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特開2024-39608組成物、硬化物、素子、アンテナ、及び硬化物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039608
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】組成物、硬化物、素子、アンテナ、及び硬化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240314BHJP
   C08K 5/1535 20060101ALI20240314BHJP
   C08K 9/00 20060101ALI20240314BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240314BHJP
   H01Q 1/38 20060101ALI20240314BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K5/1535
C08K9/00
G03F7/004 505
G03F7/004 501
H01Q1/38
H01Q13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128286
(22)【出願日】2023-08-07
(31)【優先権主張番号】P 2022143433
(32)【優先日】2022-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】谷垣 勇剛
(72)【発明者】
【氏名】三井 博子
(72)【発明者】
【氏名】日比野 利保
【テーマコード(参考)】
2H225
4J002
5J045
5J046
【Fターム(参考)】
2H225AC19
2H225AC31
2H225AC35
2H225AC38
2H225AC60
2H225AC66
2H225AC68
2H225AC70
2H225AD06
2H225AE03P
2H225AE05P
2H225AE06P
2H225AF04P
2H225AM85P
2H225AM86P
2H225AN21P
2H225AN39P
2H225AN54P
2H225AN66P
2H225AN79P
2H225AN96P
2H225AP03P
2H225AP08P
2H225AP11P
2H225BA02P
2H225BA16P
2H225BA17P
2H225BA35P
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC03
2H225CC13
2H225CC21
4J002AA011
4J002AA021
4J002BD151
4J002BH021
4J002BK001
4J002CE001
4J002CF091
4J002CM021
4J002CM041
4J002CP031
4J002EH049
4J002EJ067
4J002EL076
4J002EU028
4J002FB076
4J002FB266
4J002FD096
4J002FD097
4J002FD098
4J002FD149
4J002GP00
4J002GP03
4J002HA08
5J045AA05
5J045DA10
5J045HA03
5J045LA01
5J045LA04
5J045MA07
5J045NA03
5J046AA03
5J046AB13
5J046PA06
5J046PA09
(57)【要約】
【課題】低抵抗で、伝送損失が小さく、反射抑制と信頼性に優れた透明アンテナとして機能する素子に具備される硬化物を提供すること。
【解決手段】(A)バインダー樹脂及び(D)着色剤を含有する組成物であって、該組成物を硬化した硬化物の周波数1GHzにおける誘電正接が0.00010~0.0100であって、該組成物を硬化した硬化物の膜厚1μm当たりの可視光線の波長における光学濃度が0.20~3.0である、組成物。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)バインダー樹脂及び(D)着色剤を含有する組成物であって、
該組成物を硬化した硬化物の周波数1GHzにおける誘電正接が0.00010~0.0100であって、
該組成物を硬化した硬化物の膜厚1μm当たりの可視光線の波長における光学濃度が0.20~3.0である、組成物。
【請求項2】
前記(A)バインダー樹脂の周波数1GHzにおける誘電正接が0.00010~0.0100、及び/又は、前記(D)着色剤の周波数1GHzにおける誘電正接が0.00010~0.0100である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記(A)バインダー樹脂が、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリアミドイミド、ポリアミドイミド前駆体、ポリアミド、ポリシロキサン、マレイミド樹脂、マレイミド-スチレン樹脂、マレイミド-トリアジン樹脂、マレイミド-オキサジン樹脂、テトラフルオロエチレン系ポリマー、ポリフェニレンエーテル、液晶ポリマー、シクロオレフィンポリマー、ベンゾシクロブテン樹脂、及びそれらのうち2種以上からなる共重合体(以下、「特定の(A)バインダー樹脂」)からなる群より選ばれる一種類以上を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記(A)バインダー樹脂が、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリアミドイミド、ポリアミドイミド前駆体、ポリアミド、及びそれらのうち2種以上からなる共重合体からなる群より選ばれる一種類以上を含有し、
該ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリアミドイミド、ポリアミドイミド前駆体、ポリアミド、及びそれらのうち2種以上からなる共重合体が、以下の(1)~(5)の残基からなる群より選ばれる一種類以上を有する、請求項1に記載の組成物。
(1)ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級アミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマージアミンを主成分とする、ダイマージアミン組成物に由来するジアミン残基
(2)ダイマー酸に由来するジカルボン酸残基
(3)ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級アミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマージアミンを主成分とする、ダイマージアミン組成物に由来する構造を有するテトラカルボン酸残基
(4)エステル結合を有する、ジアミン残基、ジアミン誘導体残基、ビスアミノフェノール化合物残基、又はビスアミノフェノール化合物誘導体残基
(5)エステル結合を有する、テトラカルボン酸残基、テトラカルボン酸誘導体残基、トリカルボン酸残基、トリカルボン酸誘導体残基、ジカルボン酸残基、又はジカルボン酸誘導体残基
【請求項5】
前記(D)着色剤が有機黒色顔料を含有し、
該有機黒色顔料が(DC)被覆層を有し、該(DC)被覆層がシリカ被覆層及び/又は樹脂被覆層を含有する、請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記顔料及び/又は前記被覆層がその表面に、フッ素原子を含む構造を有する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記(DC)被覆層が前記シリカ被覆層を含有し、
該シリカ被覆層が表面グラフトポリシロキサン構造からなる群より選ばれる一種類以上を含み、該表面グラフトポリシロキサン構造がフッ素原子を含むオルガノシラン単位を有する、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記(DC)被覆層が前記樹脂被覆層を含有し、
該樹脂被覆層が、特定の(A)バインダー樹脂からなる群より選ばれる一種類以上を含有する、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
さらに(C)感光剤を含有する、請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
さらに(B)ラジカル重合性化合物及び/又は(F)架橋剤を含有する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記(D)着色剤が、二色以上の着色顔料混合物及び/又は二色以上の着色染料混合物を含有し、
さらに熱発色剤及び/又は酸化発色剤を含有し、該熱発色剤及び/又は該酸化発色剤が、少なくとも2つのフェノール性水酸基を含み、かつ、芳香族構造を有する化合物を含む、請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記(D)着色剤が、二色以上の着色顔料混合物及び/又は二色以上の着色染料混合物を含有し、
さらに熱発色剤及び/又は酸化発色剤を含有し、前記組成物を硬化した硬化物が、以下の(Q1)化合物及び/又は(Q2)化合物を含む、請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
(Q1)キノン構造及び/又はキノイド構造を有し、かつ、芳香族構造を有する化合物
(Q2)2つ以上のキノン構造及び/又は2つ以上のキノイド構造を有する化合物
【請求項13】
前記(D)着色剤が、二色以上の着色顔料混合物及び/又は二色以上の着色染料混合物を含有し、
さらに熱発色剤及び/又は酸化発色剤を含有し、該熱発色剤及び/又は該酸化発色剤が、少なくとも2つのフェノール性水酸基を含み、かつ、芳香族構造を有する化合物を含有し、
該熱発色剤及び/又は該酸化発色剤が、さらに一般式(11)で表される構造を有する化合物を含有する、請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
【化1】
(一般式(11)において、R11は水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を表す。*及び*は、それぞれ独立して、結合点を表すが、窒素原子にカルボニル基は隣接しない。aは1又は2を表す。bは0又は1を表す。なおa+b=2である。)
【請求項14】
さらに下記(1α)の条件を満たす、請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
(1α)該組成物の全固形分に占めるフッ素元素の含有量が1,000質量ppm以下
【請求項15】
周波数1GHz以上の高周波の伝送、送信、及び受信からなる群より選ばれる一種類以上の素子の形成に用いられる、請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
請求項1~4のいずれかに記載の組成物を硬化した硬化物。
【請求項17】
請求項16に記載の硬化物を具備する素子。
【請求項18】
請求項17に記載の素子を具備するアンテナ。
【請求項19】
第1基板を配置する工程、金属層を成膜する工程、並びに、請求項1~4のいずれかに記載の組成物の塗膜を成膜する工程、を有する硬化物の製造方法であって、
前記組成物の塗膜を成膜する工程が、前記組成物の塗膜をパターン加工する工程を含み、
さらに金属層をパターン加工する工程を、(1a)金属層を成膜する工程の後、かつ、前記組成物の塗膜を成膜する工程の前、又は、(2a)前記組成物の塗膜をパターン加工する工程の後に有する、硬化物の製造方法。
【請求項20】
第1基板を配置する工程、金属層を成膜する工程、絶縁層を成膜する工程、並びに、請求項1~4のいずれかに記載の組成物の塗膜を成膜する工程、を有する硬化物の製造方法であって、
前記組成物の塗膜を成膜する工程が、前記組成物の塗膜をパターン加工する工程を含み、
さらに金属層をパターン加工する工程を、(1b)金属層を成膜する工程の後、かつ、絶縁層を成膜する工程の前、又は、(2b)絶縁層をパターン加工する工程を有し、該絶縁層をパターン加工する工程の後に有する、硬化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、硬化物、素子、アンテナ、及び硬化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、タブレットPC、及びテレビなどの電子端末機器の高機能化、小型化、薄型化、及び軽量化が進んでいる。これらの電子端末機器には、表示装置、半導体装置、及び金属張積層板などが具備されている。表示装置としては、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「有機EL」)ディスプレイなどが挙げられる。半導体装置としては、ファンアウト・ウェハレベル・パッケージ(以下、「FO-WLP」)構造などで封止されたプロセッサやメモリなどが挙げられる。金属張積層板としては、フレキシブルプリント回路基板などが挙げられる。
【0003】
これらの電子端末機器は、複数の通信帯域の電磁波を使用するため、通信帯域に応じた複数のアンテナが必要とされる。例えば、電子端末機器には、電話用アンテナ、Wi-Fi(Wireless-Fidelity)用アンテナ、3G(Generation)用アンテナ、4G用アンテナ、LTE(Long Term Evolution)用アンテナ、“Bluetooth”(登録商標)用アンテナ、又はNFC(Near Field Communication)用アンテナなどの複数のアンテナが搭載されている。
【0004】
しかしながら、電子端末機器の小型化、薄型化、及び軽量化に伴い、アンテナの搭載スペースは限られており、アンテナ設計の自由度は狭まっている。また近年、高速、大容量、低遅延、及び多数同時接続などを実現する無線通信として、5G及び6Gに関する技術が盛んに研究されている。そのため、限られたスペースの中で、広帯域の電磁波を送受信伝送遅延や伝送損失が小さいアンテナが求められている。
【0005】
またさらに、高速大容量無線通信の普及において、自動車のフロントガラスなどの移動体窓やビルの窓などの建造物窓に、複数の通信帯域の電磁波を送受信するアンテナを搭載することが検討されている。
【0006】
これらのような目的を達成するアンテナとして、例えば、フッ素樹脂層を有する透明基板上にアンテナパターンを具備する平面アンテナ(例えば、特許文献1参照)などが挙げられる。また高周波通信機器部品に用いられる組成物として、例えば、熱可塑性ポリエステル樹脂にカーボンブラックを配合させた組成物(例えば、特許文献2参照)などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-053564号公報
【特許文献2】特開2020-164818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の平面アンテナは、伝送遅延や伝送損失が小さい透明アンテナとしての機能が不十分であった。透明基板上にアンテナパターンとして金属メッシュ層が形成される場合、外光反射によって金属メッシュ層が視認されやすくなり、意匠性が低下する場合があった。
【0009】
一方、特許文献2に記載の組成物は、着色剤の含有量が少ないため可視光線の波長における光学濃度が低く、外光反射を抑制するには遮光性が不十分であった。
【0010】
本発明は、低抵抗で、伝送損失が小さく、反射抑制と信頼性に優れた透明アンテナとして機能する素子に適用できる組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明は、以下の[1]~[18]の構成を有する。
【0012】
[1](A)バインダー樹脂及び(D)着色剤を含有する組成物であって、該組成物を硬化した硬化物の周波数1GHzにおける誘電正接が0.00010~0.0100であって、該組成物を硬化した硬化物の膜厚1μm当たりの可視光線の波長における光学濃度が0.20~3.0である、組成物。
【0013】
[2]前記(A)バインダー樹脂の周波数1GHzにおける誘電正接が0.00010~0.0100、及び/又は、前記(D)着色剤の周波数1GHzにおける誘電正接が0.00010~0.0100である、前記[1]に記載の組成物。
【0014】
[3]前記(A)バインダー樹脂が、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリアミドイミド、ポリアミドイミド前駆体、ポリアミド、ポリシロキサン、マレイミド樹脂、マレイミド-スチレン樹脂、マレイミド-トリアジン樹脂、マレイミド-オキサジン樹脂、テトラフルオロエチレン系ポリマー、ポリフェニレンエーテル、液晶ポリマー、シクロオレフィンポリマー、ベンゾシクロブテン樹脂、及びそれらのうち2種以上からなる共重合体(以下、「特定の(A)バインダー樹脂」)からなる群より選ばれる一種類以上を含有する、前記[1]又は[2]に記載の組成物。
【0015】
[4]前記(A)バインダー樹脂が、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリアミドイミド、ポリアミドイミド前駆体、ポリアミド、及びそれらのうち2種以上からなる共重合体からなる群より選ばれる一種類以上を含有し、該ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリアミドイミド、ポリアミドイミド前駆体、ポリアミド、及びそれらのうち2種以上からなる共重合体が、以下の(1)~(5)の残基からなる群より選ばれる一種類以上を有する、前記[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
(1)ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級アミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマージアミンを主成分とする、ダイマージアミン組成物に由来するジアミン残基
(2)ダイマー酸に由来するジカルボン酸残基
(3)ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級アミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマージアミンを主成分とする、ダイマージアミン組成物に由来する構造を有するテトラカルボン酸残基
(4)エステル結合を有する、ジアミン残基、ジアミン誘導体残基、ビスアミノフェノール化合物残基、又はビスアミノフェノール化合物誘導体残基
(5)エステル結合を有する、テトラカルボン酸残基、テトラカルボン酸誘導体残基、トリカルボン酸残基、トリカルボン酸誘導体残基、ジカルボン酸残基、又はジカルボン酸誘導体残基
[5]前記(D)着色剤が有機黒色顔料を含有し、該有機黒色顔料が(DC)被覆層を有し、該(DC)被覆層がシリカ被覆層及び/又は樹脂被覆層を含有する、前記[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
【0016】
[6]前記顔料及び/又は前記被覆層がその表面に、フッ素原子を含む構造を有する、前記[5]に記載の組成物。
【0017】
[7]前記(DC)被覆層が前記シリカ被覆層を含有し、該シリカ被覆層が表面グラフトポリシロキサン構造を含み、該表面グラフトポリシロキサン構造がフッ素原子を含むオルガノシラン単位を有する、前記[5]又は[6]に記載の組成物。
【0018】
[8]前記(DC)被覆層が前記樹脂被覆層を含有し、
該樹脂被覆層が、特定の(A)バインダー樹脂からなる群より選ばれる一種類以上を含有する、前記[5]~[7]のいずれかに記載の組成物。
【0019】
[9]さらに(C)感光剤を含有する、前記[1]~[8]のいずれかに記載の組成物。
【0020】
[10]さらに(B)ラジカル重合性化合物及び/又は(F)架橋剤を含有する、前記[9]に記載の組成物。
【0021】
[11]前記(D)着色剤が、二色以上の着色顔料混合物及び/又は二色以上の着色染料混合物を含有し、さらに熱発色剤及び/又は酸化発色剤を含有し、該熱発色剤及び/又は該酸化発色剤が、少なくとも2つのフェノール性水酸基を含み、かつ、芳香族構造を有する化合物を含む、前記[1]~[10]のいずれかに記載の組成物。
【0022】
[12]前記(D)着色剤が、二色以上の着色顔料混合物及び/又は二色以上の着色染料混合物を含有し、さらに熱発色剤及び/又は酸化発色剤を含有し、前記組成物を硬化した硬化物が、以下の(Q1)化合物及び/又は(Q2)化合物を含む、前記[1]~[11]のいずれかに記載の組成物。
(Q1)キノン構造及び/又はキノイド構造を有し、かつ、芳香族構造を有する化合物
(Q2)2つ以上のキノン構造及び/又は2つ以上のキノイド構造を有する化合物
[13]前記(D)着色剤が、二色以上の着色顔料混合物及び/又は二色以上の着色染料混合物を含有し、
さらに熱発色剤及び/又は酸化発色剤を含有し、該熱発色剤及び/又は該酸化発色剤が、少なくとも2つのフェノール性水酸基を含み、かつ、芳香族構造を有する化合物を含有し、
該熱発色剤及び/又は該酸化発色剤が、さらに一般式(11)で表される構造を有する化合物を含有する、前記[1]~[12]のいずれかに記載の組成物。
【0023】
【化1】
【0024】
一般式(11)において、R11は水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を表す。*及び*は、それぞれ独立して、結合点を表すが、窒素原子にカルボニル基は隣接しない。aは1又は2を表す。bは0又は1を表す。なおa+b=2である。
【0025】
[14]さらに下記(1α)の条件を満たす、前記[1]~[13]のいずれかに記載の組成物。
(1α)該組成物の全固形分に占めるフッ素元素の含有量が1,000質量ppm以下
[15]周波数1GHz以上の高周波の伝送、送信、及び受信からなる群より選ばれる一種類以上の素子の形成に用いられる、前記[1]~[14]のいずれかに記載の組成物。
【0026】
[16]前記[1]~[15]のいずれかに記載の組成物を硬化した硬化物。
【0027】
[17]前記[16]に記載の硬化物を具備する素子。
【0028】
[18]前記[17]に記載の素子を具備するアンテナ。
【0029】
[19]第1基板を配置する工程、金属層を成膜する工程、及び前記[1]~[15]のいずれかに記載の組成物の塗膜を成膜する工程、を有する硬化物の製造方法であって、前記組成物の塗膜を成膜する工程が、前記組成物の塗膜をパターン加工する工程を含み、さらに金属層をパターン加工する工程を、(1a)金属層を成膜する工程の後、かつ、前記組成物の塗膜を成膜する工程の前、又は、(2a)前記組成物の塗膜をパターン加工する工程の後に有する、硬化物の製造方法。
【0030】
[20]第1基板を配置する工程、金属層を成膜する工程、絶縁層を成膜する工程、及び前記[1]~[15]のいずれかに記載の組成物の塗膜を成膜する工程、を有する硬化物の製造方法であって、前記組成物の塗膜を成膜する工程が、前記組成物の塗膜をパターン加工する工程を含み、さらに金属層をパターン加工する工程を、(1b)金属層を成膜する工程の後、かつ、絶縁層を成膜する工程の前、又は、(2b)絶縁層をパターン加工する工程を有し、該絶縁層をパターン加工する工程の後に有する、硬化物の製造方法。
【発明の効果】
【0031】
本発明の組成物によれば、低抵抗で、伝送損失が小さく、反射抑制と信頼性に優れた透明アンテナとして機能する素子に適用できる組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】アンテナの実施の形態1である平面アンテナを示す斜視図である。
図2図1における断面軸A-A’での断面図である。
図3】アンテナの実施の形態2である平面アンテナを示す斜視図である。
図4図3における断面軸B-B’での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態に係る組成物、その硬化物、それを用いた素子、アンテナおよび硬化物の製造方法について詳細に述べる。ただし、本発明は以下の各実施の形態に限定されるものではなく、発明の目的を達成でき、かつ、発明の要旨を逸脱しない範囲内においての種々の変更は当然ありえる。なお樹脂の主鎖とは、構造単位を含む樹脂を構成する鎖のうち最も鎖長が長いものをいう。樹脂の側鎖とは、構造単位を含む樹脂を構成する鎖のうち、主鎖から分岐した又は主鎖に結合した、主鎖よりも鎖長が短いものをいう。樹脂の末端とは主鎖を封止する構造をいい、例えば、末端封止剤などに由来する構造である。
【0034】
本明細書において重畳するとは、z軸方向に対して直接的又は間接的に重なることをいう。すなわち、ある層と別の層とが重畳しているとき、それらの層は接していてもよいし、それらの層の間に別の層が存在してもよい。
【0035】
本明細書において、第1基板や金属層などの特定の層における透明とは、波長550nmにおける透過率が30%以上であることをいう。一方、非透明とは、波長550nmにおける透過率が30%未満であることをいう。
【0036】
<組成物>
本発明の実施の形態に係る組成物は、(A)バインダー樹脂及び(D)着色剤を含有する組成物であって、該組成物を硬化した硬化物の周波数1GHzにおける誘電正接が0.00010~0.0100であって、該組成物を硬化した硬化物の膜厚1μm当たりの可視光線の波長における光学濃度が0.20~3.0である、組成物である。
【0037】
本発明の実施の形態に係る組成物を硬化させることで、低抵抗で、伝送損失が小さく、反射抑制と信頼性に優れた透明アンテナとして機能する素子に具備される硬化物を提供することが可能である。
【0038】
<(A)バインダー樹脂>
(A)バインダー樹脂とは、耐熱性を有する樹脂であり、組成物を硬化した硬化物中に少なくともその一部が残存する。(A)バインダー樹脂は、反応によって架橋構造が形成されて硬化する樹脂が好ましい。反応は、加熱によるもの、エネルギー線の照射によるもの等、特に限定されるものではない。架橋構造の形成は、(A)バインダー樹脂自身の化学反応によるものであってもよいし、後述する(F)架橋剤によって架橋構造が形成されるものであっても構わない。(A)バインダー樹脂は、熱硬化性樹脂が好ましい。
【0039】
(A)バインダー樹脂は、アルカリ可溶性樹脂又は有機溶剤可溶性樹脂が好ましい。アルカリ可溶性樹脂とは、酸性基を有し、アルカリ現像液に対する溶解性を有する樹脂をいう。有機溶剤可溶性樹脂とは、有機溶剤可溶性構造を有し、有機溶剤の現像液に対する溶解性を有する樹脂をいう。アルカリ可溶性樹脂は、後述する(C)感光剤によって、組成物にポジ型又はネガ型の感光性が付与され、アルカリ現像液又は有機溶剤で現像することでポジ型又はネガ型のパターンを形成可能な溶解性を有する樹脂が好ましい。(A)バインダー樹脂は樹脂の構造単位中に酸性基を有することがより好ましい。(A)バインダー樹脂が有する酸性基は、フェノール性水酸基、ヒドロキシイミド基、ヒドロキシアミド基、シラノール基、1,1-ビス(トリフルオロメチル)メチロール基、メルカプト基、カルボキシ基、カルボン酸無水物基、又はスルホン酸基が好ましい。
【0040】
(A)バインダー樹脂は、ラジカル重合性基を有することが好ましく、樹脂の構造単位中にラジカル重合性基を有することがより好ましい。ラジカル重合性基は、エチレン性不飽和二重結合基を有することが好ましく、光反応性基、炭素数2~5のアルケニル基、又は炭素数2~5のアルキニル基がより好ましい。光反応性基は、スチリル基、シンナモイル基、マレイミド基、ナジイミド基、又は(メタ)アクリロイル基が好ましく、低伝送損失及び光反応性の観点から、スチリル基、マレイミド基、又はナジイミド基がより好ましい。一方、炭素数2~5のアルケニル基又は炭素数2~5のアルキニル基は、ビニル基、アリル基、2-メチル-2-プロペニル基、クロトニル基、2-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、2,3-ジメチル-2-ブテニル基、エチニル基、又は2-プロパルギル基が好ましく、低伝送損失及び光反応性の観点から、ビニル基又はアリル基がより好ましい。
【0041】
本発明の実施の形態に係る組成物は、(A)バインダー樹脂の周波数1GHzにおける誘電正接が0.00010~0.0100、及び/又は、後述する(D)着色剤の周波数1GHzにおける誘電正接が0.00010~0.0100であることが好ましい。
【0042】
(A)バインダー樹脂の周波数1GHzにおける誘電正接は、信頼性向上の観点から、0.00010以上が好ましく、0.00020以上がより好ましく、0.00030以上がさらに好ましく、0.00040以上がさらにより好ましく、0.00050以上が特に好ましい。一方、(A)バインダー樹脂の周波数1GHzにおける誘電正接は、低抵抗及び低伝送損失の観点から、0.0100以下が好ましく、0.0070以下がより好ましく、0.0050以下がさらに好ましい。さらに低伝送損失の観点から、0.0040以下が好ましく、0.0030以下がより好ましく、0.0020以下がさらに好ましく、0.0010以下が特に好ましい。(A)バインダー樹脂の周波数10GHz、30GHz、及び70GHzにおける誘電正接に関する好ましい範囲も、それぞれ上記と同様である。なお誘電正接は、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)による共振器法で測定した値である。
【0043】
後述する(D)着色剤の周波数1GHzにおける誘電正接は、信頼性向上の観点から、0.00010以上が好ましく、0.00020以上がより好ましく、0.00030以上がさらに好ましく、0.00040以上がさらにより好ましく、0.00050以上が特に好ましい。一方、(D)着色剤の周波数1GHzにおける誘電正接は、低抵抗及び低伝送損失の観点から、0.0100以下が好ましく、0.0070以下がより好ましく、0.0050以下がさらに好ましい。さらに低伝送損失の観点から、0.0040以下が好ましく、0.0030以下がより好ましく、0.0020以下がさらに好ましく、0.0010以下が特に好ましい。(D)着色剤の周波数10GHz、30GHz、及び70GHzにおける誘電正接に関する好ましい範囲も、それぞれ上記と同様である。
【0044】
(A)バインダー樹脂及び(D)着色剤の誘電正接は、(A)バインダー樹脂又は(D)着色剤を溶剤に溶解させた溶液から(A)バインダー樹脂の塗膜を成膜し、得られた塗膜をサンプルに用いることで測定できる。
【0045】
上記の方法では塗膜を成膜できない場合、自立膜を形成可能なベース樹脂と、(A)バインダー樹脂又は(D)着色剤とを溶剤に溶解させた溶液Aを調製し、その溶液Aから塗膜を成膜する。得られた塗膜をサンプルに用いて測定した誘電正接をDfとする。また上記のベース樹脂のみを溶剤に溶解させた溶液Bを別途調製し、その溶液Bから同様に塗膜を成膜する。得られた塗膜をサンプルに用いて測定した誘電正接をDfとする。それぞれの誘電正接と下記式から、(A)バインダー樹脂の誘電正接及び(D)着色剤の誘電正接を算出する。
誘電正接=(Df)-(Df)。
【0046】
<(A1)樹脂、(A2)樹脂、(A3)樹脂、(A4)樹脂、及び(A5)樹脂>
(A)バインダー樹脂は、以下の(A1)樹脂、(A2)樹脂、(A3)樹脂、及び(A4)樹脂からなる群より選ばれる一種類以上を含有することが好ましい。
(A1)樹脂:樹脂の構造単位中にイミド構造、アミド構造、オキサゾール構造、及びシロキサン構造からなる群より選ばれる一種類以上を含む樹脂
(A2)樹脂:ラジカル重合性基を有する樹脂
(A3)樹脂:樹脂の構造単位中にフェノール性水酸基を有する樹脂
(A4)樹脂:フッ素樹脂
(A5)樹脂:ポリフェニレンエーテル、液晶ポリマー、シクロオレフィンポリマー、又はベンゾシクロブテン樹脂。
【0047】
(A1)樹脂は、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、それらの前駆体、及びそれらのうち2種以上からなる共重合体など、樹脂の構造単位中にイミド構造、アミド構造、オキサゾール構造、及びシロキサン構造からなる群より選ばれる一種類以上を含む樹脂である。
【0048】
(A2)樹脂は、樹脂の主鎖、樹脂の側鎖及び樹脂の末端のうち少なくとも1つに(メタ)アクリロイル基などのラジカル重合性基を有する樹脂である。
【0049】
(A3)樹脂は、樹脂の構造単位中にフェノール性水酸基を有する樹脂である。
【0050】
(A4)樹脂は、樹脂の主鎖がテトラフルオロエチレンなどの含フッ素アルケン、含フッ素アルキン、含フッ素(メタ)アクリル酸誘導体、含フッ素(メタ)アクリル酸エステル誘導体、及び含フッ素スチレン誘導体を主成分として、これらの化合物とその他の共重合成分とをラジカル共重合させて得られる樹脂が挙げられる。(A4)樹脂は、樹脂の主鎖、樹脂の側鎖及び樹脂の末端のうち少なくとも1つにフッ素原子を6つ以上有する基を含むことが好ましく、フッ素原子を10個以上有する基を含むことがより好ましい。フッ素原子を6つ以上有する基は、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキレン基を有することも好ましい。
【0051】
なお(A1)樹脂、(A2)樹脂、及び(A3)樹脂は、これらの中で、それぞれが、別の樹脂を構成する構造や基を有する場合は、以下の規則によりいずれかに分類するものとする。
【0052】
ある樹脂が(A1)樹脂、(A2)樹脂、及び(A3)樹脂のうち、2つ以上に該当しうる場合は、以下のようにしていずれの樹脂に該当するか決定する。すなわち、樹脂の構造単位中にイミド構造、アミド構造、オキサゾール構造、及びシロキサン構造(以下、「イミド構造等」という)からなる群より選ばれる一種類以上を含む樹脂が、樹脂の構造単位中にフェノール性水酸基を有する場合、当該樹脂は(A1)樹脂に該当するものとする。またイミド構造等構造単位を有する樹脂が、ラジカル重合性基を有する場合、当該樹脂は(A1)樹脂に該当するものとする。またラジカル重合性基を有する樹脂が、樹脂の構造単位中にフェノール性水酸基を有する場合、当該樹脂は(A3)樹脂に該当するものとする。またイミド構造等構造単位を有する樹脂が、ラジカル重合性基を有し、さらに樹脂の構造単位中にフェノール性水酸基を有する場合、当該樹脂は(A1)樹脂に該当するものとする。
【0053】
本発明の実施の形態に係る組成物は、低伝送損失の観点から、(A1)樹脂及び/又は(A4)樹脂を含有することが好ましく、低伝送損失及び信頼性向上の観点から、(A1)樹脂を含有することがより好ましく、(A1)樹脂及び(A4)樹脂を含有することがさらに好ましい。
【0054】
本発明の実施の形態に係る組成物は、(A1)樹脂及び(A4)樹脂を含有することに加えて、さらに(A2)樹脂、(A3)樹脂、及び(A5)樹脂からなる群より選ばれる一種類以上を含有することが好ましく、(A2)樹脂及び/又は(A3)樹脂を含有することがより好ましい。本発明の実施の形態に係る組成物は、(A1)樹脂、(A2)樹脂、(A3)樹脂、(A4)樹脂、及び(A5)樹脂を含有することも好ましい。
【0055】
(A1)樹脂は、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリアミドイミド、ポリアミドイミド前駆体、ポリアミド、ポリシロキサン、マレイミド樹脂、マレイミド-スチレン樹脂、マレイミド-トリアジン樹脂、マレイミド-オキサジン樹脂、及びそれらのうち2種以上からなる共重合体からなる群より選ばれる一種類以上を含有することが好ましい。(A1)樹脂は、単一の樹脂又はそれらの共重合体のいずれであっても構わない。
【0056】
(A1)樹脂の酸当量は、低伝送損失及び露光時の感度向上の観点から、200g/mol以上が好ましく、250g/mol以上がより好ましく、300g/mol以上がさらに好ましい。一方、(A1)樹脂の酸当量は、現像後の残渣抑制の観点から、600g/mol以下が好ましく、500g/mol以下がより好ましく、450g/mol以下がさらに好ましい。ここでいう露光とは、活性化学線(放射線)の照射のことであり、例えば、可視光線、紫外線、電子線、又はX線などの照射が挙げられる。以降、露光とは、活性化学線(放射線)の照射をいう。
【0057】
(A1)樹脂の二重結合当量は、低伝送損失及び現像後の残渣抑制の観点から、500g/mol以上が好ましく、700g/mol以上がより好ましく、1,000g/mol以上がさらに好ましい。一方、(A1)樹脂の二重結合当量は露光時の感度向上の観点から、3,000g/mol以下が好ましく、2,000g/mol以下がより好ましく、1,500g/mol以下がさらに好ましい。
【0058】
(A2)樹脂は、多環側鎖含有樹脂、酸変性エポキシ樹脂、及びアクリル樹脂からなる群より選ばれる一種類以上を含有することが好ましい。(A2)樹脂は、単一の樹脂又はそれらの共重合体のいずれであっても構わない。
【0059】
(A3)樹脂は、フェノール樹脂、ポリヒドロキシスチレン、フェノール基含有エポキシ樹脂、及びフェノール基含有アクリル樹脂からなる群より選ばれる一種類以上を含有することが好ましい。(A3)樹脂は、単一の樹脂又はそれらの共重合体のいずれであっても構わない。
【0060】
(A4)樹脂は、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含有することが好ましい。(A4)樹脂は、単一の樹脂又はそれらの共重合体のいずれであっても構わない。
【0061】
(A5)樹脂は、ポリフェニレンエーテル、液晶ポリマー、シクロオレフィンポリマー、及びベンゾシクロブテン樹脂からなる群より選ばれる一種類以上を含有することが好ましい。(A5)樹脂は、単一の樹脂又はそれらの共重合体のいずれであっても構わない。
【0062】
(A)バインダー樹脂は、低伝送損失の観点から、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリアミドイミド、ポリアミドイミド前駆体、ポリアミド、ポリシロキサン、マレイミド樹脂、マレイミド-スチレン樹脂、マレイミド-トリアジン樹脂、マレイミド-オキサジン樹脂、テトラフルオロエチレン系ポリマー、ポリフェニレンエーテル、液晶ポリマー、シクロオレフィンポリマー、ベンゾシクロブテン樹脂、及びそれらのうち2種以上からなる共重合体(以下、「特定の(A)バインダー樹脂」という)からなる群より選ばれる一種類以上を含有することが好ましく、低伝送損失及び信頼性向上の観点から、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリアミドイミド、ポリアミドイミド前駆体、ポリアミド、及びそれらのうち2種以上からなる共重合体(以下、「ポリイミド系の樹脂」という)からなる群より選ばれる一種類以上を含有することがより好ましい。また(A)バインダー樹脂は低伝送損失の観点から、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含有することもより好ましい。
【0063】
<ポリイミド系の樹脂>
ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリアミドイミド、及びポリアミドイミド前駆体は、ポリアミドとの共重合体であっても構わない。
【0064】
ポリイミド系の樹脂は、露光時の感度向上及び低伝送損失の観点から、フッ素原子を有するカルボン酸残基及び/又はフッ素原子を有するアミン残基を有することが好ましい。それぞれの樹脂の全カルボン酸残基及び全アミン残基に占める、フッ素原子を有するカルボン酸残基及びフッ素原子を有するアミン残基の含有比率の合計は10~100mol%が好ましく、30~100mol%がより好ましく、50~100mol%がさらに好ましい。それぞれの樹脂の全アミン残基に占めるフッ素原子を有するアミン残基の含有比率の合計は、10~100mol%が好ましく、30~100mol%がより好ましく、50~100mol%がさらに好ましい。それぞれの樹脂の全カルボン酸残基に占めるフッ素原子を有するカルボン酸残基の含有比率の合計は、10~100mol%が好ましく、30~100mol%がより好ましく、50~100mol%がさらに好ましい。
【0065】
ポリイミド系の樹脂は低伝送損失の観点から、樹脂の末端に、樹脂などと反応可能なラジカル重合性基又は架橋性基を有することが好ましく、マレイミド基又はナジイミド基を有することが好ましい。樹脂の末端のマレイミド基及びナジイミド基は、マレイン酸基を有するアミン残基、ナジック酸基を有するアミン残基、マレイン酸基を有するカルボン酸残基、又はナジック酸基を有するカルボン酸残基が好ましい。マレイン酸基を有する酸単量体としては、例えば、マレイン酸無水物が挙げられる。ナジック酸基を有する酸単量体としては、例えば、ナジック酸無水物が挙げられる。
【0066】
<ダイマー酸に由来する残基及びエステル結合を有する残基>
(A)バインダー樹脂が、ポリイミド系の樹脂からなる群より選ばれる一種類以上を含有する場合、ポリイミド系の樹脂は、以下の(1)~(5)の残基からなる群より選ばれる一種類以上を有することがさらに好ましい。
(1)ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級アミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマージアミンを主成分とする、ダイマージアミン組成物に由来するジアミン残基
(2)ダイマー酸に由来するジカルボン酸残基
(3)ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級アミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマージアミンを主成分とする、ダイマージアミン組成物に由来する構造を有するテトラカルボン酸残基
(4)エステル結合を有する、ジアミン残基、ジアミン誘導体残基、ビスアミノフェノール化合物残基、又はビスアミノフェノール化合物誘導体残基
(5)エステル結合を有する、テトラカルボン酸残基、テトラカルボン酸誘導体残基、トリカルボン酸残基、トリカルボン酸誘導体残基、ジカルボン酸残基、又はジカルボン酸誘導体残基。
【0067】
上記の(1)~(3)の残基は、一般式(21)及び一般式(22)で表される構造からなる群より選ばれる一種類以上を有することが好ましい。
【0068】
【化2】
【0069】
一般式(21)及び一般式(22)において、a、b、c、及びdは、それぞれ独立して、1以上の整数を表し、a+b=6~17であり、c+d=8~19である。破線部は、炭素-炭素単結合又は炭素-炭素二重結合を表す。e、f、g、及びhは、それぞれ独立して、1以上の整数を表し、e+f=5~16であり、g+h=8~19である。破線部は、炭素-炭素単結合又は炭素-炭素二重結合を表す。*~*は、それぞれ独立して、他の構造との結合点を表す。なおa、b、c、d、e、f、g、又はhで繰り返されるアルキレン基の一部が、炭素-炭素二重結合に置換されていても構わない。
【0070】
上記の(3)の残基としては、例えば、上記の(1)の残基におけるダイマージアミン組成物と、無水トリメリット酸クロリドとの反応物が挙げられる。上記の(4)~(5)の残基は、芳香環を3つ以上有することが好ましく、芳香環を4つ以上有することがより好ましい。
【0071】
上記のような樹脂は、(A)バインダー樹脂の周波数1GHzにおける誘電正接を0.00010~0.0100の範囲に調整する上で好適である。
【0072】
ポリイミド系の樹脂の全カルボン酸残基及び全アミン残基に占める、上記の(1)~(5)の残基の含有比率の合計は、10mol%以上が好ましく、20mol%以上がより好ましく、30mol%以上がさらに好ましく、50mol%以上がさらにより好ましく、70mol%以上が特に好ましい。一方、上記の(1)~(5)の残基の含有比率の合計は、100mol%以下が好ましく、90mol%以下がより好ましい。
【0073】
ポリイミド系の樹脂の全アミン残基に占める上記の(1)及び(4)の残基の含有比率の合計は、10mol%以上が好ましく、20mol%以上がより好ましく、30mol%以上がさらに好ましく、50mol%以上がさらにより好ましく、70mol%以上が特に好ましい。一方、上記の(1)及び(4)の残基の含有比率の合計は、100mol%以下が好ましく、90mol%以下がより好ましい。
【0074】
ポリイミド系の樹脂の全カルボン酸残基に占める上記の(2)、(3)、及び(5)の残基の含有比率の合計は、10mol%以上が好ましく、20mol%がより好ましく、30mol%以上がさらに好ましく、50mol%以上がさらにより好ましく、70mol%以上が特に好ましい。一方、上記の(2)、(3)、及び(5)の残基の含有比率の合計は、100mol%以下が好ましく、90mol%以下がより好ましい。
【0075】
<(A)バインダー樹脂の構造中のフッ素元素の含有量>
(A)バインダー樹脂は、信頼性向上の観点から、下記(P1a)の条件を満たすことも好ましい。(A)バインダー樹脂は、さらに下記(P2a)の条件を満たすことがより好ましい。(A)バインダー樹脂がポリイミド系の樹脂である場合も同様に、信頼性向上の観点から、下記(P1a)の条件を満たすことも好ましく、さらに下記(P2a)の条件を満たすことがより好ましい。
(P1a)(A)バインダー樹脂の構造中に占めるフッ素元素の含有量が10,000質量ppm以下
(P2a)(A)バインダー樹脂の構造中に占めるフッ化物イオンの含有量が10,000質量ppm以下。
【0076】
(A)バインダー樹脂の構造中に占めるフッ素元素の含有量は、信頼性向上の観点から、0質量ppm以上が好ましく、0.010質量ppm以上がより好ましく、0.030質量ppm以上がさらに好ましく、0.050質量ppm以上がさらにより好ましく、0.070質量ppm以上が特に好ましく、0.10質量ppm以上が最も好ましい。一方、フッ素元素の含有量は信頼性向上の観点から、10,000質量ppm以下が好ましく、5,000質量ppm以下がより好ましく、1,000質量ppm以下がさらに好ましく、500質量ppm以下がさらにより好ましく、300質量ppm以下が特に好ましく、100質量ppm以下が最も好ましい。さらにフッ素元素の含有量は、50質量ppm以下が好ましく、30質量ppm以下がより好ましく、10質量ppm以下がさらに好ましく、5質量ppm以下がさらにより好ましく、3質量ppm以下が特に好ましく、1質量ppm以下が最も好ましい。
【0077】
組成物中にフッ素元素の含有量が特定数値以下である(A)バインダー樹脂を含有させることで、これらの樹脂中のフッ素元素やフッ化物イオン又はこれらの樹脂に由来するフッ素元素を含むアニオンの含有量が特定数値以下となるため、組成物中の各成分の水素結合等の相互作用により、組成物中のプロトンが局所的に活性化されると推定される。そのため、現像液に対する溶解促進作用により、組成物の塗膜のパターン加工時における現像後の残渣発生が抑制されると考えられる。その結果、組成物の塗膜の直下に位置する金属層などへの残渣付着に起因する素子等の劣化が抑制され、信頼性が向上すると推定される。また意図的に樹脂中の上記の成分の含有量を特定数値以下とすることで、組成物の硬化物中の上記の成分の含有量も低減され、硬化物中における分極構造や電荷バランスが制御されると考えられる。その結果、電気絶縁性に悪影響を及ぼす金属不純物やイオン不純物に起因するイオンマイグレーションやエレクトロマイグレーションを抑制することで、信頼性が向上すると推定される。
【0078】
<その他の(A)バインダー樹脂>
ポリシロキサンとしては、例えば、三官能オルガノシラン、四官能オルガノシラン、二官能オルガノシラン、及び一官能オルガノシランからなる群より選ばれる一種類以上を加水分解し、脱水縮合させて得られる樹脂が挙げられる。
【0079】
多環側鎖含有樹脂としては、例えば、多官能エポキシ化合物と、ラジカル重合性基を有するカルボン酸化合物とを反応させて得られる化合物に、多官能カルボン酸二無水物を反応させて得られる樹脂が挙げられる。また多官能フェノール化合物と、多官能カルボン酸二無水物とを反応させて得られる化合物に、ラジカル重合性基を有するエポキシ化合物を反応させて得られる樹脂も挙げられる。多環側鎖含有樹脂は、フルオレン構造、キサンテン構造、又はイソインドリノン構造を有するカルド系樹脂が好ましい。
【0080】
酸変性エポキシ樹脂としては、例えば、多官能エポキシ化合物と、ラジカル重合性基を有するカルボン酸化合物とを反応させて得られる化合物に、多官能カルボン酸二無水物を反応させて得られる樹脂が挙げられる。酸変性エポキシ樹脂は、ナフタレン構造、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン構造、又はビフェニル構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂が好ましい。
【0081】
アクリル樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸誘導体、(メタ)アクリル酸エステル誘導体、スチレン誘導体、及びその他の共重合成分からなる群より選ばれる一種類以上をラジカル共重合させて得られる樹脂が挙げられる。
【0082】
フェノール樹脂としては、例えば、フェノール化合物などと、アルデヒド化合物、ケトン化合物、アルコキシメチル化合物、及びメチロール化合物からなる群より選ばれる一種類以上とを反応させて得られる樹脂が挙げられる。フェノール樹脂は、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、又はフェノールアラルキル樹脂が好ましい。
【0083】
ポリヒドロキシスチレンとしては、例えば、ヒドロキシスチレン誘導体などと、スチレン誘導体及び/又はその他の共重合成分とをラジカル共重合させて得られる樹脂が挙げられる。その他の共重合成分としては、(メタ)アクリル酸誘導体又は(メタ)アクリル酸エステル誘導体などが挙げられる。
【0084】
フェノール基含有エポキシ樹脂としては、例えば、多官能エポキシ化合物と、エポキシ反応性基を有するフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂が挙げられる。フェノール基含有エポキシ樹脂は、フルオレン構造、キサンテン構造、イソインドリノン構造、ナフタレン構造、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン構造、又はビフェニル構造を有することが好ましい。
【0085】
フェノール基含有アクリル樹脂としては、例えば、上記のアクリル樹脂に、さらに付加反応性基を有するフェノール化合物を反応させて得られる樹脂が挙げられる。またフェノール性水酸基を有する共重合成分と、(メタ)アクリル酸誘導体などのその他の共重合成分とをラジカル共重合させて得られる樹脂も挙げられる。なおフェノール基含有アクリル樹脂はポリヒドロキシスチレンとは異なる樹脂である。
【0086】
マレイミド樹脂は、樹脂の主鎖、樹脂の側鎖及び樹脂の末端のうち少なくとも1つに、少なくとも2つのマレイミド基を有する樹脂である。なおマレイミド樹脂は、ポリイミド系の樹脂とは異なる樹脂である。
【0087】
マレイミド-スチレン樹脂としては、例えば、上記のマレイミド樹脂に、さらにスチレン誘導体をラジカル共重合させて得られる樹脂が挙げられる。またマレイミド化合物及びスチレン誘導体と、(メタ)アクリル酸誘導体などのその他の共重合成分とをラジカル共重合させて得られる樹脂も挙げられる。
【0088】
マレイミド-トリアジン樹脂としては、例えば、上記のマレイミド樹脂に、さらにトリアジン構造を有する化合物及び/又は芳香族シアン酸エステル化合物を反応させて得られる樹脂が挙げられる。またマレイミド化合物と、トリアジン構造を有する化合物及び/又は芳香族シアン酸エステル化合物とを反応させて得られる樹脂も挙げられる。
【0089】
マレイミド-オキサジン樹脂としては、例えば、上記のマレイミド樹脂に、さらにベンゾオキサジン構造を有する化合物を反応させて得られる樹脂が挙げられる。またマレイミド化合物と、ベンゾオキサジン構造を有する化合物とを反応させて得られる樹脂も挙げられる。
【0090】
テトラフルオロエチレン系ポリマー、ポリフェニレンエーテル、液晶ポリマー、シクロオレフィンポリマー、及びベンゾシクロブテン樹脂は、公知の樹脂を用いても構わない。
【0091】
(A)バインダー樹脂の合計100質量%に占める、(A1)樹脂の含有比率の合計は、低伝送損失及び信頼性向上の観点から、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、70質量%以上が特に好ましい。一方、(A1)樹脂の含有比率の合計は、低伝送損失の観点から、100質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましく、70質量%以下が特に好ましい。
【0092】
本発明の実施の形態に係る組成物の全固形分に占める(A)バインダー樹脂の含有比率は、低伝送損失及び信頼性向上の観点から、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上がさらに好ましい。一方、(A)バインダー樹脂の含有比率は、信頼性向上の観点から、75質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましく、55質量%以下がさらに好ましい。なお組成物の全固形分とは、組成物中の溶剤を除く全ての成分の質量の合計をいう。また固形分濃度は、組成物1gを150℃で30分間加熱して蒸発乾固させ、加熱後に残存した質量を測定し、加熱前後の質量から算出される固形分濃度として算出できる。
【0093】
<(B)ラジカル重合性化合物>
本発明の実施の形態に係る組成物は、さらに(B)ラジカル重合性化合物(以下、「(B)化合物」)及び/又は(F)架橋剤を含有することが好ましい。(B)化合物とはラジカル重合性基を有する化合物をいい、少なくとも2つのラジカル重合性基を有する化合物が好ましい。ラジカル重合性基に関する例示及び好ましい記載は、上記の(A)バインダー樹脂における記載の通りである。
【0094】
本発明の実施の形態に係る組成物は、後述する(C)感光剤を含有し、さらに(B)化合物及び/又は(F)架橋剤を含有することが好ましく、光反応促進の観点から、後述する(C1)光重合開始剤を含有し、さらに(B)化合物を含有することがより好ましい。
【0095】
組成物がネガ型の感光性を有する場合、(B)化合物を含有することで露光時の感度向上の効果が顕著となる。一方、組成物がポジ型の感光性を有する場合、(B)化合物を含有することで熱硬化後のパターン形状制御の効果が顕著となる。(B)化合物のラジカル重合性基は、エチレン性不飽和二重結合基を有することが好ましく、ラジカル重合が進行しやすい観点から、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。また(B)化合物のラジカル重合性基は低伝送損失の観点から、スチリル基、シンナモイル基、マレイミド基、ナジイミド基、ビニル基、又はアリル基が好ましい。
【0096】
(B)化合物は、低伝送損失の観点から、少なくとも2つの芳香族構造が連結基を介して連結された構造を含む構造単位を有することが好ましく、ポリフェニレンエーテル構造を有することがより好ましい。連結基は、酸素原子、硫黄原子、又はカルボニル基が好ましい。(B)化合物は低伝送損失の観点から、脂環式構造及び/又はヘテロ脂環式構造を含む構造を有することも好ましい。脂環式構造及び/又はヘテロ脂環式構造は、窒素原子を少なくとも2つ有する環状構造が好ましく、イソシアヌル酸構造及び/又はトリアジン構造がより好ましい。また(B)化合物は、フルオレン構造、インダン構造、縮合多環脂環式構造、インドリノン構造、又はイソインドリノン構造を含む構造を有することも好ましい。
【0097】
本発明の実施の形態に係る組成物が(A)バインダー樹脂及び(B)化合物を含有する場合、(A)バインダー樹脂の含有量は、(A)バインダー樹脂及び(B)化合物の合計を100質量部とした場合において、低伝送損失及び信頼性向上の観点から、25質量部以上が好ましく、35質量部以上がより好ましく、45質量部以上がさらに好ましい。一方、(A)バインダー樹脂の含有量は、信頼性向上の観点から、85質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましく、75質量部以下がさらに好ましい。
【0098】
また(B)化合物の含有量は、(A)バインダー樹脂及び(B)化合物の合計を100質量部とした場合において、信頼性向上の観点から、15質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、25質量部以上がさらに好ましい。一方、(B)化合物の含有量は、低伝送損失及び信頼性向上の観点から、75質量部以下が好ましく、65質量部以下がより好ましく、55質量部以下がさらに好ましい。
【0099】
<(C)感光剤>
本発明の実施の形態に係る組成物は、さらに(C)感光剤を含有することが好ましい。(C)感光剤とは、露光によって結合開裂、反応、又は構造変化して別の化合物を発生させることで、組成物にポジ型又はネガ型の感光性を付与する化合物をいう。
【0100】
(C)感光剤は、(C1)光重合開始剤、(C2)ナフトキノンジアジド化合物、(C3)光酸発生剤、及び(C4)光塩基発生剤からなる群より選ばれる一種類以上を含有することが好ましい。組成物にネガ型の感光性を付与する場合、(C1)光重合開始剤を含有することが好ましく、さらに、(C2)ナフトキノンジアジド化合物、(C3)光酸発生剤、及び(C4)光塩基発生剤からなる群より選ばれる一種類以上を含有することがより好ましい。組成物にポジ型の感光性を付与する場合、(C2)ナフトキノンジアジド化合物を含有することが好ましく、さらに、(C1)光重合開始剤、(C3)光酸発生剤、及び(C4)光塩基発生剤からなる群より選ばれる一種類以上を含有することがより好ましい。
【0101】
(C)感光剤の含有量は、(A)バインダー樹脂及び(B)化合物の合計を100質量部とした場合において、1.0質量部以上が好ましく、3.0質量部以上がより好ましく、5.0質量部以上がさらに好ましい。一方、(C)感光剤の含有量は、30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。
【0102】
<(C1)光重合開始剤>
(C1)光重合開始剤とは、露光によって結合開裂及び/又は反応してラジカルを発生する化合物をいう。(C1)光重合開始剤を含有することが、ネガ型のパターン形成に好適であり、露光時の感度向上の効果が顕著となる。(C1)光重合開始剤は、α-アミノケトン系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、又はオキシムエステル系化合物が好ましい。(C1)光重合開始剤は、(C1-1)オキシムエステル系化合物(以下、「(C1-1)化合物」)を含有することがより好ましい。
【0103】
(C1-1)化合物は、縮合多環式構造、縮合多環式ヘテロ環構造、又はジフェニルスルフィド構造を有することが好ましく、低伝送損失の観点から、縮合多環式構造を有することがより好ましい。縮合多環式構造は、フルオレン構造、ベンゾフルオレン構造、ジベンゾフルオレン構造、インデン構造、インダン構造、ベンゾインデン構造、又はベンゾインダン構造が好ましい。縮合多環式ヘテロ環構造は、カルバゾール構造、ジベンゾフラン構造、ジベンゾチオフェン構造、ベンゾカルバゾール構造、インドール構造、インドリン構造、ベンゾインドール構造、ベンゾインドリン構造、フェノチアジン構造、又はフェノチアジンオキシド構造が好ましい。
【0104】
(C1-1)化合物は、縮合多環式構造、縮合多環式へテロ環構造、又はジフェニルスルフィド構造に、少なくとも1つのオキシムエステル構造が結合した構造(α-オキシム構造)、又は少なくとも1つのオキシムエステルカルボニル構造が結合した構造(β-オキシム構造)を有することが好ましい。
【0105】
(C1-1)化合物は、露光時の感度向上の観点から、ニトロ基、ナフチルカルボニル構造、トリメチルベンゾイル構造、チオフェニルカルボニル構造、フリルカルボニル構造、少なくとも2つのオキシムエステル構造、及び少なくとも2つのオキシムエステルカルボニル構造(以下、「(C1-1)化合物が有する特定の置換基」)からなる群より選ばれる一種類以上を有することが好ましく、低伝送損失の観点から、ナフチルカルボニル構造及び/又はトリメチルベンゾイル構造を有することがより好ましい。中でも、縮合多環式構造、縮合多環式へテロ環構造、又はジフェニルスルフィド構造に、(C1-1)化合物が有する特定の置換基が結合した構造を有することが好ましい。
【0106】
(C1-1)化合物は、露光時の感度向上及び低伝送損失の観点から、ハロゲン原子で置換された基を有することが好ましく、フッ素原子で置換された基を有することがより好ましい。これは、上述した(A)バインダー樹脂がポリイミド系の樹脂を含み、ポリイミド系の樹脂がフッ素原子を有するカルボン酸残基、フッ素原子を有するアミン残基、及びフッ素原子を3つ以上有する基からなる群より選ばれる一種類以上を有する場合、(A)バインダー樹脂と(C1-1)化合物との相溶性向上により、膜表面から膜深部における光硬化が促進されるためと推定される。上述した(A)バインダー樹脂が(A4)樹脂を含む場合も同様と考えられる。ハロゲン原子で置換された基は、トリフルオロメチル基、トリフルオロプロピル基、トリクロロプロピル基、テトラフルオロプロピル基、フルオロシクロペンチル基、フルオロフェニル基、又はペンタフルオロフェニル基が好ましい。
【0107】
(C1-1)化合物は、低伝送損失の観点から、炭素数4~30の1~2価の脂肪族基及び/又は脂環式構造を有することが好ましく、炭素数8~20の1~2価の脂肪族基及び/又は炭素数4~10のシクロアルキル基を有することがより好ましい。
【0108】
<(C2)ナフトキノンジアジド化合物>
(C2)ナフトキノンジアジド化合物とは、露光によって構造変化してインデンカルボン酸及び/又はスルホインデンカルボン酸を発生する化合物をいう。組成物が(C2)ナフトキノンジアジド化合物を含有することが、ポジ型のパターン形成に好適である。(C2)ナフトキノンジアジド化合物は、フェノール性水酸基を有する化合物の1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸エステル体又は1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル体が好ましい。
【0109】
<(C3)光酸発生剤>
(C3)光酸発生剤とは、露光によって結合開裂及び/又は反応して酸を発生する化合物をいう。組成物が(C3)光酸発生剤を含有させることが、カチオン重合促進などの観点からネガ型のパターン形成に好適である。一方、樹脂などが酸解離性基で保護された酸性基を有する場合、露光によって酸性基を遊離させる観点からポジ型のパターン形成に好適である。(C3)光酸発生剤としては、例えば、イオン性化合物又は非イオン性化合物が挙げられる。イオン性化合物は、トリオルガノスルホニウム塩系化合物が好ましい。非イオン性化合物は、ハロゲン含有化合物、ジアゾメタン化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物、スルホンイミド化合物、リン酸エステル化合物、又はスルホンベンゾトリアゾール化合物が好ましい。
【0110】
<(C4)光塩基発生剤>
(C4)光塩基発生剤とは、露光によって結合開裂及び/又は反応して塩基を発生する化合物をいう。組成物が(C4)光塩基発生剤を含有させることが、アニオン重合促進などの観点からネガ型のパターン形成に好適である。一方、樹脂などが塩基解離性で保護された酸性基を有する場合、露光によって酸性基を遊離させる観点からポジ型のパターン形成に好適である。(C4)光塩基発生剤としては、例えば、イオン性化合物又は非イオン性化合物が挙げられる。イオン性化合物は、ジアザビシクロアルケン塩系化合物、トリアザビシクロアルケン塩系化合物、α-ケト四級アンモニウム塩系化合物、ベンジル四級アンモニウム塩系化合物、グアニジン塩系化合物、又はビグアニド塩系化合物が好ましい。イオン性化合物は、ケトプロフェン構造、オキソキサンテン構造、ベンゾフラン構造、又はナフタレン構造を有することが好ましい。非イオン性化合物は、ニトロベンジルカルバメート化合物、アントラセニルカルバメート化合物、ベンゾイン系カルバメート化合物、アントラキノン系カルバメート化合物、ヒドロキシシンナムアミド系化合物、又はクマリンアミド系化合物が好ましい。
【0111】
<(D)着色剤>
本発明の実施の形態に係る組成物は、(D)着色剤を含有する。(D)着色剤とは、可視光線の波長(380~780nm)の光を吸収することで着色させる化合物をいう。(D)着色剤を含有させることで、組成物の膜の透過光又は反射光の色度調整や、組成物の膜への遮光性付与が可能となる。(D)着色剤は、顔料又は染料が好ましい。
【0112】
(D)着色剤における黒色とは、Colour Index Generic Name(以下、「C.I.ナンバー」)に“BLACK”が含まれるものをいう。C.I.ナンバーが付与されていないものを含有するときは、硬化膜とした場合に黒色であるものをいう。硬化膜とした場合における黒色とは、(D)着色剤を含有する組成物の硬化膜の透過スペクトルにおいて、波長550nmにおける膜厚1.0μmあたりの透過率をランベルト・ベールの式に基づいて、波長550nmにおける透過率が10%となるように膜厚を0.1~1.5μmの範囲内で換算した場合に、換算後の透過スペクトルにおける波長450~650nmにおける透過率が25%以下であることをいう。硬化膜の透過スペクトルは、国際公開第2019/087985号の段落[0285]に記載の方法に基づき、求めることができる。
【0113】
顔料の平均一次粒子径は信頼性向上の観点から、20nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましく、40nm以上がさらに好ましく、50nm以上がさらにより好ましく、60nm以上が特に好ましい。一方、顔料の平均一次粒子径は、外光反射抑制及び信頼性向上の観点から、150nm以下が好ましく、120nm以下がより好ましく、100nm以下がさらに好ましく、90nm以下がさらにより好ましく、80nm以下が特に好ましい。顔料の一次粒子径とは、顔料の一次粒子における長軸径をいう。膜中の顔料の平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(以下、「TEM」)を用いて膜の断面を撮像及び解析し、顔料の一次粒子30個を測定した平均値として算出できる。顔料分散液中の顔料の平均一次粒子径は、動的光散乱法により粒度分布を測定して求められる。
【0114】
本発明の実施の形態に係る組成物の全固形分に占める(D)着色剤の含有比率は、外光反射抑制及び信頼性向上の観点から、5.0質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上がさらにより好ましく、30質量%以上が特に好ましい。一方、(D)着色剤の含有比率は、低伝送損失の観点から、70質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
【0115】
<黒色顔料及び黒色染料>
(D)着色剤は、黒色顔料を含有することが好ましく、有機黒色顔料及び/又は無機黒色顔料を含有することがより好ましく、低伝送損失の観点から、有機黒色顔料を含有することがさらに好ましい。有機黒色顔料は、ベンゾフラノン系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料、アゾメチン系黒色顔料、アントラキノン系黒色顔料、アニリン系黒色顔料、アゾ系黒色顔料、又はカーボンブラックが好ましく、低伝送損失の観点から、ベンゾフラノン系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料、又はアゾメチン系黒色顔料がより好ましい。無機黒色顔料は、金属元素の微粒子、金属元素の酸化物、金属元素の複合酸化物、金属元素の硫化物、金属元素の硫酸塩、金属元素の硝酸塩、金属元素の炭酸塩、金属元素の窒化物、金属元素の炭化物、又は金属元素の酸窒化物が好ましい。金属元素は、Ti、Zr、V、Cr、Mn、Co、Ni、Y、Nb、Hf、Ta、W、Re、Fe、Cu、Zn、又はAgが好ましい。無機黒色顔料は、これらの金属元素とは異なる元素を含むことが好ましく、B、Al、Si、Mn、Co、Ni、Fe、Cu、Zn、又はAgを含むことがより好ましい。(D)着色剤は、黒色染料を含有することも好ましい。黒色染料は、クロム元素を含む黒色染料及び/又はアゾ系黒色染料を含むことが好ましい。これらの(D)着色剤の好ましい含有比率も、それぞれ上記と同様である。
【0116】
ベンゾフラノン系黒色顔料は、ベンゼン環を共有してもよい少なくとも2つのベンゾフラン-2(3H)-オン構造又はベンゼン環を共有してもよい少なくとも2つのベンゾフラン-3(2H)-オン構造を有する化合物、それらの幾何異性体、それらの塩、又はそれらの幾何異性体の塩を含むことが好ましい。ペリレン系黒色顔料は、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ビスベンゾイミダゾール構造を有する化合物、それらの幾何異性体、それらの塩、又はそれらの幾何異性体の塩を含むことが好ましい。アゾメチン系黒色顔料は、アゾメチン構造及びカルバゾール構造を有する化合物又はその塩を含むことが好ましい。
【0117】
<着色剤混合物>
(D)着色剤は、二色以上の着色剤混合物を含有することが好ましく、(I)青色、赤色、及び黄色を含むこと、(II)青色、赤色、及び橙色を含むこと、(III)青色、紫色、及び橙色を含むこと、又は(IV)紫色及び黄色を含むことがより好ましい。着色剤混合物は、着色顔料混合物及び/又は着色染料混合物がより好ましい。着色顔料は、アントラキノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、イミダゾロン系顔料、キナクリドン系顔料、ピランスロン系顔料、フタロシアニン系顔料、インダントロン系顔料、又はジオキサジン系顔料が好ましい。着色染料は、スクアリリウム系染料、キサンテン系染料、トリアリールメタン系染料、又はフタロシアニン系染料が好ましい。これらの(D)着色剤の好ましい含有比率も、それぞれ上記と同様である。
【0118】
<(DC)被覆層>
本発明の実施の形態に係る組成物は、顔料が(DC)被覆層を有することが好ましい。(DC)被覆層とは、顔料表面を被覆する層をいい、例えば、シランカップリング剤による表面処理、ケイ酸塩による表面処理、金属アルコキシドによる表面処理、又は樹脂による被覆処理などで形成される層が挙げられる。
【0119】
本発明の実施の形態に係る組成物は、低伝送損失及び信頼性向上の観点から、(D)着色剤が有機黒色顔料を含有し、有機黒色顔料が(DC)被覆層を有し、(DC)被覆層がシリカ被覆層及び/又は樹脂被覆層を含有することが好ましい。
【0120】
顔料に対する(DC)被覆層による平均被覆率は、50~100%が好ましく、70~100%がより好ましく、90~100%がさらに好ましい。コア層に対する(DC)被覆層による平均被覆率は、国際公開第2019/087985号の段落[0349]に記載の方法に基づき、求めることができる。
【0121】
(DC)被覆層は、シリカ被覆層、金属酸化物被覆層、金属水酸化物被覆層、及び樹脂被覆層からなる群より選ばれる一種類を含有することが好ましい。シリカ被覆層におけるシリカとしては、例えば、二酸化ケイ素(SiO)又はその含水物が挙げられる。金属酸化物被覆層における金属酸化物には、金属酸化物そのものだけでなく、例えば、金属酸化物の水和物なども含まれる。金属酸化物としては、例えば、アルミナ(Al)又はアルミナ水和物(Al・nHO)が挙げられる。金属水酸化物被覆層における金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム(Al(OH))が挙げられる。
【0122】
上記のような(DC)被覆層は、その堅牢な構造により顔料の耐熱性が向上するため、アウトガス等の抑制により信頼性が向上すると推定される。
【0123】
<フッ素原子を含む構造>
(DC)被覆層がシリカ被覆層及び/又は樹脂被覆層を含有する場合、本発明の実施の形態に係る組成物は、低伝送損失の観点から、顔料及び/又は被覆層がその表面に、フッ素原子を含む構造を有することが好ましく、シリカ被覆層及び/又は樹脂被覆層がその表面に、フッ素原子を含む構造を有することがより好ましい。
【0124】
フッ素原子を含む構造は、フッ素原子を含むオルガノシランの表面修飾構造を有することが好ましい。このような構造を顔料及び/又は被覆層の表面に導入するには、フッ素原子を含むオルガノシラン化合物に由来する表面修飾基や、フッ素原子を含むイソシアネート化合物に由来する表面修飾基を、顔料表面及び/又は被覆層表面のヒドロキシ基及び/又はシラノール基と脱水縮合反応させる方法が用いられる。
【0125】
フッ素原子を含む構造は、ポリシロキサン構造を有することも好ましく、表面グラフトポリシロキサン構造を有することがより好ましい。ポリシロキサン構造及び表面グラフトポリシロキサン構造は、フッ素原子を含むオルガノシラン単位を有することが好ましい。このような構造を顔料及び/又は被覆層の表面に導入するには、フッ素原子を含むポリシロキサン中のシラノール基を、顔料表面及び/又は被覆層表面のヒドロキシ基及び/又はシラノール基と脱水縮合反応させる方法が用いられる。また被覆層を有しない顔料及び/又は被覆層を有する黒色顔料の存在下、フッ素原子を含むオルガノシラン化合物を含む一種類以上のオルガノシラン(三官能オルガノシラン、四官能オルガノシラン、二官能オルガノシラン、又は一官能オルガノシラン)を加水分解し、脱水縮合させる方法も用いられる。
【0126】
フッ素原子を含む構造は低伝送損失の観点から、フッ素原子を少なくとも3つ有する基を含むことが好ましく、フッ素原子を6つ以上有する基を含むことがより好ましく、フッ素原子を10個以上有する基を含むことがさらに好ましい。フッ素原子を少なくとも3つ有する基は、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルケニル基、パーフルオロアルキニル基、パーフルオロシクロアルキル基、パーフルオロアリール基、パーフルオロアルキレン基、パーフルオロシクロアルキレン基、又はパーフルオロアリーレン基が好ましい。なおフッ素原子を含む構造は、フッ素原子を含むポリイミド系の樹脂からなる群より選ばれる一種類以上の構造を有することも好ましい。
【0127】
上記のようなフッ素原子を含む構造は、(D)着色剤の周波数1GHzにおける誘電正接を0.00010~0.0100の範囲に調整する上で好適である。また組成物を硬化した硬化物の膜厚1μm当たりの可視光線の波長における光学濃度を0.20~3.0に調整しつつ、誘電正接の上記範囲に調整する上でも好適である。
【0128】
<シリカ被覆層>
(DC)被覆層がシリカ被覆層及び/又は樹脂被覆層を含有する場合、本発明の実施の形態に係る組成物は、低伝送損失の観点から、(DC)被覆層がシリカ被覆層を含有し、シリカ被覆層が表面グラフトポリシロキサン構造を含み、表面グラフトポリシロキサン構造がフッ素原子を含むオルガノシラン単位を有することが好ましい。
【0129】
シリカ被覆層は中空シリカ層を含むことも好ましい。中空シリカ層とは、内部に空孔を有するシリカ層をいう。中空シリカ層は、内部に空隙を有するシリカ粒子である中空シリカ粒子を含む層であってもよい。シリカ被覆層の空隙率は、10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、30%以上がさらに好ましい。一方、シリカ被覆層の空隙率は、70%以下が好ましく、60%以下がより好ましく、50%以下がさらに好ましい。シリカ被覆層の空隙率は、TEMを用いて膜の断面を撮像及び解析して測定できる。
【0130】
シリカ被覆層は、クリストバライト結晶相及び/又はクオーツ結晶相を含むことも好ましい。このような構成とするには、CuKα線によるX線回折分析スペクトルにおいて、クリストバライト結晶相に由来するピーク及び/又はクオーツ結晶相に由来するピークを有することが好ましい。
【0131】
<樹脂被覆層>
樹脂被覆層における樹脂は、上述した(A)バインダー樹脂と同一の樹脂が好ましく、それとは異なる樹脂であっても構わない。樹脂被覆層における樹脂はその表面に、ヒドロキシ基及び/又はシラノール基を有することが好ましい。
【0132】
(DC)被覆層がシリカ被覆層及び/又は樹脂被覆層を含有する場合、本発明の実施の形態に係る組成物は、低伝送損失の観点から、(DC)被覆層が樹脂被覆層を含有し、樹脂被覆層が、特定の(A)バインダー樹脂からなる群より選ばれる一種類以上を含有することが好ましく、低伝送損失及び信頼性向上の観点から、ポリイミド系の樹脂からなる群より選ばれる一種類以上を含有することがより好ましい。また樹脂被覆層は、低伝送損失の観点から、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含有することもより好ましい。
【0133】
(DC)被覆層がシリカ被覆層及び/又は樹脂被覆層を含有する場合、本発明の実施の形態に係る組成物は、低伝送損失の観点から、(DC)被覆層が樹脂被覆層を含有し、樹脂被覆層が、ポリイミド系の樹脂からなる群より選ばれる一種類以上を含有し、ポリイミド系の樹脂が、上記の(1)~(5)の残基からなる群より選ばれる一種類以上を有することが好ましい。
【0134】
上記のような樹脂は、(D)着色剤の周波数1GHzにおける誘電正接を0.00010~0.0100の範囲に調整する上で好適である。また組成物を硬化した硬化物の膜厚1μm当たりの可視光線の波長における光学濃度を0.20~3.0に調整しつつ、誘電正接の上記範囲に調整する上でも好適である。
【0135】
(DC)被覆層の含有量は、顔料を100質量部とした場合において、低伝送損失及び信頼性向上の観点から、0.10質量部以上が好ましく、0.50質量部以上がより好ましく、1.0質量部以上がさらに好ましく、3.0質量部以上がさらにより好ましく、5.0質量部以上が特に好ましい。一方、(DC)被覆層の含有量は、外光反射抑制の観点から、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
【0136】
<熱発色剤及び酸化発色剤>
本発明の実施の形態に係る組成物は、低伝送損失の観点から、(D)着色剤を含有し、さらに熱発色剤及び/又は酸化発色剤を含有することが好ましい。
【0137】
熱発色剤とは、不活性雰囲気下での加熱後に、可視光線の波長(380~780nm)の光を吸収して着色させる化合物をいう。熱発色剤は、不活性雰囲気下、加熱によって構造変化又は分解する構造を有する化合物が好ましい。不活性雰囲気は、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、若しくはキセノン雰囲気、酸素を1.0~10,000質量ppm(0.00010~1.0質量%)未満含有するガス雰囲気、又は、真空が好ましい。
【0138】
酸化発色剤とは、酸素を含むガス雰囲気下での加熱後に、可視光線の波長(380~780nm)の光を吸収して着色させる化合物をいう。酸化発色剤は、酸素を含むガス雰囲気下、加熱によって構造変化又は分解する構造を有する化合物が好ましい。酸素を含むガス雰囲気は、空気若しくは酸素雰囲気、又は、酸素を10,000質量ppm(1.0質量%)以上含有するガス雰囲気が好ましい。
【0139】
本発明の実施の形態に係る組成物は、低伝送損失及び外光反射抑制の観点から、(D)着色剤が、二色以上の着色顔料混合物及び/又は二色以上の着色染料混合物を含有し、さらに熱発色剤及び/又は酸化発色剤を含有し、熱発色剤及び/又は酸化発色剤が、少なくとも2つのフェノール性水酸基を含み、かつ、芳香族構造を有する化合物を含むことが好ましく、少なくとも3つのフェノール性水酸基を含み、かつ、芳香族構造を有する化合物を含むことがより好ましく、低伝送損失、外光反射抑制、及び信頼性向上の観点から、1,2,4-トリヒドロキシベンゼン又はピロガロールを含むことがさらに好ましい。い。
【0140】
本発明の実施の形態に係る組成物は、低伝送損失及び外光反射抑制の観点から、(D)着色剤が、二色以上の着色顔料混合物及び/又は二色以上の着色染料混合物を含有し、さらに熱発色剤及び/又は酸化発色剤を含有し、本発明の組成物を硬化した硬化物が、以下の(Q1)化合物及び/又は(Q2)化合物を含むことが好ましい。
(Q1)キノン構造及び/又はキノイド構造を有し、かつ、芳香族構造を有する化合物
(Q2)2つ以上のキノン構造及び/又は2つ以上のキノイド構造を有する化合物。
【0141】
熱発色剤及び/又は酸化発色剤は、不活性雰囲気及び/又は酸素を含むガス雰囲気下、当該化合物を含む組成物を硬化した硬化物において上記の(Q1)化合物及び/又は(Q2)化合物として存在することが好ましい。
【0142】
本発明の実施の形態に係る組成物は、低伝送損失、外光反射抑制、及び信頼性向上の観点から、(D)着色剤が、二色以上の着色顔料混合物及び/又は二色以上の着色染料混合物を含有し、さらに熱発色剤及び/又は酸化発色剤を含有し、熱発色剤及び/又は酸化発色剤が、少なくとも2つのフェノール性水酸基を含み、かつ、芳香族構造を有する化合物を含有し、熱発色剤及び/又は酸化発色剤が、さらに一般式(11)で表される構造を有する化合物を含有することが好ましい。一般式(11)で表される構造を有する化合物は窒素原子に少なくとも1つの架橋性基を有し、架橋性基がアルコキシメチル基及び/又はメチロール基である。アルコキシメチル基は、メトキシメチル基、エトキシメチル基、又はブトキシメチル基が好ましく、メトキシメチル基がより好ましい。
【0143】
【化3】
【0144】
一般式(11)において、R11は水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を表す。*及び*は、それぞれ独立して、結合点を表すが、窒素原子にカルボニル基は隣接しない。aは1又は2を表す。bは0又は1を表す。なおa+b=2である。*及び*は上記の発明の効果の観点から、それぞれ独立して、少なくとも1つが芳香族構造、芳香族ヘテロ環構造、縮合多環式構造、又は縮合多環式ヘテロ環構造との結合点であることが好ましい。*及び*は、それぞれ独立して、いずれもが芳香族構造、芳香族ヘテロ環構造、縮合多環式構造、又は縮合多環式ヘテロ環構造との結合点であることも好ましい。*及び*の結合点において、上記の発明の効果の観点から、芳香族構造は、ベンゼン構造、ビフェニル構造、ターフェニル構造が好ましく、芳香族ヘテロ環構造は、トリアジン構造、イソシアヌル酸構造、ピロール構造、イミダゾール構造、又はトリアゾール構造が好ましく、縮合多環式構造はフルオレン構造又はナフタレン構造が好ましく、縮合多環式ヘテロ環構造はカルバゾール構造、インドール構造、ベンゾイミダゾール構造、又はベンゾトリアゾール構造が好ましい。*及び*の結合点において、芳香族ヘテロ環構造はトリアジン構造がより好ましい。
【0145】
なお上記の一般式(11)で表される構造を有する化合物は後述する特定の架橋性基を有するため、後述する(F)架橋剤として用いても構わない。すなわち当該化合物は、熱着色剤及び/又は酸化着色剤、並びに、(F)架橋剤の両方に分類される。
【0146】
熱発色剤及び/又は酸化発色剤、並びに、少なくとも2つのフェノール性水酸基を含み、かつ、芳香族構造を有する化合物は、不活性雰囲気及び/又は酸素を含むガス雰囲気下、これらの化合物を含む組成物を硬化した硬化物においてキノン構造及び/又はキノイド構造を有する化合物として存在することが好ましく、上記の(Q1)化合物及び/又は(Q2)化合物として存在することがより好ましい。
【0147】
本発明の実施の形態に係る組成物の全固形分に占める熱発色剤及び/又は酸化発色剤の含有比率は、外光反射抑制及び信頼性向上の観点から、5.0質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上が特に好ましい。一方、熱発色剤及び/又は酸化発色剤の含有比率は、低伝送損失の観点から、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
【0148】
<(E)分散剤>
本発明の実施の形態に係る組成物は、外光反射抑制及び信頼性向上の観点から、顔料を含有し、さらに(E)分散剤を含有することが好ましい。(E)分散剤とは、顔料表面と相互作用する表面親和性構造と、顔料同士の接近を阻害する分散安定化構造とを有する化合物をいう。
【0149】
表面親和性構造としては、例えば、塩基性基、酸性基、塩基性基の塩構造、又は酸性基の塩構造が挙げられる。分散安定化構造としては、例えば、静電反発作用を用いるイオン性置換基や極性置換基、又は立体障害作用を用いるポリマー鎖などが挙げられる。(E)分散剤は、塩基性基を有する分散剤、塩基性基及び酸性基を有する分散剤、又は塩基性基の塩構造を有する分散剤が好ましい。なお酸性基を有する分散剤、酸性基の塩構造を有する分散剤、又は、塩基性基及び酸性基を有しない分散剤を含有しても構わない。
【0150】
(E)分散剤が有する塩基性基は、三級アミノ基又は含窒素環構造が好ましい。(E)分散剤が有する酸性基は、カルボキシ基、スルホン酸基、又はリン酸基が好ましい。(E)分散剤が有する塩基性基の塩構造は、四級アンモニウム塩構造又は含窒素環構造の塩構造が好ましい。塩基性基の塩構造におけるカウンターアニオンは、カルボン酸アニオン、スルホン酸アニオン、硫酸アニオン、硝酸アニオン、リン酸アニオン、又はハロゲンアニオンが好ましい。(E)分散剤が有するポリマー鎖は、フッ素樹脂、シリコーン、アクリル樹脂、ポリオキシアルキレンエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオール、ポリアルキレンアミン、ポリエチレンイミン、又はポリアリルアミンが好ましい。
【0151】
上記のような(E)分散剤は、その構造による分散安定化により顔料を微細化でき、組成物を硬化した硬化物における膜密度向上により高耐熱化するため、信頼性が向上すると推定される。また顔料の微細化によって硬化物の表面のラフネスが低減するため、入射した外光の反射・散乱が低減されると考えられる。
【0152】
本発明の実施の形態に係る組成物が顔料を含有する場合、(E)分散剤の含有量は、顔料を100質量部とした場合において、外光反射抑制及び信頼性向上の観点から、5.0質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上がさらに好ましい。一方、(E)分散剤の含有量は、低伝送損失及び信頼性向上の観点から、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましい。
【0153】
<(F)架橋剤>
本発明の実施の形態に係る組成物は、(A)バインダー樹脂及び(D)着色剤に加えて、さらに(B)化合物及び/又は(F)架橋剤を含有することが好ましい。(F)架橋剤とは、樹脂などと反応可能な架橋性基、カチオン重合性基、又はアニオン重合性基を有する化合物をいう。
【0154】
本発明の実施の形態に係る組成物は、上記の(C)感光剤を含有し、さらに(B)化合物及び/又は(F)架橋剤を含有することが好ましく、光反応促進の観点から、上記の(C3)光酸発生剤又は(C4)光塩基発生剤を含有し、さらに(F)架橋剤を含有することがより好ましい。一方、樹脂などの架橋度向上の観点から、上記の(C2)ナフトキノンジアジド化合物を含有し、さらに(F)架橋剤を含有することも好ましい。
【0155】
(F)架橋剤は、アルコキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、エポキシ基、オキセタニル基、及びブロックイソシアネート基(以下、「特定の架橋性基」)からなる群より選ばれる一種類以上の基を有する化合物が好ましく、特定の架橋性基からなる群より選ばれる一種類以上の基を少なくとも2つ有する化合物がより好ましい。アルコキシアルキル基は、アルコキシメチル基又はアルコキシエチル基が好ましく、メトキシメチル基又はメトキシエチル基がより好ましい。ヒドロキシアルキル基は、メチロール基又はエチロール基が好ましい。
【0156】
(F)架橋剤は、低伝送損失の観点から、含窒素環状構造及び1~2価の脂肪族基を有することが好ましい。含窒素環状構造は、窒素原子を少なくとも2つ有する環状構造が好ましく、イソシアヌル酸構造、トリアジン構造、グリコールウリル構造、イミダゾリドン構造、ピラゾール構造、イミダゾール構造、トリアゾール構造、テトラゾール構造、又はプリン構造がより好ましい。1~2価の脂肪族基は、炭素数4~25が好ましく、炭素数6~20がより好ましい。1~2価の脂肪族基はアルキレン基が好ましい。
【0157】
(F)架橋剤は、低伝送損失の観点から、脂肪族カルボン酸エステル構造を有することも好ましい。脂肪族カルボン酸エステル構造は、炭素数10~30が好ましく、炭素数12~25がより好ましく、炭素数15~20がさらに好ましい。
【0158】
上記のような(F)架橋剤は、架橋構造の導入により組成物を硬化した硬化物の耐熱性が向上するため、アウトガス等の抑制により信頼性が向上すると推定される。
【0159】
(F)架橋剤の含有量は、(A)バインダー樹脂及び(B)化合物の合計を100質量部とした場合において、低伝送損失及び信頼性向上の観点から、1.0質量部以上が好ましく、3.0質量部以上がより好ましく、5.0質量部以上がさらに好ましい。一方、(F)架橋剤の含有量は、低伝送損失の観点から、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
【0160】
<無機粒子及び樹脂粒子>
本発明の実施の形態に係る組成物は、信頼性向上の観点から、さらに無機粒子及び/又は樹脂粒子を含有することが好ましい。
【0161】
無機粒子とは、金属元素、半金属元素、及び半導体元素からなる群より選ばれる元素を主成分に含む粒子をいう。なお主成分とは、構成成分において質量を基準として最も多く含まれる成分をいう。無機粒子は、シリカ粒子、アルミナ粒子、チタニア粒子、酸化バナジウム粒子、酸化クロム粒子、酸化鉄粒子、酸化コバルト粒子、酸化銅粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化ニオブ粒子、酸化スズ粒子、又は酸化セリウム粒子が好ましく、低伝送損失及び外光反射抑制の観点から、シリカ粒子がより好ましい。
【0162】
シリカ粒子は、低伝送損失の観点から、中空シリカ粒子を含むことが好ましい。中空シリカ粒子とは、内部に空孔を有するシリカ粒子をいう。シリカ粒子の空隙率は、10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、30%以上がさらに好ましい。一方、シリカ粒子の空隙率は、70%以下が好ましく、60%以下がより好ましく、50%以下がさらに好ましい。シリカ粒子の空隙率は、TEMを用いて膜の断面を撮像及び解析して測定できる。
【0163】
シリカ粒子は、低伝送損失の観点から、CuKα線によるX線回折分析スペクトルにおいて、クリストバライト結晶相に由来するピーク及び/又はクオーツ結晶相に由来するピークを有することが好ましい。CuKα線によるX線回折分析スペクトルの2θ=10~90°の範囲における、SiOに由来する全ピーク面積に対するクリストバライト結晶相及びクオーツ結晶相に由来するピークの合計面積の割合は、20~100質量%が好ましく、40~100質量%がより好ましく、60~100質量%がさらに好ましく、80~100質量%が特に好ましい。
【0164】
シリカ粒子は、表面に官能基を有することが好ましい。シリカ粒子が表面に有する官能基は、ラジカル重合性基、熱反応性基、シラノール基、アルコキシシリル基、アルキルシリル基、ジアルキルシリル基、トリアルキルシリル基、フェニルシリル基、又はジフェニルシリル基が好ましい。ラジカル重合性基又は熱反応性基は、ラジカル重合性基を含む表面修飾基の反応残基又は熱反応性基を含む表面修飾基の反応残基であることも好ましい。シリカ粒子は、表面にラジカル重合性基及び/又は熱反応性基を有することがより好ましい。
【0165】
シリカ粒子は、信頼性向上の観点から、ナトリウム元素を含むシリカ粒子を含有することが好ましい。ナトリウム元素の存在形態としては、例えば、イオン(Na)又はシラノール基との塩(Si-ONa)が挙げられる。シリカ粒子に占めるナトリウム元素の含有量は、1.0質量ppm以上が好ましく、5.0質量ppm以上がより好ましく、10質量ppm以上がさらに好ましく、50質量ppm以上がさらにより好ましく、100質量ppm以上が特に好ましい。一方、シリカ粒子に占めるナトリウム元素の含有量は、10,000質量ppm以下が好ましく、5,000質量ppm以下がより好ましく、1,000質量ppm以下がさらに好ましい。シリカ粒子が有するナトリウム元素は、透過型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(以下、「TEM-EDX」)を用いて膜の断面を撮像及び解析して検出できる。
【0166】
シリカ粒子の平均一次粒子径は信頼性向上の観点から、5.0nm以上が好ましく、7.0nm以上がより好ましく、10nm以上がさらに好ましい。一方、シリカ粒子の平均一次粒子径は、低伝送損失抑制及び外光反射抑制の観点から、200nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましく、70nm以下がさらに好ましく、50nm以下がさらにより好ましく、30nm以下が特に好ましく、20nm以下が最も好ましい。シリカ粒子の一次粒子径とは、シリカ粒子の一次粒子における長軸径をいう。膜中のシリカ粒子の平均一次粒子径は、TEMを用いて膜の断面を撮像及び解析し、シリカ粒子の一次粒子30個を測定した平均値として算出できる。シリカ粒子分散液中のシリカ粒子の平均一次粒子径は、動的光散乱法により粒度分布を測定して求められる。
【0167】
樹脂粒子とは、樹脂を主成分に含む粒子をいう。なお主成分とは、構成成分において質量を基準として最も多く含まれる成分をいう。樹脂粒子は低伝送損失及び外光反射抑制の観点から、フッ素樹脂粒子及び/又は液晶ポリマー粒子を含有することが好ましく、テトラフルオロエチレン系ポリマー粒子を含むことがより好ましい。
【0168】
樹脂粒子の平均一次粒子径は信頼性向上の観点から、20nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましく、40nm以上がさらに好ましく、50nm以上がさらにより好ましく、60nm以上が特に好ましい。一方、樹脂粒子の平均一次粒子径は、低伝送損失抑制及び外光反射抑制の観点から、300nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、150nm以下がさらに好ましく、120nm以下がさらにより好ましく、100nm以下が特に好ましく、80nm以下が最も好ましい。樹脂粒子の一次粒子径とは、樹脂粒子の一次粒子における長軸径をいう。
【0169】
膜中のシリカ粒子又は樹脂粒子の平均一次粒子径は、TEMを用いて膜の断面を撮像及び解析し、シリカ粒子又は樹脂粒子の一次粒子30個を測定した平均値として算出できる。シリカ粒子分散液中のシリカ粒子又は樹脂粒子分散液中の樹脂粒子の平均一次粒子径は、動的光散乱法により粒度分布を測定して求められる。
【0170】
上記のような無機粒子及び樹脂粒子は、その堅牢な構造により組成物を硬化した硬化物の耐熱性が向上するため、アウトガス等の抑制により信頼性が向上すると推定される。また硬化物の表面に偏在するシリカ粒子やフッ素樹脂粒子などにより、入射した外光の反射・散乱が低減されると考えられる。
【0171】
本発明の実施の形態に係る組成物の全固形分に占める無機粒子及び樹脂粒子の含有比率の合計は、低伝送損失及び信頼性向上の観点から、5.0質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上が特に好ましい。一方、無機粒子及び樹脂粒子の含有比率の合計は、外光反射抑制の観点から、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
【0172】
<その他の添加剤>
本発明の実施の形態に係る組成物は、さらに、溶解促進剤、撥インク剤、増感剤、連鎖移動剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、及び界面活性剤からなる群より選ばれる一種類以上を含有することも好ましい。これらの化合物は、公知のものを用いても構わない。
【0173】
<溶剤>
本発明の実施の形態に係る組成物は、さらに溶剤を含有することも好ましい。溶剤は各種樹脂及び各種添加剤の溶解性の観点から、アルコール性水酸基、カルボニル基、エステル結合、アミド結合、又は少なくとも3つのエーテル結合を有する化合物が好ましい。
【0174】
本発明の組成物が顔料を含有し、さらに(E)分散剤を含有する場合、溶剤は、カルボニル基、エステル結合、又はアミド結合を有する化合物が好ましく、アルキルカルボニル基、ジアルキルカルボニル基、ホルミル基、カルボキシ基、カルボン酸エステル結合、炭酸エステル結合、ギ酸エステル結合、アミド基、イミド基、ウレア結合、又はウレタン結合を有する化合物がより好ましく、アセテート結合、プロピオネート結合、又はブチレート結合を有する化合物がさらに好ましい。
【0175】
<フッ素元素の含有量>
本発明の実施の形態に係る組成物は、信頼性向上の観点から、さらに下記(1α)の条件を満たすことが好ましい。本発明の実施の形態に係る組成物は、さらに下記(2α)の条件を満たすことがより好ましい。
(1α)組成物の全固形分に占めるフッ素元素の含有量が1,000質量ppm以下
(2α)組成物の全固形分に占めるフッ化物イオンの含有量が1,000質量ppm以下。
【0176】
フッ素元素を含む成分は、フッ化アルキル基を含む置換基を有するフェノール化合物、フッ化アルキル化合物、フッ化シクロアルキル化合物、又はフッ化アリール化合物が好ましい。フッ化物イオンを含む成分はカチオン種として、アンモニウムイオン、一級アンモニウムイオン、二級アンモニウムイオン、三級アンモニウムイオン、又は四級アンモニウムイオンを含有することが好ましい。四級アンモニウムイオンは直鎖又は分岐の炭化水素基を有することが好ましい。炭化水素基は、炭素数1~15のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基、炭素数6~15のアリール基、炭素数2~6のアルケニル基、又は炭素数1~6のヒドロキシアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素数1~6のアルキル基がさらに好ましい。
【0177】
組成物の全固形分に占めるフッ素元素の含有量は信頼性向上の観点から、0質量ppm以上が好ましく、0.010質量ppm以上がより好ましく、0.030質量ppm以上がさらに好ましく、0.050質量ppm以上がさらにより好ましく、0.070質量ppm以上が特に好ましく、0.10質量ppm以上が最も好ましい。一方、フッ素元素の含有量は信頼性向上の観点から、1,000質量ppm以下が好ましく、500質量ppm以下がより好ましく、300質量ppm以下がさらに好ましく、100質量ppm以下が特に好ましい。さらにフッ素元素の含有量は、50質量ppm以下が好ましく、30質量ppm以下がより好ましく、10質量ppm以下がさらに好ましく、5質量ppm以下がさらにより好ましく、3質量ppm以下が特に好ましく、1質量ppm以下が最も好ましい。
【0178】
組成物の全固形分に占めるフッ素元素の含有量は0質量ppmであっても構わない。組成物の全固形分に占めるフッ化物イオンの含有量も0質量ppmであっても構わない。組成物の全固形分に占めるフッ素元素の含有量及び/又はフッ化物イオンの含有量が0質量ppmを超える場合、本発明の実施の形態に係る組成物は、(A)バインダー樹脂若しくは(D)着色剤が構造中にフッ素原子若しくはフッ化物イオンを有する、又は、さらにフッ素元素を含む成分及び/又はフッ化物イオンを含む成分を含有することが好ましい。
【0179】
本発明の実施の形態に係る組成物が、(C)感光剤、(B)化合物、又は(F)架橋剤を含有し、かつ組成物の全固形分に占めるフッ素元素の含有量及び/又はフッ化物イオンの含有量が0質量ppmを超える場合、本発明の実施の形態に係る組成物は、(A)バインダー樹脂、(D)着色剤、(C)感光剤、(B)化合物、若しくは(F)架橋剤が構造中にフッ素原子若しくはフッ化物イオンを有する、又は、さらにフッ素元素を含む成分及び/又はフッ化物イオンを含む成分を含有することが好ましい。
【0180】
組成物中における、構造中にフッ素原子を含む化合物やフッ素元素を含む成分などの含有量を特定数値以下とすることで、これらの成分中のフッ素元素やフッ化物イオン又はこれらの成分に由来するフッ素元素を含むアニオンの含有量が特定数値以下となるため、組成物中の各成分の水素結合等の相互作用により、組成物中のプロトンが局所的に活性化されると推定される。そのため、現像液に対する溶解促進作用により、組成物の塗膜のパターン加工時における現像後の残渣発生が抑制されると考えられる。その結果、組成物の塗膜の直下に位置する金属層などへの残渣付着に起因する素子等の劣化が抑制され、信頼性が向上すると推定される。また意図的に上記の成分の含有量を特定数値以下とすることで、硬化物中における分極構造や電荷バランスが制御されると考えられる。その結果、電気絶縁性に悪影響を及ぼす金属不純物やイオン不純物に起因するイオンマイグレーションやエレクトロマイグレーションを抑制することで、信頼性が向上すると推定される。
【0181】
<本発明の実施の形態に係る組成物の硬化物>
本発明の実施の形態に係る硬化物は、本発明の実施の形態に係る組成物を硬化したものである。硬化とは、反応により架橋構造が形成され、膜の流動性が無くなること、又、その状態をいう。反応は、加熱によるもの、エネルギー線の照射によるもの等、特に限定されるものではないが、加熱によるものが好ましい。加熱によって架橋構造が形成され、膜の流動性が無くなった状態を熱硬化という。加熱条件としては、例えば、150~500℃で、5.0~300分間加熱するなどの条件である。加熱方法としては、例えば、オーブン、ホットプレート、赤外線、フラッシュアニール装置、又はレーザーアニール装置を用いて加熱する方法が挙げられる。処理雰囲気としては、例えば、空気、酸素、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン若しくはキセノン雰囲気下、酸素を1.0~10,000質量ppm(0.00010~1.0質量%)未満含有するガス雰囲気下、酸素を10,000質量ppm(1.0質量%)以上含有するガス雰囲気下、又は、真空下が挙げられる。
【0182】
本発明の実施の形態に係る組成物を硬化した硬化物の膜厚1μm当たりの可視光線の波長(380~780nm)における光学濃度は0.20~3.0である。光学濃度が上記範囲であることで、入射した外光を遮光できるため、この硬化物を遮光用の層に用いることで外光反射抑制の効果が顕著となる。また、この硬化物を遮光用の層に用いた素子においては、硬化物自身やその内側にある層の光劣化が抑制されるため、素子の信頼性向上の効果が顕著となる。
【0183】
上記光学濃度は、外光反射抑制及び信頼性向上の観点から、0.30以上が好ましく、0.50以上がより好ましく、1.0以上がさらに好ましい。一方、上記光学濃度は、2.0以下が好ましく、1.7以下がより好ましく、1.5以下がさらに好ましい。
【0184】
本発明の実施の形態に係る組成物を硬化した硬化物の周波数1GHzにおける誘電正接は0.00010~0.0100である。上記誘電正接は、信頼性向上の観点から、0.00010以上が好ましく、0.00020以上がより好ましく、0.00030以上がさらに好ましく、0.00040以上がさらにより好ましく、0.00050以上が特に好ましい。一方、上記誘電正接は、低抵抗及び低伝送損失の観点から、0.0100以下が好ましく、0.0070以下がより好ましく、0.0050以下がさらに好ましい。さらに低伝送損失の観点から、0.0040以下が好ましく、0.0030以下がより好ましく、0.0020以下がさらに好ましく、0.0010以下が特に好ましい。本発明の実施の形態に係る組成物を硬化した硬化物の周波数10GHz、30GHz、及び70GHzにおける誘電正接に関する好ましい範囲も、それぞれ上記と同様である。なお誘電正接は、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)による共振器法で測定した値である。
【0185】
本発明の実施の形態に係る組成物を硬化した硬化物の周波数1GHzにおける誘電率が3.5以下、及び/又は、本発明の実施の形態に係る組成物を硬化した硬化物の吸水率が1.5質量%以下であることが好ましい。
【0186】
上記誘電率は、2.0以上が好ましく、2.3以上がより好ましく、2.5以上がさらに好ましい。一方、上記誘電率は、3.5以下が好ましく、3.0以下がより好ましく、2.9以下がさらに好ましく、2.7以下が特に好ましい。本発明の実施の形態に係る組成物を硬化した硬化物の周波数10GHz、30GHz、及び70GHzにおける誘電率に関する好ましい範囲も、それぞれ上記と同様である。
【0187】
上記吸水率は、0.10質量%以上が好ましく、0.30質量%以上がより好ましい。一方、上記吸水率は、1.5質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、0.80質量%以下がさらに好ましく、0.60質量%以下がさらにより好ましく、0.50質量%以下が特に好ましい。
【0188】
<硬化物を具備する素子、アンテナ、及び物品>
本発明の実施の形態に係る素子は、本発明の実施の形態に係る組成物を硬化した硬化物を具備する。本発明の実施の形態に係る硬化物は、優れた低抵抗駆動特性、低伝送損失効果、反射抑制効果、及び高信頼性を兼ね備えることが可能である。そのため本発明の実施の形態に係る組成物は、周波数1GHz以上の高周波の伝送、送信、及び受信からなる群より選ばれる一種類以上の素子の形成に用いられることが好ましい。
【0189】
本発明の実施の形態に係るアンテナは、本発明の実施の形態に係る組成物を硬化した硬化物を備える素子を具備する。従って、本発明の実施の形態に係る組成物は、周波数1GHz以上の高周波帯域の電磁波を用いるアンテナの形成に用いられることが、低伝送損失及びアンテナ放射特性向上の観点から特に好ましい。その結果、アンテナ効率向上及びアンテナ利得向上の効果が顕著となる。
【0190】
本発明の実施の形態に係る硬化物を備える素子を具備するアンテナは、平面アンテナが好ましい。平面アンテナとしては、例えば、パッチアンテナ、マイクロストリップアンテナ、又はコプレーナアンテナが挙げられる。
【0191】
上記のようなアンテナは、マイクロ波やミリ波などの高周波帯域(例えば、周波数1~100GHz)の電磁波の伝送、送信、及び受信に好適である。上記のようなアンテナは、例えば、V2X通信システム、第5世代移動通信システム(5G)、又は車載レーダーシステムなどに適用可能であるが、適用可能なシステムはこれらに限定されない。
【0192】
アンテナは、電子装置、移動体、建造物、及び窓等に取り付けても構わない。ビルなどの建造物や車両などの移動体の窓に用いられるガラスは、1枚からなる単板でもよく、合わせガラスでも構わない。アンテナを窓に取り付ける場合、例えば、接着剤、弾性シール、又は金属などのスペーサが用いられる。
【0193】
アンテナをビルなどの建造物のガラスに取り付ける場合、室内側と室外側の少なくとも一方に取り付けてもよく、室内側と室外側の両方に取り付けても構わない。アンテナを室内側と室外側の両方に取り付ける場合、所定の高周波帯域(例えば、30GHz)を含む電磁波中継局(リピーター)として機能するインフラの役割を果たすこともできる。
【0194】
アンテナは、窓に用いられるガラスを第1基板として用い、ガラス上に金属層、遮光層(及び絶縁層)、グランド層、及び信号線を設けることによって形成しても構わない。
【0195】
上記のようなアンテナを具備する物品としては、例えば、電子装置、移動体、建造物、又は窓などが挙げられる。電子装置としては、例えば、表示装置、半導体装置、金属張積層板、産業用装置、医療用装置、又は建築用装置などが挙げられる。移動体としては、例えば、車両、鉄道、飛行機、又は重機などが挙げられる。建造物としては、例えば、住居、店舗、オフィス、ビル、又は工場などが挙げられる。窓としては、例えば、電子装置窓、移動体窓、又は建造物窓などが挙げられる。
【0196】
本発明の実施の形態に係る硬化物を具備する素子は、アンテナ以外の用途に用いる場合においても好適である。その他の用途は、上記に例示した物品のほか、表示装置、半導体装置、又は金属張積層板などが挙げられる。従って、本発明の組成物は、表示装置、半導体装置、及び金属張積層板からなる群より選ばれる一種類以上の素子の形成に用いられることも好ましい。
【0197】
表示装置としては、例えば、有機ELディスプレイ、量子ドットディスプレイ、又はマイクロ発光ダイオードディスプレイが挙げられる。半導体装置としては、例えば、FO-WLP構造、ファンアウト・パネルレベル・パッケージ構造、又はアンテナ・イン・パッケージ(以下、「AiP」)構造を有する半導体装置が挙げられる。なお半導体装置がAiP構造を有する場合、上述した本発明の硬化物を具備する素子を具備するアンテナを含むAiP構造を有することがより好ましい。金属張積層板としては、例えば、プリント回路基板が挙げられる。
【0198】
本発明の実施の形態に係る硬化物を備える素子を具備するアンテナ及び本発明の実施の形態に係る物品において、本発明の実施の形態に係る硬化物を具備する素子を具備することで、電極や金属配線間で発生する寄生容量、寄生インダクタンス、又は寄生抵抗などの発生が抑制され、これらに起因するクロストーク抑制及び誤動作抑制の効果が顕著となる。加えて、電極や金属配線間におけるリーク電流の発生が抑制され、オンオフ比の向上及び誤動作抑制の効果が顕著となる。交流駆動の場合、電圧を印加させる方向が周期的に変化するため、一方の電極へのイオン不純物などの蓄積が抑えられ、誤動作や信頼性低下をより抑制できるため好ましい。さらに周波数1GHz以上の高周波帯域の交流駆動においても、低伝送損失の効果が顕著となる。すなわち、本発明の実施の形態に係る硬化物を具備する素子は、交流駆動の用途において好適であって、周波数1GHz以上の高周波帯域の交流駆動の用途において特に好適である。
【0199】
<アンテナの実施の形態1>
本発明の実施の形態に係る組成物を硬化した硬化物を備える素子を具備する、アンテナの実施の形態1の一構成例を示す斜視図を図1に示す。また、このアンテナのA-A’線における模式的断面図を図2に示す。
【0200】
図1に示すアンテナ101は、平面形状が凸型であり幅の広い矩形部44と幅の狭い矩形部43とからなる第1基板40と、矩形部44において第1基板40の第1主面41に設けられる金属層10と、第1基板40の第2主面42に設けられるグランド層20と、金属層10に給電する信号線31と、金属層10及び信号線31に重畳する遮光層50とを備える。遮光層50に覆われた信号線31は、伝送線路30Aとして機能する。アンテナ101は、パッチアンテナ又はマイクロストリップアンテナと称される。なお遮光層50に覆われた金属層10を、アンテナ導体部11という。遮光層50は、本発明の実施の形態に係る組成物の硬化物であることが好ましく、本発明の実施の形態に係る組成物の硬化物を少なくとも2層積層していることも好ましい。金属層10は、非感光性組成物又は感光性組成物から成膜した層が好ましく、スパッタリング法などで成膜した層であっても構わない。
【0201】
図2は、図1における断面軸A-A’での断面図であり、伝送線路30Aの構成を示すものである。伝送線路30Aは、金属層10に接続される信号線31を有するマイクロストリップラインである。すなわち、伝送線路30Aを有する平面アンテナ101は、マイクロストリップライン構造を有する平面アンテナである。
【0202】
<アンテナの実施の形態2>
本発明の実施の形態に係る組成物を硬化した硬化物を備える素子を具備する、アンテナの実施の形態2の一構成例を示す斜視図を図3に示す。また、このアンテナのB-B’線における模式的断面図を図4に示す。
【0203】
図3に示すアンテナ102は、伝送線路30Bが、信号線31、絶縁層70、及び遮光層51が積層された構成であり、アンテナ導体部11が、金属層10、絶縁層70、及び遮光層51が積層された構成であることを除いて、アンテナの実施の形態1であるアンテナ101と同じ構成である。遮光層51は、本発明の実施の形態に係る組成物の硬化物であることが好ましく、本発明の実施の形態に係る組成物の硬化物を少なくとも2層積層していることも好ましい。絶縁層70及び遮光層51が、それぞれ本発明の実施の形態に係る組成物の硬化物であって、組成の異なる本発明の組成物の硬化物を少なくとも2層積層していることも好ましい。金属層10は、非感光性組成物又は感光性組成物から成膜した層が好ましく、スパッタリング法などで成膜した層であっても構わない。
【0204】
<硬化物の製造方法>
本発明の実施の形態に係る硬化物の製造方法のある態様は、第1基板を配置する工程、金属層を成膜する工程、及び本発明の実施の形態に係る組成物の塗膜を成膜する工程、を有する硬化物の製造方法であって、前記組成物の塗膜を成膜する工程が、前記組成物の塗膜をパターン加工する工程を含み、さらに金属層をパターン加工する工程を、(1a)金属層を成膜する工程の後、かつ、前記組成物の塗膜を成膜する工程の前、又は、(2a)前記組成物の塗膜をパターン加工する工程の後に有する、硬化物の製造方法である。
【0205】
本発明の実施の形態に係る硬化物の製造方法において、金属層をパターン加工する工程を上記(2a)に有する場合、パターン加工方法は、エッチングによりパターン加工する方法が好ましく、パターン位置精度向上及びプロセスタイム短縮の観点から、本発明の組成物の塗膜のパターンをエッチングマスクとして、エッチングによりパターン加工することがより好ましい。
【0206】
本発明の実施の形態に係る硬化物の製造方法の別の態様は、第1基板を配置する工程、金属層を成膜する工程、絶縁層を成膜する工程、及び本発明の実施の形態に係る組成物の塗膜を成膜する工程、を有する硬化物の製造方法であって、前記組成物の塗膜を成膜する工程が、前記組成物の塗膜をパターン加工する工程を含み、さらに金属層をパターン加工する工程を、(1b)金属層を成膜する工程の後、かつ、絶縁層を成膜する工程の前、又は、(2b)絶縁層をパターン加工する工程を有し、該絶縁層をパターン加工する工程の後に有する、硬化物の製造方法である。
【0207】
本発明の別の態様である硬化物の製造方法において、金属層をパターン加工する工程を上記(2b)に有する場合、パターン加工方法は、エッチングによりパターン加工する方法が好ましく、パターン位置精度向上及びプロセスタイム短縮の観点から、絶縁層のパターンをエッチングマスクとして、エッチングによりパターン加工することがより好ましい。
【0208】
本発明の実施の形態に係る硬化物の製造方法は、さらにグランド層を成膜する工程を有することも好ましい。グランド層を成膜する工程は、第1基板上の金属層が成膜される面とは反対側の面に成膜することが好ましい。
【0209】
絶縁層を成膜する工程は、上述した金属層を成膜する工程の後が好ましく、金属層上に成膜することが好ましい。
【0210】
本発明の実施の形態に係る組成物の塗膜を成膜する工程は、上述した金属層を成膜する工程の後が好ましく、金属層上に成膜することが好ましい。また本発明の実施の形態に係る組成物の塗膜を成膜する工程は、上述した絶縁層を成膜する工程の後も好ましく、絶縁層上に成膜することも好ましい。
【0211】
本発明の実施の形態に係る硬化物の製造方法は、さらにオーバーコート層を成膜する工程を有することも好ましい。オーバーコート層を成膜する工程は、上述した本発明の組成物の塗膜をパターン加工する工程の後が好ましく、本発明の実施の形態に係る組成物の塗膜上に成膜することが好ましい。オーバーコート層を成膜する工程は、オーバーコート層をパターン加工する工程を含むことが好ましい。
【0212】
本発明の実施の形態に係る硬化物の製造方法は、さらに第2基板を配置する工程を有することも好ましい。第2基板を配置する工程は、対向する第1基板と離隔して配置することが好ましい。
【実施例0213】
以下に実施例、参考例、及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの範囲に限定されない。なお、以下の説明又は表で用いた化合物のうち略語を使用しているものについて、略語に対応する名称を、まとめて表1-1に示す。
【0214】
【表1-1】
【0215】
<各樹脂の合成例>
(A)バインダー樹脂として、合成例1~22で得られた各樹脂の組成を、まとめて表1-2~表1-3に示す。各樹脂は以下の文献に記載の方法に基づき、適宜モノマーとなる単量体化合物や共重合比率を変更して、公知の方法により合成した。モノマーの共重合比率は、表1-2~表1-3の通りである。
・合成例1~5及び8~11(ポリイミドPI-1~PI-5及びPI-8~PI-11)は、国際公開第2017/057281号の段落[0544]の合成例1に記載の方法。
・合成例6及び7(ポリイミドPI-6及びPI-7)は、国際公開第2017/159876号の段落[0726]の合成例6に記載の方法。
・合成例12及び13(ポリイミド前駆体PIP-1及びPIP-2)は、国際公開第2017/057281号の段落[0548]の合成例15に記載の方法。
・合成例14(ポリベンゾオキサゾールPB-1)は、国際公開第2017/057281号の段落[0546]の合成例12に記載の方法。
・合成例15(ポリベンゾオキサゾール前駆体PBP-1)は、国際公開第2017/057143号の段落[0161]の合成例9に記載の方法。
・合成例16(ポリアミドイミドPAI-1)は、国際公開第2018/159384号の段落[0160]の合成例9に記載の方法。
・合成例17及び合成例18(ポリシロキサンPS-1及びPS-2)は、国際公開第2017/057281号の段落[0553]の合成例30に記載の方法。
・合成例19(酸変性エポキシ樹脂AE-1)は、国際公開第2017/159876号の段落[0744]の合成例25に記載の方法。
・合成例20及び合成例21(アクリル樹脂AC-1及びAC-2)は、国際公開第2017/159876号の段落[0739]の合成例20に記載の方法。
・合成例22(フェノール樹脂PR-1)は、国際公開第2017/159876号の段落[0740]の合成例21に記載の方法。
【0216】
なお合成例6及び7では、国際公開第2017/159876号の段落[0726]の合成例6に記載の方法に基づき、ラジカル重合性基を導入した。
合成例20及び合成例21では、国際公開第2017/159876号の段落[0739]の合成例20に記載の方法に基づき、ラジカル重合性基を導入した。
合成例19において、エポキシ基を有するNC-3000-Hに対して、不飽和カルボン酸を反応させており、NC-3000-H由来のエポキシ基に対して全て開環付加させた。
合成例20及び合成例21において、エポキシ基を有するGMAを反応させており、GMAのエポキシ基を全て開環付加させた。
合成例12において、樹脂中のアミド酸構造単位に対してエステル化剤であるDFAを反応させており、メチル基を有するアミド酸エステル構造単位に構造変換させた。
【0217】
【表1-2】
【0218】
【表1-3】
【0219】
マレイミド樹脂(MI-1)及びポリフェニレンエーテル(PE-1)として、下記構造の樹脂を使用した。またテトラフルオロエチレン系ポリマー(TF-1)として、テトラフルオロエチレン(TFE)/パーフルオロ(プロピルビニル)エーテル(PPVE)/ナジック酸無水物(NA)=97.9/2.0/0.1(mol比)で共重合させた樹脂を用いた。
【0220】
【化4】
【0221】
各合成例で得られた樹脂、並びに、各実施例、参考例、及び比較例で使用した樹脂について、各樹脂が有する構造単位と構造を、まとめて表2-1-1に示す。
【0222】
【表2-1-1】
【0223】
各実施例、参考例、及び比較例で使用した(D)着色剤及び(E)分散剤の一覧と説明を、まとめて表2-1-2に示す。
【0224】
【表2-1-2】
【0225】
<各着色剤>
・Bk-CBF1は、国際公開第2019/087985号の段落[0503]~段落[0505]、被覆例1に記載されている被覆層を有するベンゾフラノン系黒色顔料。これは、ベンゾフラノン系黒色顔料である“IRGAPHOR”(登録商標) BLACK S0100CF(BASF社製;一次粒子径40~80nm)(以下、「Bk-S0100CF」)の表面にシリカ被覆層及び金属酸化物被覆層を有する。
・Bk-CBF2は、Bk-CBF1に対し、PFHETMSを用いて、公知の表面修飾法によりオルガノシランの表面修飾構造を導入したもの。これは、Bk-S0100CFおよび/または被覆層の表面にフッ素原子を含むオルガノシランの表面修飾構造を有する。なお表面修飾構造は顔料表面及び/又は被覆層表面の、ヒドロキシ基及び/又はシラノール基との脱水縮合反応によって導入されている。
・Bk-CBF3は、Bk-CBF1の存在下、MeTMS/HFHPTMS/cyEpoTMS/TMOS=30/50/10/10(mol%)を加水分解し、脱水縮合させる公知の表面グラフト化法により、ポリシロキサン(PS-1)の表面グラフト構造を導入したもの。これは、Bk-S0100CFおよび/または被覆層の表面にフッ素原子を含む構造を有し、かつ表面グラフトポリシロキサン構造を有する。なお表面グラフトポリシロキサン構造は顔料表面及び/又は被覆層表面の、ヒドロキシ基及び/又はシラノール基との脱水縮合反応によって導入されている。
・Bk-CBF4は、Bk-CBF1の存在下、MeTMS/PFHETMS/cyEpoTMS/TMOS=30/50/10/10(mol%)を加水分解し、脱水縮合させる公知の表面グラフト化法により、ポリシロキサン(PS-2)の表面グラフト構造を導入したもの。これは、Bk-S0100CFおよび/または被覆層の表面にフッ素原子を含む構造を有し、かつ表面グラフトポリシロキサン構造を有する。なお表面グラフトポリシロキサン構造は顔料表面及び/又は被覆層表面の、ヒドロキシ基及び/又はシラノール基との脱水縮合反応によって導入されている。
・Bk-CBF5は、Bk-S0100CFに対し、ポリイミド(PI-4)を用いて、公知の樹脂被覆法により樹脂被覆層を導入したもの。これは、Bk-S0100CFの表面にポリイミド樹脂被覆層を有する。
・Bk-CBF6は、Bk-S0100CFに対し、テトラフルオロエチレン系ポリマー(TF-1)を用いて、公知の樹脂被覆法により樹脂被覆層を導入したもの。これは、Bk-S0100CFの表面にテトラフルオロエチレン系樹脂被覆層を有する。
・Bk-CBF7は、Bk-CBF5に対し、PFHETMSを用いて、公知の表面修飾法によりオルガノシランの表面修飾構造を導入したもの。これは、Bk-S0100CFおよび/またはポリイミド樹脂被覆層の表面にフッ素原子を含むオルガノシランの表面修飾構造を有する。なお表面修飾構造は顔料表面及び/又は被覆層表面の、ヒドロキシ基及び/又はシラノール基との脱水縮合反応によって導入されている。
・Bk-CBF8は、Bk-CBF5の存在下、MeTMS/HFHPTMS/cyEpoTMS/TMOS=30/50/10/10(mol%)を加水分解し、脱水縮合させる公知の表面グラフト化法により、ポリシロキサン(PS-1)の表面グラフト構造を導入したもの。これは、Bk-S0100CFおよび/またはポリイミド樹脂被覆層の表面にフッ素原子を含む構造を有し、かつ表面グラフトポリシロキサン構造を有する。なお表面グラフトポリシロキサン構造は顔料表面及び/又は被覆層表面の、ヒドロキシ基及び/又はシラノール基との脱水縮合反応によって導入されている。
・Bk-CBF9は、Bk-CBF1に対し、ポリイミド(PI-4)を用いて、公知の樹脂被覆法により樹脂被覆層を導入したもの。これは、Bk-S0100CFの表面にシリカ被覆層、金属酸化物被覆層、およびポリイミド樹脂被覆層を有する。
・Bk-CBF10は、Bk-CBF1に対し、テトラフルオロエチレン系ポリマー(TF-1)を用いて、公知の樹脂被覆法により樹脂被覆層を導入したもの。これは、Bk-S0100CFの表面にシリカ被覆層、金属酸化物被覆層、およびテトラフルオロエチレン系樹脂被覆層を有する。
・Bk-CBF11は、Bk-CBF1に対し、ポリイミド(PI-9)を用いて、公知の樹脂被覆法により樹脂被覆層を導入したもの。これは、Bk-S0100CFの表面にシリカ被覆層、金属酸化物被覆層、およびポリイミド樹脂被覆層を有する。
・Bk-CPR1は、国際公開第2018/038083号の段落[0186]~段落[0188]及び段落[0191]、実施例18に記載の合成方法で得られる被覆層を有するペリレン系黒色顔料。これは、ペリレン系黒色顔料である“LUMOGEN”(登録商標) BLACK FK4280(BASF社製;一次粒子径50~100nm)(以下、「Bk-FK4280」)の表面にシリカ被覆層を有する。
・Bk-CPR2は、Bk-CPR1に対し、ポリイミド(PI-4)を用いて、公知の樹脂被覆法により樹脂被覆層を導入したもの。これは、Bk-FK4280の表面にシリカ被覆層およびポリイミド樹脂被覆層を有する。
・P.R.179
C.I.ピグメントレッド179(ペリレン系赤色顔料)
・P.Y.192
C.I.ピグメントイエロー192(イミダゾロン系黄色顔料)
・P.B.60
C.I.ピグメントブルー60(インダントロン系青色顔料)
・MA-100
三菱カーボンブラックMA-100(三菱ケミカル(株)製、一次粒子径20~30nmのカーボンブラック(有機黒色顔料))
・A.R.52
C.I.アシッドレッド52(キサンテン系赤色染料)
・B.B.7
C.I.ベーシックブルー7(トリアリールメタン系青色染料)
・S.R.18
C.I.ソルベントレッド18(アゾ系赤色染料)
・D.Y.201
C.I.ディスパースイエロー201(メチン系黄色染料)。
【0226】
<各顔料分散液の調製例>
顔料分散液として、調製例Bk-1~Bk-17で得られた各分散液の組成を、まとめて表2-2に示す。調製例Bk-1~Bk-17は、各顔料分散液を下記の方法により調製した。
【0227】
調製例Bk-1~Bk-17 顔料分散液(Bk-1~Bk-17)の調製
分散剤として、三級アミノ基を有するポリアルキレンアミン系-ポリオキシアルキレンエーテル系分散剤であるADP(アミン価:20mgKOH/g(固形分濃度:100質量%);特開2020-070352号公報の段落[0138]~段落[0141]、合成例2に記載の顔料分散剤1)を35.0g、溶剤としてPGMEAを765.0g秤量して混合し、10分間攪拌して拡散した後、着色剤として、表2-2に記載の黒色顔料を100.0g秤量して混合して30分間攪拌して予備攪拌液を得た。粉砕メディアとして、ジルコニウム元素とハフニウム元素との複合酸化物(ZrO-HfO)の純分が90質量%以上のセラミックビーズである0.40mmφの複合酸化物からなる粉砕メディア(ジルコニア(ZrO)/酸化ハフニウム(HfO)/酸化イットリウム(Y)/酸化アルミニウム(Al)=93.3/1.5/4.9/0.3(質量比))がベッセル内に充填された縦型ビーズミルに予備攪拌液を送液し、循環方式で第一の湿式メディア分散処理を周速8m/sで3時間行った。さらに、粉砕メディアとして、0.05mmφの複合酸化物からなる粉砕メディア(ジルコニア(ZrO)/酸化ハフニウム(HfO)/酸化イットリウム(Y)/酸化アルミニウム(Al)=93.3/1.5/4.9/0.3(質量比))がベッセル内に充填された縦型ビーズミルに送液し、顔料の平均一次粒子径が表2-2に記載の値となるように循環方式で第二の湿式メディア分散処理を周速9m/sで行った。その後、0.80μmφのフィルターで濾過を行い、固形分濃度15質量%、着色剤/分散剤=100/35(質量比)の顔料分散液(Bk-1~Bk-17)を得た。得られた顔料分散液中の顔料の平均一次粒子径を表2-2に示す。
【0228】
【表2-2】
【0229】
<導電粒子>
・AgP-1
炭素単体の被覆層を有する銀粒子(日清エンジニアリング(株)製、炭素単体の被覆層の表面膜厚:1nm,一次粒子径:40~60nm)
・AgP-2
炭素単体の被覆層を有する銀粒子(日清エンジニアリング(株)製、炭素単体の被覆層の表面膜厚:1nm,一次粒子径:60~80nm)。
【0230】
<分散剤>
・D.BYK-21116
四級アンモニウム塩構造及び三級アミノ基を有するAブロック、及び、四級アンモニウム塩構造及び三級アミノ基を有しないBブロックを有するブロック共重合体アクリル樹脂系分散剤(ビックケミー・ジャパン社製;アミン価:70mgKOH/g(固形分濃度:100質量%))。
【0231】
<金属層及び/又はグランド層用粒子分散液の調製例>
粒子分散液として、調製例AP-1~AP-3で得られた各分散液の組成を、まとめて表2-3に示す。調製例AP-1~AP-3は、各顔料分散液を下記の方法により調製した。各実施例、参考例、及び比較例で使用した導電性金属粒子及び分散剤の一覧と説明を、まとめて表2-3に示す。
【0232】
調製例AP-1~AP-2 粒子分散液(AP-1~AP-2)の調製
導電性金属粒子として、表2-3に記載の粒子を29.20g、分散剤として表2-3に記載のAgNDを0.88g、溶剤としてDMIBを35.09g、DPMを35.09g秤量して混合し、10分間攪拌して拡散した後、ホモジナイザーにて、1,200rpmで30分間混合処理を施して予備攪拌液を得た。さらに、高圧湿式メディアレス微粒化装置(ナノマイザー;ナノマイザー(株)製)を用いて湿式メディア分散処理を施し、固形分濃度30質量%の粒子分散液(AP-1~AP-2)を得た。
【0233】
調製例AP-3 粒子分散液(AP-3)の調製
調製例AP-1において、分散剤としてAgNDの代わりにD.BYK-21116を2.92g秤量し、溶剤として表2-3に記載の、DMIBを34.07gとDPMを34.07g秤量し、それ以外は調製例AP-1と同様にして、固形分濃度30質量%の粒子分散液(AP-3)を得た。
【0234】
【表2-3】
【0235】
<シリカ粒子分散液の合成例>
各実施例、参考例、及び比較例で使用した無機粒子であるシリカ粒子の一覧と説明を、まとめて表2-4に示す。また(G)樹脂粒子の一覧と説明も、まとめて表2-4に示す。
【0236】
合成例23 シリカ粒子(SP-1)分散液の合成
三口フラスコに、溶剤としてMEKを104.5g、ナトリウム元素を含有するシリカ粒子分散液としてMEK-ST-40を142.5g、重合禁止剤としてMOPを0.01g秤量して添加して混合し、10分間攪拌した後、液温を50℃に昇温した。次いで、表面修飾剤として、3.0gのKBM-503を50.0gのMEKに溶解させた溶液を10分間かけて滴下した。滴下終了後、50℃で2時間攪拌して表面修飾剤を脱水縮合させた。反応後、反応溶液を室温に冷却し、シリカ粒子(SP-1)の分散液を得た。得られたシリカ粒子(SP-1)は、ラジカル重合性基としてメタクリロイル基を含む表面修飾基を有する。
【0237】
なおシリカ粒子(SP-2)の分散液である(MSiP-1)は、ナトリウム元素を含有するシリカ粒子分散液としてMEK-ST-40、表面修飾剤としてKBM-13を用いて、重合禁止剤であるMOPは用いずに、合成例19と同様の方法によりメチルシリル基を含む表面修飾基を有するシリカ粒子を合成して用いた。
【0238】
シリカ粒子(SP-3)の分散液である(PSiP-1)は、内部に空孔を有する中空シリカ粒子を合成して使用した。
【0239】
シリカ粒子(SP-4)の分散液である(CSiP-1)は、クリストバライト結晶相を有するシリカ粒子を合成して用いた。
【0240】
フッ素樹脂粒子(FP-1)の分散液である(PTFP-1)は、公知の方法によりテトラフルオロエチレン系ポリマーを合成して用いた。
【0241】
【表2-4】
【0242】
<各実施例、参考例、及び比較例における評価方法>
各実施例、参考例、及び比較例における評価方法を以下に示す。
【0243】
(1)顔料分散液中の顔料の平均一次粒子径及び粒子分散液中の粒子の平均一次粒子径
動的光散乱法粒度分布測定装置(SZ-100;堀場製作所社製)を用い、レーザー波長を532nm、希釈溶媒としてPGMEA、希釈倍率を250倍(重量比)、溶媒粘度を1.25、溶媒屈折率を1.40、測定温度を25℃、測定モードを散乱光、演算条件を多分散・ブロードとして、顔料分散液におけるD50(メジアン径)を測定した。なお測定回数を2回として、平均値を顔料分散液中の顔料の平均一次粒子径とした。同様の方法で、粒子分散液におけるD50(メジアン径)を測定した。なお測定回数を2回として、平均値を粒子分散液中の粒子の平均一次粒子径とした。
【0244】
(2)遮光層の遮光性(光学濃度値(以下、「OD値」))
下記、実施例1記載の方法で、テンパックスガラス基板(AGCテクノグラス(株)製)上に遮光層の評価用サンプル(硬化膜)を作製した。透過濃度計(X-Rite 361T(V);X-Rite社製)を用いて、作製した硬化膜の面内3箇所における入射光強度(I)及び透過光強度(I)をそれぞれ測定した。遮光性の指標として、膜厚1μm当たりのOD値を下記式により算出し、面内3箇所におけるOD値の平均値を算出した。
OD値=log10(I/I)。
【0245】
(3)遮光層の誘電率及び誘電正接
下記、実施例1記載の方法で、6インチ径のSiO/Siウェハ上に遮光層の評価用サンプル(硬化膜)を膜厚約5μmで作製した。希フッ化水素酸を用いて、SiO/Siウェハ上から硬化膜を剥離した。剥離した硬化膜を幅1.5cm×長さ3cmの短冊状にカットし、温度23℃、湿度50%RHの条件下で24時間以上放置した。ネットワークアナライザ(E5063A;Keysight社製)を用いて、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)による共振器法で周波数1GHzにおける誘電率及び誘電正接と、周波数10GHzにおける誘電率及び誘電正接とを測定した。
【0246】
(4)遮光層の吸水率
下記、実施例1記載の方法で、6インチ径のSiウェハ上に遮光層の評価用サンプル(硬化膜)を膜厚約1.0μmで作製した。Siウェハ上から硬化膜を削り取り、アルミセルに約10mg入れた。熱重量測定装置(TGA-50;島津製作所社製)を用いて、窒素フロー下、30℃で10分間保持した後、昇温速度10℃/minで150℃まで昇温し、その後、150℃で10分間保持しながら熱重量分析を行った。150℃で10分間保持した後の質量と、30℃で10分間保持した後の質量との差を、吸水率として算出した。
【0247】
(5)アンテナ素子の外光反射特性(反射率)
下記、実施例1記載の方法で作製した素子を、分光測色計(CM-2600d;コニカミノルタジャパン社製)を用いて、外光反射特性の指標として、素子表面の反射率を測定した。なお反射率は、正反射光を含むSCI方式での波長550nmにおける反射率(正反射)を測定した。反射率(正反射)は、値が小さいほど外光反射抑制の効果が高いことを示す。下記のように判定し、反射率が1.00%以下となる、A+、A、B+、B、C+、及びCを合格とし、反射率が0.30%以下となる、A+、A、B+、及びBを良好とし、反射率が0.10%以下となる、A+及びAを優秀とした。
A+:反射率が0.05%以下
A:反射率が0.05%を超え、かつ0.10%以下
B+:反射率が0.10%を超え、かつ0.20%以下
B:反射率が0.20%を超え、かつ0.30%以下
C+:反射率が0.30%を超え、かつ0.50%以下
C:反射率が0.50%を超え、かつ1.00%以下
D:反射率が1.00%を超え、かつ3.00%以下
E:反射率が3.00%を超過。
【0248】
(6)アンテナ素子の電気特性及び誘電特性
<低抵抗駆動特性評価(体積抵抗率)>
下記、実施例1記載の素子の作製方法に準じて、SiO/ガラス基板上に金属層の評価用サンプル(硬化膜)を膜厚約0.5μmで作製した。ただし、フォトマスクは、幅30μm及び長さ1cmの四角形の直線パターンの開口部を有する遮光マスクを使用した。表面抵抗測定機(“ロレスタ”(登録商標)-FP;三菱油化(株)製)を用いて、硬化膜の抵抗値(Ω)を測定した。測定した抵抗値(Ω)の値から、低抵抗駆動特性の指標として、硬化膜の体積抵抗率(μΩ・cm)を算出した。下記のように判定し、体積抵抗率が50.0μΩ・cm以下となる、A+、A、B+、B、C+、及びCを合格とし、体積抵抗率が30.0μΩ・cm以下となる、A+、A、B+、及びBを良好とし、体積抵抗率が10.0μΩ・cm以下となる、A+及びAを優秀とした。
A+:体積抵抗率が7.0μΩ・cm以下
A:体積抵抗率が7.0μΩ・cmを超え、かつ10.0μΩ・cm以下
B+:体積抵抗率が10.0μΩ・cmを超え、かつ20.0μΩ・cm以下
B:体積抵抗率が20.0μΩ・cmを超え、かつ30.0μΩ・cm以下
C+:体積抵抗率が30.0μΩ・cmを超え、かつ40.0μΩ・cm以下
C:体積抵抗率が40.0μΩ・cmを超え、かつ50.0μΩ・cm以下
D:体積抵抗率が50.0μΩ・cmを超過
E:体積抵抗率が測定不能。
【0249】
また算出した体積抵抗率(μΩ・cm)の値から、硬化膜のシート抵抗値(Ω/sq)を算出した。なお硬化膜がメッシュ構造を有する場合、メッシュ構造の開口率からメッシュ構造の占有率(金属層部の場合、メッシュ構造における金属層の形成部と非形成部との面積の合計に対する、金属層の形成部が占める面積率)を求め、硬化膜のシート抵抗値(Ω/sq)を算出した。
【0250】
<伝送損失評価>
下記、実施例1記載の方法で作製した素子において、端子部に銅箔を圧着させ、マイクロストリップライン構造を有するアンテナ素子を含む回路を作製した。回路幅は、特性インピーダンスが50Ωとなるよう、構成材料の膜厚、誘電率、及び誘電正接から算出した。ネットワークアナライザ(E5071C;Keysight Technologies(株)製)とGSG250プローブを用いて、挿入損失S21パラメータの測定を行い、伝送損失の指標として、周波数10GHzにおける伝送損失(dB/100mm)を測定した。下記のように判定し、伝送損失が-3.98を超える、A+、A、B+、B、C+、及びCを合格とし、伝送損失が-2.22を超える、A+、A、B+、及びBを良好とし、伝送損失が-0.97を超える、A+及びAを優秀とした。
A+:伝送損失が-0.46を超え、かつ0.00以下
A:伝送損失が-0.97を超え、かつ-0.46以下
B+:伝送損失が-1.55を超え、かつ-0.97以下
B:伝送損失が-2.22を超え、かつ-1.55以下
C+:伝送損失が-3.02を超え、かつ-2.22以下
C:伝送損失が-3.98を超え、かつ-3.02以下
D:伝送損失が-6.99を超え、かつ-3.98以下
E:伝送損失が-6.99以下又は測定不能。
【0251】
<信頼性評価(伝送損失変化値)>
下記、実施例1記載の方法で作製した素子を、絶縁劣化特性評価システム(ETAC SIR13;楠本化成(株)製)を用いて、高温高湿下での伝送損失変化値を評価した。温度85℃、湿度85%RHの条件に設定された高温高湿槽内に素子を入れて、信頼性試験として300時間放置した。300時間後、周波数10GHzにおける伝送損失を測定するとともに、素子に短絡などの絶縁不良や、腐食による断線などの導通不良がないかを観察した。信頼性の指標として、信頼性試験後の伝送損失と、信頼性試験前の伝送損失との差である、伝送損失変化値を下記式により算出した。下記のように判定し、伝送損失変化値が-3.98を超える、A+、A、B+、B、C+、及びCを合格とし、伝送損失変化値が-2.22を超える、A+、A、B+、及びBを良好とし、伝送損失変化値が-0.97を超える、A+及びAを優秀とした。
(伝送損失変化値)=(信頼性試験後の伝送損失)-(信頼性試験前の伝送損失)
A+:伝送損失変化値が-0.46を超え、かつ0.00以下
A:伝送損失変化値が-0.97を超え、かつ-0.46以下
B+:伝送損失変化値が-1.55を超え、かつ-0.97以下
B:伝送損失変化値が-2.22を超え、かつ-1.55以下
C+:伝送損失変化値が-3.02を超え、かつ-2.22以下
C:伝送損失変化値が-3.98を超え、かつ-3.02以下
D:伝送損失変化値が-6.99を超え、かつ-3.98以下
E:伝送損失変化値が-6.99以下、測定不能、短絡、又は腐食による断線。
【0252】
<各実施例、参考例、及び比較例で使用した化合物>
各実施例、参考例、及び比較例で使用した化合物として、(b-1)~(b-3)、(c-1)~(c-3)、(f-1)、(f-2)、(f-3)、(f-4)、(dt-1)、(dt-2)、(i-1)、(p-1)、及び(NQD-1)の構造を以下に示す。また(ad-1)及び(ad-2)に対応する化合物を以下に示す。
なお(i-1)は、溶解促進剤であり、疎水性構造(炭素数6のフェニル基を有する炭素数2のエチレン基が2つ結合した、炭素数6のフェニル基)、親水性構造(12個の炭素数2のオキシエチレン基)、及び親水性基(オキシエチレン基に結合するヒドロキシ基)を有する。
(p-1)は、溶解促進剤のホスホン酸化合物であり、脂肪族基(炭素数8のオクチル基)を有する。
(A.R.52-B.B.7)は、A.R.52/B.B.7=1/1(mol比)で混合して攪拌し、析出した塩をろ過して水で3回洗浄した後、乾燥させて得た染料である。
(ad-1):トリス(エチルアセトアセタート)アルミニウム(III)
(ad-2):3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン。
【0253】
【化5】
【0254】
【化6】
【0255】
【化7】
【0256】
【化8】
【0257】
<金属層及びグランド層の形成用組成物の調製>
表3-1に記載の組成にて、金属層及びグランド層の形成に用いられる組成物(Ag-1)~組成物(Ag-3)を調製した。表3-1において括弧内の数値は各成分の固形分の質量部を示す。溶剤として、表3-1に記載の化合物(質量比)を用いて、組成物の固形分濃度が20質量%となるように調製した。得られた組成物の溶液は、0.45μmφのフィルターで濾過して使用した。
【0258】
【表3-1】
【0259】
<オーバーコート層の形成用組成物の調製>
表3-2に記載の組成にて、オーバーコート層、絶縁層、及び遮光層の形成に用いられる組成物X及び組成物Yを調製した。表3-2において括弧内の数値は各成分の固形分の質量部を示す。溶剤として、PGMEA/EDM/GBL=50/40/10(質量比)を用いて、組成物の固形分濃度が15質量%となるように調製した。得られた組成物の溶液は、0.45μmφのフィルターで濾過して使用した。
【0260】
【表3-2】
【0261】
<遮光層及び絶縁層の形成用組成物の調製>
表3-3~表3-7に記載の組成にて、遮光層の形成に用いられる組成物1~組成物63を調製した。表3-3~表3-7において括弧内の数値は各成分の固形分の質量部を示す。まず、顔料分散液を含まない調合液を調製した後、顔料分散液と調合液とを混合して組成物を調製した。溶剤として、PGMEA/EDM/GBL=50/40/10(質量比)を用いて、組成物の固形分濃度が15質量%となるように調製した。得られた組成物の溶液は、0.45μmφのフィルターで濾過して使用した。
【0262】
【表3-3】
【0263】
【表3-4】
【0264】
【表3-5】
【0265】
【表3-6】
【0266】
【表3-7】
【0267】
<実施例1>
<遮光層の評価用サンプルの作製>
所定の基板上に組成物1を、スピンコーター(MS-A100;ミカサ社製)を用いて塗布した後、ブザーホットプレート(HPD-3000BZN;アズワン社製)を用いて90℃で300秒間プリベークし、のプリベーク膜を約1.0μmの膜厚で成膜した。作製したプリベーク膜を、フォトリソ用小型現像装置(AD-1200;滝沢産業社製)を用いて、2.38質量%TMAH水溶液でスプレー現像し、プリベーク膜(未露光部)が完全に溶解する時間(Breaking Point;以下、「BP」)を測定した。
【0268】
同様の方法でプリベーク膜を作製し、作製したプリベーク膜を、両面アライメント片面露光装置(マスクアライナー PEM-6M;ユニオン光学社製)を用いて、所定のパターンを有するフォトマスクを介して、超高圧水銀灯のi線(波長365nm)、h線(波長405nm)、及びg線(波長436nm)でパターニング露光した。露光量は300mJ/cm(i線照度計の値)とした。フォトマスクは、30μm、10μm、6μm、4μm、及び2μmのライン・アンド・スペースパターンを有するフォトマスクを使用した。露光後、フォトリソ用小型現像装置(AD-1200;滝沢産業社製)を用いて、2.38質量%TMAH水溶液で現像し、水で30秒間リンスして組成物1の現像後膜を作製した。現像時間は、測定したBPの1.3倍とした。現像後のパターンを観察し、30μm、10μm、6μm、4μm、及び2μmのパターンのうち、開口可能な最小寸法パターンにおいて、(パターン線幅)[μm]=(マスク寸法)×1.1[μm]の寸法幅で形成できる最適露光量(i線照度計の値)を求めた。
【0269】
最適露光量で露光し、現像した後のパターンを、高温イナートガスオーブン(INH-9CD-S;光洋サーモシステム社製)を用いて230℃で60分間熱硬化させ、膜厚約0.5μmの組成物1の硬化膜を作製した。熱硬化条件は、酸素濃度20質量ppm以下の窒素雰囲気下、昇温速度3.5℃/minで230℃まで昇温し、230℃で60分間加熱処理を行った後、50℃まで冷却した。
【0270】
この評価用サンプルを用いて、上記(2)~(4)に基づく遮光層の遮光性、誘電率、誘電正接、及び吸水率の評価を行った。結果を表4-1に示す。
【0271】
<平面アンテナの作製(グランド層、第1基板、金属層、遮光層、及びオーバーコート層をこの順に有する)>
無アルカリガラス基板上に、組成物(Ag-1)を、スピンコーター(MS-A100;ミカサ社製)を用いて塗布した後、ブザーホットプレート(HPD-3000BZN;アズワン社製)を用いて90℃で300秒間プリベークし、膜厚約1.0μmのプリベーク膜を作製した。作製したプリベーク膜を、両面アライメント片面露光装置(マスクアライナー PEM-6M;ユニオン光学社製)を用いて、下記のパターンを有するフォトマスクを介して300mJ/cm(i線照度計の値)の露光量でパターニング露光した。露光後、0.08質量%TMAH水溶液で現像し、水で30秒間リンスした後、高温イナートガスオーブン(INH-9CD-S;光洋サーモシステム社製)を用いて230℃で60分間加熱し熱硬化させた。
フォトマスク:寸法幅4μmのラインパターンの開口部をx軸方向にピッチ160μmで有し、かつ、寸法幅4μmのラインパターンの開口部をy軸方向にピッチ160μmで有する、メッシュ構造の開口部を有するフォトマスク。
【0272】
なおグランド層が形成されたメッシュ構造を、無アルカリガラス基板上の端部となる外周を除く一面全体に形成し、メッシュ構造の端部となる外周はメッシュ構造を囲う枠状の導体部として形成した。この一面全体が平面アンテナにおけるグランド層として機能する。このような方法で、無アルカリガラス基板上に膜厚約0.5μmのグランド層と、グランド層に接続する端子部を形成した。
【0273】
次に、無アルカリガラス基板上のグランド層を形成した面とは反対側の面に、フォトマスクを下記のものに変更した以外はグランド層の形成方法と同様にして、膜厚約0.5μmの金属層と、金属層に接続する端子部、及び金属層に給電する信号線を形成した。
フォトマスク:寸法幅4μmのラインパターンの開口部をx軸方向にピッチ160μmで有し、かつ、寸法幅4μmのラインパターンの開口部をy軸方向にピッチ160μmで有する、メッシュ構造の開口部を有するフォトマスク。
【0274】
なお金属層が形成されたメッシュ構造によって幅1.5mm及び長さ7.5mmの四角形と、幅1.5mm及び長さ2.5mmの四角形とが形成されており、この四角形の金属層がアンテナ導体部として機能する。
【0275】
次に、組成物1を用いて、金属層の上を組成物1が覆うように塗布及びパターニングを行い、膜厚約1.0μmの遮光層を形成した。次いで、組成物Xを用いて、遮光層の上と、無アルカリガラス基板の上を組成物Xが覆うように塗布及びパターニングを行い、膜厚約1.0μmのオーバーコート層を形成した。
【0276】
以上の方法で、マイクロストリップライン構造を有する平面アンテナを作製した。作製した平面アンテナは、グランド層、第1基板、金属層、遮光層、及びオーバーコート層をこの順に有する。金属層部のメッシュ構造の開口率は95.2%であり、金属層部のメッシュ構造の占有率は4.8%であった。
【0277】
作製した平面アンテナについて、メッシュ構造における透過率を下記の方法で測定した。紫外可視分光光度計(MultiSpec-1500;島津製作所社製)を用いて、まず無アルカリガラス基板のみを測定し、その紫外可視吸収スペクトルをリファレンスとした。次に、作製した平面アンテナをシングルビームで測定し、ランベルト・ベールの法則に基づいて波長550nmにおける透過率を求め、リファレンスとの差異から透過率を算出した。作製した平面アンテナのメッシュ構造における透過率は90%であった。この平面アンテナを用いて、上記(5)に基づく外光反射特性と、上記(6)に基づく電気特性及び誘電特性の評価を行った。結果を表4-1に示す。
【0278】
<実施例2~58及び比較例1~8>
表4-1~表4-5に示す各組成物を用いて、実施例1と同様の操作及び評価を行った。これらの評価結果を、まとめて表4-1~表4-5に示す。なお比較しやすくするため、表4-2~表4-4には実施例1の評価結果をそれぞれ記載した。また実施例42、実施例47及び実施例52の熱硬化条件は、空気雰囲気下、昇温速度3.5℃/minで200℃まで昇温し、200℃で60分間加熱処理を行った後、50℃まで冷却した。実施例46の熱硬化条件は、酸素濃度20質量ppm以下の窒素雰囲気下、昇温速度3.5℃/minで200℃まで昇温し、200℃で60分間加熱処理を行った後、50℃まで冷却した。
【0279】
【表4-1】
【0280】
【表4-2】
【0281】
【表4-3】
【0282】
【表4-4】
【0283】
【表4-5】
【0284】
比較例1~4は、遮光層の形成に組成物58~61を用いており、組成物58~61中の(A)バインダー樹脂であるポリイミドPI-8、酸変性エポキシ樹脂AE-1、アクリル樹脂AC-1、及びフェノール樹脂PR-1は、高周波帯域における誘電正接が大きい。そのため、遮光層の周波数1GHzにおける誘電正接が0.0100を大きく上回り、伝送損失及び伝送損失変化率の特性が劣っている。
【0285】
比較例5~6は、遮光層の形成に組成物62~63を用いている。組成物62から形成された遮光層は、遮光層の膜厚1μm当たりの可視光線の波長における光学濃度が本願発明の発明特定事項を満たさず、反射率(SCI)の特性が劣っている。一方、組成物63から形成された遮光層は、上記光学濃度が本願発明の発明特定事項を満たさず、遮光層の周波数1GHzにおける誘電正接が0.00010~0.0100の範囲を外れており、伝送損失及び伝送損失変化率の特性が劣っている。
【0286】
比較例7は、遮光層の形成に組成物Xを用いている。組成物Xから形成された層は着色剤を有しないので、遮光層としての機能を果たさず、反射率(SCI)の特性が劣っている。一方、比較例8は、遮光層を形成していない。そのため、反射率(SCI)の特性が劣っている。
【0287】
<実施例59;平面アンテナの作製(グランド層、第1基板、金属層、絶縁層、遮光層、及びオーバーコート層をこの順に有する)>
まず、無アルカリガラス基板にグランド層及び金属層を作製するところまでは実施例1と同様に行った。次に、金属層の上を組成物Xが覆うように塗布及びパターニングを行い、膜厚約1.0μmの絶縁層を形成した。次いで、組成物29を用いて、絶縁層の上を組成物29が覆うように塗布及びパターニングを行い、膜厚約1.0μmの遮光層を形成した。その後は実施例1と同様にして、マイクロストリップライン構造を有する平面アンテナを作製した。
【0288】
作製した平面アンテナは、グランド層、第1基板、金属層、絶縁層、遮光層、及びオーバーコート層をこの順に有する。金属層部のメッシュ構造の開口率は95.2%であり、金属層部のメッシュ構造の占有率は4.8%であった。
【0289】
作製した平面アンテナについて、メッシュ構造における透過率を上記、実施例1記載の方法で測定した結果、作製した平面アンテナのメッシュ構造における透過率は90%であった。実施例1と同様に各種特性の評価をした。これらの評価結果を、まとめて表4-6に示す。なお比較しやすくするため、表4-6には実施例1及び実施例30の評価結果をそれぞれ記載した。
【0290】
<実施例60;平面アンテナの作製(グランド層、第1基板、金属層、絶縁層、遮光層、及びオーバーコート層をこの順に有する)>
絶縁層を、組成物Yを用いて形成し、遮光層を、組成物1を用いて形成したこと以外は実施例59と同様の操作及び評価を行った。遮光層の膜厚1μm当たりの可視光線の波長における光学濃度は0.5であり、絶縁層の膜厚1μm当たりの可視光線の波長における光学濃度は0.1である。すなわち、遮光層と絶縁層との光学濃度差ΔODは0.4である。なお金属層部のメッシュ構造の開口率は95.2%であり、金属層部のメッシュ構造の占有率は4.8%であった。作製した平面アンテナについて、メッシュ構造における透過率を上記、実施例1記載の方法で測定した結果、作製した平面アンテナのメッシュ構造における透過率は90%であった。実施例1と同様に各種特性の評価をした。これらの評価結果を、まとめて表4-6に示す。
【0291】
上述した各実施例において、ポジ型の感光性を有する組成物を用いた場合、フォトマスクは、開口部と遮光部が反転したフォトマスクを用いた。現像時間は60秒、90秒、又は120秒とし、30μm、10μm、6μm、4μm、及び2μmのパターンのうち、開口可能な最小寸法パターンにおいて、(パターン線幅)[μm]=(マスク寸法)[μm]の寸法幅で形成できる最適露光量(i線照度計の値)を求めた。最適露光量で露光し、現像した後のパターンを、200℃で60分間熱硬化させた。熱硬化条件は、酸素濃度20質量ppm以下の窒素雰囲気下、昇温速度3.5℃/minで200℃まで昇温し、200℃で60分間加熱処理を行った後、50℃まで冷却した。
【0292】
【表4-6】
【符号の説明】
【0293】
10 金属層
20 グランド層
30A,30B 伝送線路
31 信号線
40 第1基板
41 第1主面
42 第2主面
43 矩形部
44 矩形部
50,51 遮光層
61 コネクタ
70 絶縁層
101,102 アンテナ
図1
図2
図3
図4