する光の波長を選別したり、また、試料に照射する光の照度ムラを低減したり等の光学設計を行いやすくなる。そのため、実環境下(特に光学的な面)での試験に近付けたり、又は実環境下に近い状態を促進したりすることができ、実環境下での試験結果を再現しつつ耐候性試験を促進することができる。
また、照度ムラ等を低減することができるため、耐候性試験の最中に照度ムラをならすための試料の配置替え等の作業を行う必要がない。さらに、照射光が紫外光を含むため、実環境下での耐候性試験を再現した試験結果を容易に得ることができる。
【0034】
また、耐候性試験装置1では、光源4aからの照射光が、290nm以上450nm以下の波長のスペクトルの強度を積分した値が150mW/cm2以下となるようにしている。ここで、仮に、290nm以上450nm以下の波長のスペクトルの強度を積分した値が150mW/cm2以上となる光を、試料Sに照射した場合、光量が多すぎ、耐候性試験において、実環境における劣化状態よりも劣化が進みすぎてしまう可能性がある。そのため、照射光の光量が、290nm以上450nm以下の波長のスペクトルの強度を積分した値が150mW/cm2以下となるようにすることで、実環境における劣化状態により近い環境下で耐候性試験を行うことができ、実環境に則した耐候性試験結果を得ることができる。つまり、太陽光と似た波長強度比を持つ光を、試料Sに照射することによって、自然界により近い劣化現象を再現することができる。
【0035】
さらに、光源4aから照射される光として、300nm以下の波長の光をほとんど含まず、310nmの波長の光の強度を1としたとき、320nmの波長の光の強度が1.9±0.8であり、330nmの波長の光の強度が3.0±1.8であり、340nmの波長の光の強度が4.1±2.9であり、さらに、300nm以上340nm以下の波長域の光の強度が、波長が高くなるほど連続的に増加する光となるようにすることによって、光源4aからの照射光の波形を、太陽光の波形により近い波形とすることができ、このような波形の照射光を試料Sに照射することによって、実環境下での耐候性試験により近い環境で、耐候性試験を行うことができ、より実環境に則した耐候性試験結果を容易に得ることができる。
【0036】
また、
図1に示すように、光源4aを、加圧容器2の外に設けているため、光照射装置4が高圧雰囲気等により破損することがないため、安全性を向上させることができる。
また、光源4aとして、キセノン(Xe)ランプを適用しており、キセノンランプから照射される光の波長の波形は太陽光の波形に近いため、実環境下での試験に近い試験結果を容易に得ることが可能となる。即ち、上述した光源4aを用いることにより、実環境下での耐候性試験を再現した試験結果を早期に得ることが可能となる。
また、本実施形態に係る耐候性試験装置1では、光源4aからの光Lは、少なくとも紫外線を含むことが好ましい。この場合、太陽光に含まれていて材料等の劣化に影響を与えやすい紫外線を照射光に含むことになり、実環境下での試験を再現した試験結果を容易に得ることが可能となる。
【0037】
また、本実施形態に係る耐候性試験装置1では、光照射装置4は、光源4aからの光から波長290nm以下の紫外線及び赤外線の少なくとも一方を取り除く光学フィルタ4bを更に有してもよい。太陽光に含まれる紫外線のうち波長290nm以下の紫外線は微量であるため、290nm以下の紫外性を取り除く光学フィルタ4bを用いることにより、実環境下での試験を再現した試験結果を容易に得ることが可能となる。また、試料に照射される光に赤外線が含まれる場合、赤外線により試料が加熱されることになるが、制御しやすい別途の温度調整器13を設ける場合等、赤外線を取り除く光学フィルタを用いることにより、赤外線の影響を低減した試験が可能となり、より希望した試験条件での耐候性試験を行うことが可能となる。
【0038】
また、本実施形態に係る耐候性試験装置1は、加圧容器2内に酸素ガスを含む気体を導入するガス導入管5と、加圧容器2内の気圧を調整する圧力調整器8と、気体を加湿する加湿器6と、加圧容器2内において試料Sに液体を噴霧する水噴霧管9と、試料Sの温度を調整する温度調整器13と、気体の導入量、気圧、気体の湿度、及び試料の温度の少なくとも1つを検出する検出部14と、検出部14による検出値に基づいて、ガス導入管5、圧力調整器8、加湿器6、水噴霧管9、及び、温度調整器13を制御する制御部15と、を備えている。この場合、熱、水(雨)、酸素による試料Sの劣化を評価する耐候性試験をより具体的に行うことができ、また加圧することによりその耐候性試験を促進することが可能となる。即ち、上記の構成によれば、酸素による試料Sの劣化が促進され、光照射による劣化と、酸素、水(雨)、温度等による劣化とをバランスよく進行させることができ、実環境下で長時間かけて行った耐候性試験と同様の試験結果をより短時間で再現することが可能となる。
【0039】
また、本実施形態に係る耐候性試験装置1では、制御部15は、ガス導入管5から導入される酸素ガスの気体全体に対する濃度が20%以上となるように、ガス導入管5のマスフローコントローラ5aを制御してもよい。この場合、より実環境下に近い耐候性試験の結果を得ることができる。
また、本実施形態に係る耐候性試験装置1では、制御部15は、ガス導入管5から導入される酸素ガスの酸素分圧が0.2MPa以上0.9MPa以下となるように、ガス導入管5のマスフローコントローラ5a及び圧力調整器8を制御してもよい。この場合、酸素による劣化を更に促進させて、実環境下に近い耐候性試験を更に促進することが可能となる。酸素分圧が0.2MPaよりも低いと促進効果が小さいため、酸素分圧は0.2MPa以上であることが好ましい。なお、ここで用いる「酸素分圧」は、大気圧を0MPaとした場合の装置内の酸素分圧の値である。
【0040】
以上、本実施形態に係る耐候性試験装置について説明してきたが、本発明に係る耐候性試験装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形を適用することができる。例えば、上記実施形態では、光照射装置4から試料Sに照射される光Lが平行光であることが好ましいが、より具体的には、
図2に示す構成の光学系を有する耐候性試験装置1Aとすることが可能である。耐候性試験装置1Aは、光照射装置4Aと加圧容器2等を備えており、光照射装置4Aが上述した光照射装置と相違している。他の構成は、上述した耐候性試験装置1と同様であるため、説明を省略する。この変形例に係る光照射装置4Aは、光源20、反射板21、ハーフミラー22、コリメートレンズ23、反射ミラー24、及びレンズ25を備えている。
【0041】
光照射装置4Aでは、光源20(例えばキセノンランプ)から照射された光L1が反射板21で一部反射しつつハーフミラー22へと進む。ハーフミラー22では、光L1のうち一部の波長の光(例えば紫外光)は反射させつつ不要な波長の光を透過させて反射させず、紫外線を中心とした光を光L2としてコリメートレンズ23に向かって伝搬する。コリメートレンズ23では、入射した光L2を平行光(コリメート光)L3に変換して反射ミラー24で反射させ、平行光のままレンズ25を介して加圧容器2内に伝搬させ、試料Sを照射する。この変形例に係る光照射装置4Aでは、試料Sに照射される光L3が平行光であることから、より均一な照射となり、試料Sの一部に強い光が照射されるといったことがなくなり、耐候性試験を安定して行うことが可能となる。また、複数の試料Sを同時に試験する場合には、照射される光L3が平行光であることにより、各試料Sに照射される光の照度ムラがなくなるため、耐候性試験の最中(例えば3ヶ月~6カ月の間)、照度ムラをならすための試料の配置換え等の作業を行わなくてよくなる。これによって、より正確な耐候性試験結果を、より少ない作業量で得ることが可能となる。この変形例に係る耐候性試験装置1Aでは、光照射装置4Aが加圧容器2の外に配置されており、平行光を生成するための光学系の大きさの制限もそれほどない。そのため、平行光を生成するための光学系を、コリメートレンズを含んで構成することができる。その結果、より最適な光学系を用いることが可能となる。なお、平行光を形成する光学系は、他の構成であってもよい。また、光照射装置4Aは、上述した光学フィルタ4bを備えていてもよい。
【0042】
また、
図1に示す耐候性試験装置1において、排水弁12に替えて、
図3に示す排水機構12Aを設け、排水時の加圧容器2内の気圧変動を抑制するようにしてもよい。
排水機構12Aは、
図3に示すように、排水管30に接続された排水タンク31と、排水管30の、排水タンク31の流入側に設けられた開閉可能な流入バルブ32と、排水管30の、排水タンク31の排出側に設けられた開閉可能な排出バルブ33と、を備える。流入バルブ32及び排出バルブ33は、耐候性試験中は通常閉じた状態であり、加圧容器2内の圧力や雰囲気(酸素ガス濃度等)を保つように制御されている。
【0043】
排水タンク31の容積は、加圧容器2の容積以下に設定される。具体的には排水タンク31の容積は、加圧容器2の容積に対して、1/6以下に設定することが好ましい。さらに好ましくは1/6以下であり且つ1/60以上である。
また、流入バルブ32及び排出バルブ33は、制御部15により制御され、流入バルブ32は、水噴霧管9による水の噴霧が終了したとき、開状態に制御され、加圧容器2内の水が全て排水タンク31に移動した後、閉状態に制御される。一方、排出バルブ33は、加圧容器2内の水が排水タンク31に移動し流入バルブ32が閉状態に制御された後に、開状態に制御され、排水タンク31に貯液された水を排出する。
【0044】
制御部15は、水噴霧管9により試料Sに対して水の噴霧を行ったときには、水流量調整器10の作動を停止したとき、流入バルブ32を開状態に制御し、加圧容器2内の水が全て排水タンク31に移動した後、閉状態に制御する。続いて制御部15は、排出バルブ33を開状態に制御し、排水タンク31に貯液された水が全て排出された後、排出バルブ33を閉状態に制御する。制御部15では、例えば加圧容器2内に設けた液面計34の検出値に基づき、加圧容器2内の水が全て排水タンク31に移動したことを検出する。また、制御部15では、例えば排水タンク31内に設けた液面計35の検出値に基づき、排水タンク31内の水が全て排出されたことを検出する。また、制御部15は、液面計34、35の検出値に基づき、加圧容器2内の水位や排水タンク31内の水位が規定値を超えるとき、異常と判定し、流入バルブ32や排出バルブ33を制御し、加圧容器2内、或いは排水タンク31内の水を排出させると共に、水噴霧管9による水の供給を停止させる等といった、異常発生時の処理を行う。
【0045】
ここで、
図1に示すように、排水弁12の開閉操作のみにより、加圧容器2内の液体を排出する構成の場合、排水弁12を開状態に切り替えると、加圧容器2内の液体と共に加圧のためのガスも排水管11を通して排出されてしまい、加圧容器2内の圧力が著しく低下し、大気圧付近まで低下してしまう可能性がある。また、排水弁12を開状態としている時間が長いほど、圧力低下がより激しくなり、圧力の低下分が大きいときほど、加圧容器2内が所定の圧力まで回復するのに時間がかかる。
【0046】
しかしながら、
図3に示す排水機構12Aを設けた場合、試料Sへの水の噴霧が行われた後、加圧容器2内の水を排出する際には、まず、排出バルブ33を閉状態に維持したまま流入バルブ32のみを開状態にして加圧容器2内の水を排水タンク31に移動し、加圧容器2内の水を排水タンク31に移動し終えた後に、流入バルブ32を閉状態に切り替え、その後、排出バルブ33を開状態に切り替えて、排水タンク31内の水を排出している。また、排水タンク31の容積を、加圧容器2の容積以下としている。そのため、加圧容器2内から水を排出する際、すなわち、加圧容器2内から排水タンク31に水を移動する際に、加圧容器2内の気圧が大幅に低下することを抑制することができる。つまり、加圧容器2内の気圧変動を抑制しつつ加圧容器2内の水を排出することができる。その結果、耐候性試験中に、加圧容器2内の気圧が低下することによって、実環境の再現性が大きく低下することを防止することができ、耐候性試験の信頼性が低下することを抑制することができる。
【0047】
つまり、排水タンク31が設けられているため、流入バルブ32が開状態に切り替わった場合、加圧容器2内の圧力は低下するものの、大気圧まで低下することはなく、排水タンク31の容積に応じた圧力まで低下すると、以後はそのままの圧力を維持する。そのため、加圧容器2内の圧力が大気圧まで低下することを抑制することができると共に、容器内圧力が所定の圧力まで復帰するのに要する所要時間を短縮することができる。そのため加圧容器2内の圧力変動を抑制し速やかに所定の圧力に復帰させることができる。
また、
図1に示す耐候性試験装置1では、光照射装置4は、加圧容器2の外に配置されているが、
図4に示すように、光照射装置41を、加圧容器40内に設けてもよい。
【0048】
図4に示す耐候性試験装置1Bは、加圧容器40内に光源41aが設けられていること以外は、耐候性試験装置1と同一であるので、同一部には同一符号を付与し、その詳細な説明は省略する。
加圧容器40は、加圧可能な密閉容器であり、加圧容器40内に光照射装置41と試料保持部42とが設けられている。加圧容器40は、中空の直方体形状を有し、光照射装置41及び試料保持部42を収納する収納部40aと収納部40aの開口部を塞ぐ蓋部40bとを備える。収納部40a内の試料保持部42に試料Sを配置した後、収納部40aと蓋部40bとを嵌合させ、例えば収納部40aと蓋部40bとを、蓋部40bの縁部近傍でボルト等により固定することで、加圧容器40内部が気密状態となるようになっている。加圧容器40の材料は、加圧容器40内の圧力に対する耐圧性を有するものであれば、各種の材料を用いることができるが、例えば、SUS、アルミニウム合金、鉄、チタン合金、タングステン合金などから構成することができる。
【0049】
試料保持部42は、例えば、
図4に示すように、縦断面が八角形となる中空の略球体形状であり、試料保持部42の中心を通る上下方向に延びる線分を回転軸とし、試料保持部42の上部に固定され、回転軸の延長線を軸とする駆動軸46を回転させることによって、試料保持部42が回転軸を軸として回転するようになっている。駆動軸46は、例えば、ギヤ47を介して駆動部48により回転駆動される。試料保持部42の下部は開口されている。
試料保持部42の内側には、八角形をなす上辺及び下辺を除く3辺それぞれと対向する位置に、試料Sを保持するための図示しない試料ホルダが設けられている。
図4では、計6個の試料Sを保持するようになっているが、任意数の試料Sを保持することができる。
【0050】
試料保持部42内には、その回転軸上に、光源41aと光源41aを収納する保護管41bとが、これら光源41a及び保護管41bの長手方向と回転軸の延びる方向とが同一方向となるように配置され、保護管41bに沿って水噴霧管9が配置されている。水噴霧管9の、試料保持部42に保持された片側3つの試料Sそれぞれと対向する位置にはスプレーノズル9aが設けられている。これら光源41a及び水噴霧管9は、光源41a及びスプレーノズル9aが、試料Sと対向するように、試料保持部42下部から開口を通して支持されている。これにより、試料保持部42を回転させると、試料保持部42に設けられた試料Sが、保護管41bに収納された光源41aの照射面と対向する位置にきたときに、試料Sに対して光照射が行われると共に、水噴霧管9のスプレーノズル9aの噴霧面と対向する位置にきたときに試料Sに対して水噴霧が行われるようになっている。なお、温度調整器13及び検出部14は、加圧容器40内の適所に設けられている。
図4において、
図3に示す耐候性試験装置1と同一部には同一符号を付与しその詳細な説明は省略する。
【0051】
この耐候性試験装置1Bも、光源41aの照射光が、波長290nm以上450nm以下の光を含み、且つ290nm以上450nm以下の波長のスペクトルの強度を積分した値が、25mW/cm2以上となるように制御する等、上記と同様にして照射光の波長や光量を調整することによって、耐候性試験装置1Aと同等の作用効果を得ることができる。
【実施例0052】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(耐候性の試験)
図1に示す耐候性試験装置1及び
図4に示す耐候性試験装置1Bを用いて、化粧シートの実際の耐候性試験を行った。この耐候性試験に用いた化粧シートの作製方法は下記の通りである。
図5は、化粧シート50の構成を示す図である。比較例としては、代表的な耐候性試験機(MW、S-Xe装置及びXe装置)及び実環境下での耐候性試験を行った。それぞれの耐候性試験条件は表1~表5に示す通りであった。試験結果の詳細は後述する。
【0053】
<透明樹脂シートの作製>
高結晶化ホモポリプロピレン樹脂に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010:チバスペシャリティケミカルズ社製)を500PPMと、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チヌビン328:チバスペシャリティケミカルズ社製)を2000PPMと、ヒンダードアミン系光安定剤(キマソーブ944:チバスペシャリティケミカルズ社製)を2000PPMと、リン酸エステル金属塩系造核剤(アデカスタブNA-21:ADEKA社製)を1000PPMとを添加した樹脂を溶融押出機を用いて押し出し、透明樹脂シート51(樹脂層)として使用する厚さ100μmの高結晶性ポリプロピレン製の透明樹脂シートを製膜した。続いて、製膜された透明樹脂シート51の両面にコロナ処理を施して表面の濡れを40dyn/cm以上とした。なお、押し出し製膜時の押出温度やロールなどの冷却条件を変えることにより、種々の透明樹脂シートを作製した。
【0054】
<化粧シートの作製>
得られた透明樹脂シートからなる透明樹脂シート51の片面に、2液硬化型ウレタンインキ(V180:東洋インキ製造株式会社製)にて絵柄印刷を行い、絵柄層52を施した後、絵柄層52に重ねて隠蔽性のある2液硬化型ウレタンインキ(V180:東洋インキ製造株式会社製)を塗布量6g/m2にて塗布して隠蔽層53を施した。また、隠蔽層53に重ねて、プライマーコートとして2液硬化型ウレタンインキ(PET-E、レジウサー:大日精化株式会社製)を塗布量1g/m2にて塗布してプライマー層55を形成した。
【0055】
次に、このシートの透明樹脂シートからなる透明樹脂シート51の面に、エンボス用の金型ロールを用いてプレスしてエンボス模様51aを施した後、エンボス模様51a面上に2液硬化型ウレタントップコート(W184:大日本インキ株式会社製)を塗布量3g/m2にて塗布して、コート層54を含み総厚110μmの化粧シート50を得た。この化粧シート50を、ウレタン系の接着剤を用いて金属基材に貼り合わせた後、前述した各種耐候性試験機にて耐候性を評価した。その評価結果は、表1に示す通りであった。表1中の「劣化までの時間」とは、試料に対して水噴霧や光照射等の負荷を与える試験時間であり、試料の外観が変化した(劣化したと判断した)時間のことをいう。劣化するまで継続して耐候性試験を行い、化粧シートの外観が変化していることを確認した時間を「劣化までの時間」とし、この時点で耐候性試験を終了した。
【0056】
なお、耐候性試験では、光照射→水噴霧→結露→水噴霧を1サイクルとし、予め設定した時間毎に切り替えて、繰り返し行った。光照射→水噴霧→結露→水噴霧を1サイクルとしたときの処理工程毎の実行時間及びその設定条件を示す試験サイクルを表2~表5に示す。
表1~表5において、「波長290nm以上450nm以下の強度を積分した値(mW/cm2)」とは、実施例及び比較例において、照射光の強度として設定される、波長290nm以上450nm以下のスペクトルの強度を積分した値を示し、例えば実施例1では、波長290nm以上450nm以下の波長のスペクトルの強度を積分した値が、表1に示す「25.9mW/cm2」となる強度で光照射を行う。また、表2~表5中の「ガス」とは、加圧容器2内にガスを導入するか否かを表す。表2~表5中の「圧力」とは加圧容器2内の圧力を加圧するか否かを表す。
【0057】
<実施例>
(実施例1)
実施例1では、光照射装置41が加圧容器40内に配置された耐候性試験装置1Bを用いて耐候性試験を行った。光源41aとして、キセノンランプを用いた。
実施例1では、表1に示す条件及び表2に示す試験サイクルで耐候性試験を行った。
光学フィルタ:波長290nm以上490nm以下の光を透過
波長290nm以上450nm以下の強度を積分した値:25.9mW/cm2
導入ガス:酸素と窒素との比が100:0である混合ガス
加圧容器40内の圧力(ゲージ圧:大気圧を0Mpaとする):0.5Mpa
光照射時の試料の温度:80℃
光照射時の加圧容器40内の湿度:50%
結露時の試料温度:50℃
結露時の加圧容器40内の湿度:98%
水噴霧:有り
ガス:試験サイクル中常時導入
加圧容器40内の加圧:試験サイクル中常時加圧
試験サイクルの各工程の実行時間:
照射:水噴霧:結露:水噴霧=10時間:30秒:2時間:30秒
【0058】
(実施例2)
実施例2では、耐候性試験装置1Bに替えて、光照射装置4が加圧容器2外に配置された耐候性試験装置1を用いて耐候性試験を行った。それ以外は、実施例1と同様の条件で、耐候性試験を行った。
(実施例3)
実施例3では、波長290nm以上450nm以下の強度を積分した値を77.7mW/cm2とした。それ以外は、実施例2と同様の条件で、耐候性試験を行った。
【0059】
(実施例4)
実施例4では、加圧容器2内の圧力(ゲージ圧:大気圧を0Mpaとする)を0.2Mpaとした。それ以外は、実施例3と同様の条件で、耐候性試験を行った。
(実施例5)
実施例5では、導入ガスとして、酸素と窒素との比が20:80である混合ガスを用いた。それ以外は、実施例3と同様の条件で、耐候性試験を行った。
(実施例6)
実施例6では、波長290nm以上450nm以下の強度を積分した値を129.4mW/cm2とした。それ以外は、実施例2と同様の条件で、耐候性試験を行った。
【0060】
<比較例>
(比較例1)
比較例1では、メタルウェザオメータ(MW、ダイプラ・ウィンテス社製、装置名:ダイプラ・メタルウェザー)を用いて耐候性試験を行った。このMWの光源は、メタルハライドランプであった。また、光源の照射光を、295nm以上780nm以下の光を透過するフィルタを介して試料に照射した。
比較例1では、表1に示す条件及び表3に示す試験サイクルで耐候性試験を行った。
波長290nm以上450nm以下の強度を積分した値:86.7mW/cm2
導入ガス:大気
加圧容器内の圧力(ゲージ圧:大気圧を0Mpaとする):0Mpa
光照射時のブラックパネルBPの温度:63℃
光照射時の加圧容器内の湿度:50%
結露時のブラックパネルBPの温度:30℃
結露時の加圧容器内の湿度:98%
水噴霧:有り
試験サイクルの各工程の実行時間:
照射:水噴霧:結露:水噴霧=20時間:30秒:4時間:30秒
【0061】
(比較例2)
比較例2では、スーパーキセノン(S-Xe)装置(株式会社東洋精機製作所製、装置名:ATLAS Ci4000)を用いて耐候性試験を行った。この装置の光源はキセノンランプであった。また、光源の照射光を、295nm以上780nm以下の光を透過するフィルタを介して試料に照射した。
比較例2では、表1に示す条件及び表4に示す試験サイクルで耐候性試験を行った。
波長290nm以上450nm以下の強度を積分した値:46.6mW/cm2
導入ガス:大気
加圧容器内の圧力(ゲージ圧:大気圧を0Mpaとする):0Mpa
光照射時のブラックパネルBPの温度:63℃
光照射時の加圧容器内の湿度:50%
結露時のブラックパネルBPの温度:30℃
結露時の加圧容器内の湿度:98%
水噴霧:有り
試験サイクルの各工程の実行時間:
照射:水噴霧:結露:水噴霧=20時間:30秒:4時間:30秒
【0062】
(比較例3)
比較例3では、キセノン(Xe)装置(株式会社東洋精機製作所製、装置名:ATLAS Ci4000)を用いて耐候性試験を行った。この装置の光源はキセノンランプであった。また、光源の照射光を、295nm以上780nm以下の光を透過するフィルタを介して試料に照射した。
比較例3では、表1に示す条件及び表5に示す試験サイクルで耐候性試験を行った。
波長290nm以上450nm以下の強度を積分した値:15.5mW/cm2
導入ガス:大気
加圧容器内の圧力(ゲージ圧:大気圧を0Mpaとする):0Mpa
光照射時のブラックパネルBPの温度:63℃
光照射時の加圧容器内の湿度:50%
結露時のブラックパネルBPの温度:30℃
結露時の加圧容器内の湿度:98%
水噴霧:有り
試験サイクルの各工程の実行時間:
照射:水噴霧:結露:水噴霧=20時間:30秒:4時間:30秒
【0063】
(比較例4)
比較例4では、水噴霧を行わなかった。また、加圧容器内の湿度は大気湿度とした。それ以外は、比較例3と同様の条件で、耐候性試験を行った。
(比較例5)
比較例5では、自然環境下(8年)で耐候性試験を行った。すなわち、光源に相当するものは太陽であり、大気下、温度と湿度は実環境条件で耐候性試験を行った。
(比較例6)
比較例6では、波長290nm以上450nm以下の強度を積分した値を20.7mW/cm2とした。それ以外は、実施例2と同様の条件で、耐候性試験を行った。
【0064】
(比較例7)
比較例7では、波長290nm以上450nm以下の強度を積分した値を155.3mW/cm2とした。また、水噴霧を行わなかった。それ以外は、実施例2と同様の条件で、耐候性試験を行った。
(比較例8)
比較例8では、加圧容器2内の圧力(ゲージ圧:大気圧を0Mpaとする)を0Mpaとした。また、水噴霧を行った。それ以外は、比較例7と同様の条件で、耐候性試験を行った。
(比較例9)
比較例9では、水噴霧を行わなかった。また、加圧容器2内の湿度を0%とした。それ以外は、比較例8と同様の条件で、耐候性試験を行った。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
<評価>
実施例1~6及び比較例1~9に係る耐候性試験後の試料を、試料表面の外観観察及び各層の硬度変化の評価により比較した。外観の観察はマイクロスコープやレーザー顕微鏡を用い、試料表面のひび割れの有無を検出した。また、試料内部の剥離の有無は手で調べた。試料内部の剥離とは、例えば化粧シートを構成する各層間における剥離等である。
劣化までの時間及び劣化形態を、以下の2段階で評価した。ここでは、従来の耐候性試験装置のうち、劣化までの時間が最も短いメタルウェザオメータを用いた比較例1における劣化までの時間、すなわち、600時間と比較し、劣化までの時間が比較例1における劣化までの時間を下回るか否かに基づき評価した。
【0071】
(評価基準)
○:表面のヒビ及び内部の剥離が共に発生し、劣化までの時間が比較例1の劣化までの時間(600時間)より短い。
×:表面のヒビ又は内部の剥離のうちの一方のみが発生、又は、表面のヒビ及び内部の剥離が共に発生するが、劣化までの時間が比較例1の劣化までの時間(600時間)以上である。
表1に示すように、比較例5の実環境下(8年)での耐候性試験では、試料表面にヒビが生じ、また、試料内部に剥離が生じていた。
【0072】
一方、実施例1~6では、光照射装置4が加圧容器2の外側及び内側のいずれかに設けられた耐候性試験装置1又は1Bを用いて耐候性試験を行った。この場合、試料の表面にヒビが生じ、且つ試料内部に剥離が生じていた。このとき光照射した「波長290nm以上450nm以下の範囲のスペクトルの強度を積分した値」は25mW/cm2以上であった。また、長くても600時間で試料の表面にヒビ及び内部に剥離が生じており、光量が大きいときほど、つまり、「波長290nm以上450nm以下の範囲のスペクトルの強度を積分した値」が大きいときほど、劣化までの時間は短かった。
【0073】
これに対し、「波長290nm以上450nm以下の範囲のスペクトルの強度を積分した値」が25mW/cm2より小さい場合(比較例6)は、750時間で試料の外観に変化が生じ、表面のヒビ及び内部の剥離が生じたが、比較例1における劣化までの時間(600時間)よりも長かった。また、「波長290nm以上450nm以下の範囲のスペクトルの強度を積分した値」が150mW/cm2より大きい場合(比較例7~9)には、比較的短い時間(100時間以下)で、試料の外観に変化が生じたが、表面にヒビが生じるが内部の剥離が生じていなかった。
【0074】
また、メタルウェザオメータ(比較例1)又はスーパーキセノン(S-Xe)装置(比較例2)を用いて耐候性試験を行った場合には、表面にひびが生じていたが、試料内部に剥離は生じなかった。また、キセノン(Xe)装置(比較例3)を用いて耐候性試験を行った場合、試料の表面にひびが生じ且つ内部に剥離が生じたが、劣化までの時間は3000時間であった。また、キセノン(Xe)装置(比較例4)を用いて、水噴霧を行わず、また、加圧容器内の湿度を大気湿度とした場合、4000時間で試料の表面にひびが生じたが、内部の剥離は生じなかった。なお、比較例1~4のいずれの場合も、耐候性試験を大気下で行った。
【0075】
以上から、実施例1~6では、キセノン光の照射、波長290nm以上450nm以下の範囲のスペクトルの強度を積分した値が25mW/cm2以上であること、酸素ガスの導入、酸素分圧が0.2MPa以上であること、試料の80℃への加熱、水噴霧及び加圧容器2内の湿度が50%であること等により、比較例5の実環境下(8年)での耐候性試験でのサンプルと同様に、試料に対して、表面のヒビと内部の層の剥離とをより短時間で生じさせ得ることを確認できた。
【0076】
(照度ムラの試験)
まず、従来のメタルウェザーメーター(ダイプラ・ウィンテス株式会社製、装置名:ダイプラ・メタルウェザー)を用いて、
図6に示すように、光源4aからの試料Sに相当する領域(縦200mm×横400mm)に照射される光の照度ムラを測定した(比較例6)。
図6に示すように、上記の領域を9箇所に分けて、それぞれを測定したところ、波長290nm以上450nm以下の波長のスペクトルの強度を積分した値の平均は94.1mW/cm
2であり、最大値が104mW/cm
2、最小値が86.7mW/cm
2であり、照度ムラは9.1%であった。なお、照度ムラは、以下の式(2)より算出した。
照度ムラ(%)=((最大値-最小値)/(最大値+最小値))×100
……(2)
【0077】
これに対し、
図2に示す光学系を有する耐候性試験装置1Aを準備して試料Sに相当する領域(縦72mm×横156mm)での照度ムラを測定した(実施例6)。
図7に示すように、上記の領域を17箇所に分けてそれぞれ測定したところ、入射される光が平行光であることから、波長290nm以上450nm以下の波長のスペクトルの強度を積分した値の平均は113.5mW/cm
2であり、最大値が115.1mW/cm
2、最小値が111.0mW/cm
2であり、照度ムラは1.8%程度に留まった。
このように、耐候性試験装置において試料を照射する光を平行光とすることにより、試料に照査される光の照度ムラが低減できることが確認できた。
【0078】
なお、本発明は、例えば、以下のような構成をとることができる。
(1)
内部に試料が配置される加圧容器と、
光源を有し前記試料に光照射を行う光照射装置と、を備え、
前記光源からの照射光は、波長290nm以上450nm以下の光を含み、当該290nm以上450nm以下の波長のスペクトルの強度を積分した値が、25mW/cm2以上であることを特徴とする耐候性試験装置。
(2)
前記加圧容器は、光を透過可能な光透過部を有し、
前記光照射装置は前記加圧容器の外に配置され、前記光源からの照射光を、前記光透過部を介して前記試料に照射することを特徴とする上記(1)に記載の耐候性試験装置。
(3)
前記光源からの照射光を平行光に変換する光学系を備えることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の耐候性試験装置。
(4)
前記光学系は、少なくとも一つのコリメートレンズを含むことを特徴とする上記(3)に記載の耐候性試験装置。
(5)
前記光源からの照射光は少なくとも紫外線を含むことを特徴とする上記(1)から(4)のいずれか一項に記載の耐候性試験装置。
(6)
前記光照射装置は、波長290nmより短い波長の紫外線を取り除く光学フィルタを備えることを特徴とする上記(1)から(5)のいずれか一項に記載の耐候性試験装置。
(7)
前記光源からの照射光は、前記波長290nm以上450nm以下の波長のスペクトルの強度を積分した値が、150mW/cm2以下であることを特徴とする上記(1)から(6)のいずれか一項に記載の耐候性試験装置。
(8)
前記光源からの照射光は、300nm以下の波長の光をほとんど含まず、波長が310nmである光のスペクトルの強度を1としたとき、波長が320nmである光のスペクトルの強度が1.9±0.8であり、波長が330nmである光のスペクトルの強度が3.0±1.8であり、波長が340nmである光のスペクトルの強度が4.1±2.9であって、さらに、300nm以上340nm以下の波長域の光のスペクトルの強度が。波長の増加に伴い連続的に増加していることを特徴とする上記(1)から(7)のいずれか一項に記載の耐候性試験装置。
(9)
前記加圧容器内に酸素ガスを含む気体を導入するガス導入部と、
前記加圧容器内の気圧を調整する圧力調整部と、
前記気体を加湿する加湿部と、
前記加圧容器内において前記試料に液体を噴霧する噴霧部と、
前記試料の温度を調整する温度調整部と、
前記気体の導入量、前記気圧、前記気体の湿度、及び前記試料の温度の少なくとも1つを検出する検出部と、
前記検出部による検出値に基づいて、前記ガス導入部、前記圧力調整部、前記加湿部、前記噴霧部、及び、前記温度調整部の少なくとも1つを制御する制御部と、
を備えることを特徴とする上記(1)から(8)のいずれか一項に記載の耐候性試験装置。
(10)
前記制御部は、前記ガス導入部から導入される前記酸素ガスの前記気体全体に対する濃度が20%以上となるように、前記ガス導入部を制御することを特徴とする上記(9)に記載の耐候性試験装置。
(11)
前記制御部は、前記ガス導入部から導入される前記酸素ガスの酸素分圧が0.2MPa以上0.9MPa以下となるように、前記ガス導入部及び前記圧力調整部の少なくとも一方を制御することを特徴とする上記(9)または(10)に記載の耐候性試験装置。
(12)
上記(1)から(11)のいずれか一項に記載の耐候性試験装置を用いて前記試料の耐候性を評価する試験方法であって、
前記加圧容器内に前記試料を配置する工程と、
前記光照射装置からの照射光を前記試料に照射する工程と、
を備えることを特徴とする耐候性試験方法。
(13)
前記試料に照射される前記照射光が紫外光を含む平行光であることを特徴とする上記(12)に記載の耐候性試験方法。