(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039561
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】衣服用ハンガー
(51)【国際特許分類】
A47G 25/36 20060101AFI20240314BHJP
A47G 25/28 20060101ALI20240314BHJP
A47F 7/19 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
A47G25/36 Z
A47G25/28 Z
A47F7/19 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144210
(22)【出願日】2022-09-09
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】516288686
【氏名又は名称】株式会社チャナカンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100127328
【弁理士】
【氏名又は名称】八木澤 史彦
(72)【発明者】
【氏名】田島 尚也
【テーマコード(参考)】
3K099
【Fターム(参考)】
3K099AA07
3K099BA04
3K099CA21
3K099CB21
3K099DA07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ニット製の素材で作られる衣服を吊るすにしても型崩れしにくく、環境へ与える影響を低減でき、さらに従来の樹脂製ハンガーよりも軽量である衣服用ハンガーを提供する。
【解決手段】衣服用ハンガー10はアルミニウム合金で形成される板状部材で形成され、板状部材の表面は断面形状が凸状の円弧状となるように形成され、板状部材の裏面は長手方向に直行する方向の断面形状が表面の形状に対応する凹状の円弧状となっており、かつ板状部材の長手方向に沿って裏面の中央部に線状の突起として中央突起が形成されており、さらに板状部材の長手方向に沿って裏面の両端部に線状の突起として端部突起が形成されており、中央突起の高さは端部突起の高さ以下の高さに規定されており、板状部材の厚さは、中央突起の厚さよりも小さく、本体部18の外側の輪郭は、正面視において所定の曲率半径R1を有する円弧を形成している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フック部、本体部、及び、前記フック部と前記本体部との間の部分である首部とを備える衣服用ハンガーであって、
前記フック部、前記本体部及び前記首部は、アルミニウム合金で形成される板状部材で形成され、
前記板状部材の表面は、前記フック部、前記本体部及び前記首部の表面であり、前記板状部材の長手方向に直行する方向の断面形状が凸状の円弧状となるように形成されており、
前記板状部材の裏面は、前記フック部、前記本体部及び前記首部の裏面であり、前記板状部材の長手方向に直行する方向の断面形状が、前記板状部材の表面の形状に対応する凹状の円弧状となるように形成されており、かつ、前記板状部材の長手方向に沿って、前記裏面の中央部に線状の突起として中央突起が形成されており、さらに、前記板状部材の長手方向に沿って、前記裏面の両端部に線状の突起として端部突起が形成されており、
前記板状部材の表面の最も高い位置からの距離として規定される高さにおいて、前記中央突起の高さは前記端部突起の高さ以下の高さに規定されており、
前記板状部材の表面と裏面との距離として規定される厚さは、前記中央突起の厚さよりも小さく、
前記本体部の外側の輪郭は、正面視において、所定の曲率半径を有する円弧を形成している、
衣服用ハンガー。
【請求項2】
前記衣服用ハンガーにおいて、前記フック部が位置する側を上方、前記本体部が位置する側を下方と定義すると、正面視において、前記本体部の外側の輪郭における接線の方向は、前記本体部の下端部近傍において、鉛直方向、または、鉛直方向と所定の許容範囲だけ乖離した方向であり、
前記板状部材の長手方向と直行する方向の断面形状において、前記本体部を構成する前記板状部材の表面における接線の方向は、前記板状部材の表面の下端部近傍において、鉛直方向、または、鉛直方向と所定の許容範囲だけ乖離した方向である、請求項1に記載の衣服用ハンガー。
【請求項3】
正面視において、前記本体部は直線状の底辺部を有し、前記円弧状の部分は両下端部において前記底辺部と連続している、請求項1または請求項2に記載の衣服用ハンガー。
【請求項4】
前記首部において、前記フック部から下方に延在する前記板状部材の部分である下方延在部の裏面の前記端部突起と、前記本体部から上方に延在する前記板状部材の部分である上方延在部の裏面の前記端部突起が当接する状態において、前記下方延在部と前記上方延在部が固定される、請求項1または請求項2に記載の衣服用ハンガー。
【請求項5】
前記首部において、前記下方延在部の裏面の前記中央突起と前記上方延在部の裏面の前記中央突起が当接する状態において、前記下方延在部と前記上方延在部が固定される、請求項4に記載の衣服用ハンガー。
【請求項6】
前記下方延在部と前記上方延在部は、前記下方延在部と前記上方延在部を貫通する固定具によって固定され、前記固定具と前記端部突起との間に所定の距離がある構成として形成されている、請求項4または請求項5に記載の衣服用ハンガー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服用ハンガーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、百貨店などで使用される高級なハンガーは木製であるが、安価なハンガーとして、樹脂製のハンガーが使用されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
衣服用のハンガーの基本的な機能は、衣服のしわや型崩れを防ぎつつ、視認容易な態様で保管することである。また、衣服を展示販売するブティックや百貨店など(以下、「店舗」という。)においては、衣服をハンガーに吊るしたときの全体としての外観が、買い物客を惹きつけ、販売に影響を与える重要な要素である。
【0004】
一般的に、衣服用のハンガーとして、一塊の木材からハンガー全体を削り出して製造する、いわゆる「一本物」が最も高級であるとされている。ところが、「一本物」は、材料を効率的に使用することができず、また、極めて高価である。さらに、「一本物」は、上述の樹脂製のハンガーに比べて重量が重いという問題がある。
【0005】
これに対して、上述の樹脂製のハンガーは、相応の解決策を示している。ところで、ニット素材を使って作られる衣服、例えば、セーターは、伸びやすいという性質がある。このため、型崩れを防止するために、セーターは、ハンガーに吊るすのではなく、折りたたんで収納される場合がある。ここで、ニットとは、1本の糸でループを作りながら編まれた生地を意味する。衣服を展示販売するブティックや百貨店などにおいては、衣服をハンガーに吊るすことによって、買い物客が、衣服を手に取らなくても、デザインを認識することができるようにしている。このため、セーターもハンガーに吊るして展示することが望ましい。このため、ニット製の素材で作られる衣服を吊るすにしても、型崩れしにくく、かつ、環境へ与える影響を低減することができる、衣服用ハンガーが提案されている(例えば、特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許5544590号公報
【特許文献2】特許6822721号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献2の衣服用ハンガーは、ニット素材の衣服に好適であり、木材よりも軽量であるが、それでも、実際の製品の一例において、約190グラム(g)の重量があり、さらなる軽量化が求められている。
【0008】
本発明はかかる問題の解決を試みたものであり、ニット製の素材で作られる衣服を吊るすにしても、型崩れしにくく、かつ、環境へ与える影響を低減することができ、さらに、従来の樹脂製ハンガーよりも軽量である衣服用ハンガーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第一の発明は、フック部、本体部、及び、前記フック部と前記本体部との間の部分である首部とを備える衣服用ハンガーであって、前記フック部、前記本体部及び前記首部は、アルミニウム合金で形成される板状部材で形成され、前記板状部材の表面は、前記フック部、前記本体部及び前記首部の表面であり、前記板状部材の長手方向に直行する方向の断面形状が凸状の円弧状となるように形成されており、前記板状部材の裏面は、前記フック部、前記本体部及び前記首部の裏面であり、前記板状部材の長手方向に直行する方向の断面形状が、前記板状部材の表面の形状に対応する凹状の円弧状となるように形成されており、かつ、前記板状部材の長手方向に沿って、前記裏面の中央部に線状の突起として中央突起が形成されており、さらに、前記板状部材の長手方向に沿って、前記裏面の両端部に線状の突起として端部突起が形成されており、前記板状部材の表面の最も高い位置からの距離として規定される高さにおいて、前記中央突起の高さは前記端部突起の高さ以下の高さに規定されており、前記板状部材の表面と裏面との距離として規定される厚さは、前記中央突起の厚さよりも小さく、前記本体部の外側の輪郭は、正面視において、所定の曲率半径を有する円弧を形成している、衣服用ハンガーである。
【0010】
本発明の発明者は、ニット素材の衣服において、ハンガーに吊るした場合に型崩れする原因を研究した。この結果、衣服に作用する力が大きく変動するハンガーの端部近傍において、型崩れが生じることを見出した。この点、第一の発明の構成によれば、本体部の正面視における輪郭は、円弧状に形成されている。本体部の正面視における輪郭は半円に近く、正面視における本体部の外側の接線の方向は、徐々に鉛直方向に近くなる。このため、ハンガーに吊るされた衣服に作用する力は、本体部の中心部近傍においては相対的に衣服に作用する重力に対する反力が大きいが、本体部の端部に向かうにつれて徐々に小さくなる。さらに、本体部を構成する板状部材は、断面形状が凸状の円弧状に形成されている。このため、ハンガーに吊るされた衣服に作用する力は、本体部の長手方向に直行する方向における中心部近傍においては相対的に衣服に作用する重力に対する反力が大きいが、端部に向かうにつれて徐々に小さくなる。すなわち、本体部は、正面視における端部近傍においても、正面視において本体部の長手方向に直行する方向においても、衣服に作用する重力に対する反力は急激にではなく、徐々に小さくなるから、型崩れしにくい。また、板状部材は中央突起と端部突起により外力による変形が防止されており、さらに、板状部材が屈曲させられて、フック部及び本体部の形状にされることにより、フック部及び本体部が外力による変形が、直線状の板状部材の場合よりも効率的に防止される。しかも、板状部材の厚さを中央突起の厚さよりも小さく構成することによって、そのように構成しない場合に比べて、アルミニウム合金の使用量を低減している。これにより、ニット製の素材で作られる衣服を吊るすにしても、型崩れしにくく、かつ、環境へ与える影響を低減することができ、さらに、従来の樹脂製ハンガーよりも軽量である衣服用ハンガーを提供することができる。
【0011】
第二の発明は、第一の発明の構成において、前記衣服用ハンガーにおいて、前記フック部が位置する側を上方、前記本体部が位置する側を下方と定義すると、正面視において、前記本体部の外側の輪郭における接線の方向は、前記本体部の下端部近傍において、鉛直方向、または、鉛直方向と所定の許容範囲だけ乖離した方向であり、前記板状部材の長手方向と直行する方向の断面形状において、前記本体部を構成する前記板状部材の表面における接線の方向は、前記板状部材の表面の下端部近傍において、鉛直方向、または、鉛直方向と所定の許容範囲だけ乖離した方向である、衣服用ハンガーである。
【0012】
第二の発明の構成によれば、本体部の正面視における下端部近傍、及び、断面形状における下端部近傍において、外側の輪郭における接線の方向は、鉛直方向または鉛直方向に近い方向である。このため、衣服に作用する重力が急激に変動することはなく、型崩れを効果的に防止することができる。
【0013】
第三の発明は、第一の発明または第二の発明の構成において、正面視において、前記本体部は直線状の底辺部を有し、前記円弧状の部分は両下端部において前記底辺部と連続している、衣服用ハンガーである。
【0014】
第三の発明の構成によれば、底辺部の存在によって、外力に対して、本体部が形状を維持する強度が一層増加する。
【0015】
第四の発明は、第一の発明または第ニの発明の構成において、前記首部において、前記フック部から下方に延在する前記板状部材の部分である下方延在部の裏面の前記端部突起と、前記本体部から上方に延在する前記板状部材の部分である上方延在部の裏面の前記端部突起が当接する状態において、前記下方延在部と前記上方延在部が固定される、請求項1または請求項2に記載の衣服用ハンガーである。
【0016】
第四の発明の構成によれば、首部において、下方延在部と上方延在部の端部突起同士が当接した状態において固定される。これにより、首部において、下方延在部と上方延在部が確実に固定される。さらに、首部の内側において、空間を形成することができ、空気の通路となる。すなわち、外部の空気がその通路を介して、ハンガーに掛けた衣服の内側に入ることもできるし、逆に、衣服の内側の空気がフック側に出ることもできる。ここで、本体部が板状部材で形成されていることに着目すると、本体部の板状部材の裏面(本体部の内側)には、中央突起と端部突起が空気の案内手段になり、空気の通路が形成されている。そして、本体部の板状部材の裏面における空気の通路と首部における空気の通路が一体となる。これにより、ハンガーに掛けた衣服の内部の空気は、本体部の裏面の空気の通路を介して首部の空気の通路に流入し、外部に放出される。これにより、そのような空間がない場合よりも、例えば、衣服の内側に湿気が滞留し、衣服を傷めることを防止することができる。
【0017】
第五の発明は、第四の発明の構成において、前記首部において、前記下方延在部の裏面の前記中央突起と前記上方延在部の裏面の前記中央突起が当接する状態において、前記下方延在部と前記上方延在部が固定される、衣服用ハンガーである。
【0018】
第五の発明の構成によれば、下方延在部と上方延在部の固定がより強固になる。
【0019】
第六の発明は、第四の発明または第五の発明の構成において、前記下方延在部と前記上方延在部は、前記下方延在部と前記上方延在部を貫通する固定具によって固定され、前記固定具と前記端部突起との間に所定の距離がある構成として形成されている、衣服用ハンガーである。
【0020】
第六の発明の構成によれば、固定具と端部突起の間の距離によって、首部を貫通する空気の通路が確保される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ニット製の素材で作られる衣服を吊るすにしても、型崩れしにくく、かつ、環境へ与える影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係る衣服用ハンガーの正面図である。
【
図7】首部において、固定用ピンを配置する前の状態を示す側面図である。
【
図8】首部において、固定用ピンを配置する前の、紙面手前の端部突起を除いた正面図である。
【
図9】首部において、固定用ピンを配置した後の、紙面手前の端部突起を除いた正面図である。
【
図10】首部において、固定用ピンの直線部をつぶして固定状態にした後の、紙面手前の端部突起を除いた正面図である。
【
図12】首部の直行方向のAA線(
図6参照)概略断面図である。
【
図13】首部の直行方向のBB線(
図6参照)概略断面図である。
【
図14】衣服用ハンガーにセーターを掛けた状態の正面図である。
【
図15】本発明の第二の実施形態に係る衣服用ハンガーの正面図である。
【
図19】実施品の首部の空間を示す拡大図(
図16の矢印B2方向から首部を視た図)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。以下の説明においては、同様の構成には同じ符号を付し、その説明を省略又は簡略する。なお、当業者が適宜実施できる構成については説明を省略し、本発明の基本的な構成についてのみ説明する。
【0024】
<第一の実施形態>
図1及び
図2に示すように、衣服用ハンガー10(以下、「ハンガー10」という。)は、フック部12と本体部18を有する。フック部12と本体部18の間は首部14として構成されている。本体部18の円弧状の部分は両下端部において、直線状の部分である底辺部20と連続している。フック部12、本体部18、首部14及び底辺部20は、一本の板状部材30(
図3乃至
図5参照)によって一体に形成されている。本明細書において、衣服用ハンガー10のフック部12が位置する側を「上方」と呼び、本体部18が位置する側を「下方」と呼ぶ。これは、ハンガー10がポール等の棒状部材等に吊るされた状態における上方及び下方と同義である。また、ハンガー10の長さX1(
図2参照)の方向を長手方向と呼ぶ。各図において、紙面手前側から奥側に向かう方向を「直行方向」と呼び、上方から下方へ向かう方向を「鉛直方向」と呼ぶ。
【0025】
フック部12、本体部18、首部14及び底辺部20を形成する板状部材30は、アルミニウム合金で形成されている。アルミニウム合金の種類は、例えば、マグネシウムとシリコンが一定の含有比で添加され、押出し性に優れる合金番号6063であるが、これに限定されない。
【0026】
<<本体部18の外面構成>>
本体部18の外側の輪郭は、
図1及び
図2に示す正面視において、所定の曲率半径を有する円弧を形成している。以下、
図2を参照して、本体部18の正面視における外側の輪郭について詳細に説明する。
【0027】
図2に示すように、本体部18は、中心軸Z1に対して線対称に形成されている。本体部18の外側の輪郭は、所定の曲率半径を有する円弧状に形成されている。詳細には、
図2に示すように、所定の曲率半径R1の円弧である。本体部18の外側の輪郭の長さ、すなわち、円弧の長さは、曲率半径R1とその中心角θ1によって規定される。中心角θ1は鈍角または180度として規定されている。中心角は、例えば、100度以上180度以下であり、望ましくは、150度以上180度以下であり、さらに望ましくは、165度以上180度以下であり、さらに望ましくは170度以上180度以下である。中心角θ1が180度に近いほど、本体部18の端部の外側における接線の方向が鉛直になり、望ましい。本実施形態において、中心角θ1は120度である。
【0028】
本体部18の端部は、位置18a1から始まり、位置18a2を通り、位置18a3で終了する。位置18a1と位置18a2の間における接線の方向は、鉛直方向、または、鉛直方向と所定の許容範囲だけ乖離した方向である。所定の許容範囲は、例えば、0度以上15度以下であり、望ましくは、0度以上10度以下であり、さらに望ましくは、0度以上5度以下である。本実施形態において、本体部18の端部における接線の方向は鉛直方向である。すなわち、本体部18の外側の輪郭は、端部に近づくほど接線の方向が鉛直に近くなり、端部において鉛直になる。
図2に示すように、位置18a2と位置18a3の間は、下部へ向かうほど、接線の向きが鉛直方向よりも内側に向かう方向になり、本体部18に掛けられた衣服と接しないようになっている。
【0029】
本体部18の円弧の曲率半径R1は、中心角θ1における外側の輪郭の円弧の長さが、所定サイズの衣服の背肩幅よりも長い所定範囲の長さとなる所定半径として規定されている。所定サイズは、例えば、衣服の着用者の性別や身長に応じて、衣服の製造者によって決められている寸法であり、例えば、Sサイズ、Mサイズ、Lサイズという区分がある。所定サイズの衣服の背肩幅を背肩幅SLとすれば、本体部18の円弧の長さは、例えば、背肩幅SLの1.1倍以上2.5倍以下であり、望ましくは、1.2倍以上2倍以下であり、さらに望ましくは、1.3倍以上1.7倍以下である。
【0030】
本体部18の長手方向の長さX1は、例えば、40センチメートル(cm)である。直行方向の長さY1は、例えば、29センチメートル(cm)である。フック部12の直行方向の長さY4は、例えば、6センチメートル(cm)である。首部14の直行方向の長さY3は、例えば、4センチメートル(cm)である。首部14において、板状部材30が重複する部分の直行方向の長さY5は、例えば、2.5センチメートル(cm)である。
【0031】
<<板状部材の構成>>
図3乃至
図5を参照して、板状部材30の構成を説明する。
図3に示すように、板状部材30の表面を表面30a、裏面を裏面30b、断面を断面30cとする。板状部材30の断面30cは、板状部材30の長手方向の全体にわたって同一であり、端面も断面と同一形状である。板状部材30の表面30aが、フック部12の表面12a(
図2参照)、首部14の表面14a(
図2参照)、本体部18の表面18a(
図2参照)、底辺部20の表面20a(
図2参照)となる。板状部材30の裏面30bが、フック部12の裏面12b(
図2参照)、首部14の裏面14b(
図2参照)、本体部18の裏面18b(
図2参照)、底辺部20の裏面20b(
図2参照)となる。
【0032】
表面30aの本体円弧部30a1(
図5参照)は、板状部材30の長手方向に直行する方向の断面形状が凸状の円弧状となるように形成されている。裏面30bは、板状部材30の長手方向に直行する方向の断面形状が、本体円弧部30a1の形状に対応する凹状の円弧状となるように形成されている。そして、板状部材30の長手方向に沿って、裏面30bの中央部に線状の突起として中央突起30c1が形成されている。さらに、板状部材30の長手方向に沿って、裏面30bの両端部に線状の突起として端部突起30c2が形成されている。裏面30bと中央突起30c1及び端部突起30c2の間の空間は、空気の通路となり、矢印B4に示すように、裏面30bに沿って空気が流れることを可能にしている。このことは、特に、本体部18の裏面18bにおいて重要な意味を有する。
【0033】
中央突起30c1の高さh1は端部突起30c2の高さh2以下の高さに規定されている。
図4に示すように、高さh1及びh2は、表面30aの最も高い部分からの距離として規定される。このため、フック部12を外部の棒状部材に掛けたときに、フック部12の裏面12b(
図2参照)と棒状部材の接点は、少なくとも、2つの端部突起30c2となる。あるいは、その接点は、2つの端部突起30c2及び中央突起30c1となり、ハンガー10が棒状部材に掛けられる状態が安定する。
【0034】
板状部材30の中央円弧部30a1(
図5参照)の表面30aと裏面30bとの距離として規定される板状部材30の厚さt1は、中央突起の厚さt2よりも小さい(
図4参照)。また、中央突起の厚さt2は、端部突起30c2において最も厚さが大きい部分の厚さである最大厚さt3よりも小さい(
図4参照)。板状部材30の幅X2は、例えば、12ミリメートル(mm)である。例えば、厚さt1は0.6ミリメートル(mm)であり、厚さt2は0.8ミリメートル(mm)であり、最大厚さt3は1.0ミリメートル(mm)である。
【0035】
板状部材30の長手方向と直行する方向の断面形状において、本体部18を構成する板状部材30の表面30aにおける接線の方向は、板状部材30の表面30aの下端部近傍において、鉛直方向、または、鉛直方向と所定の許容範囲だけ乖離した方向である。
図4及び
図5に示すように、板状部材30の表面30aの下端部30c2は、位置30Ca1から始まり、位置30ca2を通って、最下点30ca3を通り、終点位置30ca4で終わる。位置30ca1と位置30ca2の間の接線は、鉛直方向と近似する方向である。終点位置30ca4は、端部突起30c2の最下部よりもわずかに上方に位置する。
【0036】
板状部材30は中央突起30c1と端部突起30c2により外力による変形が防止されている。すなわち、板状部材30の長手方向に直行する方向の断面形状が凸状の円弧状であるが、その円弧状の形状は、中央突起30c1によって効果的に変形が防止される。さらに、板状部材30の長手方向と直行する方向については、中央突起30c1と端部突起30c2によって効果的に変形が防止される。すなわち、一本の板状部材30に対して、加工機械によって曲げ加工を行って、フック部12、首部14、本体部18及び底辺部20を構成する板状部材30の裏面30b、先端突起30c1及び端部突起30c2を維持しつつハンガー10を形成することによって、フック部12、首部14、本体部18の裏面30b、先端突起30c1及び端部突起30c2は連続した構成となる。そして、中央突起30c1と端部突起30c2により、
図1の矢印A1,A2,B1及びB2方向からの外力による変形が効果的に防止されるから、板状部材30の厚さを薄く形成することが可能になる。
【0037】
<<首部の構成>>
図6乃至
図13を参照して、首部14について説明する。
図6に示すように、首部14において、フック部12から下方に延在する板状部材30の部分を下方延在部30D、本体部18から上方に延在する板状部材30の部分を上方延在部30Uとする。本発明において、少なくとも、下方延在部30Dの裏面の端部突起30c2と上方延在部30Uの裏面の端部突起30c2が当接する状態において、下方延在部30Dと上方延在部30Uとが固定される。本実施形態においては、
図12及び
図13に示すように、下方延在部30Dの裏面の端部突起30c2と上方延在部30Uの裏面の端部突起30c2が当接し、さらに、下方延在部30Dの裏面の中央突起30c1と上方延在部30Uの裏面の中央突起30c1とが当接する状態において、下方延在部30Dと上方延在部30Uとが固定されている。
【0038】
図7は、首部14において、固定用ピン16を配置する前の側面図である。すなわち、首部14を矢印A1(
図2参照)から視た図である。
図8は、首部14において、固定用ピン16を配置する前の正面図であり、説明の便宜のため、紙面手前の端部突起30c2は記載を省略している。
図7及び
図8に示すように、首部14の板状部材30の中央部には貫通孔14cが2つ形成されている。2つの貫通孔14cは、上下方向に所定の距離だけ乖離している。
図7及び
図8から明らかなように、貫通孔14cは、中央突起30c1の一部を切断しているが、端部突起30c2には影響を与えない。すなわち、貫通孔14cと端部突起30c2との間には所定の距離(
図11の距離L1)がある。したがって、
図7から明らかなように、板状部材30の長手方向と直行する方向において、貫通孔14cと端部突起30c2との間には空間が存在する。また、貫通孔14cに固定用ピン16を挿入した状態において、固定用ピン16と端部突起30c2との間には所定の距離(
図11の距離L1)がある。
【0039】
図9及び
図10は、固定用ピン16が貫通孔14cに配置され、さらに固定される状態を示す。
図9及び
図10においては、
図8と同様に、紙面手前の端部突起30c2は省略されている。
図8に示す貫通孔14cに、
図9に示すように、固定用ピン16が配置される。固定用ピン16は、アルミニウム合金で形成されている。固定用ピン16の一方の端部は拡径しており、固定用ピン16が貫通孔14cに配置されると位置決めされる。
図9に示すように、固定用ピン16の拡径していない方の端部は、貫通孔14cを貫通し、首部14a(板状部材30の表面30a)から突出する。
図10に示すように、固定用ピン16の首部14a(板状部材30の表面30a)から突出した部分がつぶされると、固定用ピン16は首部14において固定され、同時に、下方延在部30Dと上方延在部30Uが固定される。
【0040】
図11は、ハンガー10の本体部18の中央部と首部14を下方から(
図2の矢印B2方向)から見た図である。
図11に示すように、固定用ピン16と端部突起30c2との間には距離L1が確保され、これにより、空間Sが形成される。
【0041】
図12に示すように、首部14において、固定用ピン16が存在しない位置(
図6のAA線の位置)においては、中央突起30c1と裏面30bとで空間Sが形成される。
図13に示すように、首部14において、固定用ピン16が存在する位置(
図6のBB線の位置)においては、固定用ピン16と端部突起30c2との間に所定の距離が存在するから、やはり、空間Sが形成される。これにより、首部14を上下方向に空気が通過することが可能になる。
図14に示すように、ハンガー10にセーター300を掛けた場合において、矢印B3に示すように、セーター300の内部の空気が首部14を通過して外部に出ることが可能であり、また、外部の空気が首部14を通過して内部に入ることが可能になる。
【0042】
首部14に限らず、上述のように、裏面30bと中央突起30c1及び端部突起30c2の間の空間は、中央突起30c1及び端部突起30c2が空気を積極的に案内する案内手段として機能する通路となり、矢印B4に示すように、裏面30bに沿って空気を流すことが可能になっており(
図3参照)、特に、本体部18の裏面18bにおいて重要な意味を有する。本体部18の板状部材30の裏面30b(本体部の裏面18b)には、中央突起30c1と端部突起30c2によって、空気の通路が形成されている。そして、本体部18の板状部材30の裏面18bにおける空気の通路と首部14における空気の通路が一体となる。これにより、ハンガー10に掛けたセーター300の内部の空気は、矢印B4に示すように、本体部18の裏面18bの空気の通路を介して首部14の空気の通路に流入し、外部に放出される。これにより、セーター300内部に、例えば、湿気を含む空気が滞留し、セーター300を棄損する等の悪影響を効果的に低減することができる。
【0043】
<第二の実施形態>
図15を参照して、第二の実施形態のハンガー10Aについて説明する。ハンガー10Aは、第一の実施形態のハンガー10とは異なり、底辺部20が存在しない。ハンガー10Aの構成は、底辺部20の有無以外については、ハンガー10と同一である。
【0044】
ハンガー10Aは、底辺部20を有さないことにより、一層軽量化が可能になっている。
【0045】
<本発明の実施品>
図16乃至
図19は、本発明に係るハンガーの実施品を示す図である。
図16は実施品の正面図であり、
図17は斜視図であり、
図18はフック部の先端部の拡大図である。
図18は、
図16のハンガーの首部を内側から(矢印B2方向から)視た図である。
図16において、固定用ピン16と端部突起30c2との間に空間Sが形成されている。
【0046】
なお、本発明は本実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。例えば、上述の第一の実施形態及び第ニの実施形態の構成を、適宜、組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10,10A 衣服用ハンガー
12 フック部
14 首部
16 固定用ピン
18 本体部
20 底辺部
30 板状部材
30c1 中央突起
30c2 端部突起
【手続補正書】
【提出日】2022-10-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フック部、本体部、及び、前記フック部と前記本体部との間の部分である首部とを備える衣服用ハンガーであって、
前記フック部、前記本体部及び前記首部は、アルミニウム合金で形成される板状部材で形成され、
前記板状部材の表面は、前記フック部、前記本体部及び前記首部の表面であり、前記板状部材の長手方向に直行する方向の断面形状が凸状の円弧状となるように形成されており、
前記板状部材の裏面は、前記フック部、前記本体部及び前記首部の裏面であり、前記板状部材の長手方向に直行する方向の断面形状が、前記板状部材の表面の形状に対応する凹状の円弧状となるように形成されており、かつ、前記板状部材の長手方向に沿って、前記裏面の中央部に線状の突起として中央突起が形成されており、さらに、前記板状部材の長手方向に沿って、前記裏面の両端部に線状の突起として端部突起が形成されており、
前記板状部材の表面の最も高い位置からの距離として規定される高さにおいて、前記中央突起の高さは前記端部突起の高さ以下の高さに規定されており、
前記板状部材の表面と裏面との距離として規定される厚さは、前記中央突起の厚さよりも小さく、
前記本体部の外側の輪郭は、正面視において、所定の曲率半径を有する円弧を形成している、衣服用ハンガー。
【請求項2】
前記衣服用ハンガーにおいて、前記フック部が位置する側を上方、前記本体部が位置する側を下方と定義すると、正面視において、前記本体部の外側の輪郭における接線の方向は、前記本体部の下端部近傍において、鉛直方向、または、鉛直方向と所定の許容範囲だけ乖離した方向であり、
前記板状部材の長手方向と直行する方向の断面形状において、前記本体部を構成する前記板状部材の表面における接線の方向は、前記板状部材の表面の下端部近傍において、鉛直方向、または、鉛直方向と所定の許容範囲だけ乖離した方向である、請求項1に記載の衣服用ハンガー。
【請求項3】
正面視において、前記本体部は直線状の底辺部を有し、前記円弧状の部分は両下端部において前記底辺部と連続している、請求項1または請求項2に記載の衣服用ハンガー。
【請求項4】
前記首部において、前記フック部から下方に延在する前記板状部材の部分である下方延在部の裏面の前記端部突起と、前記本体部から上方に延在する前記板状部材の部分である上方延在部の裏面の前記端部突起が当接する状態において、前記下方延在部と前記上方延在部が固定される、請求項1または請求項2に記載の衣服用ハンガー。
【請求項5】
前記首部において、前記下方延在部の裏面の前記中央突起と前記上方延在部の裏面の前記中央突起が当接する状態において、前記下方延在部と前記上方延在部が固定される、請求項4に記載の衣服用ハンガー。
【請求項6】
前記下方延在部と前記上方延在部は、前記下方延在部と前記上方延在部を貫通する固定具によって固定され、前記固定具と前記端部突起との間に所定の距離がある構成として形成されている、請求項5に記載の衣服用ハンガー。