(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039628
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】キングピンアセンブリ
(51)【国際特許分類】
B62D 53/12 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
B62D53/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023142971
(22)【出願日】2023-09-04
(31)【優先権主張番号】10 2022 123 057.0
(32)【優先日】2022-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】519279579
【氏名又は名称】ヨースト-ヴェアケ ドイチュラント ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】JOST-Werke Deutschland GmbH
【住所又は居所原語表記】Siemensstrasse 2, 63263 Neu-Isenburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ホセ マヌエル アルグエラ
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン ハーバー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ギッツェン
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ シュロットハウアー
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ボッキウス
(72)【発明者】
【氏名】パウル ハンゼン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】摩耗時および後付け時または修理時にも確実な連結を簡単に確保するキングピンアセンブリを提供する。
【解決手段】キングピン2と、ピボット軸受3と、結合手段を間接的または直接的に保持するための、ピボット軸受に結合され、かつ旋回可能なホルダ4とを含んでおり、キングピンは、セミトレーラに組み付けるためのキングピンフランジ6を有しており、ピボット軸受は、キングピンに対して相対的に位置固定された軸受リング7または位置固定された軸受リングセグメントと、該軸受リングまたは該軸受リングセグメントに対して回転可能な軸受リング8または回転可能な軸受リングセグメントを有しており、ホルダは、回転可能な軸受リングに位置固定されており、ホルダに、回転可能な軸受リングに対して軸方向で離間した、キングピンに直接的に当接するサポート要素が結合されており、該サポート要素は、回転軸線に関して、半径方向Rで長さ調節可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結車両のセミトレーラ用のキングピンアセンブリ(1)であって、
回転軸線(A)を定義するキングピン(2)と、
前記回転軸線(A)を中心として配置されたピボット軸受(3)と、
特に電気的および/または電磁的および/またはニューマチック式および/またはハイドロリック式の結合手段を間接的または直接的に保持するための、前記ピボット軸受(3)に結合され、かつ前記回転軸線(A)を中心として旋回可能なホルダ(4)と
を含んでおり、
前記キングピン(2)は、前記セミトレーラに間接的または直接的に前記キングピン(2)を組み付けるためのキングピンフランジ(6)を有しており、
前記ピボット軸受(3)は、前記キングピン(2)に対して相対的に位置固定された軸受リング(7)または位置固定された軸受リングセグメントと、前記位置固定された軸受リング(7)または前記位置固定された軸受リングセグメントに対して相対的に回転可能な軸受リング(8)または回転可能な軸受リングセグメントを有しており、
前記ホルダ(4)は、前記回転可能な軸受リング(8)もしくは前記回転可能な軸受リングセグメントに位置固定されており、
前記ホルダ(4)に、前記回転可能な軸受リング(8)または前記回転可能な軸受リングセグメントに対して軸方向で離間した、前記キングピン(2)に直接に当接するサポート要素(9)が結合されており、該サポート要素(9)は、前記回転軸線(A)に関して、半径方向(R)で長さ調節可能である、
キングピンアセンブリ(1)。
【請求項2】
前記サポート要素(9)は、前記キングピン(2)に接触している滑動面(10)を有している、請求項1記載のキングピンアセンブリ。
【請求項3】
前記滑動面(10)は、摩擦を低減する材料の表面により形成されている、請求項2記載のキングピンアセンブリ。
【請求項4】
前記サポート要素(9)は、少なくとも前記滑動面に沿って、特に熱可塑性のプラスチックから成る、特にポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリオキシメチレン(POM)、アクリルニトリル-ブダジエン-スチロール(ABS)から成るプラスチック母材を有している、請求項1から3までのいずれか1項記載のキングピンアセンブリ。
【請求項5】
前記キングピン(2)は、前記回転軸線(A)を中心として同軸に配置された、半径rを有する円筒周面(11)または該円筒周面(11)の少なくとも1つのセグメントを有しており、前記円筒周面に、前記サポート要素(9)が当接する、請求項1から4までのいずれか1項記載のキングピンアセンブリ。
【請求項6】
前記滑動面(10)は幾何学的に、前記サポート要素を、前記キングピンに対して相対的に、前記回転軸線に対して垂直な方向でセンタリングするように構成されている、請求項5記載のキングピンアセンブリ。
【請求項7】
前記滑動面(10)は、前記回転軸線(A)に対して垂直な平面においてV字形の輪郭を形成する、請求項5または6記載のキングピンアセンブリ。
【請求項8】
前記滑動面(10)は、半径r’を有する、凹状に湾曲させられた面として形成されており、前記半径r’は、r-5mm~r+5mmである、請求項5または6記載のキングピンアセンブリ。
【請求項9】
前記サポート要素(9)は、前記回転軸線(A)に関して半径方向(R)で長さ調節可能な結合要素(12)により前記ホルダ(4)に結合されている、請求項1から8までのいずれか1項記載のキングピンアセンブリ。
【請求項10】
前記サポート要素(9)は、前記回転軸線(A)に関して半径方向(R)に延びるねじ山付きロッド(13)により、前記ホルダ(4)に結合されている、請求項1から9までのいずれか1項記載のキングピンアセンブリ。
【請求項11】
前記ホルダは、横方向ブレース(14)を有しており、該横方向ブレース(14)に、前記長さ調節可能な結合要素(12)および/または前記ねじ山付きロッド(13)が支持されている、請求項9または10記載のキングピンアセンブリ。
【請求項12】
前記位置固定された軸受リング(7)もしくは前記位置固定された軸受リングセグメントは、前記キングピンフランジ(6)に直接に取り付けられている、請求項1から11までのいずれか1項記載のキングピンアセンブリ。
【請求項13】
前記位置固定された軸受リング(7)もしくは前記位置固定された軸受リングセグメントは、前記回転軸線(A)に関して半径方向内側に位置して配置されており、前記回転可能な軸受リング(8)もしくは前記回転可能な軸受リングセグメントは、前記回転軸線(A)に関して半径方向外側に位置して配置されている、請求項1から12までのいずれか1項記載のキングピンアセンブリ。
【請求項14】
前記ホルダ(4)に、前記回転軸線(A)に関して半径方向外方に向かって支持フレーム(20)が組み付けられており、該支持フレーム(20)に、前記回転軸線(A)の方向に突出するスペーサ部材(46)が配置されており、該スペーサ部材(46)は、前記支持フレーム(20)を間接的または直接的に前記セミトレーラにおいて支持するように構成されている、請求項1から13までのいずれか1項記載のキングピンアセンブリ。
【請求項15】
前記ホルダ(4)は、前記回転軸線(A)に関して半径方向外方に向けられた支持フレーム(20)として構成されており、該支持フレーム(20)に、前記回転軸線(A)の方向で突出するスペーサ部材(46)が配置されており、該スペーサ部材(46)は、前記ホルダ(4)を間接的または直接的に前記セミトレーラにおいて支持するように構成されている、請求項1から13までのいずれか1項記載のキングピンアセンブリ。
【請求項16】
前記回転可能な軸受リング(8)もしくは前記回転可能な軸受リングセグメントは、前記回転軸線(A)の方向に延びる円筒壁セグメント(16)を有しており、該円筒壁セグメント(16)に前記ホルダ(4)が位置固定されている、請求項1から15までのいずれか1項記載のキングピンアセンブリ。
【請求項17】
前記円筒壁セグメント(16)は、<2.1×rの接線方向の幅を有している、請求項16記載のキングピンアセンブリ。
【請求項18】
前記サポート要素は、前記回転軸線(A)に関して少なくとも半径方向(R)で弾性変形可能に形成されている、かつ/または前記半径方向(R)で作用するばね要素を有しており、これにより、前記サポート要素は、調節可能な予荷重下で前記キングピン(2)に当接している、請求項1から17までのいずれか1項記載のキングピンアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連結車両(Lastzug)のセミトレーラ用のキングピンアセンブリであって、回転軸線を定義するキングピンと、回転軸線を中心として配置されたピボット軸受と、特に電気的および/または電磁的および/またはニューマチック式および/またはハイドロリック式の結合手段を間接的または直接的に保持するための、ピボット軸受に結合され、かつ回転軸線を中心として旋回可能なホルダとを含んでおり、キングピンが、セミトレーラに間接的または直接的にキングピンを組み付けるためのキングピンフランジを有しており、ピボット軸受が、キングピンに対して相対的に位置固定された軸受リングまたは位置固定された軸受リングセグメントと、軸受リングまたは軸受リングセグメントに対して相対的に回転可能な軸受リングまたは回転可能な軸受リングセグメントとを有しており、ホルダが、回転可能な軸受リングもしくは回転可能な軸受リングセグメントに位置固定されている、キングピンアセンブリ。
【0002】
このようなキングピンアセンブリは、例えば欧州特許出願公開第3891051号明細書、欧州特許出願公開第1918179号明細書および独国特許出願公開第102004024333号明細書から公知である。
【0003】
牽引車両と、単にトレーラとも呼ばれるセミトレーラとは、トレーラトラックとも呼ばれる連結車両を形成する。牽引車両には、第五輪プレートが配置されており、この第五輪プレートに、セミトレーラの下面にあるキングピンが係合され、かつロックされる。第五輪プレートは、トレーラを連結するために、通常、走行方向で楔状に先細りして延びる走入開口を備えて形成されており、走入開口は、第五輪プレート内へのキングピンの支障のない走入および走出を保証する構造空間深さを有する自由な構造空間を有している。連結中に、トレーラは、キングピンが間接的または直接的に位置が固定されて組み付けられているトレーラプレートで、第五輪プレートの表面上を滑動し、これによって、鉛直方向での位置規定が行われる。側方のガイドは、連結中に走入開口内でロック位置への到達に至るまで強制的にガイドされているキングピンを介して保証される。走入開口は、下方に向かって、キングピンの長さにより規定されている。換言すると、走入開口の下側に位置する構成部材、例えば補強リブは、トレーラの連結および解結時に、キングピンにより捕捉され得ない。
【0004】
「鉛直方向」、「水平方向」、「上」および「下」のような用語は、本明細書において、別に異なることが明記されない限り、重力方向に関する。「軸方向」「半径方向」および「接線方向」という用語は、本明細書において、別に異なることが明記されない限り、キングピンにより定義されている回転軸線に関する。
【0005】
電気的かつ/または電磁的かつ/またはニューマチック的かつ/またはハイドロリック式の結合手段は、例えば同様に独国特許出願公開第102004024333号明細書に記載されているように、牽引車両とトレーラとの間の管路を接続するための差込み連結システムの一部である。差込み連結システムは、種々異なる構成で公知である。この差込み連結システムは、少なくともプラグおよびソケットを含み、通常はさらに、セミトレーラと牽引車両との連結もしくは解結時にプラグとソケットとの自動的な結合および分離のために用いられる別の構成部材も含んでいる。つまり用語「結合手段」は、この意味では、少なくとも1つのプラグまたはソケットを含んでいる。安全上の理由から、通常は、牽引車において、差込み連結システムの、流れをガイドする端部がソケットとして構成されるのに対して、セミトレーラには、対応するプラグが配置されている。特にソケットは、第五輪に、位置が固定されて走入開口の下側に配置されており、したがって、走入時にキングピンと衝突し得ない保護された領域にある。
【0006】
「ホルダ」という概念は、一方では複数部分から成る構成において、支持フレーム用の組付けソケットであると理解され、この場合、結合手段は、支持フレームに、ひいては間接的にホルダ(=組付けソケット)に保持されており、かつ他方では一体的な構成では、支持フレーム自体がホルダと呼ばれ、したがって結合手段はホルダ(=支持フレーム)に直接または間接的に保持されている。
【0007】
結合手段、つまり通常プラグは、一般的に支持フレームの下面に、または支持フレーム内で中空室内に配置されており、支持フレームは、水平方向の平面で見て楔形またはV字形の形状を有している。この形状は、楔形の走入開口に対して相補的に、支持フレームが走入時に常に第五輪に対して同一の水平方向の位置に位置調整されているように構成されており、これにより、プラグとソケットとの確実な結合が可能である。
【0008】
さらに、プラグは公知のように、鉛直方向でばね弾性的に支持フレームに対して支持されている、サポート要素に設けられたベースプレート上に配置されていてもよい。プラグとソケットとの結合部の最終的な製造に至るまでトレーラを連結する場合に、ばねにより負荷を加えられたベースプレートまたはプラグは、走入開口の領域における挿入補助部に押し付けられながらガイドされ、これによって、鉛直方向でも位置決めが自動的に行われ、ひいては例えば必要とされる高さ補償が保証されている。
【0009】
したがって、独国特許出願公開第102004024333号明細書からは、特に、差込み装置の支持フレームをV字形のフレーム構造体として形成することが知られており、このV字形のフレーム構造体の側部は、走入開口の角度に適合されている。下方に向かって、支持フレームから両側で側面が延びており、これらの側面は、キングピン側の端部において1つの共通の支持ウェブに移行している。支持ウェブは、キングピンの下側のカラーに当接し、発生する傾動モーメントをキングピンに導入する。これにより、キングピンおよびトレーラプレートに対して相対的な支持フレームの鉛直方向の位置が定義されており、これにより、連結のプロセスが上述のように、鉛直方向および水平方向のガイドにより確実に行われ得ることが確保されている。
【0010】
しかし、摩耗に起因して、特に後付けされるか、または交換されるキングピンアセンブリの場合には製造誤差に基づいて、結合要素とキングピンとの相対配置に変化が生じてしまい、この変化は、上述の高さ補償にもかかわらず、確実な連結を危うくする。したがって本発明の課題は、摩耗時および後付け時または修理時にも同様に確実な連結を簡単に確保するキングピンアセンブリを提供することにある。
【0011】
この課題は、請求項1記載のキングピンアセンブリにより解決される。
【0012】
本発明によれば、冒頭に述べたキングピンアセンブリが、ホルダに、回転可能な軸受リングもしくは回転可能な軸受リングセグメントに対して軸方向で離間した、キングピンに直接に当接するサポート要素が結合されており、このサポート要素が、回転軸線に関して半径方向で長さ調節可能であることによって改良されている。
【0013】
回転可能な軸受リングまたは回転可能な軸受リングセグメントは、位置固定された軸受リングまたは位置固定された軸受リングセグメントと共に、軸方向-半径方向-ピボット軸受、すなわちホルダおよび/または支持フレームのための上側の懸吊部を形成し、この懸架部は、ホルダまたは支持フレームのために専ら回転自由度を有している。ホルダの位置は、ピボット軸受により、半径方向および軸方向でキングピンひいてはトレーラプレートに対して相対的に規定されている。しかし、支持フレームが、その半径方向の構造長さおよび不都合なレバーに基づいて、プラグ側の自由な端部において、特に摩耗の発生時に下方に向かって傾くことがある。このことには、とりわけこれらの構成要素のできるだけ軽量な構造形式を考慮しなければならないので、軸受構造および支持フレームの補強によって部分的にしか対処することができない。したがって、サポート要素が設けられており、このサポート要素は、軸受リング/軸受リングセグメントの互いに合わせられた軸方向の滑動面の平面によって定義される、ピボット軸受の平面に対して軸方向で離間して、ホルダのための下側の支持部と、ひいてはキングピンに設けられた支持フレームとを形成することによって、傾斜に抗して作用する。これにより、上述したように、キングピンおよびトレーラプレートに対して相対的なプラグの鉛直方向の位置が定義されている。しかし、支持は、本発明によれば、直接に支持フレームの一体的な構成部材により行われるのではなく、半径方向で長さ調節可能であり、これによりホルダおよび支持フレームの傾斜のための調節可能性を提供する別個のサポート要素を介して行われる。このことは、例えば製造誤差、摩耗等を補償することができる、ソケットに対して相対的なプラグの鉛直方向の位置の微調整を可能にし、これによって、連結は通常のように確実に実施することができる。
【0014】
ここで、ピボット軸受のために、360°の周囲を有する位置固定された軸受リングおよび回転可能な軸受リングが使用されてもよく、それぞれ単に「軸受リングセグメント」が使用されてもよく、または軸受リングと「軸受リングセグメント」とから成る組み合わせが使用され得ることを述べておく。回転運動の自由度を保証し、かつ残りの全ての次元において位置固定するためには、基本的に軸受リングセグメントで十分である。なぜならば、大五輪は、いずれにせよ最大で約260°のピッチ円にわたる回転運動しか許容しないからである。しかし、完全なリング状の固定的な軸受リングおよび回転可能な軸受リングは、剛性がより高いという利点を有している。この剛性は、特に傾倒モーメントの発生時に、より正確な位置定義を確保し、したがって常に好まれる。
【0015】
サポート要素は、好ましくは、キングピンに接触する滑動面を有している。サポート要素が別個の構成部分であることにより、滑動要素としてのサポート要素の機能に関して簡単に最適化を行うことができる。このことは特に好適には、滑動面が摩擦を減じる材料の表面により形成されることにより行われる。滑動要素は、この意味では主に、摩擦を減じる材料から製造されていてもよく、この場合、中実材料であるか、またはこのような材料から成るコーティングを有している。摩擦を減じる材料は、摩擦学的に有効な充填剤、いわゆる乾燥潤滑剤、例えば好適にはグラファイト、PTFE、MoS2、h-BN、鉛、スズ等を含み、したがって、キングピンとの相互作用において、充填剤を有しない、通常は支持フレームのために使用されるアルミニウム材料または鋼材料に比べて、低い摩擦係数を有している材料を意味する。このような中実材料またはコーティングのための母材としては、例えばプラスチック、青銅またはアルミニウムが考えられる。
【0016】
したがって同様に好適には、サポート要素は、少なくとも滑動面に沿って、特に熱可塑性のプラスチック、特にポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリオキシメチレン(POM)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)から成るプラスチック母材を有している。
【0017】
キングピンは、好ましくは、回転軸線を中心として同軸に配置された、半径rを有する円筒周面またはこの円筒周面の少なくとも1つのセグメントを有しており、この円筒周面にサポート要素が当接している。ここでも同様に、第五輪の制限された回転角度に基づいて、円筒セグメントで十分であるが、通常、キングピンは、その軸方向の延在長さ全体にわたって1つの横断面を有しているか、もしくはその必然的なくびれ部に基づいて複数の円形の横断面を有しており、この意味では、サポート要素が支持され得る少なくとも1つの円筒周面を有していると云える。第五輪とのロックのための必然的なくびれ部が設けられているので、キングピンは選択的に、このキングピンの上側で、いわゆる上側のカラーにおいて、またはこのキングピンの下側で、いわゆる下側のカラーにおいて支持されていてもよい。
【0018】
滑動面は、好適には幾何学的に、サポート要素がキングピンに対して相対的に、回転軸線に対して垂直な方向でセンタリングされるような構成で形成されている。このことは有利には、滑動面が、回転軸線に対して垂直な平面内でV字形の輪郭を形成しているか、または滑動面が、半径r’を有する凹状に湾曲させられた面として形成されていることによって実現され、ここで半径r’は、r-5mm~r+5mm、さらに好適にはr-1mm~r+5mm、特に好適にはr~r+5mmである。両方の場合において、滑動面の位置は、キングピンの回転軸線または円筒面に関して接線方向で定義されている。
【0019】
サポート要素は、好ましくは、回転軸線に関して半径方向で長さ調節可能な結合要素によりホルダに結合されている。結合要素は、サポート要素の一部として、半径方向でのサポート要素の調節可能性をもたらす。特に好適には、サポート要素は、回転軸線に関して半径方向に延びる(結合要素としての)ねじ山付きロッドによって支持フレームに結合されている。代替的な実施形態では、ねじ山付きロッドの代わりに、締付け部材または締付けねじに結合するピンまたはロッド、長孔および結合ねじを備えた条片、トグルレバーアセンブリ、または歯列または爪を有する要素、例えばラックおよび対応して歯列に係合する対応する対向部材が規定されている。
【0020】
ホルダは、好適には、横方向ブレースを有しており、この横方向ブレースに、長さ調節可能な結合要素および/またはねじ山付きロッドが支持されている。横方向ブレースは、回転軸線に対して垂直な平面内でほぼ接線方向に、キングピンに対して十分な間隔を置いて延びており、これにより、サポート要素の長さ調節を可能にすることができる。
【0021】
位置固定された軸受リングもしくは位置固定された軸受リングセグメントは、好ましくはキングピンフランジに直接に取り付けられている。これにより、セミトレーラ自体において構造的な変更を加える必要なしに、キングピンアセンブリの簡単な交換可能性または後付け可能性が可能にされる。例えば、古いキングピンをトレーラプレートからねじり外し、新しいキングピンを、キングピンフランジに設けられた同一の穴パターンに、ピボット軸受およびホルダと一緒に、その位置において組み付けることができる。
【0022】
位置固定された軸受リングもしくは位置固定された軸受リングセグメントは、回転軸線に関して好適には半径方向内側に位置して配置されており、回転可能な軸受リングもしくは回転可能な軸受リングセグメントは、回転軸線に関して半径方向外側に位置して配置されている。このことも、図面につき以下に説明するように、最適な回転ガイドと同時にキングピンアセンブリの簡単な交換可能性または後付け可能性に寄与する。
【0023】
一体的な構成、つまりホルダが、回転軸線に関して半径方向外方に向けられた支持フレームとして構成されている場合、この支持フレームには、回転軸線の方向で、ホルダまたは支持フレームから上方に向かって突出するスペーサ部材が配置されており、このスペーサ部材は、ホルダまたは支持フレームを間接的または直接的にセミトレーラにおいて支持するように構成されている。
【0024】
複数の部分から成る構成、つまりホルダに、回転軸線に関して半径方向外方に向けられて支持フレームが組み付けられている場合、この支持フレームには、回転軸線の方向で支持フレームから突出するスペーサ部材が配置されており、スペーサ部材は同様に、支持フレームをセミトレーラにおいて間接的または直接的に支持するように構成されている。
【0025】
両方の場合に、長さ調節可能なサポート要素は、好ましくは、支持フレームもしくはホルダがスペーサ部材でトレーラプレートに当接するように調節され、これによりホルダまたは支持フレームの振動傾向が減じられ、結合手段が配置されているホルダもしくは支持フレームの自由端の位置が、さらにより正確に特定されている。キングピンを中心としたホルダの回転時の機械的な歪みを回避するために、サポート要素は、有利には、トレーラプレートの、回転時にホルダにより擦過可能な領域の最低点に従って位置調整される。
【0026】
回転可能な軸受リングもしくは回転可能な軸受リングセグメントは、有利には、回転軸線の方向に延びる円筒壁セグメントを有しており、この円筒壁セグメントにホルダが位置固定されている。円筒壁セグメントは、軸方向の回転支持部の平面からホルダへの鉛直方向の結合部を形成すると同時に、長さ調節可能な結合要素および/またはねじ山付きロッドを支持するための横方向ブレースを形成するために適している。
【0027】
円筒壁セグメントは、好ましくは、<2.1xr未満の接線方向の幅を有しており、これにより一体的な構造形態では、V字形のサポート要素の半径方向で最も内側の部分として、または2つの部分から成る構造形態では、ホルダの内側の延長部として、連結時の結合手段のガイドに関与している。
【0028】
好適な或る実施形態では、サポート要素は、回転軸線に関して、少なくとも半径方向で弾性的に変形可能に形成されている、かつ/またはこの半径方向で作用するばね要素を有しており、これにより、サポート要素が、調節可能な予荷重下でキングピンに当接している。ばね要素は、例えば圧縮コイルばね、皿ばね積層体または弾性変形可能なプラスチック体であってもよい。この構成は、サポート要素の長さ調節に関連して、サポート要素がキングピンに、かつ支持フレームがトレーラプレートに一定の押付け圧で当接することが常に確実にされている意図的な予荷重を調節することを可能にする。これにより、支持フレームの場合によっては生じる歪みが減じられ、同時に支持フレームの振動がさらに良好に減衰される。
【0029】
本発明のこれらの特徴および利点および別の特徴および利点について、以下に図面につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明に係るキングピンアセンブリの1つの実施形態を断面して示す斜視図である。
【
図2】キングピンアセンブリを下から見た図である。
【
図3】支持フレームと共にキングピンアセンブリを下から見た図である。
【
図4】キングピンアセンブリを断面して示す側面図である。
【
図6】本発明に係るキングピンアセンブリの1つの実施形態を概略的に示す側面図である。
【0031】
図1~
図5は、回転軸線Aを定義するキングピン2と、回転軸線Aを中心として配置されたピボット軸受3と、このピボット軸受3に結合され、かつ回転軸線Aを中心として旋回可能であるホルダ4とを含む、連結車両のセミトレーラ用のキングピンアセンブリ1を示している。ホルダ4は、この複数部分から成る実施形態では、支持フレーム20のための組付けソケットとして形成されていて、円筒壁セグメント16と、フォーク形の、実質的に半径方向で円筒壁セグメント16から突出する2つの保持アーム21とを有している。
【0032】
支持フレーム20は、
図3に図示したように、ホルダ4の両保持アーム21に位置固定されている。つまりこれは、ホルダ4が支持フレーム20のための組付けソケットとして構成されている、複数部分から成る構成である。支持フレーム20は上面に保護カバー22を有している。保護カバー22の下では、支持フレーム20内でこの支持フレーム20の自由端23に、かつベースプレートを介して間接的に支持フレーム20に取り付けられた結合手段(図示せず)が位置している。支持フレーム20は、所定の区分でV字形のフレーム構造として形成されており、このV字形のフレーム構造の側部は、支持フレームに対応する走入開口の角度に適合されている。
【0033】
キングピン2は、キングピン2をセミトレーラに、ここではより正確にはトレーラプレート24に溶接されたディスク18に組み付けるためのキングピンフランジ6を有している。取付けは、従来技術において公知のように、フランジ6に沿って円形に配置されたねじ25を用いて行われる。ディスク18は、上方に向かって凹部26を有しており、この凹部26内に、キングピンフランジ6と、部分的にピボット軸受3とが収容される。凹部26の、トレーラプレート24の厚さ込みの深さは、ピボット軸受3が、ホルダ4のワンピースに一体成形された円筒壁セグメント16を除いて、トレーラプレート24の下面から突出しないように、寸法設定されている。
【0034】
キングピンは、その他の点では、それ自体公知のように、上から下に向かって見て、上側のカラー27、くびれ部28および下側のカラー29を含んでいる。上側のカラー27、くびれ部28および下側のカラー29は全て、円筒形の基本形状を有している。上側のカラー27において、キングピンは所定の半径rを有している。くびれ部28は、第五輪のロックが作用する区分である。
【0035】
ピボット軸受3は、キングピン2に対して相対的に位置固定された軸受リング7と、この軸受リング7に対して回転可能な軸受リング8とを有している。位置固定された軸受リング7は、ねじ部材30により直接にキングピンフランジに取り付けられている。
【0036】
フランジ6と位置固定された軸受リング7とを二重にねじ締結することにより、キングピンアセンブリ1を全体的に、またはピボット軸受3の部分のみを簡単な形式で交換することができる。特に後付け時には、セミトレーラにおける構造上の変更は、行う必要がない。なぜならば、本発明に係るキングピンアセンブリ1は、単純に古いキングピンアセンブリの代わりに組み付けることができるからである。このためには、同一のねじ結合部だけではなく、ホルダ4を含むピボット軸受3のために必要とされる小さな構成空間も役立つ。このためには、特に
図1および
図4から判るように、位置固定された軸受リング7が回転軸線Aに関して半径方向内側に位置し、回転可能な軸受リング8が半径方向外側に位置して配置されているとさらに有利である。
【0037】
回転可能な軸受リング8は、位置固定された軸受リング7と一緒に、軸方向-半径方向-ピボット軸受を形成する。軸方向では支持は、軸受リング7,8の、互いに合わせられた軸方向の滑動面によって達成される。滑動面は、「回転平面」または「ピボット軸受の平面」32を規定している(
図4参照)。半径方向では、軸受リングが、円筒形の面34に沿って互いに当接し、これによりホルダ4の運動の自由度を純粋な回転運動に制限する。回転可能な軸受リング8は、その外周面に沿って、環状に段付けされた補強縁部36を有している。
【0038】
ホルダ4は、回転可能な軸受リング8に位置固定されている。図示の実施例では、ホルダ4は、その円筒壁セグメント16で、軸受リング8に一体的に成形されている。これにより円筒壁セグメントは、ホルダ4に対する軸方向の回転支持部の平面32からの鉛直方向の結合部を形成する。
【0039】
したがって、ホルダ4の位置は、ピボット軸受3により、キングピン2およびトレーラプレート24に対して半径方向および軸方向に相対的に規定されている。
【0040】
支持フレーム20が、その半径方向の構造長さに基づいて傾斜していないか、またはできるだけ僅かしか下方に向かって傾斜しないようにするために、キングピンアセンブリ1はサポート要素9を有している。このサポート要素9は、ホルダ4に、回転軸線Aに関して半径方向Rで長さ調節可能な結合要素12を用いて結合されている。結合要素12は、軸方向で離間して、ピボット軸受3の平面32の下側に配置されており、そこでキングピン2の上側のカラー27の、回転軸線Aを中心として同軸に配置された円筒周面11において直接に支持されている。第五輪とのロックのためのくびれ部28が、全周にわたって露出したままでなければならないのに対して、代替的な構成では、サポート要素9が下側のカラー29において支持されていてもよく、これによって全体的に比較的大きなレバー、ひいては比較的堅固な支持が行われる。
【0041】
結合要素12は、本実施例ではねじ山付きロッド13として構成されている。このねじ山付きロッド13は、半径方向内側で、本実施形態では横方向ブレース14を形成している円筒壁セグメント16内にねじ込まれ、これによって円筒壁セグメント16において支持される。代替的には、例えば材料結合式または力結合式の結合によって、円筒壁セグメント16に位置固定することもできる。他方の側では、ねじ山付きロッド12が、サポート要素9の金属ブロック40内にねじ込まれていて、ナット42により止められている。ねじ山付きロッド12は、サポート要素9の一部として、サポート要素9の半径方向Rにおける調節可能性のために働く。サポート要素が、ねじ山付きロッドのねじり出しにより例えば半径方向に延長されると、ホルダ4の自由端が持ち上げられ、反対にねじ込みによってホルダの自由端は降下させられる。ホルダは、例えばキングピンの摩滅程度、支持フレーム、プラグまたはトレーラプレートの構造上の誤差に正確に適合させることができ、これにより、プラグを鉛直方向で正確にその目標位置にもたらすことができる。
【0042】
さらにサポート要素9は、キングピン2の円筒面11に直接に接触している滑動面10を有しており、滑動面10は、プラスチックブロック44に形成されており、プラスチックブロック44自体は、サポート要素9の金属ブロック40に接着されているか、または別の方法でサポート要素9に取り付けられている。このプラスチックブロック44は、キングピン2の表面との相互作用における摩擦係数を減じるために、摩擦学的に有効な充填材粒子が分散して存在し得るプラスチック母材を有している。
【0043】
滑動面10は、半径r’を有する凹状に湾曲させられた面として構成されており、これにより、サポート要素9は、キングピンに対して相対的に、キングピン2の回転軸線Aもしくは円筒面11に関して接線方向に配向されている。
【0044】
図6には、半径方向外方に向けられた支持フレーム20を備えた、本発明によるキングピンアセンブリが概略的に示されており、支持フレーム20には、回転軸線Aの方向で支持フレーム20から上方に向かって突出したスペーサ部材46が配置されている。このスペーサ部材46は、支持フレーム20をセミトレーラのトレーラプレート24において支持する。
【0045】
支持フレーム20の内側には、支持フレーム20の自由端23に取り付けられている、破線で図示された結合手段48が位置している。
【0046】
サポート要素9は、本実施形態では、回転軸線Aに関して半径方向Rに作用するばね要素50を有する。ばね要素50は、概略的に図示されていて、例えば圧縮コイルばね、皿ばね積層体または弾性変形可能なプラスチック体であってもよい。サポート要素9の長さ調節と相まって、サポート要素9がキングピン2に、かつ支持フレーム20が、スペーサ部材46を介してトレーラプレート24に、一定の押付け圧で当接することを常に保証する意図的な予荷重を調節することを可能にする。
【符号の説明】
【0047】
1 キングピンアセンブリ
2 キングピン
3 ピボット軸受
4 ホルダ
6 キングピンフランジ
7 位置固定された軸受リング
8 回転可能な軸受リング
9 サポート要素
10 滑動面
11 円筒周面
12 結合要素
13 ねじ山付きロッド
14 横方向ブレース
16 円筒壁セグメント
18 ディスク
20 支持フレーム
21 保持アーム
22 保護カバー
23 (支持フレームの)自由端
24 トレーラプレート
25 ねじ
26 凹部
27 上側のカラー
28 くびれ部
29 下側のカラー
30 ねじ
32 ピボット軸受の回転平面/平面
34 円筒形の面
36 縁部
40 金属ブロック
42 ナット
44 プラスチックブロック
46 スペーサ部材
48 結合手段
50 ばね要素
【外国語明細書】