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特開2024-39548集水管生産方法、集水管、接続部材及びコーン部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039548
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】集水管生産方法、集水管、接続部材及びコーン部材
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/10 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
E02D3/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144179
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】522360758
【氏名又は名称】株式会社スティールド
(71)【出願人】
【識別番号】522360976
【氏名又は名称】株式会社T&M
(74)【代理人】
【識別番号】100180921
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】清水 敏孝
【テーマコード(参考)】
2D043
【Fターム(参考)】
2D043DA04
2D043DD16
(57)【要約】
【課題】 本発明は、集水管の寿命を延ばすことを可能とする新規の集水管生産方法等を提供することを目的とする。
【解決手段】 集水管を生産する集水管生産方法であって、前記集水管の材料である管材料に酸化鉄細菌の増殖及び/又は付着を抑制する添加剤を添加する添加ステップと、前記管材料を用いて前記集水管を形成する集水管形成ステップとを含む、集水管生産方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集水管を生産する集水管生産方法であって、
前記集水管の材料である管材料に酸化鉄細菌の増殖及び/又は付着を抑制する添加剤を添加する添加ステップと、
前記管材料を用いて前記集水管を形成する集水管形成ステップとを含む、集水管生産方法。
【請求項2】
前記管材料は、樹脂であり、
前記添加剤は、チアゾリン化合物を含む、請求項1記載の集水管生産方法。
【請求項3】
前記集水管形成ステップにおいて、麺形状の樹脂が立体的にからみあって固められた筒状の構造として前記集水管を形成する、請求項2記載の集水管生産方法。
【請求項4】
前記樹脂は、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、又は、ABS樹脂のいずれかである、請求項3記載の集水管生産方法。
【請求項5】
前記添加ステップにおいて、さらに微粒子状の二酸化ケイ素を添加する、請求項1記載の集水管生産方法。
【請求項6】
土砂の進入を防止するフィルタを前記集水管の外周に固定するフィルタ固定ステップをさらに備え、
前記フィルタ固定ステップは、
前記集水管と、前記フィルタを脱着可能であるように固定したドラムロールとを接近させる接近ステップと、
前記ドラムロールから前記集水管に前記フィルタを熱溶着により移す熱溶着ステップとを含み、
前記ドラムロールは、表面に凸部を有するものである、請求項1記載の集水管生産方法。
【請求項7】
集水管であって、
樹脂を基材とし、チアゾリン化合物が前記樹脂に練り込まれている、集水管。
【請求項8】
前記樹脂が麺形状となって立体的にからみあって固められた管であり、
複数の当該集水管の端が接続部材により接続されており、
前記接続部材は、筒の形状をしており、
前記接続部材は、前記筒の内部に、
水の通過を許すものの前記集水管が奥に進入することを防ぐ仕切部材と、
前記集水管が容易に抜けることを防ぐ係止部材とを有するものである、請求項7記載の集水管。
【請求項9】
前記樹脂が麺形状となって立体的にからみあって固められた管であり、
土中に挿入される際に最奥部となる集水管の先端にコーン部材を備え、
前記コーン部材は、
当該集水管の内部に挿入される一端を有し、
前記一端とは逆の端は、先端から前記一端の方向に拡がる形状であり、
前記逆の端の最も拡がった箇所の径は、当該集水管の外径よりも大きい、請求項7記載の集水管。
【請求項10】
複数の集水管を接続する接続部材であって、
筒の形状をしており、
前記筒の内部に、
水の通過を許すものの前記集水管が奥に進入することを防ぐ仕切部材と、
前記集水管が容易に抜けることを防ぐ係止部材とを有する、接続部材。
【請求項11】
集水管に接続されるコーン部材であって、
前記集水管の内部に挿入される一端を備え、
前記一端とは逆の端は、先端から前記一端の方向に拡がる形状であり、
前記逆の端の最も拡がった箇所の径は、当該集水管の外径よりも大きく、
前記集水管に挿入される部分において複数の突起を備える、コーン部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集水管生産方法、集水管、接続部材及びコーン部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地下水を排水するために地下に埋設される集水管は、使用しているうちにスライム状の生成物の形成により、管内に詰まりが発生していた。集水管が集水する集水孔が目詰まりを起こすと集水管としての役割を果たさなくなってしまう。
【0003】
これに対して、集水管の内部にスクリュー羽根を設け、水流によって付着物を剥離除去しようとする集水管の目詰り防止装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-084905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような可動部を有する目詰り防止装置を地下に埋設する集水管に適用する場合、故障した場合の修理が困難である。
【0006】
また、集水管が比較的安価であることもあり、費用をかけて複雑な装置を導入されにくい事情もある。結局現場では、およそ5年ごとに目詰まりが起きるタイミングで新しい集水管を埋設する工事を行って対処していた。そのため、頻繁にかつ継続的に工事を必要とする状況であった。
【0007】
また、集水管の内部においてノズルを用いて高圧洗浄を行う方法も行われているが、主に集水管内部の洗浄を目的としたものである。そのため、集水管の外側の目詰まりまでを予防・解消することは困難であった。
【0008】
そこで、本発明は、集水管の寿命を延ばすことを可能とする新規の集水管生産方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点は、集水管を生産する集水管生産方法であって、前記集水管の材料である管材料に酸化鉄細菌の増殖及び/又は付着を抑制する添加剤を添加する添加ステップと、前記管材料を用いて前記集水管を形成する集水管形成ステップとを含む、集水管生産方法である。
【0010】
本発明の第2の観点は、第1の観点の集水管生産方法であって、前記管材料は、樹脂であり、前記添加剤は、チアゾリン化合物を含む。
【0011】
本発明の第3の観点は、第2の観点の集水管生産方法であって、前記集水管形成ステップにおいて、麺形状の樹脂が立体的にからみあって固められた筒状の構造として前記集水管を形成する。
【0012】
本発明の第4の観点は、第3の観点の集水管生産方法であって、前記樹脂は、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、又は、ABS樹脂のいずれかである。
【0013】
本発明の第5の観点は、第1から第4のいずれかの観点の集水管生産方法であって、前記添加ステップにおいて、さらに微粒子状の二酸化ケイ素を添加する。
【0014】
本発明の第6の観点は、第1から第5のいずれかの観点の集水管生産方法であって、土砂の進入を防止するフィルタを前記集水管の外周に固定するフィルタ固定ステップをさらに備え、前記フィルタ固定ステップは、前記集水管と、前記フィルタを脱着可能であるように固定したドラムロールとを接近させる接近ステップと、前記ドラムロールから前記集水管に前記フィルタを熱溶着により移す熱溶着ステップとを含み、前記ドラムロールは、表面に凸部を有するものである。
【0015】
本発明の第7の観点は、集水管であって、樹脂を基材とし、チアゾリン化合物が前記樹脂に練り込まれている、集水管である。
【0016】
本発明の第8の観点は、第7の観点の集水管であって、前記樹脂が麺形状となって立体的にからみあって固められた管であり、複数の当該集水管の端が接続部材により接続されており、前記接続部材は、筒の形状をしており、前記接続部材は、前記筒の内部に、水の通過を許すものの前記集水管が奥に進入することを防ぐ仕切部材と、前記集水管が容易に抜けることを防ぐ係止部材とを有するものである。
【0017】
本発明の第9の観点は、第7の観点の集水管であって、前記樹脂が麺形状となって立体的にからみあって固められた管であり、土中に挿入される際に最奥部となる集水管の先端にコーン部材を備え、前記コーン部材は、当該集水管の内部に挿入される一端を有し、前記一端とは逆の端は、先端から前記一端の方向に拡がる形状であり、前記逆の端の最も拡がった箇所の径は、当該集水管の外径よりも大きい。
【0018】
本発明の第10の観点は、複数の集水管を接続する接続部材であって、筒の形状をしており、前記筒の内部に、水の通過を許すものの前記集水管が奥に進入することを防ぐ仕切部材と、前記集水管が容易に抜けることを防ぐ係止部材とを有する、接続部材である。
【0019】
本発明の第11の観点は、集水管に接続されるコーン部材であって、前記集水管の内部に挿入される一端を備え、前記一端とは逆の端は、先端から前記一端の方向に拡がる形状であり、前記逆の端の最も拡がった箇所の径は、当該集水管の外径よりも大きく、前記集水管に挿入される部分において複数の突起を備える、コーン部材である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の各観点によれば、集水管における酸化鉄細菌に由来するスライム状の生成物の形成を抑制し、管内の詰まりを防止することが可能となる。特に、酸化鉄細菌を抑制する添加剤を管材料に練り込むことにより、使用時に土砂や水で添加剤が剥がれることもなく抗菌効果を長く継続させることが可能となる。このため、集水管の寿命を延ばすことが可能となる。
【0021】
また、本発明の第2又は第4の観点によれば、高い酸化鉄細菌の抑制効果を得ることが可能となる。
【0022】
さらに、本発明の第3の観点によれば、大きな集水機能を有するものの添加剤の塗布が困難である、三次元的に複雑な内部構造を有する集水管においても抗菌効果を確実に備える集水管を生産することが可能となる。
【0023】
また、本発明の第5の観点によれば、従来よりもコストを抑えつつ集水管の強度を上げることが可能となる。
【0024】
また、従来、フィルタを集水管の外周に熱溶着させる際に比較的小さな面には熱溶着しようとしてもドラムロールの表面からフィルタが剥がれずに集水管に溶着できないことがあった。
【0025】
本発明の第6の観点によれば、そのような小さな面積に溶着する場合であってもドラムロールからフィルタが離れやすく、熱溶着によりフィルタを集水管に安定的に溶着することが容易となる。特に、本発明の第3の観点のような三次元的に複雑な内部構造を有する集水管の場合、パイプ本体の外周に表れるのは麺形状の樹脂である。そのため、小さな面積に溶着可能とする第6の観点の技術思想が特に有効となる。
【0026】
また、本発明の第8又は第10の観点によれば、表面が複雑な形態であるために直接加工することが困難な集水管において、複数の集水管を簡易にかつ強固に接続することが可能となる。
【0027】
また、本発明の第9又は第11の観点によれば、表面が複雑な形態であるために埋設の際に鞘管と共に集水管が引き出されかねないところ、コーン部材がストッパーとなる。そのため、本発明に係る集水管を無事に埋設することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本実施例に係る集水管1の概要を示す図である。
図2】複数の集水管1を接続する接続部材を例示する図である。
図3】本実施例に係る集水管生産方法の概要を示すフロー図である。
図4】フィルタ固定ステップを例示するフロー図である。
図5】本実施例に係る集水管生産方法において用いたドラムロールの概要を例示する図である。
図6】本実施例に係る集水管を埋設する工法に有用なコーン部材を例示する図である。
図7】本実施例に係る集水管を土中に埋設する工法の概要を示すフロー図である。
図8】設置から3か月後の集水管からの排水を比較した図であり、(a)従来の鋼管からの排水、(b)本実施例に係る集水管からの排水を示す図である。
図9】従来の鋼管からの排水に含まれる細菌等の光学顕微鏡観察像を示す図である。
図10】本実施例に係る集水管からの排水に含まれる細菌等の光学顕微鏡観察像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本発明の実施例は、以下に記載する内容に限定されるものではない。
【実施例0030】
本実施例に係る集水管1(本願請求項における「集水管」の一例)は、パイプ本体3と、フィルタ5(本願請求項における「フィルタ」の一例)とを備える。複数の集水管1同士を接続する場合は、接続部材9(本願請求項における「接続部材」の一例)をさらに備える。図1は、本実施例に係る集水管1の概要を示す図であり、(a)横から見た図と、(b)排水路11に垂直な方向から見た断面図と、(c)パイプ本体3及びフィルタ5の拡大図を示す。
【0031】
図1(a)を参照して、円筒形状のパイプ本体3の外周にフィルタ5が固定化されている。また、集水管1の端付近において、フィルタ5のさらに外周をスペース7を空けて、接続部材9が覆っている。
【0032】
図1(b)を参照して、内部から順にパイプ本体3、フィルタ5、スペース7、接続部材9の断面は同心円状になっている。本実施例では、集水管1のサイズとして、パイプ本体3の長さを2000mm、パイプ本体3が排水路11を形成する内径を30mm、パイプ本体3の厚みを10mm、フィルタ5の厚みを0.5mm、スペース7の幅を0.5mm、接続部材9の厚みを2mm、集水管1の外径を56mmとした。
【0033】
パイプ本体3は、樹脂を基材(本願請求項における「基材」の一例)とする。また、図1(c)に示すように、麺形状の樹脂が立体的にからみあって筒状の構造となって固まった形状をしている。樹脂繊維ポーラス構造で、硬い乾麺のような構造でもある。このため、孔が空いて点で集水する形状の集水管と比較して、面で集水することとなり大量に集水することが可能である。パイプ本体3の基材となる樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、又は、ABS樹脂を用いることができる。また、樹脂にはチアゾリン化合物が添加剤(本願請求項における「添加剤」の一例)として練り込まれている。
【0034】
本発明者らは、チアゾリン化合物が酸化鉄細菌に由来するスライム状の生成物や藻類の形成や増殖を抑制することを見出した。本実施例に係る集水管1は、この知見を活かし、集水管1の詰まりを抑制して集水管としての寿命を延ばすことを可能とするものである。
【0035】
フィルタ5は、細かい砂のパイプ本体3の内部への進入を防止する。フィルタ5は、例えば、不織布を素材とする。本実施例では、0.25mm以上の粒径の細砂の進入をカットできる不織布を用いた。これよりも細かい粒径のシルト・細砂は、パイプ本体3の内部に進入しても排水と共に排出されるため、詰まりの原因とはなりにくい。後述するように、フィルタ5は、熱溶着によりパイプ本体3に固定されている。
【0036】
スペース7は、フィルタ5が接続部材9の内壁に引っかかって外れることを防止するために設けられている。
【0037】
ここで、図1(c)に示すように、パイプ本体3が麺がからまったような形状の表面形態をしていることに伴い、複数の集水管1を接続する際に難点が生じる。表面が滑らかな形状の集水管の場合には筒同士が連結可能なように加工すればよいが、本実施例に係る集水管1は、そのような加工が困難だからである。
【0038】
そこで、図2を参照して、複数の集水管1同士を接続するための接続部材9について述べる。図2は、複数の集水管1を接続する接続部材9の一例としてソケット部材15を示す図であり、(a)ソケット部材の長辺断面図、(b)ソケット部材の短辺断面図を例示する図である。
【0039】
図2(a)及び図2(b)を参照して、ソケット部材15は、第1嵌合部23と、第2嵌合部25と、第1突起27と、第2突起29(本願請求項における「係止部材」の一例)と、仕切31(本願請求項における「仕切部材」の一例)とを有する。第1嵌合部23及び第2嵌合部25は、それぞれ異なる集水管1の一端が挿入されるソケットである。第1嵌合部23と第2嵌合部25とは、ソケット部材15の内部の半ば付近にある仕切31を境として連続している。
【0040】
第1突起27は、集水管1が第1嵌合部23に挿入された際に返しとなって容易に第1嵌合部23から抜けないように設けられている。具体的には、第1突起27は、仕切31に近づくにつれて筒の内壁から大きく突出するように設けられている。また、第2突起29は、第2嵌合部25に挿入された集水管1が容易に抜けないように、第1突起27と同様に返しとして機能する。
【0041】
仕切31は、パイプ本体3が奥に挿入され過ぎないようにストッパーとなる。図2(c)及び図2(d)に示すように、仕切31は、ソケット部材15の内壁に沿って数mm程度の幅でソケット部材15の内部にせり出す輪状の形状とした。仕切31をこのような形状とすることにより、排水の流れをできるだけ妨げないようにすることが容易となる。仕切31は、排水の流れをできるだけ妨げずにパイプ本体部3のストッパーの役割を果たすものであれば、例えば網のような形状等の他の形状であってもよい。
【0042】
本実施例において、ソケット部材15のサイズは以下の通りとした。ソケット部材15の軸方向の長さを120mm、第1嵌合部23及び第2嵌合部25の軸方向の長さをそれぞれ60mm、ソケット部材15の第1突起27又は第2突起29が無い箇所の内径を52mm、ソケット部材15の外径を56mm、ソケット部材15の厚みを2mmとした。また、第1突起27の軸方向の長さを6mm、コーン筒部19から最も突出した高さを3mm、軸方向から見た幅を3mmとした。
【0043】
ソケット部材15のサイズ及び形状を上記のようにしたため、複数の集水管1同士をソケット部材15で接続することにより、複雑な三次元の表面形態を有する集水管1同士を容易にかつ強固に連結することが可能となる。図1(c)に示すように、パイプ本体3の表面には、輪状になった樹脂が多数存在するため、第1突起27及び第2突起29が返しとして特に有効に機能する。
【0044】
続いて、集水管1の生産方法について述べる。図3は、本実施例に係る集水管生産方法の概要を示すフロー図である。
【0045】
図3を参照して、ステップS01(本願請求項における「添加ステップ」の一例)において、パイプ本体3の材料(本願請求項における「管材料」の一例)である樹脂に添加剤を添加する。ここで、添加剤は、樹脂の重量に対して3~5重量%を添加することが望ましい。続いて、ステップS02(本願請求項における「集水管形成ステップ」の一例)において、添加剤を添加した樹脂を麺の形状とし、さらに全体を筒状に成型してパイプ本体3を形成する。続いて、ステップS03(本願請求項における「フィルタ固定ステップ」の一例)において、パイプ本体3にフィルタ5を熱溶着により固定する(本願請求項における「熱溶着ステップ」の一例)。
【0046】
さらに、フィルタ5の生産及びパイプ本体3への固定について詳しく述べる。図4は、フィルタ5の生産からパイプ本体への固定までのプロセスを例示するフロー図である。図5は、本実施例に係る集水管生産方法において用いたドラムロールの概要を例示する図であり、(a)凸部の側面方向から見た図、(b)凸部の正面方向から見た図である。
【0047】
図4を参照して、ステップS11において、不織布とネットを重ね合わせて、少なくとも一部が加熱された複数のドラムロールで挟み込んで熱溶着を行う。続いて、ステップS12において、熱溶着してできたフィルタ5を適切なサイズに裁断する。さらに、図3にも示したステップS03において、集水管1と、フィルタ5を脱着可能であるように固定したドラムロールとを接近させ、熱溶着によりフィルタ5をドラムロールから集水管1の外周に移して固定する。
【0048】
ここで、不織布をネットのような細い構成部品でできている部材に熱溶着して安定に固定するのは一般に困難である。
【0049】
そこで、本実施例においては、不織布の熱溶着において特殊なドラムロールを用いた。図5を参照して、本実施例に係るドラムロール41(本願請求項における「ドラムロール」の一例)は、外周に沿って一定のピッチで設けられた円環形状の鍔部43を有する。また、ドラムロール41は、表面に複数の凸部45(本願請求項における「凸部」の一例)を有する。
【0050】
本実施例においては、ドラムロール41の超軸方向の長さを2000mm、長軸に垂直な断面の円の外径を400mm、鍔部43のピッチを250mmとした。
【0051】
上記のドラムロールを用いて熱溶着することにより、鍔部43や凸部45が押し付けながら溶着する。このため、不織布をネットや本実施例に係るパイプ本体3の表面のように溶着する面積が小さい場合にも、ドラムロールから不織布が離れやすく、溶着先であるパイプ本体3に安定に固定することが容易となる。
【0052】
なお、公知の技術ではないが、酸化鉄細菌を抑制する添加剤を集水管の内壁等に塗布することも考えられる。しかし、このような集水管を実現して使用する場合、水や土砂などにより塗布された添加剤が剥がれてスライム状の物体の生成を抑制する機能が低下することが懸念される。
【0053】
本実施例に係る集水管は、上記のように添加剤を管形成前に樹脂に添加して練り込むため、添加剤が水や土砂で容易に流れることがない。そのため、長期にわたって酸化鉄細菌に由来するスライム状の生成物の形成を抑制することが可能となる。
【0054】
続いて、本実施例に係る集水管1を土中に埋設する工法について述べる。図6は、本実施例に係る工法に有用なコーン部材51を例示する図であり、(a)コーン部材51の長辺断面図、(b)コーン部材51の短辺断面図を例示する図である。図7は、集水管1を土中に埋設する工法の概要を示すフロー図である。
【0055】
図6を参照して、まずコーン部材51の構造について説明する。コーン部材51は、コーン先端部53及びコーン筒部55とを有する。コーン先端部53は、集水管が土中に埋設される際に、先に埋設された鞘管の最奥部を貫通するまで挿入される。コーン筒部55は、一番奥まで挿入される集水管1のパイプ本体3の一端において、排水路11に挿入される。
【0056】
コーン先端部53は、先端が丸みを帯びた円錐様の形状であり、コーン筒部55に近づくにつれて断面の半径が大きくなる。コーン筒部55は、筒状の形状であり、外周に三角柱の形状のコーン突起57を複数有する。
【0057】
コーン突起57は、コーン筒部55が排水路11に挿入された際に返しとなって容易に排水路11から抜けないように設けられている。具体的には、コーン突起57は、コーン先端部53に近づくにつれて筒の中心軸からみて大きく突出するように設けられている。
【0058】
本実施例において、コーン部材51のサイズは以下の通りとした。コーン部材51は、軸方向の長さを110mm、そのうちコーン先端部53の長さを50mm、コーン筒部55の長さを60mmとした。また、コーン先端部53の最も広い部分の外径を50mm、コーン筒部55のコーン突起57が無い箇所の外径を28mm、コーン筒部55の内径を24mm、コーン筒部55の厚みを2mmとした。また、コーン突起57のサイズは、第1突起27及び第2突起29と同様とした。
【0059】
続いて、コーン部材51を用いて集水管1を埋設する工法について述べる。図7を参照して、ステップS21において、鞘管となる鋼管を土中に埋設する。このとき、鞘管は、二重管削孔や単管削孔等により設けられたスペースに埋設される。
【0060】
続いて、ステップS22において、鞘管の内部に、コーン部材51を先端に装着した集水管1を鞘管に挿入する。ここで、コーン部材51は、鞘管に挿入されている間はコーン先端部53が細くなっているが、鞘管の先端から10cmほど抜け出すと傘のように拡がる構造をしている。ステップS23において、鞘管が土中から引き抜かれる。このとき、従来であれば鞘管と共に内部の集水管も引き出されることになりかねない。しかし、コーン部材51のコーン先端部53が集水管1の外径よりも拡がった形状となるため、集水管1が引き出されることを防ぐストッパーの機能を果たすこととなる。
【0061】
こうして集水管1を土中に残しながら鞘管が全て引き出されれば、集水管1の布設が完了する。
【0062】
上記の工法を採用することにより、集水管1の内部に土砂を進入させずに集水管1を埋設することが可能となる。
【0063】
続いて、本実施例に係る集水管1と従来の鉄製の鋼管を用いた集水管とを比較した実験結果について述べる。図8は、設置から3か月後の集水管からの排水を比較した図であり、(a)従来の鋼管からの排水、(b)本実施例に係る集水管1からの排水を示す図である。図9は、従来の鋼管からの排水に含まれる細菌等の光学顕微鏡観察像を示す図である。図9(a)~(d)は無染色のまま、図9(e)~(h)はグラム染色を行って観察した像である。図10は、本実施例に係る集水管1からの排水に含まれる細菌等の光学顕微鏡観察像を示す図である。図10(a)~(d)は無染色のまま、図10(e)~(h)はグラム染色を行って観察した像である。
【0064】
図8に示すように、本実施例に係る集水管1からの排水の方が、従来の鋼管からの排水よりも澄んでいることが明らかに見てとれる。
【0065】
また、図9において示すように、従来の鋼管の排水からは、小さな白い矢印で示す細菌や、小さな黒い矢印で示す糸状細菌に加えて、大きな黒い矢印で示す酸化鉄細菌が観察された。
【0066】
他方、図10に示すように、本実施例の集水管1からの排水には、従来の鋼管
と同じく小さな白い矢印で示す細菌や、小さな黒い矢印で示す糸状細菌は確認されたものの、酸化鉄細菌の存在は確認されなかった。
【0067】
上記の実験結果より、本実施例に係る集水管を用いることで、従来の集水管と比べて酸化鉄細菌に由来するスライム状の物体の生成が抑制されることが分かる。
【0068】
なお、集水管の形状は、断面が丸や楕円の形状に限らず、断面が四角等の多角形やその他の形状であってもよい。断面が丸や楕円の集水管と比較して転がりにくいため、施工位置を安定させやすく、施工性が上がることになる。また、地中深くに埋めるものでなければ、断面が多角形の集水管であっても荷重に十分耐えられると考えられる。
【0069】
また、パイプ本体の外周に固定化された不織布をさらに強力に固定化するために、集水管は、不織布のさらに外周を固定する固定部材をさらに備えるものであってもよい。固定部材としては、例えば、図に示すように樹脂製の網状部材を用いることが考えられる。不織布を網状部材のような細い部材に溶着により固定する際にも、本実施例に係るドラムロールが有効に機能する。
【0070】
また、実施例中に集水管等のサイズや濃度等の数値や素材として望ましい内容を記載したが、本実施例と同様の発明の効果の全部又は一部を奏するものであれば他の数値や素材としてもよい。
【0071】
また、第1突起27、第2突起29、コーン突起57の形状は、返しとして機能する形状であれば、三角柱以外の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0072】
1; 集水管、3;パイプ本体、5;フィルタ、9;接続部材、11;排水路、15;ソケット部材、23;コーン嵌合部、25;パイプ嵌合部、27;第1突起、29;第2突起、31;仕切、41;ドラムロール、43;鍔部、45;凸部、51;コーン部材、53;コーン先端部、55;コーン筒部、57;コーン突起、
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図10