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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003955
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 45/60 20180101AFI20240109BHJP
   F21S 41/275 20180101ALI20240109BHJP
   F21S 41/29 20180101ALI20240109BHJP
   F21V 29/90 20150101ALI20240109BHJP
   F21V 23/06 20060101ALI20240109BHJP
   F21W 102/13 20180101ALN20240109BHJP
   F21Y 115/20 20160101ALN20240109BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20240109BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240109BHJP
【FI】
F21S45/60
F21S41/275
F21S41/29
F21V29/90
F21V23/06
F21W102:13
F21Y115:20
F21Y115:30
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103335
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077986
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【弁理士】
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 由希
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【弁理士】
【氏名又は名称】簾内 里子
(72)【発明者】
【氏名】山本 大悟
(72)【発明者】
【氏名】大野 和希
【テーマコード(参考)】
3K014
【Fターム(参考)】
3K014AA01
3K014HA03
(57)【要約】
【課題】融雪機構の電気的接点をランプカバーの内表面に備える車両用灯具の意匠性の低下を抑制する。
【解決手段】
前方が開口したランプボディと、透光性樹脂で構成され、前記ランプボディの開口部に取付けられて灯室を形成するランプカバーと、前記ランプカバーの内表面に敷設され、給電されることにより発熱する発熱部材と、前記ランプカバーの内表面で前記発熱部材の末端部に設けられ、所定の線幅を有する導電性ペーストで構成される電気的接点と、を備え、前記電気的接点は、ピッチが前記線幅以下の所定パターンで形成されている車両用灯具を提供する。電気的接点が隙間なく導電性ペーストで構成され、裏面側からみた電気的接点の見栄えが向上し、車両用灯具の意匠性の低下が抑制される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方が開口したランプボディと、
前記ランプボディの開口部に取付けられて灯室を形成するランプカバーと、
前記ランプカバーの内表面に敷設され、給電されることにより発熱する発熱部材と、
前記ランプカバーの内表面で前記発熱部材の末端部に設けられる電気的接点と、
を備え、
前記電気的接点は、所定の線幅を有する導電性ペーストで構成され、ピッチが前記線幅以下の所定パターンで形成されている、
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記発熱部材は前記導電性ペーストにより構成され、前記発熱部材と前記電気的接点とは、連続して一体的に構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記電気的接点と、前記発熱部材とは、複数の接点で接続されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記電気的接点と前記発熱部材とは、前記電気的接点から前記発熱部材へ向かって縮幅しながら接続される、
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記電気的接点の表面には、給電箇所となる金属板の受け部材が直接に貼付けられている、
ことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記電気的接点は、前記ランプカバーの側面の内表面に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、融雪機構の電気的接点をランプカバーの内表面に備える車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具のランプカバーに付着した雪は、適切な光の照射の妨げとなる。このため、給電により発熱する発熱部材をランプカバーの内側に敷設し、発熱部材の発する熱で融雪させる融雪機構を備えた車両用灯具がある(例えば特許文献1、特許文献2)。発熱部材への給電機構はランプボディ側に設けられ、ランプカバー内表面の発熱部材末端部には、給電機構より給電されるための電気的接点が設けられる。発熱部材は該給電機構より給電されることで発熱する。
【0003】
ここで、従来の電気的接点について、図11を用いて説明する。図11は発熱部材906の末端部に設けられる従来の電気的接点920を示す。図11(A)が受け部材923のない状態(導電性ペーストのみ)を示す。図11(B)が電気的接点920を灯室内から見た状態を示す。図11(C)は電気的接点920を灯室外から見た状態を示す。図11においては導電性ペーストを薄墨で着色して示す。導電性接着剤を濃い薄墨で着色して示す。
【0004】
図11に示すように、電気的接点920は、発熱部材906の端部に設けられ、導電性ペーストにより構成される。電気的接点920は、粘性のある液体状の導電性ペーストで所定領域をジグザグに塗布し、さらに導電性接着剤929を用いて、導電性ペーストの表面上に金属板である受け部材923が貼り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2021-195302号
【特許文献2】特開2020-205234号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ランプカバーは主として透明部材で構成されているため、上記構成では外部から電気的接点920の裏面が確認でき、見栄えが悪いという問題がある(図11(C)参照)。
【0007】
本発明は、これを鑑みてなされたものであり、外部からの見栄えを向上させた、ランプカバー内側に電気的接点を有する車両用灯具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するため、本開示のある態様の車両用灯具においては、前方が開口したランプボディと、前記ランプボディの開口部に取付けられて灯室を形成するランプカバーと、前記ランプカバーの内表面に敷設され、給電されることにより発熱する発熱部材と、前記ランプカバーの内表面で前記発熱部材の末端部に設けられる電気的接点と、を備え、前記電気的接点は、所定の線幅を有する導電性ペーストで構成され、ピッチが前記線幅以下の所定パターンで形成されているように構成した。
【0009】
この態様によれば、電気的接点は導電性ペーストで隙間なく形成されており、電気的接点を形成することによる外部からの見栄えの低下が抑制される。
【0010】
また、ある態様においては、前記発熱部材は前記導電性ペーストにより構成され、前記発熱部材と前記電気的接点とは、連続して一体的に構成されるものとした。
【0011】
また、ある態様においては、前記電気的接点と、前記発熱部材とは、複数の接点で接続されているように構成した。
【0012】
また、ある態様においては、前記電気的接点と前記発熱部材とは、前記電気的接点から前記発熱部材へ向かって縮幅しながら接続されるように構成した。
この態様によれば、電気的接点と発熱部材との間の箇所では断線が発生しやすいが、上記のように構成することで、断線の発生を抑制できる。
【0013】
また、ある態様によれば、前記電気的接点の表面には、給電箇所となる金属板の受け部材が直接に貼付けられているものとした。
【0014】
また、ある態様によれば、前記電気的接点は、前記ランプカバーの側面の内表面に設けられているものとした。
【発明の効果】
【0015】
以上の説明から明らかなように、外部からの見栄えを向上させた、ランプカバー内側に電気的接点を有する車両用灯具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施形態に係る車両用灯具の斜視図である。
図2】同車両用灯具の概略構成を説明する正面図である。
図3】ランプカバーを取外した状態(ランプカバーとランプボディを開いた状態)の車両用灯具である。内部構成要素は省略した。
図4図2のIV-IV線に沿った端面図である。
図5】給電部と電気的接点の斜視図である。
図6】電気的接点の拡大図である。
図7】電気的接点の変形例である。
図8】電気的接点の別の変形例である。
図9】第2の実施形態に係る車両用灯具の斜視図である。
図10】第2の実施形態に係る車両用灯具の分解斜視図である。ランプカバーを取外した状態を示す。
図11】従来の電気的接点を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の具体的な実施形態を、図面を参照しながら説明する。実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。また、以下の実施形態および変形例の説明において、同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。なお、各図においては、寸法や比率は実際の数値を反映したものではなく、構成を模式的に表している。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る車両用灯具1の斜視図である。図2は、車両用灯具1の概略構成を示す正面図である。
【0019】
図1および図2に示すように、車両用灯具1は前照灯であり、車両の前部の左右両側の角部に、左右一対としてそれぞれ装着される。
【0020】
車両用灯具1は、ランプハウジングとして、ランプボディ2と、ランプカバー4とを備える。ランプボディ2は、前方が開口した筐体であり、開口部の周縁には溶着用のフランジ部2aが設けられている。フランジ部2aにランプカバー4が溶着されることで、ランプカバー4がランプボディ2の開口部に取付けられ、内側に灯室Sが形成される。ランプカバー4は、いわゆるアウターカバーであり、例えばポリカーボネイトなどの透光性樹脂で形成された、ほぼ素通しのレンズである。
【0021】
画成された灯室S内には、ハイビーム用のランプユニットHi、およびロービーム用のランプユニットLoが収容されている。ハイビーム用のランプユニットHi/ロービーム用のランプユニットLoは、光源からの出射光を前方に照射して、車両前方にハイビーム配光/ロービーム配光を形成するよう構成された光学ユニットである。各ランプユニットHi,Loには、従来周知の構成、例えば反射型、プロジェクタ型などの灯具ユニットが用いられており、その種類は問わない。各ランプユニットLo,Hiに用いられる光源には、LED(Light Emitting Diode)、LD(Laser Diode)、EL(Electro Luminescence)素子などの発熱を伴わない発光素子が用いられる。
【0022】
ランプカバー4の内表面には、給電されることで熱線回路パターンが発熱する発熱部材6が敷設されている。発熱部材6は線状に構成され、所定の布線パターンで、ランプカバー4の内表面のほぼ全面に設けられている。発熱部材6の発生する熱により、ランプカバー4の外表面に付着した雪や氷が融かされ、また内外に生じた曇りが解消され、ランプユニットHi,Loの適切な配光が確保される。発熱部材6により、車両用灯具1の融雪機能が実装される。
【0023】
本実施形態においては、発熱部材6は、導電性ペーストにより構成される。例えば銀ペーストなどの粘性のある液体状の導電性ペーストで、所望の回路パターンでランプカバー4の内表面に布設される。発熱部材6への給電により、発熱部材6が抵抗加熱され、これによって発熱部材6が融雪可能な温度まで上昇する。発熱部材6は、所定の線幅Wで、細長く構成されるため、ランプカバー4の透過性減少は許容範囲内に抑えられる。導電性ペーストがタングステン、モリブデン、ニッケルクロムなど比較的導電率の低い部材を含むと好ましい。布線の一例としては、図1に示すように、線状の発熱部材6が左右方向にジグザグに蛇行しながらほぼ平行に連続するパターンである。発熱部材6の布線パターンはこれに限られず、ランプユニットいHi,Loの前方を主として、ランプカバー4の通光部に網羅的に敷設されればよい。
【0024】
発熱部材6の始点/終点となる末端部に、電気的接点20,20が形成されている。電気的接点20,20は発熱部材6の給電箇所あり、発熱部材6は電気的接点20を介して接続された車両用バッテリーから給電される。
【0025】
車両用灯具1は、電気的接点20と電気的に接続され、発熱部材6に給電するための機構である給電部30をランプボディ2の内側に備える。給電部30は車両バッテリーに接続されており、給電部30の接続端子が電気的接点20に当接して、電気的接点20,20に電気的に接続されることで、発熱部材6は車両バッテリーから給電される。
【0026】
(給電部)
図3は、ランプカバー4を取外した状態(ランプカバー4とランプボディ2を開いた状態)の車両用灯具1である。ランプユニットHi,Loなどの内部機構は省略している。図4は、図2のIV-IV線に沿った端面図である。図5は、給電部および電気的接点を分離して示した斜視図である。
【0027】
図3に示すように、電気的接点20,20は、ランプカバー4の内表面の下部中央付近に設けられている。給電部30は、電気的接点20,20の配置に対応したランプボディ2の開口部近傍の中央下部に設けられている。
【0028】
図4および図5に示すように、給電部30は、一対の端子31,31、ハウジング32、コネクタ34、およびこれらが装着される基板39を含んで構成される。
【0029】
長方形の薄板に構成される基板39は長手方向を左右方向合わせて配置され、表面39aをランプボディ2の開口部に向け、直接的または間接的にランプカバー4の内壁に取付けられている。
【0030】
端子31は、ポゴピンであり、バネなどの弾性部材(不図示)により付勢された突没可能な棒状端子である。全体に金メッキが施され、先端部は半球状となっている。一対の端子31,31はハウジング32を介して基板39に取付けられる。基板39の表面39aに装着されたハウジング32から、一対の端子31,31が前方のランプカバー4に向けて付勢されて突出している。端子31には、弾性変形可能に構成された端子が用いられ、ポゴピンに限られず、例えば薄い金属板をS字型に曲げて形成される板バネ端子や、バネ状のスプリング端子などが用いられる。弾性変形可能な方向をランプカバー4との対向方向(前後方向)に合わせて配置される。
【0031】
コネクタ34は、基板39の裏面側に実装される。コネクタ34は、端子31と電気的に結合しており、コネクタ34には、図示しない車両バッテリーに接続されたリード線端子が嵌合する。
【0032】
端子31,31は電気的接点20,20の対向位置に配置され、端子31,31は付勢されて電気的接点20,20に当接して、電気的接点20,20と電気的に接続される。
【0033】
電気的接点20は、端子31の受け部材として、端子31が当接する受け部材23を有する。受け部材23は金メッキが施された金属製の円形薄板であり、導電性接着剤(不図示)で貼り付けられる。
【0034】
車両用灯具1を組立の際には、まずランプカバー4とランプボディ2との溶着の前工程にて、給電部30がランプボディ2に取付けられる。同様に、溶着の前工程にて、発熱部材6および発熱部材6の末端部に電気的接点20が、ランプカバー4の内表面に設けられる。
【0035】
次に、ランプカバー4とランプボディ2との溶着工程として、ランプカバー4がランプボディ2の開口部に合わせられる。これにより、端子31は受け部材23に付勢された状態で当接して保持され、両者が電気的に結合される。この状態でランプカバー4はランプボディ2に溶着される。
【0036】
車両バッテリーから供給される電流は、コネクタ34に装着された図示しないリード線端子、端子31、電気的接点20と順に通って、発熱部材6に供給される。
【0037】
溶着工程にて、ランプボディ2とランプカバー4が対向配置されることで、端子31の受け部材23への付勢力により、両者が自然に電気的に結合されるため、電気的な結合が不要で組み付けが容易である。加えて、端子31が付勢された状態で受け部材23と電気的に結合されるため、電気的な結合が安定する。
【0038】
(電気的接点20)
電気的接点20について詳しく説明する。図6は、電気的接点20を示す。図6(A)は受け部材23が貼り付けられる前の状態を示す。図6(B)は受け部材23が貼り付けられた後の状態を示す。図7は、電気的接点20の変形例を示す。なお、図6および図7においては導電性ペーストを薄墨で着色して示した。
【0039】
電気的接点20は、所定の線幅Wの導電性ペーストをランプカバー4の内側表面に所定のパターンで布線することで形成される。本実施形態における発熱部材6は、導電性ペーストを所定の布線パターンでランプカバー4の内側(背面側)の表面に、敷設することで形成されている。さらに発熱部材6を構成する導電性ペーストと同じ導電性ペーストで、隙のない所定のパターンで発熱部材6の末端部の所定の小さな領域を、ピッチを詰めて隙なく敷設することで矩形状の電気的接点20は形成される。
【0040】
図6(A)で示すように、電気的接点20は、粘性のある液体状の導電性ペーストが所定の線幅Wを維持したまま、所定のピッチPで所定領域を所定のパターンで塗布することで、形成される。発熱部材6および電気的接点20を構成する導電性ペーストは、溶融温度まで熱せられた液体状にて塗布され、形成後は冷却および乾燥により固化する。導電性ペーストで覆われて電気的接点20が形成される領域をパッド領域21と称する。
【0041】
電気的接点20を設ける際には、粘性のある液体状の導電性ペーストを用いて、所定の線幅Wの導電性ペーストをパッド領域21の一方の縁部の一つの角部(図6では左下)から一方の方向(右方向)へ塗布し、端部(右辺)まで来ると、所定の間隔(ピッチP)で僅かに直角方向(上方向)に移動させ、そこから逆方向(左方向)へ同距離だけ塗布し、さらに逆端部(左辺)まで来ると、同間隔(ピッチP)で僅かに直角同方向(上方向)に移動させる。これをパッド領域21の他方の縁部(上辺)まで何度も繰り返す。折り返して塗布するピッチPを導電性ペーストの線幅W以下にすることで、パッド領域21を、導電性ペーストで隙間なく塗りつぶすことが出来る。
【0042】
図7(B)に示すように、パッド領域21は受け部材23より一回り大きく構成され、塗りつぶされたパッド領域21の中央に受け部材23が導電性接着剤(不図示)で貼付けられる。
【0043】
電気的接点20は、透光性のあるランプカバー4の内側に設けられるため、電気的接点20の裏面は透明なランプカバー4を介して外部から視認される。仮にパッド領域に導電性ペーストの塗布されていない隙間があると、外部からの見栄えが悪く、さらにその隙間から受け部材および受け部材の導電性接着剤が視認され、さらに見栄えを悪化させる(図11参照)。隙間なく導電性ペーストでパッド領域21を覆い、電気的接点20を形成することによって、車両用灯具1の見栄えを向上させた。またこのように線状の導電性ペーストにてパッド領域21を形成することで、隣の線状の導電性ペースト同士が隙なく連結されるため、電気的接点20の電気抵抗値を下げることができる。
【0044】
さらに、線幅Wの導電性ペーストにて電気的接点20を形成した後に、電気的接点20での塗布終点を始点として、そのまま連続して、同導電性ペーストでランプカバー4の裏面を所定の布線パターンで塗布することで、発熱部材6を形成する。ついで、発熱部材6の終点に、上記方法によって、もう一方の電気的接点20を形成する。これにより、発熱部材6の始点/終点に電気的接点20,20を連続して一体的に形成できる。このように、同じ導電性ペーストを用いて、所定の線幅Wで一筆書きにより、発熱部材6および電気的接点20を形成することで、導電性ペーストが冷却により固化した際の収縮により、電気的接点20と発熱部材6との間(図6(B)の接続部25)に断線が発生することを抑制した。加えて連続して電気的接点20,20および発熱部材6を形成でき、作業効率が向上する。
【0045】
所定の線幅Wの導電性ペーストで描いて隣り合う線状の導電性ペースト同士の間に重なり合う部分ができるため、所定幅ごとに盛り上がる段差部が形成される。加えて線幅Wの導電性ペーストの厚みは、線幅の端部と中央部とで僅かに差が生じる。これにより、導電性ペーストの形成工程や形態が確認される。
【0046】
(変形例)
図7は、電気的接点20の変形例を示す。図7(A)~図7(F)に示す電気的接点20A~20Fは、全て所定の線幅Wの導電性ペーストを線幅W以下のピッチPで連続して描くことで形成され、所定の形状に構成される。
【0047】
図7(A)に示すように、電気的接点20Aは、外形が円形であり(パッド領域が円形)、線幅Wの導電性ペーストを渦巻き状に、線幅W以下のピッチPで描くことで形成される。
【0048】
図7(B)に示すように、電気的接点20Bは、外形が略六角形であり(パッド領域が六角形)、線幅Wの導電性ペーストを、一辺の塗布距離を変更させながら、ピッチPで順に塗布することで形成される。具体的には、パッド領域の六角形に合わせ、最初の一辺の塗布から折り返した後に塗布距離を伸ばしてゆき、領域の半分を塗布したら、今度は塗布距離を減らしていくことで、外形が略六角形の電気的接点20Bを形成できる。各塗布の直線距離は変更してもピッチPは変更しないで塗布することで電気的接点20Bは形成される。
【0049】
このように、電気的接点の外形は、矩形に限られず、円形や多角形、自由形状などとすることができる。また、線幅Wの導電性ペーストを左右にジグザグに順に塗布するだけでなく、パッド領域の外縁から内側へ渦を巻くように塗布する、逆にパッド領域の中心から外側に渦を巻くように塗布して電気的接点を構成してもよい。
【0050】
図7(C)で示すように、電気的接点20Cは矩形状に形成され、電気的接点20Cの矩形の一辺から徐々に縮幅して線状の発熱部材6と接続されるように、略三角形状の接続部25Cが設けられている。接続部25Cも、線幅Wの導電性ペーストにより一筆書き状に形成され、電気的接点20C、接続部25C、発熱部材6が、全て連続的にかつ一体に構成されている。これは、前述のように電気的接点と発熱部材との間では断線の発生しやすいため、接続部を太くして接続を補強した。上記のように構成した接続部25Cを設けて、矩形の電気的接点20Cと線状の発熱部材6との間の硬化による収縮差を小さくして、電気的接点20Cと発熱部材6との間の断線の発生を抑制した。
【0051】
図7(D)に示すように、電気的接点20Dの接続部25Dも同様に構成されている。このように接続部が、全体が縮幅しながら電気的接点と発熱部材を接続させていればよく、その形状や大きさや塗布経路は問わない。
【0052】
図7(E)に示すように、接続部25Eによって、矩形状に形成された電気的接点20Eは、線状の発熱部材6と複数個所にて接続される。電気的接点と発熱部材の接続箇所が複数とすることで、たとえその中の一本が断線しても発熱部材への給電は維持されるように構成した。接続部25Eも、線幅Wの導電性ペーストにより一筆書き状に形成され、電気的接点20E、接続部25E、発熱部材6が、全て連続的にかつ一体に構成されており、接続が強固で断線の発生が抑制される。
【0053】
図7(F)に示すように、電気的接点20Fの接続部25Fも同様に構成されている。電気的接点と発熱部材とが複数個所で接続させていればよく、接続部の形態や形状は問わない。
【0054】
また、受け部材23は、図示しない導電性接着剤で貼付けられるとしたが、導電性接着剤を用いず、液体状の導電性ペーストが硬化する前に直接に貼付けられてもよい。本実施形態においては、電気的接点20は粘性のある液体状の導電性ペーストを塗布することにより形成されるため、液体から固化する導電性ペーストの特性を用いて、直接に受け部材23を貼付けることで、導電性接着剤を塗布して貼付け、さらに導電性接着剤を乾燥させる工程を省略できる。
【0055】
(変形例2)
図8は、電気的接点20の別の変形例を示す。図8(A)は変形例である電気的接点20Gの背面図(灯室内から見た図)である。図8(B)は電気的接点20Gの断面図である。図8(C)は電気的接点20Gの形成工程を示す。図8において、導電性ペーストは薄墨で着色して示し、枠部は濃い薄墨で着色して示した。
【0056】
図8(A)に示すように、電気的接点20Gは、矩形状に塗布された導電性ペーストで形成されるパッド部26Gと、パッド部26Gの側縁部に、全周に渡って所定幅を持って盛り上がって形成される枠部27Gを有する。枠部27Gはパッド部26Gと同じ導電性ペーストで構成されているが、パッド部26Gよりも高く構成されているため、所定の線幅Wをもつ枠部27Gの内周端部には、パッド部26Gとの段差として境界線28Gが視認される。受け部材23は、境界線28Gの内領域よりも小さい外形を有しており、枠部27Gの内側の概ね中央に配置される。
【0057】
図8(C)に示すように、電気的接点20Gの形成においては、まず線幅Wの導電性ペーストにて一筆書きでジグザグに矩形状に塗布することで、発熱部材6から連続して、矩形のパッド部26Gが形成される。次に、パッド部26Gにおける導電性ペーストの塗布終点(図8においては左下角部)から、そのまま連続して、パッド部26Gの縁部をなぞるように、パッド部26Gの上からさらに線幅Wの導電性ペーストで塗布することで、線幅Wの枠部27Gが形成される。最後に、導電性ペーストが硬化する前に受け部材23が枠部27Gの内側(境界線28Gの内側)の中央に配置される。これにより電気的接点20Gが形成される。
【0058】
電気的接点は、ある程度大きな面積を持って構成される方が、成形性が良く、かつ、目標位置へ受け部材を配置しやすい。しかし、電気的接点の外形が受け部材の外形より一定以上大きいと、今度は受け部材を配置する際に、設置位置であるパッド部の中央から公差以上に外れて配置される配置ズレが発生しやすい。これに対して、電気的接点20Gにおいては、目印として枠部27Gを設け、境界線28Gを目印として境界線28Gの内側に受け部材23を配置することで、受け部材23の配置ズレを抑制した。発熱部材6、パッド部26Gからさらに連続して、一筆書きでそのまま連続して枠部27Gを形成できるため、成形性もよい。
【0059】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態に係る車両用灯具101の斜視図である。図10は、車両用灯具101の分解斜視図である。ランプカバーを取外した状態を示す。
【0060】
図9に示すように、車両用灯具101は、ランプボディ102とランプカバー104を有する。ランプボディ102は、前方が開口した略直方体状の筐体であるが、一方の側面(車両用灯具101では左側面)が他方の側面よりも短く構成されている。このため、車両用灯具101は、前面とこれに連続して左側面前方の二面が開口している。ランプボディ102の開口部に設けられたフランジ部102aは、二面に亘る開口部に沿って屈曲しながら周設されている。
【0061】
図10に示すように、ランプカバー104は、前面104aと、側面104bと、側面フランジ部104cとを有する。ランプカバー104は、ランプボディ102の開口部を覆うように構成されており、前面104aがランプボディ102の前面開口部を閉塞し、側面102bがランプボディ102の側面開口部を閉塞し、ランプカバー104の側面フランジ部104cがランプボディ102の側面に設けられたフランジ部102aの一部に合うように構成される。ランプカバー104がランプボディ102の開口部に取付けられ、溶着されることで、内側に灯室Sが形成される。
【0062】
ランプカバー104の前面104aの内表面には、発熱部材6が敷設され、発熱部材6の端末部はランプカバー104の側面104bに位置している。発熱部材6の末端部には電気的接点120,120が、細長く縦に構成されるランプカバー104の側面104bの下方に、上下方向に並んで設けられている。電気的接点120は、電気的接点20とは、配置位置(ランプカバー104の側面)のみが異なる以外は同等の構成を有するため、詳しい説明は省略する。
【0063】
車両用灯具101は、電気的接点120と電気的に接続され、発熱部材6に給電するための機構として、給電部130をランプボディ102の内側に備える。給電部130は、一対の端子31,31、ハウジング32、コネクタ34、およびこれらが装着される基板39を含んで構成される。給電部130は給電部30と同等の構成であり、ランプボディ102への取付け方向と配置のみが異なる。
【0064】
即ち、給電部130は、電気的接点120,120の配置に対応して、ランプボディ102の側面開口部の下部に、基板39の長手方向を上下方向に合わせて配置されている。
【0065】
基板39は表面39aをランプボディ102の側面開口部に向けてランプボディ102の内壁に取付けられている。これにより一対の端子31,31は弾性変形可能方向をランプボディ102側面方向(左右方向)として、ランプボディ102の前方開口部に向けて配置される。
端子31,31は電気的接点120,120の対向位置に配置されるため、ランプカバー104がランプボディ102の開口部に取付けられると、端子31,31は付勢されて電気的接点120,120に当接して、電気的接点120,120と電気的に接続される。車両バッテリーから供給される電流は、コネクタ34に装着された図示しないリード線端子、端子31、電気的接点120と順に通って、発熱部材6に供給される。
【0066】
車両用灯具101の側方に電気的接点120を設けることで、外部、特に正面からの電気的接点120の視認性が低下し、電気的接点120が設けられることによる車両用灯具101の意匠性の低下が抑制される。
【0067】
なお本開示の構成は、前照灯に限らず、ランプカバーとランプボディを有するならば、寒冷地仕様として融雪機能を備えた標識灯や、リアランプなどにも好適である。
【0068】
以上、本発明の好ましい実施形態について述べたが、上記の実施形態は本発明の一例であり、これらを当業者の知識に基づいて組合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
1 :車両用灯具
2 :ランプボディ
4 :ランプカバー
6 :発熱部材
20 :電気的接点
23 :受け部材
39a :表面
101 :車両用灯具
102 :ランプボディ
P :ピッチ
S :灯室
W :線幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11