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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039553
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】ロボットハンド
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/12 20060101AFI20240314BHJP
   B25J 15/10 20060101ALI20240314BHJP
   F15B 15/10 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
B25J15/12
B25J15/10
F15B15/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144196
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 俊吾
(72)【発明者】
【氏名】美濃島 春樹
(72)【発明者】
【氏名】大野 信吾
(72)【発明者】
【氏名】吉泉 聡
(72)【発明者】
【氏名】間淵 賢
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 毅
【テーマコード(参考)】
3C707
3H081
【Fターム(参考)】
3C707DS01
3C707ES06
3C707ES10
3C707ET01
3C707EV12
3C707EV13
3H081AA18
3H081BB03
3H081CC29
3H081DD14
3H081DD16
(57)【要約】
【課題】複数の流体圧アクチュエータ同士の位置関係を容易に変化させて把持性能を向上させる。
【解決手段】ロボットハンド10は、筒内の内圧上昇により筒周の一方側が筒軸方向に収縮して湾曲する筒状の根元アクチュエータ20と、根元アクチュエータ20の筒軸方向に沿って配置されて根元アクチュエータ20を支持し、根元アクチュエータ20の湾曲変形に追従して伸縮する伸縮部65Aを有するフレーム部材60と、筒軸と交差する方向に延出するように、フレーム部材60に一端が固定され他端が自由端となるように根元アクチュエータ20の延出方向に離間して複数取り付けられ、筒内の内圧上昇により筒周の一方側が筒軸方向に収縮して湾曲する筒状の指アクチュエータ40と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒内の内圧上昇に応じて筒壁の一方側が筒軸方向に収縮して湾曲する筒状の根元アクチュエータと、
前記根元アクチュエータの筒軸方向に沿って配置されて前記根元アクチュエータを支持し、前記根元アクチュエータの湾曲変形に追従して伸縮する伸縮部を有し、前記根元アクチュエータの湾曲変形に追従して湾曲変形するフレーム部材と、
前記筒軸方向と交差する方向に延出するように、前記フレーム部材に一端が固定され他端が自由端となるように前記根元アクチュエータの延出方向に離間して複数取り付けられ、筒内の内圧上昇に応じて筒周の一方側が筒軸方向に収縮して湾曲する筒状の指アクチュエータと、
を備えた、ロボットハンド。
【請求項2】
前記フレーム部材は、複数の前記指アクチュエータの取付位置に各々設けられた支持節部材を有し、
前記伸縮部は、隣り合う前記支持節部材同士を連結する、
請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記伸縮部は、前記根元アクチュエータの湾曲変形に追従して湾曲する板バネにより構成されている、請求項2に記載のロボットハンド。
【請求項4】
前記根元アクチュエータは、一端が前記フレーム部材に固定され、他端が自由端である、請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項5】
前記フレーム部材は一体成形されている、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のロボットハンド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットハンド、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体圧アクチュエータとして、ゴムチューブと、その外面を覆うスリーブ(高張力繊維を編み込んだもの)とを有する、マッキベン型のものが知られている。このようなマッキベン型の流体圧アクチュエータは、ゴムチューブ及びスリーブの軸方向に沿った長さを変化させることができる。また、ゴムチューブの軸方向における一端側から他端側に亘って、周方向の一部に拘束部材を設けることにより、流体圧アクチュエータの拘束部材が設けられていない側を収縮させ、湾曲変形させる技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-88999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような流体圧アクチュエータを複数用いて、湾曲度を調整しつつ物を把持することが可能である。また、複数の流体圧アクチュエータ同士を相対移動させて、様々な対象物の把持や移動に対応するための工夫が求められる。
【0005】
本開示は、上記事実に鑑みて、複数の指アクチュエータ同士の位置関係を容易に変化させて性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1の態様のロボットハンドは、筒内の内圧上昇に応じて筒壁の一方側が筒軸方向に収縮して湾曲する筒状の根元アクチュエータと、前記根元アクチュエータの筒軸方向に沿って配置されて前記根元アクチュエータを支持し、前記根元アクチュエータの湾曲変形に追従して伸縮する伸縮部を有し、前記根元アクチュエータの湾曲変形に追従して湾曲変形するフレーム部材と、前記筒軸と交差する方向に延出するように、前記フレーム部材に一端が固定され他端が自由端となるように前記根元アクチュエータの延出方向に離間して複数取り付けられ、筒内の内圧上昇に応じて筒周の一方側が筒軸方向に収縮して湾曲する筒状の指アクチュエータと、を備えている。
【0007】
第1の態様のロボットハンドは、根元アクチュエータ、フレーム部材、及び指アクチュエータを備えている。根元アクチュエータ及び指アクチュエータは、筒状とされており、筒内の内圧上昇に応じて筒周の一方側が筒軸方向に収縮して湾曲する。フレーム部材は、根元アクチュエータの筒軸方向に沿って配置されて根元アクチュエータを支持し、根元アクチュエータの湾曲変形に追従して伸縮する伸縮部を有し、根元アクチュエータの湾曲変形に追従して湾曲変形する。また、フレーム部材には、複数の指アクチュエータが、根元アクチュエータの筒軸と交差する方向に延出するように、一端が固定され他端が自由端となるように根元アクチュエータの延出方向に離間して複数取り付けられている。
【0008】
根元アクチュエータは、内圧上昇に応じて、フレーム部材に支持され湾曲する。フレーム部材は、伸縮部が伸長又は収縮により、根元アクチュエータの湾曲変形に追従する。これにより、複数の指アクチュエータの一端は、互いの位置関係を変化させることができる。したがって、対象物の位置や形状等に応じて、複数の指アクチュエータの位置関係を変えて、把持や移動などの性能を向上させることができる。
【0009】
第2の態様のロボットハンドは、第1の態様のロボットハンドにおいて、前記フレーム部材は、複数の前記指アクチュエータの取付位置に各々設けられた支持節部材を有し、前記伸縮部は、隣り合う前記支持節部材同士を連結する。
【0010】
第2の態様のロボットハンドでは、支持節部材に指アクチュエータを配置し、この支持節部材同士を伸縮部で連結するので、支持位置と伸縮部の位置を筒軸方向にずらすことができ、バランス良く根元アクチュエータを作動させることができる。
【0011】
第3の態様のロボットハンドは、第1の態様または第2の態様のロボットハンドにおいて、前記伸縮部は、前記根元アクチュエータの湾曲変形に追従して湾曲する板バネにより構成されている。
【0012】
第3の態様のロボットハンドでは、板バネにより、簡易に伸縮部を構成することができる。
【0013】
第4の態様のロボットハンドは、第1~第3のいずれか1の態様のロボットハンドにおいて、前記根元アクチュエータは、一端が前記フレーム部材に固定され、他端が自由端である。
【0014】
第4の態様のロボットハンドでは、他端が自由端となっているので、根元アクチュエータの湾曲変形時にフレーム部材との筒軸方向の相対移動が許容され、根元アクチュエータをスムーズに湾曲変形させることができる。
【0015】
第5の態様のロボットハンドは、第1~第4のいずれか1の態様のロボットハンドにおいて、前記フレーム部材は一体成形されている。
【0016】
第5の態様のロボットハンドによれば、フレーム部材を一体的に簡易に形成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、複数の指アクチュエータ同士の位置関係を容易に変化させて性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係るロボットハンドを湾曲内側から見た斜視図である。
図2】第1実施形態に係るロボットハンドを湾曲内側から見た斜視図である。
図3】根元アクチュエータの一部分解斜視図である。
図4】根元アクチュエータの断面図である。
図5】指アクチュエータの平面図である。
図6】第1実施形態に係るロボットハンドの動作状態を示す上面図である。
図7】フレーム部材の一部である支持節部材を湾曲内側から見た斜視図である。
図8】フレーム部材の一部である支持節部材を湾曲外側から見た斜視図である。
図9】第1実施形態に係るロボットハンド(動作後)を湾曲内側から見た斜視図である。
図10】第2実施形態に係るロボットハンド(動作前)を湾曲内側から見た斜視図である。
図11】第2実施形態に係るロボットハンド(動作前)の上面図である。
図12】第2実施形態に係るロボットハンド(動作後)を湾曲内側から見た斜視図である。
図13】第2実施形態に係るロボットハンド(動作後)の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本開示の技術を実現する実施形態を詳細に説明する。
【0020】
なお、作用、機能が同じ働きを担う構成要素及び処理には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明を適宜省略する場合がある。また、本開示は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0021】
<第1実施形態>
図1及び図2は、本開示の第1実施形態に係るロボットハンド10の斜視図である。ロボットハンド10の一端側(図1における図面左側)は、図示しないロボットアームの先端に取り付けられている。本開示に係るロボットハンド10は、根元アクチュエータ20と、根元アクチュエータ20を支持するフレーム部材60と、複数の指アクチュエータ40(本実施形態では5本)とを備える。フレーム部材60は、根元アクチュエータ20の作動により湾曲する。湾曲したフレーム部材60の曲げ方向内側に向かって、指アクチュエータ40がさらに湾曲し、図示しない対称物に力を作用させて、把持したり、押したり、移動させたりすることが可能とされている。
【0022】
<根元アクチュエータ20>
図3に示されるように、根元アクチュエータ20は、アクチュエータ本体部22、封止部材30A、30B(図4参照)を備えている。根元アクチュエータ20は、全体として筒状とされている。
【0023】
図4にも示されるように、アクチュエータ本体部22は、チューブ24、スリーブ26、及び拘束部材28を有している。チューブ24は、弾性変形による伸縮可能な円筒状であり、内部の流体の圧力変化によって膨張及び収縮する。チューブ24に圧縮空気が供給されず、チューブ24が直線状のときの軸方向を「軸方向S」とする。後述するように、根元アクチュエータ20が湾曲したときの、チューブ24の軸を「湾曲軸SR」と称する。チューブ24は、ブチルゴムなどの弾性材料によって構成することができる。チューブ24へ供給する流体としては、空気を用いることができ、この場合には、根元アクチュエータ20は空気式アクチュエータとなる。なお、根元アクチュエータ20を油圧駆動とする場合には、耐油性が高いNBR(ニトリルゴム)、または水素化NBR 、クロロプレンゴム、及びエピクロロヒドリンゴムからなる群より選択される少なくとも一種とすることが好ましい。
【0024】
スリーブ26は、チューブ24の外周を覆う円筒状とされている。スリーブ26は、所定方向に配向された繊維コードを編み込んだ伸縮性を有する構造体であり、配向されたコードが軸方向Sに対して所定の角度θで交差されている。スリーブ26は、このような形状を有することによって、角度θを変えるパンタグラフのように変形し、チューブ24の収縮及び膨張を規制しつつこの収縮及び膨張に追従する。
【0025】
スリーブ26を構成するコードとしては、芳香族ポリアミド(アラミド繊維)やポリエチレンテレフタラート(PET)の繊維コードを用いることが好ましい。但し、このような種類の繊維コードに限定されるものではなく、例えば、PBO繊維(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)などの他の高強度繊維のコードでもよい。
【0026】
拘束部材28は、チューブ24とスリーブ26との間に設けられている。拘束部材28は、長尺板状とされ、長手方向がチューブ24の軸方向Sに沿った方向に配置され、チューブ24の外周の一部を覆い、チューブ24の一端から他端に渡って配置されている。
【0027】
拘束部材28は、加圧により膨張/収縮のない材料で形成されており、端部同士が近づく方向に撓み変形可能とされている。拘束部材28としては、いわゆる、板バネ(leaf spring)を用いることができる。板バネの寸法は、根元アクチュエータ20のサイズや要求される把持力などに応じて決定される。また、板バネの材料についても特に限定されないが、典型的には、ステンレス鋼などの金属など、撓み変形し易く、圧縮に強い材料であればよい。他に、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の薄板などによって形成されてもよい。
【0028】
封止部材30Aは、封止コネクタ32 、係止リング34、及びかしめ部材36を有している。
【0029】
封止コネクタ32は、一体成形された蓋部32A及び挿入部32Bを有している。蓋部32Aは、チューブ24の外径よりも大径とされ、蓋部32Aの一端側の中央から、挿入部32Bが軸方向Sに延出形成されている。蓋部32Aの挿入部32Bと反対側には、後述するフレーム部材60へ固定するための固定孔32Cが形成されている。挿入部32Bは、所謂タケノコ形状とされ、スリーブ26の内側のチューブ24の一端側に挿入される。封止部材30Aとしては、ステンレス鋼などの金属を好適に用い得るが、このような金属に限定されず、硬質プラスチック材料などを用いてもよい。
【0030】
図4に示されるように、封止コネクタ32は、流路Rを有している。流路Rは、挿入部32Bの径方向中央部で軸方向Sに延出形成されると共に、蓋部32Aの側面の接続部Cと連通されている。接続部Cには、空気供給ホース(不図示)が接続され、圧縮空気が供給される。
【0031】
係止リング34は、リング状とされ、挿入部32Bとの間にスリーブ26を挟み込むように、スリーブ26の外側に配置され、スリーブ26を封止コネクタ32に係止する。スリーブ26は、係止リング34を介して外周へ折り返される。係止リング34としては、金属、硬質プラスチックや、繊維 、ゴムなどの材料を用いることができる。
【0032】
かしめ部材36は、アクチュエータ本体部22の外周で挿入部32Bが挿入された部分を覆うように配置され、アクチュエータ本体部22を封止コネクタ32にかしめる。これにより、アクチュエータ本体部22は、封止コネクタ32に固定される。かしめ部材36としては、アルミニウム合金、真鍮、及び鉄などの金属を用いることができる。
【0033】
封止部材30Bは、封止部材30Aと同様の、封止コネクタ32 、係止リング34、及びかしめ部材36を有している。但し、封止コネクタ32には、固定孔32C、接続部C及び流路Rは形成されていない。
【0034】
<根元アクチュエータの動作>
根元アクチュエータ20は、一端側の封止部材30Aが後述する固定部67に固定され、他端側の封止部材30Bが自由端となるようにして使用される。
【0035】
空気供給ホースを介して接続部Cから圧縮空気を流入させると、根元アクチュエータ20内の圧力が上昇する。内圧上昇により、チューブ24が弾性変形して膨張し、スリーブ26は角度θが大きくなるようにパンタグラフのように変形し、アクチュエータ本体部22の長さが収縮する方向に力が作用する。このとき、アクチュエータ本体部22の拘束部材28が配置された外周側壁は収縮が規制されているため、アクチュエータ本体部22は、軸方向Sからみて拘束部材28が配置されていない側の外周壁(以下「湾曲内側壁22A」という)が収縮する。これにより、拘束部材28が撓み変形し、図4のニ点鎖線で示されるように、アクチュエータ本体部22の全体が湾曲する。根元アクチュエータ20は、筒内の内圧上昇に応じて筒側壁の一方側である湾曲内側壁22Aが軸方向Sに収縮して湾曲する。
【0036】
一方、空気供給ホースから供給する空気の圧力を弱めると、根元アクチュエータ20内から空気が流出し、内圧が低下する。内圧低下に応じて湾曲内側壁22Aの湾曲度が小さくなり、大気圧に戻ることで、アクチュエータ本体部22の全体が直線状に戻る。
【0037】
<指アクチュエータ>
図5に示されるように、5本の指アクチュエータ40は、根元アクチュエータ20と同様の構成を有し、アクチュエータ本体部22H、封止部材30AH、30BHを備えている。アクチュエータ本体部22に対応するアクチュエータ本体部22Hは、チューブ24H、スリーブ26H、及び拘束部材28Hを有している。以下、いずれの構成部材も、根元アクチュエータ20の各構成の符号の末尾にHを付したもので示される。
【0038】
なお、封止コネクタ32Hには、後述するフレーム部材60へ指アクチュエータ40を固定するための一対の固定孔32CHが形成されている。固定孔32CHは、一対の孔で形成されている。また、封止部材30BHは、先端がR形状とされている。
【0039】
<フレーム部材>
図1図2に示されるように、フレーム部材60は、複数の支持節部材61(本実施形態では10個)を備え、支持節部材61が軸方向Sに連結されて、根元アクチュエータ20に沿うように構成されている。根元アクチュエータ20及びフレーム部材60の筒軸方向は略一致するため、フレーム部材60の軸方向についても軸方向Sと称する。フレーム部材60の軸方向Sの一端側には、固定部67が設けられ、他端側には、先端支持台68が設けられている。フレーム部材60は、樹脂材料により一体的に形成されている。樹脂材料は、特に限定されないが、ポリアミド樹脂を好適に用いることができる。また、樹脂材料の場合の他の例として、ABS、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン等を用いることができる。さらに、樹脂以外の材料、金属材料で形成してもよく、軽さと強度を考慮して、アルミニウムとマグネシウムの合金を好適に用いることができる。樹脂材料、金属材料のいずれの場合にも、3Dプリンタ等で一体成形することができることが好ましい。
【0040】
図7図8に示されるように、個々の支持節部材61は一体的に形成され、環状部62、支持部63、ガイド部64、及びヒンジ部材65を備えている。
【0041】
環状部62は、筒状とされ、筒内に根元アクチュエータ20を挿通可能とされている。以下、フレーム部材60に挿通された根元アクチュエータ20の湾曲内側を「湾曲内側RI」といい、湾曲外側を「湾曲外側RO」という。また、支持節部材61の指アクチュエータ30が取り付けられる側を「下側」と称し、その反対側を「上側」と称する。また、個々の支持節部材61の筒軸方向を「軸方向S0」と称する。軸方向S0は、根元アクチュエータ20が非湾曲状(直線状)の時には、軸方向Sと略一致している。また、湾曲内側RI及び湾曲外側ROに沿った方向を、図中に矢印Xで示している。
【0042】
環状部62の軸方向S0の中間部には、中間開口62Aが形成されている。中間開口62Aは、上側に開口している。環状部62の軸方向S0の両外端は、後述するヒンジ部材65から湾曲内側に向かって軸方向S0の長さが短くなるように、上側から見て斜めに切り欠かれている。環状部62の中間開口62Aと反対側(下側)には、下面が平坦状の底部62Bが形成されており、底部62Bには、取付孔62Cが形成されている。
【0043】
環状部62の湾曲外側ROには、ヒンジ部材65が一体的に設けられている。ヒンジ部材65は、伸縮部65A及び連結部65Bを有している。連結部65Bは、環状部62の湾曲外側RO壁から面一で連続するように下側へ延出されており、湾曲内側RIの面が平坦状とされ、湾曲外側ROの面が筒軸方向の中央の厚みが厚くなるR状とされている。
【0044】
伸縮部65Aは、軸方向S0と直交する方向が軸方向(以下「軸方向Z」と称する)となる半筒形状とされた板バネで形成されており、弾性変形により、周方向の一端と他端が離れる方向に伸張可能とされている。言い換えると、伸縮部65Aは、その軸方向Zから見た弧の曲率が小さくなるように(湾曲度合いが小さくなるように)弾性変形可能とされている。伸縮部65Aは、隣り合う連結部65B同士の端部に固定され、隣り合う支持節部材61の連結部65B同士を連結している。これにより、ヒンジ部材65は、伸縮部65Aを中心にして、隣り合う連結部65B同士の、湾曲内側RI側で成す角度が変化するように相対移動可能となっている。
【0045】
環状部62の底部62Bの下側には、支持部63が設けられている。支持部63は板状とされており、取付孔62Cに対応する位置に一対の取付孔63Aが形成されている。また、支持部63の筒軸方向の一端側は、下側から見て、湾曲外側ROが軸方向S0に長くなるように斜めに切り欠かれ、隣り合う支持節部材61の連結部65Bと重複するように軸方向S0に延出されている。当該重複部分は、隣り合う支持節部材61の環状部42の底部62Bに当接され、底部62Bを下側から支持している。また、支持部63の軸方向S0の一端側は、伸縮部65Aの連結部65Bからの湾曲内側RIへの突出分、連結部65Bと離隔して配置されており、支持部63の筒軸方向の一端側の湾曲外側ROには、係合部63Bが形成されている。係合部63Bは、支持部63の軸方向S0の一端側の湾曲外側ROを切り欠いた凹状とされており、伸縮部65Aが係合されている。以下、支持部63の軸方向S0の一端側を「支持凸端63C」と称し、他端側を「支持他端63D」と称する。
【0046】
環状部62の上部内側には、ガイド部64が設けられている。ガイド部64は、ピン状とされ、長手方向が軸方向Sに沿って配置されている。ガイド部64は、一方側に隣り合う支持節部材61の環状部62と軸方向S0に重複するように延出されており、隣り合う支持節部材61の上壁内側に当接し、支持節部材61同士の相対移動の時にも、上壁内側に当接されつつ移動する。すなわち、隣り合う支持節部材61は、一方側の支持節部材61が他方側の支持節部材61のガイド部64により下側から支持されている。
【0047】
複数の支持節部材61は、軸方向Sに連続して並び、伸縮部65Aにより互いに連結されてフレーム部材60を構成している。図1及び図2に示されるように、フレーム部材60の一端側には、固定部67が設けられている。固定部67は、一端側の支持節部材61の筒軸方向の開口を塞ぐように配置されている。固定部67には、固定用のピン67Aが根元アクチュエータ20の固定孔32Cへ挿入され、根元アクチュエータ20の基端部側がフレーム部材60に固定される。
【0048】
フレーム部材60の他端側には、先端支持台68が設けられている。先端支持台68は、他端に配置された支持節部材61の底部62Bから延出された台座部68A、及び、支持節部材61の伸縮部65Aと連結された台座連結部68Bを有している。
【0049】
根元アクチュエータ20は、フレーム部材60の環状部62に挿入され、基端側(封止部材30A側)は一端側の固定部67に固定されている。根元アクチュエータ20の先端側(封止部材30B側)は、先端支持台68の台座部68A上に載置されている。根元アクチュエータ20の一端側は自由端とされており、根元アクチュエータ20はフレーム部材60内で軸方向Sに移動可能とされている。
【0050】
指アクチュエータ40は、フレーム部材60の支持部63に基端側(封止部材30AH側)が取り付けられている。指アクチュエータ40の封止部材30AHには、一対の固定孔32CHが形成されており、底部62Bの取付孔62C及び支持部63に形成された一対の取付孔63Aを介して、固定ねじ(不図示)を用いて固定されている。指アクチュエータ40の先端(封止部材30BH側)は自由端とされている。指アクチュエータ40の拘束部材28Hは、湾曲外側ROに配置されている。
【0051】
5本の指アクチュエータ40の各々の接続部CHには、空気供給ホース(不図示)が接続されている。空気供給ホースを介して接続部CHから圧縮空気を流入させると、指アクチュエータ40内の圧力が上昇する。そして、指アクチュエータ40は、内圧上昇により、湾曲内側RIが内側となるように湾曲変形する。
【0052】
次に、本実施形態のロボットハンド10の動作について説明する。
【0053】
対象物OBを把持する際には、ロボットハンド10を対象物OBの近傍に移動させ、空気供給ホースを介して、根元アクチュエータ20へ圧縮空気を供給する。これにより、根元アクチュエータ20は、内圧に応じて湾曲内側RIが内側になるように湾曲変形する。
【0054】
当該湾曲変形によりフレーム部材60は、各々の環状部62の湾曲内側RIに力が作用し、図6及び図9に示されるように、ヒンジ部材65は、伸縮部65Aを中心にして、隣り合う連結部65B同士の角度が小さくなるように変形する。このとき、伸縮部65Aは、弾性変形により、周方向の一端と他端が離れる方向に伸張する。また、隣り合う支持部63の、支持凸端63Cと支持他端63Dの間の角度が小さくなると共に、支持凸端63Cの上面が隣り合う支持部63の底部62Bを支持しつつ相対移動する。さらに、ガイド部64は、隣り合う支持節部材61の上壁内側に当接されつつ相対移動する。このようにして、フレーム部材60は、根元アクチュエータ20の湾曲変形に追従して湾曲変形する。
【0055】
フレーム部材60の湾曲変形により、5本の指アクチュエータ40の基端部の相対位置は変化し、一直線上(軸方向S)に並ぶ状態から湾曲線上(湾曲軸SR)に並ぶ状態となる。この状態で、空気供給ホースを介して、指アクチュエータ40へ圧縮空気を供給する。これにより、把持用元アクチュエータ40は、内圧に応じて湾曲内側RIが内側になるように湾曲変形する。
【0056】
空気供給ホースを介して供給する圧縮空気の圧力を調整し、図9に示すように、複数の指アクチュエータ40の先端部の間に対象物OBを挟み、当該湾曲に伴う力により、対象物12を把持することができる。
【0057】
本実施形態のロボットハンド10によれば、複数の指アクチュエータ40の一端の相対位置を、根元アクチュエータ20を用いて容易に移動させることができる。これにより、対象物の位置や形状等に応じて、性能を向上させることができる。
【0058】
また、本実施形態では、支持節部材61に指アクチュエータ40を配置し、この支持節部材61同士を伸縮部65Aで連結するので、支持位置と伸縮部65Aの位置を軸方向Sにずらすことができ、バランス良く根元アクチュエータ20を作動させることができる。
【0059】
また、本実施形態では、伸縮部65Aを板バネで形成しているので、簡易に伸縮部655Aを構成することができる。また、樹脂材料を用いることにより、伸縮部65Aを支持節部材61の一部として、容易に製造することができる。さらに、板バネの復元力により、根元アクチュエータ20へ湾曲が解消される方向へ力を作用させるので、把持等の動作を終えて圧縮空気を流出させた後、根元アクチュエータ20を元の直線状態にスムーズに戻すことができる。
【0060】
また、本実施形態では、根元アクチュエータ20の先端を自由端としているので、根元アクチュエータ20の湾曲変形時にフレーム部材60との間で、軸方向Sの相対移動が許容され、根元アクチュエータ20をスムーズに湾曲変形させることができる。
【0061】
また、本実施形態では、フレーム部材60における個々の支持節部材61が、支持部63の支持凸端63C及びガイド部64を有し、フレーム部材60の湾曲変形時に、隣接する支持節部材61を支持しつつ相対移動する。したがって、フレーム部材60の湾曲変形時における、ねじれ(先端と基端が同一平面から反対側へ離れるような状態)を抑制することができる。
【0062】
なお、本実施形態では、一例として、ロボットハンド10で、1個の対象物OBを把持する例を説明したが、ロボットハンド10は、複数の対象物OBを寄せ集めたり、移動させたりすることにも好適に用いることができる。
【0063】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態のロボットハンド70について説明する。本実施形態では、第1実施形態と同様の部分については同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0064】
図10及び図11に示されるように、本実施形態のロボットハンド70は、根元アクチュエータ20、5本の指アクチュエータ40、及びフレーム部材72を備えている。根元アクチュエータ20及び5本の指アクチュエータ40については、第1実施形態と同一のものを用いることができる。
【0065】
フレーム部材72は、複数の支持節部材73(本実施形態では5個)を備え、支持節部材73が板バネ伸縮部材75により軸方向Sに連結されて、根元アクチュエータ20に沿うようにフレーム部材72が構成されている。フレーム部材72の軸方向Sの一端側には、固定部77が設けられている。フレーム部材72は、板バネ伸縮部材75も含めて、樹脂材料により一体的に形成されている。樹脂材料は、特に限定されないが、ポリアミド樹脂を好適に用いることができる。また、樹脂材料の場合の他の例として、ABS、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン等を用いることができる。さらに、樹脂以外の材料、金属材料で形成してもよく、軽さと強度を考慮して、アルミニウムとマグネシウムの合金を好適に用いることができる。樹脂材料、金属材料のいずれの場合にも、3Dプリンタ等で一体成形することができることが好ましい。
【0066】
支持節部材73には、根元アクチュエータ20を挿通する挿通孔74が形成されている。支持節部材73の湾曲外側ROには連結部76が形成され、湾曲内側RIには薄肉部79が形成され、挿通孔74の下側には、取付部78が形成されている。
【0067】
連結部76は、挿通孔74の湾曲外側RO側に設けられ、軸方向Sの両端が板バネ伸縮部材75と連結されている。薄肉部79は、連結部76よりも軸方向Sの長さが短く、湾曲外側RO側から湾曲内側RIへ向けて先細りとなるようになっている。板バネ伸縮部材75は、初期状態で板面が湾曲外側ROへ突出する弧状とされており、弧の両端が離れるように弾性変形可能とされている。
【0068】
指アクチュエータ40は、フレーム部材72の取付部78に基端側(封止部材30AH側)が取り付けられている。指アクチュエータ40の先端(封止部材30BH側)は自由端とされている。指アクチュエータ40の拘束部材28Hは、湾曲外側ROに配置されている。
【0069】
根元アクチュエータ20の基端側(封止部材30A側)は、挿通孔74に挿入され、固定部77に治具77Aにより固定されている。根元アクチュエータ20の先端側(封止部材30B側)は、最も先端側に配置された支持節部材73の挿通孔74に挿通されており、自由端とされている。根元アクチュエータ20はフレーム部材72内で軸方向Sに移動可能とされている。
【0070】
次に、本実施形態のロボットハンド70の動作について説明する。
【0071】
把持対象物を把持する際には、ロボットハンド70を把持対象物の近傍に移動させ、空気供給ホースを介して、根元アクチュエータ20へ圧縮空気を供給する。これにより、根元アクチュエータ20は、内圧に応じて湾曲内側RIが内側になるように湾曲変形する。
【0072】
当該湾曲変形によりフレーム部材72は、薄肉部79に力が作用し、支持節部材73が湾曲に追従する位置に移動するように板バネ伸縮部材75が弾性変形により伸張する。これにより、フレーム部材72は、根元アクチュエータ20の湾曲変形に追従して湾曲変形する(図12図13参照)。
【0073】
フレーム部材72の湾曲変形により、5本の指アクチュエータ40の基端部の相対位置は変化し、一直線上に並ぶ状態から湾曲線上に並ぶ状態となる。この状態で、空気供給ホースを介して、指アクチュエータ40へ圧縮空気を供給する。これにより、把持用元アクチュエータ40は、内圧に応じて湾曲内側RIが内側になるように湾曲変形する。
【0074】
空気供給ホースを介して供給する圧縮空気の圧力を調整し、複数の指アクチュエータ40の先端部の間に把持対象物を挟み、当該湾曲に伴う力により、把持対象物を把持することができる。
【0075】
本実施形態のロボットハンド70でも、複数の指アクチュエータ40の一端の相対位置を、根元アクチュエータ20を用いて容易に移動させることができる。これにより、把持対象物の位置や形状等に応じて、把持性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0076】
10、70 ロボットハンド
20 根元アクチュエータ
40 指アクチュエータ
60、72 フレーム部材
61 支持節部材
65A 伸縮部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13