(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039555
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】ロボットハンド
(51)【国際特許分類】
B25J 15/12 20060101AFI20240314BHJP
F15B 15/10 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
B25J15/12
F15B15/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144198
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 俊吾
(72)【発明者】
【氏名】美濃島 春樹
(72)【発明者】
【氏名】大野 信吾
【テーマコード(参考)】
3C707
3H081
【Fターム(参考)】
3C707ES06
3C707EU13
3C707EV12
3C707HS11
3C707LV22
3H081AA18
3H081BB03
3H081DD13
3H081DD15
(57)【要約】
【課題】複数の指アクチュエータ同士の位置関係を容易に変化させて把持や移動などの性能を向上させる。
【解決手段】ロボットハンド10は、筒軸方向Sに収縮する根元アクチュエータ20と、筒軸方向Sに延び、根元アクチュエータ20が固定されるフレーム部材60と、フレーム部材60に一端が固定され他端が自由端となるように根元アクチュエータ20の筒軸方向に離間して複数取り付けられ、筒内の内圧上昇に応じて矢印X方向の一方側に湾曲する筒状の指アクチュエータ40と、を備え、フレーム部材60は、一端固定部70及び他端固定部72の筒軸方向Sに沿った間隔が保たれる中立線Cと、根元アクチュエータ20の筒軸とがオフセット状態で並び、根元アクチュエータ20の収縮に伴って、根元アクチュエータ20の筒軸を挟んで中立線Cと反対側を内側とする曲げ方向に向かって湾曲変形する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒内の内圧上昇に応じて筒軸方向に収縮する根元アクチュエータと、
前記筒軸方向に延び、前記根元アクチュエータの一端が固定される一端固定部及び前記根元アクチュエータの他端が固定される他端固定部を有するフレーム部材と、
前記フレーム部材に一端が固定され他端が自由端となるように前記根元アクチュエータの筒軸方向に離間して複数取り付けられ、筒内の内圧上昇に応じて筒側壁の一方側が前記筒軸方向と交差する交差方向に収縮して湾曲する筒状の指アクチュエータと、
を備え、
前記フレーム部材は、前記一端固定部及び前記他端固定部の前記筒軸方向に沿った間隔が保たれる中立線と、前記根元アクチュエータの筒軸とがオフセット状態で並び、前記根元アクチュエータの収縮に伴って、前記根元アクチュエータの筒軸を挟んで前記中立線と反対側を内側とする曲げ方向に向かって湾曲変形する、
ロボットハンド。
【請求項2】
前記フレーム部材は、前記筒軸方向に並んで連設されるとともに回動可能に接合された複数の節部材を有し、
前記指アクチュエータは、前記節部材に取り付けられている、
請求項1に記載の、ロボットハンド。
【請求項3】
前記フレーム部材は、前記筒軸方向に延びる板状部と、前記板状部から前記曲げ方向に向かって前記筒軸方向に間隔を有しながら突出する複数の突出部とを有し、
前記根元アクチュエータは、前記複数の突出部を亘って一端固定部及び他端固定部に接続されている、
請求項1に記載の、ロボットハンド。
【請求項4】
前記曲げ方向に向かって湾曲変形した前記フレーム部材を、前記筒軸方向に延びる形状に復元させるサポート部材をさらに備える、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の、ロボットハンド。
【請求項5】
前記サポート部材は、前記曲げ方向に向かって湾曲変形した前記フレーム部材を、前記曲げ方向とは反対側に向かって変形させる付勢部材である、
請求項4に記載のロボットハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体圧アクチュエータとして、ゴムチューブと、その外面を覆うスリーブ(高張力繊維を編み込んだもの)とを有する、マッキベン型のものが知られている。このようなマッキベン型の流体圧アクチュエータは、ゴムチューブ及びスリーブの軸方向に沿った長さを変化させることができる。また、ゴムチューブの軸方向における一端側から他端側に亘って、周方向の一部に拘束部材を設けることにより、流体圧アクチュエータの拘束部材が設けられていない側を収縮させ、湾曲変形させる技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような流体圧アクチュエータを複数用いて、湾曲度を調整しつつ物を把持することが可能である。また、複数の流体圧アクチュエータ同士を相対移動させて、様々な対象物の把持等に対応するための工夫が求められる。
【0005】
本開示は、上記事実に鑑みて、複数の指アクチュエータ同士の位置関係を容易に変化させて把持や移動などの性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一態様のロボットハンドは、筒内の内圧上昇に応じて筒軸方向に収縮する根元アクチュエータと、前記筒軸方向に延び、前記根元アクチュエータの一端が固定される一端固定部及び前記根元アクチュエータの他端が固定される他端固定部を有するフレーム部材と、前記フレーム部材に一端が固定され他端が自由端となるように前記根元アクチュエータの筒軸方向に離間して複数取り付けられ、筒内の内圧上昇に応じて筒側壁の一方側が前記筒軸方向と交差する交差方向に収縮して湾曲する筒状の指アクチュエータと、を備え、前記フレーム部材は、前記一端固定部及び前記他端固定部の間隔が保たれる中立線と、前記根元アクチュエータの筒軸とがオフセット状態で並び、前記根元アクチュエータの筒軸を挟んで前記中立線と反対側を内側とする曲げ方向に向かって湾曲変形する。
【0007】
このロボットハンドによれば、根元アクチュエータの一端及び他端が筒軸方向に延びるフレーム部材の一端側及び他端側に接続され、根元アクチュエータの変形に伴って、根元アクチュエータを挟んで中立線と反対側を内側とする曲げ方向に変形する。
【0008】
これにより、フレーム部材に設けられた複数の指アクチュエータ同士の位置関係を可変としたロボットハンドが提供される。
【0009】
第二態様のロボットハンドは、第一態様に記載のロボットハンドにおいて、前記フレーム部材は、前記筒軸方向に並んで連設されるとともに回動可能に接合された複数の節部材を有し、前記指アクチュエータは、前記節部材に取り付けられている。
【0010】
このロボットハンドによれば、フレーム部材が、筒軸方向に並んで連設されるとともに筒軸方向に隣り合う節部材同士を回動可能に接合され、根元アクチュエータの変形に伴って、曲げ方向に変形する。
【0011】
これにより、フレーム部材の節部材の個数を増減させることが可能となるため、フレーム部材が節部材により構成されていない場合と比してロボットハンドの長さを増減させることができる。
【0012】
第三態様のロボットハンドは、第一態様に記載のロボットハンドにおいて、前記フレーム部材は、前記筒軸方向に延びる板状部と、前記板状部から前記曲げ方向に向かって突出する複数の突出部とを有し、前記根元アクチュエータは、前記複数の突出部を亘って一端固定部及び他端固定部に接続されている。
【0013】
このロボットハンドによれば、根元アクチュエータが筒軸方向に延びる板状部から突出する複数の突出部に亘って接続され、根元アクチュエータの変形に伴って、曲げ方向に変形する。これにより、フレーム部材が筒軸方向に延びる板状部を有していない場合と比して簡易な構成でロボットハンドを製造することができる。
【0014】
第四態様のロボットハンドは、第一態様から第三態様のいずれか一態様に記載のロボットハンドにおいて、前記曲げ方向に向かって湾曲変形した前記フレーム部材を、前記筒軸方向に復元させるサポート部材をさらに備える。
【0015】
このロボットハンドによれば、湾曲変形したフレーム部材を、筒軸方向に延びる形状に復元させるサポート部材を備えており、フレーム部材が根元アクチュエータの収縮に伴って湾曲変形した場合に、サポート部材によって筒軸方向に延びる形状に復元される。
【0016】
これにより、ロボットハンドがサポート部材を有していない場合と比して、ロボットハンドのフレーム部材を速やかに筒軸方向に延びる形状に復元させることができる。
【0017】
第五態様のロボットハンドは、第四態様に記載のロボットハンドにおいて、前記サポート部材は、前記曲げ方向に向かって湾曲変形した前記フレーム部材を、前記曲げ方向とは反対側に向かって変形させる付勢部材である。
【0018】
このロボットハンドによれば、曲げ方向に向かって変形したフレーム部材を、曲げ方向とは反対側に向かって変形させる付勢部材を備えている。
【0019】
これにより、付勢部材を有していない場合と比して、曲げ方向に向かって変形したフレーム部材を速やかに反対側に向かって変形させるロボットハンドが提供される。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、複数の指アクチュエータ同士の位置関係を容易に変化させて把持や移動などの性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本開示の第一実施形態に係るロボットハンドの斜視図である。
【
図5】本開示の第一実施形態に係るフレーム部材の斜視図である。
【
図6】本開示の第一実施形態に係るフレーム部材の正面図である。
【
図7】本開示の第一実施形態に係るフレーム部材の平面図である。
【
図8】本開示の第一実施形態に係る中間節部材の平面図である。
【
図9】本開示の第一実施形態に係る中間節部材の正面図である。
【
図10】本開示の第一実施形態に係る一端節部材の平面図である。
【
図11】本開示の第一実施形態に係る一端節部材の正面図である。
【
図12】本開示の第一実施形態に係るフレーム部材が根元湾曲状態となった斜視図である。
【
図13】本開示の第一実施形態に係るロボットハンドの初期状態及び根元湾曲状態の平面図である。
【
図14】本開示の第一実施形態に係るロボットハンドの把持状態の平面図である。
【
図15】本開示の第一実施形態に係るロボットハンドの把持状態の斜視図である。
【
図16】本開示のロボットハンドを用いて対象物を寄せ集める様子を示す平面図である。
【
図17】本開示の第二実施形態に係るフレーム部材の初期状態の平面図である。
【
図18】本開示の第三実施形態に係るフレーム部材の初期状態の正面図である。
【
図19】本開示の第三実施形態に係るフレーム部材の初期状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において、同一又は等価な構成要素及び部品には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。また、各図面における矢印X方向、矢印Y方向及び矢印Z方向は、それぞれ互いに直交する方向である。一例として、矢印X方向及び矢印Y方向は、水平方向を示し、矢印Z方向は、鉛直方向を示す。
【0023】
[第一実施形態]
図1は、本開示の第一実施形態に係るロボットハンド10の斜視図である。ロボットハンド10の一端側(
図1における図面左側)は、図示しないロボットアームの先端に取り付けられている。本開示に係るロボットハンド10は、根元アクチュエータ20と、根元アクチュエータ20を支持するフレーム部材60と、複数の指アクチュエータ40(本実施形態では5本)とを備える。フレーム部材60は、根元アクチュエータ20の作動により湾曲する。湾曲したフレーム部材60の曲げ方向内側に向かって、指アクチュエータ40がさらに湾曲し、図示しない対称物に力を作用させて、把持したり、押したり、移動させたりすることが可能とされている。
【0024】
図1から
図14を適宜参照しながら、ロボットハンド10の具体的な構成を説明する。
【0025】
<構成>
(根元アクチュエータ20)
図2および
図3に、根元アクチュエータ20を示す。本開示の根元アクチュエータ20は、アクチュエータ本体部22、第一封止部材30A、第二封止部材30Bを備えている、所謂マッキベン型の流体圧アクチュエータである。根元アクチュエータ20は、全体として筒状とされている。
【0026】
アクチュエータ本体部22は、チューブ24、及びスリーブ26を有している。チューブ24は、弾性変形による伸縮可能な円筒状であり、内部の流体の圧力変化によって膨張及び収縮する。チューブ24の延びる方向を以後「筒軸方向S」とする。すなわち、本開示の第一実施形態における各図面の矢印Y方向は、根元アクチュエータ20の筒軸方向Sと一致する。また、チューブ24における中心軸を以後、「筒軸の中心軸CL」とする。チューブ24は、ブチルゴムなどの弾性材料によって構成することができる。チューブ24へ供給する流体としては、空気を用いることができ、この場合には、根元アクチュエータ20は空気式アクチュエータとなる。なお、根元アクチュエータ20を油圧駆動とする場合には、耐油性が高いNBR(ニトリルゴム)、または水素化NBR、クロロプレンゴム、及びエピクロロヒドリンゴムからなる群より選択される少なくとも一種とすることが好ましい。
【0027】
スリーブ26は、チューブ24の外周を覆う円筒状とされている。スリーブ26は、所定方向に配向された繊維コードを編み込んだ伸縮性を有する構造体であり、配向されたコードが筒軸方向Sに対して所定の角度θで交差されている。スリーブ26は、このような形状を有することによって、角度θを変えるパンタグラフ変形し、チューブ24の収縮及び膨張を規制しつつこの収縮及び膨張に追従する。
【0028】
スリーブ26を構成するコードとしては、芳香族ポリアミド(アラミド繊維)やポリエチレンテレフタラート(PET)の繊維コードを用いることが好ましい。但し、このような種類の繊維コードに限定されるものではなく、例えば、PBO繊維(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)などの他の高強度繊維のコードでもよい。
【0029】
第一封止部材30Aは、封止コネクタ32、係止リング34、及び圧着部材36を有している。
【0030】
封止コネクタ32は、一体成形された蓋部32A及び挿入部32Bを有している。蓋部32Aは、チューブ24の外径よりも大径とされた六角柱状とされ、蓋部32Aの一端側の中央から、挿入部32Bが筒軸方向Sに延出形成されている。挿入部32Bは、所謂タケノコ形状とされ、スリーブ26の内側のチューブ24の一端側に挿入される。蓋部32Aの挿入部32Bと反対側には、筒軸方向Sの一方側(
図3における図面右側)に開口する取付部33が形成されている。取付部33には、筒軸方向Sと直交する方向に開口する取付ネジ33Aが形成されている。封止部材30としては、ステンレス鋼などの金属を好適に用い得るが、このような金属に限定されず、硬質プラスチック材料などを用いてもよい。
【0031】
図3に示されるように、封止コネクタ32は、流路Rを有している。流路Rは、挿入部32Bの径方向中央部に筒軸方向Sに延出形成されると共に、蓋部32Aの側面の接続孔Hと連通されている。接続孔Hには、空気供給ホース(不図示)が接続され、圧縮空気が供給される。
【0032】
係止リング34は、リング状とされ、挿入部32Bとの間にスリーブ26を挟み込むように、スリーブ26の外側に配置され、スリーブ26を封止コネクタ32に係止する。スリーブ26は、係止リング34を介して外周へ折り返される。係止リング34としては、金属、硬質プラスチックや、繊維、ゴムなどの材料を用いることができる。
【0033】
圧着部材36は、アクチュエータ本体部22の外周で挿入部32Bが挿入された部分を覆うように配置され、アクチュエータ本体部22を封止コネクタ32にかしめる。これにより、アクチュエータ本体部22は、封止コネクタ32に固定される。圧着部材36としては、アルミニウム合金、真鍮、及び鉄などの金属を用いることができる。
【0034】
第二封止部材30Bは、第一封止部材30Aと比べて、封止コネクタ32に流路Rを有していないことを除いて、第一封止部材30Aと同一形状とされており、挿入部32Bが、スリーブ26の内側のチューブ24の他端側に挿入される。
【0035】
根元アクチュエータ20単体の動作(後述するフレーム部材60なしの動作)としては、空気供給ホースを介して接続孔Hから圧縮空気を流入させると、アクチュエータ本体部22内の圧力が上昇する。内圧上昇により、チューブ24が弾性変形して膨張し、スリーブ26は角度θが大きくなるようにパンタグラフ変形し、アクチュエータ本体部22の長さL0が収縮する方向に力が作用する。これによりアクチュエータ本体部22が収縮するため、
図3における二点鎖線で示されるように、アクチュエータ本体部22の全体が長さL1となるように収縮する。
【0036】
なお、根元アクチュエータ20は、アクチュエータ本体部22内の空気圧を調整されることにより、収縮変形する量を適宜調整することが可能とされている。言い換えれば、根元アクチュエータ20におけるアクチュエータ本体部22の全体の長さは、L0からL1までの間で可変とされている。
【0037】
(指アクチュエータ40)
指アクチュエータ40は、
図4に示されるように、アクチュエータ本体部22、第一封止部材30A、第二封止部材30Bを備えている、所謂マッキベン型の流体圧アクチュエータである。また、
図4にも示されるように、指アクチュエータ40のアクチュエータ本体部22は、チューブ24、スリーブ26、及び拘束部材28を有している。すなわち、指アクチュエータ40は、根元アクチュエータ20に拘束部材28をさらに備えたものといえる。
【0038】
拘束部材28は、チューブ24とスリーブ26との間に設けられている。拘束部材28は、長尺板状とされ、長手方向がチューブ24の筒軸方向Sに沿った方向に配置され、チューブ24の外周の一部を覆い、チューブ24の一端から他端に渡って配置されている。
【0039】
拘束部材28は、加圧により膨張/収縮のない材料で形成されており、端部同士が近づく方向に撓み変形可能とされている。拘束部材28としては、いわゆる、板バネ(leaf spring)を用いることができる。板バネの寸法は、根元アクチュエータ20のサイズや要求される把持力などに応じて決定される。また、板バネの材料についても特に限定されないが、典型的には、ステンレス鋼などの金属など、撓み変形し易く、圧縮に強い材料であればよい。他に、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の薄板などによって形成されてもよい。
【0040】
なお、指アクチュエータ40の第一封止部材30Aは、一端側(
図4における図面上側)に取付部43を有している。取付部43には、矢印X方向(
図4における図面左右方向)に向かって貫通する取付穴43Aが開けられている。
【0041】
指アクチュエータ40におけるその他の構成及び形状は、上述の根元アクチュエータ20と同様である。
【0042】
指アクチュエータ40では、空気供給ホースを介して接続孔Hから圧縮空気を流入させると、アクチュエータ本体内の圧力が上昇する。内圧上昇により、チューブ24が弾性変形して膨張し、スリーブ26は角度θが大きくなるようにパンタグラフ変形し、アクチュエータ本体部22の長さL2が収縮する方向に力が作用する。このとき、指アクチュエータ40では、アクチュエータ本体部22の拘束部材28が配置された外周側壁は収縮が規制されているため、アクチュエータ本体部22は、矢印Z方向からみて拘束部材28が配置されていない矢印X方向の一方側(
図4における左側)の筒側壁が収縮する。これにより、拘束部材28が撓み変形し、
図4における二点鎖線で示されるように、アクチュエータ本体部22の全体が湾曲する。
【0043】
なお、指アクチュエータ40は、アクチュエータの本体内の空気圧を調整されることにより、湾曲変形する量を適宜調整することが可能とされている。
【0044】
指アクチュエータ40は、
図1に示されるように、後述するフレーム部材60の節部材62における指アクチュエータ固定部80に取付部43が固定され、鉛直方向である矢印Z方向に延びて配置される(
図12及び
図13も参照)。言い換えれば、矢印X方向は、矢印Z方向と交差する曲げ方向である。また、矢印Z方向は、指アクチュエータ40の筒軸方向とも一致する。
【0045】
なお、根元アクチュエータ20及び指アクチュエータ40がフレーム部材60に取り付けられる様子については、後述する。
【0046】
また、指アクチュエータ40は、
図1に示されるように、複数設けられている。指アクチュエータ40が設けられる個数は、ロボットハンド10によって適宜設定されるが、一例として本実施形態では5つである。
【0047】
(フレーム部材60)
図5から
図7は、本開示の第一実施形態に係るロボットハンド10のフレーム部材60を示す図である。また、フレーム部材60は、節部材62の一例である、複数の中間節部材62Bと、一端側節部材62Aと、他端側節部材62Cとが矢印Y方向に並んで連節されている。
図8及び
図9に中間節部材62Bを、
図10及び
図11に一端側節部材62Aを示す。
【0048】
中間節部材62Bは、
図8及び
図9に示されるように、矢印Y方向の両側(
図8及び
図9における図面左右側)に一端側ヒンジ部64A及び他端側ヒンジ部64Bを有し、矢印X方向の一方側(
図8における図面下側)に向かって先細りする部材である。また、中間節部材62Bは、矢印Z方向の他方側(
図9における下側)に形成された指アクチュエータ固定部80と、矢印Y方向に貫通する貫通孔63を有している。
【0049】
一端側ヒンジ部64A及び他端側ヒンジ部64Bは、
図6及び
図7に示されるように、複数の中間節部材62Bが矢印Y方向に並んでいる状態で、隣接する中間節部材62B同士を、軸部材66を中心として互いに回動可能とする部分である。一端側ヒンジ部64Aは、他端側ヒンジ部64Bよりも矢印Z方向外側(中間節部材62Bの上下方向の両端)に形成されている。本実施形態では一例として、一端側ヒンジ部64Aは、矢印Z方向に貫通する孔である軸部材貫通孔66Aを有する。軸部材貫通孔66Aは、軸部材66と締まりばめとされ、軸部材66が脱着しないように保持する。また、他端側ヒンジ部64Bは、軸部材貫通孔66Aよりも小径とされた、矢印Z方向に貫通する孔である軸部材貫通孔66Bを有する。軸部材貫通孔66Bは、軸部材66と隙間ばめとされており、軸部材66を回動可能に保持する。また、
図6及び
図7に示されるように、一端側ヒンジ部64Aと他端側ヒンジ部64Bとが矢印Z方向に重ねられた状態では、軸部材貫通孔66A及び軸部材貫通孔66Bは、互いの中心が矢印Z方向に重なる。これにより、矢印Z方向の外側、すなわち鉛直方向上側及び下側からそれぞれ軸部材66が軸部材貫通孔66A、66Bに挿入され、矢印Y方向に並んだ隣り合う中間節部材62B同士は、軸部材66を中心に回動可能に接合される。なお、軸部材66は、
図5に示されるように段付きの円柱形状とされたピンが適用される。また、中間節部材62Bは、所望されるフレーム部材60の長さ又は指アクチュエータ40の個数に応じて、その個数を適宜増減可能とされていることが望ましい。
【0050】
指アクチュエータ固定部80は、節部材62の矢印Z方向の他方側において後述する指アクチュエータ40を固定する部分である。この指アクチュエータ固定部80は、指アクチュエータ40を固定可能とされていればどのような形状でもよい。本実施形態では一例として矢印X方向に貫通する穴が形成されており、指アクチュエータ40の取付穴43Aにネジなどの締結具が挿入され、指アクチュエータ固定部80に取付部43が接合される。なお、指アクチュエータ40の他端(矢印Z方向の他方側)は、自由端とされている。また、指アクチュエータ40は、それぞれ離間して中間節部材62Bに取付けられる。
【0051】
なお、貫通孔63の中心線CHは、
図8に示されるように、一端側ヒンジ部64A及び他端側ヒンジ部64Bよりも矢印X方向の一方側とされている。また、貫通孔63の直径は、根元アクチュエータ20の作動時における直径よりも大きく、根元アクチュエータ20の膨張を妨げない形状とされている(
図13も参照)。
【0052】
一端側節部材62Aは、
図10及び
図11に示される様に、上面視で矢印Y方向の他端側(
図10及び
図11における図面右側)に他端側ヒンジ部64Bを有し、矢印X方向の一方側に窓部74を有する部材である。また、一端側節部材62Aは、矢印Y方向に貫通する一端固定部70を有する部材である。
【0053】
一端側節部材62Aの他端側ヒンジ部64Bは、中間節部材62Bの他端側ヒンジ部64Bと同様の形状とされている。すなわち、
図6及び
図7に示されるように、一端側節部材62Aの他端側ヒンジ部64Bと、中間節部材62Bの一端側ヒンジ部64Aとは、軸部材66を中心に回動可能に接合される。また、窓部74は、後述する根元アクチュエータ20が一端固定部70に取り付けられた状態で、接続孔Hを露出させる。
【0054】
一端固定部70は、
図10及び
図11に示されるように、後述する根元アクチュエータ20の一端が挿入される一端側挿入孔70Bと、一端側節部材62Aの矢印Y方向の一端側を貫通する、一端側貫通孔70Aとされている。
【0055】
一端側挿入孔70Bの中心線CHは、中間節部材62Bと同様に中心が他端側ヒンジ部64Bよりも矢印X方向の一方側とされている。また、一端側挿入孔70Bの直径は、後述する根元アクチュエータ20の直径よりも大きく、後述するように根元アクチュエータ20の膨張を妨げない形状とされている。
【0056】
一端側貫通孔70Aは、中間節部材62Bと同様に一端側挿入孔70Bと矢印Y方向に並んで形成され、中心線CHが他端側ヒンジ部64Bよりも矢印X方向の一方側とされている。また、一端側貫通孔70Aは、後述する根元アクチュエータ20の取付部33よりも直径が小さく、根元アクチュエータ20の取付ネジ35Aと螺合することによって、根元アクチュエータ20の一端を固定する部材である固定具85が挿入される部分である。
【0057】
他端側節部材62Cは、上面視で矢印Y方向の一端側(
図10及び
図11における図面左側)に一端側ヒンジ部64Aを有し、他端側節部材62Cは、矢印Y方向に貫通する他端側固定部を有する部材である。すなわち、他端側節部材62Cは、一例として、一端側節部材62Aを矢印Y方向に面対称形状とであると共に、他端側ヒンジ部64Bに代えて一端側ヒンジ部64Aを有する部材とされている。
【0058】
なお、
図7に示されるように、本開示の第一実施形態におけるフレーム部材60において、中間節部材62B、一端側節部材62A及び他端側節部材62Cは、上面視で矢印Y方向に並んでいる。本実施形態においては、中間節部材62B、一端側節部材62A及び他端側節部材62Cが矢印Y方向に並んでいる状態を、以後「初期状態」と称する。
【0059】
また、
図7に示されるように、Z方向から見て、初期状態において節部材62の一端側ヒンジ部64A及び他端側ヒンジ部64Bが矢印Y方向に並ぶことによって得られる仮想的な線を、以後「中立線C」と称する。言い換えれば、中立線Cとは、節部材62同士が互いに回動した状態において、一端側節部材62Aと他端側節部材62Cとの矢印Y方向の長さが変化しない線ともいえる。
【0060】
そして、本実施形態における一端側節部材62A、中間節部材62B及び他端側節部材62Cが軸部材66により接合された状態では、それぞれ軸部材66を中心に回動することにより
図12に示されるように湾曲する。
【0061】
なお、中間節部材62B、一端側節部材62A及び他端側節部材62Cは、容易に変形しない材料で形成されている。材料は、特に限定されないが、ポリアミド樹脂を好適に用いることができる。また、樹脂材料の場合の他の例として、ABS、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン等を用いることができる。さらに、金属材料で形成してもよく、軽さと強度を考慮して、アルミニウムとマグネシウムの合金を好適に用いることができる。
【0062】
(初期状態におけるフレーム部材60と根元アクチュエータ20との配置)
ここで、本開示の第一実施形態におけるフレーム部材60と根元アクチュエータ20の配置について説明する。本開示のフレーム部材60は、初期状態において、根元アクチュエータ20の一端側は、一端側節部材62Aが有する一端固定部70に固定され、根元アクチュエータ20の他端側は、一端側節部材62Aが有する一端固定部70に固定される(
図13も参照)。このため、矢印Y方向と、根元アクチュエータ20の筒軸方向Sとが一致する。
【0063】
また、
図1から
図11に示されるように、根元アクチュエータ20は、中間節部材62Bにおける貫通孔63を通って、他端側節部材62Cの他端側固定部に接続される。上述の通り、中間節部材62Bにおける貫通孔63及び他端側固定部の貫通孔63の中心線CHは、ヒンジ部64に対して矢印X方向の一方側とされている。すなわち、本開示の第一実施形態において、根元アクチュエータ20は、筒軸の中心軸CLがフレーム部材60における中立線Cに対して矢印X方向の一方側にオフセット状態となるように固定される。
【0064】
また言い換えれば「オフセット状態」とは、Z方向から見て、中立線Cと根元アクチュエータ20の筒軸との延びる方向とが、一直線上に並んでいない状態を指す。オフセット量(中立線Cと根元アクチュエータ20の筒軸の中心軸CLとの距離)は、適宜設定されるが、一例として1mmとされている。
【0065】
なお、本開示のロボットハンド10において、根元アクチュエータ20におけるアクチュエータ本体部22の中心軸が、フレーム部材60に対してオフセット状態とされていれば、根元アクチュエータ20の一部がヒンジ部64よりも矢印X方向の他方側に位置していてもよい。
【0066】
<ロボットハンド10の動作>
続いて、
図13及び
図14を適宜参照しながら、本開示の第一実施形態に係るロボットハンド10を備えたロボットアームにより対象物12を搬送する様子を説明する。なお、
図13及び
図14において、根元アクチュエータ20及び複数の指アクチュエータ40に圧縮空気を供給する供給ホースは、図示を省略する。また、ロボットハンド10が取り付けられるロボットアームは、図示を省略する。
【0067】
まず、
図13の実線で示されるように、ロボットハンド10を初期状態とし、対象物12に対して矢印X方向の他方側にロボットハンド10を配置する。
【0068】
次に、根元アクチュエータ20の接続孔Hに圧縮空気が供給されることにより、根元アクチュエータ20が収縮し、フレーム部材60には矢印X方向の一方側が収縮する方向に力が作用する。
【0069】
ここで、根元アクチュエータ20は、その中心軸CLが、フレーム部材60においてヒンジ部64よりも矢印X方向の一方側にオフセット状態で配置されている。このため、中立線Cにおいて一端固定部70と他端固定部72との間隔が保たれながら根元アクチュエータ20が収縮することにより、フレーム部材60には、根元アクチュエータ20が固定された両端部分に、矢印X方向の一方側への力が作用する。これにより、隣り合う中間節部材62B同士(端部においては、中間節部材62Bと隣り合う一端固定部70、他端側節部材62C)は、軸部材66を中心に互いの角度が一方側で小さくなるように回動し、
図13の二点鎖線で示されるように全体として矢印X方向の一方側が内側となるように湾曲変形する。言い換えれば、フレーム部材60が根元アクチュエータ20の中心軸CLを挟んで中立線Cと反対側を内側とする曲げ方向に変形する。矢印X方向の一方側は、フレーム部材60の湾曲内側であり、本開示における「曲げ方向」であるといえる。なお、
図14に示されるように、根元アクチュエータ20の収縮に応じてフレーム部材60が湾曲した状態を、以後「根元湾曲状態」と称する。
【0070】
フレーム部材60が根元湾曲状態となることにより、異なる中間節部材62Bに各々取り付けられた5本の指アクチュエータ40の一端部の相対位置は変化し、一直線上(矢印Y方向)に並ぶ状態から湾曲線上に並ぶ状態となる。フレーム部材60の曲率は、根元アクチュエータ20へ供給する圧縮空気の圧力により調整することができる。
【0071】
続いて、フレーム部材60が湾曲した状態において、指アクチュエータ40の接続孔Hに圧縮空気が供給される。これにより、
図14及び
図15に示されるように、指アクチュエータ40が湾曲する。指アクチュエータ40は、矢印X方向、すなわち曲げ方向の内側に向かって湾曲するため、ロボットハンド10は、対象物12を囲んで外側から包み込むように把持することが可能となる。なお、指アクチュエータ40の湾曲によって対象物12を把持する強さは、対象物12の形状や重量等によって適宜設定される。
【0072】
そしてロボットハンド10が対象物12を把持した状態で、ロボットアームを動作させ、対象物12を適宜所定の位置へ搬送する。なお、ロボットハンド10は、対象物12を搬送した後に複数の指アクチュエータ40への供給が停止されて根元湾曲状態に戻された後に、根元アクチュエータ20への圧縮空気の供給を停止されることで初期状態に戻される。
【0073】
なお、本実施形態では、一例として、ロボットハンド10で、1個の対象物を把持する例を説明したが、ロボットハンド10は、複数の対象物12を寄せ集めたり、移動させたりすることにも好適に用いることができる。例えば、
図16に示されるように、離れた位置にある3個の対象物12を、初期状態のフレーム部材60を根元湾曲状態とすることにより、寄せ集めることができる。
【0074】
<作用及び効果>
本実施形態におけるロボットハンド10によれば、根元アクチュエータ20の一端及び他端が筒軸方向Sに延びるフレーム部材60の一端側及び他端側に接続され、根元アクチュエータ20の変形に伴って、矢印X方向に変形する。
【0075】
これにより、フレーム部材60に設けられた複数の指アクチュエータ40同士の位置関係を可変としたロボットハンド10が提供される。
【0076】
また、本実施形態におけるロボットハンド10によれば、フレーム部材60が、矢印Y方向に並んで連設されるとともに筒軸方向Sに隣り合う節部材62同士を回動可能に接合され、根元アクチュエータ20の変形に伴って、曲げ方向に変形する。
【0077】
これにより、フレーム部材60の節部材62の個数を増減させることが可能となるため、フレーム部材60が節部材62により構成されていない場合と比してロボットハンド10の長さを増減させることができる。
【0078】
<変形例>
上述の説明では、フレーム部材60は、軸部材66によって回動可能に接続するヒンジ部64によって連節されていたが、本実施形態に係るフレーム部材60は、これに限らない。例えば、軸部材66に限らず、矢印X方向に向かって湾曲変形が可能とされた付勢部材92によって、フレーム全体を湾曲可能とされていてもよい。この場合においても、フレーム部材60に設けられた複数の指アクチュエータ40同士の位置関係を可変としたロボットハンド10が提供される。
【0079】
また、上述の説明では、フレーム部材60は、ヒンジ部64が矢印Y方向に並ぶとされていたが、本実施形態に係るヒンジ部64の並び方は、これに限らない。例えば、ヒンジ部64が初期状態において湾曲していた場合においても、ヒンジ部64よりもフレーム部材60の湾曲方向の内側に根元アクチュエータ20が配置されていれば、根元アクチュエータ20の収縮に伴ってフレーム部材60を湾曲させることができる。
【0080】
また、上述の説明では、フレーム部材60が湾曲する方向と、指アクチュエータ40が湾曲する方向とが、同じ矢印X方向の一方側とされていたが、これに限らず、例えば指アクチュエータ40の湾曲方向を矢印X方向の他方側としてもよい。この場合、指アクチュエータ40は、筒形状の対象物12を、筒の内側から把持することができる。
【0081】
また、上述の説明では、一端側節部材62Aがフレーム部材60における矢印Y方向の最も一方側に設けられ、他端側節部材62Cが矢印Y方向の最も他方側に設けられていたが、本実施形態におけるフレーム部材60は、これに限らない。例えば、フレーム部材60に連接する節部材62において、根元アクチュエータ20がフレーム部材60の矢印Y方向の最も外側の節部材62とは異なる他の節部材62に取付けられていてもよい。この場合においても、根元アクチュエータ20が取り付けられた範囲においてフレーム部材60を湾曲させることが可能となる。
【0082】
[第二実施形態]
続いて、本開示に係るロボットハンド10の第二実施形態を説明する。なお、第二実施形態において、第一実施形態のロボットハンド10と同様の構成については、同一の符号を用い、具体的な説明を省略する場合がある。
【0083】
<構成>
図17は、本開示の第二実施形態に係るロボットハンド10の初期状態を示す平面図である。本実施形態におけるロボットハンド10は、付勢部材92をさらに備えている。
【0084】
付勢部材92は、一例として、矢印Y方向に延びるフレーム部材60における矢印X方向の他方側に配置されているゴム部材である。付勢部材92は、湾曲状態にあるフレーム部材60が直線状となる方向へ力を作用させる(付勢する)。このときにフレーム部材60へ作用する力は、フレーム部材60の湾曲変形を阻害しないように充分小さい力に設定される。付勢部材92の一例としてゴム部材を用いる場合には、フレーム部材60の湾曲変形により直線状態から湾曲状態へ弾性変形したゴム部材の復元力がフレーム部材60に作用する。
【0085】
その他の構成は、第一実施形態におけるロボットハンド10と同様である。
【0086】
<ロボットハンド10の動作>
本実施形態におけるロボットハンド10では、フレーム部材60は、初期状態から湾曲状態となる際に、付勢部材92に抗しつつ変形する。そして、フレーム部材60が湾曲状態の時に、付勢部材92により曲げ方向とは反対側に付勢されている。このため、湾曲状態のフレーム部材60における根元アクチュエータ20への圧縮空気の供給が停止された際に、フレーム部材60は、初期状態へ速やかに戻される。
【0087】
言い換えれば、付勢部材92は、曲げ方向に向かって湾曲変形したフレーム部材60を、初期状態に復元させるサポート部材の一例であるといえる。
<作用及び効果>
本実施形態におけるロボットハンド10では、湾曲変形したフレーム部材60を、筒軸方向Sに延びる形状に復元させる付勢部材92を備えており、フレーム部材60が根元アクチュエータ20の収縮に伴って湾曲変形した場合に、付勢部材92によって筒軸方向Sに延びる形状に復元される。また言い換えれば、本実施形態におけるロボットハンド10では、曲げ方向に向かって変形したフレーム部材60を、曲げ方向とは反対側に向かって変形させる付勢部材92を備えている。
【0088】
これにより、ロボットハンド10が付勢部材92を有していない場合と比して、ロボットハンド10のフレーム部材60を速やかに筒軸方向Sに延びる形状に復元させることができる。また言い換えれば付勢部材92を有していない場合と比して、曲げ方向に向かって変形したフレーム部材60を速やかに反対側に向かって変形させるロボットハンド10が提供される。
【0089】
なお、上述の説明では、付勢部材92は、フレーム部材60の曲げ方向の外側に配置されたゴム部材とされていたが、曲げ方向に向かって変形したフレーム部材60を、曲げ方向とは反対側に向かって変形させることが可能とされていればこれに限らない。
【0090】
例えば、フレーム部材60において、矢印X方向の他方側において、一端側節部材62Aと他端側節部材62Cとを繋ぐ引張バネを設けてもよい。この場合、フレーム部材60の湾曲変形に伴ってフレーム部材60の中立線Cの他方側において引張バネが引き延ばされることにより、フレーム部材60には、矢印X方向の他方側が収縮する方向に付勢される。この場合においても、根元湾曲状態に変形したフレーム部材60を速やかに反対側に向かって変形させるロボットハンド10が提供される。
【0091】
また例えば、フレーム部材60において、矢印X方向の一方側の間隙において、矢印Y方向に並ぶ中間節部材62B同士に挟まれるように圧縮バネを設けてもよい。この場合、フレーム部材60における中間節部材62Bの矢印X方向の一方側では、フレーム部材60の湾曲変形に伴って圧縮バネが挟まれて圧縮されることにより、フレーム部材60には、矢印X方向の一方側が延びる方向に付勢される。この場合においても、根元湾曲状態に変形したフレーム部材60を速やかに反対側に向かって変形させるロボットハンド10が提供される。
【0092】
また、その他の付勢部材92としては、板バネ、針バネ等が挙げられる。これらの付勢部材92によっても、根元湾曲状態に変形したフレーム部材60を速やかに反対側に向かって変形させるロボットハンド10が提供される。
【0093】
また、その他のサポート部材として、フレーム部材60の中心線CHよりも曲げ方向の外側に根元アクチュエータ20と同様に流体圧により収縮する他のアクチュエータを設けることが挙げられる。
【0094】
また、第一実施形態、第二実施形態、又はこれらの変形例について、採用可能なものについては、その採用を妨げられない。
【0095】
[第三実施形態]
続いて、本開示に係るロボットハンド10の第四実施形態を説明する。なお、第四実施形態において、第一実施形態から第二実施形態のロボットハンド10と同様の構成については、同一の符号を用い、具体的な説明を省略する場合がある。
【0096】
<構成>
図18は、本開示の第三実施形態に係るロボットハンド10の初期状態の平面図であり、
図19は、本開示の第三実施形態に係るロボットハンド10の初期状態の正面図である。本実施形態に係るロボットハンド10のフレーム部材60は、矢印Y方向に延びる板状部94と、板状部94から矢印X方向に向かって突出する複数の突出部96とを有する。
【0097】
板状部94は、
図18及び
図19に示されるように、矢印X方向及び矢印Z方向に長さを有し、矢印Y方向に延びて形成された、板状部94の部分である。なお、板状部94は、矢印X方向の長さ(厚さ)は、矢印Z方向の長さよりも短い。すなわち、本実施形態における板状部94は、矢印Y方向及び矢印Z方向への曲げには抵抗するが、矢印X方向には曲がりやすい形状とされている。
【0098】
本実施形態に係る突出部96は、
図18にも示されるように、複数の中間突出部96Bと、一端側突出部96Aと、他端側突出部96Cとが矢印Y方向に並んで板状部94から一端側(X方向)へ突出している。
【0099】
中間突出部96Bは、第一実施形態に係る中間節部材62Bと同様に、矢印Y方向及び矢印Z方向に長さを有すると共に矢印X方向の一方側(
図19における図面下側)に向かって先細となる略三角柱状を呈する部分である。なお、本実施形態においては、中間突出部96Bにおいて、指アクチュエータ取付部98は、矢印Z方向の他方側に向かって開口したねじ部とされている。
【0100】
一端側突出部96Aは、第一実施形態に係る一端側節部材62Aと同様に、矢印Y方向及び矢印Z方向に長さを有すると共に矢印X方向の一方側(
図17における図面左側)に向かって先細となる略三角柱状を呈する部材である。また、一端側突出部96Aは、一端固定部70を有している。なお、指アクチュエータ取付部98の形状は、中間突出部96Bと同様である。
【0101】
他端側突出部96Cは、第一実施形態に係る他端側節部材62Cと同様に、矢印Y方向及び矢印Z方向に長さを有すると共に矢印X方向の一方側に向かって先細となる略三角柱状を呈する部材である。また、他端側突出部96Cは、他端固定部72を有している。なお、指アクチュエータ取付部98の形状は、中間突出部96Bと同様である。
【0102】
なお、本実施形態に係る板状部94、中間突出部96B、一端側突出部96A、他端側突出部96Cは、容易に変形しない材料で形成されていれば、材料を特に限定されないが、ポリアミド樹脂を好適に用いることができる。また、樹脂材料の場合の他の例として、ABS、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン等を用いることができる。金属材料で形成してもよい。また、突出部96は、板状部94から突出して形成されていれば、板状部94と一体的に形成されていてもよく、板状部94とは別体として形成され、一体的に接合されていてもよい。
【0103】
なお、本実施形態における指アクチュエータ40の第一封止部材30Aは、根元アクチュエータ20の第一封止部材30Aと同様の形状とされている。また、本実施形態における、フレーム部材60と、根元アクチュエータ20との配置は、第一実施形態と同様である。
【0104】
<ロボットハンド10の動作>
続いて、本実施形態に係るロボットハンド10を備えたロボットアームにより対象物12を搬送する様子を説明する。
【0105】
本実施形態においては、根元アクチュエータは、フレーム部材60において板状部94よりも矢印X方向の一方側にオフセット状態で配置されている。このため、本開示における根元アクチュエータ20が収縮することにより、フレーム部材60は、全体として矢印X方向の一方側が内側となるように湾曲変形する。
【0106】
すなわち、本実施形態においては、板状部94は、本開示の第一実施形態に係る中立線Cを有する部材である。
【0107】
以後の湾曲変形後の動作は、第一実施形態に係るロボットハンド10と同様である。
【0108】
<作用及び効果>
本実施形態におけるロボットハンド10によれば、根元アクチュエータ20が筒軸方向Sに延びる板状部94から突出する複数の突出部96に亘って接続され、根元アクチュエータ20の変形に伴って、矢印X方向に変形する。
【0109】
これにより、フレーム部材60が筒軸方向Sに延びる板状部94を有していない場合と比して簡易な構成でロボットハンド10を製造することができる。
【0110】
以上、添付図面を参照しながら本開示の実施形態を説明したが、本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は応用例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0111】
10 ロボットハンド、12 対象物、20 根元アクチュエータ、22 アクチュエータ本体部、24 チューブ、26 スリーブ、28 拘束部材、30 封止部材、32 封止コネクタ、33 取付部、34 係止リング、36 圧着部材、40 指アクチュエータ、43 取付部、60 フレーム部材、62 節部材、63 貫通孔、64 ヒンジ部、66 軸部材、70 一端固定部、72 他端固定部、74 窓部、80 指アクチュエータ固定部、85 固定具、92 付勢部材、94 板状部、98 指アクチュエータ固定部、96 突出部、30A 第一封止部材、30B 第二封止部材、C 中立線、CH 中心線