(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039630
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】固体撮像素子パッケージ製造方法および固体撮像素子パッケージ
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
H01L27/146 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023143158
(22)【出願日】2023-09-04
(31)【優先権主張番号】P 2022143762
(32)【優先日】2022-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】黒田 健太
(72)【発明者】
【氏名】木下 大希
(72)【発明者】
【氏名】沓水 真琴
【テーマコード(参考)】
4M118
【Fターム(参考)】
4M118AA05
4M118AB01
4M118BA09
4M118CA01
4M118GB01
4M118GB13
4M118HA02
4M118HA11
4M118HA25
(57)【要約】
【課題】撮影画像のノイズが少ない固体撮像素子パッケージの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る固体撮像素子パッケージ製造方法は、表面中央部に撮像を行う機能部を有する固体撮像素子と、前記固体撮像素子の外周部に前記機能部を取り囲むよう配設される枠状のフレームと、前記機能部に対向し、前記固体撮像素子を覆うよう前記フレームに固定される透明基板と、を備える固体撮像素子パッケージを製造する方法であって、前記固体撮像素子および前記透明基板の一方に、3Dプリンターにより多層に樹脂を積層することで前記フレームを形成する工程と、前記フレームに前記固体撮像素子および前記透明基板の他方を接着する工程と、を備え、前記フレームを形成する工程において、前記フレームの内周面の表面粗さRaが50nm以上30μm以下となるよう前記樹脂を積層する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像を行う機能部および前記機能部を取り囲むマージン部を有する固体撮像素子と、前記マージン部に配設される枠状のフレームと、前記機能部に対向し、前記機能部を覆うよう前記フレームに固定される透明基板と、を備える固体撮像素子パッケージを製造する方法であって、
前記固体撮像素子および前記透明基板のうちの一方に、3Dプリンターにより多層に樹脂を積層することで前記フレームを形成する工程と、
前記フレームに前記固体撮像素子および前記透明基板の他方を接着する工程と、
を備え、
前記フレームを形成する工程において、前記フレームの内周面の表面粗さRaが50nm以上30μm以下となるよう前記樹脂を積層する、固体撮像素子パッケージ製造方法。
【請求項2】
前記3Dプリンターは、光造形3Dプリンターであり、単層の高さを0.1μm以上10μm以下とする、請求項1に記載の固体撮像素子パッケージ製造方法。
【請求項3】
積層される前記樹脂のパターンの前記フレームの内周面に対応する内周縁を波型に形成し、かつ層ごとに前記波型の位相をずらして前記樹脂を積層する、請求項2に記載の固体撮像素子パッケージ製造方法。
【請求項4】
前記波型のピッチを50nm以上30μm以下、前記波型の波高を50nm以上30μm以下とする、請求項3に記載の固体撮像素子パッケージ製造方法。
【請求項5】
前記3Dプリンターは、体積0.05pL以上3.0pL以下の前記樹脂の液滴を噴射するインクジェット3Dプリンターである、請求項1に記載の固体撮像素子パッケージ製造方法。
【請求項6】
撮像を行う機能部および前記機能部を取り囲むマージン部を有する固体撮像素子と、
前記マージン部に配設される枠状のフレームと、
前記機能部を覆うよう前記フレームに固定される透明基板と、を備え、
前記フレームの内周面の表面粗さRaが50nm以上30μm以下である、固体撮像素子パッケージ。
【請求項7】
前記フレームは、その内周面に、前記固体撮像素子および前記透明基板と平行な方向に凹凸を繰り返し、前記固体撮像素子および前記透明基板と垂直な方向に位相をずらして形成される複数の波型を有する、請求項6に記載の固体撮像素子パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像素子パッケージ製造方法および固体撮像素子パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子を実装した基板に固体撮像素子を取り囲む枠状のフレームを接着し、フレームの開口をガラス板で覆った固体撮像素子パッケージが広く利用されている(例えば特許文献1参照)。このような固体撮像素子パッケージにおいて、フレームは、固体撮像素子に対するガラス板の相対位置を定めると共に、固体撮像素子に意図しない光が入射することを抑制することによりフレア、ゴーストといった撮影画像のノイズを低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固体撮像素子パッケージの小型化および高精細化に対する要求は日々高まっている。このため、本発明は、撮影画像のノイズが少ない固体撮像素子パッケージおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る固体撮像素子パッケージ製造方法は、撮像を行う機能部および前記機能部を取り囲むマージン部を有する固体撮像素子と、前記マージン部に配設される枠状のフレームと、前記機能部を覆うよう前記フレームに固定される透明基板と、を備える固体撮像素子パッケージを製造する方法であって、前記固体撮像素子および前記透明基板のうちの一方に、3Dプリンターにより多層に樹脂を積層することで前記フレームを形成する工程と、前記フレームに前記固体撮像素子および前記透明基板の他方を接着する工程と、を備え、前記フレームを形成する工程において、前記フレームの内周面の表面粗さRaが50nm以上30μm以下となるよう前記樹脂を積層する。
【0006】
上述の固体撮像素子パッケージ製造方法では、前記3Dプリンターは、光造形3Dプリンターであり、単層の高さを0.1μm以上10μm以下としてもよい。
【0007】
上述の固体撮像素子パッケージ製造方法では、積層される前記樹脂のパターンの前記フレームの内周面に対応する内周縁を波型に形成し、かつ層ごとに前記波型の位相をずらして前記樹脂を積層してもよい。
【0008】
上述の固体撮像素子パッケージ製造方法では、前記波型のピッチを50nm以上30μm以下、前記波型の波高を50nm以上30μm以下としてもよい。
【0009】
上述の固体撮像素子パッケージ製造方法では、前記3Dプリンターは、体積0.05pL以上30pL以下の前記樹脂の液滴を噴射するインクジェット3Dプリンターであってもよい。
【0010】
本発明の一態様に係る固体撮像素子パッケージは、撮像を行う機能部および前記機能部を取り囲むマージン部を有する固体撮像素子と、前記マージン部に配設される枠状のフレームと、前記機能部に対向し、前記機能部を覆うよう前記フレームに固定される透明基板と、を備え、前記フレームの内周面の表面粗さRaが50nm以上30μm以下である。
【0011】
上述の固体撮像素子パッケージ製造方法では、前記フレームは、その内周面に、前記固体撮像素子および前記透明基板と平行な方向に凹凸を繰り返し、前記固体撮像素子および前記透明基板と垂直な方向に位相をずらして形成される複数の波型を有してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、撮影画像のノイズが少ない固体撮像素子パッケージおよびその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る固体撮像素子パッケージの断面図である。
【
図2】
図1の固体撮像素子パッケージのフレームの内周面の形状を示す部分拡大斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る固体撮像素子パッケージ製造方法の手順を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の
図1とは異なる実施形態に係る固体撮像素子パッケージの断面図である。
【
図5】本発明の
図3とは異なる実施形態に係る固体撮像素子パッケージ製造方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明をする。
図1は、本発明の第1実施形態に係る固体撮像素子パッケージ1の断面図である。固体撮像素子パッケージ1は、いわゆるGoC(Glass on Chip)型の固体撮像装置である。
【0015】
固体撮像素子パッケージ1は、実装基板10と、実装基板10に実装される固体撮像素子20と、固体撮像素子20に配設される枠状のフレーム30と、間隔を空けて固体撮像素子20を覆うようフレーム30に固定される透明基板40と、実装基板10上のフレーム30および透明基板40の外側を封止する封止材50と、を備える。
【0016】
実装基板10は、固体撮像素子20を支持する構造部材である。このため、実装基板10は、十分な剛性を有する材料から形成される。実装基板10は、電気的に回路に組み込まれる構成要素を有しない単なる支持体であってもよいが、固体撮像素子20に電力を供給し、固体撮像素子20から信号を取り出す回路が形成された回路基板であることが好ましい。本実施形態において、実装基板10は、固体撮像素子20と電気的に接続するために端子11を含む回路が形成された回路基板である。
【0017】
実装基板10としては、例えばポリイミド、ポリエステル、セラミック、エポキシ、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フェノール樹脂等の有機物や、紙やガラス繊維不織布などに前記の有機物を含侵させて加熱硬化させた構造物、アルミナ、窒化アルミニウム、酸化ベリリウム、窒化ケイ素などのセラミック、金属基板などが挙げられる。この中で好ましいものとしてはガラスエポキシ基板、セラミック基板、ビスマレイミドトリアジン樹脂基板が挙げられる。これら絶縁基板の表面または内部に、金属配線パターンや金属バンプを有する回路を形成することができる。
【0018】
固体撮像素子20は、撮像を行う機能部21と、機能部21を取り囲むマージン部22と、マージン部22のさらに外側に設けられる接続部23と、を有する。固体撮像素子20は、実装基板10の透明基板40に対向する側に実装され得る。機能部21としては、例えばCMOSイメージセンサ等の2次元撮像素子構造が形成され得る。マージン部22は、フレーム30を固定する領域であり、露出すべき構成要素が設けられていない。すなわち、機能部や接続端子等が存在しない。接続部23は、固体撮像素子20を実装基板10等に電気的に接続するための端子231が配設される領域である。本実施形態において、固体撮像素子20と実装基板10は、ワイヤ232によって電気的に接続されている。
【0019】
フレーム30は、固体撮像素子20のマージン部22に機能部21を取り囲むよう配設される。フレーム30は、透明基板40と共に固体撮像素子20上に機能部21を封入する密閉空間を形成する。また、フレーム30は、機能部21に側方から光が入射することを防止できるよう、黒色顔料または光拡散材を含有する樹脂組成物から形成されることが好ましい。さらに、フレーム30は、内周面での反射光が機能部21に入射することを抑制するために、内周面が透明基板40側に向かって縮径する逆テーパー状に形成されることが好ましく、例えば階段状またはドーム状に透明基板40側で内周面の縮径率がより小さくなるような形状とされてもよい。
【0020】
フレーム30の内周面の表面粗さRaの下限としては、50nmが好ましく、500nmがより好ましい。一方、フレーム30の内周面の表面粗さRaの上限としては、30μmが好ましく、5μmがより好ましい。これにより、傾斜方向からフレーム30の内周面に入射して固体撮像素子20に到達する光を低減し、撮影画像のゴーストを抑制できる。
【0021】
このような表面粗さRaを実現するために、フレーム30は、
図2に示すように、その内周面に、固体撮像素子20(機能部21の受光面)および透明基板40と平行な方向に凹凸を繰り返し、固体撮像素子20および透明基板40と垂直な方向に位相をずらして並んで形成される複数の波型を有してもよい。つまり、フレーム30の内周面には、固体撮像素子20および透明基板40と平行な方向に並ぶ突起の列が、複数形成され得る。波型は、フレーム30の内周面全体に隙間なく形成されることが好ましい。波型は、好ましくは一定のピッチ(波長)で形成される。また、波型の波形は、特に限定されず、正弦波状、矩形波状、三角波状等とすることができる(
図2では、分かりやすいよう三角波状としている)。隣接する波型の位相差は、効率よく微細な凹凸を形成するために、略180°とされることが好ましい。
【0022】
波型のピッチの下限としては、50nmが好ましく500nmがより好ましい。一方、波型のピッチの上限としては、30μmが好ましく5μmがより好ましい。また、波型の波高の下限としては、350nmが好ましく500nmがより好ましい。一方、波型の波高の上限としては、30μmが好ましく、5μがより好ましい。また、波型の列の間隔の下限としては、0.1μmが好ましく0.3μmがより好ましい。一方、波型の列の間隔の上限としては、10μmが好ましく3μmがより好ましい。これらの条件を満たすことによって、これにより、上述の好ましい表面粗さRaを容易に実現できる。
【0023】
フレーム30は、後述するように3Dプリンターによって形成するために、光硬化性樹脂から形成されることが好ましい。フレーム30は、固体撮像素子20および透明基板40に接着剤により接着されてもよいが、相対位置の正確性を担保するために、実装基板10および透明基板40の少なくとも一方に直接接合されることが好ましく、少なくとも透明基板40に直接接合されることがより好ましい。
【0024】
透明基板40は、固体撮像素子20に光が入射することを可能にする。透明基板40は、ガラスやサファイヤなどの透明セラミック、アクリル樹脂やポリカーボネート等の透明プラスチックを用いることができ、信頼性の観点から透明セラミックが好ましい。汎用性の観点から、ガラスが用いられることが好ましい。ガラスの種類は特に限定されないが、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。透明基板40は、フレーム30に接着剤により接着されてもよいが、透明基板40の一方の面にフレーム30の材料が直接積層されることが好ましい。
【0025】
封止材50は、実装基板10上の固体撮像素子20、フレーム30および透明基板40の外側を封止することにより、フレーム30および透明基板40が外部の物体により固体撮像素子20から引き剥がされることを防止する。また、封止材50は、ワイヤ232を保護し、実装基板10と固体撮像素子20との電気的接続を担保する。
【0026】
封止材50としては、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂が好ましく、強靭性や耐熱性の観点からエポキシ樹脂が特に好ましい。また、封止材50は、機能部21に意図しない光が入射することを防止できるよう、黒色顔料または光拡散材を含有する樹脂組成物から形成されることが好ましい。また、封止材50は、形成を容易にするために、硬化前においてチクソ性を有するようシリカ等の充填剤を含有してもよい。
【0027】
以上の固体撮像素子パッケージ1は、
図3に示す本発明の一実施形態に係る固体撮像素子パッケージ製造方法によって製造できる。本実施形態に係る固体撮像素子パッケージ製造方法は、実装基板10に固体撮像素子20を実装する工程(ステップS1:素子実装工程)と、透明基板40に3Dプリンターによりフレーム30を形成する工程(ステップS2:フレーム形成工程)と、実装基板10に実装された固体撮像素子20をフレーム30に接着する工程(ステップS3:素子接着工程)と、を備える。
【0028】
ステップS1の素子実装工程では、実装基板10に固体撮像素子20を実装する。固体撮像素子20の実装方法としては、特に限定されず、例えば図示するようなワイヤボンディングに加え、フリップチップボンディング等の周知の実装技術を採用することができる。
【0029】
ステップS2のフレーム形成工程では、透明基板40に3Dプリンターにより多層に樹脂を積層することでフレーム30を形成する。3Dプリンターを用いることで、精密に所望の形状を有するフレーム30を、透明基板40に対して位置ずれなく配置した状態で形成できる。
【0030】
フレーム30を形成する3Dプリンターとしては、光硬化性樹脂の表層の所望の領域にレーザー光を照射して単層の硬化物を得る工程を繰り返す光造形3Dプリンター、光硬化性樹脂の微小な液滴を所望の領域に噴射し、噴射した光硬化性樹脂に光を照射して単層の硬化物を得る工程を繰り返すインクジェット3Dプリンター等が好適に利用される。3Dプリンターを用いてフレーム30を形成することによって、透明基板40の他の領域にフレーム30を形成する樹脂や他の異物が付着するリスクを低減できる。
【0031】
フレーム30を光造形3Dプリンターにより形成する場合、樹脂の単層の高さの下限としては、0.1μmが好ましく、0.3μmがより好ましい。一方、樹脂の単層の高さの上限としては、10μmが好ましく、3μmがより好ましい。これによって、所望の形状を有するフレーム30を効率よく形成できる。
【0032】
フレーム30内周面に所望の表面粗さRaを付与する複数の波型を形成するために、積層される樹脂のパターン(光を照射する領域の形状)のフレーム30の内周面に対応する内周縁を波型に形成し、かつ層ごとに波型の位相をずらして樹脂を積層することが好ましい。
【0033】
フレーム30をインクジェット3Dプリンターにより形成する場合、インクジェット3Dプリンターが噴射する液滴の体積の下限としては、0.05pLが好ましく、0.50pLがより好ましい。一方、インクジェット3Dプリンターが噴射する液滴の体積の上限としては、3.0pLが好ましく、0.5pLがより好ましい。これによって、フレーム30の表面全体に液滴に由来する凹凸を形成し、内周面に好ましい表面粗さRaを付与することができる。
【0034】
ステップS3の素子接着工程では、フレーム30の透明基板40と反対側に固体撮像素子20を接着する。フレーム30と固体撮像素子20は、接着剤を用いて接着してもよい。フレーム30と固体撮像素子20を接着する接着剤としては、例えばエポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤等を用いることができる。
【0035】
以上の固体撮像素子パッケージ製造方法によって製造される固体撮像素子パッケージ1は、フレーム30の内周面に適切な表面粗さが付与されるので、傾斜方向から入射する光を散乱させ、反射光が固体撮像素子20に入射して撮像品質を低下させるノイズとなることを防止できる。特に、小型化のためにGoC構造を採用した固体撮像素子パッケージ1では、3Dプリンターにより、内周面に適切な凹凸を有するフレーム30を正確に形成することで高画質の画像を撮影できる。
【0036】
続いて、本発明の別の実施形態について説明をする。
図4は、本発明の第2実施形態に係る固体撮像素子パッケージ1Aの断面図である。固体撮像素子パッケージ1Aは、いわゆるCSP(Chip Size Package)型の固体撮像装置である。なお、本実施形態の固体撮像素子パッケージ1Aの説明において、
図1の固体撮像素子パッケージ1と同様の構成要素には同じ符号を付して重複する説明を省略することがある。
【0037】
固体撮像素子パッケージ1Aは、固体撮像素子20Aと、固体撮像素子20Aに配設される枠状のフレーム30と、間隔を空けて固体撮像素子20Aを覆うようフレーム30に固定される透明基板40と、を備える。
【0038】
固体撮像素子20Aは、表側(透明基板に対向する側)に、撮像を行う機能部21と、機能部21を取り囲むマージン部22と、を有し、裏側に、複数のパッド電極24を有する。機能部21とパッド電極24は、マージン部22を通過して固体撮像素子20Aの端面を回り込むよう配設される配線パターン25によって接続され得る。
【0039】
固体撮像素子パッケージ1Aは、
図5に示す本発明の別の実施形態に係る固体撮像素子パッケージ製造方法によって製造できる。具体的には、固体撮像素子パッケージ1Aは、複数の透明基板40に切り分けられる前の大判の透明基板母材に、内周面に所定の表面粗さRaを有するフレーム30を3Dプリンターによって形成する工程(ステップS11:フレーム形成工程)と、それぞれの固体撮像素子20Aを対応するフレーム30に接着するよう、複数の固体固体撮像素子20Aの構造が形成されたダイシング前の半導体ウエハと、透明基板母材とを接合する工程(ステップS12:ウエハ接着工程)と、半導体ウエハと透明基板母材を同時に切断することにより、複数の固体撮像素子パッケージ1Aに切り分ける工程(ステップS13:切り分け工程)と、を備える固体撮像素子パッケージ製造方法によって製造され得る。
【0040】
投影面積を特に小さくできるCSP構造を採用した固体撮像素子パッケージ1Aも、3Dプリンターにより、内周面に適切な凹凸を有するフレーム30を正確に形成することで高画質の画像を撮影できる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。本発明に係る固体撮像素子パッケージ製造方法では、固体撮像素子および透明基板の一方にフレームを形成し、フレームに他方を接着すればよく、固体撮像素子に3Dプリンターによりフレームを形成し、形成したフレームに透明基板を接着してもよい。また、本発明に係る固体撮像素子パッケージにおいて、実装基板および封止材は任意の構成である。
【実施例0042】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
<感光性樹脂組成物>
フレームの形成材料として、主鎖に環状ポリシロキサン構造を有し、カチオン重合性基およびアルカリ可溶性基を有する主ポリマー100重量部に、ダイセル社製の脂環式エポキシ化合物「セロキサイド2021P」15重量部と、サンアプロ社製の光カチオン重合開始剤「CPI-210S」3質量部と、BASF社製の酸化防止剤「IRGANOX1010」0.1重量部とを混合した感光性樹脂組成物を調整した。
【0044】
前記主ポリマーは、以下の手順で調整した。先ず、ジアリルイソシアヌレート40gとジアリルモノメチルイソシアヌレート29gと1,4-ジオキサン264gとの混合物に、ユミコアプレシャスメタルズ・ジャパン社製の白金ビニルシロキサン錯体キシレン溶液「Pt-VTSC-3X」124mgを加えて溶液S1を得た。また、別途、1,3,5,7-テトラハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン88gをトルエン176gに溶解させて溶液S2を得た。そして、酸素を3体積%含有する窒素雰囲気下において、溶液S2を温度105℃に加熱した状態で、溶液S2に溶液S1を3時間かけて滴下し、滴下終了後、温度105℃に保持しつつ30分間攪拌して、溶液S3を得た。なお、得られた溶液S3に含まれる化合物のアルケニル基の反応率を、1H-NMRで測定したところ、当該反応率は95%以上であった。また、別途、1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサン62gをトルエン62gに溶解させて溶液S4を得た。そして、酸素を3体積%含有する窒素雰囲気下、溶液S3を温度105℃に加熱した状態で、溶液S3に、溶液S4を1時間かけて滴下し、滴下終了後、温度105℃に保持しつつ30分間攪拌して、溶液S5を得た。なお、得られた溶液S5に含まれる化合物のアルケニル基の反応率を、1H-NMRで測定したところ、当該反応率は95%以上であった。次いで、溶液S5を冷却した後、溶液S5から溶媒(トルエン、キシレンおよび1,4-ジオキサン)を減圧留去し、主ポリマーを得た。主ポリマーは、1分子中に複数個のカチオン重合性基と複数個のアルカリ可溶性基とを有し、かつ主鎖に環状ポリシロキサン構造を有していた。
【0045】
<固体撮像素子パッケージの試作>
インクジェット3Dプリンター、光造形3Dプリンターまたはディスペンサーを使用し、異なる条件で、透明基板または実装基板に上記感光性樹脂組成物よってフレームを形成し、固体撮像素子パッケージを試作した。
【0046】
[実施例1]
透明基板(10cm×10cm、厚み0.4mm)上に、インクジェット3Dプリンターを用いて線幅200μm、厚み50μmの四角筒状構造を有するフレームを複数個形成した。この際、使用したインクジェットの液滴は15pLであった。この際、1層塗布するごとに紫外光を露光することで、半硬化の状態で積層した。また、フレームの内周面と内側の透明基板との角度(以下、「テーパー角」という)は90°とした。次いで、透明基板のフレームが設けられていない面にダイシングフィルムを仮接着した後、ダイシングブレードで切断し、ダイシングフィルムをはがして、個片化されたフレーム付透明基板を得た。次いで、得られたフレーム付透明基板と、固体撮像素子が実装された実装基板とを積層し、温度120℃のホットプレート上で500gの荷重を30秒間かけることにより固体撮像素子とフレームを熱圧着して固体撮像素子パッケージの実施例1を得た。なお、実装基板としては、固体撮像素子を外部と接続するための配線を提供する配線基板を使用した。また、固体撮像素子とフレームを接着した後、実装基板の外周部に封止樹脂を盛り付け、固体撮像素子、フレームおよび透明基板の外周部を封止した。
【0047】
[実施例2~8]
インクジェットの液滴を1.0pL、2.0pL、0.5pL、0.1pL、5.0pLにそれぞれ変更した以外は、実施例1と同じ方法で実施例2~6の固体撮像素子パッケージを得た。また、液滴サイズを1.0pL、2.0pLとし、テーパー角を120°とした以外は試作実施例1と同じ方法で実施例6~8の固体撮像素子パッケージを得た。
【0048】
[比較例1~2]
テーパー角を70°、120°にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同じ方法で比較例1~2の固体撮像素子パッケージを得た。
【0049】
[実施例9]
透明基板に、光造形3Dプリンターを用いて、感光性樹脂組成物を1層あたり1μmで多層に積層することにより、厚み50μmの複数個のフレームを形成した。この際、フレーム内周縁を1層ごとに半ピッチずつずらしたピッチ1μmの波型に形成した。以降は実施例1と同じ方法で実施例9の固体撮像素子パッケージを得た。
【0050】
[実施例10~17]
波型のピッチを2μm、5μm、10μm、15μmに変更した以外は、実施例9と同じ方法で実施例10~13の固体撮像素子パッケージを得た。また、テーパー角を70°、80°、110°、120°にそれぞれ変更した以外は、実施例13と同じ方法で実施例14~17の固体撮像素子パッケージを得た。
【0051】
[比較例3]
波型のピッチを50μmに変更した以外は、実施例9と同じ方法で比較例3の固体撮像素子パッケージを得た。
【0052】
[比較例4]
固体撮像素子のマージン部に線幅200μm、厚み50μmになるようにディスペンサーによって感光性樹脂組成物を塗布することによりフレームを形成し、このフレーム上に透明基板を載せて、大日本科研社製の高圧水銀ランプ手動露光機「MA-1300」で1500mJ/cm2露光することで、仮固定し、さらに、温度200℃のオーブンで2時間加熱してフレームを硬化させた。次いで、フレームの周辺部を封止樹脂で封止して、比較例4(従来例)の固体撮像素子パッケージを得た。
【0053】
<固体撮像素子パッケージの評価>
[表面粗さRa]
3D測定レーザー顕微鏡(オリンパス社製「LEXT(登録商標)OLS5100」)を用いて、固体撮像素子パッケージの各実施例および比較例のフレーム内周面の算術平均粗さRa(評価長さ:20μm)を測定した。
【0054】
[ゴースト指数]
固体撮像素子パッケージの各実施例および比較例の撮像性能について、壺坂電機社製のゴーストフレア評価システム「GCS-2T」を用いて、光源の明るさに対して1億分の1を超えた画素数である異常画素数を全画素数で除した異常画素数比率(異常画素数/全画素数)を算出し、従来例である比較例4の異常画素数比率を100%として、実施例1~17および比較例1~3の異常画素数比率を正規化したゴースト指数を算出した。このゴースト指数が小さいほど、ゴースト発生を抑制できる性能が高いと評価される。
【0055】
[貼り合わせ収率]
固体撮像素子パッケージの各実施例および比較例について、光学顕微鏡を用いて、透明基板越しにフレームとの接着の状態を観察した。100個片の固体撮像素子パッケージを観察し、剥離やボイドの発生していた個片をNGとし、NG発生率が3%未満の場合を「A」、NG発生率が3%以上5%未満の場合を「B」、NG発生率が5%以上10%未満の場合を「C」とし、NG発生率が10%以上の場合は「D」とした。
【0056】
[冷熱衝撃試験]
固体撮像素子パッケージの各実施例および比較例について、ヒートショック試験装置(日立ジョンソンコントロールズ空調社製「コスモピア(登録商標)S」)を用いて、-50℃の雰囲気下で30分保持した後、125℃の雰囲気下で30分保持する操作を1サイクルとして、500サイクル行ってから、光学顕微鏡を用いて透明基板越しにフレームを観察し、フレームのクラック箇所の数とフレームの剥離箇所の数とを計数した。
そして、フレームのクラック箇所と剥離箇所の合計数が1以下である場合を「A」、フレームのクラック箇所と剥離箇所の合計数が2以上9以下である場合を「B」、フレームのクラック箇所と剥離箇所の合計数が10以上である場合を「C」とた。
【0057】
固体撮像素子パッケージの各実施例および比較例について、インクジェット3Dプリンターの液滴サイズまたは光造形3Dプリンターの波型のピッチと、フレームの内周面の表面粗さRaと、ゴースト指数と、貼り合わせ収率と、冷熱衝撃耐性とを次の表1にまとめて示す。なお、表中の「-」は、対応する値を想定できないことを意味する。
【0058】
【0059】
以上のように、3Dプリンターを用い、液滴サイズまたは波型ピッチを調整することにより、フレームの内周面に適切な表面粗さRaを付与し、貼り合わせ収率および冷熱衝撃耐性を担保しつつ、ゴースト指数を低減できることが確認された。また、テーパー角を大きくすることにより、貼り合わせ収率および冷熱衝撃耐性を担保しつつ、ゴースト指数をさらに低減できることが確認された。