(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039544
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】電動モータの駆動装置、電動ポンプ装置および電動アクチュエータ装置
(51)【国際特許分類】
H02P 27/06 20060101AFI20240314BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240314BHJP
【FI】
H02P27/06
H02M7/48 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144168
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】井口 和幸
【テーマコード(参考)】
5H505
5H770
【Fターム(参考)】
5H505AA01
5H505AA16
5H505DD03
5H505HA09
5H505HB01
5H505MM16
5H770BA01
5H770CA02
5H770DA03
5H770DA41
5H770HA03Z
5H770LA00W
5H770LB08
(57)【要約】
【課題】通信における信号の基準電位に生じる電位差の影響が低減された電動モータの駆動装置を提供する。
【解決手段】 ブリッジ型のインバータ回路、インバータ回路を制御しかつ電圧値により複数の状態を表す信号を用いて上位コントローラと通信する制御回路を備え、インバータ回路は、上側アームにPチャネル型のMOSFET、下側アームにNチャネル型のMOSFETを有して、さらに電源入力の負極側にNチャネル型のMOSFETによる遮断回路を含む逆接続保護回路を有し、逆接続保護回路のNチャネル型のMOSFETのオン抵抗値が、複数の状態のうちの一の状態に対応している送信側の送信電圧と、送信電圧を受信側で受信した時の受信電圧が複数の状態のうちのどの状態に対応するかを判定するしきい値電圧とにより定まる電圧である電圧Emax(V)、および電動モータの最大消費電流Imax(A)により別式(1)で求められる抵抗値Rmax(Ω)より小さい値である、電動モータの駆動装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータを駆動するブリッジ型のインバータ回路を備え、前記インバータ回路を制御しかつ電圧値により複数の状態を表す信号を用いて上位コントローラと通信する制御回路をさらに備えた、電動モータの駆動装置であって、
前記インバータ回路は、上側アームにPチャネル型のMOSFET、下側アームにNチャネル型のMOSFETを有して、さらに電源入力の負極側にNチャネル型のMOSFETによる遮断回路を含む逆接続保護回路を有し、
前記逆接続保護回路の前記Nチャネル型のMOSFETのオン抵抗値が、
前記複数の状態のうちの一の状態に対応している送信側の送信電圧と、前記送信電圧を受信側で受信した時の受信電圧が前記複数の状態のうちのどの状態に対応するかを判定するしきい値電圧とにより定まる電圧である電圧Emax(V)、および前記電動モータの最大消費電流Imax(A)により以下の式(1)で求められる抵抗値Rmax(Ω)より小さい値である、
電動モータの駆動装置。
Rmax = Emax / Imax ・・・(1)
【請求項2】
請求項1に記載の電動モータの駆動装置であって、
前記電圧Emaxは、
前記送信電圧と、前記しきい値電圧とにより定まる前記電圧から、さらに部品の精度および温度特性のうちの少なくとも一つを有する諸元における個体差に依存して生じる誤差を含むその他余裕電圧を引いた電圧である、
電動モータの駆動装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電動モータの駆動装置であって、
前記上位コントローラが前記複数の状態を表す前記信号を送信して、前記制御回路が前記信号を受信し、
n個(nは2以上の整数)の前記信号の状態、および、それぞれの状態に対応した前記上位コントローラ側のn種類の前記送信電圧に対して、前記複数の状態のうちのどの状態に対応するかを判定する前記制御回路側の受信電圧の前記しきい値電圧が(n-1)種類あり、
前記一の状態を表す前記送信電圧と、前記一の状態に隣接する前記しきい値電圧であって前記送信電圧が前記状態の下側に隣接する別の状態であるか否かを判定する前記制御回路側のしきい値電圧との差である第1しきい値余裕に対して、前記電圧Emax(V)が、(n-1)種類の全ての前記第1しきい値余裕よりも小さな電圧値である、
電動モータの駆動装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電動モータの駆動装置であって、
前記制御回路が前記複数の状態を表す前記信号を送信して、前記上位コントローラが前記信号を受信し、
n個(nは2以上の整数)の前記信号の状態、および、それぞれの状態に対応した前起制御回路側のn種類の前記送信電圧に対して、前記複数の状態のうちのどの状態に対応するかを判定する前記上位コントローラ側の受信電圧の前記しきい値電圧が(n-1)種類あり、
前記一の状態を表す前記送信電圧と、前記一の状態に隣接する前記しきい値電圧であって前記送信電圧が前記状態の上側に隣接する別の状態であるか否かを判定する前記上位コントローラ側のしきい値電圧との差である第2しきい値余裕に対して、前記電圧Emax(V)が、(n-1)種類の全ての前記第2しきい値余裕よりも小さな電圧値である、
電動モータの駆動装置。
【請求項5】
請求項3および4に記載の電動モータの駆動装置であって、
前記上位コントローラが前記複数の状態を表す前記信号を送信して、前記制御回路が前記信号を受信する一方で、前記制御回路が前記複数の状態を表す前記信号を送信して、前記上位コントローラが前記信号を受信し、
前記電圧Emax(V)が、(n-1)種類の全ての前記第1しきい値余裕および(n-1)種類の全ての第2しきい値余裕よりも小さな電圧値である、
電動モータの駆動装置。
【請求項6】
請求項3から5のいずれか一項に記載の電動モータの駆動装置であって、
前記電圧Emaxは、前記第1しきい値余裕および前記第2しきい値余裕のうちの少なくとも一つを加味した前記送信側の基準電位と前記受信側の基準電位との電位差の最大値である、
電動モータの駆動装置。
【請求項7】
請求項3から5のいずれか一項に記載の電動モータの駆動装置を使用し、前記電動モータがポンプを駆動する、
電動ポンプ装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電動ポンプ装置であって、
前記ポンプはオイルを吸入して、吐出する、
電動ポンプ装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電動ポンプ装置であって、
前記オイルはトランスミッションフルードである、
電動ポンプ装置。
【請求項10】
請求項3から5のいずれか一項に記載の電動モータの駆動装置を使用し、前記電動モータが車両に含まれる可動部を駆動する、
電動アクチュエータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータの駆動装置、これを用いた電動ポンプ装置および電動アクチュエータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環境負荷低減の要求の高まりにより、車両においては、環境負荷物質の排出低減のため、アイドリング停止のみならず、走行中においても適宜エンジンを停止する場面が増加している。この際、例えばエンジンにより液圧を発生させるメカポンプは、エンジンが停止すると動作が止まる。そこで、エンジン停止時に液圧を発生させるために、電動で液圧を発生させる電動ポンプ装置を使用することが考えられている。エンジン方式による油圧の発生に代えて、電動方式により油圧を発生させる電動オイルポンプ装置は、従来よりも高出力が求められる傾向にある。また、車載機器は常に低コストであることが求められるが、その機構や搭載する回路の構成が簡易であることは、コスト低減のみならず、環境負荷低減の観点においても大きな効果をもたらす。
【0003】
電動ポンプ装置に使用される交流同期モータを駆動する回路には、MOSFETを使用してブリッジ回路を構成したインバータ回路が一般的に用いられる。MOSFETはその極性によりPチャネル型(以下、単にPチャネルとも呼ぶ)とNチャネル型(以下、単にNチャネルとも呼ぶ)に分けられる。同クラスでの比較ではNチャネル型の方がオン抵抗が小さく損失が小さいため、Nチャネル型のMOSFETの方が使用されうる。しかし、ブリッジ回路の上側アーム(高電位側アームまたはHi側アームとも呼ばれる)にNチャネルのMOSFETを用いるには、MOSFETを通じて導通したい電流における電圧、すなわち電源から印加される電圧よりも高いゲート駆動電圧が必要になるために一般的に昇圧回路が用いられる。
【0004】
これに対して、上側アームにPチャネルのMOSFETを用いる場合、昇圧回路が必要なく回路構成が簡易になる。しかしPチャネル型MOSFETは、Nチャネル型よりも損失が増大する。そこでこれを回避する場合には、損失がNチャネル型と同等となる上位クラスのPチャネル型MOSFETを用いることになり、コストアップとなる。このようなNチャネル型とPチャネル型は、その相反する特性が必ずしもどちらが優れているとは言えず、コストのみならず、環境負荷の大小も含めた条件によって選択される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06-348350号公報
【特許文献2】特許4003255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、車載の電装機器(車載機器)では、ユーザのミスなどにより車両バッテリーの正極、負極が逆接続され、電源ラインに正常とは逆の電圧が印加されることがある。このとき、機器内部の回路が破損しないように上記逆電圧の印加を遮断する逆接続保護回路(または遮断回路)の実装が求められることがある。この保護回路は、電源の正極側すなわち上記上側アームにて使用され、MOSFETによって遮断することが一般的である。
【0007】
こうした保護回路に、損失が比較的小さいNチャネル型のMOSFETを用いる場合、上側アームにて使用されるため、上で述べたインバータ回路の場合と同様に昇圧回路が必要になる。上述のようにインバータ回路の上側アームにNチャネル型のMOSFETを用いている場合は、昇圧回路を共用することでさらなるコストアップや構成回路の増大を回避できる。他方、上側アームにPチャネル型のMOSFETを用いる場合は昇圧回路が使用されないため、この保護回路でも昇圧回路を設けないためには必然としてPチャネル型のMOSFETを用いることになる。よってこの場合、インバータ回路と保護回路のPチャネル型MOSFETで、二重の損失増加およびコストアップとなる。
【0008】
しかし、逆接続保護回路を電源の負極側すなわちブリッジ回路の下側アーム(低電位側アームまたはLo側アームとも呼ばれる)に設けることで、昇圧回路を増設することなくNチャネル型のMOSFETを用いることができる。しかし、この構成では、車両側の電源から車載機器に電流が流れた場合に保護回路部分で電圧降下が発生し、保護回路を挟んで機器側と車両側(典型的には電源の負極側)との間で下側アームの電位に電位差が発生することとなる。これにより、機器内における制御信号等の信号の基準電位に、車両側に対して電位差が発生することとなり、好ましくない場合がある。
【0009】
車載機器において一般的に用いられるCANバスによる通信(以下、単にCAN通信ともいう)のように、信号が二線間の差動電圧により伝送される通信では、上記のような電位差による影響はない。しかし、例えば電動ポンプ装置のように簡易な車載機器の場合、CAN通信などの通信を採用せず、車両側の上位コントローラに信号線等を直接接続して使用されることがある。このとき、車両のGND電位を基準電位としたパルス信号等の電圧信号により、機器と車両の間で指令、通知などの通信を行われうる。よって、前述のように信号の基準電位に電位差が発生した場合に、パルス信号のオン/オフ(またはHi/Lo、状態値'1'/状態値'0')の状態が受信側で正しく認識できず、機器が誤作動する可能性がある。
【0010】
特許文献1、特許文献2では、いずれも、上記逆電圧が供給されたときに該逆電圧を遮断する逆接続保護回路が負極側に設けられた構成が示されている。これらの文献では、主に車両用前照灯に用いる技術が開示されており、上記の電動ポンプで用いられるような上位コントローラとの通信は考慮されていない。よって、これらの文献では、上記のような信号の基準電位に電位差が発生した場合における上記機器の誤作動等も可能性は考慮されていない。すなわち両文献には、ゲート駆動の昇圧回路を用いない簡易な回路構成とするために、Nチャンネル型のMOSFETを用いた逆接続保護回路を負極側(下側アーム側)に設けた場合、例えば機器の消費電流が比較的大きいと、上位コントローラと機器側との間で通信が行われた際の上述の通信信号の基準電位に生じる電位差の影響について何ら開示等されていない。
【0011】
本発明の目的は、上述の課題を解決すべく、電源の逆接続に対応するNチャンネル型MOSFETを用いた逆接続保護回路を電源入力の負極側(下側アーム側)に設け、かつ電圧による信号で上位コントローラと機器側との間で通信する構成で、上記通信における信号の基準電位に生じる電位差の影響が低減された電動モータの駆動装置、電動ポンプ装置および電動アクチュエータ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、概して、通信に用いる送信側の送信電圧と受信側のしきい値電圧とにより定まる電圧を勘案して、負極側(下側アーム側)を遮断する逆接続保護回路に用いるNチャネル型のMOSFETに適切なオン抵抗値のものを選択することで、上記基準電位の電位差の影響が低減し、上記機器の誤作動等を回避することを基本とする。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明にかかる電動モータの駆動装置は、
電動モータを駆動するブリッジ型のインバータ回路を備え、前記インバータ回路を制御しかつ電圧値により複数の状態を表す信号を用いて上位コントローラと通信する制御回路をさらに備えた、電動モータの駆動装置であって、
前記インバータ回路は、上側アームにPチャネル型のMOSFET、下側アームにNチャネル型のMOSFETを有して、さらに電源入力の負極側にNチャネル型のMOSFETによる遮断回路を含む逆接続保護回路を有し、
前記逆接続保護回路の前記Nチャネル型のMOSFETのオン抵抗値が、
前記複数の状態のうちの一の状態に対応している送信側の送信電圧と、前記送信電圧を受信側で受信した時の受信電圧が前記複数の状態のうちのどの状態に対応するかを判定するしきい値電圧とにより定まる電圧である電圧Emax(V)、および前記電動モータの最大消費電流Imax(A)により以下の式(1)で求められる抵抗値Rmax(Ω)より小さい値である。
Rmax = Emax / Imax ・・・(1)
なお、当該段落以降の説明も含めて、
前記電圧Emaxは、
前記送信電圧と、前記しきい値電圧とにより定まる前記電圧から、さらに部品の精度および温度特性のうちの少なくとも一つを有する諸元における個体差に依存して生じる誤差を含むその他余裕電圧を引いた電圧であってもよい。上記MOSFETに代えて、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の他の半導体スイッチング素子が用いられてもよい。
【0014】
以上のように、本発明にかかる電動モータの駆動装置は、電源入力の負極側(前記下側アームに対応)にNチャネル型のMOSFETによる遮断回路を含む逆接続保護回路を有し、前記逆接続保護回路の前記Nチャネル型のMOSFETのオン抵抗値が、前記送信電圧と前記しきい値電圧とにより定まる電圧である電圧Emax(V)、および前記電動モータの最大消費電流Imax(A)により式(1)で求められる抵抗値Rmax(Ω)より小さい値となっている。このため、前記インバータ回路を内蔵する車載電動ポンプ等において、Nチャンネル型MOSFETを用いた逆接続保護回路を電源入力の負極側(下側アーム側)に設けた前記インバータ回路において、電源の逆接続により逆電圧が供給されたときに電源を遮断して回路の破損を保護する場合に、上位コントローラとのパルス通信等の電圧値による信号における受信側の誤認識を回避しうる。よって、本発明にかかる電動モータの駆動装置は、電圧による信号で上位コントローラと機器側との間で通信する構成で、上記通信における信号の基準電位に生じる電位差の影響を低減することができる。
【0015】
前記上位コントローラが前記複数の状態を表す前記信号を送信して、前記制御回路が前記信号を受信し、
n個(nは2以上の整数)の前記信号の状態、および、それぞれの状態に対応した前記上位コントローラ側のn種類の前記送信電圧に対して、前記複数の状態のうちのどの状態に対応するかを判定する前記制御回路側の受信電圧の前記しきい値電圧が(n-1)種類あり、
前記一の状態を表す前記送信電圧と、前記一の状態に隣接する前記しきい値電圧であって前記送信電圧が前記状態の下側に隣接する別の状態であるか否かを判定する前記制御回路側のしきい値電圧との差である第1しきい値余裕に対して、前記電圧Emax(V)が、(n-1)種類の全ての前記第1しきい値余裕よりも小さな電圧値であってもよい。
また、
前記制御回路が前記複数の状態を表す前記信号を送信して、前記上位コントローラが前記信号を受信し、
n個(nは2以上の整数)の前記信号の状態、および、それぞれの状態に対応した前起制御回路側のn種類の前記送信電圧に対して、前記複数の状態のうちのどの状態に対応するかを判定する前記上位コントローラ側の受信電圧の前記しきい値電圧が(n-1)種類あり、
前記一の状態を表す前記送信電圧と、前記一の状態に隣接する前記しきい値電圧であって前記送信電圧が前記状態の上側に隣接する別の状態であるか否かを判定する前記上位コントローラ側のしきい値電圧との差である第2しきい値余裕に対して、前記電圧Emax(V)が、(n-1)種類の全ての前記第2しきい値余裕よりも小さな電圧値であってもよい。
さらに、
前記上位コントローラが前記複数の状態を表す前記信号を送信して、前記制御回路が前記信号を受信する一方で、前記制御回路が前記複数の状態を表す前記信号を送信して、前記上位コントローラが前記信号を受信し、
前記電圧Emax(V)が、(n-1)種類の全ての前記第1しきい値余裕および(n-1)種類の全ての第2しきい値余裕よりも小さな電圧値であってもよい。
なお、
前記電圧Emaxは、前記第1しきい値余裕および前記第2しきい値余裕のうちの少なくとも一つを加味した前記送信側の基準電位と前記受信側の基準電位との電位差の最大値であってもよい。
以上の各構成により、電圧による信号で上位コントローラと機器側との間で通信する構成で、上記通信における信号の基準電位に生じる電位差の影響について具体的な構成で考慮することができる。
【0016】
上記目的を達成するために、本発明にかかる電動ポンプ装置は、
上記のいずれかの電動モータの駆動装置を使用し、前記電動モータがポンプを駆動する。
なお、前記ポンプはオイルを吸入して、吐出してもよく、また、前記オイルはトランスミッションフルードであってもよい。
以上の構成により、本発明にかかる電動ポンプ装置は、上記の電動モータの駆動装置と同様の効果を奏することができる。
【0017】
上記目的を達成するために、本発明にかかる電動アクチュエータ装置は、
上記のいずれかの電動モータの駆動装置を使用し、前記電動モータが車両に含まれる可動部を駆動する。
以上の構成により、本発明にかかる電動アクチュエータ装置は、上記の電動モータの駆動装置と同様の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかる電動モータの駆動装置、電動ポンプ装置および電動アクチュエータ装置によれば、電源の逆接続に対応するNチャンネル型MOSFETを用いた逆接続保護回路を電源入力の負極側(下側アーム側)に設け、かつ電圧による信号で上位コントローラと機器側との間で通信する構成で、上記通信における信号の基準電位に生じる電位差の影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電動モータの駆動装置を含めた電動ポンプ装置の一例を示す概略ブロック図である。
【
図2】本発明の他の実施形態に係る電動モータの駆動装置を含めた電動アクチュエータ装置の一例を示す概略ブロック図である。
【
図3】従来の電動モータの駆動装置を含めた電動装置の一例を示す概略ブロック図である。
【
図4】従来の電動モータの駆動装置を含めた電動装置の他の例を示す概略ブロック図である。
【
図5】上記の各実施形態に係る電動モータの駆動装置の動作の正常時における一例を示す概略説明図である。
【
図6】上記の各実施形態に係る電動モータの駆動装置の動作の誤判定時における一例を示す概略説明図である。
【
図7】上記の各実施形態に係る電動モータの駆動装置の動作の正常時における他の例を示す概略説明図である。
【
図8】上記の各実施形態に係る電動モータの駆動装置の動作の誤判定時における他の例を示す概略説明図である。
【
図9】上記の各実施形態に係る電動モータの駆動装置の動作の正常時における更に他の例を示す概略説明図である。
【
図10】上記の各実施形態に係る電動モータの駆動装置の動作の誤判定時における更に他の例を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係る電動モータの駆動装置を含めた電動ポンプ装置の一例を示す概略ブロック図を
図1に示す。電動ポンプ装置300は、少なくとも、電源回路320、制御回路330、逆接続保護回路310を有するインバータ回路340、モータ350、ポンプ360とにより構成される。ここで、本実施形態の電動モータの駆動装置MDは、少なくとも、上記の逆接続保護回路310を有するインバータ回路340および制御回路330とにより構成される。なお同図では、逆接続保護回路310は見易さの面からインバータ回路340から離れて記載されている。電動ポンプ装置300は、車両電源100側より電源電圧Vpが印加され、上位コントローラ200との間で電圧信号線Lsによる通信を行うことで、モータ350が作動し、モータ350がポンプ360を駆動することによってポンプ360がオイル等の液体を吸入して吐出する。詳しくは、電動ポンプ装置300は、車両電源100の電源電圧Vpが印加された正極線Lp、車両電源100の負極に接続されGND電圧(接地電圧)Vgとされた負極線Lnに接続されることで、車両電源100より電力が供給される。
【0021】
電圧信号線Lsは、電圧値により複数の状態を表す信号の通信が行われる。電圧値により複数の状態を表す信号とは、電源電圧VpとGND電圧Vgとの間を複数に区分して各々の区分に状態を割り当て、かつそれらの状態に電圧が各々割り当てられた信号のことであり、受信した電圧値により、送信側の意図した状態を受信側で把握するのに使用される信号のことである。各状態は、電源電圧Vpと、GND電圧Vg、およびしきい値により電圧帯に区分され、一の状態に割り当てられた上記電圧は、対応するいずれかの電圧帯に含まれる値となっている。例えば、電圧値により2つの状態を表す信号では、TTL (Transistor Transistor Logic) レベルのケースやCMOS (Complementary Metal Oxide Semiconductor) レベルのケースのように、所定のしきい値で電源電圧Vp近辺とGND電圧Vg近辺に所謂2値信号の状態値'0'および'1'の2つの状態を割り当てることで(なお2つの状態の間の状態およびこの状態に対応する電圧帯は使用しない)、受信した電圧値がどの電圧帯に属するか判明することにより、送信側の意図した状態は状態値'0'および'1'の2つの状態のいずれであるかを受信側で把握しうる。
【0022】
インバータ回路340は、公知の構成の複数相(本実施形態では3相)のH型フルブリッジ回路により構成され、電動モータ350を駆動する。各相は、正極線Lpにつながる上側アームに接続されたPチャネル型MOSFET341と、負極線Lnにつながる下側アームに接続されたNチャネル型MOSFET342とが直列接続されて構成される。各MOSFETは、制御回路330によってゲートが電圧駆動されることでオン/オフし、モータの各相へモータ電流が供給される。逆接続保護回路310は、負極線Lnに存在し、遮断回路を構成するNチャネル型MOSFET311と、その他の電気回路とによって構成される。正極線Lpと負極線Lnに正しい極性の電圧が供給されたときは、MOSFET311がオンされて導通し、内部のインバータ回路340等に電力が供給される。正極線Lpと負極線Lnに逆の電圧が供給されたときは、MOSFET311がオフされて供給された逆電圧は負極側で遮断され、インバータ回路340等の破損を防止することができる。
【0023】
電源回路320は、供給された電源電圧Vpに対して、整流、平滑、変圧などを行って、内部の各回路で必要な電圧を生成し供給する。なお、上記変圧等を行わずに供給された電源電圧そのままを供給してもよい。制御回路330は、電圧信号線Lsを用いて上位コントローラ200と通信し、指令等の受信、または制御状態等の送信などを行って、モータ350を駆動するためにインバータ回路340を制御する。モータ350は、例えば同期交流電動モータが用いられ、インバータ回路340によって駆動される。ポンプ360は、モータ350の回転によって駆動され、トランスミッションフルード等の油や液体を吸入、吐出する。
【0024】
他の実施形態に係る電動モータの駆動装置を含めた電動アクチュエータ装置の一例を示す概略ブロック図を
図2に示す。電動アクチュエータ装置400は、少なくとも、前述のポンプ装置300と同様に、正極線Lpに車両電源100の電源電圧Vp、負極線LnにGND電圧Vgが接続されることで、車両電源100より電力が供給される。また、電圧値により複数の状態を表す信号を用いて、上位コントローラ200と電圧信号線Lsを介して通信を行う。アクチュエータ装置400は、電源回路420、制御回路430、逆接続保護回路410を有するインバータ回路440、モータ450と、上記ポンプ360に代わって駆動機構460とにより構成される。なお同図でも、逆接続保護回路410は見易さの面からインバータ回路440から離れて記載されている。駆動機構460は、モータ450が回転することで作動し、アクチュエータ装置400に接続され該装置外部で車両内部に存在するアクスルシャフト等の可動部を駆動する。本実施形態では、駆動機構460以外の各構成は、上記実施形態と同様であり、詳しい説明は割愛する。
【0025】
上記実施形態の動作、作用を明確にするため、電動ポンプ装置300、電動アクチュエータ装置400に対して、従来の電動装置との構成、動作の違いを説明する。この従来の電動装置の説明において、モータが駆動するポンプや駆動機構は当該説明に直接関係しないので、それらの説明は省略する。
【0026】
図3に従来例の電動装置500の構成を示す。電動装置500は、逆接続保護回路510、電源回路520、制御回路530、インバータ回路540、モータ550、昇圧回路570等により構成される。
【0027】
インバータ回路540は、公知の構成の複数相(本例では3相)のH型フルブリッジ回路により構成され、電動モータ550を駆動する。各相は、上側アームに接続されたNチャネル型MOSFET541と下側アームに接続されたNチャネル型MOSFET542とが直列接続されて構成される。各MOSFETは制御回路530によって、ゲートが電圧駆動されることでオン/オフし、モータの各相へモータ電流が供給される。昇圧回路570は、正極線LpのラインにあるNチャネル型MOSFETをオンする際のゲート駆動に用いられ、例えばブートストラップ回路やチャージポンプ回路などを使用して、電源電圧Vpよりも高いゲート駆動電圧を生成する。
【0028】
逆接続保護回路510は、正極線Lpに存在し、Nチャネル型MOSFET511と、その他の電気回路によって構成される。正極線Lpと負極線Lnに正しい極性の電圧が供給されたときは、昇圧回路570により生成されたゲート駆動電圧を用いてMOSFET511がオンされて導通し、内部のインバータ回路540等に電力が供給される。正極線Lpと負極線Lnに逆の電圧が供給されたときは、MOSFET511がオフされて供給された逆電圧は正極側で遮断され、インバータ回路540等の破損を防止する。
【0029】
制御回路530は、電圧信号線Lsを用いて上位コントローラ200と通信し、指令等の受信、または制御状態等の送信などを行って、モータ550を駆動するために、昇圧回路570により生成されたゲート駆動電圧を用いてインバータ回路540を制御する。電源回路520、モータ550は、上記実施形態の電源回路、モータと同様である。
【0030】
図4に従来例の電動装置600の構成を示す。電動装置600は、逆接続保護回路610、電源回路620、制御回路630、インバータ回路640、モータ650、と、その他の説明しない要素により構成される。
【0031】
逆接続保護回路610は、正極線Lpに存在し、Pチャネル型MOSFET611と、その他の電気回路によって構成される。正極線Lpと負極線Lnに正しい極性の電圧が供給されたときは、MOSFET611がオンされて導通し、内部のインバータ回路640等に電力が供給される。正極線Lpと負極線Lnに逆の電圧が供給されたときは、MOSFET611がオフされて供給された逆電圧は正極側で遮断され、インバータ回路640の破損を防止する。電源回路620、制御回路630、インバータ回路640、モータ650は、
図3の電源回路、制御回路、インバータ回路、モータと同様である。
【0032】
さて上記実施形態の電動ポンプ装置300および電動アクチュエータ装置400は、
図3に示す従来の電動装置500に比べると、インバータ回路340、440の上側アームにPチャネル型のMOSFETを用い、電源電圧Vpより高いゲート駆動電圧が必要なNチャネル型MOSFETを上側アームに用いないため、昇圧回路570が不要となり、回路構成の簡素化等が可能になる。また上記実施形態の電動ポンプ装置300および電動アクチュエータ装置400は、
図4に示す従来の電動装置600に比べると、逆接続保護回路310、410が負極線Lnを遮断するので、Nチャネル型のMOSFET311,411を用いることができ、正極線Lpを遮断する従来の電動装置600がPチャネル型のMOSFET611を用いることに比べて、より低損失でまたはより低コストで構成することができる。
【0033】
しかしながら、発明の電動ポンプ装置300および電動アクチュエータ装置400では、負極線Lnに存在する逆接続保護回路310,410の遮断用のNチャネル型MOSFET311,411が導通しているとき、装置を流れる電流すなわちインバータ340,440の消費電流IdがこのMOSFET311,411を通過する。このため、このMOSFET311,411では、固有特性であるオン抵抗Ronにより、負極線Lnにおいて電圧降下Vdが生じる。ここで、この電圧降下Vdにより電圧信号線Lsの基準電圧に与える影響について以下で説明する。以下では、電動アクチュエータ装置400の説明については電動ポンプ装置300の説明に含め、説明を割愛する。
【0034】
従来の電動装置500、600では、正極線Lpに消費電流Idによる電圧降下Vdが発生し、その影響はモータ550、650への出力電圧の低下として現れる。制御回路530、630と上位コントローラ200とは、負極側が共通にGND電圧Vgに直接接続されるため、通信を行う電圧信号線Lsの基準電圧は共通であり、この電圧降下Vdは、制御回路530、630と上位コントローラ200との間の通信には影響しない。
【0035】
それに対し、上記実施形態の電動ポンプ装置300では、負極側すなわち負極線Lnにおいて消費電流Idによる電圧降下Vdが発生するため、従来の電動装置500、600と同様にモータへの出力電圧が低下するとともに、内部基準電圧Vrが、外部の基準電圧であるGND電圧Vgよりも上昇する。よって、制御回路330と上位コントローラ200との間の通信を行う電圧信号線Lsにおいて、その基準電位の差から、送受信間で把握される状態に齟齬が生じ、その結果装置が誤作動する可能性がある。そこで、発明の電動ポンプ装置300では、Nチャネル型MOSFET311の固有特性であるオン抵抗Ronを所定値に規定し、それに合致した適切なMOSFETを実装することで、この課題を解決する。
【0036】
発明の電動ポンプ装置300では逆接続保護回路310で遮断に用いるNチャネル型MOSFET311の固有特性であるオン抵抗の最大値Rmaxを以下のように規定する。
Rmax = Emax / Imax ・・・(1)
Rmax:最大オン抵抗値(Ω)
Emax:最大基準電位差(V)
Imax:最大消費電流(A)
最大オン抵抗値Rmaxは、Nチャネル型MOSFET311として用いるMOSFETのオン抵抗値として許容される最大の電気抵抗値を表す。よって、Nチャネル型MOSFET311の固有特性であるオン抵抗値は、このRmaxよりも小さな値のものを用いなければならない。ここで、許容電位差Emaxは、電圧信号線Lsの誤認識が発生しない範囲で(なお後述する各しきい値余裕を加味してもよい)許容される外部と内部の基準電圧の電位差を表す。最大消費電流Imaxは、電動ポンプ装置300が消費する電流の最大値であり、瞬時値を含む。この最大オン抵抗値Rmaxにより、上記課題を解決しうることを
図1で示す例を使用して以下で説明する。
【0037】
電圧Emax(V)は、具体的には、後述の複数の状態のうちの一の状態に対応している送信側の送信電圧と、前記送信電圧を受信側で受信した時の受信電圧が前記複数の状態のうちのどの状態に対応するかを判定するしきい値電圧(以下、単にしきい値とも呼ぶ)とにより定まる電圧である。なお、前記電圧Emaxは、前記送信電圧と、前記しきい値電圧とにより定まる前記電圧から、さらに部品の精度および温度特性のうちの少なくとも一つを有する諸元における個体差に依存して生じる誤差を含む、後述のその他余裕電圧を引いた電圧であってもよい。
【0038】
電圧信号線Lsは、上述の様にその電圧により2値またはそれ以上の有限数の状態を表す信号を用いている。本実施形態では、該状態は、例えばn個(nは2以上の整数)だけ存在する場合、状態値'0'~状態値'n-1'のn値で表される。なお上記信号では、例えば、状態値'0'と状態値'1'の2値の状態(電圧値)に加えて、その電圧値の時間比率や周期等が使用され、電動ポンプ装置300への回転数指令や現在回転数通知などについて送受信される。
図5~
図8に、状態が状態値'0'と状態値'1'の2値(n=2)で表される場合を例に示す。
図5~
図8中の電圧Vfは、電動ポンプ装置300の消費電流Idが逆接続保護回路310のMOSFET311を通って流れることで発生する電圧降下Vdに対応する。よってVfは消費電流Idの増減に比例して増減する。
図5、
図6は、外部の上位コントローラ200が信号を送信し、電動ポンプ装置300の制御回路330がその信号を受信する例であり、
図7、
図8は電動ポンプ装置300の制御回路330が信号を送信し、外部の上位コントローラ200がその信号を受信する例である。
【0039】
図5、
図6では、外部の上位コントローラ200が、状態値'0'を送信する場合は所定の送信電圧V10を、状態値'1'を送信する場合は所定の送信電圧V11を信号として出力する。この信号を電動ポンプ装置300の内部の制御回路330が受信し、しきい値(電圧)Vth10を境に状態(状態値)を判定する。上位コントローラ200が送信した電圧信号線Ls上の電圧信号を制御回路330が受信するとき、上位コントローラ200の基準電圧である外部基準電圧Vgに対して、制御回路330の基準電圧である内部基準電圧Vrは、MOSFET311で発生する電圧降下によりVfだけ高くなる。このため、制御回路330が受信する受信電圧は、上位コントローラ200が送信する電圧よりVfだけ低くなる。なお、状態値'0'および状態値'1'の受信電圧は、各々V10r、V11rである。
【0040】
図5では、この受信電圧の受信判定において、受信電圧により判定された状態は正しく状態値'0'および状態値'1'に各々正しく判定される。しかし、Vfが
図5よりも大きい
図6では、状態値'1'は、受信電圧により判定された状態は状態値'0'と誤判定される。すなわち、一の状態を表す送信電圧と、前記一の状態に隣接するしきい値電圧であってこの送信電圧が前記状態の下側に隣接する別の状態であるか否かを判定する受信側のしきい値電圧との差(以下、第1しきい値余裕Vm1と呼ぶ)よりもVfが大きくなったとき、誤判定が発生する。なお、状態値が'0'と'1'の2値の場合は、状態値'0'は下側に隣接する状態がないので誤判定は発生せず、上述のように状態値'1'を送信したときのみ誤判定が発生しうる。
【0041】
図7、
図8では、電動ポンプ装置300の内部の制御回路330が、状態値'0'を送信する場合は所定の送信電圧V20を、状態値'1'を送信する場合は所定の送信電圧V21を信号として出力する。この信号を外部の上位コントローラ200が受信し、しきい値(電圧)Vth20を境に状態(状態値)を判定する。制御回路330が送信した電圧信号線Ls上の電圧信号を外部の上位コントローラ200が受信するとき、上位コントローラ200の基準電圧である外部基準電圧Vgに対して、制御回路330の基準電圧である内部基準電圧Vrは、MOSFET311で発生する電圧降下によりVfだけ高くなる。このため、上位コントローラ200が受信する電圧は、制御回路330が送信する電圧よりVfだけ高くなる。なお、状態値'0'および状態値'1'の受信電圧は、各々V20r、V21rである。
【0042】
図7では、この受信電圧の受信判定において、受信電圧により判定された状態は、正しく状態値'0'および状態値'1'に各々正しく判定される。しかし、Vfが
図7よりも大きい
図8では、状態値'0'は、受信電圧により判定された状態は状態値'1'と誤判定される。すなわち、一の状態を表す送信電圧と、前記一の状態に隣接するしきい値電圧であってこの送信電圧が前記状態の上側に隣接する別の状態であるか否かを判定する受信側のしきい値電圧との差(以下、第2しきい値余裕Vm2と呼ぶ)よりもVfが大きくなったとき、誤判定が発生する。なお、状態値が'0'と'1'の2値の場合は、状態値'1'は上側に隣接する状態がないので誤判定は発生せず、上述のように状態値'0'を送信したときのみ誤判定が発生しうる。
【0043】
次に、
図9、
図10に、状態がn個(n≧3)の例として、状態値'0'、状態値'1'、状態値'2'の3値の場合を示す。3値の状態値について、電動ポンプ装置においては例えば、状態値'0'と状態値'2'に対応した送信電圧の周期が電動オイルポンプ装置の現在回転数を表し、中間の電圧である状態値'1'に対応した送信電圧は通信系の回路の異常を表す。
【0044】
図9は、外部の上位コントローラ200が各状態に対応した所定の電圧信号を送信し、電動ポンプ装置300の内部の制御回路330がその電圧信号を受信する場合を示す。前記2値の場合の
図5、
図6と同様に、一の状態に対応した送信電圧と、上記受信側のしきい値電圧との差が上記第1しきい値余裕である。第1しきい値余裕は、しきい値の数だけ、すなわち(n-1)個だけ存在し、本実施形態では2つである。すべての状態の送信電圧V30~V32は、等しくVfだけ降下して受信されるため、これら複数の第1しきい値余裕の中で最小のものよりもVfが大きくなった時、誤判定が発生する。なお、
図9は誤判定が発生していない例である。
【0045】
図10は、電動ポンプ装置300の内部の制御回路330が各状態に対応した所定の電圧信号を送信し、外部の上位コントローラ200がその電圧信号を受信する場合を示す。前記2値の場合の
図7、
図8と同様に、一の状態に対応した送信電圧と、上記受信側のしきい値電圧との差が上記第2しきい値余裕である。第2しきい値余裕は、しきい値の数だけ、すなわち(n-1)個だけ存在し、本実施形態では2つである。すべての状態の送信電圧V40~V42は、等しくVfだけ上昇して受信されるため、これら複数の第2しきい値余裕の中で最小のものよりもVfが大きくなった時、誤判定が発生する。なお、
図10は誤判定が発生していない例である。
【0046】
ここで、前記式(1)のEmaxは、電圧信号による通信の方向が片側のみのときは、前記その方向の第1しきい値余裕(複数存在する場合は全て)または第2しきい値余裕(複数存在する場合は全て)よりも小さな値、双方向のときは前記第1および第2しきい値余裕(各々、複数存在する場合は全て)よりも小さな値とする必要がある。なお、上記それぞれの出力電圧やしきい値電圧は、部品精度や温度特性により変動しうるため、それらによる変動の最悪値を含んださらなる余裕を持って小さな値とする必要があり、すなわち上記その他余裕電圧を引いた値とするのが好ましい。
【0047】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0048】
100 車両電源
200 上位コントローラ
300 電動ポンプ装置
310、410 逆接続保護回路
330,430,530、630 制御回路
340,440,540、640 インバータ回路
400 電動アクチュエータ装置