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特開2024-39619医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲル、インプラント可能な材料として体内で使用するための医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲル、及び医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルを製造するための方法
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  • 特開-医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲル、インプラント可能な材料として体内で使用するための医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲル、及び医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルを製造するための方法 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039619
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲル、インプラント可能な材料として体内で使用するための医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲル、及び医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/20 20060101AFI20240314BHJP
   A61L 27/52 20060101ALI20240314BHJP
   A61F 2/30 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
A61L27/20
A61L27/52
A61F2/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023138073
(22)【出願日】2023-08-28
(31)【優先権主張番号】22194849.0
(32)【優先日】2022-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】514158855
【氏名又は名称】ユー ピー エム キュンメネ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クンコヴァ-カッリオ、ヨハナ
(72)【発明者】
【氏名】キウル、トニー
(72)【発明者】
【氏名】パーソネン、ラウリ
(72)【発明者】
【氏名】ルッコ、カリ
(72)【発明者】
【氏名】コソネン、ミカ ヴィー
(72)【発明者】
【氏名】シルタネン、ヘンリ
【テーマコード(参考)】
4C081
4C097
【Fターム(参考)】
4C081AB11
4C081CD02
4C081DA12
4C097AA03
4C097BB01
4C097CC01
4C097DD13
(57)【要約】
【課題】医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルを提供する。
【解決手段】本開示は、医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルであって、1.4~3.4重量%の範囲のナノ原線維セルロースの濃度を有する、植物系の化学的及び酵素的に修飾されていないナノ原線維セルロースヒドロゲルを含み、ナノ原線維セルロースが、100nm以下の原線維及び/又は原線維束の数平均直径、並びに1~35Paの範囲の貯蔵弾性率を有する、医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルを提供する。本開示はまた、インプラント可能な材料として体内で使用するための医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲル、及び医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルを製造するための方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療グレードのナノ原線維(nanofibrillar)セルロースヒドロゲルであって、1.4~3.4重量%の範囲の前記ナノ原線維セルロースの濃度を有する、木質系などの植物系の化学的及び酵素的に修飾されていないナノ原線維セルロースヒドロゲルを含み、前記ナノ原線維セルロースが、100nm以下の原線維及び/又は原線維束の数平均直径、並びに22±1℃の水性媒体中0.5重量%の粘稠性で、プレート形状を使用する回転式レオメータによって決定した、1~40Paの範囲の貯蔵弾性率、及び/又は22±1℃の水性媒体中0.5重量%の粘稠性で、翼形状を使用する回転式レオメータによって決定した、0.7~20Paの範囲の貯蔵弾性率を有する、医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲル。
【請求項2】
Ph.Eur.2.6.14.に従って決定した、5.5EU/g以下の細菌性エンドトキシンを含む、請求項1に記載の医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲル。
【請求項3】
前記ナノ原線維セルロースが、化学的及び酵素的に修飾されていないナノ原線維カバノキセルロースを含む、請求項1又は2に記載の医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲル。
【請求項4】
前記ナノ原線維セルロースが、22±1℃の水性媒体中0.5重量%の粘稠性で、プレート形状を使用する回転式レオメータによって決定した、1500~50000Pa・sの範囲のゼロ剪断粘度、及び0.5~10Paの範囲の降伏応力を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲル。
【請求項5】
活性剤を含まない、請求項1~4のいずれか一項に記載の医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲル。
【請求項6】
インプラント可能な材料として体内で使用するための、請求項1~5のいずれか一項に記載の医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲル。
【請求項7】
28日間以上、又は2ヶ月以上、インプラント可能な材料として体内で使用するための、請求項6に記載の医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲル。
【請求項8】
組織支持インプラント又は充填物として体内で使用するための、請求項6又は7に記載の医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲル。
【請求項9】
皮膚充填物として体内で使用するための、請求項6又は7に記載の医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲル。
【請求項10】
関節炎又は他の関節状態の治療のための粘弾性補充物として使用するための、請求項6又は7に記載の医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲル。
【請求項11】
障壁剤(barrier agent)として外科手術で使用するための、請求項6又は7に記載の医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲル。
【請求項12】
医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルを製造するための方法であって、前記方法が、
-化学的及び/又は酵素的に修飾されていない植物系セルロースパルプの懸濁液を提供することと、
-前記セルロースパルプ懸濁液を精製器で事前精製して、SR値87以上を有する事前精製されたセルロースを得ることと、
-前記事前精製されたセルロースパルプを分散させて、1.6~3.6重量%の範囲の事前精製されたセルロースの濃度を得ることと、
-前記事前精製されたセルロースパルプを分解デバイスによって前記濃度で分解して、医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルを得ることと、
-前記濃度を調整することなく、前記分解デバイスから前記医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルを回収することと、
-1.4~3.4重量%の範囲のナノ原線維セルロースの濃度を有するナノ原線維セルロースヒドロゲルを得ることと、を含む、方法。
【請求項13】
前記分解デバイスが、1つ以上の相互作用チャンバを利用するマイクロ流動化機を備える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記事前精製されたセルロースパルプの前記分解が、
-第1の相互作用チャンバ及び第2の相互作用チャンバを備えるマイクロ流動化機を、分解デバイスとして提供することと、
-第1の相互作用チャンバ内で第1の分解作業を実行することと、
-前記第1のチャンバと比較して、より小さいチャネル直径を有する第2の相互作用チャンバで、1回以上その後の分解作業を実行することと、を含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記精製器が、容器内に垂直な切断バーを備えたロールを備えたミルである、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記セルロースが、カバノキセルロースを含む、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記得られたナノ原線維セルロースが、22±1℃の水性媒体中0.5重量%の粘稠性で、プレート形状を使用する回転式レオメータによって決定した、1~40Paの範囲の貯蔵弾性率、及び/若しくは22±1℃の水性媒体中0.5重量%の粘稠性で、翼形状を使用する回転式レオメータによって決定した、0.7~20Paの範囲の貯蔵弾性率を提供するまで、かつ/又は前記得られたナノ原線維セルロースが、100nm以下の原線維及び/若しくは原線維束の数平均直径を有するまで、前記事前精製されたセルロースパルプが、分解される、請求項12~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記得られたナノ原線維セルロースが、22±1℃の水性媒体中0.5重量%の粘稠性で、プレート形状を使用する回転式レオメータによって決定した、1500~50000Pa・sの範囲のゼロ剪断粘度、及び0.5~10Paの範囲の降伏応力を提供するまで、前記事前精製されたセルロースパルプが分解される、請求項12~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記方法が、活性剤の不在下で実行される、請求項12~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記得られた、及び提供された医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルが、活性剤を含まない、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項12~20のいずれか一項に記載の方法で得られた、請求項1~9のいずれか一項に記載の医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、医療グレードのナノ原線維(nanofibrillar)セルロースヒドロゲル、体内で使用するための医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲル、及び医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用インプラントは、身体の内部又は表面に配置されるデバイス又は組織である。多くのインプラントは、補綴物であり、欠損している身体部分を置き換えることを意図している。他のインプラントは、医薬品を送達するか、身体機能を監視するか、又は臓器及び組織を支持する。インプラントは、インプラント可能な材料を含むか、又はそれで作製される。いくつかのインプラントは、皮膚、骨、又は他の身体組織から作製される。他は、金属、プラスチック、セラミック、又は他の材料で作製される。インプラントは、永久的に配置することができるか、又は必要ではなくなったら除去することができる。
【0003】
医療用インプラントのリスクとしては、配置又は除去中の外科手術的なリスク、感染症、及びインプラントの不具合が挙げられる。一部の人はまた、インプラントに使用される材料に対する反応を有する。
【0004】
医療用インプラントと同様に、皮膚充填物も、身体又は組織内部に配置され、インプラント可能な材料とみなすことができる。皮膚充填物は、以前は外科手術でのみ達成可能なアンチエイジング及び皮膚リモデリング治療を提供する。皮膚充填物は、皮膚に注射することができるヒドロゲルの形態で使用される。それらは、外科手術的美容処置よりも実質的に安価、安全であり、より痛みが少ない。今日、市場で入手可能な皮膚充填物には、様々な種類が存在する。注射すると、これらの充填物は、皮膚にボリュームを提供するための充填材料として機能し、それによって、皮膚の輪郭を改善し、傷跡、怪我、又はしわに起因する皮膚の凹みを低減する所望の審美的効果を提供する。
【0005】
充填物として体内で使用される材料の一例は、ヒアルロン酸である。しかしながら、個人に投与されると、ヒアルロン酸は、ヒアルロニダーゼ、グルコロニダーゼ(glucoronidase)、及びグルコシダーゼなどの様々な酵素による酵素分解、又は非酵素分解を受け、したがって、インビボで、その元来の粘度又は所望の滞留時間を維持しない。
【0006】
いくつかの充填物は、皮膚充填物に麻酔特性を追加し、及び/又はその流動性及び粘弾性特性を変化させるために、リドカイン又は生理食塩水で希釈される。いくつかの皮膚充填物は、経時的に安定でないという欠点を抱えている。
【0007】
インプラント可能な材料によって多くの場合引き起こされる別の欠点は、炎症を引き起こす異物反応である。また、化学的、酵素的、及び/又は機械的な分解などのインプラント可能な材料の分解は、頻繁な再投与につながる。インプラント可能な材料は、体内に存在する場合、経時的に、縮小などによって、それらの物理的及び化学的特性が変化し得る。
【0008】
身体によって忍容され、体内でそれらの組成及び形態を維持する、インプラント可能な材料に対する必要性が存在する。
【0009】
ボリューミング能力、長寿命、及び注射の容易さの最適なバランスを提供する、インプラント及び皮膚充填物組成に対する必要性が存在する。代替的な、追加的な、及び/又は改善された皮膚充填物、それらの使用、並びにそれらを製造するための方法が望まれている。
【0010】
また、医療デバイスの規制を満たすことができ、材料を身体、特に人体に挿入することを含む様々な医療的用途で使用することができる、高品質の製品及びその製造方法に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
注射などの、体内に安全に挿入するためのインプラント可能な材料として使用することができる、医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルを製造する方法が見出された。ヒドロゲルは、微生物純度に関して非常に高い純度、及び生体適合性を呈した。ヒドロゲル中のナノ原線維セルロースは、均質であり、適用されるとそのナノスケール構造を維持し、したがって、要求の厳しい医療的使用に好適な特性を呈する。このプロセス及び得られた医療グレードのナノ原線維セルロースは、従来技術の欠点を克服している。
【0012】
しかしながら、ナノ原線維セルロースを調製するプロセスは、一般に異なる位置で実行される大規模な装置及び異なるプロセスステップを多くの場合必要とするので、そのような医療グレードの製品を工業規模で調製することには、課題が存在した。必要とされる清浄条件でそのようなプロセスを実施することは容易ではない。
【0013】
本開示は、医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルであって、1.4~3.4重量%の範囲のナノ原線維セルロースの濃度を有する、植物系の化学的及び酵素的に修飾されていないナノ原線維セルロースヒドロゲルを含み、ナノ原線維セルロースが、100nm以下の原線維及び/又は原線維束の数平均直径、並びに22±1℃の水性媒体中0.5重量%の粘稠性で、プレート形状を使用する回転式レオメータによって決定した、1~40Paの範囲の貯蔵弾性率、及び/又は22±1℃の水性媒体中0.5重量%の粘稠性で、翼形状を使用する回転式レオメータによって決定した、0.7~20Paの範囲の貯蔵弾性率を有する、医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルを提供する。
【0014】
本開示は、インプラント可能な材料として体内で使用するための医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルを提供する。
【0015】
本開示は、体内で使用するための医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルを製造するための方法を提供し、方法が、
-植物系セルロースパルプの懸濁液を提供することと、
-セルロースパルプ懸濁液を精製器で事前精製して、87~95の範囲のSR値などの、SR値87以上を有する事前精製されたセルロースを得ることと、
-事前精製されたセルロースパルプを分散させて、1.6~3.6重量%の範囲の事前精製されたセルロースの濃度を得ることと、
-事前精製されたセルロースパルプを分解デバイスによって当該濃度で分解して、医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルを得ることと、
-濃度を調整することなく、分解デバイスから医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルを回収することと、
-1.4~3.4重量%の範囲のナノ原線維セルロースの濃度を有するナノ原線維セルロースヒドロゲルを得ることと、を含む、方法を提供する。
【0016】
本開示は、方法によって得られた医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルを提供する。
【0017】
主な実施形態は、独立請求項を特徴とする。従属請求項には、様々な実施形態が開示されている。本明細書に開示の実施形態及び例は、別途明示的に記述されない限り、相互に自由に組み合わせられる。
【0018】
本ナノ原線維セルロースヒドロゲルは、例えば、注射することによって、体内、より具体的には体内の標的に挿入することができ、体内で、ヒドロゲルは、その剛性の効果によって組織を支持することができることが見出された。標的は、組織内若しくはその近くの位置、並びに/又は支持及び/若しくは充填が必要な点などの、特定の組織又は位置であり得る。
【0019】
医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルを製造するための本方法によって、標的組織又は標的に必要とされる支持組織の生理学的特性を呈するヒドロゲルを得ることが可能であった。本ヒドロゲルの粘弾性特性は、そのような使用に好適であることが見出された。ヒドロゲルは、その形態を維持し、少なくとも1ヶ月間、長期間体内に留まり、特定の医療的用途に理想的である。そのような用途としては、医療的、補綴的、及び/又は審美的であり得る組織支持用途が挙げられる。
【0020】
本ナノ原線維セルロースヒドロゲルは、非毒性の非動物系及び非微生物系の生体適合性材料である。試験では、ヒドロゲルは、実質的に異物反応又はカプセル化を引き起こさず、これは、挿入可能、注射可能、又はインプラント可能な材料としては非常にまれである、しかしながら、ヒドロゲルの表面は、体内で補強され、これは、インプラントされたヒドロゲルの元来の形態を更に支持した。本ナノ原線維セルロースはまた、生体吸収性ではなく(biodurable)、身体は、セルロースを分解するために必要とされるセルラーゼを合成することができないので、体内でのセルロース吸収が遅い。本ヒドロゲルは、長期間にわたって体内で元来の形状を維持することが実験的に示された。
【0021】
すぐに注射又は他の挿入ができる最終製品を得ることが可能であった。更に、得られた製品の品質保持期間は非常に長かった。医療グレードの製品は、製品中唯一の補強材料としてナノ原線維セルロースを使用することによって得ることができるので、他の高分子材料は必要とされず、最も単純な場合、医療製品は水及びナノ原線維セルロースのみを含有した。
【0022】
本ナノ原線維セルロースヒドロゲルは、ヒドロゲル材料の剪断減粘特性に起因して、注射による体内への挿入に理想的である。ヒドロゲルの剪断減粘特性は、細長い構造などの特定の構造の形状へと、ヒドロゲルを体内に注射することを可能にし、注射後に高い剛性を回復させる。ヒドロゲルは、組織に不可逆的に結合しないので、必要な場合、単純な外科手術によって、又は更には吸引によって、後で身体から除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A】注射直後のゲル結節を示す(両側)。
図1B】注射直後のゲル結節を示す。
図2A】注射28日後のNFC注射部位(#1A)の肉眼的観察を示す。
図2B】秤量のために皮下組織から除去した後のNFCヒドロゲルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書では、別途具体的に示されない限り、パーセンテージ値は、重量(w/w、重量、又はwt%)に基づく。任意の数値範囲が提供されている場合、範囲はまた、上限値及び下限値を含む。「含む」という開放的な用語はまた、1つの選択肢として、「からなる」という閉鎖的な用語を含む。本明細書に開示の直径は、別途具体的に示されない限り、最小直径を指し、平均又は数平均直径として提示される場合があり、顕微鏡的に決定することができる。
【0025】
本開示は、天然ナノ原線維セルロースと呼ばれ得る、木質系などの植物系の化学的及び酵素的に修飾されていないナノ原線維セルロースヒドロゲルを含む、医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルを提供する。ヒドロゲルは、1.45~3.0重量%などの1.4~3.4重量%の範囲のナノ原線維セルロースの濃度を有し得る。これらの濃度の本天然ナノ原線維セルロースは、例えば、針を装備したシリンジを用いて体内に注射可能であり、注射可能な/注射されたヒドロゲルは、体内で安定なインプラントを形成することができることが見出された。例えば、材料の剛性、同様に安定性も、本使用に適切であった。
【0026】
本明細書で使用される医療グレードは、生組織での使用に許容可能であり、好適な材料、特に身体又は組織に挿入、インプラント、及び/又は注射することができる材料を指す。医療グレードの材料は、クリーンルーム条件で調製され、微生物的な品質、純度、及び他の関連する特性などの材料の品質が、製造プロセス全体を通して監視及び制御される。例えば、エンドトキシン含有量は、低レベルで制御及び維持される。医療グレードの材料は、例えば、非毒性であり、異物反応、アレルギー反応、細胞毒性反応、刺激、又は感作などの、生組織との接触時に望ましくない反応を引き起こさないことを含む、安全、不活性、及び生体適合性でなければならない。
【0027】
制御された調製方法に起因して、製品は、実質的に不純物及び汚染物質を含まないか、又は不純物及び汚染物質は、検出レベル未満であり得る。医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルは、好ましくは、Ph.Eur2.6.14に従って決定した、5.5EU/g(ml)以下の細菌性エンドトキシンを含む。そのような材料は、本明細書に記載のプロセスで得ることができる。
【0028】
本医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルは、体内又は身体上での使用のために提供され得る。身体は、ヒト及び/又は非ヒト動物などの動物身体であり得る。非ヒト動物は、例えば、家畜動物及び農場動物、又は他の動物であり得る。医療的状態を治療するために使用され得る支持組織としての医療的用途、及び形成外科手術などの審美的用途、並びにそれらの組み合わせなどの、本ヒドロゲルを利用することができる、特に人体に対する様々な用途が存在する。本医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルは、ヒト対象の治療に特に好適である。
【0029】
本医療グレードのヒドロゲルは、内部で使用することができる、すなわち、体内に挿入することができるが、それらはまた、局所的適用などの外部で使用することができ、例えば、創傷、若しくは他の損傷領域上、例えば皮膚上に、又は他の適用可能な医療的使用に適用することができる。
【0030】
ナノ原線維セルロース
ナノ原線維セルロース(NFC)は、セルロース原料由来の単離されたセルロース原線維及び/又は原線維束を指し、水中で粘性のヒドロゲルを形成する能力を有する。ナノ原線維セルロース製造技法は、パルプ繊維の水性分散体を摩砕してナノ原線維化セルロースを得るなどの、繊維性原料を分解することに基づき得る。摩砕又は均質化プロセスの後に得られたナノ原線維セルロース材料は、希釈粘弾性ヒドロゲルである。得られた材料は、通常、分解条件に起因して、水中に均質に分布する比較的低い濃度で存在する。水性環境では、セルロースナノ原線維(nanofibril)の分散体は、粘弾性ヒドロゲルネットワークを形成する。ゲルは、分散及び水和した絡み合った原線維によって、例えば、0.05~0.2%(w/w)の比較的低い濃度で、すぐさま形成される。NFCヒドロゲルの粘弾性は、例えば、動的振動レオロジー測定で特徴評価され得る。
【0031】
そのナノスケール構造を理由として、ナノ原線維セルロースは、従来の繊維性セルロース、又は例えば合成繊維若しくは原線維によって提供されることができない機能を可能にする、独自の特性を有する。従来の製品、又は従来のセルロース性材料若しくは他の高分子材料を使用する製品とは異なる特性を呈する、材料及び製品を調製することが可能である。しかしながら、ナノスケール構造を理由として、ナノ原線維セルロースはまた、困難な材料である。例えば、ナノ原線維セルロースの濃度の取り扱い若しくは調整は困難であり得、及び/又はナノ原線維セルロースの特性は、そのようなプロセスにおいて劣化しやすい。
【0032】
一般に、ナノ原線維セルロースは、植物又は微生物であり得る様々な供給源から製造され得る。植物セルロースは、木質セルロースを含み得るか又はそれからなり得る。木質セルロースは、様々な異なるナノ原線維製品を調製するために使用され得、最終的なナノ原線維セルロースの特性は、原料、プロセス条件、使用される方法、修飾、及び他の条件及び方法ステップの選択によって影響を受ける場合がある。例えば、本木質セルロースは、特別に精製され、原線維化され、セルロースの最終的な特性を調整するように制御され得る。木質セルロースは、二次細胞壁に由来するセルロース繊維から得られ、セルロースは、本質的に結晶性であり、少なくとも55%の結晶度を有する。
【0033】
木質は、トウヒ、マツ、モミ、カラマツ、ダグラスモミ、若しくはヘムロックなどの軟木から、又はカバノキ、アスペン、ポプラ、ハンノキ、ユーカリ、オーク、ブナ、若しくはアカシアなどの硬木から、又は軟木と硬木との混合物からであり得る。本ナノ原線維セルロースは、好ましくは、硬木パルプから得られる。一例では、硬木は、カバノキである。一例では、木質パルプは、化学パルプ化プロセスによって得られる化学パルプである。化学パルプが、本明細書に開示の製品に好ましい。
【0034】
セルロース原線維及び/又は原線維束を含むナノ原線維セルロースは、高いアスペクト比(長さ/直径)を特徴とする。ナノ原線維セルロースの平均長(原線維及び/又は原線維束などの粒子の中央長)は、1μmを超える場合があり、ほとんどの場合、50μm以下である。素原線維(elementary fibril)が互いに完全に分離されていない場合、原線維束などの絡み合った原線維は、例えば、1~100μm、1~50μm、又は1~20μmの範囲の平均全長を有し得る。これは、特に、例えば、化学的、酵素的、又は機械的に短縮又は消化されていない原線維の天然グレードに当てはまる。しかしながら、ナノ原線維材料が、高度に原線維化されている場合、素原線維は、完全に又はほぼ完全に分離され得、平均原線維長は、1~10μm又は1~5μmの範囲など、より短い。強誘導体化ナノ原線維セルロースは、0.3~20μm、例えば、0.5~10μm又は1~10μmなどの、0.3~50μmの範囲などのより短い平均原線維長を有し得る。特に、酵素的又は化学的に消化された原線維、又は機械的に高度に処理された材料などの短縮された原線維は、0.1~1μm、0.2~0.8μm、又は0.4~0.6μmなどの1μm未満の平均原線維長を有し得る。原線維の長さ及び/又は直径は、顕微鏡検査によるなどのいくつかの技法で決定することができる。好適な撮像ソフトウェアが使用され得る。原線維の厚さ及び幅分布は、電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)、低温電子顕微鏡(CRYO-TEM)などの透過電子顕微鏡(TEM)、又は原子間力顕微鏡(AFM)からの画像などの顕微鏡画像の画像分析によって測定することができる。一般に、AFM及びTEM、特にCRYO-TEMは、狭い原線維直径分布を有するナノ原線維セルロースグレードに最適である。Cryo-TEM画像からは、束構造も見ることができる。
【0035】
高いアスペクト比が望ましい場合、原線維長を短くすることは望ましくないので、化学的及び/若しくは酵素的に消化されたセルロース、又は原線維が既に短くなっているそのような高度に機械的に原線維化された材料を使用することは望ましくない場合がある。低いアスペクト比は、通常、NFC分散体の粘度の減少として検出され得る。
【0036】
本明細書に開示の平均長及び/又は直径は、NFCに関してだけでなく、マイクロビーズ、粒子、細胞、細胞由来製品、凝集身体、及び本明細書で論じられるものなどの他の適用可能な実体に関しても、数平均長及び/又は直径であり得る。しかしながら、球状又は実質的に球状の実身体又は粒子については、体積中央粒径又は直径が使用され得る。これらの寸法は、本明細書で論じられるように顕微鏡的に決定され得る。特定のソフトウェアが使用され得る。「原線維」という用語はまた、適用可能な場合、原線維束を含む。機械的に分解されたセルロース性材料は、単純な原線維へと完全に分離されていないが、依然として原線維束の形態である、少量のセルロースを含有し得る。
【0037】
ナノ原線維セルロースは、平均直径(又は幅)、又はゼロ剪断粘度などの粘度と一緒に平均直径によって特徴評価され得る。ナノ原線維セルロースの平均直径(幅)は、一般に、1~500nmの範囲などの1μm未満又は500nm以下であるが、好ましくは、高度に原線維化された材料では、1~200nm、2~200nm、2~100nm、又は1~50nm、更には1~20の範囲などの、200nm以下、更には100nm以下、又は50nm以下である。本明細書に開示の直径は、原線維及び/又は原線維束に対して言及している。最小原線維は、素原線維のスケールにあり、平均直径は、典型的には、4~12nmの範囲にある。原線維の寸法及びサイズ分布は、とりわけ、化学修飾、及び分解方法、及び効率に依存する。高度に分解された天然ナノ原線維セルロースの場合、平均原線維及び/又は原線維束直径は、2~200nm又は2~100nmの範囲、例えば10~50nmの範囲にあり得る。ナノ原線維セルロースは、大きな比表面積、及び水素結合を形成する強い能力を特徴とする。水分散体中のナノ原線維セルロースは、典型的には、軽いか又は濁ったゲル様材料のいずれかとして見える。繊維原料に応じて、植物、特に木質から得られるナノ原線維セルロースはまた、少量の他の植物構成要素、特にヘミセルロース又はリグニンなどの木質構成要素を含有し得る。その量は、植物源に依存する。硬木パルプ対軟木パルプなどの原料源に応じて、最終的なナノ原線維セルロース製品には異なる多糖組成が存在する。
【0038】
本明細書に記載の使用に好適な天然ナノ原線維セルロースは、1~100nmの範囲の数平均原線維直径を有する。一例では、当該ナノ原線維セルロースは、2~20nm又は5~30nmなどの、1~50nmの範囲の数平均原線維直径を有する。
【0039】
一般に、セルロースナノ材料は、セルロースナノ材料の標準用語を提供するTAPPI W13021に従う分類へと分割することができる。これらの物質の全てが、ナノ原線維セルロースであるわけではない。2つの主な分類は、「ナノ物質」及び「ナノ構造材料」である。ナノ原線維材料は、10~12μmの直径及び長さ:直径比(L/D)<2を有する「セルロース微結晶」(CMCと呼ばれる場合もある)、並びに10~100nmの直径及び0.5~50μmの長さを有する「セルロース微原線維」を含む。ナノ物質は、3~10nmの直径及びL/D>5を有する「セルロースナノ結晶」(CNC)、並びに5~30nmの直径及びL/D>50を有する「セルロースナノ原線維」(CNF又はNFC)へと分割することができる、「セルロースナノ繊維」を含む。
【0040】
異なる種類のナノ原線維セルロースは、3つの主な特性:(i)サイズ分布、長さ及び/又は直径、(ii)化学組成、並びに(iii)レオロジー特性に基づいて分類され得る。種類を完全に記載するために、2つ以上の特性は、同様に使用され得る。異なる種類の例としては、天然(化学的及び/又は酵素的に修飾されていない)NFC、酸化NFC(高粘度)、酸化NFC(低粘度)、カルボキシメチル化NFC、及びカチオン化NFCが挙げられる。
【0041】
ナノ原線維セルロースを特徴評価する1つの方式は、当該原線維セルロースを含有する水性の溶液又は分散体の粘度を使用することである。粘度は、例えば、ブルックフィールド粘度又はゼロ剪断粘度であり得る。特定の粘度、特にゼロ剪断粘度は、ナノ原線維セルロースから非ナノ原線維セルロースを区別するため、及び/又は原線維化度を定義するために使用することができる。高いゼロ剪断粘度は、通常、高い原線維化度、高いアスペクト比、及び/又は低い原線維直径に対応する。ブルックフィールド粘度は、剪断減粘特性を適切に特徴評価することができないので、例えば、異なるバッチの比較に、及び品質管理に使用することができる。
【0042】
ナノ原線維セルロースヒドロゲルは、特徴的なレオロジー特性を呈し、これは、例えば、剪断応力又は剪断速度と相関させて粘度を監視することによって評価することができる。それらは、例えば、剪断減粘又は擬塑性非ニュートン材料であり、材料が変形される速度又は力に粘度が依存することを意味する、チキソトロピー挙動の特殊な場合とみなされる場合がある。回転式レオメータで粘度を測定する場合、剪断減粘挙動は、剪断速度の増加に伴う粘度の減少として見られる。十分に低い剪断速度では、剪断減粘流体は、ゼロ剪断粘度又はゼロ剪断粘度プラトーと称される、一定粘度値η0を示すであろう。ゼロ剪断速度粘度は、直接測定することができない限界値であり、むしろ、異なる剪断速度でのいくつかの測定からの外挿によって推定する必要がある。ゼロ剪断粘度値は、測定された曲線の一定領域から決定され、剪断速度がゼロに近づく状況を表す。
【0043】
印加された剪断応力又は剪断ひずみを制御するレオメータは、回転式又は剪断レオメータと呼ばれ、印加された力に応答して液体、懸濁液、又はスラリーが流れる方式を測定するために使用することができる。レオメータは、粘度の単一の値によって定義することができない剪断減粘流体に使用される。レオメータは、翼形状又はプレート形状などの特定の形状を有する回転子を使用し得る。翼形状及びプレート形状によって実行される測定は、異なる値を提供し、直接比較可能ではない場合がある。測定は、25±1℃又は22±1℃のpH7の純水中で、及び0.5重量%のナノ原線維セルロースの標準的な粘稠性/濃度で実行され得る。
【0044】
ナノ原線維セルロースは、22±1℃の水性媒体中0.5重量%の粘稠性で、プレート形状を使用する回転式レオメータによって決定した、1500~40000Pa・s、1500~20000Pa・s、1500~10000Pa・s、又は1500~6000Pa・sなどの1000~50000Pa・sの範囲のゼロ剪断粘度を有し得る。ナノ原線維セルロースは、22±1℃の水性媒体中0.5重量%の粘稠性で、翼形状を使用する回転式レオメータによって決定した、750~3000Pa・s、750~2700Pa・s、又は750~2100Pa・s、例えば、1300~1800Pa・sなどの、370~3000Pa・s、370~2700Pa・s、又は370~2100Pa・sの範囲のゼロ剪断粘度を有し得る。
【0045】
ヒドロゲルは、塑性挙動を示し、これは、材料が容易に流れ始める前に、ある特定の剪断応力(力)が必要とされることを意味する。この臨界剪断応力は、多くの場合、降伏応力(破壊強度)と呼ばれる。降伏応力は、応力制御レオメータによって測定された定常状態流動曲線から決定することができる。印加された剪断応力と相関させて粘度をプロットすると、臨界剪断応力を超えた後に粘度の劇的な減少が見られる。ゼロ剪断粘度及び降伏応力は、材料の懸濁力を記載するための最も重要なレオロジー的パラメータである。これらの2つのパラメータは、異なるグレードを非常にはっきりと区分し、したがって、グレードの分類を可能にする。ゼロ剪断粘度及び降伏応力の両方、並びに他のレオロジー特性を測定するには、応力制御回転式レオメータなどの回転式レオメータが使用され得る。
【0046】
ナノ原線維セルロースは、22±1℃の水性媒体中0.5重量%の粘稠性で、プレート形状を使用する回転式レオメータによって決定した、0.5~7.0Pa、0.7~7.0Pa、又は0.7~3.5などの、0.5~10Paの範囲の降伏応力を有し得る。ナノ原線維セルロースは、22±1℃の水性媒体中0.5重量%の粘稠性で、翼形状を使用する回転式レオメータによって決定した、0.7~2.0Pa又は0.2~1Paなどの、0.2~3.5Pa、0.2~3.0Pa、又は0.2~2.0Paの範囲の降伏応力を有し得る。
【0047】
一実施形態では、ナノ原線維セルロースは、22±1℃の水性媒体中0.5重量%の粘稠性で、プレート形状を使用する回転式レオメータによって決定した、1500~50000Pa・sの範囲のゼロ剪断粘度、及び0.5~10Paの範囲の降伏応力を有する。一実施形態では、ナノ原線維セルロースは、22±1℃の水性媒体中0.5重量%の粘稠性で、プレート形状を使用する回転式レオメータによって決定した、1500~40000Pa・sの範囲のゼロ剪断粘度、及び0.5~7.0Paの範囲の降伏応力を有する。
【0048】
一実施形態では、ナノ原線維セルロースは、22±1℃の水性媒体中0.5重量%の粘稠性で、翼形状を使用する回転式レオメータによって決定した、370~3000Pa・sの範囲のゼロ剪断粘度、及び0.2~3.5Paの範囲の降伏応力を有する。一実施形態では、ナノ原線維セルロースは、22±1℃の水性媒体中0.5重量%の粘稠性で、翼形状を使用する回転式レオメータによって決定した、750~3000Pa・sの範囲のゼロ剪断粘度、及び0.7~3.5Paの範囲の降伏応力を有する。
【0049】
一実施形態では、ナノ原線維セルロースは、20℃±1℃、0.8%(重量/重量)の粘稠性、及び10rpmでのSCAN-P50:84方法で測定して、6000~12000mPa・sの範囲のブルックフィールド粘度を有する。一例では、ナノ原線維セルロースの見かけ粘度は、ブルックフィールド粘度計(ブルックフィールド粘度)又は別の対応する装置で測定される。好適には、翼付きスピンドル(番号73)が使用される。見かけ粘度を測定するために利用可能ないくつかの市販のブルックフィールド粘度計が存在し、これらは全て、同じ原理に基づく。好適には、RVDVばね(ブルックフィールドRVDV-III)が装置で使用される。ナノ原線維セルロースの試料を水中0.8重量%の濃度まで希釈し、10分間混合する。希釈した試料塊を250mlのビーカーに添加し、温度を20℃±1℃に調整し、必要な場合加熱し、混合する。10rpmの低回転速度が使用される。一般に、ブルックフィールド粘度は、20℃±1℃、0.8%(w/w)の粘稠性、及び10rpmで測定され得る。
【0050】
標的組織及び/又は標的における所望の効果などの最終的なヒドロゲルの剛性は、標的に従って調整及び/又は提供され得る。剛性は、標的における組織の剛性と同等又は実質的に同等であるように調整され得る。剛性は、特に、標的、組織、及び/又は身体部分を支持することが所望される場合、標的における組織の剛性よりも高いように調整され得る。ほとんどの軟組織では、ヒト組織の貯蔵弾性率は、10~10000Paなどの、1~10000000Paの範囲で変動し得る。医療用ヒドロゲルの最終濃度での貯蔵弾性率は、所望の効果を得るために、例えば、標的組織又は組織と同等若しくは実質的に同等、又はより高いか若しくは低いように調整され得る。
【0051】
ナノ原線維セルロースヒドロゲルの剛性は、ゲルの粘弾性測定から評価することができる。本ヒドロゲルの貯蔵弾性率は、22±1℃の水性媒体中0.5重量%の粘稠性で、プレート形状を使用する回転式レオメータによって決定した、1~31Pa、3~50Pa、3~40Pa、3~35Pa、3~31Pa、例えば、3~15Pa、3~10Pa、3~8Pa、8~50Pa、8~40Pa、8~35Pa、8~31Pa、又は8~15Paの範囲などの、1~50Pa、1~40Pa、又は1~35Paの範囲にある。支持を与える使用などの、高い剛性が必要とされる場合、8Pa以上の貯蔵弾性率が使用され得る。
【0052】
貯蔵弾性率は、22±1℃の水性媒体中0.5重量%の粘稠性で、翼形状を使用する回転式レオメータによって決定した、0.7~7Pa、例えば、1.0~7Pa、2.0~7Pa、又は2~5Paなどの、0.7~15.0Pa、0.7~12.0Pa、0.7~10.0Paの範囲などの、0.7~20Paの範囲にあり得る。一実施形態では、ナノ原線維セルロースは、22±1℃の水性媒体中0.5重量%の粘稠性で、翼形状を使用する回転式レオメータによって決定した、1~15Pa、1~12Pa、1~10Pa、2~20Pa、2~15Pa、2~12Pa、又は2~10Paなどの、1~20Paの範囲の貯蔵弾性率を有する。支持を与える使用などの、高い剛性が必要とされる場合、2Pa以上の貯蔵弾性率が使用され得る。貯蔵弾性率、並びに他のレオロジー特性は、標準条件で測定される。ヒドロゲルのその濃度では、貯蔵弾性率は、より高く、標的条件又は標的でのゲルの所望の剛性に対応するレベルである。
【0053】
ナノ原線維セルロースは、損失弾性率でも特徴評価することができる。一実施形態では、ナノ原線維セルロースは、22±1℃の水性媒体中0.5重量%の粘稠性で、プレート形状を使用する回転式レオメータによって決定した、1.0~4.0Pa又は1.0~2.0Paなどの0.5~4.0Paの範囲の損失弾性率を有する。ナノ原線維セルロースは、損失弾性率でも特徴評価することができる。一実施形態では、ナノ原線維セルロースは、22±1℃の水性媒体中0.5重量%の粘稠性で、翼形状を使用する回転式レオメータによって決定した、0.20~0.50Paなどの0.15~1.20Paの範囲の損失弾性率を有する。
【0054】
本明細書に開示のレオメータ及び方法を使用して、ゼロ剪断粘度、降伏応力/破壊強度、貯蔵弾性率、及び損失弾性率を決定することができる。レオメータは、特性の各々を測定するための特定の測定プログラムを提供し得る。
【0055】
一例では、ナノ原線維セルロース分散体のレオメータ粘度は、30mmの直径を有する円筒形の試料カップ内に狭いギャップの翼形状(直径28mm、長さ42mm)を装備し得る、応力制御回転式レオメータ(TA Instruments,UKによるAR-G2、HR-10、又はHR-1など)を用いて22℃で測定される。試料をレオメータに充填した後、5分間静置し、その後測定を開始する。定常状態粘度は、剪断応力を徐々に増加させながら(印加されるトルクに比例)測定され、剪断速度(角速度に比例)が測定される。ある特定の剪断応力で報告される粘度(=剪断応力/剪断速度)は、一定の剪断速度に達した後、又は最大2分後に記録される。1000秒-1の剪断速度を超えると、測定は停止される。
【0056】
別の例では、ヒドロゲル試料のレオロジー測定は、20mmのプレート形状を装備した応力制御回転式レオメータ(TA instruments,UKによるAR-G2、HR-10、又はHR-1)を用いて実行される。試料を1mmのギャップでレオメータに充填した後、5分間静置し、その後測定を開始した。貯蔵弾性率は、周波数0.1Hz、22℃で、0.01~100Paの範囲に剪断応力を徐々に増加させながら、測定され得る。
【0057】
ナノ原線維セルロースはまた、分散体の濁度によって特徴評価され得る。濁度は、一般に、肉眼では目視可能ではない個々の粒子(懸濁又は溶解した固形物の合計)によって引き起こされる、流体の曇り又はかすみである。濁度を測定するいくつかの実用的な方式が存在し、最も直接的なものは、水の試料カラムを通過する際の光の減衰(すなわち、強度の低減)のいくつかの尺度である。代替的に使用されるジャクソンキャンドル方法(単位:ジャクソン濁度単位又はJTU)は、本質的に、水のカラムを通して見えるろうそくの炎を完全に覆い隠すために必要な、水のカラムの長さの逆尺度である。
【0058】
濁度は、光学式濁度測定機器を使用して、定量的に測定することができる。濁度を定量的に測定するために利用可能ないくつかの市販の濁度計が存在する。本場合では、比濁法に基づく方法を使用することができ、測定は、20℃±1℃の純水などの水性媒体中0.1%(重量/重量)の粘稠性で実行され得る。測定は、ISO7027に従って実行され得る。較正された比濁計からの濁度の単位は、比濁的濁度単位(Nephelometric Turbidity Units)(NTU)と呼ばれる。測定装置(濁度計)は、標準較正試料で較正及び制御され、続いて希釈されたNFC試料の濁度の測定が行われる。
【0059】
1つの濁度測定方法では、ナノ原線維セルロース試料は、水中で、当該ナノ原線維セルロースのゲル点を下回る濃度まで希釈され、希釈された試料の濁度が測定される。ナノ原線維セルロース試料の濁度が測定される当該濃度は、0.1%である。例えば、濁度測定のために、50mlの測定容器を備えたHACH P2100濁度計が使用され得る。ナノ原線維セルロース試料の乾燥物質を決定し、乾燥物質として計算された0.5gの試料を測定容器に充填し、容器に水道水を500gまで充填し、約30秒間振盪させることによって激しく混合する。遅滞なく、水性混合物を5つの測定容器に分割し、濁度計に挿入する。各容器で3回の測定を実行する。得られた結果から平均値及び標準偏差を計算し、最終結果をNTU単位として得る。
【0060】
ナノ原線維セルロースを特徴評価する1つの方式は、粘度及び濁度の両方を定義することである。細い原線維は、光の散乱が不十分なので、濁度が低いことは、原線維が細い直径などの小さいサイズであることを指す。一般に、原線維化度が増加するにつれて、粘度は増加し、同時に濁度は減少する。しかしながら、これは、ある特定の時点まで起こる。原線維化が更に継続されると、原線維は、最終的に破損し短くなり始め、したがって強いネットワークを形成することができなくなる。したがって、この時点以降、濁度及び粘度の両方が減少し始める。
【0061】
本医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルの濁度は、SFS-EN ISO7027に従った比濁計によって測定して、130~170NTU又は115~150NTUなどの、110~172NTUの範囲にあり得る。
【0062】
医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルの製造
本開示は、医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルを製造するための方法を提供する。
【0063】
方法は、好ましくは、6.0~8.0の範囲のpHを有する、植物系セルロースパルプの懸濁液を提供することを含む。木質系セルロースパルプ、特に化学的なカバノキパルプが、本目的に有利であることが見出された。化学的なカバノキセルロースは、約75重量%のセルロース及び約25重量%のヘミセルロースを含有する。木質は、カバノキを含むか又はそれからなり得る。一実施形態では、木質系セルロースは、カバノキセルロースを含む。一実施形態では、木質系セルロースは、カバノキセルロースからなる。
【0064】
一般に、原線維化セルロースを調製するために使用されるセルロースは、修飾されていなくてもよいか、又は化学的及び/若しくは酵素的に修飾されてもよい。本場合では、化学的に修飾されていない及び/又は酵素的に修飾されていない天然の(修飾されていない)セルロースが、本医療的目的に有利な選択肢であることが見出された。通常、天然セルロースは、より低い濃度で原線維化され、後で濃縮される。しかしながら、調製後にヒドロゲルを修飾することは、本医療的使用に所望される特性を破壊し得るので、本目的では、必要とされる濃度でセルロースを原線維化することが望ましいことが見出された。
【0065】
天然のナノ原線維セルロースは、元来の原線維長を維持し、したがって、例えば、ヒドロゲル内で高密度かつ剛性の原線維ネットワーク及び生体適合性環境を形成するNFCの能力に影響を有する、高いアスペクト比を有する。
【0066】
出発材料として使用される植物系セルロースパルプの懸濁液は、3~12重量%の範囲のセルロースの濃度(粘稠性)を有し得る。懸濁液は、セルロースパルプの製造から直接提供されてもよく、それは水懸濁液である。パルプは、漂白され得る。
【0067】
セルロースパルプの懸濁液は、視覚的外観、繊維長、FS5のうちの1つ以上又は全てなどのいくつかの特徴について検査及び分析され、培養によって、従属栄養生物培養が監視され得る。他の適用可能な分析は、乾燥物質含有量、SR°、pH、繊維寸法、FS5、SEM/EDS、SOX抽出、炭水化物、固体試料、金属、ICP、及びエンドトキシンなどの特性のうちの1つ以上又は全てを決定することを含む。本プロセスでは、製造チェーン全体の間、エンドトキシンを監視することが特に重要であることが見出された。パルプが特性の所定の限度に合格する場合、次のプロセスステップに進めることができる。
【0068】
方法は、パルプの懸濁液を洗浄することを含み得る。一例では、方法は、事前精製する前に、超純水でセルロースを洗浄することを含む。洗浄中、導電率及びpHが監視される。所望のpHを得るために、必要な場合、HCl及び/若しくはNaHCOなどの酸、並びに/又はNaOHなどの塩基が添加される。洗浄中、pHは、pH3以下に下げられ得る。洗浄は、20μS/cm以下などの所望の範囲の導電率が得られるまで、継続及び/又は繰り返され、導電率は、導電率計で水懸濁液から測定され得る。この範囲の導電率は、天然パルプの事前精製を容易にすることが見出された。
【0069】
セルロースの濃度/粘稠性は、洗浄が完了した後、約10重量%などの8~12重量%の範囲に調整され得る。これは、パルプの脱水を必要とし得、任意の適切な方法を用いて実行され得る。
【0070】
洗浄後、パルプは、事前精製に適用され得る。事前精製する前に、パルプ懸濁液は、視覚的外観、乾燥含有量、SEM/EDS、SOX抽出、炭水化物、固体試料、金属、ICP、及び/又はエンドトキシンなどの特徴のうちの1つ以上又は全てについて分析され得る。パルプは、次のステップで使用するために、当該特徴の所定の限度に合格しなければならない。限度に到達しない限り、パルプは、特徴に応じて更に処理、調整、又は廃棄される。パルプが特徴の所定の限度に合格する場合、事前精製に進めることができる。
【0071】
事前精製は、洗浄から得られたパルプ濃度で、又は洗浄後に調整された濃度で実行され得る。約10重量%の濃度が使用され得る。パルプは、以前に調整された濃度で事前精製するために提供される。事前精製に提供されるパルプは、22以下、例えば14~22の範囲、又は20以下などの、30以下のSR値を有し得、これは、未精製のパルプであることを示す。
【0072】
方法は、セルロースパルプ懸濁液を精製器で事前精製して、87~95又は87~93の範囲のSR値などの、SR値87以上を有する事前精製されたセルロース分散体を得ることを含む。SR(Schopper-Riegler)値は、パルプ懸濁液の排水性の尺度となる。SR値は、Schopper-Riegler Beating and Freeness Testerを使用することによって、及び/又はISO5267-1:1999規格を使用することによって決定され得る。
【0073】
より高いSR数は、排水がより遅いことを意味し、これは、精製の程度と相関する。本事前精製は、分解に使用される分解デバイスを遮断しないそのような精製されたセルロースを提供し、これは、多くの場合、天然セルロースの濃度が比較的高い場合であろう。事前精製は、繊維を開放するが、得られたセルロースは、高度に原線維化されておらず、分散ステップなどの次のステップで取り扱うことを困難にし、材料中の水の均一な分布を妨げるであろう。
【0074】
精製は、好ましくは、低強度かつ均質な処理を提供する、好適な叩解器又はミルを用いて実行され得る。
【0075】
一実施形態では、精製器は、PFIの種類の精製器ミルなどの、容器内に垂直な切断バーを備えたロールを備えたミルである。方法は、各々がパルプの別々のバッチを用いる、2つ以上、3つ以上、4つ以上、又は5つ以上などのいくつか又は複数の事前精製作業を実行することと、得られた事前精製バッチを組み合わせることと、を含み得る。同等なバッチで事前精製を実行することは、プロセスを制御し、良好な品質の純粋な材料を処理することを容易にする。
【0076】
事前精製から得られた材料は、視覚的外観、乾燥物質含有量、SR°、pH、繊維寸法、FS5、及びエンドトキシンなどの特徴のうちの1つ以上又は全てについて分析される。材料は、次のステップで使用するために、当該特徴の所定の限度に合格しなければならない。
【0077】
方法は、事前精製されたセルロースパルプを水若しくは他の水溶液に、又は水若しくは他の水溶液中へと分散させて、1.6~3.6重量%の範囲のナノ原線維セルロースの濃度を有する分散体を得ることを含む。生理学的生理食塩水溶液などの、1つ以上の塩及び/又は1つ以上の緩衝剤を含む水溶液が使用され得る。分散は、分散デバイスを使用することによって、事前精製されたパルプの濃度を調整することを指し得、及び/又は含み得る。分散された材料の乾燥物質含有量及びpHが、分析及び/又は調整され得る。事前精製されたセルロースパルプ分散体を希釈する必要がある場合は、超純度グレードの水が添加され得る。必要な場合、分散体は、濾過することによって、又は任意の他の好適な濃縮方法を使用することによって、濃縮され得る。分散は、好ましくはセルロースを精製及び/又は原線維化しない分散機などの、任意の好適な分散デバイスによって実行され得る。
【0078】
一例では、分解する前に、事前精製されたセルロースを水又は他の水溶液に分散させることは、pH8.5~9.0で実行される。しかしながら、緩衝溶液が使用される場合、pHは、例えば、6.5~7.5などの約7に調整され得る。方法は、本明細書に開示されるように、酸又は塩基であり得るpH調整剤を添加することによって、pHを検出すること及び/又はpHを調整することを含み得る。
【0079】
次に、方法は、事前精製されたセルロースパルプ分散体を分解デバイスによって当該濃度で分解して、医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルを得ることを含む。セルロース原料の機械的分解は、精製器、摩砕器、分散機、ホモジナイザー、コロイダー、摩擦摩砕器、ピンミル、回転子-回転子分散機、超音波発振器、マイクロ流動化機、マクロ流動化機、又は流動化機型ホモジナイザーなどの流動化機などの、任意の好適な分解デバイスを用いて実行され得る。分解処理は、水が繊維間の結合の形成を防止するには十分に存在する条件で実施される。分解は、原線維化と呼ばれ得、原線維が、繊維性セルロースから分離される。
【0080】
本明細書で使用される場合、「原線維化」という用語は、一般に、粒子に適用される作業によって繊維材料を機械的に分解させることを指し、セルロース原線維が、繊維又は繊維断片から離される。作業は、摩砕、破砕、若しくは剪断、又はこれらの組み合わせ、又は粒径を低減する別の対応する動作のような、様々な効果に基づき得る。「分解」又は「分解処理」という表現は、「原線維化」と互換的に使用され得る。繊維材料は、分解デバイスを、2回以上などの1回以上(通過)通され得る。これは、剛性及び粘度などの、得られた原線維セルロースのレオロジー特性に影響を有する。
【0081】
流動化機が、特に天然セルロースから、本医療用ヒドロゲルを調製するのに好適な分解デバイスであることが見出された。マイクロ流動化機であり得る流動化機は、1つ以上の相互作用チャンバを利用し得、パルプ分散体のための入口リザーバ、分散体を加圧するためのポンプを含み得、加圧された分散体が、相互作用チャンバに搬送され、そこで分解され、チャンバから排出される。分散体は、流動化機又は相互作用チャンバを通され得、その後、同じ材料が2回以上(通過)通される。流動化機は、チャンバ直径などのサイズが異なり得、及び/又は種類が異なり得る、2つ以上の相互作用チャンバを備え得る。相互作用チャンバは、シングルスロット及び/又はマルチスロットであり得る。相互作用チャンバは、マイクロチャネルであり得るチャネルを含有する。一例では、流動化機は、第1の相互作用チャンバと、第1のチャンバと比較して、より小さいチャネル直径を有する第2の相互作用チャンバと、を備える。方法は、第1のチャンバを通る1回以上の通過、及び第2のチャンバを通る1回以上の通過、及び任意選択的に、第2のチャンバと比較して、より小さいチャネル直径を有する第3のチャンバを通る1回以上の通過を含み得るので、原線維化が進行するにつれて、より小さいチャネルサイズ/直径が使用され得る。これは、前処理ステップと同様に、1.5重量%以上、1.6重量%以上、1.7重量%以上、1.8重量%以上、又は更には2重量%以上の比較的高い濃度で天然セルロースを効果的に原線維化させて、体内での本医療的使用に必要とされる、そのような高い原線維化度、材料の均質性、及び所望の特性を得ることを可能にした。相互作用チャンバの遮断は、本調整及び方法によって回避された。
【0082】
一実施形態では、流動化機による事前精製されたセルロースパルプの分解は、
-第1の相互作用チャンバ及び第2の相互作用チャンバを備えるマイクロ流動化機を、分解デバイスとして提供することと、
-第1の相互作用チャンバ内で第1の分解作業を実行することと、
-第1のチャンバと比較して、より小さいチャネル直径を有する第2の相互作用チャンバで、1回以上その後の分解作業を実行することと、を含む。その後の分解作業は、第1の分解作業から得られた材料に対して実行される。
【0083】
流動化機は、光学デバイス、例えば、レーザー回折分析器、動的光散乱分析器、濁度計、又は任意の他の好適なデバイスなどを用いて、オンライン、インライン、及び/又はオフラインに配置されたデバイスなどの、材料の分解、すなわち、サイズ低減を監視するための1つ以上のデバイスを装備し得るか、又はそれらに接続され得る。流動化機は、圧力、流量、相互作用チャンバの選択、処理時間、分解作業(通過)の回数などの、プロセスパラメータに関して制御及び調整され得る。流動化機は、パラメータ及び条件を制御するための制御電子機器を含み得る。
【0084】
分解デバイスは、高圧ホモジナイザーであり得る。ホモジナイザーでは、繊維材料は、圧力の影響によって均質化を施される。ナノ原線維セルロースへの繊維材料分散体の均質化は、材料を原線維へと分解する、分散体の強制スルーフローによって引き起こされる。繊維材料分散体は、所与の圧力で狭いスルーフローギャップを通過し、ここで、分散体の線形速度の増加が、分散体に剪断力及び衝撃力を引き起こし、繊維材料からの原線維の取り出しを生じる。繊維断片は、原線維化ステップで原線維へと分解される。原線維化セルロースを得るために、均質化プロセスは、ギャップのサイズなどのデバイスのそのような調整、及びセルロースが分解されるそのようなプロセス条件で実行される。ホモジナイザーはまた、当該調整及びプロセス条件に応じて、原線維化することなくセルロース性材料を均質化するために使用され得る。
【0085】
分解デバイスは、少なくとも1つの回転子、ブレード、又は少なくとも2つの回転子を有する回転子-回転子分散機などの同様の移動式機械部材を有する分散機であり得る。分散機では、分散体中の繊維材料は、ブレードが回転速度で、及び半径(回転軸までの距離)によって決定される周速で反対方向に回転すると、反対方向からそれに当たる回転子のブレード又はリブによって繰り返し衝撃を受ける。繊維材料は、半径方向に外向きに移動するので、反対方向から高い周速で次々と来るブレードの広い表面、すなわちリブに衝突する、言い換えれば、反対方向から複数の連続した衝撃を受ける。また、縁部が次の回転子ブレードの反対側の縁部とブレードのギャップを形成する、ブレードの広い表面、すなわちリブの縁部では、剪断力が生じ、これが、繊維の分解及び原線維の離れに寄与する。
【0086】
方法は、濃度を調整することなく、より具体的には、例えば、水を添加又は除去することによって濃度を積極的に調整することなく、医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルを回収することを含む。これは、流動化機からなどの分解から得られる材料を指す。
【0087】
プロセスは、1.45~3.0重量%などの1.4~3.4重量%の範囲のナノ原線維セルロースの最終濃度を有するナノ原線維セルロースヒドロゲルを得ることを可能にする。分解中、セルロースの濃度は、0.2~0.3パーセント単位など、わずかに減少することが見出された。ほとんどの使用において、1.5~3.2重量%の範囲又は1.5~3.0重量%の範囲のナノ原線維セルロースの濃度が最も好適であることが見出された。いくつかの例では、1.6%以上、1.7%以上、1.8%以上、更には2.0%以上のナノ原線維セルロースの最終濃度などの、わずかに高い濃度を使用することが医療的用途では望ましい場合がある。したがって、ある特定の使用では、1.6~3.2重量%、1.7~3.2重量%、1.8~3.2重量%、又は更には2.0~3.2重量%の範囲の濃度が望ましい場合がある。最終濃度は、オートクレーブ処理後の濃度を指し得る。
【0088】
分解プロセスでは、セルロース性分散体は、pH、乾燥物質含有量、レオロジー特性、及び濁度などの1つ以上の特徴又はパラメータについて監視及び/又は分析され得る。これは、プロセスから採取された試料から、及び/又はインライン若しくはオンラインで接続され得る1つ以上の好適な監視デバイスを使用することによって、実行され得る。
【0089】
分解後及び/又はオートクレーブ処理前に、形成されたヒドロゲルは、視覚的外観、pH(ISO6588-1:2020)、乾燥物質含有量(Mod.ISO638-2(2021))、レオロジー特性、濁度、エンドトキシン、細菌及び真菌(好気性及び嫌気性)などの1つ以上の特徴又はパラメータについて分析され得る。
【0090】
プロセス又はその一部は、好ましくは、制御された相対湿度パーセンテージ(RH%)、温度、圧力差、浮遊粒子、洗浄及びその制御(クリーンカード)、アクセス及び衣類の制限を含み得る、ISO14644規格などに従って、清浄な製造室条件で実行される。調製方法は、好ましくは、純粋な、清浄な、及び/又は滅菌された材料、試薬、バイアル、シリンジ、容器、及びデバイスを使用して実行される。任意の添加された水は、好ましくは、超純度グレードである。
【0091】
分解は、ナノ原線維セルロースの所望の特性が得られるまで実行され、これは、いくつかの分解作業を実行すること、並びに/又はデバイスの設定及び/若しくはプロセス条件を調整することを必要とし得る。
【0092】
一実施形態では、得られたナノ原線維セルロースが、22±1℃の水性媒体中0.5重量%の粘稠性で、プレート形状を使用する回転式レオメータによって決定した、1~40Paの範囲の貯蔵弾性率を提供するまで、事前精製されたセルロースパルプは分解される。一実施形態では、得られたナノ原線維セルロースが、22±1℃の水性媒体中0.5重量%の粘稠性で、翼形状を使用する回転式レオメータによって決定した、0.7~20Paの範囲の貯蔵弾性率を提供するまで、事前精製されたセルロースパルプは分解される。
【0093】
一実施形態では、得られたナノ原線維セルロースが、22±1℃の水性媒体中0.5重量%の粘稠性で、プレート形状を使用する回転式レオメータによって決定した、1500~50000Pa・sの範囲のゼロ剪断粘度、及び2~15Paの範囲の降伏応力を提供するまで、事前精製されたセルロースパルプは分解される。
【0094】
一実施形態では、得られたナノ原線維セルロースが、1~100nmの範囲、例えば、1~50nm又は10~50nmの範囲などの、100nm以下の原線維及び/又は原線維束の数平均直径を有するまで、事前精製されたセルロースパルプは分解される。
【0095】
組織を支持するために、及び/又は充填物を提供するためになどの、ヒドロゲルを体内に挿入することを伴う使用では、ヒドロゲルに医薬品又は他の活性剤などの活性剤を含むことは、必要ではないか、又は更に望ましい。これらの目的のために、任意の活性剤の特定の放出プロファイルを提供するそのような形態でヒドロゲルを提供する必要はないが、代わりに、ヒドロゲルは、本使用を支援し、その特性が長時間の間維持される特性を呈するように調製され得る。ヒドロゲルが標的の体内に薬剤を提供すること、又はヒドロゲルの含有量が経時的に変化することは望ましくない。
【0096】
その最も単純な形態の医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルは、ナノ原線維セルロースと、水、又は水性生理食塩水及び/若しくは緩衝溶液と、からなる。医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルは、ナノ原線維セルロースと、水、又は生理学的な生理食塩水などの水性食塩水及び/若しくは緩衝溶液と、のみからなり得る。例えば、インプラント又は充填物としてのヒドロゲルは、そのような目的のために支持を与える「空の」ヒドロゲルとして使用され得る。一例は、例えば、先天性変形又は外傷若しくは疾患後の顔再建、女性の骨盤臓器の脱出、乳房の再建及び増強、ヘルニア修復、括約筋修復、及び失禁のための、皮膚充填物である。そのような空のヒドロゲルは、生物、組織、又は細胞に影響を与え得る、薬物、他の生体活性物質、例えば、酵素、ビタミン、植物化学物質、及び他の生体活性化合物などの活性薬学的成分(API)などの活性剤を含まない。
【0097】
しかしながら、ヒドロゲルは、無機塩、無機イオン、及び/又は緩衝剤などの1つ以上の塩、緩衝剤、及び/又は同様のものなどの非活性剤を含んでもよく、これらは、体内の好適な生理学的条件を提供し、及び/又はヒドロゲルを、身体、組織、若しくは標的と適合するように調整することができるが、好ましくは、身体、組織、及び/又は標的において生体活性効果を誘導することは意図されない。一例では、医療用ヒドロゲルは、生理学的生理食塩水溶液に基づく。生理学的生理食塩水などの溶液は、標的においてヒドロゲルの安定性を促進し得、望ましくない浸透圧効果を回避するのに役立ち得る。生理学的生理食塩水は、およそ0.9重量%の塩化ナトリウムの水溶液であり得る。緩衝液などの水溶液のpHは、6.5~7.5の範囲などの、約7であり得る。カルシウム、バリウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、金、白金、及びチタンのカチオンなどの多価金属カチオンは、NFCをイオン的に(非共有結合的に)架橋するために使用され得、ヒドロゲルの剛性を増加させるために使用され得る。非活性剤は、ヒドロゲルの乾燥含有量から計算して、0.1~2.0%又は0.1~1.0%の範囲などの、2.0重量%以下、又は1.0重量%以下、又は0.5重量%以下の総量で添加され得る。可能性のある非活性剤は、事前精製されたセルロースパルプを分散させるステップで提供され得る。
【0098】
一実施形態では、医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルは、治療剤又は生体活性剤などの活性剤を含まない。対応して、調製方法は、そのような活性剤を含むことを含まない、すなわち、調製は、活性剤の不在下で実行され得る。得られた、及び好ましく提供された医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルは、活性剤を含まない。方法は、活性剤を含まずに又は添加することなく、分解デバイスから医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルを回収し、好ましくは容器、シリンジ、若しくは他のアプリケータに適用すること、及び/又はそれらに充填することを含み得る。
【0099】
他の例では、医療グレードのNFCヒドロゲルは、薬物化合物、生物学的治療剤、治療用ペプチド及びタンパク質、細胞外小胞、及び/又は細胞などの治療剤などの、活性剤又は生体活性剤を含み得る。そのような薬剤は、ヒドロゲルを体内に挿入することを伴う使用において望ましくない場合がある。
【0100】
いくつかの例では、方法は、得られたナノ原線維セルロースヒドロゲルに1つ以上の更なる物質を添加することを含む。物質は、治療剤などの生体活性物質、又は他のポリマーなどの構造的物質、及び/又はヒアルロン酸などのゲル形成剤、又は二価金属カチオンなどの架橋剤であり得る。
【0101】
ナノ原線維セルロースは、唯一の高分子材料及び/又は唯一のセルロース性材料などの、ヒドロゲル中唯一のマトリックス材料であり得る。しかしながら、いくつかの例では、NFCに加えて、ナノ結晶性セルロース、ヒアルロナン、ヒアルロン酸及びその誘導体、ペプチド系材料、エラスチン様タンパク質などのタンパク質、エラスチン様タンパク質-ヒアルロン酸(ELP-HA)、アルギン酸塩又はポリエチレングリコールなどの他の多糖類などの、1つ以上の他の高分子材料を含むことも可能である。ナノ原線維セルロースが、構造的安定性を提供する半相互貫入ネットワーク(半IPN)を形成する組成物が得られる場合がある。総組成物中の他の高分子材料の乾燥重量としての含有量は、40~60%(w/w)、又は10~30%(w/w)、又は10~20%(w/w)などの、20~80%(w/w)の範囲にあり得る。例えば、ヒアルロン酸若しくはヒアルロナン、又はそれらの誘導体が、それらの特性を理由として、例えば、軟骨修復用途に有用な特性を提供するために含まれ得る。
【0102】
NFCヒドロゲルは、バイアル、ボトル、チューブなどの好適な容器内、又はシリンジ若しくは他の適用デバイス内で提供され得る。一実施形態では、NFCヒドロゲルはシリンジ内に提供される。NFCヒドロゲル及び/又は容器は、オートクレーブ処理、ガンマ線照射などの照射、又は任意の他の適用可能な滅菌方法を使用することなどによって、滅菌され得、及び/又は滅菌されて提供され得る。容器は、密封され得るか、又は密封された滅菌パッケージに梱包され得る。
【0103】
本開示は、本明細書に開示の方法によって得られる医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルを提供する。
【0104】
本開示は、医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルであって、1.45~3.0重量%などの1.4~3.4重量%の範囲のナノ原線維セルロースの濃度を有する、木質系などの植物系ナノ原線維セルロースヒドロゲルを含み、ナノ原線維セルロースが、100nm以下の原線維及び/又は原線維束の数平均直径、並びに22±1℃の水性媒体中0.5重量%の粘稠性で、プレート形状を使用する回転式レオメータによって決定した、1~40Paの範囲の貯蔵弾性率を有する、医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルを提供する。あるいは、貯蔵弾性率は、翼形状を使用することによって測定された値で提示され得、0.7~20Paの範囲にある。ナノ原線維セルロースは、好ましくは、化学的及び/又は酵素的に修飾されていない。ナノ原線維セルロースの濃度は、ナノ原線維セルロースが未希釈及び/又は未濃縮であるなど、製造後に変更されないことが好ましい。
【0105】
一実施形態では、ナノ原線維セルロースは、化学的及び酵素的に修飾されていないナノ原線維カバノキセルロースを含む。好ましくは、ナノ原線維セルロースは、化学的及び酵素的に修飾されていないナノ原線維カバノキセルロースからなる。カバノキナノ原線維セルロースは、医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲル中唯一のセルロース性材料であり得、医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲル中唯一の高分子材料及び/又は原線維材料であり得る。医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルは、好ましくは、繊維性セルロースなどの任意の繊維性材料を含有しない。
【0106】
ナノ原線維セルロースの使用
本医療グレードのNFCヒドロゲルは、外部又は内部で使用され得る。外部使用としては、例えば、皮膚又は他の組織上にヒドロゲルを適用する局所使用などの、創傷又は他の損傷の治療が挙げられる。外部使用は、例えば、患者の応急処置使用を含み得、医療グレードのヒドロゲルが、損傷した領域を直ちに覆い、保護し、保湿するために適用され得る。ヒドロゲルは、患者が更なる医療ケアに運ばれるまで、効率的な保護を提供することができ、ヒドロゲルは、損傷領域に残留物を残すことなく、単純に除去することができる。
【0107】
ヒドロゲルは、手で成形可能であるなどの成形可能であり得るか、又は特性が外部使用に有用である注射可能であり得る。ヒドロゲルは、シリンジ若しくは他の適用デバイスから、又は密封されたパッケージから、損傷した領域に直接適用可能であり得る。創傷の例としては、真皮中及び/又はその下の組織の深い創傷、及び火傷が挙げられる。本ヒドロゲルの剛性は、特定の成形性を提供し、深い創傷の場合などの緊急事態の場合などに、損傷領域を迅速かつ安全に覆うことを可能にする。更なる損傷及び汚染を防止することができる本医療グレードのNFCヒドロゲルは、出血を防止し、創傷においてそのような状態を提供するのに役立つ。特に、ヒドロゲルが手で成形される場合に得られる温度の上昇による、ヒドロゲルの剪断減粘性は、ヒドロゲルを創傷又は他の損傷領域上に成形するのに役立つ。ヒドロゲルは、パッケージ又はアプリケータデバイスから損傷領域に適用した後に成形することができるので、ヒドロゲルの滅菌部分が、損傷領域を覆い、その上に留まり、例えば、損傷領域上に広がり、かつより良好に固まり、損傷領域に付着するように、ヒドロゲルは上及び/又は側面から成形される。したがって、汚染物質は、損傷領域に侵入することはできない。アプリケータデバイスは、シリンジ又は他の好適なアプリケータデバイスであり得、これは、適用されるヒドロゲルの特定の形状、例えば、シート様又は平らな形状を得るための特定のノズルを有し得、より大きな領域を即座に覆うのに有用であり、手動成形中に損傷部位において、ヒドロゲルが汚染されるリスクを減少させる。
【0108】
ナノ原線維セルロースヒドロゲルは、例えば、注射、外科手術、又は他の侵襲的方法などの任意の好適な方法で、対象の体内に注射、インプラント、又は挿入され得る材料を指す、インプラント可能な材料として、内部的に体内で使用され得る。本使用では、注射が好ましい。非侵襲的な方法で材料を体腔に挿入することは、除外される場合がある。そのような使用では、身体に入れる任意の材料は、多くの点で絶対に安全である必要があるので、医療グレード特性が、特に明白である。
【0109】
本使用及び方法では、医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルは、長期間体内に留まり、28日以上、2ヶ月以上、3ヶ月以上、又は6ヶ月以上などの14日間以上、インプラント可能材料として体内で使用するために提供され得る。実験的に証明されているように、医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルは、忍容性が良好であり、体内でその形状を維持するので、そのような長期使用に好適である。
【0110】
本出願は、例えば、皮膚又は他の表面組織を通じて、例えば、インプラント若しくはその一部として、及び/又は充填物として、例えば、皮膚充填物として、粘弾性補充物として、又は障壁として、体内の標的へなどの体内へと、材料を配置することを伴う、使用及び方法を含む。本材料は、非吸収性であり、非吸収性インプラント、充填物、補充物、及び障壁を提供することを可能にする。
【0111】
本医療グレードのヒドロゲルは、例えば、骨空洞へのヒドロゲルの標的化された注射を可能にし、したがって、注射部位の近くに存在し得る任意の神経及び/又は任意の他の軟質部分を圧迫するリスクを伴わない、充填及び/又は強化を可能にする。
【0112】
本明細書で使用される場合、「皮膚充填物」という用語は、軟組織を補正又は変化させるために、皮膚の下又は皮膚層に配置される材料を示すために使用される。皮膚充填物は、脂質異常症、病理学的萎縮、外傷に起因するボリュームの損失を被り得る組織を増強するために、又は例えば、知覚される欠陥及び老化の影響に対処するために美容剤として、使用され得る。
【0113】
本医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルは、ヒドロゲルを体内に挿入することを含む方法で使用され得る。挿入は、外科手術的なインプラント、注射、又は挿入を含み得る。注射は、皮膚及び/又は他の組織などの身体を外科手術的に治療する必要なく、材料を所望の標的に挿入することを可能にする。ヒドロゲルは、所望の形態及び所望の量で注射され得、注射中に、場合によっては、材料が皮膚の下でどのように形成されるかを見ることが可能であるので、本ヒドロゲルは、注射の制御を可能にする。これは、例えば、ヒドロゲルが充填物として使用される形成外科などの審美的用途において特に有利である。
【0114】
一例では、ヒト又は非ヒト動物であり得る、インプラント可能な材料で身体の治療を必要とする対象を治療するための方法は、
-好ましくは、インプラント可能な材料での身体の治療を必要とする対象を認識することと、
-医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルを提供することと、
-医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルを対象の体内に注射、インプラント、又は挿入して、好ましくは、組織を支持する及び/若しくは充填するインプラント、又は皮膚充填物などの充填物を体内に提供することと、を含む。医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルは、体内の標的に注射又は挿入され得る。対象を検査し、標的にインプラント、充填物、及び/又は粘弾性補充物を提供するなどの治療の必要性を認識した後、標的は、認識及び/又は選択され得る。標的は、表皮、真皮、若しくは皮下組織などの皮膚、又はそれらの接合部、又は筋肉、脂肪組織、軟骨、骨、若しくはそれらの2つ以上の接合部、又はそれらの1つ以上に近接する部位であり得るか、又はそれらを含み得る。本明細書で論じられる組織は、前述のうちの1つ以上を含み得る。
【0115】
治療は、好ましくは、疾患、障害、事故に起因する状態などの医療的状態及び/又はその症状を治癒又は緩和することなどの治療を目的とする、医療的治療であり得る。組織支持インプラント、又は組織支持充填物、又は他の充填物、又は粘弾性補充物などのインプラントは、医療的治療に使用され得る。
【0116】
治療は、医療的又は非医療的であり得、形成外科手術、及び例えば、人体の修復、再建、又は変化を伴う外科手術的専門分野である、形成外科手術のような手術を含み得る、審美的治療であり得る。形成外科手術は、再建外科手術及び/又は美容外科手術であり得る。再建外科手術は、身体の一部を再建するか、又はその機能を改善することを目的とする。美容(又は審美的)外科手術は、外観を改善することを目的とする。
【0117】
本開示は、注射可能な、挿入可能な、及び/又はインプラント可能な材料として体内で使用するための医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルを提供する。インプラント可能な材料は、組織支持材料などの支持材料であり得、組織を機械的に支持することを指し得る。
【0118】
一実施形態は、組織支持インプラントなどのインプラントとして体内で使用するための医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルを提供する。一例では、治療は、対象の体内の標的への組織支持インプラントとしての医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルの注射、インプラント、又は挿入を含む。
【0119】
一実施形態は、組織支持充填物などの充填物として体内で使用するための医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルを提供する。一例では、治療は、対象の体内の標的への組織支持充填物としての医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルの注射、インプラント、又は挿入を含む。
【0120】
一実施形態は、皮膚充填物として体内で使用するための医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルを提供する。一例では、治療は、対象の体内の標的への皮膚充填物としての医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルの注射、インプラント、又は挿入を含む。標的は、顔(顔の標的)、頭、首、胸、乳房、腕、手、指、腹部、骨盤領域、背中、お尻、性器領域及び/又は性器、脚、足及び/又はつま先などの身体の任意の好適な部分を含み得る。そのような場合、標的に注射することは、増強、成形、強調、及び/又は他の目視可能な効果であり得る、目視可能な効果を引き起こすことができる。
【0121】
皮膚充填物は、唇、頬、若しくは顎などの顔領域、又は手の甲などの増強などのための増強充填物であり得る。皮膚充填物は、顔の脂肪損失、又は他の顔の欠陥、又は身体の他の部分の脂肪損失の徴候の修復及び補正に使用され得る。皮膚充填物は、しわ及びにきび跡などの輪郭欠損の補正に使用され得る。皮膚充填物はまた、乳房サイズを増加させるため、お尻のサイズを増加させるため、足のふくよかさを増加させるため、骨、腱、靭帯、若しくは筋肉にインプラントするため、及び/又は眉間(眉間の領域)、鼻、眼窩周囲(目周辺)、額、若しくは首に注射するためなどの、他の身体輪郭のために、及び強化目的で使用され得る。言及された充填物のうちのいくつかはまた、インプラントとみなされ得る。
【0122】
粘性補充物、又は粘弾性補充物は、変形性関節症、又は他の関節状態などの関節炎の治療に使用され得る。関節は、天然関節又は人工関節であり得る。粘弾性補充法は、本ヒドロゲルを可動関節に注射することを含み得る。目的は、滑液のレオロジー特性を回復させ、それによって機械的、鎮痛的、抗炎症的、及び軟骨保護的効果を生じることである。本NFCヒドロゲルは、そのような使用に好適なレオロジー特性を呈することが見出され、材料は、身体によって十分に忍容される。本NFCヒドロゲルは、粘性補充物において現在使用されているヒアルロン酸及びその誘導体と置き換えるために使用され得る。
【0123】
粘弾性補充物は、例えば、適用の容易さ及びヒアルロン酸塩構成要素の修復及び膝関節への補充によって症状を緩和する理論的能力を理由として、膝変形性関節症の緩和的治療に使用され得る。
【0124】
一実施形態は、関節炎又は他の関節状態の治療のための粘弾性補充物として使用するための医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルを提供する。一例では、治療は、対象の体内の標的への粘弾性補充物としての、医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルの注射、インプラント、又は挿入を含む。標的は、関節炎又は他の関節状態を患う関節又は別の標的であり得る。
【0125】
ナノ原線維セルロースヒドロゲルは、外科手術における障壁剤(barrier agent)として使用され得る。外科手術後の癒着は、重篤な臨床的合併症につながり得る。障壁剤は、内部組織及び臓器が治癒している間に、障壁で分離することによって、外科手術後の異常な内部瘢痕を低減するためなどの、術後の癒着の防止に使用され得る。本ヒドロゲルは、障壁を形成するために、外科手術中に、すなわち創傷閉鎖前に標的に挿入され得るか、又はヒドロゲルは、外科手術後、例えば創傷閉鎖後に標的に注射されるなど、挿入され得る。外科手術中にヒドロゲル又はインプラントを挿入することも可能である。シート様ヒドロゲル形態を得るために、ノズルを備えた特定のアプリケータデバイスが使用され得る。
【0126】
一実施形態は、外科手術における障壁剤として使用するための医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルを提供する。一例では、治療は、対象の体内の標的への外科手術における障壁剤としての医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルの注射、インプラント、又は挿入を含む。外科手術下での標的は、本明細書で論じられる任意の組織又はそれらの組み合わせであり得る。同様であり得るか又は異なり得る2つの組織などの2つの領域を分離し得、一緒に組織の癒着を防止し得る障壁が、標的内に形成される。
【0127】
開示されるものは、医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルを含むインプラントである。インプラントは、本明細書に開示のように、例えば、注射することによって、すなわち、注射可能なインプラント若しくは注射されるインプラントによって、身体に挿入可能であり得るか若しくは挿入され得るか、又は外科手術的に挿入され得る。インプラントは、ヒドロゲルを標的に注射することによって形成され得る。同様に、開示されるものは、身体に挿入可能であり得るか又は挿入され得る、すなわち、注射可能な若しくは注射されるか、又は外科手術的に挿入される充填物若しくは障壁であり得る、医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルを含む充填物又は障壁である。医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルは、注射針を装備し得るシリンジなどの、ヒドロゲルがすぐに使用できる、すなわち、注射可能であるか又は挿入可能である、適用デバイスに提供され得る。
【0128】
開示されるものは、医療グレードのナノ原線維セルロースヒドロゲルを製造するための、カバノキパルプなどのカバノキセルロースの使用である。本開示はまた、本明細書に開示の製品のうちのいずれかを調製するための、及び本明細書に開示の使用のうちのいずれかのための、ナノ原線維セルロースの使用を提供する。
【実施例0129】
実施例1:医療グレードのヒドロゲルの調製及び特徴評価
異なる濃度を有する化学的及び酵素的に修飾されていないカバノキNFCの様々なバッチを、まず、精製ミルで事前精製し、濃度を調整し、その後、ヒドロゲルの所望の特性が得られるまで、マイクロ流動化機に数回通過させて分解させることによる本方法を用いて調製した。ヒドロゲルは、濃度を調整することなく、又は任意の追加の物質を添加することなく、分解から直接得、オートクレーブ処理した。
【0130】
ヒドロゲル(元来1.5重量%、2重量%、及び3重量%)を、0.5重量%の濃度まで希釈して、翼形状又は20mmのプレート形状のいずれかを備えるRH-1回転式レオメータ、及び特定の測定プログラムを22℃で使用することによって、レオロジー特性について特徴評価した。ブルックフィールド粘度は、改変SCAN-P50:84に従って、ブルックフィールド粘度計で測定した。様々な試料及び製造バッチからの特性を要約し、表1に提示する。最後の試料からの測定値は、括弧内に提示する。
【表1】
【0131】
好気性細菌(Petrifilm)、嫌気性細菌(Petrifilm)、好気性酵母及びカビ(Petrifilm)、嫌気性酵母及びカビ(Petrifilm)は全て、改変SFS-EN ISO8199で測定して、0CFU/gであった。エンドトキシン(LALカイネティック比色法)は、2.07EU/ml(Ph. Eur. 2.6.14)であった。ヒドロゲルのpHは、6.2~7.8の範囲にあり、ほとんどが6.7~7.1の範囲にあった。
【0132】
実施例2:動物試験
本明細書に開示されるように調製したカバノキ系天然(化学的及び酵素的に修飾されていない)ナノ原線維セルロース(nNFC)を試験に使用した。nNFCは、国際規格EN ISO13485:2016“Medical devices. Quality management systems. Requirements for regulatory purposes”の要件を遵守する品質管理システム下で製造した。
【0133】
製品は、目視可能な繊維又は粒子を含まない、わずかに不透明な白色の半固体均質ヒドロゲルであった。物理的特性及び微生物汚染を分析し、細菌性エンドトキシンを≦5.5EU/g(Ph.Eur.2.6.14)含有する製品を滅菌した(Ph.Eur.2.6.1)。製品を、オートクレーブ処理によって滅菌した10mLシリンジに充填した。
【0134】
動物試験
この研究の目的は、皮下組織における支持を与えるインプラントとしてのnNFC(天然ナノ原線維化セルロース)ヒドロゲルの安定性、及び注射された試験品目周辺で可能性のある異物組織反応を明らかにすることであった。肉眼的観察に基づく異物組織反応評価。
【0135】
材料及び方法
研究設計
以下の表2に従って、研究を実施した。
【表2】
【0136】
試験システム
種及び株:ラットHsd:SD/TY
動物の産地:University of Turku,Central Animal Laboratory,PharmaCity Unit
品質:SPF(特定の病原体を含まない)
順応:動物は以前同じ施設にいたので、適応期間は必要ではなかった。
【0137】
動物識別:動物は、尾部付番によって個々に識別され、尾部の印は、研究全体を通して維持した。ケージは、それぞれ、研究番号、動物番号、及び尾部の印、性別、株、及び生涯研究期間を示すケージカードで印をつけた。
【0138】
研究開始時の研究における動物の数:雄ラット6匹
研究開始時(初回投与日)の重量及び年齢
重量232g(217g~248g;SD12.9g)
8週齢
ランダム化及びグループ化:ランダム化又はグループ化は必要ではなかった。
【0139】
収容条件
動物を、部屋番号317(BioCity animal unit,University of Turku)に収容した。室温は21±3℃、相対湿度は主に40~60%であった。照明は、人工的、12時間の明所、12時間暗所(暗所17:00~07:00)であった。
【0140】
動物飼育:動物は、動物実験の標準的な操作手順に従って飼育した。
【0141】
ケージ当たりの動物の数3匹の動物/ケージ
【0142】
試験品目
試験品目として、1.5重量%の滅菌nNFCを使用した。試験品目を室温の密閉容器で貯蔵し、遮光した。
【0143】
nNFCヒドロゲルは、すぐに使用できる製剤として入手可能であった。10mlプラスチックシリンジで、ゲルを送達した。より良好な注射精度(0.2ml)を達成するために、注射直前に、ゲルを新しい滅菌シリンジ(Terumo(登録商標)2.5mL、ロット171209l、有効期限2022-11)に無菌で移した。
【0144】
実験手順
秤量:研究0、7、14、21日目、及び剖検前に、動物を秤量した。
【0145】
投与:s.c.注射中に、動物を麻酔(イソフルラン3%)下に置いた。注射前に、B Braun Isis Cordless Clipperを使用して毛皮を刈り込み(1cm×1cm)、70%エタノールで皮膚を消毒した。
【0146】
Medoject(登録商標)0.8×40mm 21G×11/2インチ針(ロット170806、有効期限2022-07)を使用して、0.2ml(左脇腹)及び0.2ml(右脇腹)/ラットの試験品目を注射した。ゲル注射後に、結節がはっきりと観察された(図1)。注射部位の総数は、12であった。
【0147】
図1Aは、注射直後のゲル結節を示す(両側)。図1Bは、注射直後のゲル結節を示す。
【0148】
ラット当たりの注射したゲル重量は、170mg~237mgであった(平均193mg、STDEV16.7mg)。17×0.2mlの注射の重量を秤量することによって、注射体積を推定する(試料採取は、sc.注射を実施したのと同じ方式で行った)。
【0149】
臨床検査:総合健康状態について、1日2回(午前及び午後)、週末は1日1回、動物を観察した。
【0150】
注射直後(試験0日目)、及び研究1、7、14、及び28日目に、デジタルキャリパを使用して、注射部位、結節を測定した(可能な限りの長さ、及び幅、及び高さ)。
【0151】
剖検:投与の28日後に、COによって動物を安楽死させ、ゲル周辺の組織反応の肉眼的評価を実施した。ゲルを除去し、秤量した。
【0152】
試料採取:剖検時(D28)に可能な更なる分析のための血液(血漿)試料。血液試料の結果は、この報告に含まれない。
【0153】
実験終了及び試料採取
28日目に、COを使用して、研究設計に従って動物を剖検した。心臓穿刺から最終試料を採取した(400~500μlの血漿では2ml)。
【0154】
30分以内に、血漿分離のために血液を遠心分離した(15分、2700G、RT)。血漿試料をプラスチックチューブに移し、凍結し、-20℃で貯蔵した。
【0155】
注射部位の任意の肉眼的異常の明細を記録し、ゲル結節を測定した(可能な限りの外部測定)。残留ゲルを皮下組織から慎重に除去し、秤量した。
【0156】
結果
臨床徴候及び死亡率
全ての動物は良好な状態で調査され、任意の異常な臨床徴候は、実験期間中に観察されなかった。
【0157】
重量
表3は、実験期間中の動物の重量及び重量増加を提示する。
【0158】
【表3】
【0159】
表4は、測定結果を表面(mm)及び体積(mm)として提示する。全ての時点での全ての結節/デポを測定することはできなかった。各測定時点での平均デポ/結節サイズは、mm及びmmとして計算している。
【0160】
【表4】
【0161】
表5は、注射28日後の除去されたゲルデポの重量を示す。
【0162】
【表5】
【0163】
肉眼的観察
皮膚を開くと、全ての注射部位に明らかな注射部位が目視可能であった。肉眼的観察を表6に提示し、典型的な肉眼的観察を図2A及び図2Bに提示する。図2Aは、注射28日後のNFC注射部位(1A)の肉眼的観察を示す。図2Bは、秤量のために皮下組織から除去した後のNFCヒドロゲルを示す。
【0164】
注射28日後の剖検では、全ての注射部位ははっきりと観察可能であり、ゲルは目視可能であった。28日の時点の注射部位で、いずれの異常な組織反応も肉眼的に観察されなかった。カプセル形成は、肉眼的に観察されなかった。
【0165】
【表6】
【0166】
考察
6匹のラットの両脇腹に、nNFCゲルを注射した(s.c.;2×0.2ml)。nNFCゲル注射によって引き起こされる皮膚結節の外側寸法を、注射直後(D0)、並びにD1、D7、D14、及びD28に測定した。研究28日目に動物を安楽死させ、ゲル周辺の組織反応を肉眼的に評価し、ゲル残留物を皮下組織から除去し、秤量した。
【0167】
動物は、研究の間を通して良好な条件で生存した。研究中、異常な臨床徴候は観察されず、重量増加は、全ての動物で正常であった。
実験中、結節の増加は観察されず、これは、nNFCゲルの正常な軽度の異物組織反応を示した。重度の異物組織反応が存在する場合、研究7~14日目に、結節サイズは、はっきりと増加したであろう。デポ/結節測定データ(表面積及び体積データ)に基づいて、ラットの皮下組織で、ゲルは安定であった。28日目の実験期間後、平均表面積は、ほんの少し大きくなったが、体積はほんの少し小さくなった。ゲルデポは、高さを損失するが、その表面積は増加することを、これは示唆しており、ゲルの形状は、皮下組織の皮膚の下でほんの少し変化する。
【0168】
測定データに基づいて、nNFCゲルの安定性を評価することができ、nNFCゲルは、皮下組織において非常に安定である。
【0169】
全ての注射されたゲルデポは、研究28日目に見出された。
【0170】
デポの重量に基づいて、ゲルは、28日の実験期間中に重量の54%を損失した。水がnNFCゲルの主な要素であるため、これは正常な組織反応であり、水はゲルを取り巻く組織にゆっくりと吸収される。しかしながら、nNFCは、注射部位に安定であるように思われ、注射後のゲルの位置に変化は存在しなかった。
【0171】
肉眼的観察に基づき、nNFCゲルは、重度の異物組織反応には影響を及ぼさず、明らかなカプセル形成は、観察されなかった。nNFCゲルは、ラットの皮下組織から除去するのが容易であり、組織とゲルとの間の界面は、明らかであった。
【0172】
結論として、nNFCゲル1.5重量%は、肉眼的に目視可能な異物組織反応を伴わずに、注射28日後の注射部位にはっきりと見出された。
図1A
図1B
図2A
図2B