(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039570
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】ベッドパン
(51)【国際特許分類】
A61G 9/00 20060101AFI20240314BHJP
A61G 7/02 20060101ALI20240314BHJP
A61F 5/44 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
A61G9/00 H
A61G7/02
A61F5/44 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144222
(22)【出願日】2022-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】597047163
【氏名又は名称】日本モウルド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087778
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 明夫
(72)【発明者】
【氏名】石原 雄大
【テーマコード(参考)】
4C040
4C098
4C341
【Fターム(参考)】
4C040AA11
4C040FF12
4C040FF17
4C098AA09
4C098CC36
4C098CD01
4C098CE11
4C341JK04
4C341JK08
4C341JK12
4C341JK13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】病人の体重を支える強度を有し、排泄物を収容して破砕機へ持ち運ぶ際には零れないパルプモールド製のベッドパンを提供する。
【解決手段】容器部1と中蓋部5と上蓋部3とから成るベッドパン。容器部と中蓋部は中蓋ヒンジ40を介して連設され、中蓋ヒンジにて折り畳み可能で、容器部と上蓋部は上蓋ヒンジ20を介して連設され、上蓋ヒンジ20にて折り畳み可能である。上蓋部は、容器部に上蓋ヒンジを介して連設される上蓋基部31と、上蓋基部から後方側へ延設ヒンジ25を介して連設された上蓋延設部36とから成る。上蓋基部と上蓋延設部とは、延設ヒンジにて折り畳み可能である。上蓋部は使用後の上側への折り畳み状態で収容凹部10の開口の一部と嵌合する第1嵌合凸部312,313,363,364及び上側への折り畳み状態の中蓋部の先端部の凹部569c,569a,569bと嵌合する第2嵌合凸部369c,369a,369bを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面視が略長方形状を成し排泄物を収容するための収容凹部の開口の後端縁が前記長方形状の後方側の短辺に沿う容器部と、前記容器部の前端部に中蓋ヒンジを介して折り畳み可能に連設された中蓋部と、前記容器部の後端部に上蓋ヒンジを介して折り畳み可能に連設された上蓋基部を有するとともに更に延設ヒンジを介して折り畳み可能に連設された上蓋延設部を有する上蓋部と、を有し、
使用時には、前記中蓋部を上側へ折り畳むことで前記容器部の前寄り部位の上面側を覆うとともに、前記上蓋部を下側へ折り畳むことで前記容器部の後端外側面を前記上蓋基部で覆い更に前記上蓋延設部で前記容器部の後寄り部位の下面側を覆い、
使用後には、前記上蓋部を上側へ折り畳むことで前記容器部の後寄り部位の上面側を覆い更に前記上側への折り畳み状態の中蓋部の先端部を覆う、
パルプモールド製のベッドパンであって、
前記上蓋部は、前記使用後の上側への折り畳み状態で前記収容凹部の開口の一部と嵌合する第1嵌合凸部及び前記上側への折り畳み状態の中蓋部の先端部の凹部と嵌合する第2嵌合凸部を有する、
ことを特徴とするパルプモールド製のベッドパン。
【請求項2】
請求項1に於いて、
前記容器部は、上面視がコの字形状を成し該コの字の縦棒部分が前記長方形状の前方側の短辺に沿い各横棒部分が各々長辺の前寄り部位に沿う嵌合凹部を有し、
前記中蓋部は、前記使用時及び使用後の上側への折り畳み状態で前記嵌合凹部に嵌合する逆コの字形状の嵌合凸部を有し、
前記嵌合凹部の底部は、前記コの字に沿って字幅で凹凸する凹所及び凸所を有し、
前記嵌合凸部の頂部は、前記嵌合凹部の凹所及び凸所に対応して凸凹する凸所及び凹所を有する、
ことを特徴とするパルプモールド製のベッドパン。
【請求項3】
請求項2に於いて、
前記容器部の収容凹部は、開口の前端縁が前記コの字の内側で該コの字の縦棒部分に沿い、前記開口の前端縁の両端に連なる各側縁が各々前記コの字の内側で該コの字の各横棒部分に沿い、
前記使用後の上側への折り畳み状態に於いて前記上蓋部の第2嵌合凸部が嵌合する前記中蓋部の先端部の凹部の反対面側である凸部は、前記収容凹部の開口の前記各側縁の後端及び前記コの字形状の嵌合凹部の各横棒部分の先端の凹所と嵌合する、
ことを特徴とするパルプモールド製のベッドパン。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れかに於いて、
前記容器部の収容凹部は、前記使用後の前記上蓋部の上側への折り畳み状態に於いて前記上蓋部により覆われる部位の直下の収容凹部底に、球面の一部を成す形状の底凸部を有する、
ことを特徴とするパルプモールド製のベッドパン。
【請求項5】
請求項1~請求項3の何れかに於いて、
前記中蓋ヒンジ、上蓋ヒンジ、延設ヒンジは、それぞれ、横断面が円弧状を成す2本の凸条部と該2本の凸条部間に連設され横断面が円弧状を成す凹条部とから成る、
ことを特徴とするパルプモールド製のベッドパン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病床に臥した状態の病人や要介護者にあてがい、その排泄物を受けて収容するベッドパン(便器)に関する。詳しくは、排泄物とともに破砕して下水に流すことができるパルプモールド製のベッドパンに関する。言い換えれば、使用後にベッドパンウォッシャー等を用いての洗浄作業が不要なベッドパンに関する。
【背景技術】
【0002】
病人や要介護者の排泄物を収容するベッドパンとして、従来、樹脂製や金属製のものが使用されているが、使い捨てではないため再使用のための手間隙を要する洗浄が必要であり、洗浄作業時の感染防止上の観点からも、排泄物と一緒に破砕して下水に流すことができる使い捨て可能なベッドパンが望まれている。
排泄物と一緒に破砕して下水に流すことができるパルプモールド製のベッドパンとしては、US10,137,046B1(特許文献1)を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1のベッドパンを説明する。
図5と
図6は、特許文献1の図面(Fig.1、Fig.3、Fig.5)を転載したものである。ただし、図中、S、R1、R2を付記して示す各一点鎖線矢印は、本願の出願人が説明の便宜のために追加したものである。この項の説明では、原則として特許文献1の語句や符号を用い、適宜、本願明細書の語句や符号を直後の括弧書きで対応付けることとする。
【0005】
図5及び
図6に示す特許文献1のベッドパンは、ベッドパン20(容器部1)と、カバー120(中蓋部5)と、蓋60(上蓋部3)とから成る。
使用時には、カバー120をベッドパン20の表面側に被せる(一点鎖線矢印S)とともに、蓋60を裏面側へ折り畳む(一点鎖線矢印R1)。これにより、
図6・Fig.3の状態となる。この状態で病人や要介護者にあてがって、その排泄物を収容する。
使用後には、蓋60を表側へ折り返して(一点鎖線矢印R2)、ベッドパン20の表面側を覆う。なお、カバー120は使用時と同じである。これにより、
図6・Fig.5の状態となる。この状態で、作業者が破砕機まで手で持ち運び、収容した排泄物とともに破砕して、下水へ流す。
【0006】
特許文献1のベッドパンは、
図6・Fig.3に示す状態(使用状態)では、カバー120(中蓋部5)のカバーベースリッジ150が、ベッドパン20(容器部1)のフロントトップキャビティ40に収容されることで、カバー120(中蓋部5)がベッドパン20(容器部1)に取り付けられる。この取り付けは、ただ単に、カバーベースリッジ150をフロントトップキャビティ40に収容することで実現されるため、しっかりとした固定ではなく、高強度化への寄与は、大きくないと推定される。
【0007】
一方、
図6・Fig.5に示す状態(使用後)では、蓋60(上蓋部3)の各突起76が、(カバー120(中蓋部5)の各孔(不図示)を介して)、ベッドパン20(容器部1)のフロントトップキャビティ40の各先端の各エンド46によりぴったりと受け取られることで、蓋60が、カバー120の先端及びベッドパン20の上面側を覆って取り付けられる。この取り付けは、ただ単に、(比較的小さな)突起76-エンド46を用いるものであるため、それほど強固ではないと推定され、破砕機への持ち運び時に十分に注意しないと、蓋60が外れて中の排泄物が零れる等の不具合が生じ易いと思われる。
【0008】
本発明は、病人や要介護者の体重を支えることができる十分な強度を有し、破砕機へ持ち運ぶ際には過度に注意しなくとも容器内の収容物が零れることを防止できるパルプモールド製のベッドパンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の構成を、下記[1]~[5]に記す。なお、この項([課題を解決するための手段])と次項([発明の効果])に於いて、符号は理解を容易にするために付したものであり、本発明を符号の構成に限定する趣旨ではない。
[1]発明1
上面視が略長方形状を成し排泄物を収容するための収容凹部10の開口の後端縁が前記長方形状の後方側の短辺に沿う容器部1と、前記容器部1の前端部に中蓋ヒンジ40を介して折り畳み可能に連設された中蓋部5と、前記容器部1の後端部に上蓋ヒンジ20を介して折り畳み可能に連設された上蓋基部31を有するとともに更に延設ヒンジ25を介して折り畳み可能に連設された上蓋延設部36を有する上蓋部3と、を有し、
使用時には、前記中蓋部5を上側へ折り畳む(S)ことで前記容器部1の前寄り部位の上面側を覆うとともに、前記上蓋部3を下側へ折り畳む(R1)ことで前記容器部1の後端外側面を前記上蓋基部31で覆い更に前記上蓋延設部36で前記容器部1の後寄り部位の下面側を覆い、
使用後には、前記上蓋部3を上側へ折り畳む(R2)ことで前記容器部1の後寄り部位の上面側を覆い更に前記上側への折り畳み状態の中蓋部5の先端部を覆う、
パルプモールド製のベッドパンであって、
前記上蓋部3は、前記使用後の上側への折り畳み状態で前記収容凹部10の開口の一部と嵌合する第1嵌合凸部312,313,313,363,364,363,364及び前記上側への折り畳み状態の中蓋部5の先端部の凹部569c,569a,569bと嵌合する第2嵌合凸部369c,369a,369bを有する、
ことを特徴とするパルプモールド製のベッドパン。
図中、破線で示す各引き出し線は、当該破線が指す部位の裏側を指すことを表わす。
[2]発明2
発明1に於いて、
前記容器部1は、上面視がコの字形状を成し該コの字の縦棒部分が前記長方形状の前方側の短辺に沿い各横棒部分が各々長辺の前寄り部位に沿う嵌合凹部15を有し、
前記中蓋部5は、前記使用時及び使用後の上側への折り畳み状態で前記嵌合凹部15に嵌合する逆コの字形状の嵌合凸部55を有し、
前記嵌合凹部15の底部は、前記コの字に沿って字幅で凹凸する凹所151a,153a,155c,153b,151b及び凸所152a,154a,154b,152bを有し、
前記嵌合凸部55の頂部は、前記嵌合凹部15の凹所及び凸所に対応して凸凹する凸所551a,553a,555c,553b,551b及び凹所552a,554a,554b,552bを有する、
ことを特徴とするパルプモールド製のベッドパン。
コの字に沿って字幅で凹凸するとは、凹所及び凸所の幅サイズが、コの字の縦棒部分や横棒部分の当該高さ位置での幅サイズと同じであることを言うものとする。
[3]発明3
発明2に於いて、
前記容器部1の収容凹部10は、開口の前端縁が前記コの字の内側で該コの字の縦棒部分に沿い、前記開口の前端縁の両端に連なる各側縁が各々前記コの字の内側で該コの字の各横棒部分に沿い、
前記使用後の上側への折り畳み状態に於いて前記上蓋部3の第2嵌合凸部369c,369a,369bが嵌合する前記中蓋部5の先端部の凹部569c,569a,569bの反対面側である凸部551c,551a,551bは、前記収容凹部10の開口の前記各側縁の後端及び前記コの字形状の嵌合凹部15の各横棒部分の先端の凹所151a,151bと嵌合する、
ことを特徴とするパルプモールド製のベッドパン。
前記収容凹部の開口の前記各側縁の「後端」は、前記コの字形状の嵌合凹部15の各横棒部分の「先端」に相当する。
[4]発明4
発明1~発明3の何れかに於いて、
前記容器部1の収容凹部10は、前記使用後の前記上蓋部3の上側への折り畳み状態に於いて前記上蓋部3により覆われる部位の直下の収容凹部底100に、球面の一部を成す形状の底凸部101を有する、
ことを特徴とするパルプモールド製のベッドパン。
[5]発明5
発明1~発明3の何れかに於いて、
前記中蓋ヒンジ40、上蓋ヒンジ20、延設ヒンジ25は、それぞれ、横断面が円弧状を成す2本の凸条部401,401、201,201、251,251と該2本の凸条部間に連設され横断面が円弧状を成す凹条部402、202、252とから成る、
ことを特徴とするパルプモールド製のベッドパン。
【発明の効果】
【0010】
発明1は、上面視が長方形状を成し排泄物を収容するための収容凹部10の開口の後端縁が前記長方形状の後方側の短辺に沿う容器部1と、前記容器部1の前端部に中蓋ヒンジ40を介して折り畳み可能に連設された中蓋部5と、前記容器部1の後端部に上蓋ヒンジ20を介して折り畳み可能に連設された上蓋基部31を有するとともに更に延設ヒンジ25を介して折り畳み可能に連設された上蓋延設部36を有する上蓋部3とを有し、使用時には前記中蓋部5を上側へ折り畳む(S)ことで前記容器部1の前寄り部位の上面側を覆うとともに前記上蓋部3を下側へ折り畳む(R1)ことで前記容器部1の後端外側面を前記上蓋基部31で覆い更に前記上蓋延設部36で前記容器部1の後寄り部位の下面側を覆い、使用後には前記上蓋部3を上側へ折り畳む(R2)ことで前記容器部1の後寄り部位の上面側を覆い更に前記上側への折り畳み状態の中蓋部5の先端部を覆う、パルプモールド製のベッドパンであって、前記上蓋部3は前記使用後の上側への折り畳み状態で前記収容凹部10の開口の一部と嵌合する第1嵌合凸部312,313,313,363,364,363,364及び前記上側への折り畳み状態の中蓋部5の先端部の凹部569c,569a,569bと嵌合する第2嵌合凸部369c,369a,369bを有するため、排泄物を収容後、上蓋部3が中蓋部5及び収容凹部10に嵌合して収容凹部10を密閉することができ、破砕処理機への搬送途中等に排泄物が漏れ出る等の不具合を確実に防止することができる。
発明2は、発明1に於いて、前記容器部1は上面視がコの字形状を成し該コの字の縦棒部分が前記長方形状の前方側の短辺に沿い各横棒部分が各々長辺の前寄り部位に沿う嵌合凹部15を有し、前記中蓋部5は前記使用時及び使用後の上側への折り畳み状態で前記嵌合凹部15に嵌合する逆コの字形状の嵌合凸部55を有し、前記嵌合凹部15の底部は前記コの字に沿って字幅で凹凸する凹所151a,153a,155c,153b,151b及び凸所152a,154a,154b,152bを有し、前記嵌合凸部55の頂部は、前記嵌合凹部15の凹所及び凸所に対応して凸凹する凸所551a,553a,555c,553b,551b及び凹所552a,554a,554b,552bを有するため、前記中蓋部5が、使用時及び使用後に於いて収容凹部10に嵌合して、破砕処理機への搬送途中等に排泄物が漏れ出る等の不具合を更に確実に防止することができる。
発明3は、発明2に於いて、前記容器部1の収容凹部10は、開口の前端縁が前記コの字の内側で該コの字の縦棒部分に沿い、前記開口の前端縁の両端に連なる各側縁が各々前記コの字の内側で該コの字の各横棒部分に沿い、前記使用後の上側への折り畳み状態に於いて前記上蓋部3の第2嵌合凸部369c,369a,369bが嵌合する前記中蓋部5の先端部の凹部569c,569a,569bの反対面側である凸部551c,551a,551bは、前記収容凹部10の開口の前記各側縁の後端及び前記コの字形状の嵌合凹部15の各横棒部分の先端の凹所151a,151bと嵌合するため、上蓋部5と容器部1との嵌合が、中蓋部5を介して二重に行われることとなり、破砕処理機への搬送途中等に排泄物が漏れ出る等の不具合を更に確実に防止することができる。
発明4は、発明1~発明3の何れかに於いて、前記容器部1の収容凹部10は、前記使用後の前記上蓋部3の上側への折り畳み状態に於いて前記上蓋部3により覆われる部位の直下の収容凹部底100に、球面の一部を成す形状の底凸部101を有するため、使用時に於ける排泄物の跳ね返りを良好に防止することができる。
発明5は、発明1~発明3の何れかに於いて、前記中蓋ヒンジ40、上蓋ヒンジ20、延設ヒンジ25は、それぞれ、横断面が円弧状を成す2本の凸条部401,401、201,201、251,251と該2本の凸条部間に連設され横断面が円弧状を成す凹条部402、202、252とから成るため、各ヒンジの耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態のベッドパンの斜視図。中蓋部5及び上蓋部3を開いて容器部1の収容凹部10等を露出した状態を示す。
【
図2】
図1の中蓋部5及び容器部1の前寄り部位の拡大図。
【
図5】特許文献1のFig.1を転載した図。符号は特許文献1で使用されている符号を転載。ただし、各一転鎖線矢印及び各一転鎖線矢印に付記した符号S,R1,R2は、出願人が加筆したものである。
【
図6】特許文献1のFig.3、Fig5を転載した図。符号は特許文献1で使用されている符号を転載。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施の形態のベッドパンは、パルプモールド製である。
即ち、古紙等のパルプ繊維を水に混ぜ込んだ原料泥漿へ成形型を浸漬し、背面側からの吸引により成形型面上に原料を堆積させ、成形型を原料泥漿から引き上げた後、成形型面上から堆積物を取り外して乾燥させることによりパルプモールド成形品を得る、という公知の成形法により成形したものである。ここで、成形型面は、
図1のベッドパンの凹凸に対応する凸凹を成す。
【0013】
以下、図面を参照して、実施の形態のベッドパンを説明する。各図中、破線で示す引き出し線は、当該破線が指す部位の裏面側を指すものである。
図1に示すように、実施の形態のベッドパンは、容器部1と、中蓋部5と、上蓋部3とから成る。容器部1と中蓋部5は中蓋ヒンジ40を介して連設されており、中蓋ヒンジ40にて折り畳み可能である。また、容器部1と上蓋部3は上蓋ヒンジ20を介して連設されており、上蓋ヒンジ20にて折り畳み可能である。この上蓋部3は、容器部1に上蓋ヒンジ20を介して連設される上蓋基部31と、該上蓋基部31から更に後方側へ延設ヒンジ25を介して連設された上蓋延設部36とから成る。上蓋基部31と上蓋延設部36とは、延設ヒンジ25にて折り畳み可能である。
本明細書では、容器部1から見て中蓋部5の側(
図1で右上方)を「前」と言い、上蓋部3の側(
図1で左下方)を「後」と言うものとする。
【0014】
使用時、即ち、病床に臥した状態の病人や要介護者の排泄物を収容するためにベッドパンをあてがう場合には、中蓋部5を一点鎖線矢印Sの如く上側へ折り畳み、容器部1の前寄り部位の上面側を覆う。また、上蓋部3を一点鎖線矢印R1の如く下側へ折り畳み、容器部1の後端外側面を上蓋基部31で覆うとともに、更に、上蓋延設部36で容器部1の後寄り部位の下面側を覆う。この動きは特許文献1のFig.1と同様であり、この動き後の全体的な外観は特許文献1のFig.3と略同様である。
【0015】
容器部1は上面視が略長方形状を成し、長方形の前寄り部位に、上面視がコの字形状を成す凹部(嵌合凹部15)を有する。コの字の縦棒部分は上記長方形の前方側の短辺に沿い、上下の横棒部分は各々上記長方形の長辺の前寄り部位に沿う。また、コの字の縦棒部分上端及び横棒部分上端の各開口の幅(各棒部分を横切る方向の長さ)は、上記長方形の短辺の長さの1/8~1/4程度、好ましくは1/7~1/5程度、さらに好ましくは1/6程度である。
【0016】
嵌合凹部15の底部には、横棒部分-縦棒部分-横棒部分の棒方向に沿って凹凸する凹所及び凸所が形成されている。即ち、凹所151a,153a,155c,153b,151b、及び、凸所152a,154a,154b,152bが形成されている。各凹所及び凸所の幅サイズは、当該の凹所及び凸所の高さ位置に於ける横棒部分-縦棒部分-横棒部分の幅サイズと同一である。言い換えれば、各凹所及び凸所は、横棒部分-縦棒部分-横棒部分の幅いっぱいに、即ち、コの字の字幅で形成されている。
【0017】
中蓋部5は、前記折り畳み状態(容器部1の前寄り部位の上面側を覆った状態)で容器部1の嵌合凹部15に嵌合する逆コの字形状の凸部(嵌合凸部55)を有する。
嵌合凸部55の頂部には、逆コの字の横棒部分-縦棒部分-横棒部分の棒方向に沿って凸凹する凸所及び凹所が形成されている。即ち、嵌合凹部15の凹所及び凸所に対応する凸所551a,553a,555c,553b,551b、及び、凹所552a,554a,554b,552bが形成されている。各凸所及び凹所の高さは、上記折り畳み状態で嵌合凹部15の各凹所及び凸所の上面に、嵌合凸部55の対応する各凸所及び凹所の対向する面が当接する高さである。
【0018】
さらに、中蓋部5の前端(
図1の状態での前端)には、嵌合凸部55の凸所551aと凸所551bに挟まれて孤立した凸部(独立凸部)551cが形成されている。この独立凸部551cは、中蓋部5の前記折り畳み状態で、嵌合凹部15のコの字の横棒部分の先端付近にて、収容凹部10の前寄り部分の側壁105-105間に嵌合する。この嵌合には、凸所551a-凹所151aの嵌合による圧力、及び、凸所551b-凹所151bの嵌合による力が、両側壁105-105の側から加わるため、強固である。当然であるが、この力は、逆方向へも作用する。
【0019】
このように嵌合凹部15-嵌合凸部55、及び、独立凸部551c-収容凹部10の前寄り部分の側壁105,105が形成されているため、中蓋部5が容器部1の前寄り部位の上面側を覆ったとき、容器部1の嵌合凹部15に中蓋部5の嵌合凸部55が嵌合するとともに、収容凹部側壁105-105間に独立凸部551cが嵌合して、中蓋部5が容器部1にしっかりと固定される。また、十分な強度を得る。
【0020】
使用後、即ち、排泄物を収容したベッドパンを破砕機へ持ち運ぶ場合には、中蓋部5は使用時と同じ状態(折り畳んだ状態)のままで、上蓋部3を一点鎖線矢印R2の如く上側へ折り畳む。これにより、容器部1の後寄り部位の上面側が覆われるとともに、中蓋部5の先端部が上蓋部3の先端部によって覆われる。この動きは特許文献1のFig.1と同様であり、この動き後の全体的な外観は特許文献1のFig.5と略同様である。
【0021】
上面視が略長方形状を成す容器部1は、排泄物を受けて収容するための収容凹部10を有し、収容凹部底100には、上記長方形の長手方向後方寄り・幅方向中央部には、上方へ突出する球面状の底凸部101が設けられている。この底凸部101により、排泄物が人体から排出される時の跳ね返りが抑制される。
【0022】
収容凹部10の開口の後方側の縁(収容凹部後縁)は、上記長方形の後方側の短辺に沿う。この収容凹部後縁は、収容凹部10の後方側の側壁102の上端縁である。また、収容凹部後縁の両端は、上記長方形の両長辺の後端に至る。
収容凹部10の開口の前方側の縁(収容凹部前縁)と、該収容凹部前縁の両端に連なる前寄り部分の両縁(収容凹部前寄り縁)は、前記嵌合凹部15のコの字の内側へ入り込む位置に在る。即ち、収容凹部前縁はコの字の縦棒に沿い、各収容凹部前寄り縁は、各々コの字の横棒に沿うように設けられている。各収容凹部前寄り縁は、両側壁105,105の上端縁である。
収容凹部10の開口の後寄りの縁、即ち、上記長方形の両長辺に沿う縁(収容凹部後寄り縁)は、該長辺下の側壁103,103の上端縁である。
各収容凹部前寄り縁と収容凹部後寄り縁との間には、各々収容凹部斜め縁が在る。各収容凹部斜め縁は、各々側壁104,104の上端縁である。
【0023】
上蓋部3は、使用後の上側への折り畳み状態で収容凹部10の開口の一部と嵌合する第1嵌合凸部312,313,313,363,364,363,364を有する。開口の一部とは、収容凹部後縁、収容凹部後寄り縁、及び、収容凹部斜め縁を言う。
また、上蓋部3は、使用後の上側への折り畳み状態で、使用中・使用後の折り畳み状態の中蓋部5の先端部の凹部569c,569a,569bと嵌合する第2嵌合凸部369c,369a,369bを有する。なお、中蓋部の先端部の凹部569c,569a,569bは、それぞれ、中蓋部5の独立凸部551c、中蓋部5の嵌合凸部55の凸所551a、551bの裏面側の部位である。
【0024】
このように、収容凹部10の開口-第1嵌合凸部が形成されるとともに、中蓋部5の先端部の凹部-第2嵌合凸部が形成されているため、上蓋部3が容器部1の後寄り部位の上面側を覆ったとき、容器部1の収容凹部の開口の一部に第1嵌合凸部が嵌合し、中蓋部5の先端部の凹部に第2嵌合凸部が嵌合して、上蓋部3が容器部1及び中蓋部5にしっかりと固定される。このため、破砕機への持ち運び時に収容凹部に収容した排泄部が漏れ出ることが防止される。
【0025】
また、実施の形態のベッドパンでは、前記中蓋ヒンジ40、上蓋ヒンジ20、延設ヒンジ25は、それぞれ、横断面が上に凸の円弧状を成す2本の凸条部401,401、201,201、251,251と、該2本の凸条部間に切れ目なく連設されて横断面が下に凸の円弧状を成す凹条部402、202、252とから成るため、ヒンジが切れるという不具合を防止できる。
【符号の説明】
【0026】
1 容器部
10 収容凹部
100 収容凹部底
101 底凸部
102,103,104,105 収容凹部側壁
15 嵌合凹部
151a,151b 凹所
152a,152b 凸所
153a,153b 凹所
154a,154b 凸所
155c 凹所
20 上蓋ヒンジ
201 凸条部
202 凹条部
25 延設ヒンジ
251 凸条部
252 凹条部
3 上蓋部
31 上蓋基部
312,313 第1嵌合凸部
36 上蓋延設部
360 突設部
363,364 第1嵌合凸部
369a,369b,369c 第2嵌合凸部
40 中蓋ヒンジ
401 凸条部
402 凹条部
5 中蓋部
55 嵌合凸部
551a,551b 凸所(側凸部)
551c 凸部(独立凸部)
552a,552b 凹所
553a,553b 凸所
554a,554b 凹所
555c 凸所
569a,569b,569c 凹部
R1 使用時の上蓋部の折り畳み方向
R2 使用後の上蓋部の折り畳み方向
S 使用時・使用後の中蓋部の折り畳み方向