IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社SOXAIの特許一覧

特開2024-39543ウェアラブル電子デバイス、健康管理システムおよび健康管理方法
<>
  • 特開-ウェアラブル電子デバイス、健康管理システムおよび健康管理方法 図1
  • 特開-ウェアラブル電子デバイス、健康管理システムおよび健康管理方法 図2
  • 特開-ウェアラブル電子デバイス、健康管理システムおよび健康管理方法 図3
  • 特開-ウェアラブル電子デバイス、健康管理システムおよび健康管理方法 図4
  • 特開-ウェアラブル電子デバイス、健康管理システムおよび健康管理方法 図5
  • 特開-ウェアラブル電子デバイス、健康管理システムおよび健康管理方法 図6
  • 特開-ウェアラブル電子デバイス、健康管理システムおよび健康管理方法 図7
  • 特開-ウェアラブル電子デバイス、健康管理システムおよび健康管理方法 図8
  • 特開-ウェアラブル電子デバイス、健康管理システムおよび健康管理方法 図9
  • 特開-ウェアラブル電子デバイス、健康管理システムおよび健康管理方法 図10
  • 特開-ウェアラブル電子デバイス、健康管理システムおよび健康管理方法 図11
  • 特開-ウェアラブル電子デバイス、健康管理システムおよび健康管理方法 図12
  • 特開-ウェアラブル電子デバイス、健康管理システムおよび健康管理方法 図13
  • 特開-ウェアラブル電子デバイス、健康管理システムおよび健康管理方法 図14
  • 特開-ウェアラブル電子デバイス、健康管理システムおよび健康管理方法 図15
  • 特開-ウェアラブル電子デバイス、健康管理システムおよび健康管理方法 図16
  • 特開-ウェアラブル電子デバイス、健康管理システムおよび健康管理方法 図17
  • 特開-ウェアラブル電子デバイス、健康管理システムおよび健康管理方法 図18
  • 特開-ウェアラブル電子デバイス、健康管理システムおよび健康管理方法 図19
  • 特開-ウェアラブル電子デバイス、健康管理システムおよび健康管理方法 図20
  • 特開-ウェアラブル電子デバイス、健康管理システムおよび健康管理方法 図21
  • 特開-ウェアラブル電子デバイス、健康管理システムおよび健康管理方法 図22
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039543
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】ウェアラブル電子デバイス、健康管理システムおよび健康管理方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/02 20060101AFI20240314BHJP
   A61B 5/0295 20060101ALI20240314BHJP
   A61B 5/022 20060101ALI20240314BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
A61B5/02 310D
A61B5/0295
A61B5/022 C
A61B5/022 400F
A61B5/0245 100B
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144167
(22)【出願日】2022-09-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り B1.株式会社日経BP発行、日経トレンディ2022年5月号(発行日:令和4年4月4日),第47頁 B2.株式会社日経BP発行、日経トレンディ2022年6月号(発行日:令和4年5月2日),第93頁 B3.株式会社小学館発行、DIME2022年8月号(発行日:令和4年6月16日),第24頁 B4.株式会社ワン・パブリッシング発行、GetNavi2022年8月号(発行日:令和4年6月23日),第41頁 B5.株式会社マガジンハウス発行、クロワッサン2022年7月10日号No.1072号,第62頁(発行日:令和4年6月24日) B6.株式会社ミスター・パートナー発行、今の大ヒットはこれだ!!2022年度版(発行日:令和4年7月7日),第318頁 B7.横浜市経済局産業連携推進課発行、2022年度LIP.横浜トライアル助成金交付対象事業,記者発表資料(発行日:令和4年7月14日)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り P1.第12回ビジネス創造コンテスト(開催日:令和4年1月20日) P2.横浜ビジネスグランプリ2022~YOXOアワード~セミファイナルプレゼンテーション審査(開催日:令和4年1月22日) P3.Creww株式会社主催スタートアップ企業によるピッチイベント(開催日:令和4年2月2日) P4.第43回工業技術見本市「テクニカルショウヨコハマ2022」(開催日:令和4年2月2~4日) P5.第130回かわさき起業家オーディション ビジネス・アイデアシーズ市場準決勝(開催日:令和4年2月8日) P6.ベンチャーピッチin羽田コーチングプログラム2021、予選および最終ピッチ(開催日:令和3年12月3日、令和4年2月18日) P7.第2回ブレークスルービジネスコンテスト、予選および準決勝(開催日:令和4年2月9日(予選)、21日(準決勝)) P8.第20回横浜ベンチャーピッチ(開催日:令和4年2月24日) P9.第2回ブレークスルービジネスコンテスト、決勝(開催日:令和4年2月21日) P10.第130回かわさき起業家オーディション ビジネス・アイデアシーズ市場決勝(開催日:令和4年3月11日) P11.Plug and Play Japan Health Selection Day(開催日:令和4年5月31日) P12.Plug and Play Japanアクセラレータープログラム「Summer/Fall 2022 Batch」(開催日:令和4年6月1日) P13.Future of Healthcare - Startup Pitch in Health Tech Devices & Wearables(開催日:令和4年6月9日) P14.電子機器トータルソリューション展2022(開催日:令和4年6月15~17日) P15.スポルテック2022(開催日:令和4年7月28日)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り W1.掲載日:令和4年2月16日、URL:https://soxai.co.jp/、https://www.youtube.com/watch?v=H7BI5m3A70M、https://soxai.co.jp/products/soxai-ring?variant=41402572767407 W2.掲載日:令和4年2月27日、URL:https://www.analog.com/jp/about-adi/news-room/press-releases/2022/02-28-2022-soxai-adpd4101.html W3.掲載日:令和4年3月1日、URL:https://www.makuake.com/project/soxai_ring/、https://www.makuake.com/project/soxai_ring/communication/ W4.掲載日:令和4年3月3日、URL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000089024.html W5.掲載日:令和4年3月28日、URL:https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2203/28/news033_3.html W6.掲載日:令和4年5月6日、URL:https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00637/00001/ W7.掲載日:令和4年5月13日、URL:https://signal.diamond.jp/articles/-/1208 W8.掲載日:令和4年5月15日、URL:https://moov.ooo/article/62692d3274d23c664e85a927
(71)【出願人】
【識別番号】521165046
【氏名又は名称】株式会社SOXAI
(74)【代理人】
【識別番号】110003476
【氏名又は名称】弁理士法人瑛彩知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 達彦
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA08
4C017AA09
4C017AA10
4C017AA11
4C017AA12
4C017AB03
4C017AC27
4C017AC28
4C017BC11
4C017BC16
4C017BC20
4C017EE01
4C017FF05
4C017FF17
(57)【要約】
【課題】装着者の生体情報をより精度よく検知することができるウェアラブル電子デバイスを提供する。
【解決手段】ウェアラブル電子デバイスは、環状のリング本体と、前記リング本体の内部に設けられ、環の中心側に向けて光を放射する発光素子と、前記リング本体の内部であって前記発光素子に対して前記環の中心側に設けられ、前記光の進行方向を指向角を狭める向きに変化させる第1の光学素子と、を備え、前記リング本体の内周側表面には、前記第1の光学素子が配置された部分が前記第1の光学素子の配置されていない部分よりも前記環の中心側に向けて突出している突部が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のリング本体と、
前記リング本体の内部に設けられ、環の中心側に向けて光を放射する発光素子と、
前記リング本体の内部であって前記発光素子に対して前記環の中心側に設けられ、前記光の進行方向を指向角を狭める向きに変化させる第1の光学素子と、
を備え、
前記リング本体の内周側表面には、前記第1の光学素子が配置された部分が前記第1の光学素子の配置されていない部分よりも前記環の中心側に向けて突出している突部が設けられているウェアラブル電子デバイス。
【請求項2】
前記第1の光学素子の前記環の中心側の端部は、前記内周側表面よりも前記環の中心側に位置している、請求項1に記載のウェアラブル電子デバイス。
【請求項3】
前記第1の光学素子は、前記発光素子の指向角を60°以下にするように構成されている、請求項1または2に記載のウェアラブル電子デバイス。
【請求項4】
前記第1の光学素子は、前記内周側表面に向かうにつれて、前記発光素子と前記環の中心とを結ぶ半径線から離れる反射面を有している、請求項1または2に記載のウェアラブル電子デバイス。
【請求項5】
前記反射面は、放物面をなしている、請求項4に記載のウェアラブル電子デバイス。
【請求項6】
前記反射面は、前記半径線を軸とした回転放物面をなしている、請求項4に記載のウェアラブル電子デバイス。
【請求項7】
前記第1の光学素子は、素子本体と、前記素子本体上に備えられた反射膜と、を備え、
前記反射面は前記反射膜によって構成されている、請求項4に記載のウェアラブル電子デバイス。
【請求項8】
前記反射膜は、金属膜である、請求項7に記載のウェアラブル電子デバイス。
【請求項9】
前記突部は、頂部が平坦である、請求項1または2に記載のウェアラブル電子デバイス。
【請求項10】
前記突部の突出寸法は、前記環の内径の5%以上10%以下である、請求項1または2に記載のウェアラブル電子デバイス。
【請求項11】
前記リング本体の前記第1の光学素子を覆う部分の厚みは、0.5mm以下である、請求項1または2に記載のウェアラブル電子デバイス。
【請求項12】
前記リング本体の内部に設けられ、光を検出する受光素子と、
前記リング本体の内部であって前記受光素子に対して前記環の中心側に設けられ、前記光の進行方向を前記受光素子に向けて変化させる第2の光学素子と、
をさらに備え、
前記発光素子および前記受光素子は、これら発光素子および受光素子のそれぞれと、前記環の中心とを結ぶ線分のなす角度が55°以上90°以下となるように配置されている、請求項1または2に記載のウェアラブル電子デバイス。
【請求項13】
前記発光素子に対して備えられた前記第1の光学素子の前記環の中心とを結ぶ半径線に沿う高さ寸法は、前記受光素子に対して備えられた第2の光学素子の前記高さ寸法よりも大きい、請求項12に記載のウェアラブル電子デバイス。
【請求項14】
前記発光素子は複数の発光ダイオードを備え、
前記複数の発光ダイオードは、同一または異なる複数の波長の光を発生する、請求項1または2に記載のウェアラブル電子デバイス。
【請求項15】
前記発光素子は、中心波長が500nm以上600nm以下の光を発生させる緑色ダイオードを含む、請求項1または2に記載のウェアラブル電子デバイス。
【請求項16】
前記発光素子は、中心波長が630nm以上690nm以下の光を発生させるダイオード、および、810nm以上990nm以下の光を発生させるダイオードを含む、請求項15に記載のウェアラブル電子デバイス。
【請求項17】
前記リング本体は、
外周側に配されるとともに前記環の中心側に凹部を備える外装部と、
前記外装部に対して前記環の中心側に一体的に配される封止樹脂部と、
を備え、
前記発光素子および前記第1の光学素子は、前記凹部に配置されるとともに、前記封止樹脂部によって封止されている、請求項1または2に記載のウェアラブル電子デバイス。
【請求項18】
前記発光素子および前記第1の光学素子は、前記外装部よりも前記環の中心側に突出するように配置されている、請求項17に記載のウェアラブル電子デバイス。
【請求項19】
環状のリング本体と、
前記リング本体の内部に設けられ、光を検出する受光素子と、
前記リング本体の内部であって前記受光素子に対して前記環の中心側に設けられ、前記光の進行方向を前記受光素子に向けて変化させる第2の光学素子と、
を備え、
前記リング本体の内周側表面には、前記第2の光学素子が配置された部分が前記第2の光学素子の配置されていない部分よりも前記環の中心側に向けて突出している突部が設けられているウェアラブル電子デバイス。
【請求項20】
請求項1または19に記載のウェアラブル電子デバイスと、
生体に装着された前記ウェアラブル電子デバイスが取得した生体情報に基づいて、容積脈波法により、心拍数、血中酸素飽和度、血圧、および血糖値の少なくとも1つの健康管理情報を算出する制御部と、
前記健康管理情報を出力する出力部と、
を備える、健康管理システム。
【請求項21】
請求項1または19に記載のウェアラブル電子デバイスを生体に装着して取得した生体情報に基づいて、容積脈波法により、心拍数、血中酸素飽和度、血圧、および血糖値の少なくとも1つの健康管理情報を算出するステップ、
前記健康管理情報を出力するステップ、
を含む、健康管理方法。
【請求項22】
前記ウェアラブル電子デバイスは指輪型であり、前記生体はヒトの指である、請求項21に記載の健康管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェアラブル電子デバイス、健康管理システムおよび健康管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特表2017-506376号公報(特許文献1)がある。この公報には、「開示の1側面は、内壁と、外壁と、内壁と外壁との間に配置されたフレキシブルプリント回路基板と、フレキシブルプリント回路基板上に実装された少なくとも1個のコンポーネントとを含むWCD(ウェアラブルコンピューティングデバイス)を提供し、内壁と外壁のうちの少なくとも1つが、データ伝送とバッテリ再充電と状態表示のうちの少なくとも1つを容易にする窓を画定する」と記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2017-506376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この特許文献1の段落0223には、ベースアセンブリが、LED光をWCD内部のCPVに向けて集束させるために、集光源1770に隣接して位置決めされた光学素子1790を含むことが開示されている。しかしながら、特許文献1には、WCDの装着者の生体情報を精度よく検知するための構成については開示されていない。
【0005】
そこで本発明は、装着者の生体情報をより精度よく検知することができるウェアラブル電子デバイス、健康管理システムおよび健康管理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、環状のリング本体と、前記リング本体の内部に設けられ、環の中心側に向けて光を放射する発光素子と、前記リング本体の内部であって前記発光素子に対して前記環の中心側に設けられ、前記光の進行方向を指向角を狭める向きに変化させる第1の光学素子と、を備え、前記リング本体の内周側表面には、前記第1の光学素子が配置された部分が前記第1の光学素子の配置されていない部分よりも前記環の中心側に向けて突出している突部が設けられているウェアラブル電子デバイスを提供することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、装着者の生体情報をより精度よく検知することができるウェアラブル電子デバイス、健康管理システムおよび健康管理方法を提供することができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係るウェアラブル電子デバイス1の斜視図である。
図2図2は、一実施形態に係るウェアラブル電子デバイス1の分解斜視図である。
図3図3は、図1のIII-III断面図である。
図4図4は、図3の部分拡大図である。
図5図5は、一実施形態に係る第1の光学素子16の斜視図である。
図6図6は、図5のVI-VI断面図である。
図7図7は、他の実施形態に係る第1の光学素子の斜視図である。
図8図8は、他の実施形態に係る第1の光学素子の斜視図である。
図9図9は、一実施形態に係る第2の光学素子18の斜視図である。
図10図10は、図9のX-X断面図である。
図11図11は、他の実施形態に係る第2の光学素子の斜視図である。
図12図12は、他の実施形態に係るウェアラブル電子デバイス1の断面図である。
図13図13は、一実施形態に係るウェアラブル電子デバイス1を装着しているヒトの指の断面模式図である。
図14図14は、発光素子と受光素子の相対位置を表す角度θと、受光素子で受光する光の強度との関係のシミュレーション結果を示すグラフである。
図15図15は、発光素子と受光素子の相対位置を表す角度θと、灌流指標(AC/DC)と、の関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
図16図16は、光学素子がある場合となしの場合の発光素子の放射強度分布である。
図17図17は、一実施形態に係るウェアラブル電子デバイス1の製造用の治具600の斜視図である。
図18図18は、図17の治具600の分解斜視図である。
図19図19は、一実施形態に係る健康管理システム100の構成例である。
図20図20は、ウェアラブル電子デバイス1のハードウェア構成の例である。
図21図21は、管理サーバ101のハードウェア構成の例である。
図22図22は、ユーザ端末102のハードウェア構成の例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面を参照しつつ、一実施形態に係るウェアラブル電子デバイスを基に本技術について説明する。なお各図面において、同一の機能を有する構成については、符号の付与と重ねての説明を省略する場合がある。また、一部の図面には、共通する方位をX,Y,Z軸にて示している。これに限定されるものではないが、本実施形態において、方位X,Y,Zは互いに直交している。
【0010】
[ウェアラブル電子デバイス]
図1~3はそれぞれ、一実施形態に係るウェアラブル電子デバイス1の斜視図、分解斜視図、および図1のIII-III断面図である。また図4は、図3の部分拡大図である。
本技術に係るウェアラブル電子デバイス1は、ヒト等の生体に装着することで、当該生体の生体情報を非侵襲的に取得することができる装置である。
【0011】
一実施形態に係るウェアラブル電子デバイス1は、リング本体10と、発光素子15と、第1の光学素子16と、を備えている。そして、リング本体10の内周側表面には、第1の光学素子16が配置された部分が第1の光学素子16の配置されていない部分よりも環の中心側に向けて突出している突部12aが設けられていることを特徴としている。
【0012】
また、ウェアラブル電子デバイス1は、リング本体10と、受光素子17と、第2の光学素子18と、を備えるものとしても把握することができる。ウェアラブル電子デバイス1は、好ましくは、発光素子15と受光素子17の組合せを備えている。そして、発光素子15および受光素子17の少なくとも一方に、光学素子16,18が組合せられている。このウェアラブル電子デバイス1は、付加的な要素として、電子部品13、配線板14、および他の電子素子19等を備えることができる。
これらの各構成要素について順に説明する。
【0013】
リング本体10は、環状をなしており、概してウェアラブル電子デバイス1の外形を構成している。リング本体10は、その内部に発光素子15、第1の光学素子16、受光素子17、および第2の光学素子18等の構成要素を収容する筐体である。本例のリング本体10は、外装部11と、封止樹脂部12と、を備えている。
なお、各図において、リング本体10の環軸は、Y軸に沿っている。
【0014】
外装部11は、リング本体10の外周側の部分を構成し、環状をなしている。外装部11は、例えば図2に示すように、環の中心側に凹部11aを備えている。凹部11aは、外周側に向けて凹んでおり、発光素子15、第1の光学素子16、受光素子17、および第2の光学素子18等の構成要素はこの凹部11aに配置することができる。外装部11は、外力等から構成要素を守るためにある程度の強度および硬度を有していることが好ましい。外装部11は、例えば、金属、セラミックス、比較的高強度(例えば、25℃における引張強度が30N/mm以上)の合成樹脂等によって構成することができる。
【0015】
これに限定されるものではないが、外装部11を構成する金属材料の好適な一例として、例えば、チタン,タンタル,ハフニウム,ジルコニウム,ニオブ,金,白金等の金属またはその合金、ならびにサージカルステンレス等の生体反応性の低いものが挙げられる。これらの金属材料は、強度が高いことに加え、生体反応性が低い点において好ましい。セラミックス材料の好適な一例として、例えば、アルミナ,ジルコニア,イットリア等の酸化物セラミックス、炭化ケイ素,炭化ホウ素,炭化チタン,炭化ジルコニウム等の炭化物セラミックス、窒化アルミニウム,窒化ケイ素,窒化ホウ素等の窒化物セラミックス、二ホウ化チタン,ホウ化タングステン,ホウ化ジルコニウム等が挙げられる。セラミック材料は、硬質で、金属材料とは異なる質感を備える点において好ましい。合成樹脂材料の好適な一例として、例えば、高密度ポリエチレン,ポリプロピレン,アクリロトリルブタジエンスチレン(ABS),アクリル系樹脂等の汎用プラスチック、ポリアミド,ポリカーボネート,繊維強化プラスチック等のエンジニアリングプラスチック、ポリイミド,ポリアミドイミド,ポリフェニレンサルファイド等のスーパーエンジニアリングプラスチック等が挙げられる。樹脂材料は、軽量である点において好ましい。これらは1種が単独で用いられてもよいし、2種以上の複合体として用いられていてもよい。
【0016】
封止樹脂部12は、リング本体10の環の中心側(内周側)の部分を構成し、環状をなしている。封止樹脂部12は、外装部11に対して中心側に一体的に配されることで、凹部11aに配置された発光素子15、第1の光学素子16、受光素子17、および第2の光学素子18等の構成要素を気密および水密に封止することができるようになっている。封止樹脂部12は、外装部11に対して一体不可分に構成されていてもよいし、例えば固定部材を介するなどして外装部11に対して着脱可能に構成されていてもよい。
【0017】
このような封止樹脂部12は、上記外装部11と同じ樹脂材料を用いて構成することができる。しかしながら、少なくとも発光素子15と受光素子17を覆う部分については、封止樹脂部12は、発光素子15と受光素子17との間の光の伝搬を可能とするために、発光素子15が発する光を透過する材料によって構成するとよい。透過率は特に制限されないが、例えば、発光素子15が発する光に対する透過率が50%以上であるとよく、70%以上が好ましく、80%以上、90%以上であることがより好ましい。これに限定されるものではないが、封止樹脂部12を構成する樹脂材料の好適例としては、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。封止樹脂部12を外装部11に対して一体不可分に構成する場合、例えば、注型成形や、射出成形、トランスファー成形等が可能な熱可塑性樹脂や反応硬化型の熱硬化性樹脂等の樹脂によって構成するとよい。好適な一例として、例えばベースポリマーとしてビスフェノール型(典型的には、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型)のエポキシ樹脂やフェノキシ樹脂を有する反応硬化型樹脂を用いることで、常温ないしは60℃程度での成形を行うことができるために好ましい。
【0018】
リング本体10の大きさは厳密には制限されず、生体の装着部位に応じて適宜設定することができる。ウェアラブル電子デバイス1が例えば指輪であるとき、例えば、内径が13mm以上30mm以下程度の環状とすることが挙げられる。リング本体10の概形は、幾何学的に完全な円形であってもよいし、概ね円形とみなせる環形状、楕円形状、卵形状などであってよい。また、リング本体10の環の厚み(環の半径方向の寸法)は、全周にわたって概ね均一であってもよいし、例えば手背に配される部分を相対的に厚く、指間ないしは手掌に配される部分を相対的に薄く構成してもよい。
【0019】
発光素子15は、リング本体10の内部に設けられ、環の中心側に向けて光を放射する。発光素子15は、典型的には、受光素子17と対になって光センサを構成するための光源である。発光素子15としては、例えば各種の発光ダイオード(Light-emitting diode:LED)や、半導体レーザ(Laser Diode:LD)、有機/無機エレクトロルミネッセンス(Electroluminescence:EL)等を用いることができる。例えば、後述する細動脈を対象とする高精度な測定を小さなフットプリントで実現するためには、発光素子15としてLEDを使用することが好ましい。発光素子15が発する光の波長は検知対象に応じて適宜設定することができる。例えば、発光素子15は、1または複数の発光素子を含むことができる。複数の発光素子を含む場合、それぞれの発光素子は、同一または異なる複数の波長の光を発生することができる。
【0020】
受光素子17は、リング本体10の内部に設けられ、光を検出する。受光素子17は、典型的には、発光素子15と対になって光センサを構成する光検出器である。受光素子17としては、例えば各種のフォトダイオード(Photo Diode:PD)、フォトトランジスタ、光導電素子等を用いることができる。
【0021】
発光素子15と受光素子17とは、後述の実施例で詳細に説明するが、これら発光素子15および受光素子17のそれぞれと、環の中心とを結ぶ線分のなす角度θが55°以上90°以下となるように配置されていることが好ましい。このとき、1つの発光素子15に対して、発光素子15を間に挟むようにして2つの受光素子17が備えられることが好ましい。検出精度を高める観点において、角度θは、60°以上や65°以上であることが好ましく、65°以上であることがより好ましい。また、角度θは、85°以下であることが好ましく、80°以下や75°以下であることがより好ましい。
【0022】
発光素子15および受光素子17は、例えば、容積脈波(Photo-Plethysmogram:PPG)センサを構成することができる。容積脈波とは、灌流によって生じる毛細血管内の血液の容積の経時的な変化であり、例えば、心拍に関する情報、および血管の内部情報を含む生体情報である。可視ないしは近赤外領域の入射光は、生体組織中の赤血球のヘモグロビンによって選択的に吸収され、その他の生体組織については透過または反射されるという特性がある。光電容積脈波法では、生体組織に可視光ないしは近赤外光を入射させ、その透過光または反射光をPPGセンサを使用して検出することで、容積脈波を測定する。PPGセンサによって取得されるPPG信号を解析することで、様々な生体情報を得ることができる。以下、透過光を検出する方式を透過方式といい、反射光(散乱光を含む)を検出する方式を反射拡散方式という場合がある。
【0023】
好適な一例として、発光素子15は、複数の生体情報(例えば、バイタルサイン)を検知するために、複数の光源を備えることができる。発光素子15が複数の光源を含む場合、各光源は、異なる生体情報を得る目的で併用することができる。なお、発光素子15は、チップの形態であってもよいし、1または複数のチップ15aや他の素子が基板15bに搭載されたパッケージの形態であってもよい(図4参照)。
【0024】
具体的には、例えば、発光素子15は、中心波長500nm以上600nm以下の光を発生させる緑色LEDを含むことができる。緑色光は、血液中のヘモグロビンによる吸収率が高く、太陽光などによる外乱光の影響が少ないことから、相対的に安定した容積脈波を測定することができる。この緑色光による容積脈波の脈動に基づいて、例えば、信頼性の高い心拍数および心拍変動情報を得ることができる。
【0025】
また、酸化ヘモグロビン、脱酸化ヘモグロビン(deoxyhemoglobin、還元ヘモグロビンともいう)、および糖化ヘモグロビンは、赤色光ないしは近赤外光の波長に対する吸光係数(典型的には、吸光スペクトル)がそれぞれ異なり得る。そこで好適な一例として、例えば、発光素子15は、中心波長が630nm以上690nm以下の赤色LEDと、中心波長が810nm以上990nm以下の赤外LEDと、の組合せを含むことができる。酸化ヘモグロビンと脱酸化ヘモグロビンのこれら二つの光に対する吸光係数の差に基づいて、SpO(Peripheral Blood Oxygen Saturation:経皮的動脈血酸素飽和度)や血中酸素濃度心拍数を得ることができる。
【0026】
また好適な一例として、発光素子15は、例えば、中心波長が600nm以上990nm以下の異なる3つ以上(例えば3つ、または4つ)の光を発生させるLEDの組合せを含むことができる。酸化ヘモグロビン、脱酸化ヘモグロビン、および糖化ヘモグロビンの吸光係数の差に基づいて、血中ヘモグロビン濃度、血中糖化ヘモグロビン濃度等を算出することができる。
【0027】
さらに、発光素子15は、上記とは異なる波長の光を発生させるLEDを含むことができる。脈波の形状には血行動態の情報が畳み込まれているため、容積脈波の形状を分析することにより、血圧を推定することができる。また、容積脈波の形状を分析することにより、血液の粘度を推定し、血液の粘度から血糖値を検出することができる。なお、血糖値の測定に関しては、分光法(例えば、近赤外分光法、ラマン分光法、赤外分光法など)を採用してもよい。例えば、発光素子15は、中心波長が1200nm以上1600nm以下程度の異なる2つ以上(例えば2つ、または3つ)の近赤外光を発生させるLEDの組合せを含むことができる。これによりグルコースに由来する光吸収スペクトルに基づいて血糖値を算出することができる。
【0028】
ここで、受光素子17によって取得されるPPG信号は、発光素子15および受光素子17自体の性能だけではなく、外乱光の影響を受けやすいという課題がある。また、反射拡散方式は透過方式に比べて外乱(例えば、外圧)による影響が大きい。すなわち、反射拡散方式では、生体の表皮近くの細い動脈を用いて容積脈波を測定する。例えば、反射拡散方式では、皮膚の真皮乳頭層に存在する17~26μm程度の直径の終末細動脈や、真皮と皮下組織の接合部に存在する150~242μm程度の直径の細動脈について、血中ヘモグロビンの吸光度を検出する。これらの末端の細動脈は、容積変化が小さいうえに、外圧によって比較的容易に血流速度やせん断速度が低下し、容積脈波形状も変化し易い。一方の透過方式では、皮下組織深部にある直径1mm前後の比較的太い細動脈の血中ヘモグロビンの吸光度を測定することができるため、容積変化が相対的に大きく、外圧の影響も受け難い。以上のことから、光電容積脈波法を用いてより正確な容積脈波を測定するためには、透過方式を採用することが望ましいといえるが、透過方式では指先や耳垂などの比較的透過性の高い部位でしか測定できないという制約が生じる。
【0029】
図13は、一実施形態に係るウェアラブル電子デバイス1を装着しているヒトの指(すなわち、指の根本の基節骨部分)の断面模式図である。
上記制約を考慮すると、容積脈波は、皮下脂肪503の深部に存在するより太い細動脈506を対象として、反射法を利用して測定することができればより望ましい。そこで、本技術では、反射拡散方式と透過方式を部分的に採り入れ、表皮501の直下の真皮502またはその近傍に存在する終末細動脈の容積脈波のみならず、真皮502を透過し、反射または多重散乱された光を受光素子17によって検知することで、細動脈506の容積脈波を検出するようにしている。
【0030】
指根本の基節骨504の掌側には、基節骨504に沿って屈筋腱505が存在し、屈筋腱505を挟むように2本の細動脈506および神経507が並走している。本発明者らの検討によると、ウェアラブル電子デバイス1を装着した指組織において、一つの光源から2本の細動脈506により多くの光を照射させるには、表皮501、真皮502、皮下脂肪503における各要素の吸光度、散乱係数、屈折率を考慮した光学シミュレーションに基づき、発光素子15を手掌に配置し、発光素子15から発する光の指向角が凡そ60°以下であることが望ましいことが明らかとなった。
【0031】
そこで、リング本体10の外形が環の全周にわたって均一ではない場合、発光素子15は、手掌に配される部分に設けられることが望ましい。例えば、発光素子15は、環軸に対してリング本体10の厚みが厚い部分と反対側に配置されるとよい。
【0032】
そしてウェアラブル電子デバイス1は、リング本体10の内部であって、発光素子15に対して環の中心側に、第1の光学素子16を備えることができる。第1の光学素子16は、発光素子15が出射する光の進行方向を、指向角を狭める向きに変化させる要素である。発光素子15の指向角を狭めることで、所望の方向に照射される光の光度を高めることができ、より少ない出力で所望の光度を実現することができる。第1の光学素子16は、発光素子15が出射する光の指向角が凡そ60°以下となるように設計されていることが好ましい。
【0033】
なお、本明細書において「指向角」とは、光源からの光の広がりを表す指標であり、最も明るい光軸上の照度(光束、光強度であり得る)を基準とし、光軸から角度θだけ傾けたときの照度を全周について規格化し、1/2の照度となる角度θを2倍した値をいう。指向角は、例えば、発光素子を中心として受光素子を相対的に回動させながら照度を測定することで算出することができる。
【0034】
図5は、一実施形態に係る第1の光学素子16の斜視図であり、図6は、そのVI-VI断面図である。第1の光学素子16を備えることによって、発光素子15が発する光をより高い光強度で効率よく細動脈506に照射させることができる。これにより、容積脈波の検出精度を高めることができる。
【0035】
また、ウェアラブル電子デバイス1は、リング本体10の内部であって、受光素子17に対して環の中心側に、第2の光学素子18を備えることができる。第2の光学素子18は、光の進行方向を受光素子17に向けて変化させる要素である。図9は、一実施形態に係る第2の光学素子18の斜視図であり、図10は、そのX-X断面図である。第2の光学素子18を備えることによって、生体組織内を透過および反射・散乱して受光素子17の近傍に到達した光を、より多く(すなわちより高い光強度で)受光素子17に照射させることができる。これにより、容積脈波の検出精度を高めることができる。
【0036】
以下、第1の光学素子16と第2の光学素子18を区別する必要のない場合には、「光学素子16,18」のように総称する場合がある。
光学素子16,18は、発光素子15または受光素子17から内周側表面に向かうにつれて、発光素子15または受光素子17と環の中心とを結ぶ半径線から離れる反射面16a,18aを有していることが好ましい。第1の光学素子16がこのような反射面16aを備えることで、発光素子15が出射する光の指向角を効果的に狭めることができる。また、第2の光学素子18がこのような反射面18aを備えることで、反射面18aに照射した光を効果的に受光素子17へと導くことができる。反射面16a,18aは、例えば、半径線周りで発光素子15または受光素子17の少なくとも一部、好ましくは全周を取り囲むように設けられているとよい。
【0037】
好適な一態様において、光学素子16,18は、素子本体16b,18bと、素子本体16b,18b上に備えられた反射膜16c,18cと、を備えている。そして反射面16a,18aは、この反射膜16c,18cによって構成されている。反射膜16c,18cは、例えば、各種金属からなる金属膜であってもよいし、例えば、高屈折率層と低屈折率層を交互に積層して各境界面からの反射光が干渉によって強め合うように膜厚を設定した誘電体多層膜であってもよいし、これらを組み合わせたものであってもよい。このような反射膜16c,18cは、例えば、スパッタリング、真空蒸着、イオンプレーティング等の物理蒸着法(Physical Vapor Deposition:PVD)や、熱CVD、光CVD、プラズマCVD、エピタキシャル成長法、原子層堆積、有機金属気相成長法等の化学蒸着法(chemical vapor deposition:CVD)、湿式めっき法等によって成膜することができる。この場合、素子本体16b,18bの構成材料については、反射膜16c,18cの成膜が可能な範囲において特に制限されない。
【0038】
なお好適な一態様において、光学素子16,18は、素子本体16b,18bを支持し、反射に寄与しない基部16d,18dを備えていてもよい。これにより、反射面16a,18aを安定して発光素子15および受光素子17よりも環の中心側に配置させることができる。またこの基部16d,18dは、例えば、反射面16a,18aに連続し、半径線方向に沿って貫通する貫通孔16e,18eを備えることができる。そしてこの貫通孔16e,18eに、発光素子15または受光素子17を収容することができる。これにより、発光素子15および受光素子17を反射面16a,18aよりも環の中心側に安定して配置させることができる。また、発光素子15または受光素子17に対して反射面16a,18aを安定して位置決めすることができる。発光素子15または受光素子17が基板を含む場合、光学素子16,18はこの基板に搭載されていてもよい。
【0039】
反射面16a,18aは、全体が滑らかな面であってもよいし、一部に特定のレンズ作用またはプリズム作用を発揮する光学面を有していてもよい。反射面16a,18aは、例えば、平面、任意の曲面、双曲面、楕円面、放物面等のいずれかであってよく、例えばこれらの2以上の面の組合せであってもよい。また、発光素子15は、発生させる光の光軸が半径線と一致するように、換言すると光軸が環の中心を通るように配置されることが好ましい。受光素子17は、半径線に対して光の受光面が垂直となるように配置されることが好ましい。なお、環の中心は、突部12aを除くリング本体10の内周側表面から導き出される内周側輪郭の重心とすることができる。
【0040】
光学素子16,18の反射面16a,18aは、例えば図6および図10に示すように、上記半径線を通る少なくとも一つの断面における輪郭が放物線となるような、放物面を構成していることが好ましい。このような構成によって、反射面16a,18aに入射する光を所定の方向に導くことができる。
【0041】
好適な一例では、光学素子16,18は略直方体の素子本体16b,18bおよび基部16d,18dを備え、長辺が環軸(Y軸)方向に沿う姿勢でリング本体10に配置される。基部16d,18dは、チップないしはパッケージ形状の発光素子15または受光素子17を収容する貫通孔16e,18eを備えている。貫通孔16e,18eは、環の中心側にある素子本体16b,18bにおいてカップ状の凹部に連続し、この凹部の内壁が反射面16a,18aとなっている。このような発光素子15または受光素子17の半径線方向に直交する断面は、矩形の額縁形状であり、環の中心側に近づくにつれて縁が細くなり、対向する反射面16a,18aの間の距離が拡大されている。反射面16a,18aは、X-Z断面およびY-Z断面のそれぞれについては、同一の放物線形状をなしている。
【0042】
このような構成によると、光学素子16,18の環軸方向の寸法を、リング本体10の環軸方向の寸法(幅)および曲率に応じてより大きく設計することができ、その結果、光学素子16,18の環中心側の端部において、反射面16a,18aで囲まれる領域の面積を拡大することができる。これにより、発光素子15からの光の指向角を狭めながら、光学素子16からの光の出射面積をリング幅に応じて拡大することができる。また、光学素子18および受光素子17による受光面積を拡大することができる。その結果、細動脈506についての容積脈波の測定精度を高めることができる。
【0043】
なお、光学素子16,18は、光の進行方向に対して光学作用を及ぼす反射面16a,18a以外の部分の形状については特に制限されない。例えば、光学素子16,18の側面には、凹部16f,18fが設けられていてもよい。凹部16f,18fは、略直方体形状の光学素子16,18の4つの側面の全てに設けられていてもよいし、例えば図7に示すように、4つの側面の一部(例えば、互いに平行な2つの側面)に設けられていてもよいし、例えば図11に示すように、設けられていなくてもよい。光学素子16,18の角部は、面取りがなされていてもよいし、例えば図7および図11に示すように、面取りがなされていなくてもよい。
【0044】
また、光学素子16,18の反射面16a,18aは、半径線を軸とした回転放物面をなしていてもよい。例えば図8は、他の実施形態に係る第1の光学素子116の斜視図である。第1の光学素子116は、反射面116aが半径線を軸とした回転放物面(すなわち、同軸放物面)を構成しており、半径線を通るすべての断面において反射面116aは放物線をなしている。この第1の光学素子116の半径線方向に直交する断面は、円形の額縁形状であり、環の中心側に近づくにつれて縁が細くなり、対向する反射面116aの間の距離が拡大される。このような第1の光学素子116の外形は特に制限されず、例えば略円柱状であってよい。このような構成によると、発光素子15からの光の強度ムラの発生を抑えることができる。なお、反射面16a,18aは、発光素子15の光軸の向きによっては、回転放物面の一部(非軸放物面)のみを有していてもよい。
【0045】
このような光学素子16,18における反射面16a,18aは、反射率が十分に高いことが望ましい。反射面16a,18aの反射率は、例えば、70%以上であることが好ましく、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上であることがより好ましい。光学素子16,18は、全体を反射率の高い材料によって構成してもよいし、上述のとおり、少なくとも反射面16a,18aを反射率の高い材料によって構成してもよい。反射率の高い材料としては、金、銀、銅、アルミニウムなどの各種金属が挙げられる。また、封止樹脂部12を構成する材料に対して屈折率の高い高屈折率材料によって構成してもよい。高屈折率材料としては、封止樹脂部12の構成材料との関係にもよるが、典型的には屈折率が1.4以上、好ましくは1.5以上、1.6以上、例えば1.7以上の、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の光学樹脂または高屈折率ガラスなどが挙げられる。あるいは、例えば、HfO/SiO等のような高屈折率/低屈折率の誘電体の組合せであってもよい。
【0046】
リング本体10が以上のような光学素子16,18をその内部に備えることで、封止樹脂部12には、光学素子16,18に対応する位置に突部12aを備えることができる。突部12aは、第1の光学素子16が配置された部分に設けることができ、第1の光学素子16が配置されていない部分よりも中心側に突出している。また、突部12aは、第2の光学素子18が配置された部分に設けることができ、第2の光学素子18が配置されていない部分よりも中心側に突出している。
【0047】
このような構成によると、ウェアラブル電子デバイス1を生体に装着したときに、突部12aが生体の表皮501に密着して表皮501および生体組織を環中心側に押し込む。これにより、相対的に光透過性の低い生体内光路を短縮し、相対的に光透過性の高い封止樹脂部12の光路L2を長大化することができ、容積脈波の測定精度を高めることができる。
【0048】
好適な一態様において、光学素子16,18は、環の中心側の端部が、リング本体10の内周側表面よりも、環の中心側に位置している。このような構成によると、突部12aが生体の表皮501を環中心側に押し込んだときに、光学素子16,18の環の中心側の端部も、突部12aによって押し込まれていない表皮501よりも環中心側に配置される。したがって、第1の光学素子16によって進行方向が調整された出射光が生体の外部に漏れることを抑制することができ、より多くの光を生体の深部にまで伝播させることができる。また、生体内を第2の光学素子18およびその周縁に向けて伝播してきた光が生体の外部に漏れることを抑制できる。さらに、発光素子15が出射した光ではない生体外部からの外部光が、第2の光学素子18に到達することを効果的に抑制することができる。その結果、容積脈波の測定精度をより一層高めることができる。
【0049】
なお、図4に示される、光学素子16,18を覆う封止樹脂部12の半径線に沿う寸法(厚み)L3は、耐久性を維持できる範囲で薄いことが、光学素子16,18の環の中心側の端部をより生体の内部に配置できる点において好ましい。光学素子16,18を覆う封止樹脂部12の厚みL3は、1mm以下であることが好ましく、例えば0.5mm以下であることがより好ましい。好適な一例として、当該厚みL3が、0.2~0.4mm程度、例えば、0.2~0.3mm程度であることが挙げられる。なお、封止樹脂部12の厚みL3は、光学素子16,18の環中心側の端部と、封止樹脂部12の環中心側の端部と、の間の寸法であり、光学素子16,18の反射面16a,18aで囲まれる部分に配される封止樹脂部12については対象としない。
【0050】
また、図4に示す突部12aの半径線に沿う寸法(突出高さ)L1は、出射光の漏れと外交の侵入を抑制できる程度の高さがあることが好ましい。ただし、光の指向角を狭めることが求められる第1の光学素子16は半径線に沿う寸法(高さ)が高い方が有利であることから、第1の光学素子16が配置された部分に設けられる突部12aの突出高さL1についても高いほうが好ましい。しかしながら、突出高さL1は、ウェアラブル電子デバイス1を装着する際の不快感や、装着時の押し込みによる違和感を感じない範囲に抑えることが求められる。
【0051】
このような観点から、突出高さL1は、大まかにはリング本体10の内径の3%以上であることが好ましく、例えば、4%以上、5%以上、6%以上などとすることができる。また、第1の光学素子16が配置された部分に設けられる突部12aについての突出高さL1は、大まかにはリング本体10の内径の10%以下であることが好ましく、例えば、9%以下、8%以下とすることができる。好適な一例として、第1の光学素子16の部分の突部12aの突出高さL1は、リング本体10の内径の5%以上10%以下、典型的には、1mm~2mm、例えば、1.5mm±0.3mm程度とすることが挙げられる。
【0052】
また、第2の光学素子18については指向角の制御を求められないことから、第2の光学素子18の半径線に沿う高さ寸法は、第1の光学素子16の高さ寸法よりも小さくするできる。したがって、第2の光学素子18が配置された部分に設けられる突部12aについての突出高さL1は、第1の光学素子16の部分の突部12aの突出高さよりも低くすることが好ましい。これにより、ウェアラブル電子デバイス1の装着時の違和感を低減することができる。第2の光学素子18の部分の突部12aの突出高さL1は、大まかにはリング本体10の内径の3%以上7%以下、典型的には、0.5mm~1.5mm、例えば、1mm±0.3mm程度とすることが挙げられる。
【0053】
なお、第2の光学素子18の部分の突部12aの突出高さL1を低くした場合は、例えば図3等に示すように、突部12aと、突部12aでない部分とが、比較的緩やかな傾斜(典型的には曲面)で連続されていてもよいし、例えば図12に示すように、突部12aと、突部12aでない部分とが、比較的急な傾斜(典型的には曲面)で連続されていてもよい。ここで比較的緩やかな傾斜とは、例えば、大まかには、曲率半径が環の内径の1/50以上、好ましくは1/40以上や、1/20以上、の面から構成される傾斜のことである。このような緩やかな傾斜で第2の光学素子18の部分の突部12aの頂面部とリング本体10の内周側表面とを繋ぐことで、第2の光学素子18の部分の突部12aは、一見すると突出が無いようにも見て取れる。このように第2の光学素子18の部分の突部12aについて比較的緩やかな傾斜を設けることで、ウェアラブル電子デバイス1の装着時の違和感をより一層低減することができ、装着性をさらに改善することができる。このような突部12aの傾斜は、例えば、指の全周に対して突部12a(延いては第1の光学素子16および第2の光学素子18)の所望の押し込み効果が発揮できるように設計することができる。
【0054】
なお、突部12aを半球状に突出させるなどして、光学素子16,18を覆う封止樹脂部12の厚みを厚くする形態も考えられる。例えば突部12aを高屈折率の透明樹脂によって構成することで、凸レンズによる集光効果が得られるようにも思われる。しかしながら、皮膚等の生体組織の屈折率は1.35~1.4程度と比較的高く、一般的な光学樹脂との屈折率差が生じ難い。そのため、ウェアラブル電子デバイス1を生体に装着した状態では、半球状の突部12aによる凸レンズ効果が発揮され難い。したがって、本技術においては、第1の光学素子16の高さを高くしたうえで、突部12aの頂部については光学素子16,18に沿う平坦面とすることが好ましい態様となり得る。
【0055】
発光素子15に対して備えられる第1の光学素子16は、上記の通り、発光素子15が出射する光の指向角を狭める作用を有し、指向角を凡そ60°以下に低減することが望まれる。集光設計のなされていないLEDチップの指向角は、凡そ120°~140°程度である。このことから、第1の光学素子16は、発光素子15が出射する光の指向性を高められる構成であることが望ましい。例えば、第1の光学素子16の半径線に沿う寸法(高さ寸法)、換言すると、反射面16aの高さ寸法を高くするほど、指向角を低減しやすい。
【0056】
指向角の上限は、100°以下であることが好ましく、80°以下であることがより好ましく、60°以下や、50°以下、40°以下であることがより好ましい。しかしながら、突部12aの突出高さには上記の通りの制約がある。また、指向角が狭すぎると、例えば指組織内の2本の細動脈506に出射光を照射することが困難となり得る。したがって、指向角の下限は15°以上であってよく、例えば20°以上や、25°以上、30°以上であってよい。このような指向角制御を満足する反射面16a,18aのより具体的な表面形状は、例えば、汎用の光学系設計・解析ソフトウェア等を用いて設計することができる。
【0057】
なお、例えば発光素子15の光軸が環の中心に向いていない場合は、光学素子16,18は、ミラー,レンズ,フィルター,プリズム等を含むことができ、発光素子15が発生する光の向きを環の中心に向けて偏光させることができる。
【0058】
図20は、ウェアラブル電子デバイス1のハードウェア構成の例である。図中の制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。図19、21、22についても同様である。
【0059】
電子部品13は、例えば、プロセッサ401、アナログフロントエンド402、ジャイロセンサ・アクセラレータモジュール403、電源管理ユニット404、通信制御部405、二次電池415、およびワイヤレス充電レシーバ416等を備えることができる。これらの要素は、例えば、電子部品13用の筐体内に収容されていたり、電子部品13用の基板上に搭載されていてもよい。
【0060】
プロセッサ401は、アナログフロントエンド402、ジャイロセンサ・アクセラレータモジュール403、電源管理ユニット404、通信制御部405の動作を制御するデジタル信号処理デバイスである。また、プロセッサ401は、アナログフロントエンド402およびジャイロセンサ・アクセラレータモジュール403から取得した各種の情報を、通信制御部405を介して、後述の管理サーバ101やユーザ端末102等に送信する。
【0061】
アナログフロントエンド402は、ウェアラブル電子デバイス1に備えられる各種のセンサ411~414のアナログ検出信号をプロセッサ401に送るアナログデジタル変換回路である。センサとしては、例えば、多波長PPGセンサ411、温度センサ412、マイクロ波センサ413、心電図センサ414等が挙げられる。アナログフロントエンド402は、発光素子15の照射時と非照射時との間の信号の差分をバックグラウンドとして除去する処理を行うプロセッサを備えるものであってもよい。
【0062】
多波長PPGセンサ411は、例えば、本技術に係る発光素子15および受光素子17により構成される。この多波長PPGセンサ411によって、上述の通りのPPG信号を検知することができる。
【0063】
温度センサ412は、例えば生体の皮膚温度または深部体温に関する情報を検知することができる。温度センサ412としては、これに限定されるものではないが、例えばサーモパイル型の赤外線センサを用いることができる。
【0064】
マイクロ波センサ413は、例えば、生体にマイクロ波を放射することで共振周波数周辺の周波数特性を検知することができる。この周波数特性を解析することで、皮膚の水分量や発汗量、血糖値等に関する情報を得ることができる。
【0065】
心電図センサ414は、心臓の動きに伴う電気的な活動を検知することができる。心電図センサ414は、各種の誘導法における一つの測定電極として利用することができる。したがって、例えば、心電図センサ414は、他のウェアラブル電子デバイス1に備えられた他の心電図センサ414との協働によって心電図情報を得るように構成されていてもよい。一例として、左右両方の指に装着した2つのリング型のウェアラブル電子デバイス1によって双極誘導法により心電図情報を得ることができる。あるいは、一方の手の指に装着した指輪型のウェアラブル電子デバイス1と、他方の手の手首に装着した腕時計型のウェアラブル電子デバイス1の組合せによって心電図情報を得るようにしてもよい。
【0066】
これらのセンサ411~414は、例えば、各種の生体情報を検知するための信号検出デバイス(センサ)である。他の電子素子19は、温度センサ412、マイクロ波センサ413、心電図センサ414等であってよい。
【0067】
ジャイロセンサ・アクセラレータモジュール403は、ジャイロセンサおよび加速度センサを備えている。ジャイロセンサ・アクセラレータモジュール403は、ウェアラブル電子デバイス1の角速度および加速度を検知することができ、ウェアラブル電子デバイス1を装着している生体の姿勢や活動度、消費カロリー、歩数、行動判別に関する情報を得ることができる。
【0068】
電源管理ユニット404は、ワイヤレス充電レシーバ416と外部装置であるワイヤレス充電トランスミッタ417とからなる無線充電システムによる二次電池415への充電を制御する。無線充電システムとしては、例えば、近距離無線通信(Near Field Communication:NFC)規格に対応したものであると、小型化およびコスト削減が図れるために好ましい。二次電池415としては特に制限されないが、エネルギー密度が高く、液漏れの懸念の少ないリチウムポリマー電池を採用すると好ましい。
【0069】
通信制御部405は、ネットワークを介して他の端末と接続可能に構成されている。なお、ネットワークは、有線、無線を問わず、それぞれの端末はネットワークを介して互いに情報を送受信することができる。
【0070】
配線板14は、発光素子15、受光素子17、および他の電子素子19と、電子部品13とを電気的に接続する要素である。ウェアラブル電子デバイス1には、1つまたは複数の配線板14が備えられていてもよい。配線板14は、例えば、フレキシブル基板に配線がプリントされた、フレキシブルプリント配線板(Flexible printed circuits:FPC)であってよい。配線板14は、例えば、任意の電子素子が搭載されていてもよい。
【0071】
以上のウェアラブル電子デバイス1は、これに限定されるものではないが、例えば、図17および図18に示すような治具600を利用した樹脂注型により好適に製造することができる。治具600は、アッパーモールド601、シリコーンコアモールド602、およびロアモールド603により構成される。ウェアラブル電子デバイス1の製造では、あらかじめ用意した外装部11の凹部11aに、配線板14によって接続された発光素子15、受光素子17、他の電子素子19、および電子部品13、ならびに光学素子16,18を組み付けておくとよい。光学素子16,18は予め発光素子15および受光素子17と一体化しておくとよい。また、発光素子15、受光素子17、他の電子素子19、電子部品13、および配線板14は、両面テープや接着剤、固定構造等の固定手段によって外装部11の凹部11aに位置決めして固定するとよい。また、発光素子15、受光素子17、他の電子素子19、および配線板14の基板部分は、外装部11の凹部11aに収容し、外装部11から突出しないように配置するとよい。このようにすると、後の樹脂注型工程において、各構成要素が位置ズレすることを抑制することができる。
【0072】
このように構成要素が配置された外装部11に、シリコーンコアモールド602を装着する。シリコーンコアモールド602は、封止樹脂部12の内周側表面を成形するための型である。これにより、外装部11とシリコーンコアモールド602との間に、キャビティが形成される。
【0073】
次いで、装着状態の外装部11およびシリコーンコアモールド602を、アッパーモールド601およびロアモールド603によって固定する(図17参照)。シリコーンコアモールド602には、例えば上面に樹脂を注入するための注入孔が設けられており、アッパーモールド601には、この注入孔に連続する流路(スプール)が設けられている。
【0074】
そして、射出成形機(図示せず)からアッパーモールド601を介して、流動状態にある封止樹脂部12用の樹脂材料をキャビティに注入する。例えば、ベースポリマーとしてビスフェノールA型エポキシ樹脂を含む液状樹脂を重合開始剤と共に常温(例えば25℃)で注入し、その後60℃程度の温度に加熱することで、樹脂を硬化させる。これにより、外装部11に対して所定の形状に封止樹脂部12を一体的に形成することができる。
【0075】
封止樹脂部12の硬化後は、アッパーモールド601およびロアモールド603を開放し、シリコーンコアモールド602を変形させて離型する。これにより、ウェアラブル電子デバイス1を得ることができる。なお、ウェアラブル電子デバイス1の製造方法はこの例に限定されない。ウェアラブル電子デバイス1は、必要に応じて、装飾のためのコーティングが施されていてもよい。
【0076】
[健康管理システムおよび健康管理方法]
図19は、一実施形態に係る健康管理システム100の構成例である。本技術に係る健康管理システム100および健康管理方法は、ウェアラブル電子デバイス1を用いて生体情報を監視し、健康を管理するシステムおよび方法である。健康管理システム100は、1又は複数のウェアラブル電子デバイス1と、1又は複数の管理サーバ101と、1又は複数のユーザ端末102と、を備えている。健康管理システム100は、付加的にワイヤレス充電トランスミッタ417を備えている。
【0077】
これらの管理サーバ101およびユーザ端末102は、例えばネットワークを介して互いに情報を送受信することができるように構成されている。また、ウェアラブル電子デバイス1およびユーザ端末102は、例えば、Bluetooth(登録商標)等の無線通信によって接続できるように構成されている。しかしながら、これらのウェアラブル電子デバイス1、管理サーバ101、ユーザ端末102、およびワイヤレス充電トランスミッタ417は、例えばネットワークを介して互いに情報を送受信することができるように構成されていてもよい。また、管理サーバ101、ユーザ端末102、およびワイヤレス充電トランスミッタ417は、いずれか2つ以上が一体的に構成されていてもよいし、これらのいずれかが2以上のユニットに分かれて構成されていてもよい。
【0078】
健康管理システム100の各端末(例えば、管理サーバ101およびユーザ端末102)は、例えば、スマートフォン、タブレット、携帯電話機、携帯情報端末(PDA)などの携帯端末(モバイル端末)でもよいし、据置型または携帯型のコンピュータや、クラウドやネットワーク上に配置されるサーバでもよい。また、機能としては、VR(仮想現実:Virtual Reality)端末、AR(拡張現実:Augmented Reality)端末、MR(複合現実:Mixed Reality)端末でもよい。あるいは、これらの複数の端末の組合せであってもよい。例えば、1台のスマートフォンと1台のウェアラブル端末との組合せが論理的に一つの端末として機能してもよい。またこれら以外の情報処理端末であってもよい。
【0079】
健康管理システム100の各端末は、それぞれオペレーティングシステムやアプリケーション、プログラムなどを実行するプロセッサと、RAM(Random Access Memory)等の主記憶装置と、ICカードやハードディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の補助記憶装置と、ネットワークカードや無線通信モジュール、モバイル通信モジュール等の通信制御部と、タッチパネルやキーボード、マウス、音声入力装置、カメラ部の撮像による動き検知による入力装置などの入力装置と、モニタやディスプレイ、スピーカ、発振器等の出力装置と、を備える。なお、出力装置は、外部のモニタやディスプレイ、プリンタ、機器などに、出力するための情報を送信する装置や端子であってもよい。
【0080】
主記憶装置には、各種プログラムやアプリケーションなど(ソフトウェア・モジュール)が記憶されており、これらのプログラムやアプリケーションをプロセッサが実行することで全体システムの各機能要素が実現される。なお、各モジュールはそれぞれ独立したプログラムやアプリケーションであってもよいし、1つの統合プログラムやアプリケーションの中の一部のサブプログラムや関数などの形で実装されていてもよい。また、これらの各モジュールは、回路を集積化したりマクロコンピュータを採用することなどにより、ハードウェアとして実装してもよい(ハードウェア・モジュール)。さらに、これらの各モジュールは、単一の端末に備えられていてもよいし、ネットワークを介して相互に接続された2以上の端末に分けて備えられていてもよい。
【0081】
本明細書では、各モジュールが、処理を行う主体(主語)として記載されているが、実際には各種プログラムやアプリケーションなど(モジュール)を処理するプロセッサが処理を実行する。
【0082】
補助記憶装置には、各種データベース(DB)が記憶されている。「データベース」とは、プロセッサまたは外部のコンピュータからの任意のデータ操作(例えば、抽出、追加、削除、上書きなど)に対応できるように整理して収集されたデータ集合である。補助記憶装置は、1又は複数のデータ集合を記憶する機能要素(記憶部)である。データベースの実装方法は限定されず、例えばデータベース管理システムでもよいし、表計算ソフトウェアでもよいし、XML、JSONなどのテキストファイルでもよい。
【0083】
図21は、管理サーバ101のハードウェア構成の例である。
管理サーバ101は、本実施形態の健康管理システム100を管理する要素である。管理サーバ101は、例えばクラウド上に配置されたサーバによって構成される。管理サーバ101は、主記憶装置201と、補助記憶装置202と、を備える。管理サーバ101はまた、上述のとおりのプロセッサ203と、入力装置204と、出力装置205(出力手段の一例)と、通信制御部206と、を備える。
【0084】
主記憶装置201には、ユーザ端末管理モジュール211、健康管理モジュール212等のプログラムやアプリケーションが記憶されている。管理サーバ101の各機能要素は、主記憶装置201に記憶されたこれらのプログラムやアプリケーションをプロセッサ203が実行することによって実現される。
【0085】
補助記憶装置202には、健康管理システム100の動作に必要な情報が記憶される。補助記憶装置202には、例えば、ユーザ情報210、健康管理情報220等が記憶されている。
【0086】
ユーザ端末管理モジュール211は、ユーザ端末102の動作を管理する。ユーザ端末管理モジュール211は、例えば、ユーザ端末102のユーザ実行モジュール311と連携して、ユーザ端末102において実行される健康管理アプリケーションにおける基本的な動作を制御する。例えば、ユーザ端末管理モジュール211は、健康管理アプリケーションを利用するユーザの登録情報を取得し、補助記憶装置202のユーザ情報210に出力(記憶)して管理する。
【0087】
健康管理モジュール212は、ユーザの健康に関する情報を管理する。具体的には、健康管理モジュール212は、例えば、ユーザ端末102のユーザ健康管理モジュール312と連携して、ユーザ端末102から、ウェアラブル電子デバイス1によって取得された生体情報を取得する。また健康管理モジュール212は、取得した生体情報に基づいて、容積脈波法により解析し、心拍数、血中酸素飽和度、血圧、および血糖値の少なくとも1つの健康管理情報を算出する。健康管理モジュール212は、取得した生体情報に基づいて、ユーザの姿勢や活動度、消費カロリー、歩数、行動判別、体温(皮膚温度や深部温度)、皮膚の水分量や発汗量、血糖値、心電図、その他の健康管理情報を算出するように構成されていてもよい。健康管理情報は、血管健康指数や、活動状態、ストレスレベル、憂鬱レベル、生活習慣病リスク等の、必要に応じて定義される疾病予防のための管理指標を含んでいてもよい。健康管理モジュール212は、算出した健康管理情報を、例えば補助記憶装置202の健康管理情報220に出力(記憶)して管理する。
【0088】
また、健康管理モジュール212は、例えば、ユーザ端末102のユーザ健康管理モジュール312と連携して、算出した健康管理情報をユーザ端末102のディスプレイ(出力装置305の一例)に出力(表示)する。
【0089】
なお、健康管理モジュール212は、算出した健康管理情報に所定の特徴がみられた場合に、当該所見を報知する構成を備えていてもよい。報知手法は特に制限されず、例えばユーザ端末102のディスプレイへの表示であってもよいし、所定の報告先への電子メールやメッセージの送信などであってもよい。
【0090】
図22は、ユーザ端末102のハードウェア構成の例である。
ユーザ端末102は、本健康管理システムを利用するユーザが操作する端末であり、例えばスマートフォン、タブレット、ノートPC、デスクトップPC等の端末で構成される。ユーザ端末102は、主記憶装置301と、補助記憶装置302と、を備える。ユーザ端末102はまた、上述のとおりのプロセッサ303と、入力装置304と、出力装置305と、カメラ306と、通信制御部307と、を備える。
【0091】
主記憶装置301には、ユーザ実行モジュール311、ユーザ健康管理モジュール312等のプログラムやアプリケーションが記憶されており、これらのプログラムやアプリケーションをプロセッサ303が実行することで、ユーザ端末102の各機能要素が実現される。
【0092】
補助記憶装置302には、健康管理システム100の動作に必要な情報が記憶される。補助記憶装置302には、例えば、ユーザ情報310、健康管理情報320等が記憶されている。ユーザ情報310および健康管理情報320は、ユーザ情報210および健康管理情報220と一部または全部が同じであってもよい。
【0093】
ユーザ実行モジュール311は、ユーザ端末102の基本的な動作を制御する。ユーザ実行モジュール311は、例えば、ユーザからのユーザに関する情報の入力を受け付け、補助記憶装置302のユーザ情報310に出力(記録)する。また、ユーザ実行モジュール311は、例えば、管理サーバ101のユーザ端末管理モジュール211と連携して、健康管理システム100を用いて実行される、健康管理のための基本的な動作を制御する。ユーザ実行モジュール311は、例えば通信制御部206を介して、ユーザ情報を管理サーバ101に送信する。
【0094】
ユーザ健康管理モジュール312は、ウェアラブル電子デバイス1のプロセッサ401と連携して、ウェアラブル電子デバイス1の基本的な動作を制御する。ユーザ健康管理モジュール312は、例えば通信制御部206を介して、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信によってウェアラブル電子デバイス1と接続する。ユーザ健康管理モジュール312は、ウェアラブル電子デバイス1の各センサ411~414が取得した生体情報を取得し、例えば、補助記憶装置302の健康管理情報320に出力(記録)する。
【0095】
ユーザ健康管理モジュール312は、管理サーバ101のユーザ健康管理モジュール312と連携して、ウェアラブル電子デバイス1から取得した生体情報を管理サーバ101に送信する。また、ユーザ健康管理モジュール312は、管理サーバ101のユーザ健康管理モジュール312と連携して、管理サーバ101で算出したユーザの健康管理情報を取得し、ユーザ端末102に出力(表示)する。
【0096】
本技術に係る健康管理方法によると、例えば上記のウェアラブル電子デバイス1を利用することで、ユーザは、様々な健康管理情報を得ることができる。この健康管理方法では、まず、ユーザがウェアラブル電子デバイス1を装着して、生体情報を取得する。そしてウェアラブル電子デバイス1を生体に装着して取得した生体情報に基づいて、容積脈波法により、心拍数、血中酸素飽和度、血圧、および血糖値の少なくとも1つの健康管理情報を算出する。そして、算出された健康管理情報を、例えばスマートフォンやPC等の表示装置に出力する。
【0097】
本技術に係るウェアラブル電子デバイス1は生体深部の細動脈から容積脈波を検知できるように構成されていることから、高精度な健康管理情報を、非侵襲的に得ることができる。また、ウェアラブル電子デバイス1は、例えば小型で軽量の指輪型であることで、ユーザに身体的かつ行動上の負担を過度に与えることなく、生体情報を取得することができる。さらに、ウェアラブル電子デバイス1は、光学素子16,18を備えていることから、発光素子15の出力を密度を高めて、生体深部の細動脈から容積脈波を消費電力を抑えて効率的に得ることができるようになっている。そのため、ウェアラブル電子デバイス1は一度の充電で長時間の使用が可能となり、ユーザは、例えば1日24時間にわたる生体活動を、違和感や負担を覚えることなく取得し、健康管理に利用することができる。
【0098】
[実施例]
指輪型のウェアラブル電子デバイス1の構造について、指モデルを用いた光学シミュレーションに基づき、検討および評価した。光学シミュレーションには、米国Lambda Research Corporation社製の光学シミュレーションツール「Trace Pro」を用いた。
【0099】
光線光学シミュレーションに用いたウェアラブル電子デバイス1を装着した指モデルの断面図を図13に示した。モデルは、ウェアラブル電子デバイス1のリング本体10(外装部11および封止樹脂部12)、パッケージ状の発光素子15(LED)、第1の光学素子16、チップ状の受光素子17、第2の光学素子18、指の表皮501、真皮502、皮下脂肪503、基節骨504、屈筋腱505、細動脈506、および神経507から構成した。モデルにおいて、指組織は、ウェアラブル電子デバイス1の封止樹脂部12に圧迫されるため、封止樹脂部12に沿う形状に変形すると仮定した。モデルの各生体要素に関する光学係数等として、以下の値を採用した。
【0100】
【表1】
【0101】
ウェアラブル電子デバイス1は、1つの発光素子15を挟むように2つ受光素子17を備える構成とした。発光素子15に対する受光素子17位置は、環の中心と各素子とを結ぶ線分(半径線)のなす角度をθとし、θ=30~110°の範囲で10°ずつ変化させた。発光素子15としては、波長940nm、指向角120°、発光面積0.28mm×0.28mmのLEDを用い、発光強度は1mWに設定した。受光素子17の受光面は、1.5mm×1.5mmの平面とした。
【0102】
シミュレーションでは、光学素子16,18を備えないモデルと、第1の光学素子16および第2の光学素子18の少なくとも一つを備えるモデルと、について検討した。第1の光学素子16および第2の光学素子18はそれぞれ、図5,6および図9,10に示す形状を有し、樹脂製の素子本体16b,18bに、アルミニウム蒸着膜(反射率90%)からなる反射面16a,18aを有するものとした。第1の光学素子16は、上記の発光素子15の指向角を58°に抑える反射面16aを備えるものとした。図16に、第1の光学素子16がある場合と、なしの場合の、発光素子15からの光の放射強度分布を示した。
【0103】
なお、第1の光学素子16および第2の光学素子18の環中心側の端部は、封止樹脂部12の内周側表面よりも環中心側に突出させた。光学素子16,18を覆う封止樹脂部12の厚み(L2)は、0.46mmとした。第1の光学素子16に対応する突部12aの突出高さ(L1)は1.38mmとし、発光素子15の環中心側の表面から突部12aの表面までの寸法(L3)は1.48mmとした。なお、第1の光学素子16の環中心側の端部における開口(対向する反射面16a)のX方向の寸法(L5)は、2.39mmとした。
【0104】
以上の条件に基づき、発光素子15が近赤外波長の光をリング中心に向けて出射した場合に、指組織内を多重散乱して受光素子17に到達する光の強度を多重散乱系シミュレーションで解析した。光学シミュレーションの結果を図14および図15に示した。図14は、発光素子と受光素子の相対位置を表す角度θと、受光素子で受光する光の強度との関係のシミュレーション結果を示すグラフである。また図15は、発光素子と受光素子の相対位置を表す角度θと、灌流指標(AC/DC)と、の関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。グラフ中の凡例はモデル中の光学素子16,18の有無を示し、実線は、第1および第2の光学素子16,18がない場合を、点線は、PD側の第2の光学素子18のみがある場合を、一点鎖線は、LED側の第1の光学素子16のみがある場合を、破線は、LED側・PD側ともに光学素子16,18がある場合を、それぞれ示している。
【0105】
図16に示されるように、発光素子15に第1の光学素子16を設けることで指向性が高められ、強度の高い光を出射できることが確認できた。これにより、例えば第1の光学素子16を設けない場合と比較して、同一の消費電力でより高光度の光を細動脈506に照射することができる。このような構成は、生体組織の深部に存在する細動脈506を照射目標とする場合に特に好ましい構成であるといえる。またこのような構成は、小型でかつ軽量であることが求められるウェアラブル電子デバイス1において、後述の二次電池415のサイズを小型化したり、充電の頻度を低減できる点において、特に好ましい構成であり得る。
【0106】
受光素子17において検出される光強度(PPG信号)は、心臓の拍動に対応した容積変化に起因する拍動成分(AC成分)と、皮膚,皮下脂肪,骨,静脈等の拍動成分以外の組織からの反射光や散乱光からなる直流成分(DC成分)とを含む。AC成分とDC成分との間にはAC<<DCの関係が見られ、AC成分とDC成分の比(AC/DC)は、灌流指標(Perfusion Index:PI)として知られている。PPG信号に基づいてバイタルサインを測定するウェアラブル電子デバイス1では、一般に、この灌流指標AC/DCを大きくすることが目標となる。本シミュレーションにおいて、AC成分は、発光素子15から出射されたのち、皮下組織の深部の細動脈506を通過して、受光素子17に到達した光線の強度の合計として定義される。DC成分は、発光素子15から出射されたのち、受光素子17に到達した光線の強度の合計として定義される。
【0107】
図13に示されるように、角度θが大きくなり、発光素子15と受光素子17の距離が離れれば離れるほど、受光強度が指数関数的に減少することが確認できる。これは指の生体組織による光の吸収に起因する。また、図14に示されるように、角度θが90~100°程度までの範囲では、発光素子15と受光素子17の距離が離れれば離れるほど、AC/DCが増大することが確認できる。
【0108】
θが小さい領域では、検出できる光強度が高いため、より少ないLEDの出力で所定の検出光強度を得ることができ、小型化が望まれるウエラブルデバイスにおいては好適な形態であるといえる。このような生体組織の特徴に基づいて、反射方式のPPGセンサは、発光素子15と受光素子17とを同一の基板に搭載して単一のPPGセンサチップとすることが考えられる。しかしながら、θが小さい領域ではAC/DCが小さく、細動脈506が存在する指組織深部を経由して受光素子17に届く光線の割合が極めて少なくなることがわかる。また、θが小さい領域では、AC成分は真皮502近傍の細い細動脈に由来するため、容積脈波が外圧によって影響を受けやすい。したがって、指輪型のウェアラブル電子デバイス1においてθを小さくすることは、好ましいとはいえない。
【0109】
θが大きい領域では、AC/DCが大きく、細動脈506が存在する指組織深部を経由して受光素子17に届く光線の割合が多い。したがって、掌側固有細動脈506を対象とした容積脈波を測定する目的に適しているといえる。しかしながら、θが90°ないしは100°程度を超えると、PPG信号の安定性が欠けることがわかった。これは骨や腱などの生体組織による光の吸収に起因すると考えられる。このような生体組織の特徴に基づいて、透過方式のPPGセンサの場合、骨の無い指先や耳垂などで容積脈波を測定することが考えられる。しかしながら、透過方式によると検出される光強度自体が小さいため、θが大きすぎる領域では高い発光強度を得るためにLED出力をさらに高める必要があり、電力確保の観点から指輪型のウェアラブル電子デバイス1においては好ましいとはいえない。
【0110】
以上のことから、指輪型のウェアラブル電子デバイス1において、発光素子15と受光素子17の位置関係を示す角度θは、反射方式と透過方式の間の準透過型の形態であることが好ましいといえる。また、受光強度とAC/DCはトレードオフの関係にあることから、θを最適化することがこのましいといえる。
【0111】
受光強度について詳細に検討すると、凡そ55°以上の範囲で、光学素子16,18を備えないウェアラブル電子デバイス1よりも、光学素子16,18を少なくとも一つ備えるウェアラブル電子デバイス1の方が受光強度が高くなることが確認できた。AC/DCについては、すべてのθについて、光学素子16,18を備えないウェアラブル電子デバイス1よりも、光学素子16,18を少なくとも一つ備えるウェアラブル電子デバイス1の方が値が高くなることが確認できるが、θが凡そ55°以上の領域ではその傾向が顕著となり、AC/DCが0.05を有意に超えることが見積もられる。以上のことから、θの下限は55°以上であることが好ましく、60°以上、62°以上、64°以上、66°以上、68°以上であることがより好ましい。
【0112】
なお、第1の光学素子16を備えることで、θが60°以上の領域でAC/DCを有意に改善できることがわかる。しかしながら、第1の光学素子16を備えた場合、θが90度を超える範囲でAC/DCが低下する傾向にあることが確認できた。また、第1の光学素子16を備えない場合であっても、θが90°を超える範囲ではAC/DCが低下する(安定しない)傾向にある。したがって、θの上限は、第1の光学素子16によってAC/DCを確実に改善することができる90°以下とするとよい。θの上限は、例えば、85°以下、80°以下、78°以下、76°以下、74°以下、72°以下であるとより好ましい。θは、例えば、70°±5°の範囲とすることができる。
【0113】
以上、本技術に係る実施例について具体的に示したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0114】
本明細書において、数値範囲を示す「N1~N2」との表記は、N1以上であってN2以下であること、および、N1超過であってN2未満であること、の両方を任意に示し得る。
【0115】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0116】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0117】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
なお、上述の実施例は少なくとも特許請求の範囲に記載の構成を開示している。
特許請求の範囲の記載は、少なくとも以下の構成を含む。
[1] 環状のリング本体と、
前記リング本体の内部に設けられ、環の中心側に向けて光を放射する発光素子と、
前記リング本体の内部であって前記発光素子に対して前記環の中心側に設けられ、前記光の進行方向を指向角を狭める向きに変化させる第1の光学素子と、
を備え、
前記リング本体の内周側表面には、前記第1の光学素子が配置された部分が前記第1の光学素子の配置されていない部分よりも前記環の中心側に向けて突出している突部が設けられているウェアラブル電子デバイス。
[2] 前記第1の光学素子の前記環の中心側の端部は、前記内周側表面よりも前記環の中心側に位置している、[1]に記載のウェアラブル電子デバイス。
[3] 前記第1の光学素子は、前記発光素子の指向角を60°以下にするように構成されている、[1]または[2]に記載のウェアラブル電子デバイス。
[4] 前記第1の光学素子は、前記内周側表面に向かうにつれて、前記発光素子と前記環の中心とを結ぶ半径線から離れる反射面を有している、[1]~[3]のいずれか1つに記載のウェアラブル電子デバイス。
[5] 前記反射面は、放物面をなしている、[4]に記載のウェアラブル電子デバイス。
[6] 前記反射面は、前記半径線を軸とした回転放物面をなしている、[4]または[5]に記載のウェアラブル電子デバイス。
[7] 前記光学素子は、素子本体と、前記素子本体上に備えられた反射膜と、を備え、
前記反射面は前記反射膜によって構成されている、[1]~[6]のいずれか1つに記載のウェアラブル電子デバイス。
[8] 前記反射膜は、金属膜である、[7]に記載のウェアラブル電子デバイス。
[9] 前記突部は、頂部が平坦である、[1]~[8]のいずれか1つに記載のウェアラブル電子デバイス。
[10] 前記突部の突出寸法は、前記環の内径の5%以上10%以下である、[1]~[9]のいずれか1つに記載のウェアラブル電子デバイス。
[11] 前記リング本体の前記光学素子を覆う部分の厚みは、0.5mm以下である、[1]~[10]のいずれか1つに記載のウェアラブル電子デバイス。
[12] 前記リング本体の内部に設けられ、光を検出する受光素子と、
前記リング本体の内部であって前記受光素子に対して前記環の中心側に設けられ、前記光の進行方向を前記受光素子に向けて変化させる第2の光学素子と、
をさらに備え、
前記発光素子および前記受光素子は、これら発光素子および受光素子のそれぞれと、前記環の中心とを結ぶ線分のなす角度が55°以上90°以下となるように配置されている、[1]~[11]のいずれか1つに記載のウェアラブル電子デバイス。
[13] 前記発光素子に対して備えられた第1の光学素子の前記半径線に沿う高さ寸法は、前記受光素子に対して備えられた第2の光学素子の前記高さ寸法よりも大きい、[12]に記載のウェアラブル電子デバイス。
[14] 前記発光素子は複数の発光ダイオードを備え、
前記複数の発光ダイオードは、同一または異なる複数の波長の光を発生する、[1]~[13]のいずれか1つに記載のウェアラブル電子デバイス。
[15] 前記発光素子は、中心波長が500nm以上600nm以下の光を発生させる緑色ダイオードを含む、[1]~[14]のいずれか1つに記載のウェアラブル電子デバイス。
[16] 前記発光素子は、中心波長が630nm以上690nm以下、および、810nm以上990nm以下の少なくとも一方の光を発生させるダイオードを含む、[1]~[15]のいずれか1つに記載のウェアラブル電子デバイス。
[17] 前記リング本体は、
外周側に配されるとともに前記環の中心側に凹部を備える外装部と、
前記外装部に対して前記環の中心側に一体的に配される封止樹脂部と、
を備え、
前記発光素子および前記光学素子は、前記凹部に配置されるとともに、前記封止樹脂部によって封止されている、[1]~[16]のいずれか1つに記載のウェアラブル電子デバイス。
[18] 前記発光素子および前記光学素子は、前記外装部よりも前記環の中心側に突出するように配置されている、[17]に記載のウェアラブル電子デバイス。
[19] 環状のリング本体と、
前記リング本体の内部に設けられ、光を検出する受光素子と、
前記リング本体の内部であって前記受光素子に対して前記環の中心側に設けられ、前記光の進行方向を前記受光素子に向けて変化させる第2の光学素子と、
を備え、
前記リング本体の内周側表面には、前記第2の光学素子が配置された部分が前記第2の光学素子の配置されていない部分よりも前記環の中心側に向けて突出している突部が設けられているウェアラブル電子デバイス。
[20] [1]~[19]のいずれか1つに記載のウェアラブル電子デバイスと、
生体に装着された前記ウェアラブル電子デバイスの前記電子素子が取得した生体情報に基づいて、容積脈波法により、心拍数、血中酸素飽和度、血圧、および血糖値の少なくとも1つの健康管理情報を算出する制御部と、
前記健康管理情報を出力する出力部と、
を備える、健康管理システム。
[21] [1]~[19]のいずれか1つに記載のウェアラブル電子デバイスを生体に装着して取得した生体情報に基づいて、容積脈波法により、心拍数、血中酸素飽和度、血圧、および血糖値の少なくとも1つの健康管理情報を算出するステップ、
前記健康管理情報を出力するステップ、
を含む、健康管理方法。
[22] 前記ウェアラブル電子デバイスは指輪型であり、前記生体はヒトの指である、[21]に記載の健康管理方法。
【符号の説明】
【0118】
1…ウェアラブル電子デバイス、10…リング本体、11…外装部、11a…凹部、12…封止樹脂部、12a…突部、13…電子部品、14…配線板、15…発光素子、16…光学素子、16a…反射面、17…受光素子、18…光学素子、18a…反射面、100…健康管理システム、101…管理サーバ、102…ユーザ端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22