(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003961
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】クラッチ装置
(51)【国際特許分類】
F16D 13/52 20060101AFI20240109BHJP
F16D 13/60 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
F16D13/52 A
F16D13/60 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103342
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】今西 義夫
【テーマコード(参考)】
3J056
【Fターム(参考)】
3J056AA38
3J056AA60
3J056AA62
3J056BE09
3J056CA07
3J056CA16
3J056CC03
3J056CC13
3J056FA12
3J056GA02
3J056GA13
(57)【要約】
【課題】コイルスプリングを誤った場所に取り付けることを防止する。
【解決手段】クラッチ装置は、第1回転体3、第2回転体、クラッチ部、及びコイルスプリングを備える。第1回転体3は、軸方向に延びる柱部35を有する。第1回転体3は、回転可能に配置される。第2回転体は、第1回転体3に対して軸方向相対移動可能に配置される。第2回転体は、回転可能に配置される。クラッチ部は、第1回転体3と第2回転体との間に配置される。コイルスプリングは、柱部35と周方向において間隔をあけて配置される。柱部35は、軸方向視における最大寸法Lがコイルスプリングの内径よりも大きい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に構成されたクラッチ装置であって、
軸方向に延びる柱部を有し、回転可能に配置される第1回転体と、
前記第1回転体に対して軸方向に相対移動可能であり、回転可能に配置される第2回転体と、
前記第1回転体と前記第2回転体との間に配置されるクラッチ部と、
前記柱部と周方向において間隔をあけて配置されるコイルスプリングと、
を備え、
前記柱部は、軸方向視における最大寸法が前記コイルスプリングの内径よりも大きい、
クラッチ装置。
【請求項2】
前記柱部は、柱本体部と、前記柱本体部の外周面から突出する干渉部と、を有する、
請求項1に記載のクラッチ装置。
【請求項3】
前記干渉部は、前記柱本体部から周方向に突出する、
請求項2に記載のクラッチ装置。
【請求項4】
前記第1回転体は、前記柱部に対して径方向外側に配置されるガイド壁を有し、
前記干渉部は、前記柱本体部と前記ガイド壁とを連結する、
請求項2に記載のクラッチ装置。
【請求項5】
前記柱部は、円柱状であって、前記コイルスプリングの内径よりも大きい外径を有する、
請求項1に記載のクラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動二輪車及びバギーなどのモータサイクルには、エンジンからの動力をトランスミッションに伝達又は遮断するためにクラッチ装置が用いられている。クラッチ装置は、クラッチセンタ、プレッシャプレート、サポートプレート、及びクラッチ部を有している(特許文献1参照)。プレッシャプレート又はクラッチセンタは、複数の柱部を有している。サポートプレートは、この柱部の先端に取り付けられている。
【0003】
また、クラッチ装置は、クラッチ部をクラッチオン状態とするために、複数のコイルスプリングを有している。コイルスプリングの配置場所は、クラッチ装置によって異なり、柱部を覆うように配置される場合と、柱部と周方向において間隔をあけて配置される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コイルスプリングを柱部と周方向において間隔をあけて配置するクラッチ装置において、コイルスプリングを誤って柱部を覆うように配置してしまうと、クラッチ装置が設計通りに機能しなくなる。
【0006】
本発明の課題は、コイルスプリングを誤った場所に取り付けることを防止することができるクラッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様に係るクラッチ装置は、回転可能に構成されている。このクラッチ装置は、第1回転体、第2回転体、クラッチ部、及びコイルスプリングを備える。第1回転体は、軸方向に延びる柱部を有する。第1回転体は、回転可能に配置される。第2回転体は、第1回転体に対して軸方向相対移動可能に配置される。第2回転体は、回転可能に配置される。クラッチ部は、第1回転体と第2回転体との間に配置される。コイルスプリングは、柱部と周方向において間隔をあけて配置される。柱部は、軸方向視における最大寸法がコイルスプリングの内径よりも大きい。
【0008】
このように、柱部の最大寸法がコイルスプリングの内径よりも大きくすることによって、柱部はコイルスプリング内に収容することができない。このため、コイルスプリングを誤って柱部を覆うように配置してしまうことを防止することができる。
【0009】
第2態様に係るクラッチ装置は、第1態様に係るクラッチ装置において、次のように構成されている。柱部は、柱本体部と、柱本体部の外周面から突出する干渉部と、を有する。
【0010】
第3態様に係るクラッチ装置は、第2態様に係るクラッチ装置において、次のように構成されている。干渉部は、前記柱本体部から周方向に突出する。
【0011】
第4態様に係るクラッチ装置は、第2態様に係るクラッチ装置において、次のように構成される。第1回転体は、ガイド壁を有する。ガイド壁は、柱部に対して径方向外側に配置される。干渉部は、柱本体部と前記ガイド壁とを連結する。
【0012】
第5態様に係るクラッチ装置は、第1態様に係るクラッチ装置において、次のように構成される。柱部は、円柱状である。柱部は、コイルスプリングの内径よりも大きい外径を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、コイルスプリングを誤った場所に取り付けることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図11】変形例に係るプレッシャプレートの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本実施形態に係るクラッチ装置100について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、軸方向とは、クラッチ装置100の回転軸Oが延びる方向である。また、周方向とは、回転軸Oを中心とした円の周方向であり、径方向とは、回転軸Oを中心とした円の径方向である。第1回転方向とは、クラッチ装置が回転する方向であり、第2回転方向とは、第1回転方向とは逆の回転方向である。
【0016】
[クラッチ装置]
図1はクラッチ装置100の平面図、
図2は
図1のII-II線断面図である。
図1及び
図2に示すように、クラッチ装置100は、駆動源(例えばエンジン)からの動力を駆動輪へと伝達したり、その伝達を遮断したりするように構成されている。クラッチ装置100は、第1回転方向R1(
図1の反時計回り)に動力を伝達するように構成されている。クラッチ装置100は、回転可能に構成されている。詳細には、クラッチ装置100は、回転軸Oを中心に第1回転方向R1に回転する。
【0017】
クラッチ装置100は、クラッチハウジング2、クラッチセンタ3(第1回転体の一例)、プレッシャプレート4(第2回転体の一例)、クラッチ部5、及びサポートプレート6を有している。また、クラッチ装置100は、複数のボルト8と、複数のコイルスプリング9とを有している。
【0018】
[クラッチハウジング]
図2に示すように、クラッチハウジング2は、円板部21及び筒状部22を有する。クラッチハウジング2は、入力ギア10に連結されている。この入力ギア10は、エンジン(図示省略)で発生した動力が入力される環状の部材である。入力ギア10は、エンジン側のクランク軸に固定された駆動ギア(図示せず)に噛み合っている。
【0019】
円板部21は、複数のコイルスプリング(図示省略)を介して、入力ギア10と連結されている。筒状部22は、円板部21の外周縁部から軸方向の第1側に延びている。筒状部22は、軸方向に延びる複数の切欠き(図示省略)を有している。複数の切欠きは、周方向において互いに間隔をあけて配置されている。
【0020】
[クラッチセンタ]
図3は軸方向の第1側から見たクラッチセンタ3の平面図、
図4は
図1のIV-IV線断面図、
図5はクラッチセンタ3の拡大斜視図である。なお、
図4において、図解を容易にするために、クラッチセンタ3、プレッシャプレート4、サポートプレート6、及びボルト8以外の記載を省略している。
【0021】
図2に示すように、クラッチセンタ3は、クラッチハウジング2に対して軸方向の第1側に配置されている。また、クラッチセンタ3は、クラッチハウジング2の筒状部22に対して、径方向内側に配置されている。クラッチセンタ3は、回転軸Oを中心に、回転可能に配置されている。クラッチセンタ3は、クラッチハウジング2と相対回転するように構成されている。
図2から
図5に示すように、クラッチセンタ3は、複数のベース部31、第1円筒部32、第1フランジ部33、受圧面34、複数の柱部35、第1ボス部36、複数の第1カム部37、複数の第2カム部38、及び複数の補強壁39を有している。
【0022】
図3に示すように、複数のベース部31は、周方向において互いに間隔をあけて配置されている。ベース部31は、径方向において、第1円筒部32と第1ボス部36との間に配置されている。ベース部31は、第1円筒部32と第1ボス部35とを連結している。
【0023】
クラッチセンタ3は、軸方向に貫通する複数の開口部311を有している。複数の開口部311は、周方向において互いに間隔をあけて配置されている。ベース部31と開口部311とは、周方向において、交互に配置されている。開口部311は、後述する第2カム面381と軸方向視において重複している。このため、第2カム面381は、開口部311を介して、軸方向の第2側に露出している。
【0024】
図2及び
図3に示すように、第1円筒部32は、軸方向に延びている。第1円筒部32の外周面上には、軸方向に延びる複数の溝部321が形成されている。この複数の溝部321は、周方向において互いに間隔をあけて配置されている。
【0025】
第1フランジ部33は、第1円筒部32から径方向外側に延びている。詳細には、第1フランジ部33は、第1円筒部32の軸方向第2側の端部から径方向外側に延びている。第1フランジ部33の軸方向第1側を向く面が受圧面34となる。すなわち、受圧面34は、軸方向の第1側を向いている。受圧面34は、周方向に延びる環状である。受圧面34は、クラッチセンタ3の外周部に配置されている。
【0026】
柱部35は、ベース部31から軸方向の第1側に延びている。柱部35は、軸方向に貫通するネジ孔355を有している。なお、ネジ孔355は、ベース部31にも形成されている。また、ネジ孔355は、ベース部31に形成される貫通孔352と連通している。複数の柱部35は、周方向において互いに間隔をあけて配置されている。
【0027】
柱部35は、軸方向視における最大寸法Lがコイルスプリング9の内径よりも大きい。具体的には、柱部35は、柱本体部351と干渉部352とを有している。柱本体部351は、円柱状であり、軸方向に延びている。干渉部352は、柱本体部351の外周面から突出している。
【0028】
この干渉部352の突出する方向の寸法と、柱本体部351の外径とを合計した寸法が、本実施形態における柱部35の軸方向視における最大寸法Lである。なお、本実施形態では、干渉部352は、柱本体部351から周方向に突出している。このため、周方向における干渉部352の寸法と、柱本体部351の外径とを合計した寸法が、本実施形態における柱部35の軸方向視における最大寸法Lである。なお、干渉部352は、径方向に突出していてもよい。この場合、径方向における干渉部352の寸法と、柱本体部351の外径とを合計した寸法が、柱部35の軸方向視における最大寸法Lとなる。
【0029】
この構成によれば、コイルスプリング9を柱部35に取り付けようとしても、干渉部352がコイルスプリング9に干渉して取り付けることができない。このため、コイルスプリング9を柱部35に誤って取り付けることを防止することができる。
【0030】
干渉部352は、軸方向に延びている。干渉部352は、柱本体部351よりも軸方向の寸法が小さい。具体的には、干渉部352の先端は、柱本体部351の先端よりも、軸方向の第2側に位置している。
【0031】
第1ボス部36は、ベース部31及び柱部35に対して、径方向内側に配置されている。第1ボス部36は、第1円筒部32に対して、径方向内側に配置されている。
図6に示すように、クラッチセンタ3は、第1ボス部36と第1円筒部32とを連結する複数のリブ361を有している。リブ361は、放射状に延びている。リブ361は、第1カム部37及び第2カム部38に対して、軸方向の第2側に配置されている。複数のリブ361のうち、いくつかのリブ361は第1カム部37と連結しており、残りのリブ361は第2カム部38と連結している。
【0032】
第1ボス部36は、軸方向に延びている。第1ボス部36の外周面から、ベース部31は径方向外側に延びている。また、ベース部31は、第1ボス部36から軸方向第1側に延びている。
【0033】
第1ボス部36は、その中央部において、軸方向に延びるスプライン孔36aを有している。スプライン孔36aに、トランスミッションの入力軸(図示省略)がスプライン係合する。軸方向において、第1ボス部36と入力ギア10との間には、スラストプレート14が設けられている。クラッチセンタ3は、軸方向において移動しない。
【0034】
図4に示すように、第1カム部37は、柱部35に対して、第1回転方向R1側に配置されている。詳細には、第1カム部37は、ベース部31に対して第1回転方向R1側に配置されている。第1カム部37は、ベース部31と、一つの部材として一体的に形成されている。
【0035】
第2カム部38は、柱部35に対して、第2回転方向R2側に配置されている。詳細には、第2カム部38は、ベース部31に対して第2回転方向R2に配置されている。第2カム部38は、ベース部31と、一つの部材として一体的に形成されている。
【0036】
第1カム部37及び第2カム部38は、柱部35と、一つの部材として一体的に形成されている。詳細には、第1カム部37及び第2カム部38は、ベース部31を介して、柱部35と、一つの部材として一体的に形成されている。
【0037】
ベース部31、第1カム部37、第2カム部38、及び柱部35は、第1円筒部32に対して間隔をあけて径方向内側に配置されている。このため、ベース部31、第1カム部37、第2カム部38及び柱部35と、第1円筒部32との間には、周方向に延びる谷部301が形成されている。
【0038】
第1カム部37は、第1カム面371を有している。第1カム面371は、軸方向第1側を向くとともに、第1回転方向R1を向いている。すなわち、第1カム面371は、軸方向及び第1回転方向に対して、傾斜して延びている。
【0039】
第2カム部38は、第2カム面381を有している。第2カム面381は、軸方向第2側を向くとともに、第2回転方向R2を向いている。すなわち、第2カム面381は、軸方向及び第2回転方向に対して、傾斜して延びている。第2カム面381は、第1カム面371と反対を向いている。
【0040】
図5に示すように、補強壁39は、第2カム部38に対して、径方向内側に配置されている。補強壁39は、第2カム部38と第1ボス部36とを連結している。詳細には、補強壁39は、第1ボス部36から軸方向の第1側に延びている。そして、補強壁39は、第2カム部38の径方向内側面に接続されている。なお、補強壁39は、第1ボス部36及び第2カム部38と一体的に形成されている。詳細には、補強壁39と第1ボス部36と第2カム部38とは、一つの部材として一体的に形成されている。
【0041】
[プレッシャプレート]
図7は軸方向の第2側から見たプレッシャプレートの底面図、
図8は軸方向の第1側から見たプレッシャプレートの平面図である。
図2、
図4、
図7、及び
図8に示すように、プレッシャプレート4は、軸方向に移動可能に配置されている。すなわち、プレッシャプレート4は、クラッチセンタ3に対して、軸方向に相対移動可能である。プレッシャプレート4は、回転軸Oを中心に、回転可能に配置されている。プレッシャプレート4は、軸方向において、クラッチセンタ3とサポートプレート6との間に配置されている。
【0042】
プレッシャプレート4は、第2ボス部41、複数の第3カム部43、複数の第4カム部44、複数の連結部45、複数の保持部46、第2フランジ部47、押圧面48、及び第2円筒部49を有している。
【0043】
図7及び
図8に示すように、第2ボス部41は、円筒状であって、軸方向に延びている。第2ボス部41は、レリーズ機構(図示省略)が取り付けられるように構成されている。第3カム部43及び第4カム部44は、第2ボス部41の外周面に取り付けられている。
【0044】
図4に示すように、第3カム部43は、第1カム部37に対して、第1回転方向R1側に配置されている。また、第3カム部43は、第1カム部37に対して、軸方向の第1側に配置されている。
【0045】
第4カム部44は、第2カム部38に対して、第2回転方向R2側に配置されている。また、第4カム部44は、第2カム部38に対して、軸方向の第1側に配置されている。
【0046】
図7に示すように、第3カム部43と第4カム部44とは周方向において間隔をあけて配置されている。連結部45は、第3カム部43と第4カム部44とを連結している。連結部45は、柱部35、第1カム部37及び第2カム部38と、第1円筒部32との間を周方向に延びている。すなわち、
図2に示すように、連結部45は、谷部301内を周方向に延びている。第3カム部43と第4カム部44とは、連結部45に対して径方向内側に配置されている。
【0047】
図4に示すように、第3カム部43は、第3カム面431を有している。第3カム面431は、第2回転方向R2を向くとともに、軸方向第2側を向いている。第3カム面431は、第1カム面371と対向している。第3カム面431は、第1カム面371と略平行に延びている。
【0048】
第4カム部44は、第4カム面441を有している。第4カム面441は、第1回転方向R1を向くとともに、軸方向第1側を向いている。第4カム面441は、第2カム面381と対向している。第4カム面441は、第2カム面381と略平行に延びている。
【0049】
図7及び
図8に示すように、保持部46は、第2ボス部から径方向外側に延びている。複数の保持部46は、周方向において、互いに間隔をあけて配置されている。保持部46は、コイルスプリングを保持するように構成された保持凹部461を有している。保持凹部461は、軸方向に延びている。保持凹部461は、軸方向の第1側に開口している。
【0050】
保持部46の第1回転方向R1側には、第4カム部44が配置されている。第4カム部44は、保持部46と一体的に形成されている。また、保持部46の第2回転方向R2側には、第3カム部43が配置されている。なお、この保持部46を介して隣り合う第3カム部43と第4カム部44とは、異なるペアである。第3カム部43及び第4カム部44は、保持部46と一つの部材によって構成されている。
【0051】
第2フランジ部47は、第3カム部43、第4カム部44、連結部45、及び保持部46から径方向外側に延びている。第2フランジ部47の軸方向第2側を向く面が押圧面48となる。すなわち、押圧面48は、軸方向の第2側を向いている。押圧面48は、周方向に延びる環状である。押圧面48は、プレッシャプレート4の外周部に配置されている。
【0052】
図2に示すように、押圧面48は、受圧面34に対して、軸方向の第1側に配置されている。軸方向視において、押圧面48は、受圧面34と重複している。
【0053】
図7に示すように、第2円筒部49は、第2フランジ部47の内周端部から軸方向の第2側に延びている。第2円筒部49の外周面上には、軸方向に延びる複数の溝部491が形成されている。この複数の溝部491は、周方向において互いに間隔をあけて配置されている。
【0054】
[クラッチ部]
図2に示すように、クラッチ部5は、クラッチハウジング2とクラッチセンタ3との間で動力の伝達をしたり、その伝達を遮断したりするように構成されている。クラッチ部5は、クラッチセンタ3とプレッシャプレート4との間に配置されている。詳細には、クラッチ部5は、受圧面34と押圧面48との間に配置されている。
【0055】
クラッチ部5は、複数の第1クラッチプレート51と、複数の第2クラッチプレート52とを有している。第1クラッチプレート51及び第2クラッチプレート52は、環状である。第1クラッチプレート51及び第2クラッチプレート52は、受圧面34と押圧面48との間に配置されている。第1クラッチプレート51と第2クラッチプレート52とは、軸方向において交互に配置されている。
【0056】
第1クラッチプレート51は、クラッチハウジング2に対して、軸方向に移動可能であり且つ相対回転不能である。すなわち、第1クラッチプレート51は、クラッチハウジング2と一体的に回転する。詳細には、第1クラッチプレート51の外周部には径方向外側に突出する複数の係合突起が形成されている。この係合突起がクラッチハウジング2の筒状部22に形成された切欠きに噛み合っている。第1クラッチプレート51には両面に摩擦材が貼付されている。
【0057】
第2クラッチプレート52は、内周端部において径方向内側に突出する複数の係合突起が形成されている。この係合突起は、クラッチセンタ3に形成された溝部321に噛み合っている。したがって、第2クラッチプレート52は、クラッチセンタ3に対して、軸方向に移動可能であり且つ相対回転不能である。すなわち、第2クラッチプレート52は、クラッチセンタ3と一体的に回転する。
【0058】
[サポートプレート]
サポートプレート6は、周方向に延びる環状である。サポートプレート6は、クラッチセンタ3に対して、軸方向の第1側に配置されている。サポートプレート6は、柱部35の先端部(
図2の上端部)に取り付けられている。詳細には、ボルト8が、クラッチセンタ3とサポートプレート6とを締結している。このため、サポートプレート6は、クラッチセンタ3と一体的に回転する。
【0059】
図9は、サポートプレート6の断面斜視図である。
図9に示すように、サポートプレート6は、複数の取付部61と、複数の当接部62と、複数の突出部63と、複数の補強部64とを有している。
【0060】
取付部61は、柱部35に取り付けられる部分である。なお、取付部61は、貫通孔611を有している。ボルト8は、この取付部61の貫通孔611を介して、柱部35のネジ孔355に螺合している。
【0061】
当接部62は、コイルスプリング9と当接する部分である。当接部62は、軸方向の第2側を向く面において、コイルスプリング9の軸方向第1側端部と当接している。当接部62は、周方向において、取付部61と間隔をあけて配置されている。詳細には、複数の取付部61と複数の当接部62とは、周方向に交互に配置されている。
【0062】
突出部63は、当接部62に対して径方向外側に配置されている。複数の突出部63は、周方向において、互いに間隔をあけて配置されている。突出部63は、軸方向の第2側に突出している。この突出部63によって、コイルスプリング9の軸方向第1側端部が径方向外側に移動することを規制することができる。突出部63は、例えば、円板の外周部を軸方向の第2側にプレス加工することによって形成される。
【0063】
補強部64は、取付部61に対して径方向外側に配置されている。補強部64は、サポートプレート6の曲げ剛性を向上させるように構成されている。詳細には、サポートプレート6は、取付部61が柱部35に取り付けられることによって固定されている一方で、当接部62ではコイルスプリング9によって軸方向の第1側に押圧される。このため、取付部61に対して径方向外側の部分を中心に曲げ変形が生じるおそれがある。これに対して、補強部64を取付部61の径方向外側に形成して曲げ剛性を向上させることによって、上記曲げ変形を抑制することができる。
【0064】
サポートプレート6は、取付部61に対して径方向外側に配置される複数の外周部65を有している。外周部65は、突出部63と同じように、サポートプレート6の他の部分に対して軸方向の第2側に位置している。例えば、プレス加工によって外周部65を他の部分よりも軸方向の第2側に位置させることができる。外周部65は、周方向において、突出部63と間隔をあけて配置されている。
【0065】
このように外周部65がサポートプレート6の他の部分よりも軸方向の第2側に位置しているため、外周部65と取付部61との間に段差部が形成される。段差部は周方向に延びている。補強部64は、この段差部によって構成されている。複数の外周部65は、複数の突出部63と、周方向において交互に配置されている。外周部65は、突出部63と、周方向において間隔をあけて配置されている。すなわち、外周部65によって形成される段差部と、突出部63によって形成される段差部とは、周方向において、互いに間隔をあけて配置されている。
【0066】
[コイルスプリング]
図1及び
図2に示すように、コイルスプリング9は、周方向において、柱部35と間隔をあけて配置されている。詳細には、複数のコイルスプリング9と複数の柱部35とが周方向において交互に配置されている。コイルスプリング9は、軸方向において、プレッシャプレート4とサポートプレート6との間に圧縮された状態で配置されている。なお、コイルスプリング9の軸方向第2側の端部は、プレッシャプレート4の保持凹部461内に配置されている。コイルスプリング9は、保持凹部461によって保持されることにより、径方向及び周方向への移動が規制されている。
【0067】
コイルスプリング9は、プレッシャプレート4を軸方向の第2側に付勢している。このため、押圧面48が受圧面34に近付くように付勢され、クラッチ部5がクラッチオン状態となり、動力が伝達される。なお、レリーズ部材によって、コイルスプリング9の付勢力に抗してプレッシャプレート4を軸方向の第1側に移動させることにより、押圧面48が受圧面34から離れるように移動する。この結果、クラッチ部5がクラッチオフ状態となり、クラッチハウジング2とクラッチセンタ3との間での動力の伝達が遮断される。
【0068】
[カム機構の動作]
加速時などにおいてプレッシャプレート4がクラッチセンタ3に対して第1回転方向R1に相対回転すると、第2カム面381と第4カム面441とが互いに押し合い、第4カム部44が軸方向の第2側に移動する。この結果、押圧面48が受圧面34に近付くように移動するため、クラッチ部5による結合力が増加する。
【0069】
一方、減速時などにおいてクラッチセンタ3がプレッシャプレート4に対して第1回転方向R1に相対回転すると、第1カム面371と第3カム面431とが互いに押し合い、第3カム部43が軸方向の第1側に移動する。この結果、押圧面48が受圧面34から離れるように移動するため、クラッチ部5による結合力が低減する。
【0070】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、以下の各変形例は、基本的には同時に適用することができる。
【0071】
(a)上記実施形態では、柱部35は、柱本体部351と干渉部352とを有しているが、柱部35の構成はこれに限定されない。例えば、柱部35は、干渉部352を有していなくもよい。この場合、柱部35は、円柱状である。このため、柱部35の軸方向視における最大寸法は、柱部35の外径となる。この柱部35の外径は、コイルスプリング9の内径よりも大きい。
【0072】
(b)上記実施形態では、クラッチセンタ3が軸方向の第1側に延びる柱部35を有している、すなわち、クラッチセンタ3が本発明の第1回転体に相当し、プレッシャプレート4が本発明の第2回転体に相当するが、クラッチ装置100の構成はこれに限定されない。具体的には、
図10に示すように、プレッシャプレート4が柱部35を有していてもよい。すなわち、クラッチ装置100は、プレッシャプレート4が本発明の第1回転体に相当し、クラッチセンタ3が本発明の第2回転体に相当するように構成されていてもよい。
【0073】
この変形例では、第2回転体であるクラッチセンタ3は軸方向に移動しないが、第1回転体であるプレッシャプレート4は軸方向に移動する。すなわち、第2回転体であるクラッチセンタ3は、第1回転体であるプレッシャプレート4に対して軸方向に相対移動可能である。
【0074】
(c)
図10及び
図11に示すように、第1回転体であるプレッシャプレート4は、複数のガイド壁401をさらに有していてもよい。ガイド壁401は、軸方向に延びている。ガイド壁401は、柱部35に対して径方向外側に配置されている。ガイド壁401は、径方向視において、柱部35と重複している。ガイド壁401は、径方向内側を向く内側ガイド面402と、径方向外側を向く外側ガイド面403とを有している。内側ガイド面402は、外側ガイド面403と径方向視において重複するように位置している。
【0075】
ガイド壁401の先端は、柱部35の先端に対して軸方向の第1側に配置されている。すなわち、ガイド壁401の軸方向寸法は、柱部35の軸方向寸法よりも大きい。ガイド壁401は、柱部35よりも周方向寸法が大きい。このため、径方向視において、柱部35は、ガイド壁401によって完全に覆われる。
【0076】
ガイド壁401の内側ガイド面402は、サポートプレート6と当接している。このように、内側ガイド面402がサポートプレート6と当接することによって、サポートプレート6は、プレッシャプレート4に対して径方向における位置決めがされる。
【0077】
ガイド壁401の外側ガイド面403は、クラッチセンタ3と当接している。このように、外側ガイド面403がクラッチセンタ3と当接することによって、プレッシャプレート4は、クラッチセンタ3に対して径方向における位置決めがされる。
【0078】
干渉部352は、柱本体部351とガイド壁401との間を軸方向に延びている。干渉部352は、柱本体部351とガイド壁401とを連結している。干渉部352は、柱本体部351から径方向外側に突出している。
【符号の説明】
【0079】
3 :クラッチセンタ
35 :柱部
351 :柱本体部
352 :干渉部
4 :プレッシャプレート
401 :ガイド壁
5 :クラッチ部
9 :コイルスプリング
100 :クラッチ装置