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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039557
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】灯具ユニット
(51)【国際特許分類】
   F21V 5/00 20180101AFI20240314BHJP
   F21S 41/143 20180101ALI20240314BHJP
   F21S 41/27 20180101ALI20240314BHJP
   F21S 41/40 20180101ALI20240314BHJP
   F21W 102/155 20180101ALN20240314BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240314BHJP
【FI】
F21V5/00 600
F21S41/143
F21S41/27
F21S41/40
F21W102:155
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144203
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099999
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 隆
(72)【発明者】
【氏名】伊東 樹生
(57)【要約】
【課題】投影レンズを備えた灯具ユニットにおいて、ロービーム用配光パターンおよびハイビーム用配光パターンをいずれも車両前方走行路の遠方視認性に優れた配光パターンとして形成可能とする。
【解決手段】光源30と投影レンズ40との間に配置された透光制御部材50の構成として、第1透光層52とその上面52aおよび下面52bに積層された第2および第3透光層54、56とを備え、かつ、第1透光層52の屈折率よりも第2および第3透光層54、56の屈折率の方が小さい値に設定されたものとする。また、光源30として、ロービーム照射時に点灯する第1光源32Bとハイビーム照射時に追加点灯する第2光源32Dとを備えた構成とした上で、第1光源32Bが第1透光層52の下面52bよりも上方側に配置されるとともに第2光源32Dが第1透光層52の下面52bよりも下方側に配置された構成とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの出射光を、投影レンズを介してユニット前方へ向けて照射するように構成された灯具ユニットにおいて、
上記光源と上記投影レンズとの間に、上記光源からの出射光を透過制御するための透光制御部材が配置されており、
上記透光制御部材は、第1透光層と、上記第1透光層の上面に積層された第2透光層と、上記第1透光層の下面に積層された第3透光層とを備えており、かつ、上記第1透光層の屈折率よりも上記第2および第3透光層の屈折率の方が小さい値に設定されており、
上記光源として、ロービーム照射時に点灯する第1光源と、ハイビーム照射時に追加点灯する第2光源とを備えており、
上記第1光源は、上記第1透光層の下面よりも上方側に位置するように配置されており、
上記第2光源は、上記第1透光層の下面よりも下方側に位置するように配置されている、ことを特徴とする灯具ユニット。
【請求項2】
上記第1光源は、上記第1透光層の上面よりも上方側に位置するように配置されている、ことを特徴とする請求項1記載の灯具ユニット。
【請求項3】
上記第1光源は、上記第2透光層に入射した上記第1光源からの出射光が上記第1透光層を介して上記第3透光層に入射しない位置に配置されている、ことを特徴とする請求項2記載の灯具ユニット。
【請求項4】
上記第1光源と上記第2光源との間に、上記第1光源からの出射光が上記第3透光層に入射するのを阻止する遮光部材が配置されている、ことを特徴とする請求項1~3いずれか記載の灯具ユニット。
【請求項5】
上記透光制御部材は、インサート成形品として構成されている、ことを特徴とする請求項1~3いずれか記載の灯具ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、投影レンズを備えた灯具ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、光源からの出射光を、投影レンズを介してユニット前方へ向けて照射するように構成された灯具ユニットが知られている。
【0003】
「特許文献1」には、このような灯具ユニットの構成として、光源と投影レンズとの間に、光源からの出射光を透過制御するための透光制御部材が配置されたものが記載されている。
【0004】
この「特許文献1」に記載された灯具ユニットは、その透光制御部材として、第1出射面を有する上部領域と、第1出射面に対して灯具後方側に変位した第2出射面を有する下部領域とを備えており、また、その光源として、ロービーム照射時に点灯する第1光源と、ハイビーム照射時に追加点灯する第2光源とを備えており、かつ、第1光源が上部領域の灯具後方側に配置されるとともに第2光源が下部領域の灯具後方側に配置された構成となっている。
【0005】
そして、この「特許文献1」に記載された灯具ユニットにおいては、第1光源からの出射光を透光制御部材の上部領域に入射させてその第1出射面から出射させることによりロービーム用配光パターンを形成し、その際、第1出射面の下端縁形状によってロービーム用配光パターンのカットオフラインを形成し、また、第2光源からの出射光を透光制御部材の下部領域に入射させてその第2出射面から出射させることによりカットオフラインの上方にハイビーム用の付加配光パターンを形成するようになっている。
【0006】
さらに、この「特許文献1」の図13に記載された灯具ユニットは、第2光源から出射して透光制御部材の下部領域を透過した光の一部が透光制御部材の上部領域に入射する構成となっており、これにより付加配光パターンの下端部領域をロービーム用配光パターンのカットオフライン下方近傍領域と重複させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2022-94635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記「特許文献1」の図13に記載された灯具ユニットのように、付加配光パターンの下端部領域をロービーム用配光パターンのカットオフライン下方近傍領域と重複させることにより、ロービーム用配光パターンと付加配光パターンとが滑らかに繋がった配光パターンとしてハイビーム用配光パターンを形成することができ、これによりハイビーム用配光パターンを車両前方走行路の遠方視認性に優れた配光パターンとして形成することができる。
【0009】
このようにハイビーム用配光パターンを車両前方走行路の遠方視認性に優れた配光パターンとして形成するようにした上で、ロービーム用配光パターンについても車両前方走行路の遠方視認性に優れた配光パターンとして形成することができる構成を実現することが望まれる。
【0010】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、投影レンズを備えた灯具ユニットにおいて、ロービーム用配光パターンおよびハイビーム用配光パターンをいずれも車両前方走行路の遠方視認性に優れた配光パターンとして形成することができる灯具ユニットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、透光制御部材の構成に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0012】
すなわち、本願発明に係る灯具ユニットは、
光源からの出射光を、投影レンズを介してユニット前方へ向けて照射するように構成された灯具ユニットにおいて、
上記光源と上記投影レンズとの間に、上記光源からの出射光を透過制御するための透光制御部材が配置されており、
上記透光制御部材は、第1透光層と、上記第1透光層の上面に積層された第2透光層と、上記第1透光層の下面に積層された第3透光層とを備えており、かつ、上記第1透光層の屈折率よりも上記第2および第3透光層の屈折率の方が小さい値に設定されており、
上記光源として、ロービーム照射時に点灯する第1光源と、ハイビーム照射時に追加点灯する第2光源とを備えており、
上記第1光源は、上記第1透光層の下面よりも上方側に位置するように配置されており、
上記第2光源は、上記第1透光層の下面よりも下方側に位置するように配置されている、ことを特徴とするものである。
【0013】
上記「光源」の種類は特に限定されるものではなく、例えば発光ダイオードや白熱バルブあるいはレーザーダイオード等が採用可能である。
【0014】
上記「透光制御部材」は、第1透光層の屈折率よりも第2および第3透光層の屈折率の方が小さい値に設定されていれば、第1、第2および第3透光層の各々の屈折率の具体的な値は特に限定されるものではなく、また、第1、第2および第3透光層の各々の層厚についてもその具体的な値は特に限定されるものではない。
【0015】
上記「第1光源」は、第1透光層の下面よりも上方側に位置するように配置されていれば、その具体的な配置は特に限定されるものではない。
【0016】
上記「第2光源」は、第1透光層の下面よりも下方側に位置するように配置されていれば、その具体的な配置は特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0017】
本願発明に係る灯具ユニットは、光源と投影レンズとの間に配置された透光制御部材が、第1透光層とその上面および下面に積層された第2および第3透光層とを備えており、かつ、第1透光層の屈折率よりも第2および第3透光層の屈折率の方が小さい値に設定されており、また、光源として、ロービーム照射時に点灯する第1光源とハイビーム照射時に追加点灯する第2光源とを備えており、かつ、第1光源は第1透光層の下面よりも上方側に位置するように配置されるとともに第2光源は第1透光層の下面よりも下方側に位置するように配置されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0018】
すなわち、第1透光層の下面よりも上方側に位置する第1光源の点灯により、この第1光源から出射して第1および第2透光層に入射した光がその前端面から灯具前方へ向けて出射し、これによりロービーム用配光パターンが形成されるようにすることができる。
【0019】
その際、第1透光層は、第2および第3透光層よりも大きい屈折率を有しているので、第1光源から出射して第1透光層に入射した光は、その上面および下面において全反射して第1透光層の前端面から灯具前方へ向けて出射することとなる。そして、第1透光層の前端面の下端縁形状によってロービーム用配光パターンのカットオフラインが形成され、かつ、ロービーム用配光パターンはカットオフライン下方近傍領域が明るい配光パターンとして形成されることとなる。したがって、ロービーム用配光パターンを車両前方走行路の遠方視認性に優れた配光パターンとして形成することができる。
【0020】
また、第1透光層の下面よりも下方側に位置する第2光源の点灯により、この第2光源から出射して第1および第3透光層に入射した光は、その前端面から灯具前方へ向けて出射することとなり、これによりハイビーム用の付加配光パターンが形成されるようにすることができる。
【0021】
その際、第2光源から出射して第1透光層に入射した光が、第1透光層の前端面から灯具前方へ向けて出射することにより、付加配光パターンの下端部領域をロービーム用配光パターンのカットオフライン下方近傍領域と重複させることができ、これによりロービーム用配光パターンと付加配光パターンとが滑らかに繋がった配光パターンとしてハイビーム用配光パターンを形成することができる。したがって、ハイビーム用配光パターンを車両前方走行路の遠方視認性に優れた配光パターンとして形成することができる。
【0022】
このように本願発明によれば、投影レンズを備えた灯具ユニットにおいて、ロービーム用配光パターンおよびハイビーム用配光パターンをいずれも車両前方走行路の遠方視認性に優れた配光パターンとして形成することができる。
【0023】
しかも本願発明においては、第2光源から出射して第1透光層に入射した光の一部を、その上面から第2透光層に入射させて第2透光層の前端面から灯具前方へ向けて出射させることも可能であり、これにより付加配光パターンとロービーム用配光パターンとの重複幅を大きくすることも可能である。
【0024】
また本願発明においては、第2光源から出射して第1透光層に入射した光の一部を、第1透光層の上面および下面において全反射させた上で、その前端面から灯具前方へ向けて出射させることも可能である。このような構成を採用した場合には、付加配光パターンの下端部領域をロービーム用配光パターンのカットオフラインに沿って帯状に明るい配光パターンとして形成することが可能となり、これによりハイビーム用配光パターンを車両前方走行路の遠方視認性に一層優れたものとすることができる。
【0025】
上記構成において、さらに、第1光源が第1透光層の上面よりも上方側に位置するように配置された構成とすれば、第1光源から出射して第2透光層に入射する光の比率を大きくすることができ、これによりロービーム用配光パターン全体の明るさを十分に確保することができる。
【0026】
その際、第1光源の配置として、第2透光層に入射した第1光源からの出射光が第1透光層を介して第3透光層に入射しない位置に設定された構成とすれば、ロービーム照射時に透光制御部材からの出射光がカットオフラインの上方空間へ向かう光として投影レンズに入射してしまうのを未然に防止することができる。
【0027】
上記構成において、さらに、第1光源と第2光源との間に、第1光源からの出射光が第3透光層に入射するのを阻止する遮光部材が配置された構成とすれば、第1光源から第3透光層に入射した光がロービーム照射時にカットオフラインの上方空間へ向かう光として投影レンズに入射してしまうのを未然に防止することができる。
【0028】
上記構成において、さらに、透光制御部材がインサート成形品として構成されたものとすれば、第1透光層と第2および第3透光層とが確実に密着した状態で積層されるようにすることができ、これにより透光制御部材の光学的精度を十分に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本願発明の一実施形態に係る灯具ユニットを備えた車両用灯具を示す側断面図
図2図1のII方向矢視図
図3図1のIII-III線断面図
図4】上記灯具ユニットを詳細に示す側断面図
図5】上記灯具ユニットからの照射光によって形成される配光パターンを示す図
図6】上記配光パターンの成立ちを説明するための図
図7】上記実施形態の第1変形例を示す、図3と同様の図
図8】上記1変形例を示す、図3と同様の図
図9】上記実施形態の第2変形例を示す、図7と同様の図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0031】
図1は、本願発明の一実施形態に係る灯具ユニット20を備えた車両用灯具10を示す側断面図である。また、図2は、図1のII方向矢視図であり、図3は、図1のIII-III線断面図である。
【0032】
図1~3において、Xで示す方向が「灯具前方」であり、Yで示す方向が「灯具前方」と直交する「左方向」(灯具正面視では「右方向」)であり、Zで示す方向が「上方向」である。図1~3以外の図においても同様である。
【0033】
図1~3に示すように、車両用灯具10は、車両の前端部に設けられるヘッドランプであって、ランプボディ12と透光カバー14とで形成される灯室内に灯具ユニット20が収容された構成となっている。
【0034】
図4は、灯具ユニット20を詳細に示す側断面図である。
【0035】
図4にも示すように、灯具ユニット20は、プロジェクタ型の灯具ユニットであって、光源30からの出射光を、投影レンズ40を介して灯具前方へ向けて照射することにより、ロービーム用配光パターンおよびハイビーム用配光パターン(これについては後述する)を形成し得る構成となっている。
【0036】
投影レンズ40は、灯具前後方向に延びる光軸Axを有しており、その後側焦点面上に形成される投影用画像を反転投影することにより上記配光パターンを形成するようになっている。
【0037】
投影レンズ40とその灯具後方側に配置された光源30との間には、光源30からの出射光を透光制御して投影レンズ40に入射させるための透光制御部材50が配置されており、この透光制御部材50において上記投影用画像を形成するようになっている。
【0038】
投影レンズ40は、外周フランジ部40aを有する両凸非球面レンズであって、無色透明の樹脂製部材で構成されている。この投影レンズ40は、灯具正面視において円形の上部および下部を水平方向に切り落としたようなレンズ形状を有しており、その外周フランジ部40aにおいてレンズホルダ42に支持されている。
【0039】
レンズホルダ42は、灯具前後方向に延びる筒状部材であって、その前端部には投影レンズ40を支持するためのレンズ支持部42aが形成されている。
【0040】
光源30は、ロービーム照射時に点灯する3つの第1光源32A、32B、32Cと、ハイビーム照射時に追加点灯する1つの第2光源32Dとで構成されている。
【0041】
これら第1および第2光源32A~32Dは、いずれも矩形状(例えば正方形)の発光面を有する発光素子(具体的には白色発光ダイオード)であって、その発光面を灯具前方へ向けた状態で、共通の基板34に支持されている。
【0042】
3つの第1光源32A~32Cは、投影レンズ40の光軸Axの真上の位置およびその左右両側に等間隔をおいた位置に配置されており、第2光源32Dは、光軸Axの真下の位置に配置されている。
【0043】
基板34は、投影レンズ40の光軸Axと直交する鉛直面に沿って延びるように配置された状態で金属製のヒートシンク60に支持されている。
【0044】
ヒートシンク60は、投影レンズ40の光軸Axと直交する鉛直面に沿って延びる本体部62と、この本体部62から灯具後方へ向けて鉛直面に沿って延びる複数の放熱フィン64とを備えており、その本体部62において基板34と面接触した状態でレンズホルダ42に支持されている。
【0045】
透光制御部材50は、一定の層厚を有する第1透光層52と、この第1透光層52の上面52aに積層された第2透光層54と、第1透光層52の下面52bに積層された第3透光層56とを備えている。
【0046】
その際、透光制御部材50は、第1透光層52の屈折率よりも第2および第3透光層54、56の屈折率の方が小さい値に設定されている。具体的には、第1透光層52はポリカーボネート樹脂で構成されており、第2および第3透光層54、56はシリコーン樹脂で構成されている。
【0047】
そして、透光制御部材50は、第1透光層52を1次成形品とするとともに第2および第2透光層54、56を2次成形品とするインサート成形品として構成されている。
【0048】
第1透光層52の膜厚は、3つの第1光源32A~32Cの各々の発光面の上下幅よりも大きい値(具体的には、上記発光面の上下幅の2~3倍程度の値)に設定されている。
【0049】
第1透光層52の下面52bは、光軸Axよりも左側(灯具正面視では右側)に位置する左側領域が光軸Axを含む水平面で構成されており、光軸Axよりも右側に位置する右側領域が、短い斜面を介して左側領域よりも一段低い水平面で構成されている。一方、第1透光層52の上面52aは、第1透光層52の下面52bを上方側へ平行移動させた表面形状を有している。その際、第1透光層52は、その上面52aが光軸Axを含む水平面と3つの第1光源32A~32Cの下端縁を通る水平面との間に位置するように形成されている。
【0050】
第2透光層54は、その下面が全領域にわたって第1透光層52の上面52aと密着している。この第2透光層54は、第1透光層52よりも厚い膜厚(具体的には2倍以上の膜厚)を有しており、その上面は水平面状に形成されている。
【0051】
第3透光層56は、その上面が全領域にわたって第1透光層52の下面52bと密着している。この第3透光層56は、第1透光層52よりも厚い膜厚(具体的には2倍以上の膜厚)を有しており、その下面は水平面状に形成されている。
【0052】
図3に示すように、第1透光層52は、第2および第3透光層54、56の両側部から左右両側に張り出すように形成されており、この張り出した部分には左右1対のフランジ部52cが形成されている。そして、透光制御部材50は、その左右1対のフランジ部52cをレンズホルダ42の後部に形成された左右1対のフランジ部42bの後面に当接させた状態でレンズホルダ42に支持されている。
【0053】
透光制御部材50の前面50aは、投影レンズ30の後側焦点Fを通るようにして左右両方向へ向けて灯具前方側に湾曲して延びる単一の鉛直凹曲面で構成されている。
【0054】
一方、透光制御部材50の後面50bには、3つの第1光源32A、32B、32Cに対応する位置に3つの入射部50A、50B、50Cが形成されるとともに第2光源32Dに対応する位置に入射部50Dが形成されている。3つの入射部50A~50Cは、3つの第1光源32A~32Cの各々からの出射光を入射させた後、直接または全反射させてから透光制御部材50内に導くように構成されている。また、入射部50Dは、第2光源32Dからの出射光を入射させた後、直接または全反射させてから透光制御部材50内に導くように構成されている。
【0055】
具体的には、光軸Axの真上に位置する入射部50Bは、第1光源32Bからの出射光を灯具前方へ向かう光として入射させる前部入射面50B1と、この前部入射面50B1の周囲において第1光源32Bからの出射光を前部入射面50B1から離れる方向へ向かう光として入射させる側部入射面50B2と、この側部入射面50B2から入射した第1光源32Bからの出射光を灯具前方へ向けて全反射させる全反射面50B3とを備えている。そして、この入射部50Bは、その後端面が第1光源32Bの発光面の灯具前方近傍に位置するように形成されており、また、その前部入射面50B1の下端縁が第1透光層52の上面52aの高さに位置するように形成されている。
【0056】
入射部50Bの左右両側に位置する入射部50A、50Cも、入射部50Bと略同様の構成を有している。
【0057】
3つの入射部50A~50Cは、3つの第1光源32A~32Cの各々からの出射光を平行光に近い光線束として透光制御部材50の前面50aに導くように構成されている。その際、左右両側に位置する入射部50A、50Cは、その入射光が光軸Ax寄りの方向へ向かうように形成されている。そしてこれにより、左右両側に位置する入射部50A、50Cからの入射光と中央に位置する入射部50Bからの入射光とが、透光制御部材50の前面50aにおいて部分的に重複するようになっている。
【0058】
一方、入射部50Dも、入射部50Bと略同様の構成を有している。だたし、この入射部50Dは、第2光源32Dからの出射光を、左右方向に多少拡がる平行光に近い光線束として、かつ、灯具正面方向に対してやや上向きの光として透光制御部材50の前面50aに導くように構成されている。
【0059】
なお、図3、4においては、3つの第1光源32A~32Cの各々からの出射光の光路を実線で示しており、第2光源32Dからの出射光の光路を破線で示している。
【0060】
図2、4に示すように、入射部50Dは、第3透光層56の一部を構成するようにして形成されているが、その真上に位置する入射部50Bは、第1および第2透光層52、54に跨るようにして形成されている。
【0061】
図4に示すように、入射部50Bから透光制御部材50に入射した第1光源32Bからの出射光のうち第1透光層52に入射した光は、その一部はそのまま透光制御部材50の前面50aに到達するが、その大半は第1透光層52の上面52aおよび/または下面52bで全反射した後に透光制御部材50の前面50aに到達する。
【0062】
また、入射部50Bから透光制御部材50に入射した第1光源32Bからの出射光のうち第2透光層54に入射した光は、その大半がそのまま透光制御部材50の前面50aに到達する。ただし、第2透光層54に入射した光の一部は第1透光層52の上面52aに到達し、この上面52aで僅かに屈折して第1透光層52に入射する。この第1透光層52に入射した光は、その下面52bに到達する前に透光制御部材50の前面50aに到達する。
【0063】
なお、入射部50Bは、その後端面が第1光源32Bの発光面の灯具前方近傍に位置するように形成されているので、第1光源32Bからの出射光が第3透光層56に入射してしまうことはない。
【0064】
以上の点は、左右両側に位置する入射部50A、50Cから透光制御部材50に入射した第1光源32A、32Cからの出射光に関しても同様である。
【0065】
一方、入射部50Dから第3透光層56に入射した第2光源32Dからの出射光は、その大半がそのまま透光制御部材50の前面50aに到達するが、その一部は第1透光層52の下面52bに到達し、この下面52bで僅かに屈折して第1透光層52に入射する。この第1透光層52に入射した光は、その大半がそのまま透光制御部材50の前面50aに到達するが、その一部は第1透光層52の上面52aで僅かに屈折して第2透光層54に入射した後に透光制御部材50の前面50aに到達する。
【0066】
灯具ユニット20は、車両用灯具10に組み込まれた状態では、その光軸Axが水平面に対して灯具前方へ向けて0.5~0.6°程度下向きの方向に延びた状態で配置されるようになっている。
【0067】
図5は、灯具ユニット20から灯具前方へ向けて照射される光により、車両前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを透視的に示す図であって、図5(a)はロービーム用配光パターンPLを示す図であり、図5(b)はハイビーム用配光パターンPHを示す図である。
【0068】
図5(a)に示すように、ロービーム用配光パターンPLは、左配光のロービーム用配光パターンであって、その上端縁に左右段違いのカットオフラインCL1、CL2を有している。このカットオフラインCL1、CL2は、灯具正面方向の消点であるH-Vを鉛直方向に通るV-V線を境にして左右段違いで水平方向に延びており、V-V線よりも右側の対向車線側部分が下段カットオフラインCL1として形成されるとともに、V-V線よりも左側の自車線側部分が、この下段カットオフラインCL1から傾斜部を介して段上がりになった上段カットオフラインCL2として形成されている。
【0069】
ロービーム用配光パターンPLにおいて、下段カットオフラインCL1とV-V線との交点であるエルボ点Eは、H-Vの0.5~0.6°程度下方に位置している。これは、灯具ユニット20の光軸Axが水平面に対して灯具前方へ向けて0.5~0.6°程度下向きの方向に延びた状態で配置されていることによるものである。
【0070】
ロービーム用配光パターンPLは、図6(a)~(c)に示す3つの配光パターンPA、PB、PCの合成配光パターンとして形成されている。その際、このロービーム用配光パターンPLは、3つの配光パターンPA、PB、PCが左右方向に並んだ状態で部分的に重複するように配置された横長の配光パターンとして形成されている。
【0071】
各配光パターンPA、PB、PCは、透光制御部材50の前面50aから出射した各第1光源32A、32B、32Cからの光によって投影レンズ40の後側焦点面上に形成される投影用画像の反転投影像として形成される配光パターンである。
【0072】
透光制御部材50は、その前面50aが投影レンズ30の後側焦点Fを通るようにして左右両方向へ向けて灯具前方側に湾曲して延びており、これにより第1透光層52の下面52bの前端縁も後側焦点Fを通るようにして左右両方向へ向けて灯具前方側に湾曲して延びているので、ロービーム用配光パターンPLは、そのカットオフラインCL1、CL2が鮮明に形成されたものとなっている。
【0073】
また、3つの入射部50A~50Cから第1透光層52に入射した3つの第1光源32A~32Cからの出射光は、その大半が第1透光層52の上面52aおよび/または下面52bで全反射した後に透光制御部材50の前面50aに到達するので、各配光パターンPA、PB、PCはカットオフラインCL1、CL2に沿って帯状に延びるカットオフライン下方近傍領域PAa、PBa、PCaが明るい配光パターンとして形成される。そしてこれにより、図5(a)に示すように、ロービーム用配光パターンPLも、カットオフラインCL1、CL2に沿って帯状に延びるカットオフライン下方近傍領域PLaが明るい配光パターンとして形成される。
【0074】
図5(b)に示すように、ハイビーム用配光パターンPHは、ロービーム用配光パターンPLに対して、カットオフラインCL1、CL2の上方側に拡がる付加配光パターンPDが付加されたものとなっている。
【0075】
付加配光パターンPDは、第2光源32Dからの出射光によって投影レンズ40の後側焦点面上に形成される投影用画像の反転投影像として形成される配光パターンであって、V-V線を中心とする横長の配光パターンとして形成され、その下端部領域PDaはロービーム用配光パターンPLと帯状に重複している。
【0076】
付加配光パターンPDの下端部領域PDaは、入射部50Dから第3透光層56に入射した第2光源32Dからの出射光のうち、第1透光層52の下面52bから第1透光層52に入射した後そのまま透光制御部材50の前面50aに到達した光と、第1透光層52に入射した後さらに第2透光層54に入射して透光制御部材50の前面50aに到達した光とによって形成される。このため、付加配光パターンPDの下端縁は、ロービーム用配光パターンPLのカットオフライン下方近傍領域PLaの下端縁よりも多少下方に位置している。
【0077】
次に本実施形態の作用について説明する。
【0078】
本実施形態に係る車両用灯具10の灯具ユニット20は、光源30と投影レンズ40との間に配置された透光制御部材50が、第1透光層52とその上面52aおよび下面52bに積層された第2および第3透光層54、56とを備えており、かつ、第1透光層52の屈折率よりも第2および第3透光層54、56の屈折率の方が小さい値に設定されており、また、光源30として、ロービーム照射時に点灯する第1光源32A、32B、32Cとハイビーム照射時に追加点灯する第2光源32Dとを備えており、かつ、第1光源32A~32Cは第1透光層52の下面52bよりも上方側に位置するように配置されるとともに第2光源32Dは第1透光層52の下面52bよりも下方側に位置するように配置されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0079】
すなわち、第1透光層52の下面52bよりも上方側に位置する第1光源32A~32Cの点灯により、これら第1光源32A~32Cから出射して第1および第2透光層52、54に入射した光が透光制御部材50の前面50a(すなわち第1および第2透光層52、54の前端面)から灯具前方へ向けて出射し、これによりロービーム用配光パターンPLが形成されるようにすることができる。
【0080】
その際、第1透光層52は、第2および第3透光層54、56よりも大きい屈折率を有しているので、第1光源32A~32Cから出射して第1透光層52に入射した光は、その上面52aおよび下面52bにおいて全反射して透光制御部材50の前面50aから灯具前方へ向けて出射することとなる。そして、第1透光層52の下面52bの前端縁形状(すなわち第1透光層52の前端面の下端縁形状)によってロービーム用配光パターンPLのカットオフラインCL1、CL2が形成され、かつ、ロービーム用配光パターンPLはカットオフライン下方近傍領域PLaが明るい配光パターンとして形成されることとなる。したがって、ロービーム用配光パターンPLを車両前方走行路の遠方視認性に優れた配光パターンとして形成することができる。
【0081】
また、第1透光層52の下面52bよりも下方側に位置する第2光源32Dの点灯により、この第2光源32Dから出射して第3透光層56に入射した光は、直接または第1および第2透光層52、54を介して透光制御部材50の前面50a(すなわち第1~第3透光層52~56の前端面)から灯具前方へ向けて出射することとなり、これによりハイビーム用の付加配光パターンPDが形成されるようにすることができる。
【0082】
その際、第2光源32Dから出射して第1透光層52に入射した光が、透光制御部材50の前面50aから灯具前方へ向けて出射することにより、付加配光パターンPDの下端部領域PDaをロービーム用配光パターンPLのカットオフライン下方近傍領域PLaと重複させることができ、これによりロービーム用配光パターンPLと付加配光パターンPDとが滑らかに繋がった配光パターンとしてハイビーム用配光パターンPHを形成することができる。したがって、ハイビーム用配光パターンPHを車両前方走行路の遠方視認性に優れた配光パターンとして形成することができる。
【0083】
このように本実施形態によれば、投影レンズ40を備えた灯具ユニット20において、ロービーム用配光パターンPLおよびハイビーム用配光パターンPHをいずれも車両前方走行路の遠方視認性に優れた配光パターンとして形成することができる。
【0084】
その際、本実施形態においては、第1光源32A~32Cが第1透光層52の上面52aよりも上方側に位置するように配置されているので、第1光源32A~32Cから出射して第2透光層54に入射する光の比率を大きくすることができ、これによりロービーム用配光パターンPL全体の明るさを十分に確保することができる。
【0085】
また本実施形態においては、第1光源32A~32Cの配置として、第2透光層54に入射した第1光源32A~32Cからの出射光が第1透光層52を介して第3透光層56に入射しない位置に設定されているので、ロービーム照射時に透光制御部材50からの出射光がカットオフラインCL1、CL2の上方空間へ向かう光として投影レンズ40に入射してしまうのを未然に防止することができる。
【0086】
さらに本実施形態においては、透光制御部材50の入射部50A~32Cの後端面が第1光源32A~32Cの発光面の灯具前方近傍に位置しているので、第1光源32A~32Cからの直射光が第3透光層56に入射してしまうのを未然に防止することができる。
【0087】
また本実施形態においては、第2光源32Dから出射して第1透光層52に入射した光の一部が、その上面52aから第2透光層54に入射して透光制御部材50の前面50a(すなわち第2透光層54の前端面)から灯具前方へ向けて出射する構成となっているので、付加配光パターンPDとロービーム用配光パターンPLとの重複幅を大きくすることができる。
【0088】
しかも本実施形態においては、透光制御部材50がインサート成形品として構成されているので、第1透光層52と第2および第3透光層54、56とが確実に密着した状態で積層されるようにすることができ、これにより透光制御部材50の光学的精度を十分に高めることができる。
【0089】
上記実施形態においては、光源30が3つの第1光源32A~32Cと1つの第2光源32Dとで構成されているものとして説明したが、第1および第2光源の各々の個数を上記実施形態とは異なる個数に設定することも可能である。
【0090】
上記実施形態においては、透光制御部材50として、その第1透光層52がポリカーボネート樹脂で構成されるとともに、第2および第3透光層54、56がシリコーン樹脂で構成されているものとして説明したが、第1透光層52の屈折率よりも第2および第3透光層54、56の屈折率の方が小さい値に設定されていれば、これら以外の樹脂(例えばアクリル樹脂等)で構成されたものとすることも可能である。
【0091】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0092】
まず、上記実施形態の第1変形例について説明する。
【0093】
図7、8は、本変形例に係る灯具ユニット120を示す、図3と同様の図である。
【0094】
図7、8に示すように、本変形例の基本的な構成は上記実施形態の場合と同様であるが、透光制御部材150の構成が上記実施形態の場合と異なっており、また、第1光源132Bおよび第2光源132Dの配置が上記実施形態の場合と異なっており、さらに遮光部材170が追加配置されている点でも上記実施形態の場合と異なっている。
【0095】
すなわち、本変形例の透光制御部材150も、一定の層厚を有する第1透光層152と、この第1透光層152の上面152aに積層された第2透光層154と、第1透光層152の下面152bに積層された第3透光層156とを備えており、かつ、第1透光層152の屈折率よりも第2および第3透光層154、156の屈折率の方が小さい値に設定されているが、その前面150aおよび後面150bの形状ならびに上面150dおよび下面150eの形状が上記実施形態の場合と異なっている。
【0096】
具体的には、透光制御部材150の前面150aは、第1透光層152の前端面に位置する部分に関しては上記実施形態の場合と同様の鉛直断面形状を有しているが、第2および第3透光層154、156の前端面に位置する部分に関しては第1透光層152の前端面に対して多少後傾した鉛直断面形状を有している。
【0097】
また、透光制御部材150の後面150bは、光軸Axと直交する方向に延びる直線状の鉛直断面形状を有している。
【0098】
さらに、透光制御部材150の上面150dは、灯具後方へ向けて水平面に対して下方側に変位するように形成された凸曲線状の鉛直断面形状を有しており、その下面150eは、灯具後方へ向けて上方側に変位するように形成された凸曲線状の鉛直断面形状を有している。
【0099】
なお、透光制御部材150の前面150aおよび後面150bの水平断面形状に関しては、上記実施形態の透光制御部材50と同様である(すなわち図3に示すような水平断面形状を有している)。
【0100】
本変形例の透光制御部材150も、第1透光層152はポリカーボネート樹脂で構成されており、第2および第3透光層154、156はシリコーン樹脂で構成されており、かつ、第1透光層152を1次成形品とするとともに第2および第2透光層154、156を2次成形品とするインサート成形品として構成されている。
【0101】
第1透光層152の膜厚は、第1光源132Bの発光面の上下幅よりも大きい値(具体的には、上記発光面の上下幅の2~3倍程度の値)に設定されている。
【0102】
第2透光層154は、第1透光層152よりも厚い膜厚(具体的には2倍以上の膜厚)を有しており、その下面が全領域にわたって第1透光層152の上面152aと密着している。また、第3透光層156は、第1透光層152よりも厚い膜厚(具体的には2倍以上の膜厚)を有しており、その上面が全領域にわたって第1透光層152の上面152aと密着している。
【0103】
本変形例においても、第1光源132Bは、光軸Axの真上の位置に配置されており、第2光源132Dは、光軸Axの真下の位置に配置されている。
【0104】
その際、第1光源132Bは、第1透光層152の上面152aよりも僅かに上方側に位置するように配置されており、第2光源132Dは、第1透光層152の下面150eよりも僅かに下方側に位置するように配置されている。
【0105】
第1光源132Bと第2光源132Dとの間には、第1光源132Bからの出射光が第3透光層156に入射するのを阻止する遮光部材170が配置されている。この遮光部材170は、上下方向に関して第1透光層152の略中心に位置するようにして水平方向に延びる板状部材で構成されており、その後端部において基板34に支持されている。
【0106】
以上の点は、第1光源132Bの左右両側に位置する第1光源(図示せず)に関しても同様である。
【0107】
図7においては、灯具ユニット120を第1光源132Bが点灯している状態で示している。
【0108】
図7に示すように、透光制御部材150に対してその後面150bから入射した第1光源132Bからの出射光のうち第1透光層152に入射した光は、第1透光層152の上面152aおよび/または下面152bで全反射した後に透光制御部材150の前面150aに到達する。
【0109】
このようにして全反射を繰り返した光が投影レンズ40に入射することによって、上記実施形態の場合と同様、ロービーム用配光パターンはそのカットオフライン下方近傍領域が明るい配光パターンとして形成される。
【0110】
一方、透光制御部材150に対してその後面150bから入射した第1光源132Bからの出射光のうち第2透光層154に入射した光は、その大半が直接または透光制御部材150の上面150dで全反射した後に透光制御部材150の前面150aに到達するが、その一部は第1透光層152の上面152aに到達し、この上面152aで僅かに屈折して第1透光層152に入射する。この第1透光層152に入射した光は、その下面152bに到達する前に透光制御部材150の前面150aに到達する。
【0111】
このように、第2透光層154に入射した第1光源132Bからの出射光が第1透光層152を介して第3透光層156に入射しないのは、第1光源132Bが第1透光層152の上面152aよりも僅かに上方側に位置するように配置されていることによるものである。
【0112】
なお、仮に、第1光源132Bが第1透光層152の上面152aよりもかなり上方側に位置するように配置されているとした場合には、第2透光層154に入射した第1光源132Bからの出射光の一部が第1透光層152を介して第3透光層156に入射してしまうので、この光が透光制御部材150の前面150aに到達して投影レンズ40に入射することによってロービーム照射時にグレア光が発生してしまうこととなる。
【0113】
また本変形例においては、遮光部材170の存在によって、第1光源132Bからの出射光が第3透光層56に入射するのが阻止されるので、図7において2点鎖線で示すような迷光が不用意に発生してしまうのが未然に防止され、これによりロービーム照射時にグレア光が発生してしまうのが未然に防止される。
【0114】
図8においては、灯具ユニット120を第2光源132Dが点灯している状態で示している。
【0115】
図8に示すように、透光制御部材150に対してその後面150bから入射した第2光源132Dからの出射光のうち第1透光層152に入射した光は、第1透光層152の上面152aおよび/または下面152bで全反射した後に透光制御部材150の前面150aに到達する。
【0116】
このようにして全反射を繰り返した光が投影レンズ40に入射することによって、ハイビーム用配光パターンの付加配光パターンは、その下端部領域がロービーム用配光パターンと帯状に重複する配光パターンとして形成され、かつ、この重複部分が明るい配光パターンとして形成される。
【0117】
一方、透光制御部材150に対してその後面150bから入射した第2光源132Dからの出射光のうち第3透光層156に入射した光は、その大半が直接または透光制御部材150の下面152bで全反射した後に透光制御部材150の前面150aに到達するが、その一部は第1透光層152の下面152bに到達し、この下面152bで僅かに屈折して第1透光層152に入射する。この第1透光層152に入射した光は、その上面152aに到達する前に透光制御部材150の前面150aに到達する。
【0118】
このように、第3透光層156に入射した第2光源132Dからの出射光が第1透光層152を介して第2透光層154に入射しないのは、第2光源132Dが第1透光層152の下面152bよりも僅かに下方側に位置するように配置されていることによるものである。
【0119】
なお、遮光部材170が存在していても、第2光源132Dからの出射光が第2透光層154に入射するのを完全に阻止することはできないが、図8において実線および2点鎖線で示すような迷光が発生したとしてもハイビーム照射時にはグレア光の発生が特に問題となることはない。
【0120】
本変形例の構成を採用することにより、透光制御部材150の構成簡素化を図った上で、上記実施形態の場合と略同様の作用効果を得ることができる。
【0121】
また、本変形例のように透光制御部材150の構成簡素化を図るようにした場合には、第1光源132Bからの出射光が第3透光層156に入射しやすくなるが、第1光源132Bと第2光源132Dとの間には遮光部材170が配置されているので、第1光源132Bから第3透光層156に入射した光がロービーム照射時にカットオフラインの上方空間へ向かう光として投影レンズ40に入射してしまうのを未然に防止することができ、これにより不用意にグレア光が発生してしまうのを未然に防止することができる。
【0122】
また本変形例においては、透光制御部材150の上面150dおよび下面150eが凸曲線状の鉛直断面形状を有しているので、第2および第3透光層154、156に入射した第1および第2光源132B、132Dからの出射光を上面150dおよび下面150eで全反射させて透光制御部材150の前面150aに効率良く到達させることができる。
【0123】
さらに、透光制御部材150の前面150aは、第2および第3透光層154、156の前端面に位置する部分が第1透光層152の前端面に位置する部分に対して多少後傾した鉛直断面形状を有しているので、第1および第2光源132B、132Dから出射して第2および第3透光層154、156に入射した後そのまま前面150aに到達した光および上面150dおよび下面150eで全反射してから前面150aに到達した光を効率良く投影レンズ40に入射させることができる。
【0124】
次に、上記実施形態の第2変形例について説明する。
【0125】
図9は、本変形例に係る灯具ユニット220を示す、図7と同様の図である。
【0126】
図9に示すように、本変形例の基本的な構成は上記第1変形例の場合と同様であるが、第1光源232Bの配置が上記第1変形例の場合と異なっている。
【0127】
すなわち本変形例においても、第1光源232Bは光軸Axの真上の位置に配置されており、第2光源232Dは光軸Axの真下の位置に配置されているが、第1光源232Bが第1透光層152の上面152aよりも僅かに下方側に位置するように配置されている点で上記第1変形例の場合と異なっている。
【0128】
また本変形例においても、第1光源232Bと第2光源232Dとの間には、第1光源232Bからの出射光が第3透光層156に入射するのを阻止する遮光部材270が配置されている。この遮光部材270は、上下方向に関して第1透光層152の略中心に位置するようにして水平方向に延びる板状部材で構成されており、その後端部において基板34に支持されているが、第1光源232Bの配置に応じて上記第1変形例の遮光部材170よりも小型化されている。
【0129】
以上の点は、第1光源232Bの左右両側に位置する第1光源(図示せず)に関しても同様である。
【0130】
図9に示すように、透光制御部材150に対してその後面150bから入射した第1光源232Bからの出射光のうち第2透光層152に入射した光は、第1透光層152の上面152aおよび/または下面152bで全反射した後に透光制御部材150の前面150aに到達する。
【0131】
このようにして全反射を繰り返した光が投影レンズ40に入射することによって、上記第1変形例の場合と同様、ロービーム用配光パターンを、そのカットオフライン下方近傍領域が明るい配光パターンとして形成することができる。
【0132】
一方、透光制御部材150に対してその後面150bから入射した第1光源232Bからの出射光のうち第2透光層154に入射した光は、直接または透光制御部材150の上面150dで全反射した後、透光制御部材150の前面150aに到達する。その際、第1光源232Bは、第1透光層152の上面152aよりも下方側に位置しているので、第2透光層154に入射した光が第1透光層152の上面152aに到達することはない。
【0133】
本変形例においても、遮光部材270の存在によって、第1光源232Bからの出射光が第3透光層156に入射するのが阻止されるので、図9において2点鎖線で示すような迷光が不用意に発生してしまうのが未然に防止され、これによりロービーム照射時にグレア光が発生してしまうのが未然に防止される。
【0134】
本変形例の構成を採用した場合においても、透光制御部材150の構成簡素化を図った上で、上記実施形態の場合と略同様の作用効果を得ることができる。
【0135】
また本変形例においては、第1光源232Bが第1透光層152の上面152aよりも僅かに下方側に位置しているので、第1光源232Bからの出射光のうち第1透光層152に入射する光の比率を大きくすることができ、これによりロービーム用配光パターンをそのカットオフライン下方近傍領域が十分に明るい配光パターンとして形成することができ、これにより車両前方走行路の遠方視認性をより一層高めることができる。
【0136】
なお、上記実施形態およびその変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【0137】
また本願発明は、上記実施形態およびその変形例に記載された構成に限定されるものではなく、これ以外の種々の変更を加えた構成が採用可能である。
【符号の説明】
【0138】
10 車両用灯具
12 ランプボディ
14 透光カバー
20、120、220 灯具ユニット
30 光源
32A、32B、32C、132B、232B 第1光源
32D、132D、232D 第2光源
34 基板
40 投影レンズ
40a 外周フランジ部
42 レンズホルダ
42a レンズ支持部
42b フランジ部
50、150 透光制御部材
50a、150a 前面
50A、50B、50C、50D 入射部
50b、150b 後面
50B1 前部入射面
50B2 側部入射面
50B3 全反射面
52、152 第1透光層
52a、152a 上面
52b、152b 下面
52c フランジ部
54、154 第2透光層
56、156 第3透光層
60 ヒートシンク
62 本体部
64 放熱フィン
150d 上面
150e 下面
170、270 遮光部材
Ax 光軸
CL1 下段カットオフライン
CL2 上段カットオフライン
E エルボ点
F 後側焦点
PA、PB、PC 配光パターン
PAa、PBa、PCa、PLa カットオフライン下方近傍領域
PD 付加配光パターン
PDa 下端部領域
PH ハイビーム用配光パターン
PL ロービーム用配光パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9